葉鍵板最萌トーナメントブロック準決勝Round124!!

第三章◇あゆ、熊になる（１／４）◇
うぐぅ…今度は何になったんだろう…？
ここは…岩山？　でも向こうに人だかりが見える…。
その手前には柵があった。
あかり「浩之ちゃーん、見て見てー。くまだよ、くまー」
熊…？　今度は熊？？
浩之「そりゃそうだろう。くま見に動物園に来たんだから」
志保「ハァ…どうしてこの歳にもなって休日の昼下がりにくま見て和まなきゃなんないわけ？」
浩之「だったらついてくるなよ…」
志保「仕方ないでしょ！　この後、三人でコンサートに行くんだから！！」
志保「ああ〜っ、もうっ！　せっかくのお出かけ着が動物くさくなっちゃう〜〜〜っ！」
浩之「家出るのが早過ぎたな。こっちで暇つぶしする羽目になるとは…」
志保「そうよっ！　アンタのせいよっ！！」
浩之「くだらん志保ちゃん情報集めるくらいなら、コンサート会場までの所要時間を把握しとけっ！」
あかり「くまだよ〜、かわいいよ〜〜」
…えらく賑やかな三人組…。

さっきから気になっていることがある。
あのくま好きの子が持ってるものって…たい焼き？
うぐぅ、あの子の前で芸を見せたら分けてくれるかな？
どんな芸を披露しようかな。
…それ以前に、どうやってたい焼きを要求したらいいんだろ…。
言葉は通じないだろうし。
ボクの悩みは深くて複雑だよ…。

◇あゆ、熊になる（２／４）◇
取りあえず…。
浩之「…前転したな」
志保「お尻を振ってるわね」
あかり「手も振ってるよー」
浩之「…くるくる回転し始めたな」
志保「しっかりカメラ目線でね」
あかり「投げキッスもしてるよー」
浩之「ダウンしたな…」
志保「見てたこっちまで吐き気が…」
あかり「やっぱりくま最高…」

うぐぅ…ボクの気持ちは通じなかったみたい。
骨折り損のくたびれ儲け…。
とぼとぼ…。
あかり「あっ！　行かないでっ！！」
浩之「おい、そんなに手を振ったら袋の――あっ」
志保「あちゃー。言ったそばから…」
ボクは見逃さなかった。
赤い髪の毛の女の子がたい焼きをばら撒き落とす瞬間を。
うぐぅダーッシュ！
あかり「あっ！　すごい勢いでくまが走ってきたよー」
志保「キャーッ！　後輩の女の子とエッチな雰囲気で格闘技やってるヒロ、なんとかしなさいよーっ！！」
浩之「できるかっ！　じゃないっ、『エッチな雰囲気』ってなんだっ！！」
あかり「くまー」
浩之「とりあえず狙われてるらしいあかりを置いて逃げるぞっ！」
志保「志保ちゃんはおいしくないわよーっ！！」
あかり「えっ？　浩之ちゃん、志保、どうして逃げ――」

// 秋子さんの仕事場訪問ファイナル（仕事が…）

「みなさんこんにちは、リポーターの相沢祐一です。
前回、秋子さんと一緒にナイト２０００に乗ったのが運の尽きでした。
ちなみにイジェクトレフトとは、運転席（左ハンドル）上部が開いて脱出したり
高い場所へ行ったりするための機能です。助席にはありません。で、今は病院で入院中です。全治２週間…うぐぅ」
「あら、それは災難でしたね、祐一さん」
「…あ、秋子さん！？」
「他に似たような人の心当たりでもあるんですか？」
「いえ、全く…。秋子さんほど綺麗で賢くて優しい女性は聞いたこともないですよ」
「ふふ…お世辞を言っても何も出ませんよ？」
「ところで、秋子さん、看護婦さんもやってるんですか？」
「違いますよ、看護師です」
「かんごし？」
「男女差別問題から発展して、今度看護士看護婦という言い方が統一されて 看護師 になるそうです。
ですから看護婦さんという言い方はもうなくなってしまうかもしれませんよ？」
「そ、そんな…。萌え要素の１つである 看護婦さん がなくなってしまったら嫌ですよ。看護師ぃ？ 全然萌えません…」
「ですから、今のうちに記念にやってみようと思ったんですよ（にこっ）」
「ああ…秋子さんが天使に見える…。見ているだけで癒される気が…。白衣の天使万歳…。
しかし、看護婦という言葉をなくすだなんて…なんて愚かな。お偉いさんにはそれがわからんのですね」
「祐一さんも、今のうちに看護婦を堪能しておいたほうがいいかもしれませんよ…ふふふ。
そろそろ夕食の時間ですね。祐一さんは動けないんですから、あーん して下さいね」
「い、いいんですか？ そんな全国の秋子さんファンを敵に回しそうな幸せなシチュエーションを…」
「はい、あーん」
「あーん……んぐっ！？」
「どうですか？ おいしいですか？」
「は、はひほはん、ほへは…」
「わたしの白身魚の特製ジャムソース和えです。入場のときに言ってた料理ですよ（にこっ）」
- - -
結局当番組でも秋子さんの真の仕事を特定することはできなかった。秋子さんの美しさに栄光あれ！！

◇あゆ、熊になる（３／４）◇
やったっ！　間一髪地面に落ちる前にキャッチできそうだよっ！！
「ウグー！」

バキィッ！
うぐぅっ！？
ドサッ。
……。

あかり「えっ？　えっ？」
舞「…間に合ってよかった」
…この声は…。
ボクはうっすらと目を開けた。
剣を持った女の人がボクを見下ろしていた。
あかり「え…？　このくま、私を狙ってたの…？」
舞「…危なかった」
彼女は三人のほうを向いた。
志保「ちょっとーっ！　アンタ、その剣は何ッ！？」
浩之「おい、一応あかりを助けてもらったんだし…」
志保「何も殺すこたぁないでしょっ、殺すこたぁっ！！」
うぐぅ、死んでない…。
舞「大丈夫。峰打ち…」
浩之「両刃の剣で峰打ちも何もないだろ…」
志保「大体この人、昔、剣の切れ味うんぬんってところで『…ダメージを与える意味ではあまり変わらない』とか言ってたわよ！　腕力でダメージ与えてるのよ！！」
あかり「志保、それどこからの情報…？」
舞「……？」
死ななかったのが不思議だよ…。

◇あゆ、熊になる（４／４）◇
舞「………」
落ちていたたい焼きを拾い、ボクの前に置く。
舞「…お食べ」
…ぱく。
はぐ、はぐ…。
うぐぅ、体中が痛くてあまり味を感じない…。
舞「お腹空いてても、人を襲っちゃ駄目」
ごしごし。
ボクの頭をこすった。
ちなみに人を襲った覚えは全くない。
今までも、そして未来永劫。
「ウグー…」
ボクはさりげなくその無念を訴える。
でもやっぱり言葉は喋れなくて…。
舞「…いい子」
しゅたっ。
その女の人は、空を飛ぶように去っていった。
…多分、誤解したまま。

それにしても、あの人の正体は一体…？
このシリーズのオチ担当なのかな？

浩之「なんだったんだ、あれは…」
志保「さすがは『…私は魔物を討つ者だから・川澄舞』ね…」
あかり「志保、その情報どこから…」
（完）