129日目
突然所長に呼び出され、琴音を処分すると告げられた。
人間の手に負えない存在は、利用できない、利用価値が無いそうだ。
無論抗議するが、既に決定した事だと一蹴された。
冗談ではない!
こいつも研究者の端くれだと言うのに、自分より強大な者には向き合う勇気
もないのか。
琴音がどれほど貴重な存在か、その腐った脳では理解出来ないのか。
思わず掴みかかるが、警備員に取り押さえられる。
床に引き倒されても抵抗したが、突然衝撃が走った。
スタンガン。
このままでは琴音が消え私の元を琴音が私の琴音ことね・・・
気が付くと、拘束室に居た。
どのくらい気絶していたのか。
この部屋には窓も時計も無いが、もう夜になっている気がする。
急いで琴音に危機を知らせないと。
いかに琴音が強大な超能力者でも、彼女は念動力しか持たない。
透視も読心術も無いのだ。
不意を衝かれたり、食事に薬を盛られたりすれば、結果は普通の少女と変わ
らない。
急がないと。
琴音は私の為にあれだけの破壊力を発揮したのだ。
私だって彼女への想いがあれば、この電子ロック扉くらい、10pの複合板
くらい破れる筈だ。
琴音が危ないのだ。今すぐ行かないと。私があの娘を守らないと。
全力で叩けば破れる。
痛くは無い。
血が出ても、肉が見えても、骨が折れても叩ける。
急がないと。
どのくらい経ったか、無駄な努力を諦めた時、自分が泣いているのに気付いた。
琴音を失うのが怖くて、自分の無力さが情けなくて泣いていた。
何も出来ない。叫ぶしかない。
私は叫んだ。
力の限り、声の続く限り、声が続かなくなっても、血を吐いても。
頭がおかしくなりそうだ。