葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round136!!

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656つきのひと
◆猫アレルギー◆
いつもの通学路、いつもの風景の中に、いつもと違うものの姿が見えた。
猫だった。
そいつはこっちを見て、うなぁ、と一声鳴いた。

名雪「ねこーねこー」
祐一「待てっ!」
猫に吸い寄せられていく名雪を、俺は反射的に力づくで抑える。
名雪「離して、祐一。猫さんなの」
世界一の極悪人を見るかのような視線を俺に浴びせる。
祐一「お前確か猫アレルギーだろっ!」
考えるより先に、俺の口からそんな言葉が出ていた。
……。
そうだ、これは小さい頃の記憶だ。
些細でほんの一部にすぎないけれど、俺がどうしても思い出せなかった7年前の記憶だ。
祐一「くしゃみや涙が止まらなくなるぞっ!!」
鮮明になっていく小さな頃の名雪を思いつつ、俺は懸命に今の名雪を思いやった。
俺はもう、お前の苦しむ姿は見たくないんだ!

名雪「猫アレルギー? うん、そうだよ。よく思い出せたね」
その微笑みが、まぶしかった。
ひょっとして俺は、こんな笑顔を見せる名雪のことが好――

名雪「けど、食べなきゃ大丈夫だよ」

(完)