葉鍵板最萌トーナメントブロック準決勝Round122!!
仰げば尊しを歌い、蛍の光に送られ、教室で卒業証書と記念品をもらって。
私の三年間の最後の日は、公式にはあっけなく終わる。
校舎を出て振り向く。いつもと変わらない校舎だけど、最後だと思うとちょっといとおしく思えた。
昇降口の外で、彼が出てくるのを待つ。
彼のコトが気になりだしたのは、いつからだろう。
たしか、私たちがつまらないことであのコをいじめだして、それを彼が叱ってくれた時だろうか。
あの時は、怖いヒトだとしか思わなかったのに、何故だか気になった。
気になって、彼のコトを目で追いかけるうちに、彼の優しさに気がついた。
ぶっきらぼうで、外見怖そうなんだけど、困っているヒトには優しい。
そんな彼を見ていると、ドキドキするようになった。
でも、それが恋だと気付いた時には遅かった。
彼の隣には、あのコがいたから。
彼を見てた私は知ってる。あのコと彼との間に、私の割り込む余地などないことを。
それでも、私の恋心は止まらなかったけど。
二年。
報われないって分かって二年、私も諦めの悪い人間だと思う。
だけど、いや、だから、最後くらい、我がままになってもいいかなんて思う。
っと、来た。
783 :
篁:02/02/07 04:24 ID:142jt8PG
あまとうさん由起子さんにいったか。早まったか?
しかし着実に画力があがっているのは気のせいか。
トーナメント終わる頃には・・
784 :
780:02/02/07 04:25 ID:a3n4AxJI
>>781 ゴ、ゴメソ
切腹してくる(スレ違い@戦国板
「藤田くん」
「おう、吉井。卒業おめでと」
優しい顔で笑う彼。
その顔を誰にでも向けてしまうのがいたいけな少女を困らせてるって、分かってるのかな。
「あなたも卒業生でしょ……卒業おめでとう、藤田くん」
「おう。そういや他の二人は?」
「なんか、私一山いくらみたいな言われ方ね? 一人でいることもあるよ」
ぷうっと頬を膨らせて、抗議してみる。
「あ、わりい……」
「気にしてないよ。岡田と松本は先いってる」
「ふーん、じゃあ、吉井は何か用が?」
「うん」
「そっか。卒業式の日にまで大変だな」
ああ、やっぱり彼分かってないか。まあ仕方ないのかもしれないけど。
「用があるのは藤田くん、あなたに」
「俺?」
「うん。あのね……あなたの制服の第二ボタン、ちょうだい」
精一杯の勇気。振り絞って、お願い。
「第二ボタンねえ……いいけど、そんなモンでよければ」
藤田くんは、軽く返す。
……待ってよ。私の告白、そんな軽く返すかな、あなたは?
「第二ボタンって意味、分かってる?」
「え……あ、もしかして……」
ニブチン。
まったく、ここまでニブチンだったのよね、彼は。
……でも、彼のそんなところにも私は、惹かれてるんだけど。
制服からぷちっと、第二ボタンを外す。
「ありがと、宝物にするね」
「……ああ」
ちょっと顔を赤くして答える。そういうところは可愛いのよね。
「あのさ、」
第二ボタンをぎゅっと握り締め、言葉をつなぐ。
「私、あなたのことが、好きだったよ。知ってた?」
「……いや」
ま、そうでしょうね。きっとあなたは私の気持ちに、気付きやしなかった。
「ちゃんと言えなかったこと、すごく後悔してたんだよ。知ってた?」
そう。すごく後悔してる。
このまま後悔しっぱなしにしないため、私は今日勇気を出したんだけど。
「誰にも渡したくないって、今でも思ってる。知ってた?」
もちろん、保科さんにも。
できることなら渡したくない。無理なのは分かりきってるけど。
「じゃあ、さよなら。もう逢えないけど。…これは知ってたでしょ?」
彼はあのコと一緒に、関西の大学に行く。
多分もう、私は彼と逢うことはないだろう。
いや、だからこそ、しがらみも捨てて、何もかも投げ捨てて、告白をできるんだけど。
答えは求めない。
二年間の私の思いの締めくくりとして、私は、
あなたが好きだったことと、別れとを告げる。
そのまま回れ右をして、校門に駆け出していく。
校門で、一度振り返る。藤田くんはまだ、さっきのところに居る。
私は小さく手を振って、
「ばいばい」
って告げた。
ばいばい、私の恋心。
次は、もっともっと素敵な恋をしてやるんだから。