「♪ふんふんふ〜ん…って、あれえ?美穂どったの、勝手に厨房使ったりして!」
「わ!なんだ玲子かぁ…もう、びっくりさせないでよぉ…」
「なーに作ってんのよ…わ、カレーじゃ〜ん!さては食材を失敬して、ひとりだけ夜食を
楽しもうとしてたな〜!半分くれなきゃ由宇ちゃんにチクッちゃうぞ〜?」
「あほたれいこっ!ちゃんと許可はもらってあるし、あたしの夜食でもないのっ」
「ぶーぶー!じゃあなんなのよ〜!美穂のカレーを前にしておきながら、それが食べられない
なんて残酷すぎる〜っ!この世に神はいないのか〜っ!!」
「また今度作ったげるわよっ…ちょっと玲子、そこのお皿にごはん盛って」
「…ほらぁ、皿も二人ぶんじゃ〜ん!これはあたしたちで食べるって意味じゃないの…?
あっ、ルゥ入れた!ああ〜ん、来た来た〜!カレーの匂い〜!!ほらほらぁ…!!」
「ぶつぶつ言ってないで、さっさと盛れーっ!で、盛ったらこっちに寄こすっ!」
「ううう…いったい誰に食べさせるつもりなのよぅ…」
「…失礼しまぁす。にわかごしらえではありますが、カレーをご用意させていただきました」
「わあ!カレーだよ、おにいちゃん!」
「やった〜!これなら食べられるっ!ありがとう、美穂お姉ちゃん!」
「いえいえ、どういたしまして!でも好き嫌いは少しずつ無くすこと。二人とも、美穂お姉ちゃんと
約束できる?約束できるんならカレー食べさせたげる」
「約束するっ!約束するよっ!」
「ボクも約束するーっ!」
「ふふっ、だったら召し上がれっ。あ、熱いから気を付けるのよ?」
「仲居さん、どうもすみません…この子達のわがままでご迷惑をおかけしてしまって…」
「いえいえ、どなたにも満足しておくつろぎいただけるよう努めるのが猪ノ坊旅館ですから…。
それに…だったら食べるなって叱られてるの見ちゃったら、かわいそうになって…」
「ははは、お恥ずかしい…私も言い過ぎたとは思ったんですが…本当にありがとうございます」
「( ゚д゚)ポカーン…み、美穂ったら、なにを母性本能全開にしてんのよぉ…」