葉鍵板最萌トーナメントブロック準決勝Round113!!
『赤ちゃんができたのかも知れない』
マナちゃんの言葉に思わず間抜けな声で聞き返した俺は、脛を思い切り蹴られるハメになった。
聞いてみると、生理が遅れ気味なのに加えて、なんとなく胸が張っている気がするという。
「あと、胸の先がちょっと湿ってたこともあったの。ひょっとして、もう母乳が出てるのかも」
“そんなバカな”と言い切ってしまえるほど、俺は自分の知識に自信があるわけじゃなかった。
たしかに、妊娠すると性ホルモンが活性化して母乳がどうのっていう話は聞いたことがある。
なにより、マナちゃんが思い詰めた顔をしていることの方が重要だった。
「俺も責任は持つつもりだし、できることはするつもりだよ」
それを聞いたマナちゃんは、キッと顔を上げた。
「生活力も人生設計も貧弱な藤井さんに責任なんか取れるわけないじゃない!」
逆に怒鳴られる。
「私が欲しいのはそんな夢みたいな話じゃないんだから……」
そう言いながら、マナちゃんはセーターの下に手を入れてブラジャーのホックを外した。
「まず確認しなくちゃ。見て……くれるんでしょ?」
上目づかいで少しだけためらった後、ゆっくりとセーターの裾をまくり上げる。
やせ気味の身体は重量感こそないものの、要所ではしっかりと丸みを帯びていた。
「ちょっと、なんで喉を鳴らしてるのよ」
「え、いや……」
「バカバカ! 私が真剣に相談してるのに、そうやっていやらしいことばっかり考えて!」
たぶん照れ隠しなんだろう。
顔を真っ赤にしたマナちゃんは、本気で怒っているわけじゃなかった。
「真面目に……やってよね」
顔を背けたまま、マナちゃんはもう一度そろそろとセーターをまくり上げる。
ウールのセーターが可愛いおへそから胸元に上がっていくと、眩しいくらい白い肌が目に飛び込んできた。
小ぶりの体躯がきめの細かい肌に包まれて、優しい曲線が身体を形成している。
<続く 1/3>
「……どう?」
茹でたみたいに真っ赤な顔のまま、顔を背けたマナちゃんが尋ねてくる。
「どうって言ってもな……」
医学的な知識のない俺が、胸を見たぐらいで判るわけがない。
俺はとりあえず、問題の“母乳”が出るかどうか調べてみることにした。
まず乳首の周りに指を当てて、力が入りすぎないように注意しながら、つまみ上げるように搾ってみる。
しばらく指先で転がしてみたが、綺麗な薄桃色の突起から何かが滲んでくる気配はなかった。
指の動きと同期して、マナちゃんが鼻を鳴らすようにして息を漏らすのが聞こえる。
「ん……んっ……んっっ……」
これではらちが開かない。
次に俺は、つつましく張り出した胸を覆うように手を当てた。
あまり多くない胸の肉を包むように掴んで、手のひら全体で静かに圧迫する。
「あ……う……」
年下の女の子にセーターをまくらせて胸を揉みしだく男――。
他人に見られたら問答無用で実刑を喰らうような気がする。
だけど、俺たちはかなり真剣にその行為を続けていた。
回すように、搾るように、ひねるように、押し込むように。
硬い表情だったマナちゃんのこわばりが徐々に解けて、吐息が熱を帯びてきたのが分かった。
「やっぱり気のせいだったんじゃないかなあ」
けっこう長い時間続けてみたが、彼女の胸の突起は乾いたままだ。
やはり取り越し苦労だったのかと、俺は肩の力を抜きかけた。
だが、それも次にマナちゃんがつぶやいた一言で吹っ飛んでしまう。
「……赤ちゃんがやる通りにしないとダメなのかも」
「えっと、マナちゃん、それってまさか」
「そのくらい察してよ……私の口から言わせる気? セクハラじゃない……」
<続く 2/3>
結局、俺は最後まで付き合うことにした。
毒喰わば皿までとか、そういうのとはちょっと違うと思う。
マナちゃんが不安がってるのは事実なんだから――。
アタマの隅にある根本的な疑問にはあえて目をつぶって、俺は目の前のふくらみに意識を集中する。
上気した顔色が移ったみたいに、マナちゃんの体がほんのりと桜色を帯びてきていた。
なるべく歯が当たらないよう気を付けながら、口に含んだ突起部分に舌先を添えて安定させる。
そのまま、静かに吸い立てた。
ウエストに回した手に、ぴくり、と反応が伝わってくる。
「ふじ……いさん」
だんだんコツが解ってきて、次第に深めにくわえ込んで吸い上げる。
そうしていると、いきなり首に腕が回された。
マナちゃんが俺の頭をぎゅっと抱え込んでいる。
それからは、最初ほど真摯な気持ちで行為にあたっていたかどうか自信がない。
俺たちは絡み合ったまま時間を忘れていた。
「やっぱり思い過ごしだったんじゃないかな?」
結局、マナちゃんの言っているようなことは確認できなかった。
俺は荒い息を吐きながら、上半身裸のマナちゃんと抱き合って床に倒れ伏している。
しばらくして立ち上がろうとすると、細い指先が俺の袖をつかまえた。
「検査薬も使ってみるけど、ちゃんと結果が出るまで判らないんだから……」
俺の袖をつかんだまま、彼女は今までで一番顔を赤くして言う。
「だから、明日も調べた方が……いいかも。藤井さんは無理に協力しなくてもいいんだけど」
その数日後に、マナちゃんには何ごともなかったかのように生理が来たらしい。
それまでの間、毎日母乳チェックをしたのは良い思い出だ。
頭の良いマナちゃんがあんな無茶を言い出したのは、後で考えると確信犯だった気もしなくはない。
そんなことを本人に言った日には、脛の一本や二本じゃ済まないだろうけど。
いつの日か本物の母乳プレイを――という夢を持っているのも、本人には内緒の話だ。
<FIN 3/3>