葉鍵板最萌トーナメントブロック決勝Round136!!
「浩之ちゃん、起きてよ。浩之ちゃんてば」
あかりが起こしに来た。いつも通りっちゃいつも通りなんだが、今までとはちょっと違うところもある。
少し前、色々とあって俺たちは、10年以上にわたっていた『ただの幼なじみ』という関係に終止符を打って、
世間的に言う『恋人』になった。
そしてうちの合鍵を渡してからは、あかりは部屋まで起こしに来てくれるようになっている。
今日も今日とて、瞬間的に恋人よりもいとおしくなる布団のぬくもりに溺れている俺を、あかりはゆさゆさと
揺らして起こそうとしている。
今日は日曜日だし、特に何か予定があるわけでもない。何故にこんなに一所懸命起こしに来るんだよ、と半覚
醒の頭で考えつつ、俺はあかりに背を向けて眠気の誘惑に身を委ねた。
「もう、浩之ちゃんてば」
力を込めて、あかりがごろんと俺を仰向けに転がした。
おのれあかりめ。こうなったら、しばらく、意地でも起きてやらんぞ。
「……………」
溜め息が聞こえる。多分、ポーズ的には両手を腰に当てて立っているんだろう。
いいぞ、そのまま諦めて出ていってくれ。悪いがもうちょっと寝ていたいんだよ。
少々の静寂。あかりが部屋を出て行った気配はない。
どうかしたのかと薄目を開けようとした瞬間、甘い息が鼻をくすぐり、驚く間もなく、唇に柔らかいものが触
れる感触がした。
反射的に目を開くと、視界一杯に広がるあかりの閉じられた目。それはゆっくりと離れながら開かれた。
目が合って、耳まで真っ赤になるあかり。俺の顔の温度も急上昇。
「や、やっぱりキスって、目覚めの効果があるんだね」
「ま、真顔で恥ずかしい台詞を抜かすんじゃねぇ」
「でも、浩之ちゃんも真っ赤だよ」
く、くそお。
「朝ごはん出来てるから、早く降りてきてね?」
あかりはそれだけ言うと、逃げるように階段を駆け下りていった。
こうまで一所懸命起こしてくれて、その上朝ごはんか。ホントに、よく出来た恋人だよな…。
今日は、どっかに連れてってやろうかな、と俺は柄にもないことを考えた。