80日目
琴音の念動力が無くなって1週間を超えた。
回復の見込みはない。
彼女には焦らないよう言っているが、私自身はかなり焦っている。
能力を無くした実験体には、回復させる為に様々な実験が行われるから。
真っ先に行われるのは、生命の危機を感じさせることで能力の最発動を促す
試験で、拷問や雪山への放置が主な方法だが、女性には強姦もよく行われる。
琴音の愛らしさに目を付けている者は多く、後者が選択される可能性が高い。
拷問だろうと何だろうと、琴音がこれ以上傷付くのに、私は耐えられない。
81日目
午前中、上司に呼び出され、琴音に能力回復の見込みがないのなら危機的試験
を行うと言われた。
思春期故の不安定さを主張し、1週間の猶予を貰ったが、その間に回復しな
ければ何らかの拷問が琴音に加えられる。
午後からの訓練の間、琴音に動揺を悟られないようにするのが辛かった。
82日目
期限まで6日。
今日からは一日中琴音に付くことにした。
午前中は中庭に出てリフレッシュを図り、午後からは新しい訓練を多く取り
入れて変化を付けた。
琴音は実に協力的だった。
夜は自室で琴音のデータを全て洗い直した。
83日目
期限まで5日。
午前中から訓練に取り掛かる。
合間に雑談やゲームでリラックスさせ、心理学的分析も交えて多角的に能力
回復を模索する。
分析の為、今夜も徹夜した。
84日目
期限まで4日。
やったことは前日とほぼ同じ。
焦りから気付かない内に休憩が減っていたが、琴音は良く付いて来てくれる。
だが今日も進展は無い。
徹夜3日目。糸口は見えない。
85日目
期限まで3日。
今日は変化を与える為、中庭や私の部屋で訓練をした。
徹夜の疲れからか、琴音に焦りを見抜かれてしまう。
動揺させないよう誤魔化したが、もう限界だ。
分析も行き詰まっている。
86日目
期限まで2日。
訓練を始める前に、琴音に全てを話した。
自分の運命を、彼女は意外と冷静に受け止め、逆に私を励ましてくれた。
訓練にも集中していたが、やはり進展は無い。
訓練を終える時、疲れと焦りで混乱したのか、私は思わず琴音を抱き締めた。
琴音は抵抗しなかった。