葉鍵板最萌トーナメントブロック準決勝Round114!!
『涙雨』その3(>その2は733です)
「里村さん?」
不意に、声をかけられた。
雨に遮られるその声は、聞き覚えのある声。
「長森さん・・・」
あふれかけた涙を拭って。
表情を消して、振り返る。
悲しみを悟られないように。
「どうしたの? こんなところで」
「・・・」
不思議そうに首を傾げる、長森さん。
その隣に、いつもいた少年の姿はない。
ぎりり、と胸が痛む。
忘れてしまった人。
あれほど近くにいて、彼を忘れてしまった人。
その人がそこにいるのが、苦しくて。
私は・・・
「何か・・・用ですか?」
感情を殺して。
すべてを拒絶するように。
そう、返事をするしかできなかった。
まるで、昔のよう。
彼と出会う前の、自分に戻ってしまったようで。
また、胸が痛んだ。