133 :
129:02/02/12 22:43 ID:tG+sV42d
俺も行けなくなってしまった…。
さっきのは夢か幻か…?
>>128 三時間以内にこたえてくれるスレで、
同じくみこぺーさんの貼り付け板が使えないと言う声があった。
ついに閉鎖???
ちょっとサーバーが落ちてるだけでしょ。
回復したみたい。良かった良かった。
こうしてみると、みこぺーさんには世話になっているな。
ありがとう〜、みこぺーさん!!
∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(,, ) < 久しぶりにSS読みに来てみれば
.( つ | こりゃまた とんだ厨房SSばっかりだなぁ オイ
| , | \____________
U U
| まあ せっかくだから感想書いといてやるよ
\ ハイハイ 萌えた! 感動した! っとくらぁ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧∧
(゚Д゚O =3
⊆⊂´ ̄ ソ ヤレヤレ
>>137 でも現役用に意味はあるのかと小一時間ほどアレしたい気分だが。
返信数1とか見ると引くよ。
140 :
名無しさんだよもん:02/02/14 00:40 ID:nWWLYuaK
最萌トーナメントのセリオ戦で話題になってたPOHとかいうSSがあるらしいのですが、
誰か知りませんか?
>>140 Piece Of Heart。SSじゃなくてドラマCD。Leafオフィシャル。セリオシナリオ。
ただし、そのほかにPOHなるSSがある可能性は否定できないけど(w
143 :
名無しさんだよもん:02/02/15 22:46 ID:D5L4wHEW
下がり過ぎにつき、age
144 :
名無しさんだよもん:02/02/17 01:09 ID:oE+D/hNy
ageメンテ
>>144 2ちゃんの初心者ですか?
メンテはわざわざageなくとも成立しますよ。
今は大丈夫ですが、
長文のSSが投稿されているときにageられると、
まわりの人にウザがられます。
ここは、ageないで欲しい。
むしろマンテ
モンテ。すなわちテラモンテ。ダイエーのドラ1の別名。
>147
ワラタ
いたなあ、そんなの
今からAir(?)ギャグSSを20レス分上げます。
「ど――――――――――――――――――んっ!!!」
「ぐあっ」
全身に嘘みたいな痛みが走った。
一体何が起こったのかさっぱりわからない。
おもむろに目を開くと、夕陽に赤々と染められた中天に輝くひしゃく星が視界に飛び込んできた。
「・・・・・・・・・」
はて・・・おかしいぞ、さっきまで堤防の上であぐらをかき、紅の大海原をつまみに黄昏れていたはずだ。
なのにだ、今の俺はスリッパでタコ殴りにされたゴキブリみたいにアスファルトの上で見事に討ち死にしているではないか。
顔を動かさず目だけで左右を窺う。
左手には堤防らしきセメントの壁、その反対側にはこの街名物のどろり自動販売機。
そして・・・
ぐぅ〜〜〜
天に舞い上がる腹の虫
「なるほど」
どうやら俺は空腹のあまり気を失い、海風によって堤防からそのまま落下したらしい。
「よっと」
道路から半身を起こす。
「よく無事だったな・・・」
眼前にそびえ立つ三メートル弱のコンクリートの壁。
そこからの自由落下。
つまりはひゅ〜〜〜・・・、ぐしゃっ!トマトっ!!である。
「・・・・・・・・・」
わしゃわしゃわしゃ・・・
恐る恐る後頭部をかきむしる。
「おりょ?」
汁がないぞ。
「おかしいな・・・」
ごそごそごそ・・・
今度は体をまさぐってみる。が、さしたる外傷もみあたらず四肢もスムーズに動く。
どうやら五体満足のようだ。
「ふ・・・さすがは我が肉体・・・」
「みたかこの鉄人国崎のアイアンボディーをっ!!」
腰に手を当て、無意味に勝ち誇る。
ぐぅ〜・・・
力を込めたら腹が鳴った。
「で・・・なんだ。俺はこんな所でなにをしているんだ?」
とりあえず状況確認だけはしておこう。
ピー、ピピー・・・ジョウキョウカクニンカイシ
カタカタカタ・・・
梅干大の脳みそをフル稼働させる。
カタカタカタ・・・カタ・・・カ・・・タカ・・・カ・・ボンッ!
ピー、ピピピー・・・エンザンシュウリョウ
そして、出た答えは・・・
「マヨネーズセットひとつ・・・」
・・・違う。
全く関係ないじゃないか。
俺は飯にマヨネーズをかけたものなんて食べたくない。
そもそも、そんなものをすきっぱらに詰め込んだら、腹イタはおろか再起不能になりそうだ。
ぐぐぅ〜・・・
食料のことを考えたらまた俺の胃壁をガスが押しだした。
「やってらんね・・・」
どさっ・・・
手足を四方向にぐいーっと伸ばし、道路の中央で大の字に寝っころがる。
もうなにもかもがどーでもよくなっていた。今の俺には立ち上がる気力すらない。
いくら鉄人といえども、空腹には勝てんのだ。
「・・・・・・・・・」
ひんやりとしたアスファルトを背に、俺はしばらくの間腕を枕にうっすらと緋色に染まる夏の夜空をぼんやりと眺める。
「星・・・綺麗だな・・・」
緋色から朱色、そして朱色から薄紫色へのグラデーションをバックに、まるで銀の砂を散りばめたように瞬く星々。
この田舎町で気に入っているものといったら、この星空ぐらいなものだ。
というよりこれ以外は全部嫌いだった。
「星・・・」
「・・・・・・・・・」
「そっか、遠野が待っているんだっけ・・・」
「どっこらせっと」
「さて、また晩飯代を稼ぎにいくとするか」
体についたほこりを軽く払い堤防の上へと向かう。
「えーっと、ガキんちょ、ガキんちょ・・・」
「・・・・・・いたっ」
波打ち際で鬼ごっこに興じる小学生ぐらいの男女を発見。
ツイてる・・・
「おーい、名雪はやくこっちにこいよー」
「まってよぉ〜祐一、わたしそんなに速くはしれないよぉ」
「よしだったら、今から俺が鍛えてやるぞ、うりゃりゃりゃりゃりゃりゃあっ!」
どどどどどどどどどどどどどどどどど・・・
「も〜・・・。いいもんいつか祐一がびっくりするくらい速くなるんだから」
「そんなの絶対無理ですよー、ばいばいぶー」
「あ〜ん、まってよぉ〜、そんなにイジワルすると今日の夕飯イチゴジャム丼にするよ」
「うっ・・・それは・・・」
「ゆ〜いち、つ〜かま〜えた」
「あ、ずるいぞ名雪」
「えへへ・・・じゃあ早く帰ってイチゴジャム炊き込みご飯食べよっ」
「絶対帰らないっ!!」
「え〜どうしてぇ〜?イチゴのお味噌汁もあるんだよぉ」
「・・・マジかよ」
「ちくしょう、ハメられた。さっきランナウェイすべきだった!」
「祐一、そういうの後悔役に立たずっていうんだよぉ」
「違う、それをいうなら先だっ」
「どっちも同じだよぉ」
「・・・・・・・・・」
客の選択を誤ったであろうか・・・
しかし東から生まれた闇は少しずつ空を侵食し、今やその九割近くを傘下に治めていた。
今から他をあたっている余裕はない。俺は意を決した。
「おい、そこのガキどもこっちを向けっ」
きゃきゃっとはしゃぐ二人を呼び止める。
「ん、なにおじちゃん?」
青い髪を三つ編みのおさげにした少女がこっちにやってきた。
「おじ・・・」
「あー・・・うおっほん」
「さっ、今からぴちぴちのお兄さんが君のために人形劇をやってやるぞ」
「お人形さん?」
「そうだ、そこはかとなくかわいいお人形さんが楽しいダンスを踊るんだ」
「本当っ! わ〜い」
なかなかの好感触だ。
やはりこの年頃の女の子は人形に弱い。
この調子でいけば晩飯のおかず一品ぐらいは稼ぐことが出来そうだ。
「お〜い、名雪なにやってんだ? 早く帰ろうぜ」
「あ、ちょっと待って、このおじちゃんが今からいいもの見せてくれるんだよぉ」
「ふーん・・・」
しめしめ・・・男の方までやってきたぞ。
(やったね、これで今晩のおかずは豚足で決まりだイエイッ!)
「・・・・・・・・・」
・・・違う。
どうして俺はそんなグロイものしか考えられないんだ?
ほら、黄金色のもっとゴージャスなのがあるだろうがっ。
そう、タクアンとか・・・
・・・・・・・・・。
違う違う違う、色はあってるけど全然ゴージャスじゃないっ!
「ね〜、祐一このおじちゃん苦しそうだよぉ。どうしたのかな〜」
「禁断症状だろ」
「きんだんしょうじょう?」
「ヤクがきれたってことさ」
「そうなの? じゃあ、お母さんに頼んでもらってきてあげようよぉ」
「あのなぁ」
「だってすごく苦しそうだよぉ」
「やめとけ、こうなったらもう無駄だよ。それにこの人お金持ってなさそうだし」
「祐一、冷たいね」
「ああ、なったって俺はアイスマンだからな」
「・・・・・・・・・」
「ゆ〜いち、それあんまりカッコよくないね・・・。夏だから溶けちゃいそうだし」
「う、うっさいなぁ、ほら行くぞ」
「えっ・・・あっ・・・うん」
「じゃあ、お人形のおじちゃんバイバイ・・・」
「ぶつぶつぶつぶつ・・・」
「メンマ・・・カラスの缶詰・・・カツなしカツ丼・・・青汁・・・」
「肉なしビーフシチュウ・・・ガリガリ君・・・うまい棒・・・」
「・・・・・・・・・」
「だぁ! どれもメシのおかずじゃないっつ〜の!」
「・・・はっ、いない」
さっきまで目の前にいたはず金の卵がいつのまにか忽然と姿を消している。
「ど、どこだ俺の金づるは」
慌てて首をぐりんぐりん回転させ、辺りをサーチする。
ピッ、ピッ、ピッ、ピーーーッ
「ターゲットロック・・・」
彼らはいつのまにか砂浜から堤防へとコマを進めていた。
「待ちたまえ、そこの子供達っ!!」
どがががががががががががががが――――――っ!
除雪車のごとく脇に砂の壁を築き獲物に急接近する。
残す障害は眼前に屹立する約三メートルのコンクリートの壁のみ。
「とうっ」
たんっ、ば、ば、ば、ばっ、びしゅるるるるるるるるるぅぅぅぅぅーーーーっ!
ロンダート、バク転、バク転、バク転、後方身伸九回転宙返り。
「わー・・・」
途中、口をぽかんと開けた三つ編みの少女と目が合う。
すたっ。
着地成功。
「さあ、楽しい人形劇の始まりだ」
俺は着地と同時にすちゃっと人形を取り出し、それを堤防の上に寝かせる。
アクロバットな演出のあとの人形劇。
これで子供達の目は釘付けだ。
そしてラーメンセット・・・
ふふふふ・・・なんて、ナイスな勝利の方程式なんだ。
腹の底から笑いがこみあげてくる。
「上から降ってきたと思ったら、人形劇とか意味不明なことをいいだすし、やっぱりこいつガイキチだよ」
ぐぁ・・・
いきなり客に引きが入った。
どろどろと溶けてゆく勝利の泥舟国崎号・・・
「・・・むん」
なんのここで挫けてなるものか。
気を取り直し、俺は横たわる人形に念を込める。
すると、それはひょっこりと起き上がりてくてくと歩き始めた。
とことことことこ・・・
とことことことことこ・・・
とことことことこ・・・
少し古ぼけた人形がまるで人のように堤防の上をあるいてゆく。彼の背には糸などどこにも存在しない。
そう、俺には念を込めたものを自由自在に操ることが出来た。
実際に種も仕掛けもない。
俺はこの力を今は亡き母から受け継いだ。
これは「法術」と呼ばれるもので、俺はこれを基に人形劇をして日銭を稼ぎ、数十年間旅を続けている。
とことことことこ・・・
とことことことことこ・・・
とことことことこ・・・
人形が規則正しく石灰質の舞台を闊歩(かっぽ)してゆく。
「ふはは、どうだすごいだろ。楽しくて財布の紐がたるみまくってしまうだろう」
意気揚揚と客の反応を窺う。
「あのね・・・祐一。大事な話があるの・・・」
「なんだ名雪、急に改まって」
・・・違う話をしていた。
(こいつら・・・)
「うん・・・えと・・・あのね・・・」
「じれったいな、ぐじぐじしてないですぱっと言えよ、すぱっと」
「うん、じゃあ・・・言うね・・・」
「私・・・で・・・」
「で?」
「できちゃったみたい・・・」
少女の頬が夕焼けより濃い色に染まった。
・・・・・・・・・。
「なにぃいいいいいいぃぃぃぃぃーーーっ!!!」
「なにぃぃぃぃぃいいいいいいいぃぃいぃいいいいーーーっ!!!」
男の顔が面白いようにバケツ色に染まってゆく。
「でででで・・・できちゃったって、それはたけしの挑戦状Uのことだよな」
「・・・・・・・・・」
静かに横に揺れるおさげ。
「名雪・・・それはもしかして頭に『あ』がつくやつか?」
「・・・うん」
「・・・・・・・・・」
「そうか・・・とうとうこの町にも『アントニオ猪木の銅像』が降臨するか・・・」
ふるふるふるふるふるふる・・・
激しく左右に舞う青髪。
「ちがうよぉ・・・あかちゃんだよぉ・・・」
小鳥のように細く透き通った声が夕闇に溶け込む。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
衝撃の事実に固まる野郎ども二人。
「でね・・・いろいろ考えたんだけど、やっぱりこの子堕ろすね」
「私、祐一のこと束縛したくないから」
(おいおいおい・・・)
「なに言ってんだよ名雪! 俺は別に束縛なんて・・・」
「・・・私、知ってるんだよ、祐一があゆちゃんって娘と二股かけてること」
「うっ・・・」
「そ、そんなことはないぞ・・・」
「・・・・・・・・・」
「それと最近夜、家を抜け出すけどあれはな〜に?」
「それはウォーキングだよっ!」
「ほら最近、中性脂肪がたまちゃってまずいかなーって、ははは・・・」
「・・・うそつき」
「ぐっ・・・」
「学校で女の子と会ってるの私、見ちゃったんだから」
「祐一は夜の校舎で何をしているのかな〜・・・」
「いや、別に舞とは何も・・・」
「ふ〜ん、その子、舞ちゃんって言うんだ」
「・・・っ! 本当に何もないって」
「学校へは魔物を討ちにいってるんだよ」
「・・・祐一、嘘をつくならもっと説得力があったほうがいいと思うよ」
「これはマジだっ!」
「これは?」
「違う、これもっ!!」
「ふ〜ん・・・」
男の方はかなり旗色が悪そうだ。
というよりこの場合、青髪の少女の誘導尋問がうまい。
自分は全てを知っている振りをしてハッタリをかけ、相手がボロを出すのを待つ。
こうなると男は言訳をすればするほど、いらんことを言ってどんどんと深みにはまってゆく。
この少女は幼い顔してなかなかの話術師である。
「名雪、信じてくれ」
「俺は、あゆも、舞も、栞も、真琴も、佐祐理さんも、香織も、
美汐も、北川も、ぴろも、秋子さんも、みんな遊びなんだっ!!!」
「だから・・・」
「えっ・・・お母さんまで・・・」
「しまったっ!」
「・・・・・・・・・」
「ほ、ほらっ、やっぱり男としてはオールジャンルを極めたいかと・・・」
「ははっ・・・はははははははは・・・」
(こいつ・・・ほんとに小学生か?)
傍からみてるだけでも背筋がカチコチと凍りついてくるぞ。
ひーふーみー・・・彼女も合わせれば全部で十一股か・・・
今までよくバレなかったな。
というよりこいつは一週間をどうやってやりくりして過ごしているんだろう。
きっと秘密の手帳に今日は名雪の日とかマルがついているに違いない。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
どうやら戦線は膠着状態に陥ったようだ。
野次馬としては行く末をこのまま見届けたいものだが、それは俺の腹が許さない。
それに遠野も腹をすかせて俺の帰りを待っている。
となればここはさっさと金をぶんどってこの修羅場からおさらばするのに限る。
「なあ、お前達、お兄さんの芸を見たんだから払うもんがあるだろ?」
「さっ、さくさくっと渋いおじちゃま達をだしましょうねー」
「なお、ただいま期間限定特別奉仕中で稲造以上なら人形劇のアンコールもセットでつけちゃうぞ」
「さあさあ、漱石、稲造、諭吉、三人まとめてドンとこいっ!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「ドンと・・・」
案の定シカトされた。仕方ないほとぼりが冷めてからせがむか・・・
「祐一・・・」
「な、なんだよ・・・」
にこっ・・・
「今までありがとね・・・私、祐一と会えてよかった」
「ほんの少し、たった二週間の冬休みだったけど、私、とっても楽しかったよ。だからね、最後は笑顔でバイバイしようね」
「おい、名雪・・・なにいってんだよ」
「・・・・・・・・・」
青髪の少女は何も答えない。ただ、穏やかな微笑みだけが夕焼けに音もなく溶けてゆく。
赤黒い海から吹く風にばさばさと踊る綺麗な三つ編み。
人はこんなにも悲しく笑えるものなのだろうか・・・
さくっ・・・さくっ・・・
少女は微笑んだまま後ろに一歩、また一歩と堤防の縁へと歩を進めてゆく。
その小さな背に広がる漆黒のアスファルトはまるでその小さな体を誘うように怪しく渦を巻いているように見えた。
「名雪っ!」
「えへへ・・・」
にこっ・・・
どこまでも澄みきった黒い瞳に少年の姿が映る。
「バイバイ・・・祐一・・・」
「イチゴのお味噌汁・・・のこしちゃダメだよ・・・」
ふっ・・・
少女は手を翼のように広げ、そのまま闇のカーテンへ音もなく滲むように消えて・・・
「なゆきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーー!!!」
「かねぇぇぇぇぇえええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇーーー!!!」
ぱしっ・・・
「!」
固く閉じられた少女の瞳が弾かれたように開く。その両脇には二つの大きな手があった。
そう、俺と少年は少女の空色の三つ編みを咄嗟に掴んだのだ。
「いたいよ・・・祐一・・・」
「て・・・はなしてよ・・・」
「絶対にいやだっ!」
「金を払ったら離してやる!!」
「どうして・・・私はどうせ使い捨てなんでしょ・・・」
「そんなことはないっ!」
「何を隠そう全くその通りだ!!!」
「・・・やっぱりそうなんだ」
「おっさんだまれっ!!!」
どぐぉっ!
「ぐあっ」
キレのいいコークスクリューブローが俺の頬にめり込む。
「ふ・・・いいパンチだ・・・どうだ君、この俺と一緒に世界を・・・」
ぐしゃあっ!
「へぶっ・・・」
今度は幻の左がテンプル(側頭葉)を直撃。
「いいからだまってろっ!」
「・・・はい」
すこすこと・・・身を引く。
小学生に負ける俺っていったい・・・
ギ・・・ギ・・・
「・・・・・・・・・」
俺が山椒魚の様にずりずりと堤防に身体を擦り付けていると手の先から鈍い音が聞こえてきた。
慌てて視線をそちらに向けると少女は黄色いカッターを自分のおさげに刃をあてていた。
おそらく自分の髪を切り落とすつもりであろう。
「バカっ!」
「!」
きいいいいいいいいいいぃぃーーーーーーーーーーーんっ!
その光景を見た瞬間、少年は戸惑うことなく自由な左手でもってその刃を叩き折った。
折れた刃が黒いアスファルトを叩きつけられ澄んだ音色を奏でる。ヘタをすれば自分の指が飛ぶ荒業だ。
「いいかよく聞け名雪っ!」
「確かに俺は他の女の子と仲がいいかもしれない」
「でもな、俺が好きなのは名雪、お前一人だけなんだよっ!」
「だから、この俺を信じて自分の手で戻ってきてくれ、名雪!!」
「・・・・・・・・・」
「祐一・・・こぼれた甘いイチゴサンデーはもう二度と器に戻らないんだよ・・・」
「・・・っ」
「そんなことはないっ、たとえ形は崩れようとも器に戻すことはできるっ!」
「私、そんなの食べたくない・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
決着はついた・・・
少女の完全勝利だ。
まっ、少年には悪いがさっさとこの嬢ちゃんを引き上げてメシ代を請求さしてもらおう。
「よっこら・・・」
「名雪! お前は米だ!!!」
・・・・・・・・・。
突如少年の叫びが夕闇を切り裂いた。
意味不明の叫びだったが、その熱い思いがビシビシと伝わってくる。
そう、彼の目はまだ死んではいなかった。
「・・・・・・・・・」
「私が・・・お米?」
「そうだ、お前は米だ」
「名雪だって毎日米ばっかりだと飽きるだろ、そしたらパンや、スパゲティーや、ステーキを食べる。ちがうか?」
「私・・・イチゴなら毎日飽きないよぉ」
「今は主食の話だ!」
「えっと・・・つまり人はそのように時として別の物を食べたくなってしまうことがある」
「しかしだ、やはりそれらもすぐに飽きてしまう」
「そこで人は初めて気づくんだ」
「今まで自分にとって一番大切だったものは何だったのか、これからの自分に一番必要なものは何であるかを」
「そしてその食べ物とは・・・」
「イチゴ・・・」
「そう、イチ・・・って違う、米だっ! つまり名雪、お前だよっ!」
「ゆ〜いち・・・」
「名雪! 俺の一番大切なものは米であるお前なんだよっ!!!」
「祐一っ!」
「・・・・・・・・・」
こいつもまた小学生のくせしてすごいテクを使うな・・・
さすが十股、十一股は伊達じゃない。
きっとこいつは先輩からいろいろリカバリー技を伝授されていて、他の女の子にも似たようなことを言っているのだろう。
まったく行く末が恐ろしいヤツである。
「さっ名雪、俺の手に掴まれ・・・」
「うんっ」
固く握り締められる小さな二つの手。
「よいしょっと」
「祐一・・・」
「名雪・・・」
堤防の上で夕日をバックに見つめあう二人。まるで映画のワンシーンのようだ。
(実際こういうのはあるもんだな・・・)
俺は現実の陳腐さを改めて理解したような気がした。
「ゆ〜いち〜っ!」
「名雪ーっ!」
なぜか二人はスローモーに駆け寄り・・・
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
そして互いの存在を確かめるかのように強く抱きしめ合った。
「・・・・・・・・・」
とことことこ・・・
とことことことこ・・・
とことことこ・・・
することがないので俺は徒然なるままに人形を歩かせる。
「祐一、私の作るお味噌汁毎日飲んでくれる?」
「味噌汁って・・・イチゴのか?」
「うん、もちろんイチゴジャム炊き込みご飯もだよぉっ」
「・・・・・・・・・」
「毎日イチゴのお料理食べてね、約束だよ」
「ぜ、善処します・・・」
毎日イチゴづくしか・・・
きっと、イチゴチャーハンや、イチゴラーメンや、イチゴの味噌漬なんかが食卓に並ぶんだろうな。
うっ・・・考えただけでもイチゴみたいなぶつぶつがでてきた。少年よ汝に幸あれ・・・エイメン・・・
「さて、ようやく一段落ついたみたいだな」
「こほん・・・」
「さあ、そこのマセたガキんちょども、さっさと出すもんだせやぁ、ゴルァ!」
ドスの効いた声でもって脅しをかける。ここまできたらもう手段を選んでいる余裕はない。
彼らからなんとしてでも金を巻き上げねば俺が餓死する。
そうなったら、半透明の袋に詰め込まれて燃えるゴミの日にポイっと投げ捨てられること間違い無しだ。
運がよくて夢の島行き・・・。それだけは避けねばならない。
「ん、ああ、ガイキチさんか・・・」
「ガイキチいうなっ」
「とにかく、今もってる有り金全部だせ、こんちくしょうっ!」
「なんなら、君達を誘拐してもいいんだよ〜♪」
もうほとんどヤクザである。人間切羽詰まると道徳の授業なんざへのつっぱりにもならない。
「あっ、それはやめた方がいいと思うな」
「なんでだ?」
「名雪のお母さんは裏の人間だからさ」
・・・裏。
「マグロ漁船乗りたい?」
「・・・・・・・・・」
晩飯のおかずか、はたまた解体され異国の地へと渡るか・・・
(くそっ、どう考えても割に合わないぞ。やっぱり客の人選ミスった)
まさに後悔役にたたず。
「まっ、そういうことだから。行くぞ名雪」
「うんっ♪」
ああ・・・かねが・・・俺の金が仲良く手を繋いで去ってゆく。
陽はすでに水平線の彼方に沈み、辺りは夜のとばりに包まれていた。
もうだめか・・・。
そんな言葉が脳裏をよぎる。
いや、まだだっ、膝をつくのはまだ早い。
あの少年にはアキレス腱がある。そこをついて生き延びるのだ。
「ここは通さんっ!」
俺は先程の子供達の前に立ちはだかる。
「ちっ、またか・・・おじさんあんまりしつこいのは嫌われるよ」
「ふふふ・・・この俺にそんな口を聞いていいのかな?」
「はいはい、今忙しいからまた今度ね」
ひゅ・・・
一陣の風が俺の脇を吹き抜けていった。
(にゃろう・・・)
「さっきの口説き文句にはほつれがある。それをその少女にバラしてもいいのかな?」
・・・・・・・・・。
俺の後ろで一人分の足音が消えた。
「米に飽きたら、パンやスパゲティーやステーキを食べる・・・か」
「ってことは、それらはもうすでに食べてしまったことは認めるんだな」
「つまり、お前が浮気をしているってことはバレバ・・・」
がっ・・・
「んっ?」
背後から腰に何かが巻きついた。
みるとそれは少年のもので、ヘソの辺りで見事にクラッチされている両手が見え・・・
ぶおんっ!
「はれっ?」
刹那、天空の星々が流星と化した。
どごおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーんっ!!!
「へぶしっ!」
津波にも耐えられる鋼鉄のコンクリにめり込む頭蓋骨。
「バックドロップはヘソで投げるんだ、覚えとけっ!!」
遠くのほうでだれかが叫んでいる・・・
「ねぇ〜祐一、浮気してるってことはバレバってなに?」
「ああ、それは、浮気はレバーのように処理するのが大変だからやめとけって―――・・・」
だんだんフェードアウトしてゆく意識。
俺はこのまま人柱のように埋められて、この町の観光名物になってしまうのだろうか・・・
消えゆく意識の中遠野のことよりもそんなことが先に浮かび、俺はねっとりとした深い闇へと堕ちていった。
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
(おわる)
>>150-169 以上、半年前に連載企画として製作したAirSSです。
某スレで引退を表明しましたがワケあってここに投稿します。
どうか、手厳しい批評をお願いします。
>>170 何はともあれ三点リーダを使ってください。これだけはおねがいします。
つまりこういうことです。
誤 → ・・・
正 → …
>>171 でも、その「三点リーダ」というのは、
Win2000系+IE5.5〜6.0 では、潰れてしまう。
読みやすくするための形式は必要だけど、
あまり形式だけに囚われすぎると、本末転倒ってことになるヨ。
173 :
170:02/02/18 23:23 ID:tLucj5mn
う〜む、レスが返って来ないと言う事はこのSSはダメなのか・・・困ったな。
友人はバカ受けしてたけど、なにがいけないんだろう・・・むぅ・・・。
恥を覚悟で聞きます。
コレは二作目のSSだから文章力はないのは自分でも理解しています。
ただ、笑ったか笑わなかったかだけ教えてください。
それだけでいいです。お願いします。
>>173 登場人物が三人ともデンパか極悪なのはどうかと。
国崎だけは常識あるツッコミ役でも良かったのでは?
とくに
>>159あたりでは、幼年時には会ってない筈の
キャラと付き合ってるなどの不条理な設定を元に
祐一と名雪が駆け引きを打っていて、読み手が混乱すると思う。
>>173 面白いと思うよ。
読んでる時は笑った。
でも、感想というのは読んだ後に書くもので。
つまり、展開とともにヒートアップして、最後はズバッとオトさないと、
「ああ面白かった」とはなりにくいわけで。
面白いけどだらだらと長い印象。
ドンピシャリのオチさえ浮かべばそこに向かって一直線に行きたくなるはずだから、
そんなに長くならないと思う。
176 :
170:02/02/19 06:34 ID:P6EdzVxd
>>174-175 レスどうもっす。笑ってくれればそれでいいです。
自分の笑いの感性にズレがないかどうしても確かめたかったゆえ
少々意固地になってしまったことを反省します。
御二方の犀利な批評、どうもありがとうございました。
それではここらへんで失礼します。
書きます。
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1009/10097/1009774787.html 祐一・美汐夫妻シリーズ
第一話「月曜の朝」
>138-140
第二話「Baby Face」
>508-510
第三話「ベクトル」
その翌日──つまり一昨日のことだが──美汐は一人ものみの丘に来ていた。
まだどこかに残るもやもやを解消するには自分の目で確かめればいい。
そんな気持ちになれたのも、
「祐一さんのおかげね」
と、雲の切れ間からわずかに陽光が差す雨上がりの空を見上げて美汐がつぶやいた。
丘の緑は雨に洗われ本来の色を取り戻し、瑞々しい輝きがそこら中に溢れている。
そして、そんな景色に不釣合いな暗い表情をして、男が立っていた。
美汐は思わず身を隠した。
青ざめた男の顔には生気というものがまるで感じられない。
(本当に幽霊だったらどうしましょう……)
木の陰で震えながら美汐は思った。
(こんなことならもっと前に怖がっていれば良かった)
混乱しているのか、考えがやや意味不明である。
とりあえず、美汐は男に足があることを確認した。
が、今度は幽霊には足がないという俗説の信憑性を思案し始めるのだった……
男は何をするでもなく、ただじっと立っていた。
時折、風が草木を揺らし、枝葉に残った水滴がパラパラと美汐の上に落ちてくる。
(噂は全然本気にしていなかったけれど、確かに遠目では目鼻立ちも整っているような……)
なにやら思案の方向が大幅にずれてきた美汐。
ここに来た目的はすっかり忘れているようだ。
また風が吹いた。
男はやはりそこに立ち続ている。
風が止む。
突然、男は崩れるように地面に両手をつき、震える声で女性の名前を叫んだ。
美汐は電撃に打たれたような衝撃とともに、直感した。
この人は待っているんだ。
この丘に消え、もう二度と戻っては来ない大切な人を。
あのときの私と同じように。
あのときの祐一さんと同じように。
男は声をあげて泣いていた。
命を振り絞るようなせつない響きが美汐の胸を締めつけた。
痛む胸を抑える手は知らず、強く、固く握られていた。
唇を噛み、二歩、三歩、後ずさる。
美汐は、これ以上男の苦しむ姿を見ていることはできなかった。
振り返ると、そこから逃げるように走り出した。
まだ買ったばかりの靴はぬかるみにはねた泥でみるみる真っ黒に染まった。
……どれくらい走っただろう。
息が苦しくて、いや、それ以上に胸が苦しくて、美汐は道端にうずくまってしまった。
「祐一…さん……」
両手で顔を覆い、かすれた声で夫の名を呼ぶ。
薬指の小さな指輪が何か言いたそうに鈍く光った。
『泣きたくなったら俺に言えよ?』
美汐はいつか聞いた祐一の言葉を思い出していた。
『たとえ慰めることができなくても、一緒に泣くことなら俺にだってできるからな』
「祐一さん…私……」
美汐は何の飾り気もないその指輪を包み込むように胸に抱くと、今度ははっきりと言った。
「私は、大丈夫ですから」
私には祐一さんがいるから、だから……
そこで美汐はハッと気づいた。
あの男の人にはそういう存在がいるのだろうか。
そばにいて、一緒に泣いてくれる人はいないのだろうか。
美汐はものみの丘を振り返った。
今でも慟哭が聞こえてきそうな、悲しい色をしていた。
次の日は祐一と出かける予定で、それは雨でつぶれたので、二人は一日中家で過ごした。
「せっかくの休みなのに……」とボヤく祐一をなだめるのは美汐にとっても楽しいことだ。
昨日のお礼にとばかりに、めいいっぱい甘えさせてあげた。
だが、自分が幸せを感じるたびに、あの男のことが気になって仕方がなかった。
きっと今もあの丘で待っているのだろう。
雨の中、たった一人で。
──そして今日、美汐はもう一度ものみの丘に行こうと思っていた。
髪をとかし、薄く口紅をひく。
「別に祐一さんに隠すつもりではないわけですし、ただ、事情がはっきりわかってからでないと、
祐一さんに話したって意味ありませんものね?」
美汐は三面鏡に映る自分にそう言い聞かせた。
鏡の中の自分も深くうなづいてみせる。
よそ行きの服も用意したのだが、それは着なかった。
支度を整えると、美汐はもう一度空模様を確認し、お気に入りの栗色の傘を手に取った。
そして、しばらくためらった後、予備に置いてある折りたたみ傘もバッグにしまい込み、外に出た。
空はとうとう堪えきれなくなったように、冷たい雨を降らせ始めた……