「…しっかし、仲居のバイトを引き受けて最初の仕事が雛人形の準備とはねぇ」
「美穂ッチ、なんか文句でもあるんかいな?これでバイト料は他の仲居さんとおんなじやで?」
「も、文句なんてあるわけないじゃない!もう大歓迎よ!ウン!」
「でも立派ですよねぇ…私の家にも雛人形はありますけど、なんだか風格が違いますぅ」
「なんか古くさいからさ、なんでも鑑定団に出したらいい値がつくかもね!」
「メジマユ、あんたなかなか鋭いなぁ。これは江戸中期に京都で作られたモンでな、銘は
マイナーなんやけど細工が丁寧ってことで…確か三百万とか聞いたで?ちなみにウチの
生まれた頃の話やけどな」
「二十年ほど前の三百万円…ガタガタブルブル((((((((((((゚д゚;))))))))))))」
「ちょっとまゆ、落ち着いて…そんな危なっかしい手つきで触ると余計に危ないですぅ」
「…お内裏様がせんどーくんで、お雛様があたし…。三人官女が美穂、まゆ、夕香…」
「こら玲子っ!あんた黙々と作業してると思ったら、なにを勝手な妄想してんのよっ!!」
「だったらボクだってお雛様やりたいよーっ!」
「ここはひとつジャンケンで順番を決めるというのはいかがでしょう?」
「…なんや、みんな和樹にベタ惚れかいな。競争率高そうやから、ウチは辞退させてもらうわ」
「にゅっふっふ☆由宇ちゃんがお内裏様、詠美ちゃんがお雛様ならどうかな〜?」
「なっ…!!」
「ああ〜!猪名川さん、なに赤くなってんのよーっ!猪名川さんももしかして…ばーいー?」
「ちゃ、ちゃうわアホッ!」
「じゃあ純粋にユリなんですか?そうなんですかっ?」
「ボク、猪名川さんって意外と受けなんじゃなかいかって思うんだけど!いつもからかってる
のは愛情の裏返しで、実は詠美ちゃんに奪われるのを密かに待ち焦がれてるの!」
「ああ、そのシチュは萌えますねえ…!どうなんですか、猪名川さんっ…」
「や、やめ、雛人形準備せな…こ、こら四人とも…まだ明るいやんか…あ、うっ…」