葉鍵ファンタジーV

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197洛葉。:02/03/17 18:17 ID:AFVacQ8H
>>187->>192の即リレーとなります。
さいかと栞と住井に関しては忘却の彼方。
198一方その頃:02/03/17 23:40 ID:jU5TYowE
「マスター、これからどないしますの?個人的にはこのまま逃げた方がいいと思いますぜ」
「それはできんな。まだ奴らには利用価値がある」
「あらあら、さいですか」
 物陰から話し声が聞こえてくる。
 一人の男が肩に乗せたカラスに話しかけているというある意味危険な光景である。
「でもどうするんでっか?マスターと私だけしか居ませんよ」
 男の肩に乗ったカラスが人間の言葉で話しかけている。
「一つ策がある。これならお前一人でも出来るだろう」
「一人って…、もしかして私一人っすか?」
 カラスが目を丸くして聞き返す。
「当然だ。こっちもやらなければならないことがあるからな」
「ヘイヘイ、分かりましたよ」
(相変わらず人使いの荒いお人だ)
 胸の中で毒づく。
 そうして男がカラスにある事を話し始めた。
199一方その頃:02/03/17 23:41 ID:jU5TYowE
(三行空け)
「……と言うわけだ。分かったか?」
「…えーと、マスター。これマジでやるんですか?」
 カラスが恐る恐ると言った口調で質問する。
「勿論だ」
 男が即答する。
「そんな無理っすよ!無理!大体ほとんど私一人が働いてマスターほとんど働いて無いじゃないですか!」
「いいからやれ」
「マスター。この際だから言わせてもらいますけどね。マスターは私に対する感謝が足りないんじゃないですか?」
 カラスが突然男に対して文句を言い始める。
「いっつもマスターの目の代わりしてあげてるんですからもうちょっと私のこと労って下さいよ」
「………」
 段々と興奮してきたのかカラスの声が大きくなってくる。
「もう、そんなことだからぴろ君とかみんな逃げちゃったんでしょ」
「……」
「そりゃマスターが私達を作ったのは確かですけどもうちょっとこう優しさというか何というか…」
「…今夜は焼き鳥にするか」
 更にヒートアップしてきたカラスの演説に男が一言ボソリと呟いた。
「へ?」
「カラスの焼き鳥が旨いかどうかは分からんがな」
「や、やだなぁ。じ、冗談っすよ、冗談。マスターに仕えられて感謝してますって」
「冗談だ、本気にするな」
 男があっさりとカラスに言う。
(目がマジだったんですけど……)
「時間がないな。そら、結構は30分後だ。それまでに準備を済ませておけ」
 ブツクサ言っているそらに男が言い放つ。
「ヘーイ、了解しました」
 そらはそう言うと男の肩から空へと飛んでいった。
200一方その頃:02/03/17 23:41 ID:jU5TYowE
(二行空け)
「きよみ…、待っていろよ」
 そらが飛び立った後、犬飼はそう呟くと目的地へと向かった。

【犬飼俊伐 人質救出作戦開始】
201 ”月” ―黄金色―:02/03/19 23:59 ID:ormJ919/

 巴間晴香。
 薬学の知識も豊富な上、白魔術にも長けている、騎士。
 テンプルナイト――”パラディン”の名を冠するモノ。
 FARGO宗団内においてもその信用は高い。

 彼女には兄がいる。
 彼女の親友が母を追ってFARGO宗団に潜入したように。
 彼女も又、己の兄を追い駆けてFARGO宗団に潜入した。

 そこでどんな出来事が起きたかは、彼女と彼女の仲間達しか知らない。

 結果、彼女は未だに兄の行方を知らぬままだ。
 そして、彼女の親友が未だ母を捜しているように。
 彼女も、未だ己の兄を捜している。
 唯、彼女は彼女の親友よりも直情的で――もちろん、立場の違いも多分にあるのだが――FARGO宗団の本部で情報を待っているよりも彼女は外回りを望んだ。

 彼女の兄は一種の天才だった。
 そして、彼女の兄がFARGO宗団の”裏の”勢力に何らかの形で関わっていた事も、彼女の兄の記録が完璧に抹消されている事から、推測出来ていた。きっと、行われていた研究にも関わっていたに違いない。

 そして、三年前。これは彼女の与り知らぬ事なのだが。奇しくも、FARGO宗団の”裏の”勢力が激しく揺れたのと同時期に、とある地方の領主が変わった。
 その領主もいわゆる天才と呼ばれる男だった、が。その代わり、いや、それ故に、か。

――頭のイカレ具合も天才的だった。
202 ”月” ―黄金色―:02/03/20 00:05 ID:PLtSyxbW

 彼女は、今。レフキーから一山越えた所に在ると云われる、『秘宝塔』へと向かっていた。
 FARGO宗団の実権を握っていると言って差し支えのない、女の指令で、だ。
 彼女はレフキーに存在する盗賊ギルドとはあまり、繋がり無い。
 そういう外部との交渉のそのほとんどが鹿沼葉子に任されている所為――かどうかは判らないが、彼女はギルドの親玉と会う方法すら知らされてはいない。

 黒衣のローブを纏った女がレフキーに着く頃には彼女は既にレフキーにて仮眠を取っていた。彼女の足なら、夜中にレフキーを発てば次の日の昼頃には秘宝塔の周辺に着いている頃だろう。
 そして、彼女はその山道を進んでいる。既に夜のとばりは落ちている。
 暗い、夜道。
 唯一の光源は空に真円を描き、強く輝く――。

「よぉ、姐ちゃん。わりぃけどよ、荷物置いていってくんねぇかな?」
 暗がりでよく見えないが、彼女の行く手を遮る様に、薄汚れた格好をした、定番のガラの悪い男が五人並んでいた。
「うひょぉ! こりゃぁ……随分と上玉だぜぇ」
「げぇっへっへ」
「キツ目で……イイ!!」
 男達はこんな良い条件で獲物に出会えた事に興奮し、笑い合っている。
 
 彼女は男達には意にも介さずそのまま衝き動かされる様――衝動的――に進んでいく。
 その口元は微かに、吊り上がっていた。

 そんな彼女の態度を見て、その男達は獲物を逃がすまいと取り囲んだ。
 彼女は少女に薬を渡す為、パッと見で、目立つ程の武装をしていた訳ではなかった。青いビー玉もまだ幾つか残っているが、そんなモノを見せられたとしても、怯える人間など、いまい。
 一方、男達は余裕だった。数日前に行方知れずになった仲間の事もあり、不測の事態に備え三人から五人に増やして活動していた彼等。数が増えただけで、虚勢が張れる単細胞な彼等の事だ。
 まぁ、だから彼女がカモとして見られたとしても、仕方が無い事。


――そう。これから何が起きても仕方が無い事。
203 ”月” ―黄金色―:02/03/20 00:05 ID:PLtSyxbW

「……えっ?」
 別段、派手な音はしなかった。近寄ってきた彼女を、押さえようとした腕を見詰めて、その男の顔は驚きと不可思議で染まった。
――おそらくは、視覚からの情報量が彼の脳の処理速度を上回っている所為だろう。まぁ、それも一瞬だ。
 遅れて、悲鳴を上げた。
「ヒィィィイイイッッッ!!
「五月蝿い……」
 苛立ったような口調。そして、男の声が止まった。
 男の心の臓に刃が食い込んだ。いや、食い込み貫き刃が背中から飛び出した。


「……こっ! このヤロウ!!」
「ぶっ殺してやる!!」
 彼女に近寄った男の腕が一閃のアト、吹っ飛び、腕を吹っ飛ばされた男が手をばたつかせ悲鳴を上げながら彼女に絶命させられるまでの間、傍観者の様に立ち竦んでいた四人の男達が一斉に山刀を抜き放ち、彼女に襲い掛かった。

 男達が気付かぬ速度で抜き身をさらした刀身。ソレに突き刺さっている死体を彼女は蹴飛ばした。
 その死体にぶつかりそうになって二人が止まる。そして、彼女は左右から迫ってくる残りの二人の内の右の男の方へ、一歩踏み込み、腕を伸ばして首の動脈を突き切り、軸足をそのまま回転させ、振り向き様に左から迫ってきていた男の両腕を切断した。
 振り上げられていた山刀が手から落ちた。
 死体に気を取られていた男の内、一人が短い悲鳴を上げるが、もう一人は怒鳴りながら彼女に斬りかかる。彼女よりも二回りもデカイ体躯の男を彼女は悠然と見上げる。

――その瞳はつまらないモノを見下す目。

 男の山刀が振り下ろされた。
 けれでも、彼女は既に男の脇を一息で駆け抜けており、すれ違い様に胴を薙いでいた。
 最後に残った男は、上半身を滑らしながら崩れ落ちる仲間や、血を撒き散らしながらのた打ち回る仲間の姿など捉えていなかった。
 逃げる事も、襲い掛かる事も、悲鳴を上げる事さえも出来ずに、その男は目の前の――爛とした天上の明かりしか届かぬこの山道で幽鬼の様に佇む――その、二つの目に、釘付けだった。


「無意味に生き続ける生命……」
204 ”月” ―黄金色―:02/03/20 00:08 ID:PLtSyxbW

 男は彼女が何を言ったのかは理解出来なかったが、彼女が何かを言ったのは理解出来ていた。
――そして、僅かに戻った理性が、このままでは死ぬ、と。そんな、馬鹿でも判るような事を男に告げた。
 男は限界まで伸ばされたゴムの様に、弾けた。振り返り、彼女に背を向け、走ろうとして――転んだ。
 彼女は無様に転がった男を見下ろしていた。
 男はうつ伏せの身体を両の腕で仰向けにして彼女を見上げた。
 足は上手く動かない。――何故なら両足のアキレス腱をざっくりと切られて、動かせる訳がないからだ。

 男は彼女を見上げながら、震える腕だけで後退した。
 それでも彼女から目が逸らせなかった。
 逆行――見上げる先の真円――の所為で、彼女の表情はワカラナイ。ただ、彼女の両の瞳だけが――
「ひっ! ひぃぁ……っ! みっ、三つ目! 三つ目のっ、バッ…化け物っっ!!」
 ――その逆行の中で、欄と、輝いていた。

 そしてそれが男が最後に見た光景になった。


「……化け物とはシツレイね」
 彼女は自家製の薬を飲み干したアトに、呟いた。
 彼女に、不意に、けれども周期的に訪れる。
 衝動。
 最近はその周期が段々短くなってきている気がしていた。もちろん。それは杞憂に過ぎ無いハズだと、彼女は思っている。
 彼女が飲んだのは、彼女用に、特別に調合した精神安定剤みたいなモノだ。例えそれが気休めに過ぎ無いとしても、無いよりはマシなのだ。

 そして彼女は踵を返して進もうとして――視界に入った輝く物体に思わず、目を奪われた。
「…………気付かなかった」
 盲点だ。と言わんばかりの語気。そして彼女は、ワラッタ。

「今夜が、満月だったなんてね……」
205名無しさんだよもん:02/03/20 00:16 ID:PLtSyxbW
【巴間晴香/秘宝塔までもう少し】

お話としては「下ごしらえ」の続きです。

いやぁ……こういう話なら数時間で書けるんですがね(爆
時間軸の矛盾はないと思いますが、まぁ……
変なところがあったら指摘お願いします。
206名無しさんだよもん:02/03/20 00:24 ID:PLtSyxbW
ああ、すいません訂正です。

>204
>逆行――見上げる先の真円――の所為で


逆光――見上げる先の真円――の所為で

に、編集する時に、訂正お願いします……
207名無しさんだよもん:02/03/20 00:59 ID:PLtSyxbW
ああ、

――なんて、無様。

すいませんもう一個、訂正です。

>204
> ――その逆行の中で、欄と、輝いていた。


――その逆光の中で、爛と、輝いていた。

に、編集する時に、訂正お願いします……

誰かさんに十八分割されて死んできます……
208名無しさんだよもん:02/03/20 10:22 ID:EmrbxRd1
一応メンテ
209狡猾なる闇:02/03/20 23:46 ID:t/WlSifU

「……ルミラ、どういう事だ?」
 事態が飲み込めない浩之は、おずおずとルミラに尋ねる。
 ちら、と一瞬浩之の方に視線を送ってから、ルミラは怯えた表情の澪に目を戻した。

「私たち魔族が、基本的に中立だって事は、話したわよね。
特定の国の政治に関わる事なく、人間同士の争いに荷担する事も無い。
私達魔族には、個人を対象とする場合を除き、人間への国家レベルでの干渉を禁じる条約が存在するの。
早い話、国を牛耳るとか、世界征服を企むとか、そういった事を禁止してるのよ。
人間の保護、魔界の秩序維持とか、理由は色々あるけど、人間界と魔界の平和維持の為に必要なルールよ。
……けれど、中には条約を無視し、国家を意のままに操ろうとする、魔族の面汚しも存在するの」

「それが、あんな小さな女の子だって言うのか!?」
 目を丸くして、澪を見つめる浩之。だが、それはあまりに信じがたい話だった。
 当の少女にしがみつかれている佐祐理も、困惑した顔でルミラを澪を見比べる。
「確かに、小さな女の子の姿をしてるけど……それは単に、その子の身体に憑依しているだけに過ぎないわ」
「そんな………」
 佐祐理には、怯えながらがたがた震えている澪が、演技をしているとは思えなかった。
「ルミラさん……あの、何かの間違いなのでは……」
 金色の瞳のルミラに、冷めた目で見詰められ、佐祐理は言葉を途切れさせる。
「あなたがそう言いたくなるのはわかるけど、この臭い、間違うはずも無い……
……“ラルヴァ”、ガディムを長とし、帝国に巣食う魔族の裏切り者よ。佐祐理、その子を放しなさい」
 ぱちっ、とルミラの手の中に、蒼い炎が浮かび上がる。
「“ラルヴァ”、さっさと正体を現したらどう?
これだけバレバレでまだお芝居を続けるなんて、あなたには恥という概念が存在しないのかしら?」
210狡猾なる闇:02/03/20 23:47 ID:t/WlSifU

 だが、ルミラの挑発にも、澪はさらに怯えながら、佐祐理にしがみ付くばかりだ。
 内心ルミラは舌打ちしていた。
(こいつ……ただの三下じゃない……挑発に乗って来ないなんて、随分いい度胸してるじゃないの)
 状況は、圧倒的にルミラに不利だった。
 ラルヴァがいつまでも澪の振りを続ける為に、浩之まで疑念の目を向け始めている。
(帝国兵が来れば、まずい事になる……こうなったら、強引にその正体を暴いてやるわ)

 突如、ルミラが弾かれたように走り出した。
 風のようなその速度に、誰もが反応出来ない。
 ルミラは流れるような動作で澪の首を掴むと、軽々と佐祐理から引き剥がし、放り投げた。
「!!」
 宙を舞い、頭から地面に落ちそうになった瞬間、澪は身体を捻り、身軽に受身を取った。
「ラルヴァ、その娘の身体を解放なさい……!」
 着地点を狙い、逃れようの無いタイミングでルミラは蒼い炎を澪に投げつける。
 狙い違わず、澪の身体が炎に包まれた。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「る、ルミラっ!?」
「安心しなさい、浩之、佐祐理。あれは精神の炎。相手の魂だけを焼き、肉体には傷一つ付けない……っ!?」
 次の瞬間、澪の足元に六紡星が描かれたと思うと、ルミラの炎は跡形もなく消し飛んでいた。
「………誰っ!?」
 澪がその場に倒れ込むのと同時に、ルミラは術を打ち消した相手に、素早く視線を向ける。
「……澪を傷付ける者は、例え誰であろうとも赦す訳にはいきません」
「………」
 新たなる乱入者は、金色の編んだ髪をなびかせ、ゆっくりと姿を現した。
211狡猾なる闇:02/03/20 23:50 ID:t/WlSifU

「茜さん……」
 倒れている澪に駆け寄った佐祐理は、彼女の顔を見て、驚いた声を上げた。
 そんな彼女を一瞥し、ルミラは鋭い視線を茜に投げかける。
「……あなた、どうやらその娘の知り合いらしいけど、その子には今ラルヴァという魔物が……」
「知っています」
 茜ははっきりした声でルミラを遮ると、明義が背負っている少女に目を向けた。
「事情の程は、この帝国将軍の方からお聞きしました。はっきり言って、あなたよりも詳しいはずです」
「んーんー!」
 そこには、猿轡をされ、縄でぐるぐる巻きにされた吉井がいた。
 ここまで吉井を背負ってきたらしい明義は、顔中汗だらけで、ぐったりしている。
 ルミラは目を細め、鋭く茜を睨み付けた。
「その上で庇うというの?」
「彼女の話によれば、ラルヴァは澪が眠っている間に、融合を行ったそうです。
前後の状況から考えれば、澪の魂は人質に取られていると見て、間違いないでしょう。
あのような乱暴なやり方をしても、ラルヴァが澪の精神を盾にしてしまえば、ラルヴァ本体は無傷のままです」
「………」
 それでも、澪の精神を破壊してしまえば、ラルヴァにもダメージが通る。
 一瞬そう思ったルミラだったが、さすがにそれを口には出さなかった。
「なら、どうするつもり?」
 ぐったりしている澪に、舞と浩之が近寄った。浩之は心配そうな表情で、舞は唇を尖らせて、澪と佐祐理を見ている。
「きちんとした手順を踏んだ儀式を行えば、憑依した魔族を、犠牲者を危険に晒す事なく堕とす事ができます。
ですから、その子を私に預けて……あっ!?」

 次の瞬間、気絶していたはずの澪の手が動き、舞の胸元の“秘宝”を掴み取っていた。
212狡猾なる闇:02/03/20 23:52 ID:t/WlSifU

『………っ!』
 とっさに動こうとした茜とルミラだったが、澪=ラルヴァの視線に晒されて、その場に凍りついた。

 澪=ラルヴァの細い指先が、正確に佐祐理の頚動脈に当てられている。

「あ……」
「動くな、術士、同朋。僅かでも動けば、この娘の頚動脈を引き千切る」
 澪=ラルヴァは満面の笑みを浮かべたまま、茜とルミラ、それに舞と浩之に言い放った。
 その表情は、今までの怯えた少女のものではない……ラルヴァの本性そのままの、邪悪な代物だった。
「…いかにそこの白魔術師が優秀とはいえ、千切られた頚動脈を修復する事は出来まい?
例え出来たとしても、数刻でも脳に血が送られなければ、重い脳障害が残る事になるだろうな」
 手の中の“秘宝”を転がし、澪=ラルヴァはクスクスと笑う。
「……怯えた少女の次は、死んだ振り? 随分と演技が上手な事……裏切り者らしい姑息な手ね」
「ふふ、そうでなければ、人の間ではやっていけぬよ、同朋」
 挑発を受け流し、澪=ラルヴァは涼しい顔でうそぶく。反対に、ルミラの眉が吊りあがった。
「下賎なラルヴァごときが、私の事を同朋と呼ぶな……!」
「これは失礼した。ルミラ・ディ・デュラル……! デュラルの当主殿。その名を思い出した時は、流石に胆を冷やしたぞ」
 一歩も動けない彼女らの前で、澪=ラルヴァはゆっくりと立ちあがる。
「そうそう、この身体だが、随分と使い勝手がよいので、もうしばらく預からせてもらうぞ」
「なっ……!」
 思わず澪に駆け寄ろうとする茜の前で、澪=ラルヴァの足元から、黒い影が吹き出した。
 影は澪=ラルヴァを飲み込み、次の瞬間には、その身体ごと消え去っていた。
「そんな………澪……」
 澪が消えた場所に膝をつき、茜は呆然と呟く。そんな茜に、誰も掛ける言葉が無かった。
213長瀬なんだよもん:02/03/20 23:54 ID:t/WlSifU

【浩之、佐祐理、舞、ルミラ、茜&明義&吉井と遭遇】
【吉井、簀巻き状態】
【舞、秘宝をラルヴァに奪われる】
【澪=ラルヴァ、秘宝を手に姿を消す。澪の身体を乗っ取ったまま】


吉井の受難その2。
茜の行く先、澪の肉体の行方は、次の方にお任せいたします。
214名無しさんだよもん:02/03/21 12:50 ID:8XTA+s92
メンテしておきます
215名無しさんだよもん:02/03/21 15:21 ID:vmD5pyBg
どうせならageメンテ
216名無しさんだよもん:02/03/23 00:27 ID:nxf6eWJK
もう少しメンテ。
217怪盗現る:02/03/23 23:36 ID:P2PFLHnt

「お茶、ご馳走様でした」
「構わないよ。長瀬さんが帰ってきたら、あんたが来た事を伝えておくから」
結局、目的の長瀬源一郎には会えずじまいで、久瀬は彼の家を後にしていた。
「まぁ、あまり期待はしていなかったけど、居ないとなるとちょっと困ったかな」
通りを歩きながら、久瀬はそうひとりごちる。
実のところ、久瀬が源一郎に会いに来たのは、彼のネットワークを当てにしていたからなのだ。
『ネットワーク』……このレフキー、いや、世界中から情報が集まる、最も高度な情報網。

通称『長瀬ネットワーク』とも呼ばれるこの情報網は、世界中に存在する何百、何千とも言われる
“長瀬”某によって構成されるネットワークなのである。
特に秀でた異能の力を持つとされる、長瀬一族。
そんな彼ら一人一人の情報が束ねられ、この巨大なネットワークが成り立っているのだ。
そしてそれは、長瀬一族と限られた人間にだけ、アクセスを許されていた。

久瀬の前の団長である長瀬源一郎は、そのネットワークの管理者をやっていたのだ。
最近、代替わりしたらしいが、やはり源一郎に勝る管理能力者はそういない。
新管理者は源一郎の育ての娘で、久瀬も顔は知っていたが、苦手な部類に入る相手だった。
なんでも長瀬の遠い親戚だとかで、その情報処理能力は源一郎も一目置くらしいが。
「えっと、何て名前だったかな……長……長山…じゃない。長がついたのは確かだ……確か……」
「うぐぅ、どいてどいて〜〜〜っ!!」
考え事をしながら歩いていた久瀬は、いきなり真横から突き飛ばされて、派手に地面に突っ伏す。
「がほっ!?」
「うぐぅ!?」
思いのほか少女の体重は軽かったが、膝がまともに鳩尾にめり込んだせいで、久瀬は呼吸困難に陥いっていた。
218怪盗現る:02/03/23 23:36 ID:P2PFLHnt

「うぐぅ、ひどいよ、どいてって言ったのに……」
「がほがほがほ……い、いきなり人の鳩尾に蹴り入れておいて、その言い草か……」
鳩尾に手を当てながら、久瀬はよたよたと立ち上がる。
少女の方は、あれほどの衝突にもかかわらず、案外けろりとした顔をしていた。
「貴様、待ちやがれ〜〜〜〜〜っ!」
「うぐぅっ!?」
だがそこに、いきなりの罵声があびせられ、少女はぎくりと身体を強張らせる。
見れば、後ろから皮鎧を身につけた、自警団らしき若者たちが、大勢追いかけてきていた。
「説明は後っ、とにかく逃げるよっ」
「その前に、この私の手を放してから、一人で逃げろ」
さすが冷静でならした久瀬、この状況にも、平然と少女が握った己の手を指摘する。
「うぐぅっ!?」
「むっ!?」
だが、いきなり飛んで来たネットに、さすがの久瀬も顔色を変えた。
間一髪かわしたものの、今度はボーラまでが投げつけられて、久瀬は慌ててあゆと逃げ出す。
「何故だっ、何故この私まで狙われてるんだ! お前、一体何をやったんだ!?」
「うぐぅ、知らないよぉ……昨日食い逃げしたけど、今日はまだだし……」
「………」
久瀬の灰色の脳細胞が、凄まじい速度で回転する。
食い逃げ。食い逃げと言ったか。何と言う事だ、食い逃げなどをするコソ泥と知り合ってしまうとは。
だが、たかが食い逃げでネットを持った自警団が追いかけてくるとは思えん……
これはひょっとすると、まだ何かあるのかもしれない。関わり合いになりたくは無い……が。
今自警団に捕まれば、最悪レフキーでの興業が出来なくなるかもしれん。ここは逃げた方が利口か。

そう考える事一秒、久瀬はあゆと共に全速力で走っていた。
219怪盗現る:02/03/23 23:47 ID:P2PFLHnt

通りを駆け抜け、裏道を走り、人様の軒先を潜って、ようやく二人は追っ手を撒いていた。
一軒の宿の裏で、二人はぜいぜいと呼吸を整える。
「……はぁ、はぁ……酷い目にあったよ…」
「それはこちらの台詞だ。で、うぐぅ星人よ」
「うぐぅっ!? 何それ!?」
いきなりの変な呼ばれ方に、あゆの目がまん丸になる。
「うぐぅと鳴くから、うぐぅ星人だと思ったのだが」
「違うよっ、ボクは月宮あゆって名前があるんだよっ!」
「そうか。まあ二度と会う事も無いだろうが、今後私に迷惑をかけるような事はしないでくれ」
ほとんど表情の変わらない久瀬に、あゆの顔に怯えの色が浮かぶ。
「うぐぅ……」

「ここにいたのか、月宮あゆ」
とそこに、久瀬と似たような無表情で、岩切が顔を覗かせた。
「い、岩切さん……」
「いきなり逃げ出すから、どうしたかと思ったぞ、月宮」
「うぐぅ、だっていきなり、怖い人たちに追いかけられたから……」
「……反射的に逃げたと、そういう事か……」
珍しく苛立ちを露にしながら、岩切は首を振る。
「昨日折原が言っていたぞ……近頃、ギルドに属さない盗賊が、この辺りを荒らし回ってると」
「へ……そ、そんなっ、ボク知らないよっ! 上納金を誤魔化したりもしてないよっ」
「違うなら構わないが……はぐれ者にあまり無茶をされると、ギルドも黙っていられないからな…」
岩切は嘆息しながら、あゆの腕を掴んだ。
「さて、引き続き、篠塚弥生探しを手伝ってもらうぞ……情報が足りないのだ」
「うぐっ……」
220怪盗現る:02/03/23 23:50 ID:P2PFLHnt

「あなた、ひょっとして盗賊ギルドと繋がりが?」
その時、今までずっと黙ったままだった久瀬が、おもむろに岩切に尋ねた
「そうだが……誰だか知らないが、あまり詮索しない方が身の為だぞ」
「いや、取引をしたいだけだ」
岩切の脅しを無視し、久瀬は淡々と言う。
「実は私は、旅芸人一座の団長などしているのだ。そこで、少しばかりギルドの顔役に繋ぎを取っておきたいのだ。
この街で興業を成功させる為には、盗賊ギルドの協力あった方が便利だからな」
「………成程、旅芸人か……で、取引というのは?」
「ああ。それなんだが……」

「あっちに隠れたぞ!!」
突然の鋭い声と共に、人相の悪い人間たちが、ばらばらと岩切達の前に現れた。
「あっ、月宮! やっぱりお前か!!」
「てめぇ、ギルドの掟を忘れたとは言わせねーぞ!」
「う、うぐぅ……!?」
いかにも悪人面のチンピラたちにすごまれ、あゆの目に涙が浮かぶ。
「自警団の次は、チンピラか……月宮、お前よくよく運が無いな……」
呆れの混じった声で呟くと、あゆを庇うように、岩切がずい、と前に出た。
「お前たち、何の騒ぎだ?」
「あっ……岩切さん……いえ、実は今しがた、またそこで盗みがあったんです」
「しかも、“乳牛”の所でですよ!」
乳牛とは、チンピラ用語で、盗賊ギルドの保護を受けている商店を差す。
『上納金』を収める事で、ギルドに保護してもらい、盗みに入られないようにしてもらっている店の事だ。
「ギルドの面目丸つぶれですよ!」
「……落ち着け、月宮はさっきからずっと私と一緒に居たぞ」
221怪盗現る:02/03/23 23:53 ID:P2PFLHnt

岩切に諭され、チンピラたちは困ったように顔を見合わせた。
「岩切さんがそう言うなら……わかりやした、他を当たってみます」
「ああ、気を付けてな」
チンピラたちが姿を消し、あゆは大きく溜め息をついた。
「うぐぅ、怖かったよぉ……岩切さん、ありがとう」
「事実を言ったまでだ……で、そこに隠れている奴、出て来い」

驚くあゆと久瀬を尻目に、岩切はすっとナイフを酒場の樽に投げつけた。
はたして、樽の裏から、そろそろと一人の少女が顔を出す。
「えっへっへ、見つかっちゃった……」
「貴様か、最近好き勝手にやっている盗賊というのは……」
「へっ?」
彼女は一瞬きょとんとすると、慌てて手をパタパタと振った。
「とんでもな〜い、私そんな事しませ〜ん。誓って、あたしゃ怪しいものじゃありませ〜ん」
何の真似か意味不明だが、彼女は大仰に天を仰いでみせる。
身体にぴっちりとしたオレンジ色の服、頭の上には色眼鏡。
小さなお下げが、ちょこんと後ろ頭から出ていた。
「あたしはコリン。ただのちりめん問屋のご隠居の、風来坊の旗本三男、じゅげむじゅげむ後光の擦り切れです〜」
「…………なんだと?」
あまりに怪しすぎるコリンに、岩切ですら二の句が告げなかった。
「んではでは、あたしはこれで」
言いたい事だけまくし立てると、しゅた、と片手を挙げ、コリンは風のように走り去っていた。
ひゅるり、と風だけが虚しく、3人の足元を吹き抜けていく。
「………なんだったんだ、今のは………」
ぼそり、と呟いた岩切の台詞は、そのままあゆと久瀬の内心を現していた。
222名無しさんだよもん:02/03/23 23:56 ID:P2PFLHnt

【あゆ&岩切、久瀬と遭遇】
【久瀬 岩切に取引を持ちかける】
【コリン ギルドに属さない盗賊(らしい)】
223名無しさんだよもん:02/03/25 00:56 ID:n2BJmRMb
メンテ
224かのりんふぁいとぉ:02/03/26 00:15 ID:/6yUrpTK
――そもそも最初がいけなかった。
落ち着ける所を見つけるまで何を言われても和樹に引っ付いていけば良かった。
それをあの変態魔術師が、
「なんだ、同士二人してまだまだ一人立ちができん様で、クックック」
なんて煽るからいけないんだ。
あんまり頭に来たから三人して別々の方向に駆け出したんだっけ。
レフキーは大都市だって聞いてたから、実際周りに人がたくさん居たから、まぁなんとかなるだろうなんて考えて適当に二人の姿が見えなくなる様に角を何度か曲がったりした。

そうしたら真っ暗な裏路地に居た。周りには人っ子一人居ない。
あんまり心細くてちょっとべそなんてかきながら右も左もわからない状態で進んでたら、人が居る所に着いた。
着いたんだけど居るのはなんだか怪しい格好をした人達ばっかり。
どうしたら良いかわからず立ち尽くして居たら歩いていた誰かと肩がぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさい!」
「いえいえ、こちらこそ余所見をしていて…」
慌てて謝ったら丁寧におじぎまでしてくれて、
「お嬢さんみたいなのがこんな裏世界に迷い込んでたら大変だ。あっちの道をまっすぐ行けば表通りに出られるよ」
道まで教えてくれちゃったりしてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
あたしはもう嬉しくて嬉しくて、その人の顔を見るのも忘れて言われた方に駆け出した。

「……人だ」
人、人、人、明るい往来。
「ふぃ〜…」
あたしはあまりの安心感に腰が抜けてその場に座り込んでしまった。
目にはちょっと涙まで浮かべてたりして。
実際何分あの暗い路地裏で迷ってたんだろう。もしかしたら数時間かもしれない。いや、事によると数日…ってわけないか。
そんな事を考えて苦笑いなんかしてたら、
ぐぐぅ〜…
と、おっきくお腹が鳴った。そういえば迷ってる間なんにも食べてないもんね。
よし、あのおいしそうな匂いのする露店で何か食べよう。
225かのりんふぁいとぉ:02/03/26 00:16 ID:JB80g3lF
「おじさん!えっとこれ…ワッフル?三つください!」
「あいよ」
ちょっとガッつき過ぎかな?あんまり食いしん坊だなんて思われたくないな。
なんて考えながら懐のお財布を取り出し……お財布を取り出し……取り出し……お財布……
「財布がないっ!?」

――そうして現在に至る。
当然あの時のワッフル三個はお預け、それどころかあれ以来三日三晩飲まず食わずで街を彷徨う始末。
大都市って便利な様に見えて、無一文には凄く冷たいのね。
人情が足りないよ。
自分でももうヤバイなーなんて感じ始めちゃったからレフキーを出た。
街中で倒れるのはなんか恥ずかしかったから、その時はまだそんな事を考える余裕があったんだろうね。
街を出て二、三分も歩かない内にすぐに歩けなくなった。
今は大きな木の幹に寄りかかって座ってる。

なんでこんな事になっちゃったんだろう。そもそもどうしてレフキーに来たんだっけ。
あの男ども二人は最強の剣士だか世界征服だか変な事叫んでたわね。
でもあたしはそんなのどうでも良かった。
ただ、怖かったから。ずっと、幼い頃からずっと一緒に育ってきた二人が村を出るって聞いた時、
あたしだけこの田舎に残って結婚して畑仕事して子供産んで、死ぬのかなぁなんて考えたらなんだか急に怖くなったから。
そう思ったら叫んでた。あたしも行くって。

「そういうナァナァで出たのがいけなかったのかなぁ……」
視界がかすむ。何故かあの変態の言ってた事を思い出してしまった。
『ふははははっ!!ついに来たぞ同志諸君!夢と絶望の都市・レフキーに!!』
あはは、夢と絶望の都市とは良く言ったもんだね。あたしは今その絶望に飲み込まれる所みたい。

和樹どうしてるかなぁ。まさかあいつもどこかで行き倒れなんて事になってないでしょうね。
和樹、もう一度会いたかったなぁ……
226かのりんふぁいとぉ:02/03/26 00:19 ID:9es1zCnO
ゆっくりと目を閉じて目を開く。そうしたら世界は色彩を失った。木も草も、道もレフキーの城壁も、みんな灰色になった。
いよいよもっておしまいかな……いやだなぁ。
そうして、
目から涙が一粒こぼれ落ちたと同時に、あたしは心地よい、けれどどうしようもない眠気に身を任せた。










――頬に誰かの手が触れる。ひんやりとして気持ちがいい手。
誰だろう?もしかして死神ってやつ?
わずかに覚醒し、そしてまたズブズブと沈んでゆく意識の中で考える。
目も開ける事ができないでいたらその手が今度はずるずるとあたしをどこかへ引きずっていく。
三途の川へご招待?
「んしょ、んしょ。大変だよぉ」
あはは、随分と可愛らしい声の死神。
「はぁ…はぁ……ふぁいとぉ…いっぱぁぁつっっっ!」
あんまり一生懸命に引きずってるみたいで少し可哀想になった。だけどこっちはもう動けないんだからしょうがない。
「ひぃ…ふぅ……かのりんふぁいとぉ…」
ふぁいとぉ、と心の中で死神の声真似をしながら、あたしはまた深い眠りについた。

【高瀬瑞希 財布を失う】
【霧島佳乃 瑞希を拾う】
227救出作戦:02/03/26 01:29 ID:2nsEbmjJ
「……ちくしょう」
祐一は後悔していた。
自分の失敗で捕まった仲間たちを助けることが出来なかったからだ。
「あの時、飛び出してればどさくさにまぎれて晴子達は逃げれたんじゃないか?」
こんな無謀な作戦を立てたにも関わらず、仲間が自警団本部に連行されるのを見送ってしまった。
そのことで祐一は延々と本部の前で煩悶していたのだ。
「俺は…どうしようもないヘタレだ」
ちなみにその姿は多くのものに見られているがさすがに海賊だとはおもわれなかったらしくつかまらずにすんでいた。
「なんとしてでもみんなを助けないとどうすればいいんだ?
 ……………こうなったら突入して騒ぎを起こす。そのどさくさにまぎれて」
祐一はそう決意すると爆弾を懐から取り出し本部入り口のドアに手をかけようとすると
「このヘタレ!!何考えてるんだ!?」
「………!?」
「まったく、使えない奴だな。お前も」
「誰だ?」
祐一は慌てて周りを見渡したが周りに人はいない。
「ここだよ。ここ」
カラスが飽きれたように言った。
「か、カラスが喋ってる。魔物か?」
「私はそら、もしかして覚えてないのか?」
「……え〜と、もしかして犬飼さんが時々えさをやってるカラス?」
祐一が自信なさげに言う。
228救出作戦:02/03/26 01:29 ID:2nsEbmjJ
「そうそう、正解」
「…なんで鴉がしゃべれるんだ?」
「まあ、俊伐様が偉大な科学者だってことだ」
そらが自慢げに言った。
「そういえば、犬飼さんは無事なのか?」
「とっくに逃げ出したよ。ミラクルカノン号はもうそろそろ自警団に拿捕されててもおかしくねえんじゃねえか?」
「……ミラクルカノン号が」
祐一はがっくりとうなだれる。
父から引き継いだ海賊、相沢一家はどうやら今日でいったん滅亡らしい。
「暗くなんなってみんなでまじめに働いて船を買ってまた海賊をやればいいじゃねえか」
「まじめに働く、海賊がどこにいるんだよ」
「いや、船がなくなったら海賊行為なんか出来ないんだから海賊でいるのは無理だろ。その間まじめに働くのはありなんじゃねえか?」
「そうかもしれないな」
「そうそう、でまじめに働く同士を助けるためにお前がやらなきゃならないことを伝えに来たのよ」
「やらなきゃいけないこと?もしかしてお前が囮をやってる隙に俺が華麗に晴子達を助けるとか?」
「全然違うぞ」
そらはうんざりしたように呟いた。
229救出作戦:02/03/26 01:30 ID:2nsEbmjJ
(俊伐様、こんな馬鹿に利用価値があるとは思えませんぜ)
「じゃあ、どうするんだ?」
「まもなく自警団が藤井冬弥をしょっぴいてくるはずなんでそれをお得意の無茶で助けてくれ」
「冬弥さん捕まってたのか…」
最後に別れたとき、嫌な予感はしてたが…
「爆弾があるようだし、なんとかなるだろ。で、藤井冬弥を回収したらこの辺に潜伏しててくれ」
「この辺にいたら捕まらないか?」
祐一が聞く。
「大丈夫だ。俊伐様の偉大な科学力があるから」
「そうか、それなら安心だ」
祐一はあっさり納得する。
(こいつ、筋金入りの馬鹿だな…。なんでこれだけで信じるんだ?)
「じゃあ、祐一。俺は次の仕込みに行くから頑張れよ」
「おう!!」
【相沢祐一、藤井冬弥を救出するために待機】
【そら、次の準備に向かう】
230名無しさんだよもん:02/03/28 01:15 ID:W2WZC52H
 
231名無しさんだよもん:02/03/28 01:25 ID:o77Ecfve
ちょいメンテ
232退却、そして……:02/03/30 01:29 ID:oUU/vR53

 血が滲むほどに、岡田は己の唇を強く噛み締める。
「おのれ…おのれ……おのれっ!!」

 すでに兵たちには、隊をまとめ、集合するように指令を出してあった。
 これ以上の追撃は無意味……そして、被害を大きくする理由もない。
 司令官としての岡田はそう判断を下していたが、感情はそれについていっていなかった。
 へし折れた自分の剣を鞘に収めると、岡田は苛立ち紛れに、近くの木に拳を叩きつける。
 自分をまるで子供扱いした、あの共和国の男。
 あの男の事を考えるだけで、苛立ちと憎悪と、不可解な感情が湧きあがってくる。

「……随分とご機嫌斜めだな、岡田」
「っ……御使い殿か」
 兵士たちは全て指令に出させ、この場にはいない。
 木々の間から、まるで影のように染み出す澪の小柄な身体を見て、岡田は眉根を寄せた。
 澪=ラルヴァは目を細め、落ちている岡田の剣の切っ先を拾い上げる。
「ほほう……この剣が折られるとは、敵もなかなかやるな」
「……奇妙なマジックアーマーを持った男だ。断魔剣を弾き、逆に剣が負荷で折れた」
 端的に説明する岡田に、澪=ラルヴァはますます面白そうな顔になった。
「そうかそうか……しかし岡田よ、己の剣でなければ技も使えぬとは……『魔導剣士』とは不便なものよな?」
 図星を刺され、岡田は渋面になる。
 魔法と剣に精通し、その両方を極めたものだけが、“魔法”剣士になれるという。
 『魔導剣士』とは、魔法剣士よりも遥かに少ない修練で、魔法剣を扱えるようにした者たちの総称であった。
 『魔導』の名の通り、魔法と剣を合わせた特殊な剣技を使う事が可能だ。
 その反面、単体の魔法を使うことは出来ないし、『魔導剣』と呼ばれる特殊な剣でなければ、技も発揮できない。
233退却、そして……:02/03/30 01:30 ID:oUU/vR53

「くく……技に溺れるあまり、剣技の修練を怠るとは本末転倒」
「うるさいっ! 吉井と同じ事を言うなっ」

 岡田、吉井、そして松本の3人は、それぞれ違う分野と能力に秀で、互いの欠点を補う形で組んでいた。
 岡田は魔導剣による特殊な剣技と兵士の指揮を、吉井は通常の剣技と策略を、それぞれ担当していたのだ。
 松本はまた、二人とは別なのだが……

「松本と吉井さえ……いや、せめて吉井だけでもこの場にいれば……」
 岡田のように魔導を扱わない分、吉井のほうが剣技では遥かに上だ。
 あの共和国の男にさえ、そう易々と取られる柔な剣ではない。

「……そう、その吉井なのだがな、岡田よ」
  ふと思い出したかのように、澪=ラルヴァが囁いた。
「殺されたぞ……あの、共和国特務部隊の男に」

「な……んだと」

 一瞬、岡田の表情が抜け落ち……次の瞬間、烈火のごとく頬を紅潮させて、澪=ラルヴァの胸倉を掴んだ。
「ふざけるなっ、そんな事があるはずがないっ!! あの、あの吉井がっ……!」
「しかし、現に腹を……」
 ぎらぎらと異様に輝く岡田の目に凝視され、澪=ラルヴァは言葉を失った。
「いいか……我々三銃士は、常に行動を共にして来た。
貴様ごときが窺い知れぬだろうが、吉井は常に沈着冷静で、最善の方法を取るに長けた女だ。
剣技にしろ、智謀策略にしろ、私などよりも遥かに……!」
234退却、そして……:02/03/30 01:31 ID:oUU/vR53

「岡田様っ!!」
 突然響いた声に、岡田はハッと我に帰った。
 緩んだ手の中から抜け出し、澪=ラルヴァは大きく息をつく。
「どうした?」
「あ……はい。その……吉井様の剣と銃が、焼け跡から発見されました」

 岡田の顔から、一切の表情が消え去った。

「しかもその場所には、大量の出血の後が……死骸は出ておりませんが……恐らく」
「よい」
「はっ?」
「下がって任務を遂行しろ」
「は、了解しました」

 その男が去ってから、岡田は驚くほど低く、しわがれた声で澪=ラルヴァに訊ねた。
「………御使い殿、その状況を……見ていたのか?」
「うむ。吉井があの貴様と同じ髪をした女と戦っている間に、後ろから剣で切られたようなのだ。
その後、奴らは吉井に止めを刺し、逃走する為に出て行った」
「………そうか」
 堅く、あまりにも強く握り締められた岡田の拳から、下草にぽたぽたと鮮血が滴り落ちた。
「あの男が……到底、そんな風には見えなかったが………所詮は……共和国と…言う事か…」
 声を動揺に震わせながら、岡田は必死で頭を回転させる。
 吉井なら……冷静な彼女ならどういう戦略をとるか、何度も何度も思考を続ける。
 吉井の仇を取りたい、そう思う気持ちを必死で押し殺し、やおら岡田は顔を上げた。
「全軍、撤退する……これ以上の戦闘は、無意味だ」
235退却、そして……:02/03/30 01:32 ID:oUU/vR53



「岡田よ」
 全軍をまとめ、軍馬にまたがった岡田に、澪=ラルヴァが声をかける。
 何事かと振り返った岡田に、白く美しい宝石が、投げ渡された。
「これは……」
「秘宝塔の『秘宝』だ…………本物の、な」
 美しく輝く宝石に、心奪われたように凝視する岡田に、澪=ラルヴァはからかうような声で言う。
「それを持ち帰れば、吉井を失った件、この村で失った被害も、帳消しにして余りあるだろう。
なにせ、恐るべき力を持った一族の、魂の結晶でできた『秘宝』なのだからな」

 岡田は無言で一礼し、馬の首を翻らせた。
 背を向けた岡田に、澪=ラルヴァは暗く、そして堪らなく嬉しそうな笑みを見せる。
(くく……岡田よ、貴様はここで潰えてもらっては困るのだ……貴様には、もっともっと活躍してもらわねば、な)

 帝国兵たちが、次々と退却していく。
 それを見守る村人たちの表情には、安堵の色が濃かった。
 だが、決して手放しで喜べるものではない。
 共和国によって付けられた火(岡田は村人にそう説明した)は、村の大半の家々を焼き尽くしていた。
 家畜も、穀物も、その多くが失われていた。
 このあたりの村は、決して裕福な暮らしを営んでいるわけではない。
 最悪、このままでは餓死者が出る可能性さえあった。
 

 藪に潜み、帝国兵たちを見送りながら、蝉丸は憂鬱に溜め息をつく。
「城に帰ったら、すぐさまこの村に援助を送ってくださるよう、女王に進言せねばな……」
236長瀬なんだよもん:02/03/30 01:38 ID:oUU/vR53

【帝国兵、退却】
【岡田、吉井が蝉丸に殺されたと、澪=ラルヴァから聞かされる】
【吉井を攻撃したのは、ラルヴァ。吉井は死亡していない】
【岡田、秘宝を入手】


ついに帝国兵を退却させてしまいました。
長かった秘宝塔編、自分が終わらせちゃうのは、やはり緊張します。
しかし、まだ完全に決着が着いた訳でもありません。

それでは、誤字脱字修正ありましたら、指摘よろ。
237名無しさんだよもん:02/04/01 12:26 ID:sEWA2+pi
メンテしとく
238名無しさんだよもん:02/04/01 13:23 ID:eSwJZDzm
 
239トラブルメーカー:02/04/01 13:40 ID:6w1lT15s

レフキーの一角に、巨大な教会が建っている。
細かく掘られた彫刻、高くそびえる尖塔、その全てが芸術品とも称されるべき代物である。
荘厳で格式高いこの教会は、伝説の建築技術士、ガウディの手によるものだと言われている。
今もまた、レフキーの迷える民、信心深い人達が、この協会を訪れていた。

「司祭様、ありがとうございます…!」
「いえ、どうか神のご加護がありますように」
司祭の神聖術によって癒された老人が、涙ながらに彼の手を握る。
まだ随分若い司祭だ。
保守的な宗教の世界にあって、この歳で司祭と言うからには、大変な努力と才能の結果なのだろう。

その老人が帰り、彼は大きく伸びをして肩をほぐす。
「やれやれ……今日の来客は、これで終りかな……」
「よ〜しはるっ♪」
安堵していた芳晴の背中が、氷でも突き付けられたかのように、ぎくん、と伸びた。
「そ、その脳天気で何も考えてない声は……」
大きな十字架の像の後ろから、ひょい、と顔を覗かせた少女に、芳晴は顔を真っ青にした。
「こっ、こっ、こっ……!」
「ん、何、ニワトリの真似?」
「コリンっ!!」
びし、と指を突き付けられ、コリンはにっこりした。
「コリン……お前、また何かやらかしたのか……?」
「やぁね、人がまるでいっつもトラブルを持ち込むみたいに」
「そのまんまだろ!!」
240名無しさんだよもん:02/04/01 13:42 ID:jW4Qboxp
5
241トラブルメーカー:02/04/01 13:41 ID:6w1lT15s

コリンは小走りに芳晴の元に近付くと、悲しそうに首を振る。
「芳晴……それは誤解だってば」
「誤解も何も、お前がいっっっつも何かする度に、俺がどれだけ迷惑してると……」
「聞いて、芳晴」
潤んだ瞳で見上げられ、思わず芳晴の声が途切れる。
(くっ……だ、騙されるなっ……これがいつものこいつの手なんだっ)
「確かにあたしは、芳晴に迷惑を掛けてるかもしれない……でも、本当は芳晴にもわかって欲しいの」
「な、何をだ……」
ばくばく、と脈打つ心臓を必死で自制しながら、芳晴は尋ねる。
「あたし、好きでトラブルを引き寄せたいと思ってるんじゃないの……だって……」
「……」
「本当なら楽して金儲けできれば、それが一番だと思ってるし」

芳晴は無言でコリンの首を締めた。

「ぐえっ、くるしっ、ギブアップギブアップ!」
「………はぁ……またどうせ、俺の家に勝手に上がり込む気だろ……」
「あ、ぴんぽ〜ん。ほとぼりが冷めるちょっとの間だけでいいから、ね?」
ケロっとした顔のコリンから手を放し、芳晴は大仰に溜息をついた。
「大体、人様の物を盗むって事が、どれだけ悪いかわかってないだろ……」
「わかってないのは芳晴よ」
しれっとそう言うと、コリンはびしっ、と彼に指を突き付けた。
「よく言うでしょ、『お前の物は俺のもの、俺のものも俺のもの』」

……芳晴は無言でコリンの首を締めた。
242トラブルメーカー:02/04/01 13:43 ID:6w1lT15s

「ぐぇっ、ほ、ホールドアップホールドアップ!!」
見苦しくもがくコリンの首を締めながら、芳晴は何となく物悲しい気持ちになった。
コリンの首から手を放すと、芳晴はもう一度ため息をつく。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……あ、あのね芳晴、司祭様ともあろう人間が、女の子の首締めていいと思ってんの!?」
「……」
芳晴は胸元のロザリオを握ると、何とか精神を落ち着かせようと深呼吸を繰り返した。
「そーそー、落ち着いて芳晴。興奮するのは身体に毒よ」
「やかましいっ!」
コリンを怒鳴りつけ、芳晴は天を仰いだ。
「ああ……なんでこんな奴と知り合っちまったんだろ……」
「運命よ運命」
びしびし、と芳晴の背中を叩き、コリンはしたり顔でそう言った。
「運命と言えば、さっきまた仕事に行ったんだけど……」
「盗みだろ……」
「そう、盗み」
反省の欠片も無いコリンに、芳晴は目眩を覚える。
「……で」
「それでさ、空飛んで逃げたんだけど、あたしびっくりしたわよ。
なんと、あたし以外にハネの生えたシーフがいたのよ!」
「何っ!?」
さすがにそれには驚いたのか、芳晴の声が大きくなる。
「あ、ハネと言っても、リュックについた玩具みたいなハネなんだけど。
それでね、傑作なんだけど、あたしを追いかけてる奴ら、あたしとその子を勘違いして、
その子の方が犯人だと思ってるのよ。困ったものよね、あはは」
243トラブルメーカー:02/04/01 13:44 ID:6w1lT15s

「あはは、じゃないっ!!」
思わず絶叫した芳晴は、慌てて周囲を見回し、誰もいない事を確認する。
溜息を付いてから、心持ち声を抑えてコリンに説教を垂れる。
「お前、また人に濡れ衣を着せて、よく平気でいられるな……
いいかコリン、その人が濡れ衣を着せられて、どんだけ迷惑をしたと思っているんだ。
ひょっとしたらお前の代わりに、その人が吊るし首とか拷問とかされているかもしれないんだぞ」
「またって……んー、でも別にいいんじゃない? 向こうだって芳晴の言う『泥棒』なんだし」
「そいういう問題じゃないっ」
「大丈夫大丈夫、あたしその子と会ったけど、なんか偉そうな人が庇ってたし」
ぱたぱたと手を振るコリンに、芳晴は怒鳴りつけたいのをぐっと我慢した。

「なんで…お前は……昔からそうなんだ?」
「何が?」
「泥棒したり…人に迷惑掛けたり…それでいて平然としてたり……」
しんみりとそう言う芳晴に、コリンは戸惑ったように口篭もる。
「だ、だけど、あたしってほら、凄い事やる予定の人間だし」
「凄い事って……泥棒だろ?」
げんなり呟く芳晴に、コリンはちっちっち、と指を振って見せた。
「あたしはね、『盗賊王』になる女なのよ!」
「一繋ぎの財宝でも探すってか……」
芳晴はぐったりと椅子に腰掛けると、手で目を覆った。

思い起こせば少年時代、いつもコリンにいいように扱われ、パシリをやらされていた。
時代が移ってからも、コリンに迷惑を掛けられ、コリンに酷い目に会わされ、コリンに……
244トラブルメーカー:02/04/01 13:45 ID:6w1lT15s

「どうして俺って、お前と一緒にいるんだろうな……」
「は? い、いきなり何よ?」
唐突な芳晴の質問に、一瞬コリンは目を丸くした。
「いや……何とかして、お前との縁を切れないもんかと……」

目を覆っていた芳晴は気付かなかったが、その瞬間コリンの目に、動揺と焦燥が見え隠れした。

「……ふふ、甘いわね芳晴、腐れ縁ってのは、切れないから腐れ縁なのよ」
だがそれもすぐさま、軽いノリの中に埋没していった。
「ま、あたしとあんたは運命共同体って言う、あか〜い糸でぐるぐる巻きなのよ、うん」
ぽんぽん、と馴れ馴れしく芳晴の肩を叩き、コリンは気楽に言う。
「なんたって、泥棒を家に匿った事がある時点で、十分共犯だもんね。泥舟泥舟♪」

……芳晴は無言でコリンの首を締めた。

「うぐぐっ、ステップアップステップアップ!!」
苦悶の表情を浮かべながら、意味不明なパフォーマンスをするコリンに、芳晴は言い知れない疲労を感じた。
(こ、このまま……このままこいつを殺せたら、俺は楽になるんだろうか……?)
「おのれえぇっ、ジョジョおぉぉっ!!」
ちょっとずつどす黒くなっていくコリンの顔を見ながら、芳晴はさらに手に力をこめる。
「ぐぇっ、ちょ、ちょっとよしはっ…マジ締まってっ……ぐぇ」

コンコン
唐突に聞こえたノックの音が、芳晴を現実に戻した。
245トラブルメーカー:02/04/01 13:47 ID:6w1lT15s

「司祭様、こちらにいらっしゃいましたか」
「あ……ああ」
ばくばく、と高鳴る心臓の音を聞きながら、芳晴は努めて平静に応えた。
「はて…まだ誰かいたように思いましたが」
「いや、気のせいだろう……ここにはずっと俺一人だったし」
「そうですか。いえいえ、お恥かしい。それでですね、今年の南地区の布教の件でですね……」
初老の男はそこまで言って、ふと気付いたように天井を見上げた。
「司祭様、あそこ……ステンドグラスがひとつ、抜けていませんか?」
彼に言われ、芳晴はようやくそれに気付いた。
「あ……いや、あそこにはたまに鳥が巣作りに来るんでね……」
「そうですか。いや、さすが司祭様、お優しい事です」

ふざけてはいるが、コリンの盗賊としての技量は一流である。
芳晴の気が逸れた瞬間を狙い、手から逃れると同時にあそこまで跳んだのだろう。
手の中には、まだコリンの首の温もりと感触が残っていた。
芳晴は自己嫌悪に陥りながら、ふと違和感にとらわれた。
(……何でコリンの奴、その間違われた子と会ったんだ…? その子が誤解されたのが心配で……? まさかな……)
「おや……司祭様、羽根ですぞ」
「え……?」
足元から拾い、男が差し出したオレンジがかった不思議な羽根を、芳晴はぼんやりと眺めた。
「ほほ、どうやら司祭様の守護天使が、どこかで司祭様を見ていらっしゃったようですな」
「………守護天使…ですか」
あのトラブルメーカーなコリンが守護天使とは、芳晴は苦笑するしかなかった。
246トラブルメーカー

【城戸芳晴 教会の司祭。コリンとは腐れ縁で、迷惑を掛けられまくり】
【コリン 自称、盗賊王になる女。芳晴にちょっかいを出すのが趣味】

萌えキャラコリン登場記念。