葉鍵板最萌トーナメントブロック準決勝Round114!!

このエントリーをはてなブックマークに追加
673詩子さん ◆SHIIko2U
そして、二次小説支援なんてしてみたり。

『かすかなおも影』

「あっかね〜!」
 目印の長いお下げを見つけて、
 あたしは後ろから抱きつく。
「し、詩子?」
 さすがの茜もびっくりみたいで、驚いた顔で振り返る。 
「茜、今日はもう終わりでしょ? 一緒にかえろ」
「まだ掃除が残っています」
 茜はそう言ったまま教室へと戻ろうとする。
 終始無表情、いつからこんなになってしまったんだろう?
 あたしの知っている茜はもう少し表情がある子だったのに。
「そんなの折原君と交代しちゃえばいいじゃない」
「そんなこと、できません」
「山葉堂の新製品、売り切れちゃうよ」
「新製品…ですか?」
 茜の表情が一瞬変わる。
 少し嬉しそうな、何かを期待するような、
 昔のおも影、素直な表情。
 でも、それは一瞬のことであって、またすぐに戻ってしまう。
 そんな昔のおも影が見たくて、何度も言葉を掛ける。
 どうしたら元に戻るのだろう。
 いつになったら戻るのだろう。
 えいえんとも思える昔のおも影は、
 あたしの手では戻せないかもしれない。
 でも、あたしは続ける。
 茜のおも影を取り戻すために。
 えいえんという、長い時間がかかっても…