60日目
卵子摘出から十日。
琴音は少しずつ会話に応じてくれ始め、食事も残さないようになった。
まだ許してくれた訳ではないだろうが、それでも嬉しい。
61日目
午前中は中庭に連れ出した。
外の空気を吸うのは好きな様だが、他の所員が近付くと私の影に隠れる。
午後からの訓練は、少しだが進展があった。
62日目
採取した琴音の卵子を調べた結果、通常では受精しないことが判った。
人間には通常46本ある染色体が、琴音には半分の23本しかない、ある意味
人間とは別の存在なのだ。
生殖が不可能なのも当然かもしれない。
午後、訓練の途中で、琴音は一瞬だが笑顔を見せてくれた。
その可愛い顔を見ると、とても真実を伝える気になれない。