葉鍵サバイバル 公開2日目

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1名無しさんだよもん
 南海に作られた孤島、空想上のモンスターが暮らすモンスターパーク。
其処に集った103名の招待客と、その他諸々に悲劇が襲いかかる。
遺伝子情報の利益とリアルリアリティに目がくらんだ超先生によるシステムの暴走。
「檻に飼われたモンスターなんてリアルじゃない、真のリアリティを見せてやる。」

 運送ジープの暴走で島でばらばらになった彼らに遺伝子工学と魔法技術により
伝承にほぼ近い能力を身につけた、古今東西のあらゆるモンスターが迫る。
手持ちの武器、水、食料の無い中、果たして彼等は生き延びる事が出来るのか?
【元ネタ:ジュ○シックパーク 各種漂流モノ】

・書き手のマナー
 キャラの死を扱う際は要注意、1人で殺さず上手くストーリーを誘導しましょう。
 また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
 なお、同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず全面的に禁止します。
 マイナーモンスター、武器を登場させる場合は話の中か後に簡単な説明をなるべくつけて下さい
・読み手のマナー
 自分の贔屓しているキャラが死んだ場合、あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
 頻繁にNGを唱えてはいけません。
 また苛烈な書き手叩きは控えましょう。

関連スレ
【前スレ】
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1009296019/
【葉鍵リレー小説総合スレ】
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1007821729/
【RTO氏による編集サイト】
http://www23.tok2.com/home/hakasaba/
2名無しさんだよもん:02/01/25 03:28 ID:sxIQMxFB

                /⌒ヽ
                | U\ \
                ∪  \ \  ∧_∧
         ___       \ \(´Д` )
        (_(__ \      \⌒   ⌒ヽ
          \_    \       \     | \  へ
           \    |\_____\    |\ V /
            )     )        ̄ ̄ ̄ ̄\\__'っ
            |    /⌒\__ノ        |\__
            \_ノ        ̄ ̄―___ノ___ ̄―⌒\
                                      ̄ ̄\_⊃
_______________∧_______________

      >>2ゲットーーー!!
3名無しさんだよもん:02/01/25 03:37 ID:tQeJWJqo
4美坂栞:02/01/25 04:01 ID:WNumRbnG
そんなこと言う人、きらいです。
5名無しさんだよもん:02/01/25 04:02 ID:nXYG3cEB
5
6くるくるパー子:02/01/25 04:22 ID:iQh4Iqh2
6
7里村茜:02/01/25 07:11 ID:MrGaIK9Z
……嫌です。
8名無しさんだよぅ:02/01/25 07:29 ID:ZkXSR88C
駄スレsage
9名無しさんだよもん:02/01/25 07:30 ID:EDFbOk5v
ひでぇなおい(w
誰か1本あげればいいとは思うが……さて……
10名無しさんだよぅ:02/01/25 07:43 ID:ZkXSR88C
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11名無しさんだよもん:02/01/25 13:57 ID:SqoulaH7
もうすぐ本スレの方が流れてくると思うので、このスレもまともになるだろう。
検討を祈る…
12フェアリーズ・ナイトメア:02/01/25 14:03 ID:ZTMff++W

しとしとと降り注ぐ雨。
その中を、全速力で走っていく二人の影があった。
「あーもう、濡れたら風邪引くやんか!」
「……不気味ね」
ぽつり、と呟く坂下の言葉に、智子も思わずあたりを見回す。

薄暗い闇の中で、無数の花がゆらゆらと揺れている。
昼間なら美しく見えるだろう光景も、この闇の中では、違和感ばかりを覚えるだけだった。
「……坂下さん、所々光ってるのは…何やろな」
「確かに、花のすぐ下あたりが、光って……っ!!」
いきなり、その光のひとつがこちらに飛んで来たので、坂下は反射的に叩き落した。
虫を叩いたのとは違う、肉を潰した嫌な感触が伝わってくる。
「……ひっ!?」
地面に落ちたそれを見て、智子が息を飲み、坂下は凍りついた。
そこにあったのは、首が千切れかけ、身悶えている小さな妖精の姿だった。

(コロシタ・・・・・・ナカマコロシタ)
(ニク・・・ニクガタベタイ)
(ニンゲン・・・ニンゲンオイシイ)

鈴の音のような、しかし耳障りな声が、花畑中から聞こえてくる。
次の瞬間、いっせいに飛び掛ってきた妖精が、皆スズメバチのような顎を開いているのを見て、
智子はたまらず悲鳴をあげていた。

13フェアリーズ・ナイトメア:02/01/25 14:03 ID:ZTMff++W

だが、とっさに坂下は智子の手を引き、屋敷まで駆け出していた。
その背後から、異様な羽音が、怒号のように鳴り響いてくる。
「なんやの、なんやのんあれは!!」
「妖精だっ……多分、凶暴化した……!」
そこまで言った瞬間、坂下の右腕が、何の前触れも無く、大きく裂けた。
「ぐぁっ!!」
「坂下さん!!」

(エヘヘ・・・イチバンノリ)

腕の肉がごっそり抉り取られ、そこから血が噴き出していた。
思わず坂下が膝をつき、智子が駆け寄る。
その二人の前に、前身を血に染め、スズメバチの頭をした、小さな妖精が浮かんでいた。
首を傾げ、可愛らしげな仕草で、坂下の腕の肉を、租借しながら。

「このぉぉっ!!」
とっさに智子が手を振り下ろし、その妖精を叩き落した。
ぐじゅり、と頭が潰れる感触に、智子は吐き気を催す。
地面に落ちた妖精は、痙攣しながら、脳みそをあたりに撒き散らし、やがて動かなくなった。
「……応急処置は、せめて屋敷の中に入ってからや!」
「わかって…わかっている」
痛みと出血で、真っ青な顔をしながら、坂下は立ち上がり、走り出した。
14フェアリーズ・ナイトメア:02/01/25 14:03 ID:ZTMff++W

(オニゴッコダ)
(オニゴッコシヨウ)

耳障りな鈴の音と羽音が、すぐ背後まで迫ってくる。
智子は、坂下をかばいながら、必死で屋敷までの道を走る。

泥水が跳ね散り、頭痛と吐き気に耐えながら、何とか二人は屋敷の前までたどり着いた。
だが、そこに佇む鎧に、息を飲む。
「あいつ…首が……」
「デュラハンっちゅう……人の死を予言するとかいうモンスターや…まずいな」
そのとき、その手に持たれた首が、ぎろり、と智子と坂下の方を向いた。
思わず悲鳴をあげ、逃げようとした二人に、だがデュラハンは穏やかな声を投げかけた。
「お嬢さんがた、雨に濡れてお困りだろう。どうぞ中へ。大した持成しはしかねるが」
『……へ?』
その紳士的な態度に、顔を見合わせる二人。
だが、そうしている間にも、背後からは妖精の大群が迫って来ていた。
「……行くしかないか」
覚悟を決め、二人はデュラハンの開いた扉を潜り、屋敷の中に入っていった。

「二名様………ご案内」
ごとぉぉん、と扉を閉ざすと、デュラハンの抱えた頭が、醜悪な笑みを浮かべた。
屋敷の中は、絶望への道。そこは、死の舞踏会。
彼の役目は、その罠の中に人間を誘い、そして………
決して一人たりとも、この屋敷から逃さない事なのだ。
15フェアリーズ・ナイトメア:02/01/25 14:05 ID:ZTMff++W
何とか雨と妖精から逃れ、ほっとした智子は、屋敷の中を見回した。
そこは、いくつもの鎧が並べられた、博物館のような造りになっていた。
『ようこそ、ようこそ!』
いきなり聞こえた声に、智子と坂下は、ギョッと振り向く。
『ようこそ、鎧達のお屋敷へ! 応接間では、パペットのおじさんが美味しい紅茶を入れてくれます。
どうぞお越しくださいませ!』

「な、なんや、ただのインコのロボットやないか……」
「私としては、あの鎧の方が気に入らないわね」
坂下の指差す先には、確かにあらゆる武器を持った鎧達が、ずらりと並んでいた。
中には、角のようなものが生えた、赤い鎧もある。
「あれはやっぱ、三倍のスピードが出るんかいな?」
「?? ごめん、よくわからないわ」
不安を打ち消すため、無駄話をしながら、二人は鎧の間を歩いていく。
一際、ごつい鎧の側を通り抜けた瞬間、いきなり全ての鎧の止め具が外れ、鎧たちはいっせいに二人に跳びかかってきた。
「やっぱりかいな!」
二階に上がる階段を、慌てて駆け上ろうとしたその時、ごつい鎧が、すぐ後ろに迫って来た。
「まずいっ!」
その手が、動きの鈍った坂下に伸び……いきなり、鎧が転んだ。
がちゃあぁん、と凄い音と共に、「ふぎゃんっ」という人間の声も聞こえていた。
その鎧のヘルメットが脱げ、呆然としている坂下と智子の足元に、転がってくる。

「はにゃふらにょ〜〜〜……」
二人の人間の前で、目を回しながら、アレイは自分の仕事が失敗したことを悟っていた。
16長瀬なんだよもん:02/01/25 14:09 ID:ZTMff++W

【坂下、智子、コミパメンバーのいる屋敷に侵入。坂下は腕を負傷】
【坂下、智子、アレイと遭遇】

新スレ一発目です〜
しかし、最初はホラーなのに、長続きしませんですな…

妖精は、ベルセルクに出てきたピーカフのイメージですね。
17RTO:02/01/25 16:08 ID:t3QpfMnO
仕事先から帰ってきましたRTOですこんばんわ。
仕事先で考えた話は速いものがちルールにのっとり全て(4本)お蔵入りとなりました。爆死。

とりあえず今日〜明日でサイトを更新いたしますのでお待ちください。
新スレ建てお疲れ様です〜

(さて……総合スレのあの荒らしとも批判ともつかない発言には答えるべきだろうか……
半ば名指しで批判された以上少しは反論したほうが良いのだろう……)
18名無しさんだよもん:02/01/25 16:14 ID:TO9eTPzt
NG論議ってわけではないし。
文句の言えない作品を出すことで答えるべきだと思うよ。
書き手としては。
19名無しさんだよもん:02/01/25 20:28 ID:OqDXVQnM
>>RTO氏
みんながみんな批判的な意見じゃない、俺的には悪くないと思うよ。
だからがんばれ!!
20死神の思いは:02/01/25 21:35 ID:20zMu8M9
 ぽつぽつと雨粒が頬に当たり、砕けていく。
身体が雨に濡れていく。そのことに気がつかないかのようにエビルは立ち尽くす。
(私は……)

「江美さん!」
 よく知った声が聞こえた。エビルは声の方に顔を向ける。
「江美さん、こんな所で何してるんですか。風邪引きますよ」
「芳晴……」
 芳晴はすぐに、普段とは違うエビルの様子に気が付く。
「何があったんですか?」
 エビルは何も言わず鎌を自らの前方に向ける。その先には――

「緒方理奈じゃないですか! どうしてこんな所で倒れているんですか?」
 芳晴は慌てて理奈に駆けつけようとするが、
「もう生きてはいない」
 そのエビルの声に硬直する。
「私が殺した」
「……死神の仕事ってやつですか?」
 その問いに対し、エビルはただ首を横に振る。
「じゃあ、どうして。どうしてこんなことを?」
 芳晴の声に胸が痛む。
21死神の思いは:02/01/25 21:36 ID:20zMu8M9
「芳晴。私は芳晴が大事だ」
「えっ!」
 突然の告白に、芳晴の顔が熱くなる。
「ルミラ様、イビル、メイフィア、フランソワーズ、たま、アレイ、皆が大事だ」
 なんだ…。芳晴はがっかりしつつも少し安堵する。
「この娘にはここを生き延びる力は無かった。私が手を下さずとも遠からず死んでいただろう」
「だからって、そんな」
「この島で死んだ者の魂が一ヶ所に捕われている。おそらく魂を集めているのはあの天使だろう」
「ユンナ、か」
「大量の魂を集めて何をするつもりかは分からない。だが良くない事であるのは確かだ。事によれば、
人間界全土、いや、魔界や天界にまで影響が及ぶかもしれん」
「…………」
「だからこの娘の魂が捕われる前に、本来あるべき死後の世界へ私が導いた。
もっとも、私が殺した事には変わりはないが」
 そう言って、寂しそうに笑う。
「江美さん」
「芳晴。私は芳晴が大事だ。失いたくはない。その為なら私は……」
「江美さん、俺も江美さんが大事です。俺、江美さんが……」
 そう言いながら、芳晴はエビルの肩に手を回し――
22死神の思いは:02/01/25 21:38 ID:20zMu8M9

「よーしーはーるーー、エービールーー、雨降ってんのに何やってんのよー」
 芳晴とエビルは反射的にお互い身を離す。コリンの声が近づいてくる。
「あっ、いたいた。ん? 二人共どうしたの? 顔赤いよ?」
「いやなんでもない。うんなんでもない」
「……なんでもない」
「そう? まあいいや。あっちに休憩所があるから、早く雨宿りしに行こ……って、
あそこに倒れてるのって緒方理奈!? なんでなんで?」
「もう彼女は死んでいるんだ。事情は歩きながら話す。行こう」


23死神の思いは:02/01/25 21:39 ID:20zMu8M9
 道すがら芳晴はコリンに事情を説明した。完全にではないが、一応納得してくれたようだ。
もちろん最後の方の会話は伏せておいた。
(な〜んか隠してるような気がするのよね〜。それにしてもユンナのバカ、一体何考えてるのよ)

 程なくして休憩所に到着した。
「やっと着いた〜。さ、雨宿り雨宿り」
「バカッ、中に誰か居るかもしれないだろ! ノックぐらいしろっ」
 芳晴が制止しようとしたが時すでに遅し。ドアは開かれていた。
 
 建物の中には一人の少年と、ソファに横たわる少女がいた。その視線が芳晴達に向けられる。
「やあ、お客さんだね」
「ひっ、氷上さん。あのひと、鎌持ってます!」
「あ、俺ら怪しい者じゃないから」
 芳晴が答える一方で、エビルは戸惑っていた。
(あの少年の魂はなんだ? まるで今にも消えてしまいそうな感じがする。死が間近とも思えないが)

【城戸芳晴・エビル・コリン 休憩所でシュン&美汐と遭遇】

24名無しさんだよもん:02/01/25 21:50 ID:20zMu8M9
前スレ シュン&美汐>>247-249 エビル&理奈>>576-578 からつながってます。

エビルが理奈を殺す理由をなんとかしようとして爆死。



25疾風食逃客:02/01/26 00:14 ID:grMCXlVE
実は昨日ここが荒らされていく過程をちびちび見ていました。
実際スレ立ててみてわかったんですが、コピペよりageられる方がダメージ大きい(^^;
人の少ない時間に立ててしまった自分のミスということで、次があったら気をつけたいと思います。

>RTOさん
>>19さんの言うように、みんながああいった意見を持っているわけではないと思いますよ。
現に叩いていた部分があっという間に無視されてますから。
自分から動こうとせずに編集サイト任せてしまったこちらにも責任があるのかもしれませんね。
すみませんでした。
これからも頑張って下さい。
26駆け引き(1/3):02/01/26 01:13 ID:r5zOtEAM
「長瀬さん、ショットガンを貸してください」
 柳川の要求に対し、落ち着いて長瀬刑事はサーベルタイガーから目を逸らさずに片手でショットガンを手渡した。
「この距離で当てるのかね?」
「この距離からじゃあたりません。引きつけるだけ引きつけて頭に直撃させます」
 と言ってジリジリとジープから離れるように斜め前に移動した。
 真意がわかりづらい笑みを浮かべた長瀬主任が、
「おもしろい作戦じゃないか、やってみる価値はありそうだね」
 と、言ってセリオに耳打ちしなにやらごそごそし始めた。
 一通り行動が終わった長瀬主任は、助手席に入りこんだ男をみた。
「君はここのスタッフのようだが名前は?」
 いきなり話をふられ一瞬男は驚いたが、落ち着いて
「…橘敬介です」
「この辺で人が集まりそうな場所はないかね?」
 橘はしばし考え
「次の十字路を右に行けばホテルがあります」
「ホテルか…。柳川君、もしもの時は次の十字路を右だ!」
「わかりました」
 とサーベルタイガーを見据えて柳川。
27駆け引き(2/3):02/01/26 01:14 ID:r5zOtEAM
そして、動きが止まった。
 柳川は銃を構え相手の飛びこみを待っている。
 長瀬刑事もまたジープの後部座席から顔と腕だけを出して銃を向けている。
 セリオはバックミラーで相手の動きを観察している。
 長瀬主任も銃を手に持ち何があってもいいように準備している。
 橘は何もすることができない、何故なら銃の扱い方もしらないし、この人間たちもまったく面識がないのだから。
 サーベルタイガーは長瀬刑事に敵意を剥き出しにして低い唸り声をあげている。
 もう、何分たったのであろうか。
(最低でも二分は経ってるな)
 橘はこの緊張が絶えられなくなっていた。
 お互いに動けない、そして動いたほうが負ける、まさにその雰囲気だ。
 動いたのはサーベルタイガーだった。
 無造作に低い跳躍で一気にジープに詰め寄る。
 長瀬刑事は身を隠した、柳川がしくじった時の為だ。
 サーベルタイガーがジープの約5M手前でジープに向かって飛んだ。
 柳川がショットガンの引き金を絞る。

 ダンッ!!

 至近距離で散弾が放たれたが狙いがそれ、数十発の散弾のうち数発がサーベルタイガーの腹に命中した程度だった。
 それではサーベルタイガーの勢いは止まらない。
「セリオ!!」
 長瀬主任が柳川が失敗したとみるやいな、セリオを叫んだ。
 セリオはアクセル全快にして急発進したのだ。
 サーベルタイガーはつかまるべき場所が無くなって態勢を崩しながら着地、次に自分を撃った柳川に敵意を向けて飛びかかった。
28駆け引き(3/3):02/01/26 01:15 ID:r5zOtEAM
「ちっ!!」
 柳川は横っ飛びしてそれをかわす。

 ダンッ!!

 だが、柳川はただかわしただけではない、再度頭を狙って発砲した。
 散弾はサーベルタイガーの右前足を使い物にならなくし、サーベルタイガーを転倒させた。
 その隙に柳川は立ちあがり、距離をとって銃をリロードした。
 柳川をジープの位置を確認した。
(奴の後ろにジープか、厄介な位置に立っちまった)
 三本足でなおも立とうとする、サーベルタイガーの真後ろにジープがあるのだ。
 サーベルタイガーを無視してジープに乗り込める望みはない。
 そして、この位置で銃を撃ったら下手したらジープに当たってしまうというおそれが出てきた。
 だが、この現状を利用しようと柳川は考えた。
「長瀬さん、先に行ってください!こいつはなんとかしますから!!」
 長瀬刑事は頷くとジープは走り去った。
 一般人を車の乗せて戦闘を続行するわけにもいかず、更に敵は弱っているから柳川一人で勝てるとの判断であろう。
 柳川は車が走り去ったのを確認するとこう呟いた。
「これで力が使えるな…。ククク…さあ、来い獣。お前の狩りに付き合ってやる!!」
29R1200:02/01/26 01:19 ID:r5zOtEAM
【柳川、サーベルタイガーとの戦闘続行。長瀬’sと一時離脱】
【長瀬’s&セリオ、橘敬介と合流。ホテル向かう】
駆け引き(1/3)で
「君はここのスタッフのようだが名前は?」→「君はここの参加者のようだが名前は?」
です。
うう…、こうしてみるとミスだらけ…
30R1200:02/01/26 01:21 ID:r5zOtEAM
>>RTOさん
お仕事お疲れまです。
サイトの運営頑張ってください
31抑えるべき感情:02/01/26 12:29 ID:25yruYCc
「ふははっ! 思い知ったか化物ぉ! 俺様に勝とうなどとはとんだ思い上がりだったなあっ!!」
 襲い来る怪物達を全て沈黙させた後、高槻は愉快そうに彼等の死体を踏み付けた。
 高槻に続いて、少年達も爆音を響かせるジープから降りてくる。
「あははっ、すっごく格好良かったよ!」月代が楽しそうに、少年へ賛辞の言葉を送った。
「すごかったですぅ〜! 浩之さんもさもありなんですぅ〜!」マルチもそれにならう。
「それはどうも」
 笑顔で応える少年に、高子も丁寧に頭を下げた。
「ありがとう、少年君、高槻さん。 貴方達のおかげで助かりました」
「そうだ、俺様が助けたのだぁっ! もっと感謝しろぉっ!」
 高槻のその要求に、月代が口を尖らせる。
「ぶ〜〜っ! 高槻、今のでイメージダウンだよ!」
「なにぃっ!? 俺様が感謝されて何がいけないぃっ!」
「はわわ〜っ ふたりとも喧嘩しないでください〜っ」
 一気に場は騒がしくなる。
「やれやれ、困ったもんだね」
 少年が苦笑しながら高子に言うと、彼女も同じ表情で返した。
32抑えるべき感情:02/01/26 12:30 ID:25yruYCc
 それから十分以上が経つ。
 五人の男女は、ホテルへ向かって歩いていた。 ジープは巡回コースから離れていないので、帰り道
は容易に解かった。
 高子はその前に「他の客を助けるべきではないか」と提案したが、少年の「先に自分達の安全を確保し
なければ、それもままならない」という言葉に納得していた。
「ええい、何故俺がこんな目に遭わなければいけないぃっ!」
 先頭を行く高槻が、減らず口を叩く。
「まあまあ、高槻さん。 こうなってしまった以上は仕方ありませんよ。 落ち着いて、無事に帰る方法
だけを考えましょう」
 高子は、決して怒る様子も無く、子供に言い聞かせる様に穏やかに諭した。
「そうだよ。 それに、そんな大声を出していたら怪物達を呼び寄せてしまうかも知れないし」
 少年にも言われ、むぅ、と閉口する高槻。 それでもまだブツブツと苛立たしげに呟いている。
 少年は溜め息一つつくと、首を巡らして後ろを向いた。 
 彼の後方を歩いているのは、マルチと月代… の筈なのだが、月代の姿が無い。
「あれ、月代は?」
 少年の言葉に、一同は「え?」という間の抜けた表情を浮かべた。
「あれ? 月代さ〜〜ん、どこですかぁ〜〜〜」
 マルチが間延びした声で呼びかける。 少年らも、辺りを見回して月代の姿を探す。
 すぐに高子が発見した。 月代は、ジープの巡回コースから少し離れた、林の方に寄っていた。
「月代ちゃん、危険ですよ。 戻って来て下さい」
33抑えるべき感情:02/01/26 12:31 ID:25yruYCc
 最後尾を歩いていた月代は、不意に妙な気配を感じ、一行から離れて歩いていた。
 それは少年でさえ気付か無かった気配だが、仙命樹によって高められた月代の感覚は、敏感に感じ
取っていた。
 一人で離れることは危険だと解かっていたが、それよりも月代は、生まれ持った好奇心に動かされて
いた。
「…この辺りに…」
 何かいるみたいなんだけどなあ、と木々の中に目を凝らす。
 しかし一面真っ暗で、何も見えない。 月代は頭を傾げた。
「月代ちゃん、危険ですよ。 戻って来て下さい」
 そうしているうちに、高子に呼び止められた。
「あ、は〜〜〜〜い」
 大きな声で答えると、月代は今一度だけ林の中を振りかえると、高子達の元へ歩き出した。

 その直後。
 巨大な顎門が、月代の上半身を噛み砕いた。

「え?」
 高子は呆然と声を出した。 彼女の視線の先で、半分だけの身体になった月代が倒れた。
 そして他の面々は、月代よりも、まず林の中から出て来た巨大な姿に声を失った。
 それは、映画や図鑑でしか目にした事がない生物。 "暴君トカゲ"と呼ばれた、白亜紀後期の恐竜。

 ティラノサウルス・レックス。


【三井寺月代 死亡】
【高槻一行、Tレックスに遭遇】
34名無しさんだよもん:02/01/26 12:35 ID:25yruYCc
31と32の間は一行、
32と33の間は二行あけてお願いします。
35RTO:02/01/27 00:47 ID:oHOY2zUb
どもRTOです。サイト更新は順調に遅れてます。メモリ増設したらPCの機嫌が悪くなりました。

前スレ592「分散」なんですけど、これは……どうなんでしょう NGですか?
どうも結論が出ていないようなので作者様にお聞きしたいのですが。
36賢い判断:02/01/27 03:39 ID:o712DrEL
「誰か、誰か助けてえぇー!!」
 絶叫が辺り一面に轟く。
 
 高倉みどりは森を走っていた。その表情は恐怖に凍り付いている。
 さっきまで三人で楽しく笑っていたのが夢のようだ。
 突然の園内放送。続いてジープの暴走。
 同じジープに乗っていた橘敬介とははぐれてしまった。
 しかし、彼にとってそれが幸運だった事は間違いない。

 チラッ、と後ろを振り返る。

「にゃはは。みどりさんって本当に美人ですね〜」

 そう笑った芳賀玲子は、そこにはいない。どこへ消えたのか。
 
 みどりの視線の先には一匹の蛇がとぐろを巻いていた。
 いや、それを蛇と呼んで良いのかは疑問が残る。
 一般に世界最大級の蛇とされるアナコンダやニシキヘビでさえ、その体長は10mがせいぜいだ。
 だがその蛇らしきモノの体長は、20mを越えているように見えた。
 そして、その胴部は不自然に膨らんでいて、まるで人の顔のような皺が浮かんでいた。

「いやよ、いやぁぁぁあああっ!!」
 
 みどりは駆ける。
 次の瞬間、何の前触れも無く、しなやかなロープのように蛇が飛び出した。
37賢い判断:02/01/27 03:41 ID:o712DrEL
 誰かの叫ぶ声が聞こえた。
 久瀬は慎重に、できるだけ音をたてないよう声の方へと近づいていった。
 ある程度進んだ後、久瀬は低めの木を選んで登りその枝に腰掛ける。

 見ると、一人の女が何かから逃げている様子だった。
 視線を女の反対側に移す。
「あれは、蛇か……」
 アナコンダ、キングコブラ、ニシキヘビ……。
 何種類かの大蛇を思い浮かべるが、あれほど巨大な蛇を久瀬は知らなかった。

(さて、僕はどうするべきか……)
 肩から下げたアサルトライフルの重みを感じる。M16と呼ばれているらしい。
 
 上月澪を見捨てた後、群れから離れて歩いていた弱そうな獣を見つけ、試し撃ちをした。
 案外軽く、操作もそれ程難しくは無かった。
 銃弾は殊の外あっさりと化け物に吸い込まれてゆき、盛大に血が吹き出し、やがてそれは動かなくなった。

(今僕があの化け蛇を撃ち殺せたと仮定しよう。それによって生じるメリットはあるのか? 
女は僕に感謝する。その後、僕に同行を願うに違いない。それだけだ。……駄目だ。
何のメリットにもならない。見た所あの女は武器を全く所持していないようだ。
只の足手まといにしかならない。失敗した時には僕は死ぬ。デメリットの方が大きすぎる。決定だ)

 0.5秒思考し、久瀬は決断した。
38賢い判断:02/01/27 03:44 ID:o712DrEL
 蛇に目を戻す。その途端、蛇が飛び出した。
 しゅるしゅると地を這い蛇が女に近づく。
 速い。100m以上あったはずの距離がみるみる縮まっていく。
 
 10秒とかからず蛇は女に追いつき、女の足に喰らいつく。
「きゃぁぁああ!! いや、嫌よ。こんなの、いやぁぁああ!!!」
 女の声が虚しく響いた。

 
 数秒後。
 もう声は聞こえない。蛇の胴はさらに大きく膨らんでいた。

「運が悪かったね。しかし、あんな死に方は堪らないな」
 女が蛇に飲み込まれたのを見届け、久瀬は独りごちる。
「どんな手を使ってでも、僕は絶対に生き残る」
 
(さて、そろそろ移動するか)
 そうして移動しようとした久瀬の頭に水粒が当たる。
「雨か……。やっかいだな」

【芳賀玲子・高倉みどり 死亡】
【久瀬 M16所持。移動】
39賢い判断:02/01/27 04:22 ID:o712DrEL
レス間は三行あけで。文章力がもっと欲しいなあ。精進せんと。

ついでに今までの状況をまとめたので、
http://8508.teacup.com/hakasaba/bbs
支援用の掲示板の方にあげときました。見にくいですが、参考にでも。

あと細かい矛盾ですが、>>12-15でアレイが鎧を身につけてますが、
40話ではアレイは鎧を脱ぎ、つけ忘れている事になっています。
40話の鎧を脱ぐ描写辺りを少し修正すれば、解決するかと。
RTOさん、いつもありがとうございます。
40狩りの時間:02/01/27 18:03 ID:oHOY2zUb
 武器も持たずに飛び出した祐介ではあったが、果たして彼には「武器」が存在した。
(…………)
 過去。彼の言う「色あせた日々」のさなかに起きた小さな事件。それから手に入れたチカラ。
 ちりちりと頭の中を駆け巡るモノ、電波。
(…………)
 日常生活の中では、これまでついに一度も使用される事のなかったこの能力ではあるが、
 そしてなにより祐介自身が嫌悪感を抱くにいたった能力ではあるが。
 祐介はこのチカラを、あの事件以来はじめて積極的に使おうという気になっていた。



 沙織言うところの「おっきいハゲワシ」。
 食料探しに出かけた一行に突如突進してきた挙句、沙織がでたらめにふりまわしたモーニングスターによって
 頭部をつぶされあえなくその生涯を終えた怪鳥を、4人は交代で背負いながら武器博物館に向かっていた。
「あの時バッグ落とさなければよかったんだけどね……」
 サラがぽつりと呟く。

 あの時、とはほんの数時間前に起こったグリフォンとのカーチェイスである。
 あの時は気付かなかったが、どうやらどこかで食料の入ったバッグを落としてしまっていたようだ。
 無論全ての食料を落としたわけではなかったが、手元に残ったのはポテトチップスなどの菓子系と、あとはジュース。
 サンドイッチや弁当などの本来の意味での「食料」は専ら落としてしまったほうのバッグに入っていたのだ。
41狩りの時間:02/01/27 18:05 ID:oHOY2zUb
(三行開け)
「まあ、コイツを焼くなりすればそれなりに食べれると思うよ。ん、ピッケもおなかすいた?」
 言いながら沙織は、肩口に腰掛けたコロポックルの子の頭をなでてやる。
「はあ……これじゃ原始人ですねぇ……」
「明日になったらまたどこかの売店でも襲撃しましょう。」 
 と、サラとエリアが愚痴った直後の事。

 先頭を歩き、ハゲワシを背負っていたサラがぴたりとその足を止め、ムチを手に身構えた。
 それを見てエリアもまた、呪文詠唱の準備に入る。
「沙織、私達の後ろから離れないで」
「………っ!」
 本当のところ沙織は「あたしも戦う!」と言いたかったのだが。
 4人と一匹の前に姿をあらわしたモンスターをみて、その言葉は喉の奥深く飲み込まれる事となった。

 実際に見たわけではないが、沙織にはそのモンスターに見覚えがあった。
 つい先日祐介の家に遊びに言った際に、ゲーム画面の中でソイツを見たのだ。
 たしか名前は……ミノタウロスと言ったか。
42狩りの時間(終):02/01/27 18:06 ID:oHOY2zUb
 しかしてそのモンスターには奇妙な点がいくつか見うけられた。
 既にかなりの深手を負っていることと、あきらかにモンスター自身が流したものではない血が
 全身にべっとりとついていること。
「……………」
 しばらくの間沙織たちと無言でにらみ合っていたミノタウロスであったが、やがてくるりと背を向けた。
 何の事はない。勝ち目がないと判断し、その場を立ち去ろうとしたのだ。
 だがしかしサラの放った氷の刃が、その行為を許さなかった。
 もとより深手を負っていた頭部、心臓の辺りをまともに氷の刃で貫かれ、ミノタウロスはあっけなく絶命した。

「うわ」
 祐介は驚きの声を上げた。
 まあ、そこにはいささか落胆も含まれていたのだが。
「あ 祐くんだ やっほー」
「なんだ……全然博物館と離れてないじゃないか……心配して損したな」
ぶつぶつ言いながら、祐介は地面に転がる二つの「獲物」に目をやった。
「うーん……食べれるのかな……」
「まあ、火を通せばなんでも食べられるんじゃないの?」
「でも、雨が降ってきましたよぉ」
「あら……うーん、みんな火の魔法はあまり得意じゃないわね……」



「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………!」



「!?」
「あかりちゃんの声!?」
「そんな……hチリアたちが居る筈なのに」
「とにかく戻りましょっ!」
43狩りの時間 by RTO:02/01/27 18:11 ID:oHOY2zUb
【祐介、サラ達と合流。獲物ハゲワシとミノタウロス】
【祐介はティリア、浩之が自分を追っていることは知らないし会ってもいない】

誤字発覚
before>「そんな……hチリアたちが居る筈なのに」
after>「そんな……ティリア達がいるはずなのに」

前スレ594で指摘の矛盾点は消せた筈……
44RTO:02/01/27 20:14 ID:oHOY2zUb
サイト更新完了。指摘部分は直しました。
今回、一部の作品に「会話文以外は行頭1文字開け」修正を施してみました。
不快であれば申し出てください。
細かい部分もちょこちょこ修正。TOPに超先生講座へのリンク追加。
ついでに前スレログ保存……など。
45賢い判断:02/01/27 21:27 ID:ycAYPDQS
 海面から何かが浮かび上がる。
 少しずつ、少しずつ、その全貌が露になる。
 水滴がきらめく短い髪。閉ざされた瞼。
 その身体は微動だにせず、波のうねりに合わせて漂うのみ。
 
 水死体、いわゆる土左衛門というやつか。
 何者かに殺されたのか、はたまた現実に絶望したのか。
 事実は誰にも分からない。当の本人を除いて。

【??? 死亡?】
46マイペースor現実逃避:02/01/27 21:29 ID:ycAYPDQS
「はあ、気持ちいい……」
 土左衛門が突然口を開いた。

「そろそろ上がるかな」 
 そうつぶやき、河島はるかは浜辺に泳いで行く。
 リュックをがさごそと漁り、コーヒー牛乳(瓶)を取り出す。
 そして、あろうことか左手を腰に当てて、一息に飲み干しやがりました。
「……」
 ぷは〜っ、とでも言いそうな勢いではるかは息をつく。

 ここに冬弥がいれば、
「お前は結婚適齢期を逃した風呂上りのおっさんかっっ!!」
 とでも突っ込んでくれるだろう。

 彰がいれば、
「はるか……。はるかも女の子なんだから……」
 とか、少し気弱に諌めてくれるだろう。

 由綺や美咲さんなら、困った顔をして微笑んでくれるかな。……ちょっとつまんない。

 だが、今はるかの隣には誰もいない。
 彰と美咲さんはどうしただろう。ジープが暴走した後はぐれてしまったが、無事だろうか。
 彰はちゃんと美咲さんのナイト役を演じているだろうか。彰とナイト、彰とナイト……。
 どう頑張って想像してもイメージが結びつかない。要するに、完膚なきまでに似合ってない。

「あははは」

 独り笑う。
47マイペースor現実逃避:02/01/27 21:30 ID:ycAYPDQS
「これからどうしよう」
 思考を現実に戻す。現在この島がとても危険な状況だという事は、はるかにもなんとなく分かる。
 食料の問題もある。リュックにはハーシーズのチョコレートがたくさんあるが、それだけでは心許ない。
 なんとか脱出する方法を考えてみる。

 船を捜してみようか。いや、駄目だ。操縦法が分からない。
 こんな事なら、船舶免許でも取っておいたらよかった。
「ん……」
 
 いかだ。

 突拍子も無い考えが浮かぶ。いかだを作っている光景を想像する。
「楽しそう……」
 決定。
「何人くらい乗れればいいかなあ。私、冬弥、彰、由綺、美咲さん……」

【河島はるか いかだで脱出作戦】
48名無しさんだよもん:02/01/27 21:39 ID:ycAYPDQS
(゚Д゚)ポカーン
ミスった……。 >>45のタイトル、入れ忘れて前のやつが残ってたよ……。
タイトルは、「ドザエモン」でお願いします。
はるかのテーマがDOZAさん作曲だったら、「DOZAえもん」にしてたのに。チト残念。

RTOさん、更新おつかれです。
個人的には、特に指定の無いときのレス間の間隔は、3行あけがいいのですが、
他の皆さんはどうなんだろ。あっ、今回のもレス間3行あけでお願いします。
49R1200:02/01/27 23:13 ID:KxukZna6
>>RTO様
メイフィアの「魔術士」と緒方理奈の「貧乏くじ」を書いたの俺です〜(^^;
暇があったら修正してください〜。
友人の指摘で気づきました。
う〜ん。たまには自分のSSも読み返すべきですね。
読み返して己のへっぱこさに鬱。


50名無しさんだよもん:02/01/27 23:57 ID:xeEEjTjh
敬介はスタッフっぽい一般参加者という事でいいのだろうか?(ぉ
51幕間・アレイの場合:02/01/28 13:21 ID:i2xnn6eS

「はぁ、やれやれ……お金を稼ぐのも、楽じゃないなぁ」
アレイはぼやきながら、のたのたと階段を昇っていく。
結界から解放されたとはいえ、長い間じっとしていたので、どうも体の節々が痛い。
こきこき、と肩を鳴らし、アレイは呼ばれた(と思っている)部屋に向かった。
「……あれ?」
その時、その部屋の入り口に、一人の女性が佇んでいるのに気付いた。
「あなたは確か、マブさん……受持ちは、ここじゃなかったと思ったけど?」
きょとんとした顔をするアレイに、彼女はうっすらと微笑を浮かべ、手をかざす。
「はれ……?ど、どうして……ふにゃぁ……」
マブの催眠の魔術に捕われ、アレイはふらふらと床に崩れ落ちた。
「ね、眠いですぅ……マブさん、どうして」
半分閉じた目を強引に開きながら、アレイはマブに訊ねた。
すると、彼女は少しだけ困ったような顔をして、廊下の窓を指差す。
彼女が視線を逸らしたとたん、嘘のように眠気が消え去った。
アレイはなんとか立ちあがると、マブの指差す方向に目をやる。
「あっ……人間の人達ですか」
森の向こうに、ぽつんと二つの人影が伺えた。
まだ大分距離があるが、だからと言って、自分の仕事を疎かにするアレイではない。
「でも、そうならそうと、言ってくださればいいのに……」
すぐに眠気は去ったとはいえ、やはり術を掛けられるのは、あまり気分のいいものではない。だが……

「びえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

いきなり聞こえてきた泣き声に、アレイは文句を忘れ、跳びあがった。
52幕間・アレイの場合:02/01/28 13:23 ID:i2xnn6eS
元来、アレイはあまり胆の座っている方ではない。怖がりなお化けというのも、いまいち情けない話だが。
「あ、あ、それじゃあ、私はこれでっ」
自分が呼ばれたのは気になるが、彼女がいるなら、大丈夫だろう。
何より、泣き声が聞こえてきた、あの部屋の中を確認する気にはならなかった。
アレイはそそくさと階段を降り、パペット人形の脇を通って、一階のホールに戻ってきた。
そこは、沢山のリビングメイルの飾り場所である。
「あっ、そうそう、鎧を着けないと…」
無理やり働かされているにも関わらず、アレイはあくまで律儀だった。

このテーマパークには、五つにモンスターが分類分けされている。
一つが、魔術によって召喚された下級のモンスター達で、妖精やスライム等が、それに当たる。
二つ目は、それよりも上級で、人間並の知能を持ち、何らかの形で無理やり働かされているメンバーである。
当然、アレイはその口だし、あのマブとか言う妖精も、無理に召喚されて来たのだろう。
三つ目は、そんな魔術と科学を融合させて作ったもの達で、グリフォンやキマイラ等がそれに当たる。
四つ目は、逆に純粋に科学によって作られたモンスター…と言うより動物達である。
遺伝子操作によって生まれた、恐竜やサーベルタイガーなど過去の生物たち。
そして最後は、モンスター管理・監視用のロボットだ。

ここにいるリビングアーマーは、恐らく一番目の、魔術によって力を与えられた部類だと、アレイは見当をつけていた。
「はぁ、今度は下級な魔物達に混じって、人間を驚かせる役かぁ……私に務まるかなぁ」
パペット人形のマイケルから吹き込まれた嘘を、アレイは完全に信じきっていた。
「でも、仕事が変わったって事は、給料アップの可能性もあるって事ですよね! 頑張ろうっと!」
気合を入れ、アレイは一番奥の、飾り台の中央に立った。
(ルミラ様……必ず、お金を持って帰還いたします……)
がちゃん、と屋敷の扉が開く音を聞き、アレイは鎧の中で武者震いをした。
53名無しさんだよもん:02/01/28 13:25 ID:i2xnn6eS
【アレイ 飾り棚で人間を驚かそうと、待ち構える】

>>39さんに指摘された通りに、その間のアレイの行動を書いてみました。
話的には、>>13-15の前に位置します。
話を前後させちゃって、すいません。
54問答:02/01/28 17:41 ID:A/+LIOad
夢。
それは、とても恐ろしい夢で。



夢。
それは、とても悲しい夢で。



夢。
それは、とても----------



「人間の青年」
長いこと和樹につかみかかられていた妖精の女王は、静かに口を開いた。
陳腐な言い方をするならば「絶世の美女」とでも言うであろうその姿に見合った美しい声だった。
「……なんだよ」
気おされたのか、和樹の声のトーンがいささか低くなる。
「先程、お前達に試練を与えたのは私だ。 ……夢、と言う試練を……な」
「試練だって?」
「そう。試練だ。お前達に見合った、試練。」
そこまで言うと、女王は由宇の躯を見やった。
「お前達に全員に、同じ夢を見せた。それはあの娘も例外ではない……しかし、死んだのはあの娘だけだ。」
「ふざけるな!一人ずつ殺して楽しもうってのか?どうして由宇だけなんだ!」
「……あの娘は、試練に負けた」
55問答:02/01/28 17:41 ID:A/+LIOad
(1行開け)
「お前達人間では到底歯が立たぬ怪物どもがうごめくこの島から脱出するのはきわめて困難だ」
「……」
「その意思がいかに強固であるか……私は試練を与えた。やり遂げたい意思と、目的の難易度が違うのでは話にならない。
手っ取り早くこの地獄から抜け出したいのならば、自ら命を絶つなり、なにもせず、じっと助けを待てば良い。
だが試練の本質とは、そんな己の心を克服する事にある。
己の弱さを克服する石がなければ、目的を達成する事など不可能だからだ。 ……だから、試練を与えた。
結果、お前達三人は試練に打ち勝った。だが、あの娘は……」
「ちょっとまてよ……! さっきから試練、試練ってよ。じゃあアンタは俺達にどんな夢を見せたんだよ……
どんな試練とやらを与えたんだよ……!」
「思い出したいのか? 思い出させていいのか青年? ……間違いなく後悔する。特にお前は、な」
「そんなんで納得できるほどオトナでもないんだ。かまわないから思い出させろよ。」

瞬間。
頭の中に入り込んでくる映像。
誰かがナイフを持って。
いや、このナイフは俺のものだ。
俺が、ナイフを逆手に持ってる?なんで?
おい、やめろよ俺。畜生、体が言う事を聞かない。
おい由宇逃げるな。いや違う、逃げろ。やめろ俺。由宇逃げろ。瑞希も、詠美も、逃げてくれ!
違う! これは俺じゃない! 俺は、こいつらを、この女の子達を、守るんだよ!
クソッ!やめろ、俺!詠美に、由宇に、瑞希に、手を出すな-----------!
56問答:02/01/28 17:43 ID:A/+LIOad
(三行開け)
「!」
俺は我に返った。服にはじまり、靴下までぐっしょりと汗でぬれているのがわかる。
丁度、さっき夢から覚めたときと同じだ。違う点といえば、今度は夢の内容を思い出せると言う事だ。
「やはり、お前の信念は人一倍強いようだな、青年」
相変わらず、俺は女王とやらにつかみかかったままだ。俺はこの体制のまま眠っていたのか?道理で汗をかくわけだ。
「信念だ。目的を達成するにはやり遂げる意思と信念、それと信頼がどうしても必要になる
おまえは夢の中でこの娘達を守る意志を貫いた。 ……お前の、勝ちだ。
同様に、夢の中でもお前を信じつづけたそこの娘二人も試練に打ち勝った。だが、あの娘は……」

俺は由宇を見やった。いまだ詠美に抱えられたままの由宇。
あの腹の傷は、俺が夢の中でつけた傷なのか? 夢の中で、俺が殺したということか?
「……自分を責めるな青年。人間の思考は、こと極限状態においてどう転ぶかわからん。
あの娘の場合は、それが一番悪い方向に転んでしまっただけの事だ……」
俺は女王をつかんでいた手を離した。そして、もう応えることのない由宇に向かって問いかけた。
「そんなので……そんなので納得できるかよ……由宇……俺は、お前にとってどんな存在だったんだ?
そりゃ恋人だとかそんな感情期待してないけどさ……俺、そんなに頼りなかったのか?
トチ狂って、お前を殺しちまうような人間だと思われてたのかよ……由宇……!」
また、俺の頬を涙の筋が伝った。由宇を愛していたからとかそんなのじゃない。
ただ、悔しかった。こと他人の自分に対する評価が、人殺しというものに統一されてしまったような気がして。
57問答(了):02/01/28 17:47 ID:A/+LIOad
「泣いている場合ではないぞ、青年」
女王が、泣き崩れた和樹に声をかける。
「泣く事などいつでもできる。涙を流す事など、今でなくとも後でいくらでも帳尻を合わせることができるのだ。だが……」
階段を、ぎし、ぎしという音が上がってくる。どうやら階下の鎧どもが上がってくる音らしい。
「残されたこの娘を守る事は、今しくじったら取り返しがつかん。それを知ってしまったお前は、これからどう行動する?」
和樹は涙をふいた。そう。今の自分がなすべき事は、瑞希達を守って島を出る事だ。
すくなくとも、ここで泣きつづけて3人とも動く鎧の槍のサビになることではない。
「わかってるさ。」
言って、眠る前に自分が持っていたサーベルを探し出し、身構えた。
階段から、赤い色の鎧が姿をあらわした。3倍だ。
和樹は、サーベルの柄をしっかりと握り締める。
鎧が動いた。まっすぐ、和樹に向かって。そのあまりの速さに、和樹は一瞬隙を作った。
しまった斬られる。和樹はそう思った。俺、もう退場かよ?

「ハッ!」
それを防いだのは女王だった。
女王のかざした手から緑色の光。鎧がそれに触れたとたん、鎧の中から何かが抜け出たのちバラバラになり崩れ落ちた。
「それでいい、青年。お前の信念はそのまま使命になった。私がその使命にささやかな手助けをしてやろう。
それに……新たにやってきた客も、私がもてなさねばならぬだろうからな。」
そこまで言うと、和樹達が何か言う前に、和樹達は白い光に包まれ、消滅した。女王がワープさせたのだ。
「お前達が何処へ出現したとしても……なんとかなるであろう。幸運を祈っておるぞ、人間の青年。」

【和樹達、マブの魔力により館脱出 出現先不明 ちなみに由宇も同様】
58浮遊感覚(1):02/01/28 23:47 ID:KSr0vTxq
・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

なつみちゃん、遅いな・・・
ちゃんとスフィーに会えたかな・・・?

スフィー・・・まだ、無事だよな・・・?
いっつもドジで、わがままで、無鉄砲だけど、
一応王女様で、死人を生き返らせるような大魔法使いだもんな。

リアン・・・リアンも、スフィーと一緒なんだ・・・
・・・あの二人が一緒なら、きっと無事に決ってる・・・。

結花・・・
・・・・・・心配するまでも無いな。
あいつなら、例えドラゴンが出たって大丈夫だろう・・・
・・・大丈夫に、決ってる・・・。

みどりさん・・・みどりさんは、大丈夫かな?
結花とも、違うグループなんだよな・・・
くそっ、こんなことになるなら無理してでも一緒にいればよかった・・・。
59浮遊感覚(2):02/01/28 23:48 ID:KSr0vTxq
・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

ちからが、抜けていくのがわかる・・・・・・
出て行く前に、なつみちゃんがリングの魔力を補充してくれたけど、
もうすぐ、時間切れみたいだな・・・・・・

・・・死にかけるのは、これで2度目だけど・・・
・・・不思議なもんだな・・・怖いどころか、まるで他人事みたいに感じる・・・。
なんていうか、口の中のキャンディーが
「ああ、もうすぐ溶けそうだ・・・」
っていうくらいあっさりしてる・・・。

悪いな、みんな。
俺、みんなに何もしてやれなかったばかりか、
1人だけこんなに楽に逝っちまうなんて・・・。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・
60浮遊感覚(3):02/01/28 23:49 ID:KSr0vTxq
ん?
・・・なんだ、お前?
・・・そうか、腹が減ってるのか・・・。

だったら・・・この死にかけでも喰うか?

・・・腹、壊しても知らないけどな・・・。

ああ、そうそう。
だから、こっちの娘には手を出さないでくれ。

わかるか?
・・・・・・そうか・・・。
お前、モンスターの癖に結構律儀な奴だな・・・。

まぁ、そう急くなよ。
・・・できれば、ここじゃない方がいい。
悪いけど、少し付合ってくれないか?

・・・どこまで?
ああ、そうだな・・・

・・・俺の足が動かなくなるまで・・・かな?


【宮田健太郎 行方不明】
61『浮遊感覚』書いた奴:02/01/28 23:50 ID:KSr0vTxq
「誰もその後を書かない=死亡」ということで・・・。
ハッキリ【死亡】と書いた方がいい、というなら訂正します。

まじアンやったの大分前だから、健太郎になっているか不安(^^;
62名無しさんだよもん:02/01/28 23:51 ID:XCHJlXFs
いいんでない むしろ俺はこういうの嫌いじゃないし
63夢の途中:02/01/29 02:42 ID:ifiam8cR
「……」
「由里さん、落ちこんでないで一緒に由依さん達を探しましょう」
 落ちこむ由里を、葉子がそっとなぐさめた。
「ええ、そうね。探しましょう。探さなきゃ……」
「だから、落ちこまないで下さい」
「落ちこむに決まってるじゃない! あの事件の後から、妹とろくな思い出を作っていなかった。
 暴走した力で自分の体が内から外に壊れていく中、その事を激しく悔やんだわ。
 でもね、私は奇跡的に一命をとりとめたの」
「はい」
 やや興奮気味の由里に対して、葉子はずっと無表情のままだった。
「これで、妹とまた楽しい思い出を作っていけると思った。失った二人の時間を取り戻そうと、あれから必死になって思い出作りに励んだわ」
「今回のも、その思い出作りの1つだったんですね」
「そうよ。そうだったのよ」
「でも、このような事件が起こってしまって……」
 葉子が、そっと目を閉じる。
「楽しい思い出作りのつもりが、由依にまた辛い思いをさせてしまった……」
「でしたら、なおさら落ちこんではいられません」
 由里を一回だけ軽く抱きしめると、顔を向かいあわせて目を開く。
 相変わらずの無表情ではあったが、さっきまでとは少し違う。
 さっきよりもずっと厳しく、力強い目をしている。
「以前由依さんはあなたを助けにFARGOに進入しました。そこで行われた事は思い出したくもない事かもしれません。
 ですが、由依さんが助けに来てくれた事自体は忘れる事のできない思い出ではないのですか?」
「ええ……」
「なら、今度はあなたが助けに行きましょう。そしてこの困難を二人の力を合わせて乗り切りましょう。
 そうすれば、このような事件でもかけがえのない思い出にすることができます」
「……そう、かもね」
「はい。私で良ければ二人の手助けもします」
 葉子の顔が少し優しくなったように感じる。
64夢の途中:02/01/29 02:43 ID:ifiam8cR
「ふふ……」
 由里はやっと気がついた。
 彼女はけして感情の変化が乏しいわけではない。
 ただ目立たないだけで、実はころころと感情の変化する可愛い女性だったのだと。
「どうしたのですか?」
 今度は少し、ブスっとしているようだ。
「なんでもないわ。さ、早く由依達を探しに行きましょ」
「……はい」
「ふふ……」
 無言でプレッシャーを飛ばし続ける葉子がなんとも可愛くて、思わず笑みをもらしてしまう。
「何か、おかしな事でも言いましたか?」
「大丈夫。気にしなくていいわ」
 何か言いたげな視線を受けながら、由里はジープを発進させた。

(私の夢はまだ終わってなんかいない。こんなのはただの通過点なんだから……!)


【葉子・由里 由依を探しに出発】
65疾風食逃客:02/01/29 03:06 ID:ifiam8cR
>>63-34
どうも、久しぶりにやっちまいました。
未登場キャラを未登場のままで終わらせるのは勿体無いので書いてみました。
全てのイベントをこなした後という設定で書いてみました。

葉子さんと由里は本当にいいキャラなんですけどね(^^;
やはり知名度が……
66見えざる敵:02/01/30 01:58 ID:Zt81RdJF
浩之は、先ごろ感じた既視感のことを考えていた。

---俺がいて、あかりがいて、にぎやかな女の子がいて、おとなしめなツッコミ役がいる。
---なんだ、結局性格的には、いつもとそう変わりがないってことか。
---いつも。ああ、雅史と志保は元気でやってるだろうか。死んじゃいないだろうが。
---あいつらに会えたら祐介達を見せてやろう。エリアの言ったナントカ効果でいろいろ忘れちまってるだろうしな。



「きゃああぁぁぁぁぁぁ………!」
そんな一種場違いとも言える妄想は、彼の幼馴染であり先程の妄想の登場人物でも会った少女の叫び声によって中断された。
「!」
しまった、と思った。あいつのことだから、やっぱり恐くなって俺を追いかけてくるくらいの行動をとるかもしれない。
そこを狙われたら終わりじゃないか……なんで分からなかったんだ、俺!
浩之は自分の行動の浅はかさと既に最悪の事態を想像してしまっている自分につくづく嫌気が差した。
ティリアが何か言っているが耳に入らない。頭の中には、何かアクシデントに見まわれたであろう少女の事だけが----



神岸あかりは、腰を抜かしてタイル床にへたりこんでいるのだが、その驚きは彼女に声をかけた「男」もまた負けてはいなかった。
---やはり、いきなり声をかけずに先にきっかけを作るべきだったのか!?物音を立てるとか、椅子を動かしてみるとか?
悔やんでも後の祭。とりあえずこの男は、目の前で恐怖に顔を引きつらせて今にも泣き出しそうな名も知らぬ少女を何とか落ちつける方法を考えなければならない。
「……あの」
考えた末に口から出た言葉がこれだ。我ながらコミュニケーションをとるのは苦手だ、と男は思う。
「ひぃっ! ……こ、こないで……助けて、浩之ちゃん……」
姿が見えている訳じゃあるまいし、そんなに露骨におびえなくてもいいじゃないか、とも思う。
67見えざる敵:02/01/30 02:00 ID:Zt81RdJF
…………だが、いい表情だ。
だからこそ、殺しがいがある。
これで悪意のない振りをして見せて緊張を解いたところで無造作に殺す時の相手の表情も捨てがたいが、こうまでおびえられては
それはかなわないようだ。どんな説得も恐らく聞き入れられないだろう。
ならば、この恐怖が最高潮になっている今のうちに殺すのも一興だ。相手が何者なのかもわからず、
姿のみえない怪物に狙われていると言う恐怖。その表情こそ僕が追い求めるものだ。
カオのない僕が、普通の人間の表情とやらの中で最も心を惹かれたのがその恐怖あるいは絶望と言う表情であったから。



博物館まで戻ってきた浩之が見たものは、何かにおびえるあかりと、そのあかりに向かって宙に浮かぶナイフ。
考える暇もなく、浩之はクロスボウでナイフを狙い、矢を放つ。
立て続けに三つ放たれた矢が、風を切りながら一つはナイフの切っ先をかすめ、一つはナイフの柄に命中する。
奇妙なのは三本目。ぐさりと肉に刺さるような音と「ぐっ」という呻き声。そして出血。
「ナイフが悶える」と言う光景を浩之は生涯初めて目にしたわけだが今はそんな事を考える余裕はなく。
「あかりっ!」
浩之はあかりに駆け寄った。ついでに次の矢をつがえる。
「ひ、浩之、ちゃん……」
「話はアトだ、あかり。あの妙なナイフを始末しなきゃい……」
腕に走る激痛で、その台詞は中断した。
68見えざる敵:02/01/30 02:01 ID:Zt81RdJF
なんということだ。楽しみを邪魔されてしまった。あの少年が来るのがあと10秒遅かったなら。忌々しい。
それならそれでかまわない。二人とも切り刻んで殺してやる。痛みと恐怖と絶望とが交じり合った表情を僕に拝ませてくれ。
腕かい?足かい?それとも胸?何処を切り刻まれるのも僕の自由だ。
君はどんな表情をするんだろうね?ああ、想像しただけで、イッちまいそうになる………!!

「浩之ちゃん!」
「心配すんな、深くない。 ……野郎、何処から来た?」
さっきよりさらに神経を研ぎ澄ませて周囲に気を配る。だが、そんな努力も空しくまたしても腕に切り傷を作る。
(クソ……さっきから対して深くないが痛いキズばかりつけてきやがる……楽しもうってハラかよ……)
何処から来るのか分からない相手に、恐怖と言うよりは苛立ちに似た表情を浮かべながら浩之は辺りを見まわす。
ふいに、首を何かに捕まれる。何だ、と思ったころには体が宙に浮いている。
どうやら、首をつかんで持ち上げられているらしい。視線の先には、先程のナイフ。

気に入らないな。
それだけ傷を負っているのに、まだ恐怖に屈しないとは。
はやくアノ表情を浮かべてみなよ。
窒息して、死んじゃうよ?

(そうか、コイツ……!)
そのナイフと首をつかんでいる見えない手の正体を直感で見ぬき、反射的にヒザげりを繰り出した。
柔らかい感触。それと同時に男声の叫び声が響き、首をつかんでいた手に一瞬力が入りすぐにその手が離される。
浩之はすぐさま、今股間を抑えてうずくまっているであろうソイツに向かって、クロスボウの引き金を引いた。
さっきと同じく肉に刺さる音がして、どう言うわけか空中で静止した矢の先から血が流れてくる。
(透明人間とはな)
勝ちを確信した浩之はその場にへたり込む。相変わらず腕は痛かったが、脅威が去った事に対する安堵のほうが大きかった。
(三行開け)
博物館に戻ってきた祐介達が見たものは。
なぜか血まみれになっている受付のタイル床。嗚咽を洩らしているあかりと、両腕から血を流しながら
そんなあかりを抱いてやる浩之と言うとんでもなく異様な光景だった。
69見えざる敵 by RTO:02/01/30 02:05 ID:Zt81RdJF
【藤田浩之〇(金的及びクロスボウによる失血)×透明人間】
【浩之は両腕を負傷。傷は深くないが本人によると凄く痛い】
【祐介達も博物館に戻ってくる。ちなみに獲物もちゃっかり運搬】


相変わらず長くなってしまう……しかもスペース開けを忘れた所為で
大変読みづらい文章ですね……はってから気付いてしまった……お詫び申し上げます
70彼女の事情:02/01/30 13:56 ID:GenYOAWk

「お前は、本当に犬なのか?」
「ぴこぴこ?」
「別に犬に詳しいわけではないが、お前の体型は、著しく私の記憶の中の犬と違っている」
「ぴこ」
「もう少し言及すれば、その鳴き声もだ」
「ぴここぴこ」
「犬は普通、わんと鳴くと思ったが。それとも、この50年の間に、新しい動物でも開発されたのか…」
「ぴこぴこ」
「そんな筈はないか。しかし、犬以外に形容する動物を思いつかない事も事実だ……ふうむ」
「ぴっこり」

 問答に飽きたのか、再び地面にこぼれたスープを舐めるその動物に、岩切は大きくため息をついた。
「やめよう……馬鹿のようだ」
 岩切は、毛玉に奪われてしまったコーンポタージュの代わりに、
今度は『どろり濃厚ホットココア』を手に、初音の身体を抱きかかえる。
 大分身体が冷えているようだったが、ココアを流し込むと、小さく呻き声をあげ、目を開いた。
「あ、あれ……ここは?」
「ああ、確かに今お前に飲ませはものは、ここあだ」
 寝起きにクソ詰まらない洒落を聞かされ、初音は硬直したが、岩切の顔を見ると、大真面目のようだった。
 それはそれで、中々恐ろしいものがある。
「ぴこ〜」
 スープを飲み終えた毛玉が、初音の胸元に飛び込んだ。
「きゃっ……あはは、可愛い…それに、あったかい」
 初音の頬をぺろぺろと舐める犬(?)に、岩切は苦笑を覚えるしかなかった。
(………危険な生物ではないようだが……謎だな)
71彼女の事情:02/01/30 13:58 ID:GenYOAWk

 犬のおかげで落ち着いた初音に、岩切は今までの事情をすべて話した。
 といっても、ジープから落ちた事、蝉丸達と離れた事、ここに来た事くらいしか、話は無いのだが。
「ともかく、しばらくこの場所にいて、雨が止むのを待ってから出発しよう」
「はい……」
 毛玉を抱きながら、初音はこくん、と頷く。
 その目に、わずかに涙が浮いているのを見て、岩切は、やりにくいな、と思う。
 戦闘訓練や、破壊工作は嫌と言うほどやってきたが、子供のお守りというのは、最も苦手な部類に入る。
 恐らくは蝉丸も、今の岩切と同じ状況に陥っているのだろう。
 そう考えると、岩切は自然と苦笑が口元に浮かぶのを感じた。
 常識的に考えれば、血みどろの戦闘より、子守りの方がいいに決まっているのだ。

「あ……」
 考えにふけっていた岩切は、初音の上げた小さな声に、我に返った。
「どうした?」
「あ、その、今誰かが呼んだような気がして……」
「ふむ?」
 岩切には何も聞こえなかったが、思考に耽っていたせいで、聞き逃したとも考えられる。
 いきなり初音は、ふらふらと立ち上がると、未だ雨の止まない外に歩き出した。
「お、おい……どうするつもりだ?」
「呼んでるんです……助けてって……」
 その後に、毛玉までついていくのを見て、岩切は顔をしかめる。
 戦略的に見れば、雨が止まない外に出歩く事は、自殺行為だ。だが、自分は水挑体。
 むしろ雨の中の方が、活動はしやすいぐらいだ。
 初音が雨の中を移動できるというのなら、そうさせた方が、こちらとしても助かる。
 岩切はそう結論を出し、自分も長斧を手に、初音の後を追う事にした。
72彼女の事情:02/01/30 14:02 ID:GenYOAWk

「……ほう、海か」
 雨の中、初音に案内されて見つけたものは、海岸だった。
 押し寄せては引き返す潮の音を聞きながら、岩切は初音に目を向ける。
「声とやらは、気のせいだったみたいだな」
「……ううん、ちょっと強くなったよ……海の中から聞こえるの」
「海の、中だと?」
「何かに遮られているみたいで、ほんの少ししか聞こえないけど、でも……梓お姉ちゃんの声に間違いない」
 初音の声に、切羽詰ったものを感じ、岩切は腕を組んだ。
 嘘を言っているようには見えないが、だからと言ってすぐに信じられるものでもない。
(虫の知らせ……いや、昔研究をされていた、意思伝達のようなものか)
 とはいえ、他の人間であれば、海の中に入るのは二の足を踏むだろうが、岩切にとっては、散歩する程度の負担でしかない。
「わかった、私が見て来よう」
「えっ!?」
 岩切の台詞に、初音はビックリしたような顔になる。
「で、でも……」
「気にするな、最近海で泳いでいなかったし、ちょうどいい気晴らしだ。何か魚でもあれば、捕まえられるしな」
 岩切はそう言って長斧を初音に預けると、軽い足取りで海へと入っていった。

 海の中は濁っていたが、別段異常なところは見受けられない。
 初音を信じていたというより、食料調達が目的だった岩切は、殺風景な海底に落胆した。
(ふむ……魚が目当てだったのだが、何も無いな………っ!?)
 くわっ、と岩切が目を見開く。
 岩だらけの無機質な海底に、漂うものがひとつ………それは、人間の死体だった。
 そして、岩切が死体に気付くのと、岩場の影から無数の人魚が、彼女に飛び掛ってくるのは、ほぼ同時だった。
73彼女の事情:02/01/30 14:05 ID:GenYOAWk
(こいつら……人魚だと!?)
 とっさに第一撃をかわし、上のポジションをキープしながら、岩切は目を見張った。

────うふふふ………
────あはは………
────この人も、仲間にしようよ
────この人は、さっきの人よりも、ずっとずっと、私達に近い匂いがするよ

 次々に襲い掛かってくる人魚を、身軽に避けながら、岩切は冷静に戦況を分析する。
(……初音が言っていたのは、あの死体…ではないだろう。だとすると、こいつらに捕まっている、とかいう奴の事か)
(…そうだとして、問題はどこに捕まっているか、だ。ここはひとつ、大人しくついていくしか無いか)

 抵抗を止めた岩切に、人魚達が群がり、いっせいに運び出す。
(……どこに行く気だ?)
 海底をうかがう岩切の目の前に、巨大な水中洞窟が見えてくる。
 その中を進む事、数分……海面が……いや、水面が目の前に広がる。
 しかし、海底洞窟の出口には、淡い膜のようなものが張ってあった。
 人魚達が入ろうとすると、その膜はするりと開き、岩切達を湖へといざなった。
(成程、そういうからくりか…容易に脱走も出来ない、という事だな)
 岩切が感心している間にも、人魚達は水面へと上がり、岩切を岸に放り出す。

────お友達同士、仲良くね

「あんたも、あいつらに捕まったのか……」
 岸に上がり、顔を上げた岩切の上から、どこか初音と似た顔立ちの女が、覗き込んでいた。
74長瀬なんだよもん:02/01/30 14:09 ID:GenYOAWk

【初音は目を覚ます】
【初音、岩切、ポテト、海岸へ】
【初音は海岸で待機、岩切は海の中へ】
【岩切、人魚の園で、梓と遭遇】


今後の岩切嬢の、ご活躍を期待してる長瀬です。
御堂といい、岩切といい、誰彼はキャラがいいんですよね。
75名無しさんだよもん:02/01/30 23:51 ID:pyfcp8Cv
>>74
作品評価がダメダメなのに登場キャラは魅力的というのが
クロスオーバーリレー作品の題材としてはタチが悪い(w

大局が動き出す前にプレイしておくべきか・・・?(´д`;
76RTO:02/01/31 00:50 ID:+DXrSWVP
いや原作版の御堂は相当鬼畜なキャラだったような……
ハカロワ御堂が男すぎるんです(ぉ) 結果人気投票でも誰彼二大巨頭になったわけですが。蝉丸と。
人気投票?何か胸が痛むなあ。

(そろそろ大局が動く(動かす)か……しかし勢力が多すぎて何処から手をつけて(あるいは手をつけずに)おけばよいやら……)
77名無しさんだよもん:02/01/31 01:07 ID:qw9W/sfN
時間軸にけっこう差があるな。
まだ雨降り前のメンバーから、やんだメンバーまで…
あまり離れ過ぎるとややこしいのでは。
78名無しさんだよもん:02/01/31 01:16 ID:Z7lwLXQc
>>76
作品内ではまだ一日目だし、そんなに急ぐ必要も無いかと。
むしろ、いい加減ジープを止めてあげた方がw
79名無しさんだよもん:02/01/31 15:10 ID:yZxqyPgf
age
80名無しさんだよもん:02/01/31 19:15 ID:uZADyWPe
まあ、大局が動くとしたら降雨後あたりがいい目安になるんじゃない?
81前哨戦(1/3):02/02/01 01:01 ID:lYKWjdVb
 その四人を乗せたジープは一つの二階建ての建物に止まった。
 来栖川姉妹、姫川琴音、水瀬秋子のチームだ。 
 車を降りその建物の門に立った綾香が怪訝そうな顔でその門の備え付けられている看板を見た。
「生物と古美術の資料館…?どうします?水瀬さん」
「とりあえず入りましょうか」
 と言って秋子は琴音と芹香の方を向き、
「芹香さんと琴音さんはそばを離れずにについてきてください。でも近づきすぎもだめですよ」
「…(コクコク)」
「はい、わかりました」
「では、綾香さん入りましょうか」
 と言って綾香を促す。
 どうやらこのチームのリーダー的な存在はは気づけば秋子になっているようだった。
 まあこの中で年長者という位置と、なにより超先生の放送の後のジープ暴走を冷静に対処したのである。
 これには普段リーダーシップを取りがちな綾香でもその座を譲りざる得ない。
 そしてもうすでに秋子は綾香がさっき車から降りた身のこなしだけで綾香の卓越した運動能力を見破っていた。
 綾香が注意深くドアに手をかけ、できるかぎり静かに扉を開いた。
 しかし、皮肉にも扉はギ〜という音を立ててしまった。
「やばっ!」
 綾香が悔恨の言葉を言う。 
 だが、この扉の音とは間違い無く違う異質な音も聞こえた。
「なにかいますね」
 と秋子は言って中を覗き、ゆっくりと中に入った。
 綾香もそれにつづき芹香、琴音もつづいた。
<二行空けてください> 
82前哨戦(2/4):02/02/01 01:03 ID:lYKWjdVb
 一行はホールの中心に向かい、全体を見渡した。
 ホールは入り口が一つ、右に順路とかかれた道と左に恐らく順路の出口だろうと思われる道が一つ、またドアの反対側にはスロープ付階段がありその上にはカフェテリアとお土産屋があるようだ。
「さっきの音、どこから聞こえてる?」
 綾香が警戒しながら他の三人に聞いた。
「あっちです…」
 芹香が順路の道の方向を指差した。
「音からして子供の足跡みたいですね」
 と琴音。
「じゃあ、上のカフェテリアに行きましょう」
 秋子が笑顔で歩きだした。
 三人はその行動に呆気にとられた。
 芹香と琴音は余計な危険は回避したいと思ってるからこの意見は賛成だがその判断の早さに対しての驚いた。
 綾香はこの正体不明の敵を撃退できるという絶対的な自信があった。
 だが、秋子の消極論には正直反対したかった。
「なんで…?」
 綾香がたまらずその疑問を口にした。
 秋子はその変わらぬ笑顔で
「もしもの時、上の方が有利だからです」
 と言って余裕の笑顔で進む。
83前哨戦(3/4):02/02/01 01:04 ID:lYKWjdVb
 その時、下の通路から小さな子供みたいのが雄叫びを上げつつ棍棒を手に取り、駆け上がってきた。
 それを見て綾香は琴音と芹香を守るようにして立ちはだかり、それを迎撃した。
「てやっ!」
 ただ足をあげただけの前蹴りを一発、カウンターで決めた。
 綾香とそいつの身長差、階段の高低差も重なりその小さな敵の顔面に綾香の靴底がきれいにめり込んだ。
「ぷぴ!?」
 それは訳のわからない叫び声と共に接近した同じ速度で吹っ飛んだ。
 派手に階段を転げ落ちフロアに突っ伏した。
「な〜る、確かに有利だわ…」
 足をあげたまま綾香は呟いた。
 琴音は遠くから突っ伏しているそれを同情を含んだ視線で見て、
「あの人もモンスターですか?」
「ええ、確か名前はゴブリン、基本的に夜行性で集団で生活している種族ねでもおかしいわね、なんで一人で行動してたのかしら…?」
 その吹っ飛んだゴブリンは立ちあがり秋子達を一回見た後、外に逃げて行った。
「逃げちゃった」
 綾香はまだ向かって来るのだと思ってたからちょっと意表をつかれた。
「もしかしたら、仲間を呼びにいったかも知れないわね」
 秋子の考察に綾香は、
「逃げますか?」
「うーん、どうしましょう…。車の燃料も少ないですし外で襲われたら困りますし…」
 秋子はちょっと考える、そして、
「今日はここで寝ましょう、迎撃策は考えました」
<二行空けてください>
84前哨戦(4/4):02/02/01 01:05 ID:lYKWjdVb
 秋子の迎撃策を聞き綾香は楽しそうな顔をしている。
 まるで悪戯をしかけて大人を困らせようとしている子供の笑顔だ。
 一方、琴音はかなり不安そうな顔をしている。
「絶対に成功しませんよっ!!」
 琴音が初めて反論した。
「そう?私は面白そうだと思うけど?」
「…(コクコク)」
 芹香も秋子の作戦に賛成のようだ。
 秋子はニコニコしながら、
「多数決で決定のようですね」
 綾香が心底楽しそうに、
「じゃあ、行動開始ーっ!!」
<二行空けてください>
 夜になり雨が降り『生物と古美術の資料館』の周りに棍棒や石斧など様ざまな武器を持ったゴブリン二十数匹が数グループに別れ建物を包囲していた。
 ゴブリン達は雄叫びを上げると一気に資料館に接近していった。
 秋子達とゴブリン達の戦争が開始されたのである。
85前哨戦(4/4):02/02/01 01:07 ID:lYKWjdVb
【秋子さん・来栖川姉妹・琴音、ゴブリンの集団相手に防衛戦展開を決意。】
86R1200:02/02/01 01:11 ID:lYKWjdVb
誰も秋子さんのグループを書かなかったので書かせてもらいました〜。
できる限り秋子さんを超人にしないつもりがちょっと超人入っているかも・・・(〜_〜;
あと、「芹香と琴音が全然目立ってないぞゴラァ!!」って感じですけど許してください
87名無しさんだよもん:02/02/01 01:22 ID:ihddQbfA
>>86 R1200氏。
もう少し読点(、)を入れてくれると、読みやすくて嬉しいだよもん。
88名無しさんだよもん:02/02/01 07:05 ID:IA89IxvN
>RTO様
63話のKanon?を書いた者なんですが、編集サイトの方が
前スレ >>426-427 の内、>>427部分しか無く、前半部分が削られてます。
あゆを勝手にエンド後にしたのがまずかったでしょうか?
できれば修正お願いしたいのですが。もしできるなら、レス間は3行開けでお願いします。
89凶鳥 (1):02/02/01 22:20 ID:IA89IxvN
――カア。

「助けてくださいっ! ジープの、私たちの乗ってた中にモンスターにやられて、矢島さんが……!」
「どこですか?」
 シンディと茜は口を揃えて言う。
「えっと、すぐそこです。ジープが止まって……。そうだ! 担架か何か持ってこいって」
「分かりました。大丈夫よ。だから落ち着いてね」

 と、そこで―――
「すみません。こちらは病院でしょうか?」
 声の方には全身白ずくめのきよみと、子ドラゴンを抱いた澪が居た。
「澪……?」
 茜は、普段の彼女からは想像できない程動揺していた。
 澪もまた、元から大きな目をいっぱいに広げて驚いている。


 その人を見た瞬間、私の頭の中は真っ白になった。
 持っていた物を何もかも放り出し、先輩の胸に飛び込む。
(怖かったの! 寂しかったの! 心細かったの!)
 そんな私を先輩は、ぎゅっ、と優しく抱きしめてくれた。
「……澪。大丈夫です。もう、大丈夫です」
 涙が止まらない。泣きながら私は思う、『声をあげて泣けたら良かったな』と。
90凶鳥(2):02/02/01 22:21 ID:IA89IxvN
――カア、カア、カア。

 ボクが入り口まで歩いて来ると、里村さんが小さな女の子を抱きしめていた。何があったんだろう?
 でもその里村さんの表情はとても優しくて、お母さんみたいだった。
 そういえば秋子さんはどうしているだろう。……会いたいな。

「あ、あの……」
 観鈴が遠慮がちに声をかける。
「里村さん、私は担架を持ってこの子について行ってくるわ。あなたはその子を見てて」
「でも……」
「つべこべ言わないの。私に任せなさい」
「……はい」
「じゃああなた、案内してくれる?」
「は、はい」
91凶鳥(3):02/02/01 22:22 ID:IA89IxvN
――カア、カア、カア、カア、カア、カア。

「あそこね!」
 目指す建物を見つけ、私は歓声をあげる。
「良祐、もう少しだからね」
 
 私達のジープを追いかけていたのは、小さな恐竜達だった。
 中々振り切れず、不可視の力を二度ほど使う羽目になった。おかげで全身が酷くだるい。
 だが弱音なんて吐いていられない。良祐を失うなんてもう御免だ。
 パンフの地図ではあの建物が医務施設ということになっている。もうすぐだ。
 ああ、それにしてもカラスの鳴き声がひどく耳に障る。

 建物の裏側にジープを止め、良祐を担ぎ出す。重い。
「あの、手伝います」
「私も」
 瑞穂と香奈子が申し出てくれる。
「ありがとう。助かるわ」
92凶鳥(4):02/02/01 22:24 ID:IA89IxvN
 ――カア、カア、カア、カア、カア、カア、カア、カア、カア、カア、カア、カア。

 建物の表に辿り着くと、そこには三人の女性が居た。
 一人は三つあみが特徴的な看護婦。
 もう一人は、大きなリボンに大きな目をした少女。
 最後の一人はなんというか……、白い、女性。その腕には小さなドラゴン?を抱きかかえている。

「あの、ここ病院ですよね。良祐が、彼が肩をひどく怪我してしまって」
「そうです。でも今ここにはお医者様は一人も居ません」
「どうして!」
「分かりません。昨日突然、いなくなってしまいました。今ここにいるのは私とシンディさんの二人だけです」
「じゃあどうすればいいのよ!」
「私が看ましょう。その人を中に運んでいただけますか?」

「あの、この子も看ていただけますか?」
 白い女性がそう言って、子ドラゴンを見せる。リボンの少女も必死に懇願する。
「できるだけの事はします。だから澪、そんな顔しないで下さい」
 リボンの少女は「うん、うん」と頷き、スケッチブックを拾って何やら書き出す。

『先輩、ありがとうなの』
93凶鳥(5):02/02/01 22:25 ID:IA89IxvN
「兄ちゃん、しっかりしいや! もうすぐ病院着くで」
「……」
 矢島は答えない。眠ってしまっているようだ。
「お母さん、重くない? 私手伝おうか?」
「何ゆうとんねん。ウチは女手一つで観鈴を育ててきたんやで。こんなん屁でもないわい」
「にはは」
 担架の一方を持つシンディは、そんな二人を優しげな瞳で見つめていた。


「ふう、何とか一息ついたわね。大丈夫。軽い怪我ではありませんが、命には別状ありません」
「姉ちゃん、ありがとな。コイツはウチと観鈴の恩人やねん。こんな所で死なれたら目覚め悪うて敵わんわ」
「お母さん、不謹慎だよ」
「お、なんや? 観鈴、もしかして怒っとる? はは〜ん。観鈴、この兄ちゃんに惚れたか? 惚れてもーたんか?
うんうん、命懸けで守ってくれたもんな〜。よっしゃ、この兄ちゃんならええで。許可したる!」
「お・か・あ・さ・ん」
「ふふふ……。じゃあ私はこれで。また後で看にきますから」


 シンディが廊下を歩いていると、妙な会話が聞こえてきた。
「えっ、キミ、喋れないの」
「うえつきみお?」
「こうづきみお、かぁ。いい名前だね。ボクは月宮あゆって言います。よろしくね、澪ちゃん」
 一人で喋っている。見ると、さっき里村さんが抱きしめていた子と、帽子を被った可愛い子が話をしていた。
 なるほど、言葉が話せなかったのか。シンディは納得する。
「えっ、忘れ物? 外に置いてきちゃったの? 」
94凶鳥(6):02/02/01 22:26 ID:IA89IxvN
「何を忘れてきたの? 私が取ってきてあげるわ。二人はそのままそこに居なさい」
 シンディはそう声を掛け、何をどこに落としたのかを澪から聞き出した。

(あんな小さな子が銃を持ってるって言われても、一概には信じられないわね……。)
 澪の「忘れ物」の中には、銃が含まれていた。
 武器庫で久瀬に無理矢理持たされた物だったが、それはシンディには分かるはずの無い事だ。

 入り口の扉を開け外に出ると、ぽたり、と冷たい雫が頬にあたった。
(雨だ……。早く見つけて戻らないと)
 そう考え辺りを見回す。すると、数十メートル先の木陰に何かが散乱しているのが見えた。
 駆け足で近づき確認する。そこには小さめのリュックサックと、鈍く光る鉄の塊があった。
(これ……、本物だわ)
 コルトガバメントを拾い上げ、確認する。間違いなく本物だ。以前ステイツで見たことがある。
 シンディはしばし呆然としていた。

 突然、黒い塊がシンディの後頭部にぶつかってきた。シンディはバランスを崩し、うつ伏せに倒れ込む。
「な、何? なんなの?」
 シンディは起き上がろうとするが、第二、第三の塊が次々とシンディに襲い掛かる。
「か、カラス?」
 そう、シンディを襲っているのはカラスだった。しかも、どのカラスも普通のカラスより一回り大きい。
 段々と、にカラスの数が増えていく。その嘴でシンディを突つき、肉をついばむ。
「うぁぁああ! やめて、やめて、やめてよぉぉ」
 半狂乱になってカラスを振りほどこうとするが、圧倒的なカラスの数の前にその行動は意味を成さない。
 そして遂に、一羽のカラスの嘴がシンディの目を貫く。
 断末魔の絶叫が響いた。


【シンディ宮内 死亡】
【医務施設内 晴子・観鈴・矢島(昏睡中)・あゆ・澪・白きよみ・巳間晴香・良祐(昏睡中)・瑞穂・香奈子・茜】
【雨】
95名無しさんだよもん:02/02/01 22:37 ID:IA89IxvN
レス間は3行開けで。(5)と(6)の間だけ2行開けでお願いします。

ちょっと人集め過ぎたかな……。
ヒッチコックファンの方、許してくださいね〜。

96名無しさんだよもん:02/02/01 22:44 ID:GVVeMZ4F
シクシク…シンディが死んでもうたぁ…
97名無しさんだよもん:02/02/01 23:00 ID:JKDk+Kfs
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1012216672/
何時の間にやらスレの使用宣言がされてたので以後はこっちで語ろう。
98名無しさんだよもん:02/02/01 23:33 ID:PPxK4/4G
 数メートル前方に見えるその生物の存在を、栞は簡単に信じることは出来なかった。
 人間の巨躯に牛の頭。 明らかに自然界で生まれる筈のない形態をした生物であり、それはパンフ
レットに書いてあった言葉を正に体現する存在だった。

『遺伝子工学により、空想上のモンスターがこの世に現れる──』

 栞は、この文句に関しては半信半疑であった。
 空想上のモンスターが現れると言われても、ならばキングコングやガメラが闊歩しているとでも言
うのだろうか。
 数種類のモンスターはパンフレットで紹介されていたが、その奇抜な姿が現実のものになるなど、
やはり栞の中の常識が全肯定しようとしなかった。

「…でも、ちょっと信じられませんね」
 島に来る船の中で、栞はそう言ってみた。
 祐一も香里も同じ気持ちだと返した。 もしかすると、綺麗に仕上げられたCGでも見せられるだけ
なのかも、などと言って皆で笑い合ったりしたものだった。

 今になって、栞は真実を知った。
 この島では間違い無く、空想上の怪物達が具現化されているということ。
 そして本来ならばその怪物達との出会いは、檻の中の猛獣を見るように安全な状況で起こる筈なのだが。
 現実にはそうではなく、何が起こったのか、彼我を隔てる物は何も無いということ。

(祐一さん…)
 心の中で、愛する者の名を呼んだ。 助けを呼ぶ様に。
 かつては病による死を覚悟していた。 しかし奇跡が起きたか、今はこうして祐一や姉と共にテーマ
パークを楽しみにやって来たのだ。
 せっかく拾った命が、こんな所で怪物に喰われて死ぬのか?

 そんなのは、嫌だ。
99名無しさんだよもん:02/02/01 23:34 ID:PPxK4/4G
 ミノタウロスは腰を落とし、身を低く構えた。
 闘牛などで牛がそうして見せるように、足でガリガリと土を削っている。
 すぐ来るな。
 そう思った蝉丸は、自分の背後に隠れている栞に声をかけた。
「栞、逃げろ」
「に、逃げろって…」
 怯えた少女の声。
「…どこにですか」
「とにかく奴から離れ──」
 蝉丸の言葉の終わりを待たずして、ミノタウロスが動いた。
 勢い良く大地を蹴って、頭から突進して来る。 角で攻撃するつもりだ。
 その恐るべき速度に目を見開いた蝉丸は、咄嗟に栞の身体を突き飛ばした。
「きゃっ!」
 小さな悲鳴をあげて、栞が地面に転がる。 蝉丸も即座に栞とは反対側に身を翻した。
 一瞬の後、二人の間をミノタウロスの巨体が通り過ぎた。 風でも起こったか、と思う程の速さ。
 ミノタウロスはそのまま数歩たたらを踏んだ後、振り返った。
「化物、こっちだ!」
 蝉丸がわざと大きな声で誘う。
 ミノタウロスはその思惑通り、栞を無視して、敵意に満ちた眼で蝉丸を睨みつけた。
 彼は落ち着き払って、ゆっくりと半身の姿勢を取った。 視界の片隅には、起き上がってこちらを
見つめる栞の姿がある。
「栞、逃げろっ!」
 今一度、先刻と同じ指示を飛ばした途端。
 ミノタウロスが拳を振り上げ、襲いかかってきた。


【蝉丸 VS ミノタウロス 戦闘開始】
100名無しさんだよもん:02/02/01 23:36 ID:PPxK4/4G
レス間は3行開けてお願いします。
101死神の下僕来たりて:02/02/02 01:03 ID:frUslS+U
「シンディはん?」
 ----------気のせいか。
先程のシンディ宮内と言う女性の叫び声が聞こえたような気がしたのだが……
「う……う」
ベッドに眠る人物が気がついたようなので、晴子はとりあえず思考を中断させた。

「おはようさん、兄ちゃん」
春子さんの声が聞こえる。重いまぶたを開くと、白い天井と観鈴ちゃんの顔。
上着……というか上半身の服が脱がされており、腹の周りに包帯が巻かれているらしい。
「ここは……例の医療施設ですか。おお、キズが手当てしてある」
完全に痛みが消えているわけでは無いが、動き回るのに支障はなさそうだ。
「シンディって言う看護婦さんが手当てしてくれたんだよ、矢島さん」
「そっか……じゃあお礼言わないとな。その人は?」
「あとでもっぺん来るそうやから、それまでねとったらええで。起こしたるよってにな。なんせ……」
102名無しさんだよもん:02/02/02 01:05 ID:frUslS+U
 悲鳴?
 悲鳴だ。女の子の。廊下から。
 よくは知らないが、俺達以外にもここに来た子達がいるのか?
「か、香奈子ちゃん、来ちゃ駄目ッ!きゃああ!」
「みずほち……わあああっ!」
「ギャア ギャア ギャア!」
 がつ がつ、と何かをえぐるような音と、けたたましい羽音、鳴き声。女の子の悲鳴。
「何や?」
 晴子さんがドアを開けようとする。
「あっ、ちょ--------!」
 駄目だ。そんな事をしちゃ「何か」がこの部屋に……!
 ドアが開いた。晴子さんが手を触れる前に。

「ギャア ギャア ギャア----------!」
 耳をつんざく鳴き声とともに、黒い塊が部屋の中になだれ込んでくる!
「どわっ!」
「きゃあ!」
 晴子さんと観鈴ちゃんがひとしきり悲鳴を上げ、定石通り床に伏せる。
 ちらりと廊下の様子が見えたが、メガネの女のこがもがいている。息はあるらしい。
 黒い塊はまっすぐに俺のほうに向かってくる。血の匂いにひかれたのかもしれない。モテるってこういうことか?
 視界が黒く覆われていく過程でようやく分かったが、こいつらカラスだ。それも普通の奴よりふた周りくらいデカい
103死神の下僕来たりて:02/02/02 01:08 ID:frUslS+U
「ギャア、ギャア、ギャア---------!」

 廊下の女の子達は無事だろうかと心配になったが、頭に当たる嘴が俺を現実に引き戻す。
「うわ、いて、いて、いてててて!」
 間もなく、全方位からカラスの嘴の雨が降ってきた。腹だけはカバーしているが、それが何だと言うくらいに背中と頭が痛い。
 一瞬、ゲームや映画でよく見かける目から血を流した死体のビジョンが浮かぶ。俺もあんな風になってしまうのだろうか?
 俺も、ぐずぐずになった肉塊の中衣服と髪型だけで何とか身元を確認するというような?
 背筋を半端ではなく冷たいものが伝ったが、それをごまかしながら俺はズボンのポケットを探った。
「ギャア、ギャア、ギャア---------------!」
 間違い無く背中にいくつか穴があいたなこれは。幸か不幸か頭だけは無事らしい。これ以上馬鹿になってもらっちゃ困る。
 カラスどもの鳴き声の中、晴子さんや観鈴ちゃんが俺を呼ぶ声が聞こえた。いいから逃げろって。
 あった。尻のズボンの奥で、冷たく光っているであろうそれ。
 俺はそれを全力でズボンから抜き出した。

「クァアッ!」
 突如としてカラスのうちの1羽に火がつき、カラス同志が固まっていた事が災いし次々と別のカラスに燃え移っていく。
 ギャア、ギャアと耳障りな音とともに、カラス達は狂ったように部屋の中を飛びまわる。苦しんでいるのだろうか。
 肉の焼ける嫌なにおいが部屋に充満し始めたころ、観鈴が機転を聞かせて窓を開ける。
 これ幸いとばかりに、カラス達は開け放たれた窓から一斉に出ていった。
 出ていったはいいが、そとの微量な降雨では体についた火を消すには至らず、やがてぼとぼとと地面に落ちていった。
 ほどなくして、室内にはもとの降雨の音だけが響き渡るようになる。
 ふとベッドに視線を移した晴子が見たものは、火のついたジッポーライターを掲げたまま硬直している矢島の姿だった。
104死神の下僕来たりて:02/02/02 01:09 ID:frUslS+U
 一つ危機を乗り越えて、俺は思った。
 大きな怪我こそ負わなかったが、実はここはとても危険な状態ではないのかと。
 俺のような怪我人がここに後何人いるのか知らないが、さっきのカラスがそうであったようにその匂いにつられていろんなモンスターがやってくるのだろう。
 事実、カラスの襲撃でまた二人ほど怪我人が出たようだ。この調子だと「シンディさん」とやらも危ないのかもしれない。

 …………やめた。
 俺だけでもポジティブにいかないと、観鈴ちゃんや晴子さんにいらない心配をさせてしまうかもしれない。
 俺のこの魂の宝シルバージッポ(特別限定品)が嘴でボコボコになっちまったのはいただけないのだが。
105死神の下僕来たりて(END):02/02/02 01:12 ID:frUslS+U
一つ危機を乗り越えて、俺は思った。
大きな怪我こそ負わなかったが、実はここはとても危険な状態ではないのかと。
俺のような怪我人がここに後何人いるのか知らないが、さっきのカラスがそうであったようにその匂いにつられていろんなモンスターがやってくるのだろう。
事実、カラスの襲撃でまた二人ほど怪我人が出たようだ。この調子だと「シンディさん」とやらも危ないのかもしれない。

…………やめた。
俺だけでもポジティブにいかないと、観鈴ちゃんや晴子さんにいらない心配をさせてしまうかもしれない。
俺のこの魂の宝シルバージッポ(特別限定品)が嘴でボコボコになっちまったのはいただけないのだが。

【カラス撃退】
【矢島、さらに少し傷 みずほたちの傷の具合は不明】

1レス目 やってしまった。
すまないがサイトでの1文字あけ修正をお願いしたい>RTO氏
106眠れる森の・・・(1):02/02/02 02:56 ID:b5GWaRT5
―――・・・・・・バラ・・・バラバラ・・・

「う・・・ん・・・」

―――・・・バラバラ・・・バラバラバラ

「ん・・・??
 ・・・あれ・・・ここは?」

―――バラバラバラバラバラ・・・

(・・・雨の音?
 ・・・・・・ここは、どこ・・・?)

寝ざめでまだ意識がハッキリしない。
しかし、彼女は自分が知らない場所で寝ているという事実を悟り、
ゆっくり上体を起しながら周囲を・・・

―――ガサッ!
―――ズボッ!
「きゃっ!!」

彼女が体を起すために手をついた場所・・・
そこは、軽く体重をかけただけで簡単に抜けてしまった。
しかもその衝動で地面が大きく揺れ、
体制を崩してそのまま抜けた穴に落ちそうになる。

「――――――っ!!!」
107眠れる森の・・・(2):02/02/02 02:56 ID:b5GWaRT5
彼女は、咄嗟に目の前にある枝を掴んだ。
掴んだ腕が伸びきったところで一瞬、グンッっと反動がかかって体を支えるが、
枝は彼女の体重を支えきれずに、すぐに音を立てて折れてしまう。

その瞬間に、彼女――澤倉美咲――は、自分が樹上のベットで眠っていた事を悟った。

「あ、きゃ、きゃあぁっ!!」

落ちる!・・・と思ったその時――

―――ガサガサガサガサガサッ!!

真下にあった数本の枝が動き出し、ひっくり返った彼女の上半身を優しく受け止めた。


「・・・??
 ・・・たすかっ・・・た・・・・・・の?」

彼女が目を覚まし、起き上がろうとしてから7秒。
・・・ほんの僅かな時間だが、それでも、その間に起きた出来事はどれも彼女の常識の外だった。

そして、その次の出来事もまた、彼女の常識を大きく逸脱していた。
108眠れる森の・・・(3):02/02/02 02:57 ID:b5GWaRT5
「あぶないなぁ・・・

 ほっ、ほっ、ほっ、

 おはよう、お嬢さん」

逆さまになったままの彼女の正面・・・彼女に枝を貸す大木に浮きあがった老人の顔が、
非常にのんびりとした口調で彼女に語り掛ける。

(―――森の守護者、トレントに会えるなんて・・・)
暫く、彼女は起き上がる事も忘れて、文学好きとしての感動を味わっていた。


【澤倉美咲 トレントの枝の上で目覚める】
【雨が降っているが、木の内側には届いていない】
109名無しさんだよもん:02/02/02 08:33 ID:XvWBlARG
「凶鳥」書いた輩です。いくつか修正をば。
(6)の下から5行目、『段々と、にカラス〜』の「に」は余計な誤字です。

あと、(5)の下から4行目辺り(あゆ&澪の場面)に、
「うん、ボク、きよみさんと同じジープに乗ってたんだ。きよみさん、綺麗だよねっ」
ってセリフを挿入しておいて欲しいのですが…… >RTO様

あゆときよみが同じグループだったの忘れてたよ……。
110名無しさんだよもん:02/02/02 08:36 ID:Tu0haCkO
「凶鳥」書いた輩です。いくつか修正をば。
(6)の下から5行目、『段々と、にカラス〜』の「に」は余計な誤字です。

あと、(5)の下から4行目辺り(あゆ&澪の場面)に、
「うん、ボク、きよみさんと同じジープに乗ってたんだ。きよみさん、綺麗だよねっ」
ってセリフを挿入しておいて欲しいのですが…… >RTO様

あゆときよみが同じグループだったの忘れてたよ……。
111名無しさんだよもん:02/02/02 08:38 ID:Tu0haCkO
なんで二重カキコになってるんだ???
スマソ、吊ってくる……。
112名無しさんだよもん:02/02/03 18:06 ID:RARRr3Zn
age
113名無しさんだよもん:02/02/05 01:15 ID:Xm7NPswe
メンテ
114名無しさんだよもん:02/02/05 01:47 ID:nTZSAGDv
age
115葛藤(1/3):02/02/05 02:08 ID:yF4QLdqc
 光岡は迷っていた。
 武器を持ち参加者を助け、ジープを走らせたまではよかった。
 しかし、この後の行動を考えなくてはいけない。
 このままこの三人と別れずにジープで他の参加者を救援に向かうか、何か施設に向かい武器を渡し別れるか。
 両方とも安全策とは言えない選択肢である。
 
 前者は怪物に会いまた戦闘の可能性が出てくる、故にこの三人がまた危険に晒せれる。
 敵が一体だけならいい、もし複数が相手ならどうだろうか?
 最悪、囲まれた状態で戦闘に入るかもしれない。
 もしその最悪な状況になったらこの三人を護衛できるは自信は光岡にはなかった。
 
 後者は、この三人と別れた施設の中は安全だろうか?
 安全だとしてもこれから永続的に安全なのだろうか…。
 別れた後その施設が襲われたらどうする?
 この三人だけで対抗できゆるのだろうか、屋内だから襲ってくる敵の種類も限定されるだろうが襲われたらどちらしろ、危険なことには変わりが無い。
 
 更に、一人意識を失ってるのである。
 そのことが更に不利な状態に陥らせた。
(せめて、あと一人戦闘員がいれば…)
 もうすでに犠牲者が出てしまってるのである。
 光岡は残る百二人を助けることは無理だとわかっていた。
 それでも一人でも多く参加者を助けたかった。
(蝉丸、この島にいるのだろう…?)
 断定はできないが蝉丸はこの島にいる。
 光岡はそんな気がした。
(もしいるのだったら、お前もできる限り一般人を助けてくれ)
 責任転嫁なのはわかる、だが光岡は藁にもすがる思いだった。
116葛藤(2/3):02/02/05 02:09 ID:yF4QLdqc
 浩平も葛藤していた。
 目の前で人一人が死んだ。
 それを見て、自分は何もできなかった。
 横でぐずっている瑞佳を守ることができるのか?
 もしかしたら、またモンスターに襲われたら俺は足がすんで動けないかもしれない。
 そんな俺が瑞佳を助けることができるだろうか?
 …いや助けなくてはダメだ!!
 もう失うのはいやだ!!
 浩平は決意した。
117葛藤(3/3):02/02/05 02:10 ID:yF4QLdqc
「なあ…」
 先に口を開いたのは後部座席にいる浩平だった。
「…どうした?」
 光岡は少し間を空けて返事をした。
「俺になにか武器をくれ」
 光岡はこの浩平の要求が以外だった。
 武器の要求つまりモンスターとの戦意があるということだ。
 光岡は車のミラー越しに浩平をみた。
 明らかにさっきまでの表情と違っていた。
 一方、瑞佳はその浩平の台詞に驚いていた。
「いいだろう、鞄の中から好きな武器をとるがいい」
 と言って助手席に置いたスフィーの亡骸の上にあったバックを浩平にほうり投げた。
 浩平はバックを漁り、一丁の銃を取り出した。
「これがいい…」
 と言って、浩平はバックを前の座席に送り返した。
「俺は折原浩平だ、あんたは?」

【浩平、銃を装備。モンスターとの徹底交戦を決意】
【光岡、これからの行動のとり方を検討中】
【リアン、意識戻らず】
【瑞佳、浩平の決意に戸惑いを隠せず】
118R1200:02/02/05 02:18 ID:yF4QLdqc
浩平たちのグループも長い間放置されてたので書かせてもらいました。
光岡を浩平の考えを中心で書きましたので、リアンを瑞佳が全然目立てませんでしたね。
あと、誤字脱字などのつっこみもキボン

>>87
技術的なつっこみどうもです。
今回はできるかぎり読点を意識しました。(^^
119名無しさんだよもん:02/02/05 14:19 ID:uTZlx6x2
つーか、RTO氏はどこへ行ったんだろう……
120はなたれるもの:02/02/05 15:08 ID:LQjxCVuV
 薄暗い廊下を歩く彼女のもとに、また新たなる魂が呼び寄せられた。
「今度の魂はずいぶんと大きいわね……鬼、宇宙人? なるほどね」
 その魂より情報を引き出し、一人うなづくユンナ。
やがてあるドアの前に辿り着き、そのままドアもあけずに部屋の中へと入る。
薄暗い部屋は、何かの研究をしているのだろうか、赤紫色の髪をしたセリオ……もともと超先生ら研究者のサポート用
に作られた彼女がなにやら作業を行っていた。
「どう、準備の方は」
「作業は完了しています、いつでも出せますよ」
 人格の無い彼女は背後からいきなりかけられた声にも全く動揺を見せずこたえた。
「そう、ならすぐにそいつらを起こして頂戴」
 何かの映画にでてきそうな、液体で満たされたチューブの中に浮かぶ人影をさし命令するユンナ、すぐにコンソールが操作され、二つのチューブから液体が放出され始める。
 ……待っていてねお姫さま、この2人を使ってあなたをエスコートしてあげる。
普通の人間にはない魔力をもったスフィー、その妹であるリアンを生け捕りにしてその魔力を搾り取る。
彼女の計画、その成功を確実にするにはまだまだ魔力が必要だから。
待っててね、ウィル。ユンナは口元に笑みを浮かべて二人が開放されるのを待った。


【ユンナ、謎の2人をリアン誘拐のため使用する模様】
121RTO:02/02/05 17:31 ID:J2V6czCu
>>119
まだ生きてますはい。そろそろサイトも更新します。
インフルエンザにかかりましたが休んでなどいられずウイルスを撒き散らしながら会社に向かってます。皆さん気をつけてください。
122集え我が同志:02/02/05 22:38 ID:J2V6czCu
降りしきる雨が、大志の眼鏡のフレームを濡らした。
「……む」
眼鏡のレンズを拭きながら、大志は空を仰ぐ。眼球に触れる雨粒が、なんとなくここちよかった。
「……ふん、吾輩らしくも無い」
ふとりごちて、彼はきびすを返した。この雨では手がかりを得られそうにも無かった。
手がかり。彼の大切な「同志」の手がかりだ。

「……どうだった」
ジープに戻ってきた大志を出迎えたのは、舞のぶっきらぼうな一言だった。
「うむ。 ……モンスターについては当座心配が無いようだ。さきの恐竜どもも見当たらん……無論、わが同志たちも、な」
「大志さん……みなさん、無事でしょうか……」
みなさん、とは和樹達の事だ。
「まいブラザーたる同志和樹がこの程度の怪異でくたばるとは到底考えておらん……が、電波で交信位してもいいようなものを……」
最後の一文がいささか気にかかったがあえて突っ込まずに、それきり4人は黙ってしまった。

ジープは先程の位置から動かしていない。動かさないと言うよりは、動かせないのだ。
たまに気まぐれにエンジンがかかったりはするのだが、それでも走行するに至らない。
動いたとしても、この洞窟の先に行く気にはならないだろう。大志としては「一番見せたいもの」がきになってはいたのだが。
それでも、大志を除く3人の共通見解として
「ハンドルを握るのが大志ならばあるいは……」
という考えがあるというのは、彼の持つある種カリスマ性にも似たオーラのなせる業であったかもしれない。
(それは大志に言わせると「ヲタクパゥア」と言うものになるそうだが彼女達は知らない)
123集え我が同志 by RTO:02/02/05 22:41 ID:J2V6czCu
「……光……」
ぽつりと、舞が呟いた。
「……?」
見ると、ジープの上空(と言ってもあくまで洞窟内なのでかなりの低空だ)にかすかな緑色の光が輝いている。
「髑髏の騎士でも出てくるのならば吾輩としては面白い」
ポキポキベキリと指を鳴らして大志がそう言い放つ。この時指を折りかけて後に地獄を見ることになるのは一生涯語られる事の無い彼の秘密である。
「ちがう……緑色の光……とても、やさしい光……」
舞がそう言い終わった時、緑色の光が何やら大きくなったかと思うと……

膨張した光が、4人の人影を吐き出した。
他の3人には分からなかったが、こと九品仏大志という青年の持ち味はこう言う時にこそ発揮されるものであり、
すくなくとも吐き出された4人のうち唯一の男性である千堂和樹のみをキャッチし、残る3人の女性についてはその目で視認しておきながらも手を貸す事をしないというのは
彼で無ければできない芸当であったろう。無論、そこに作為と言うものは存在しない。
「まいえたーなるふれんど和樹よ! 良くぞ無事で吾輩の元に戻ってきたァッ!」
背骨を折らんばかりの勢いで和樹を抱く大志。大志にしてもその後のツッコミを期待していたのだが、彼の期待に反して、それがなされる事は無かった。
そう。大志の姿を確認しても、和樹の表情は暗く沈んだままだったのである。

【和樹一行のワープ先は大志一行のジープと判明 既に降雨】
124RTO:02/02/05 22:46 ID:J2V6czCu
そしてまたスペース1文字あけを忘れている自分に気付き激しく鬱。
サイト更新したらちょっと逝って来ます
125R1200:02/02/06 00:20 ID:aQM2sTud
>>RTO様
更新頑張ってください〜
126名無しさんだよもん:02/02/06 01:49 ID:e8IrenEK
     llllllllllll                               lllll
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        lllll                                llllll
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  lllll      lllll    llllllllll    lllllllllllllllllllllllllllllllllll   lllllll
 lllll      llllllllll    llllllllll                  lllllllllllllll      lllll
llllllllll      llllllllll  llllllllll                  lllll    lllll  lllllllll
        llllllllll                          lllll      llllllll

127力と技:02/02/06 01:51 ID:jC0yk3GJ
「────ッ!!」
 威嚇のつもりか、ミノタウロスは高く吠えた。
 しかし坂神蝉丸にはそんな行為は通用しない。 彼は平然と構えたまま、相手の動きを待っているだけだ。
 その反応が気に入らなかったか、ミノタウロスはさらに雄叫びをあげて、丸太の様な両腕をブンブンと降
り回した。 体躯に似合わず動きは素早い。
 だが、その攻撃は子供の喧嘩の様に滅茶苦茶で、戦法というものがまるで窺い知れなかった。
 昼間故に蝉丸の強化兵としての力は衰えていたが、そうでなくとも卓越した戦士である彼には、怪物の攻
撃を避けるのは難しくなかった。
(……そこだ!)
 一瞬の隙を見出し、蝉丸は相手の連続攻撃の渦中に踏み込む。 
 自分より遥かに素早いその動きに驚いたか、ミノタウロスが一瞬、腕を止めた。 そこにさらなる隙が出
来る。
「ふほぅっ!」
 呼気と共に、固く握った右拳を相手の鳩尾に打ち込んだ。 微塵の手加減も無い、真に相手を殺すつもり
で放った一撃だ。
 確かな手応えを感じる。 ミノタウロスの巨体がガクンと揺れ、その動きが止まった。
(……やったか?)
 蝉丸は相手の顔を見上げた。
 太陽を背にし、逆光を浴びて暗くなったミノタウロスは、白目を剥いている。
 
 死んでいる?
 
 そう思った直後に。
 怪物は思いきり身体を捻り、右腕を振り被った。
(肉に防がれたか!)
 蝉丸は咄嗟に腕を上げて防御姿勢をとる。 間髪入れず、巨大な掌が蝉丸の身体を打った。
128力と技:02/02/06 01:53 ID:jC0yk3GJ
「ぐぅっ!」
 防御の上からでも凄まじい衝撃。 蝉丸の身体は浮き上がり、3メートルは後方に吹っ飛んだ。
 そのまま落ちて背中を強打したが、痛みなど気にすることなく起き上がった。すぐに鼻息荒いミノタウ
ロスが走ってくる。 まだ白目のままだった。
 
 再び、怪物は太い腕を降り回した。
 蝉丸は右へ左へ細かな動きを繰り返し、先刻と同じようにミノタウロスの攻撃を避けていく。
「ッ!!」
 ミノタウロスは忌々しげに唸り、腕を止めて右足を突き出した。 前蹴りの様な姿勢になっている。
 
 蝉丸は相手の蹴り避けることをせず、うまく脇に抱え込んだ。
(打撃が効かぬならばっ!)
 その脚に自分の腕を絡め、渾身の力で捻り込む。
 メキッ、という嫌な音が聞こえた。 ミノタウロスの足首が奇妙な方向を向いている。
「────ッ!!」
 怪物は耳障りな悲鳴をあげた。
 効果有りだ。 蝉丸はさらに足首を曲がらぬ方向に捻っていく。
129力と技:02/02/06 01:54 ID:jC0yk3GJ
「む」
 相手の動きを察知して、蝉丸が唸った。
 ミノタウロスの左足が地面を離れた。 体勢が崩れるのも構わず、右足に取り付いている蝉丸を蹴り払
おうとしている。
 しかしその直前に、蝉丸は脚を放して素早く後退した。 突き出された左の蹴りは、目標を捉えること
なく伸びきった。
 変な姿勢になって両足を宙に浮かせたミノタウロスは、そのまま無様に地に落ちる。
「〜〜〜〜ッ!!」
 憎々しげな声。
 ミノタウロスは起き上がると、再び蝉丸に向かって突撃した。 さらに鼻息荒く、怒っているのは目に
見えて分かった。
 対して蝉丸は、やはり冷静に、半身で迎撃の構えを取った。
 
 
 栞にはただ、両者の闘いを見守っているだけしか出来ない。


【蝉丸、ミノタウロスと交戦中】
130名無しさんだよもん:02/02/06 01:57 ID:jC0yk3GJ
127から128は行間無し、
128から129は一行開けでお願いします。
131黒い塊:02/02/06 03:00 ID:vYalGiHW
 すーすーと小さな寝息をたてているドラゴン。
 その様子を心配そうに眺める少女が一人。
「…………」
「澪ちゃん。そろそろ休まないと今度はあなたが倒れちゃうよ?」
『でも、心配なの』
 澪がゆっくりとスケッチブックにペンを走らせる。
「なら、里村先輩の治療が信用できない?」
 ブンブンと首を横に振る。
「ふふ。だったら安心して休まないとね」
「…………」
「大丈夫。澪ちゃんの代わりに私がこの子を見ていてあげるから」
 きよみが見ていてくれるのなら安心できる。
 そう思って澪は首をゆっくりと縦に振った。
132黒い塊:02/02/06 03:00 ID:vYalGiHW
 それからどれだけ経っただろうか。
 澪がきよみの元へ戻ってきた。
「あれ、どうしたの?」
『なんだか外が騒がしいの』
 そういえば、なんとなく遠くが騒がしい気がする。
「シンディはん?」
 晴子が突然呟いた。
 シンディさん……
 確か澪ちゃんの道具を取りに外へ行ってくれた人だ。
 その人に何かあったのだろうか。
 不安になりながらも、きよみは笑顔を崩さず澪の方を見る。
「きっと雨が振ってるからだと思うよ。雲で外が暗くなってるせいでちょっとした事でも不安になっちゃうんだよ」
 澪だけでなく自分にも言い聞かせるように言った後、澪の頭をポンポンと撫でてやる。
『ありがとうなの』
 まだ少し不安そうな笑顔で、澪が答える。
「どういたしまして」
 きよみがそう言うのとほぼ同時。
――ギャアギャアギャアギャア!
 物凄い音とともに、勢いよく部屋に何かが飛びこんできた。
「…………!」
 部屋中を埋め尽くす黒い物体に、澪が恐怖の表情を浮かべる。
「澪ちゃん! あそこへ!」
 きよみはそう言うと、澪を少し離れたベッドの下へと潜りこませた。
――ギャアギャアギャアギャア!
 次はこの子をどこへ隠すかだ。
 どうやら部屋を埋め尽くしているのはカラスらしい。
133黒い塊:02/02/06 03:01 ID:vYalGiHW
――ギャアギャアギャアギャア!
「ぐ……!」
 血の匂いにひかれるのか、カラスは自分よりもドラゴンの周りに集まっているようだ。
 ドラゴンに巻かれた包帯はビリビリと破かれ、折角塞がった傷口からは血が滲み始めていた。
 厚い鱗に覆われているとはいえ、この様子では時間の問題だ。
「ど、どうすれば……」
 どうすればいいんだ。
 この状況で、ドラゴンを抱えて運ぶことはもう不可能。
 周りにはドラゴンを守るために使えそうな物も無い。
「あ……」
 そうだ。
 一つだけ、ドラゴンを守れる道具があるじゃないか。
 そう思った次の瞬間には、きよみはドラゴンを腹に抱え込んで床に丸まっていた。
――ギャアギャアギャアギャア!
「うぅ……ぐ……っ!」
 カラス達の爪が、クチバシが、きよみの背中を傷つけていく。
 後頭部から流れた血が目に入る。
 もうダメかなと思い始めた時、急に背中が温かくなった。
――ギャア! ギャア! ギャア! ギャア!
 さっきにも増して大きくなったカラスの声。
 ガラララララ!
 そして誰かが窓を開ける音が微かに聞こえ、カラス達の声は一気に遠くなり、そのまま消えてしまった。
「……?」
 わけはわからないが、どうやら助かったらしい。
「あ、この子は……」
 慌ててドラゴンの様子を確認すると、どうやら無事みたいだ。
「良かった……」
 安心した途端体中を激痛が襲い、きよみはそのまま気を失った。
 仙命樹のおかげか浅い傷はすでに塞がりかけていたが、深く抉られた部分からはまだ血が流れ出していた。
134疾風食逃客:02/02/06 03:08 ID:vYalGiHW
【きよみ 気絶】
【ドラゴン 傷口が開く】

>>131-133
久しぶりに投下します。
>>101-105の白きよみ視点バージョンです。

>RTOさん
131と132の間のみ空行を入れてもらえれば、あとのレス間は空行を入れなくてOKっす。
とりあえず今は体を休めて、無理しない程度に頑張って下さい。
135名無しさんだよもん:02/02/07 22:15 ID:WEG4sgfb
age
136意外な遭遇:02/02/08 23:00 ID:YzHOxEzQ

 夜明け前近くに止んだ雨は、今もそこかしこに雫を残していた。
 水が苦手な御堂にとっては、忌々しい事この上ない。
 まだ日は上がらず、薄暗い雲が空一面を覆っている。
 とはいえ、例え光の無い闇夜でも見通せる御堂にとっては、別段不自由もしなかったが。
「………おい、千鶴、志保、お前ら暗くて大丈夫か?」
 ふと、昼間となんら変わりなく歩を進める二人に、御堂は声をかけた。
 だが、帰ってきた答えは簡潔だった。
「はい、私は夜目も利きますから、問題ありません」
「えっ、おじさん暗くて見えないの? だらしないわねぇ、あたしなんか、昼間かと思っちゃってたわよ」
「あーそーかい、別に見えるならいいがな」
 そうは言いながら、御堂は腑に落ちないものを感じて、顔をしかめた。
(…ちょっと待て。強化体の俺は夜目が利いて当然だ。千鶴も、鬼の血とやらのためだろう。
 ……だが、なんだって志保は、そんなに平気なんだ?)
 のほほんと前を行く志保は、言葉通り、巧みに足元の障害物を避けていく。
 この暗闇の中、到底普通の人間ではできない行動だ。
「おい、志…」
「あっ、海じゃない!」
 御堂の声を遮って、志保が大声を上げた。
 疑問を問い質すよりも、志保の言葉の内容にぎょっとして、御堂は口をつぐむ。
 志保の言う通り、そこは海辺だった。
「……ちっ、しくじったな。ホテルに行くはずが、島の外側に出ちまったって訳か」
 予想外の出来事に舌打ちしながら、御堂は鋭く海岸に目を走らせる。
「う〜ん、水着があったら一泳ぎしたいんだけどなー」
「志保ちゃん、ちょっと無理がない?」
137意外な遭遇:02/02/08 23:01 ID:YzHOxEzQ

 のん気な女性陣を他所に、御堂は砂辺に倒れている人影を目撃していた。
「おい千鶴、あそこに誰か倒れてるぞ」
「えっ?あ………初音!!」
 今までのほほんとしていた表情が一転、厳しく鋭いものに取って代わると、千鶴は一目散に砂浜に駆け降りていった。
「初音っていやぁ……千鶴の妹か」
「へ〜そうなんだ。でも、いつのまにそんな事聞き出したわけ?おじさんもスミに置けないわねぇ」
「うるせぇ、お前が気絶してる間だよ」
 このこの、と肘で突ついてくる志保を、うっとおしそうに払いのけながら、御堂は油断無く目を細める。
「おい千鶴、様子はどうだ?」
「……はい、大丈夫。身体が冷えて衰弱していますが、命に別状は無いようです」
 小柄な初音の身体を抱かかえ、千鶴はほっとしたように息をついた。
 その時、志保が目敏く何かを発見する。
「おじさん、千鶴さん、あれ見てよ!ほらほら」
 初音の倒れていた横に何かを見つけ、志保は猫のように突進した。
「……落ち着きのねぇ女だ」
 と思う間もなく、再び志保は御堂の元に走って戻ってくる。
 しかも、長柄の斧を手に、それをぶんぶん振り回しながら、である。
「どわちゃっ!あぶねぇ!!」
「あ、ごめん。ねえほら見てよ、これ、モップに斧が結び付けられてるわよ〜」
 頭の横を斧が掠めた事に青筋を立てながら、御堂は志保から斧をひったくった。
「だーーっ、それあたしが見つけたのにー!」
「うるせぇ……この紐は確か、岩切が着てた服の切れっ端じゃねぇか…」
 ぴょこぴょこと斧を取り返そうとする志保を、巧みにブロックし、御堂はしげしげとその生地を見詰める。
「海に長斧……ふむ、岩切がここにいるのか?」
138意外な遭遇:02/02/08 23:02 ID:YzHOxEzQ

「あたしが先に見つけたのに〜」
「うるせえ女だな……お前はこれでも持ってろ」
 なおも取り返そうとする志保に、御堂はその辺を歩いていたフナムシを掴んで投げ付けた。
「うきゃあぁぁっ、虫じゃないのよ!」
「フナムシだ。岩切がから揚げにすると美味いとか言っていたぞ」
 確か、そう言っていた時の岩切の表情は、お気に入りのモルモットに注射する麗子と、似たような表情だったような気がする。
 岩切のような女でさえ、平気でフナムシが食えるとか言い出すのだ。
 その点この志保とかいう女は、感情が素直に出るというか、実にわかりやすくてよろしい。
 それが好感度に繋がるかどうかは、まったく別問題だったが。

 怒った志保が投げ付けてくる石を避けながら、御堂はその辺の岩に腰掛けた。
 さらに、顔の真正面に飛んで来た石を掴んで受け止めると、手のスナップを利かせて投げ返す。
「へぶっ!」
 小さな石だったが、眉間を直撃され、志保はオデコをおさえ涙目になった。
「ケケケケ……千鶴、初音の意識は戻らないか?」
「ええ…大分消耗が激しいみたいで……」
「そうかい…この斧の事を聞こうと思ってたんだがな」
 下が濡れているので、初音を抱かかえたまま千鶴は困ったように首を傾げる。
「どうしましょうか、御堂さん」
「あー……岩切がいれば、戦力になんだが…取り合えず初音が目を覚ますまで、休憩だ」
「わかりました」
 初音を抱いたまま、千鶴も岩のひとつに腰を下ろす。
「おい志保、お前もいつまでもうろうろしてねーで、少しは休め」
「うるさいわね〜、いつまでもやられっぱなしの、あたしじゃないわよ!」
 志保はそう言いながら、岩場に頭を突っ込んで、何やらごそごそしていた。
139意外な遭遇:02/02/08 23:04 ID:YzHOxEzQ

 少しずつ夜が明けているようだが、この島に来てから、御堂は自分の時間感覚が狂っているようで落ち着かなかった。
「しかし、随分と歳の離れた妹だな……12,3ってとこか」
 御堂のなんの気の無い一言に、千鶴の眉がぴくっと動く。
「御堂さん……初音はこう見えて、志保ちゃんとそう年は変わりませんよ。高校生ですし」
「………嘘…を言ってるようには見えんな……そ、そうか」
 恐るべし、と御堂は誤魔化し臭く、口の中でもごもごと呟く。
 千鶴の『顔は笑っているが目がマジ』な表情に見つめられ、御堂は冷や汗を垂らした。

「見つけたわよ!!」
 突然、志保が声を上げると、御堂に向けて何かを思いきり投げ付けてきた。
「む?」
 とっさに掴もうとして、それが赤いものだという事に気付くと、御堂は首を曲げてそれをかわした。
 ぽて、と落ちたのは赤いカニだった。
「あーー、避けたわね!」
「お前、こんなの探してたのか……くだらねぇ」
 御堂は大きく溜息を付き(内心、気まずい空気を払ってくれた事を感謝しつつ)、再び近くを歩いていたフナムシを掴んだ。
 そして、ずかずかと志保に近寄ると、怯む志保の背中に、フナムシを放り込む。
「ひゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっ!?」
 背中を這い回るフナムシに、志保は跳び上がった。
「やだぁぁ、取ってよぉ、うひゃあっ、気持ち悪いっ、あうっ、そこダメぇ、ひんっ!!」
 泣きべそをかき、身悶えながら、志保はフナムシを取り出そうと、服を脱ぎはじめる。
 時ならぬストリップに、御堂は手を叩いて喝采した。
「ケケケケケ、いいぞいいぞ、もっと脱げ!」
「……御堂さん……」
「ばかああぁぁぁっ!!」
140長瀬なんだよもん:02/02/08 23:06 ID:YzHOxEzQ

【志保、御堂、千鶴、海岸に出る。初音(気絶)と遭遇】
【御堂、岩切の斧を手に入れる】
【志保、ストリップ状態】

久しぶりの投稿ー。
誤字脱字抜けを見つけましたら、指摘よろ。

ちなみに、から揚げのエピソードは創作です(ぉ
141決着。そして(1):02/02/09 08:09 ID:M3vbFtVT

(岩切とあの娘は無事だろうか? くそっ、俺は何をしているんだ)
 焦りが蝉丸の判断力を鈍らせていた。
 牛人間が馬鹿の一つ覚えの如く手を振り上げる。スッ、と無駄の無い動きで蝉丸はそれを避ける。
 その瞬間、牛人間が角を突き出してきた。
 思いもよらない動きに蝉丸の判断が遅れる。
「くっ」
 横っ飛びに避ける。が、頬の皮を少し切られた。血の味が口中に広がる。


「蝉丸よ、お前は見るものを違えておる」 
「音を見るのではない。見なければならない物は、”気”じゃ」
「法師、目を閉じれば音はよく聞こえてしまいます」
「耳に入るものより大事なものがある。悟には見えておるぞ」

 不意に蓮行法師の言葉が思い出された。
(……大事な事を忘れていたな。こんな事では光岡に笑われる)
 
 蝉丸は目を閉じ、精神を集中する。
 聴力に頼らず、周辺の気配をただ感じる。
 すると、目の前の空気が荒々しく歪められるのが分かった。

 蝉丸は牛人間の腕を避け、鞭のように絡みつく。
 ごきり、と嫌な音をたて、牛人間の腕があらぬ方向に曲がった。
「グオオォォォオオオ」
 絶叫する牛人間に蝉丸はさらに追撃をかけた。音も無く背後に回り、跳躍して巨体の首に絡みつく。
 貫手で片方の目を突き刺し、牛人間の首に腕を回す。
 狂乱した牛人間が蝉丸の腕に噛り付く。盛大に血が吹き出したが、気にせず腕を動かす。
 再度、嫌な音が鳴った。
142決着。そして(2):02/02/09 08:10 ID:M3vbFtVT
 牛人間は動かない。ここまでやればもはや生きてはいまい。
 そう思い蝉丸が背を向けた時、気配が動いた。
(なっ、あれでまだ生きているというのか? なんという生命力だ)
 蝉丸は振り返った。だが牛人間は向かっては来ず、森の方へ歩いていった。
(勝ち目が無いと踏んだか。追いかけて止めを刺すべきか……)

 蝉丸が判断を決めかねていると、
「蝉丸さん!」
 栞が駆け寄ってくる。
(まあ良い。もう人を襲う力は残っていないだろう)
「ひどい。こんなに血が出てる」
 齧られた腕からは、確かに血が盛大に吹き出している。
 だが千切れるほどではない。十分と経たず、仙命樹の力で元通りになるはずだ。
「私、私何もできかった……。ごめんなさい」
 栞は自分が血に濡れるのにも構わず、ハンカチで蝉丸の血を拭う。
「栞、大丈夫だ。大した事は無い。それに、女子供を守るのは男の務めだ」
「でも、こんなに血が出て」
「よく見てみろ。血はもう出ていない。傷口もしばらくすれば塞がる」
「えっ、あっ、本当だ……。でもどうして……」
(無闇に言うべきことではないが……。この娘なら大丈夫だろう)
 蝉丸は栞に、自分の身体や境遇について話した。
143決着。そして(3):02/02/09 08:11 ID:M3vbFtVT

「そんな事が……」
「だが事実だ」
 既に蝉丸の傷口は塞がっている。この異常な治癒力を見せられては、信じない訳にもいかない。
「ふふ……。私、馬鹿みたいです」
 栞が楽しそうに笑う。
「どうした?」
「私、ずっと思っていたんです。『奇跡って、起こらないから奇跡って言うんです』って」
 なるほど、それは言い得て妙だ。
「でも私の病気は『奇跡的に』治りました。それに蝉丸さんの身に起こった事。きよみさんの事。これって『奇跡』ですよね?」
 蝉丸は50年の時を越えて現代に蘇った。そして50年前、蝉丸の血を与えたきよみは、一度死んだ後に息を吹き返した。
 これを奇跡と言わずして何と言おうか。
「奇跡って私達が知らないだけで、本当はありふれている物なのかも知れませんね」
「極端な結論だな」
「む。そんな事言う人、嫌いです」
 笑いながら言う。……良い娘だ。
144決着。そして(4):02/02/09 08:12 ID:M3vbFtVT

「……えっ?」
 突如、ドクン、と栞の胸が高鳴り動悸が激しくなる。
「うっ。……うぁ」
「どうした、栞! 苦しいのか?」
「だい……じょうぶ……です」
 全く大丈夫そうな雰囲気ではない。
「あ……はぁ。うぁ、あン」
 これは、嬌声……か? 見ると、栞の頬は上気し、上目遣いに蝉丸を見やるその目は潤んでいる。
 しまった! 栞は蝉丸の血で濡れている。
 血に潜む仙命樹には宿主と遺伝子を掛け合わせ、より優秀な宿主を作るために異性に対し強力な催淫作用がある。
 そしてやっかいな事に、いったん発情してしまうと、自分一人では絶対に発情をしずめる事はできないのだ。
 つまり、他人に気をしずめてもらう他は無いのだ。
 だが……。蝉丸の脳裏に、きよみの笑顔が浮かぶ。
「どうすればいいんだ……」
 ぽつり。一滴の水滴が蝉丸の頬を濡らした。

【蝉丸 ミノタウロスを撃退】
【栞 仙命樹の催淫作用で発情】
【降雨】
145名無しさんだよもん:02/02/09 08:15 ID:M3vbFtVT
(2)と(3)の間のみ3行開け。その他は2行開けでお願いします。

……ごめんなさい。
146形見:02/02/11 00:51 ID:iYzkfcJJ
さく さく
   
さく さく……

 先程までここでは、土を掘る音が響いていた。
 地面では、八人の男女が人一人入りそうな穴を掘り終えたところ。
「……いいですか?」
 眼鏡をかけた女性が、誰ともなく断った。
 無言であることを肯定と受け取ると、地面に横たえられた、眼鏡をかけた娘の躯を抱きかかえる。
 それを、やはり小柄で少し太い眉毛の少女が手伝った。
 地面に掘った穴にその体を寝かせる際に、小柄な少女から、涙のしずくが一つ伝う。
 涙腺のバルブの閉め方がわずかに甘かったのかな。少女はそんな事を考えた。
「パンダ。 ……借りるわ、これ」
 言って、少女は眼鏡の娘の背中から、一つのハリセンを抜き出した。
「待ってなさいね由宇。ドナルドとグーフィーの修羅場の結末はあの世で聞かせてもらうわ。だから、待ってて」
 最後の一言は、誰にも聞こえぬように。
「多分、あたしもすぐだから……」

【猪名川由宇 埋葬】
【詠美、由宇の形見のハリセン所持】
147名無しさんだよもん:02/02/11 22:27 ID:+S9kYuWS
age
148命名:02/02/12 21:37 ID:w9jvSmoo
雨は音を立てて降りつづける。
それは親友たる人物を失った川名みさきにもまた容赦無く。



雨の降りこまない木陰を見つけたみさき、弥生と座敷童は、誰言うとも無くその場に腰を落ち着けた。
息を整えながら、弥生はみさきをちらと見やる。
濡れた髪が目許を覆い隠しておりその表情は窺い知れなかったが、彼女の心中はよく分かった気がした。
当のみさきは、先程から座敷童のほうをじっと見つめ、何やら考え込んでいる様子だった。
(……あの子が、みさきさんの支えとなってくれるといいのですが)
弥生は空を見上げる。灰色の雲が地面に振りまきつづける雨粒は、夜半ごろまで止む事はなさそうだった。

「さっちゃん」
不意にみさきが呟いた気がして、弥生はみさきのほうを見た。
みさきが、座敷童の頭をくしゃくしゃとなでている。
「うん、さちこだから、さっちゃん。 よろしくね」
言いながら、さっちゃんと名づけたその座敷童の頭をなでつづける。
座敷童はと言うと、何やらよくわかっていない様子だったが、それでもみさきに微笑みかけた。
それを感じたのか、みさきもまた微笑んだ。それで弥生はようやく安心する。
――ああ、運命と言うものは、未だこの子から笑顔を奪うに至っていない。
笑える事の強さを、少しばかり理解していると自負する弥生だからこそ、みさきの笑顔に安堵を覚えたのだ。
「アイドルと言うのは、笑う事ですら商売です」
ふいに、かつて自分が発した言動が、記憶の底からよみがえった。その相手は、そう、由綺だ。
149命名:02/02/12 21:38 ID:w9jvSmoo
由綺。彼女は、まだ生きているだろうか?
――いや、生きている。マネージャーたる私が彼女の生存を信じないようではどうするのだ。
目の前の少女もまた、彼女なりに支えを見出した。ならば由綺もまた、そうであろうと信じたい。
あの藤井という青年と会う事ができていれば、当座私の出番は無いかもしれない。ひょっとしたら、最初からいっしょだった――?

彼女は知らない。
それは幻想にすぎず、森川由綺という娘はすでにこの一人の現実主義者(今はその人形)によって仕掛けられたゲームから
既に退場してしまっている事を。
それを知る時、彼女は何を思うのか? もっとも、そうなる前に彼女もまたゲームを退場する可能性もあるのだが。


そして、彼女達は知らない。
ほんの数分前まで、ここには一人の女性がいた事と、彼女達が雨宿りに使っている樹は、「トレント」と数分前に呼ばれていた事を。
150名無しさんだよもん:02/02/12 22:07 ID:BaCNpu0t
age
151荒れ狂う稲光の中で:02/02/12 22:23 ID:89t9u8kL
名倉由衣と杜若きよみ(黒)は数時間かけて森を抜けた。
由衣は森を抜けて安堵の表情をしているがきよみはモンスターの警戒を怠らなかった。
彼女の中の仙命樹がそうさせているのだろうか。
森を抜けると荒れた地に二人は立っていたのである。
森にいたときは気付かなかったが雨が降っていたのである。
「あ、雨が降っていたんですね」
「雨ね…雨が激しくなる前にしのげる所に退避するわよ」
そう、いつこんなところで風邪でもひいて体調をきたしたら命に関わる問題である。


二人は走り出した。その途中、由衣は
「あ、人が倒れていますよ」
当然由衣はその人のもとに走り出していった。
きよみとしては一刻も早く雨を避けるため放って置きたかったが由衣がいってしまったためそうもいかなくなった。
「だいじょうぶですか?」
倒れていたのは少女であった。由衣がゆすり起こすことによって目覚めたのである。
「う、うん・・・・・・」
「よかった。生きてます」
「ぱぎゅっ!?あ、ここは・・・・・・」
「荒れた地よ。具体的にはしらないわ。あんたここで気絶してたのよ」
「ああーっ、思い出しましたの。たしかジープから投げ出されてここに落ちたんですの」
きよみはすこし苦笑いして話を続けた。
「落ちたって・・・・・・あの岸壁から!?」
きよみが指さした先の岸壁は数メートル以上ある。
「あ、あたし格闘技やってますの。ですからとっさに受身をとって凌いだのですよ。きっと」
(受身しても死ぬときは死ぬって・・・・・・)
「あたしは御影すばる。ありがとうございますの」
すばるは左手が負傷していたがそれ以外に外傷はなかった。タフな身体である。
152荒れ狂う稲光の中で:02/02/12 22:25 ID:89t9u8kL
(2行あける)
「でも、あゆさんと、葵さんと、きよみさんとはぐれましたの、みんなばらばらにふっとんだですの」
突如きよみに聞き覚えのある名前に彼女は驚愕し、尋問した。
「きよみって、白髪で華奢な人のこと?」
「はい、感じのいい人でしたよ」
由衣は少したじろいたがやがて落ち着いた。きよみの様子に少し不安感を覚えたのである。
「いや、なんでもない。それより雨が本降りになる前に避難しましょう。ここよりはましな場所が多いわ」
「まってください。あ、すばるさんも行きましょう。あと、私は名倉由衣です」
そして彼女達はその場をあとにした。


その三人が駆けていくなか雷がとどろいていた。
この島にいるものたちの運命をあざ笑うかのようにしばらく鳴り響いていた。
雨はまだやまない。



【由衣と黒きよみ、すばると合流】
【すばる、左手負傷】
【雨降り、雷が暫く鳴り渡る】




153名無しさんだよもん:02/02/12 22:28 ID:89t9u8kL
とりあえずまだ出てないキャラ、長い間出てないキャラを出してみたが。
ちなみに私はSSをほとんど今まで書いたこと無いので稚拙な文体で御見苦しい。
154おやくそく?():02/02/13 02:51 ID:vbVlGwFu
「浩之っ!?あかりちゃんっ!?」
―――バンッ!
 先頭を走っていた祐介が、半開きになっていた扉に体当りするように飛びこむ。
 その先に待ち受けていた光景は・・・

「ひろゆきっ!!」
 力なく地面にへたれこんだ浩之の姿を確認するや否や、
 祐介は一目散に彼の元へと駆寄っていった。そして・・・
「浩之っ!!ひろゆきっ!!」
 両肩を揺すりながら必死になって彼の名を叫び続始める。

「おーおー、お熱いねぇ」
 いち早く気付いたサラが祐介の行動を茶化す。
「お熱いって・・・
 ち、ちがうよっ!ユウ君はただ浩之君が心配なだけで・・・
 って、冗談言ってる場合じゃなくて、どうしよう!?浩之君が!」

・・・それを聞いてエリアが、「ああ」と納得したように頷いた。

「大丈夫ですよ、あれは浩之さんの血じゃないですから」
「え?そうなの?」
「はい。それよりも・・・」
 と言いながら、サラと共にぐるっと周囲を見渡す。
155おやくそく?(2):02/02/13 02:52 ID:vbVlGwFu
「ティリアは、どこにいったんでしょう?」
 エリアの疑問と
「人のこと勝手に殺すんじゃねぇ!!」
――スパーンッ!と快音が博物館じゅうに響き渡るのはほぼ同時だった。


【ティリア 行方不明】
【祐介 側頭部軽症】

(スレ間は2行空けでお願いします)
156密談:02/02/13 15:40 ID:lYPuof9o
逃がしたか……分かった。次の指示を待て」
「駄目だったか?」
「そのようだ。あれほど人間界の予習はしておけと言ったのに」
「ウィル……か。あの小僧が何を企んでいるか分からんが、ほうっておくわけには行かんからな」
「うむ。何の為に奴に殺人容疑をかけてまでこちらの監視下においたのか分からなくなる」
「全くだ。奴に『あれ』を公表されては我らが『神』の御名のもと、わしら二人は消されてしまうぞ」
「間違い無く、な……しかし問題無い。奴の女の居場所には既にあたりをつけてある。きっと奴も其処に行く」
「あの島か。最近、霊的作用点にきわめて磁場が高くなっていると言う……?」
「そうじゃ。女のほうも何やら企んでいる所為で磁場が高くなっているようじゃが、な。」
「……委員会の人間を派遣するのか?」
「……じゃな。失敗すれば我ら二人の命は、無いであろうが、の」
「……(ピッ)私だ……人間界の……」


【天界の一角 なにやら密談】
157悪夢再び:02/02/13 23:43 ID:36svdUiK
「や、やった!ついにやったぜ相沢!」
「ああ、思えば長く、辛い道のりだった!同じところをグルグルと回り続けるは、ドラゴンに襲われるて散々だったが・・・・・」
「けどもうそんなことはもうどうでもいいぜ・・・・」
「ああ・・・俺達は・・・俺達は・・・・」
「そう、この!」
「竜の巣から!」
「脱出できたんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 感極まった相沢雄一、北川潤、両名の声が、森に響く。
 そう、この二人、あの跡も幾度となく襲い掛かる苦難の時を乗り越え、今ついに半径15Kmをゆうに超えるこのパーク最大の目玉のひとつである竜の巣を抜け出したのである。
「ああ!俺もう神様信じちゃう!神様マンセー!神様最高ー!かみさ・・・」
「ちょ、ちょっと待てよ北川、俺たちはまだ竜の巣とやらを抜けただけであって、安全になったってわけじゃないだろう!それに、さっきの大声、ありゃあやっぱりまずいだろう・・」
「何を言ってるんだ相沢!人間、嬉しい時に叫ばないでどうする、叫びという行為は男のロマン!それ即ち・・・・」
 北川はその意味不明の言葉を続けることができなかった。
 そして祐一もその存在に気づき、息を呑む。
 二人にの前に現れたのは、恐らく、世界のどこを探してもいないと思われる大きさの、
 巨大な、蛇。
158悪夢再び:02/02/13 23:45 ID:36svdUiK
(三行開け)
「走れ北川!足を止めたら最後、頭からバックリ食われるぞ!」
「チクショウ!また追いかけっこかよ!おい相沢!またなんか考えつかないのか?」
「無理言うな!そんなにポンポン出てくるわけないだろう!」
 月明かりだけを頼りに二人は大蛇を巻こうと必死の思いで走りだす。
 狩る者と狩られる者、自然界の摂理のもとに繰り広げられる、動物では当たり前の行為。
 だがその摂理から離れすぎている人間二人は逃げようとするのがやっとだった。
 そして、息が上がって注意力が下がった北川の足に何かが突っかかり、
「うわあっ!」
 そのまま木の根に足を滑らせ、北川は地面に派手にすっ転ぶ。
 その隙を逃さず、詰め寄る大蛇。
「う・・く、くるなあ!あっちに行けっ!」
 そういって北川が足元にこらがっている掌ほどの石を投げつけるが、大蛇の体にあたって跳ね返るだけで、意味がなかった。
「北川!いいから早く立て!」
「だ、駄目だ相沢!こ、腰が抜けて・・・た、助けてくれ!」
 北川の叫びもむなしく、大蛇はもう彼の目の前まできていた。
「し、死にたくない!、嫌だ!、た、助けてくれ!相沢ぁ!」 
 その言葉が終わるか終わらないうちに大蛇がその大きな口を開け、彼を飲み込もうとする。
159悪夢再び:02/02/13 23:47 ID:36svdUiK
 祐一も駆け出したが、その距離からして到底間に合わない。
「クソーッ!北川ーッ!」 
 友達一人救えない、自分の無力さへの怒りで叫んだその時。
「どけろ!相沢祐一!」
「え?今のは?・・・」
「どけろと言っているのが聞こえないのか!早くしろ!」
 急に表れた第三者に戸惑いを隠せないが、言われた通りに体を横にそらし声のしたほうを見ると、
 その男は、持っていたアサルトライフルを大蛇に向け、
 躊躇なく、引き金を引いた。
 そのとたん銃口から発射される無数の鉛弾。
 かかった時間は、ものの数秒。
 弾丸の通った後には、できの悪いオブジェのような肉塊が、出来上がっていた。
(三行開け)
「おい、北川!大丈夫か?」
「あ、ああ、何とか・・・・」
 そういった北川の目は虚ろで、どこか焦点が合っていない。
「お、おい、お前ほんとに大丈夫か?」
「フン、よほどショックが強かったんだな。一時的な混乱状態にでもなったんだろう」
 馬鹿にしたような言い方で男が二人に近づく。
「オイあんた、いくら助けてくれたからってそういう言い方は・・ってお前!」
「フン、今ごろ気づいたか。感謝しろ、僕が助けてやんなかったらおまえ達は確実に死んでいたんだからな」
160悪夢再び:02/02/13 23:48 ID:36svdUiK
 そういってその男、久瀬は人を馬鹿にしたような表情で、小さく笑った。



【相沢祐一 北川潤 久瀬秀一 取りあえず三人一緒】
【大蛇 久瀬によって撃退】

161名無しさんだよもん:02/02/15 01:28 ID:kHHyJRO9
メンテage
162残された者達:02/02/15 22:19 ID:cD5Ycqv9
 外は雨。そろそろ夜の帳が降りて来ようかという頃合だ。
 耕一さんが出て行ってから数時間が経っている。
 何事も無ければそろそろ帰ってきてもいい時間なのだが。
 いや、大丈夫だ。耕一さんは俺を信じてここを任せてくれたんだから、俺も耕一さんを信じなければ。
 
 隣の部屋を覗く。
「あらら。二人共寝ちゃってるのか」
 その部屋は広さこそ段違いだが、学校の教室に似た配置の部屋だった。
 本来ならば、この島の技術やらモンスターの由来やらを説明する場所だったのだろう。
 教室の黒板に相当する場所には、巨大なスクリーンが掛けられていた。

 美坂香里と立川郁美は、隣り合わせの机で仲良く寝入っていた。
 俺が近づいても起きる気配は無い。今まで極度の緊張状態だったのだからこれも仕方ないのかもしれない。
「寝顔はいいね。美坂さんもこうなってしまえば可愛いもんだ。つーか、俺が男だって事分かってるのか?
襲っちゃおうか? だがジェントルマン住井はそんな事はしないのであった。……寒いな、俺」
 オヤジか俺は、と自分に毒づきつつ美坂さんの後ろの席に腰掛ける。

 5分もすると睡魔が襲ってきた。折原と馬鹿やったせいで昨日ほとんど寝てないからな〜。
 だがいかん! 俺が寝てしまったら誰が彼女達を守るんだ。
 そーいえば以前、折原に居眠り防止策を聞いたような気がする。
 どんなだったっけ? 眠気のせいで意識が混濁してきたが、何とか思い出してみよう。確か

『……の髪をしっかりと巻きつけるんだ。そうすれば、がくっと眠りこけてしまった時に、その髪を
引っ張ってしまう事になる。その恐怖と常に背中合わせの緊張感がお前の意識を覚醒させてくれるだろう』

 やべえ、マジで眠い。こうなったら折原の秘策を使わせて頂こう。
 ……既に自分でも何を考えているのかよく分からない。
 とりあえず眼前のウェーブがかった髪に触れ、自分の手首に巻きつけ、かっちりと縛る。
 もしここで俺が寝ちまったら。
163残された者達:02/02/15 22:21 ID:cD5Ycqv9
 エナメル素材のボンテージを身に付け、鞭を携えた香里。赤いハイヒールが白い足によく映える。

「お仕置き、ね」
 
 (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル  怖っ。こりゃあとても眠れない。さすがだな、折原。

 
 ……。
 
 ………ぐぅ。
 
 ぶちぶちぃっ!!

「ギャーーー!!!」
164残された者達:02/02/15 22:22 ID:cD5Ycqv9
「さて、どういうことか、はっきりと説明してもらえるかしら」
 美坂さんはにっこりと笑っている。
 しかし、こめかみの血管が浮き出し、肌を突き破らんばかりに激しく脈動しているのを俺は見逃さなかった。
「説明してもらえるかしら」
 静かなる圧迫感を感じる。
「あのですね。話せば長くなるんですが」
「いいわ。何年でも聞いてあげるから」
 駄目だ。逃げ道は……。郁美ちゃんっ。
 あ、くそ、目をそらさないでくれよぅ。

「さあ」
 俺もここまでかっ。お仕置きですかぁ。
「あのですね。僕はとっても眠たかったんですよ。しかし、女性陣を守るため、寝てしまう訳にはいかない!」
「ほうほう。それがどーやったらこんな結果に結びつくわけ?」
 美坂さんは、無残に床に散らばった髪に目を向ける。
「要するに、この髪を眠気防止センサーとして手首にくくりつけ」
「アホかぁーーー!!」
 美坂さんの鉄拳が俺の顔をぶち抜いた。
 
 薄れゆく意識の中で俺は思った。
 美坂さんって、意外とノリいいんだな……。
165残された者達:02/02/15 22:23 ID:cD5Ycqv9
 だが俺の意識はすぐに、ガン、ガンというでかい音によって呼び戻された。
 これは……? 入り口、か。やばいっ。
 顔面パンチのダメージも忘れ、俺は入り口に駆けつける。
 ドガン、と一際大きな音が響き、扉が開く。
 くそっ、鍵を壊されたか。
 考えてみりゃこの島は化け物だらけなんだから、あんなちゃちい鍵じゃあ壊されるのも当然か。
 
 現れたのは一人の女の子を抱いた、精悍な男。
「俺は敵ではない。すまんが少し雨宿りさせてはもらえないだろうか。この娘が」
「栞っ!」
 遅れて駆けつけた美坂さんが叫ぶ。
「栞。しおり! しおりっ!! 何とか言ってよ、ねえ!」
「落ち着け。この娘に怪我は無い」
「はぁ、はぁ。お、おねえ……ちゃん!? おねえ……、いやっ! 来ないで」
「し、栞? どうして!」
「だ、だって、私……こんなの……恥ずかしいもん」
「お前はこの娘の姉か。なら、よく見てみろ」
 つられて俺も美坂さんの妹? を凝視する。
 その肢体は雨に濡れそぼり、下着が透けて見える。
 はぁはぁと切なげに吐く息は艶やかで、頬は真っ赤に上気している。

 とてつもなく色っぽい。……やばい。
 ふと美坂さんの方に目をやると、目の前にある物が信じられない、て感じの呆けた表情をしていた。
 と、美坂さんがようやく俺の存在に気付くと、キッと表情を正し、俺に向き直る。
「妹を、いやらしい目で見るなーーー!!」
 美坂さんの鉄拳が俺の顔をぶち抜いた。

 薄れゆく意識の中で俺は思った。
 美坂さん、キャラが違う……。
166名無しさんだよもん:02/02/15 22:25 ID:cD5Ycqv9
【住井・香里・郁美 蝉丸&栞(発情中)と合流】

「麻枝先生、ギャグってやっぱり難しいですね」(キユ)
167名無しさんだよもん:02/02/15 22:35 ID:cD5Ycqv9
忘れてた。行間は3行開けで。 ……カコワルイ。
168守る者?:02/02/16 16:38 ID:ocagj8cw
「待ってくれ俺達は別に敵じゃない」
そう言って冬弥は茂みから出てきた。
「俺達は人を探してるんだ。そうしたら君を見つけたもんで様子をみていたんだ。」
と彰が言った。
そこまで言うとようやくその女の子はファイティングポーズをといた。

どうやらその子も自分達と同じようにこの島に招待されて友人とはぐれたらしい。
「ねえ、松原さん僕達といっしょに行動しようよ。一人よりもたくさんで行動したほ
うが安全だし、松原さんの探している人も見つけやすいと思うんだけど。」
と彰が言った。
「そうだな、俺達はジープも持っているしそっちのほうが一人より安全だろ。」
と俺も言った。
「一人じゃないニャ。」
「私たちもいます。」
とさっきまで人だったネコと人形が言った。
俺はこの喋るネコと人形にどう答えれば言いかわからなかった。
「と、とりあえず、俺達といっしょに行動しようぜ。」
「はい、お願いします。」
彼女は言った。
169守る者?:02/02/16 16:41 ID:ocagj8cw
まだ中学生くらいだろうか、この状況を不安に思っているのが分かる。
俺達で守ってやらねば。
「よし!それじゃあ改めてよろしくな。葵ちゃん。」
「冬弥いきなり葵ちゃんなんて馴れ馴れしすぎないか?」
「いいじゃねーか別に。」
「フフフ」
そんな俺達の会話を聞いていた葵ちゃんが笑った。
「私は別にかまいませんよ。」
「ほら葵ちゃんもいいって言ってるじゃねーか。」
「それは今回松原さんがいいって言ったからよかったものの…」
「ほら、それより早くジープに戻るぞ。」
と彰に言ってジープに乗ろうとしたとき。
「冬弥!後ろ!」
彰に言われて後ろを振り返るとそこには豚のような猪のような動物が二本足で立っ
ていた。
170守る者?:02/02/16 16:42 ID:ocagj8cw
その豚か猪かわからない動物は俺に襲いかかろうとしたとき。
「危ない!たあぁぁぁぁ!」
と葵ちゃんが言うと同時に葵ちゃんの上段げりがその動物にヒットしその動物は白
目を剥きその場に倒れてしまった。
「大丈夫ですか冬弥さん?」
「あ、ああ」
俺は馬鹿みたいな返事をした。
「松原さん、今の君が?」
と彰が言った。
さっきの動物が襲ってきたのもびっくりしたが、俺にはその動物を葵ちゃんが蹴り
倒したのにびっくりした。
「はい、実は私格闘技をやっているんです。」
「………」
「………」
どうやら守られるのは俺達のほうかもしれない。

【葵・冬弥・彰・タマ・フランソワ−ズ合流】
171名無しさんだよもん:02/02/16 16:45 ID:ocagj8cw
初めてですので緊張しました。
172名無しさんだよもん:02/02/16 19:42 ID:UjJijNqi
>>171
1つだけ突っ込み。

「〜。」は、おかしい。
「〜〜」が正解。

嫌がらせとかではなく、次も頑張ってください。
173171:02/02/16 22:11 ID:ocagj8cw
ご忠告ありがとうございました。
次から気をつけます。
174衝撃1/4:02/02/16 23:58 ID:Ww2xr91S
「獣は自分より強い相手は襲わんと言うが…」
軽く鬼の力を覗かせる柳川にサーベルタイガーは唸りをあげ飛びかかった。
四肢のひとつをなくしているとは思えないその跳躍力。
だが柳川は無造作に身捻るだけでその一撃をかわす。
「手負いが故か、それともこれが主催者の言うRRと言うやつか」
瞬時に距離を取る柳川に追いすがるサーベルタイガー。
「まぁ、楽しませてくれ」
呟きながらその鋭い爪を紙一重でかわす。
だが次の瞬間サーベルタイガーは空中で身を翻し着地から溜の動作なしで柳川の方へ飛んだ。
「ほう、まだそれだけ動けるのか…」
柳川に体長2m体重凡そ270kgの単純だが圧倒的な質量エネルギーが襲いかかる。

しかしその一撃を柳川はその場で受け止めた。
左手で喉を右手で残された前足を掴む。
更新世を誇る最強の肉食類―だがその力においては星の海を超え数多の命を刈り取ってきた狩猟者エルクゥの末裔に分があったようだ。
「それなりに楽しめたが…相手が悪かったな」
足元の地面が沈み込み柳川の両腕が鉤爪をもつ鬼のそれへと変貌して行く。
「じゃあな」

その時柳川の全身を激しい衝撃が襲った。
物理的なものではない、だがその身が砕け散るような感覚。
そして次の瞬間感じた弾ける「命の炎」。
これは…
「柏木耕一…バカなッ?!」
その一瞬の隙をつき―サーベルタイガーの顎が右肩に食い込んだ。
175衝撃2/4:02/02/16 23:59 ID:Ww2xr91S
「いやあぁああ、耕一さんッ!!」

叫び声に目を覚ましたときマナはそれが楓のものであると気がつかなかった。
身を起こし隣りで振えている楓を目にしてようやく事態を把握する。
「どうしたの、楓ちゃん?」
だがマナの呼びかけに楓は身を震わせなにかぶつぶつ呟くのみであった。

マナの目にはさっきまであれだけ落ち着いて見えた楓だったがやはりこの環境
に怯えていたのだろう。
なんだかんだいっても自分の方が年上なのだ。
自分が慰めてあげなければ。
「大丈夫楓ちゃん…夢を見たのよ」
肩を抱くマナに楓が顔をあげる。
そしてマナは見た、楓の瞳が猫の様に裂けうっすら光を帯びているのを。

なんなのだこれは…目の前の光景を飲み込めないでいるマナに楓が呟いた。
「夢…?」
(そう、楓ちゃん怖い夢を見ていたのよ。)
応える筈だった言葉は喉から出てこなかった。
「違う、今のは耕一さんの…耕一さん!!」
立ちあがる楓にマナがしがみついた。

なにもわからなかった。楓の事も彼女が語る「耕一さん」のことも。
ただひとつマナにわかった事は彼女を行かせてはならないという事だった。
176衝撃3/4:02/02/17 00:00 ID:VKz1CUuN
「離して下さい、耕一さんが…耕一さんがッ!!」
「ダメだよ楓ちゃん!もう日が…今出ていったら危ないよ!!」
もがいていた楓が大人しくなる。
「…楓ちゃん?」
空気が変わった。
「…お願いです、離して下さい」
応えた楓を見てマナは息を呑んだ。
裂けた瞳が…猫の様?
違うこれはもっと別のモノだ。
危険?
夜のジャングルに出ていった所で何が彼女にとって危険足り得るのだろう。
私は…私はナニにしがみついているのだろう。
私は…
楓に抱きつく腕から力が抜けて行く。

フッと腕から楓がすり抜けて行き…その場に倒れ込んだ。

「ダメだよ楓ちゃん…」
その楓を抱きとめた瑠璃子が悲しそうに呟いた。

「…何?一体なんなの…」
沈黙の末マナが口を開いた。
「この娘どうしちゃったの?どうしていきなり気を失っちゃったの?」
「楓ちゃんの大切な人が死んじゃったの。楓ちゃんにはそれがわかるから…わ
かったから行こうとしたんだけど…」
「…だけど?」
「その人が…耕一さんが死んじゃったなら、殺されたなら楓ちゃんが行っても
やっぱり殺されちゃうだけだから…だから眠ってもらったの」
「何、それ……あなたたち一体なんなの?」
瑠璃子は少し困ったような顔をした。
177衝撃4/4:02/02/17 00:02 ID:VKz1CUuN
「まさか耕一がやられるとはな…」
呟く柳川の足元には真っ二つに裂けたサーベルタイガーの死体と千切れ飛んだ
彼の服が散らばっていた。

体の負傷を確かめて見る。
噛まれた右肩はまだ鈍く疼き腕は上がらない。
だがエルクゥの治癒能力で既に血は止まっており今は傷痕も惨たらしいがこの
位ならじきに癒えるだろう。
ため息をつき歩き出す。
「あいつが他の誰かにやられたのは惜しくはあるが…」
投げ捨てていたショットガンを拾う。
「あいつを殺る程の何かがいるということか」
薄く笑う。
「まだまだ楽しめそうだ」
取り敢えず当面の問題は…
「服をどうするかと言う事だな…」

腰にYシャツの残骸を巻きつけ柳川は途方に暮れていた。


【柳川と楓、精神感応で耕一の死を知る】
【楓(瑠璃子の電波にて昏睡中)】
【柳川右肩負傷・ほぼ全裸】
178鬼と強化兵と:02/02/17 02:34 ID:ojbHj952

 涼やかな空気に包まれた木立の間に、人魚達の不思議な笑い声が響いている。
 初音を残して一人、人魚達の住処までやって来た岩切は、先客がいることに気付いた。
「あんたも、あいつらに捕まったのか……」
 短髪の少女は岩切の姿を見るなり、そう呟いた。
 疲れきった生気の無い表情。 何もかも諦めてしまった様な、覇気の無い態度。
 髪型や服装からは快活そうなイメージを受けるこの少女は、果たして人魚達に何をされたのか。
 気にならないことではなかったが、岩切はまず少女の素性を知ることにした
「お前、アズサか?」
 短く尋ねると、少女は返答の代わりに眼を見開き、分かり易い驚愕の表情を見せた。
「…なんで、あたしの名前を…」
 間違い無い、と岩切は断定した。 この少女こそが初音の言っていた「梓お姉ちゃん」だ。
「初音に聞いた。 海からお前の声が聞こえてくると言ってな… 私は」
「初音、初音は無事なのかっ!?」
 岩切の言葉を遮り、梓が血相を変えて掴みかかって来た。
 必死そうなその顔は、先刻までの魂の抜けた雰囲気とは全くの別物だ。
「無事だ、今のところはな」
 梓とは対照的に、岩切は落ち着き払って言った。
「今のところって… 初音は何処にいるんだ!?」
「一人にして来てしまった。 この住処までは予想以上に遠くてな、早く戻らないと不味い」
 岩切の飄然とした態度は、事態の切迫さを全く感じさせない。
 しかし梓の絶望を誘うには、言葉だけで充分だった。
「…そんな…」
 顔をサッと青くしたかと思うと、途端に岩切を掴む腕から力が抜けて、その場に膝を落とした。
「どうした?」
 岩切が問うが、梓はそれに答えず。
 また先刻と似た抜け殻のような顔になって、誰に向かってでもなく呟いた。
「ダメなんだよ… ここに来ちまったら… ダメなんだ…」
179鬼と強化兵と:02/02/17 02:35 ID:ojbHj952

 ────ダメじゃないよ
 
 梓の言葉に続けるかの様に、人魚達の穏やかな声が響いた。

 ────私達の友達になれば
 ────そうすれば、ここから出られるわよ

 梓が俯いていた顔をゆっくりと上げる。
 その表情がまた変わっている事に岩切は気付いた。
 決意の顔。 他者の介入を受け付けぬ、強い意思を持った目。

 ────私達の肉を…

 人魚の一匹が、水中から"人魚の肉"を取り出した。
 それは岩切の目から見ると、肉というよりも内臓の一箇所を千切り取ったような物体だった。

 ────たった一口でも食べれば、それで─

 梓は人魚達の言葉を最後まで待たなかった。
 弾かれた様にばっと飛び出し、"人魚の肉"に手を伸ばす。
 そしてそれよりも速く、岩切は人魚の手から肉を掠め取ると、がぶりと噛みついた。
180鬼と強化兵と:02/02/17 02:36 ID:ojbHj952
「あ、あんた……」
 自分が取ろうとしていた行動をいち早く実行され、梓は呆然と岩切を見た。
 岩切は大して美味くもない肉を口の中で噛み砕き、ゴクリと飲み込んだ。
(これは……)
 岩切は視線を下げて、自分の身体を見下ろす様な仕草をする。
 気管から"何か"が全身に広がっていく感覚。
 飲み込んだ肉の欠片から何かが出て、胃袋に染みていく。
「……仙命樹だな。 お前は喰うな」
 岩切は梓に向けて言うと、肉をポンと放り投げた。 肉はそのまま放物線を描いて湖に落ちる。
 人魚達は岩切の挙動を微笑ましげに眺めていた。 "友達"が出来たのが嬉しいのだろうか。
 しかし岩切は人魚達には構わず、湖の方へ歩き出した。
「お、おい…」
 間の抜けた顔をした梓が呼び止めると、岩切は足を止めずに、
「心配するな、私は元からだ」
 そう言った。
「あ、あんた、名前は」
 梓がしつこく呼ぶと、岩切はその一時だけ足を止め、少しだけ梓の方を振り向いて答えた。
「岩切花枝だ」
 それが最後だった。
 岩切は軽やかに身を翻すと、人魚達がいる池に飛び込んだ。
 梓はその場に突っ立ったまま、水飛沫がおさまるのを見ていた。
181鬼と強化兵と:02/02/17 02:37 ID:ojbHj952

 ────ともだち、ともだち
 ────あなたも私達と同じ……

 口々に喜びの言葉を発する人魚達の中を、岩切はスイスイと泳いで行く。
 人魚の園と外界とを隔てている膜は、まるでそこに何も無いかのように岩切の身体を通した。


【岩切、人魚の園から離脱。 仙命樹が少しだけ増える】
182名無しさんだよもん:02/02/17 13:49 ID:VMfM0Eu7
一応メンテ
183いかだを作ろう:02/02/17 18:48 ID:2HAvy4/W
「まずは長瀬達との合流が先だな」
そう柳川はいい歩き出した。
「確か次の十字路を右か」
とそんなことを言い十字路を曲がろうとした時だった。
ガタガタ
と茂みの向こうで音がした。
「誰だ!」
と柳川が言うとその人物はすぐにでて来た。
短い髪で一見活発そうに見えるがボーとした感じ女。
そしてその手には…
丸太?
「何しているんだ?」
「ん…いかだ作ってるの」
と女は答えると柳川の方を怪訝そうにみていた。
そこで柳川は自分がYシャツを腰に巻いただけの格好だったことを思い出した。
「あ、いや、これはだな。」
と柳川が説明しようとすると。
「肩大丈夫?」
というと女は柳川の格好など気にしていないという様子でリュックから包帯を取り
出した。
「何をするんだ?」
と柳川が言うと。
「肩怪我してるから」
といい柳川に包帯を巻き始めた。

184いかだを作ろう:02/02/17 18:50 ID:2HAvy4/W
「これでよし」
と女は包帯を巻き終わると言った。
「どうもありがとう、えーと…」
はっきりいってもう傷は見た目ほど酷くはなく右肩もほとんど問題なく動かせる状
態で包帯など巻く必要がなかったがいちおうこの女に礼を言おうと思った柳川は名
前をまだ聞いてないことに気づいた。
「河島はるかだよ」
とその女は言った
「どうもありがとう、河島さん」
と柳川は言った後
「しかしどうしていかだなんてものを?」
と問いかけると
「ん、この島から出るため」
「それくらいはわかるがいかだで本当にこの島からでられると思っているのか?」
「やっぱり無理かな?」
「あたりまえだ」
「でも楽しそう…」
「………」
柳川はこの女、河島はるかが何を考えているのかわからなかった。
185いかだを作ろう:02/02/17 18:51 ID:2HAvy4/W
「ホテルに俺の仲間がいるそいつらと合流した方が生きて帰れると思うぞ」
と柳川は自分がこの島に来た理由を話してからそう言うと
「ん、じゃあそうしようかな、そっちの方が冬弥達とも早く会えそうだし」
とはるかは言った。
ホテルに向かう途中
「柳川さん」
「なんだ?」
「いかだだけでも作ろっか?」
「だめだ」
「残念…楽しそうなのに…」
「………」

【柳川・はるか合流ホテルへ向かう】
186frei:02/02/17 20:18 ID:2HAvy4/W
行間2行あけで。
187Frei:02/02/17 20:23 ID:2HAvy4/W
171からまた書かして頂きました。
おかしなところがあったら教えてください。
188ファースト・コンタクト:02/02/17 21:06 ID:JdboeDv7
油断した。不意をつかれたと言うべきか。
ともあれ今、あたし-------ティリアは、危険度Aのピンチに見まわれていた。



「動くな」
男はそう言って、あたしの首を締め上げる。
「殺しはしない、質問に答えてくれ」
そうも言って、あたしが反撃できない程度に体を宙に吊り上げた。
剣は無いし、口をふさがれている所為で呪文の詠唱もできない。残念ながらこの男に腕力で勝てる自信も無い。
口惜しいけど、あたしはとりあえず従う事にした。
「ユンナ、という人物を知っているか? ……いや、ここにいるのか?」
ユンナ。耳にしたことがある名前だ。確か--------
「『天界の悪魔』ウィル……という人物の婚約者だった女ね……噂には聞いた事があるわ。
でもあたしは会ってないし、ここにいるのかどうかも知らないわ。残念だけど」
あたしがそう言うと、男はそうか、と言ったきり黙ってしまった。
「そんな人物を探しているなんて……あなたは天界の者なの?」
「……まあ、そう思ってくれてかまわない。それと、さっきの『天界の悪魔』について知ってる事があったら話してくれ。情報が欲しい」
189ファースト・コンタクト(終):02/02/17 21:08 ID:JdboeDv7
天界の悪魔。と言ってもあたしの情報にしても伝聞系でしかない。
イカれた殺人マニアなどと報道されている事。裁判でも極刑は免れないであろう事。
ユンナという婚約者がいたらしい事。殺した人数は3桁を超えるらしい事。
それが、あたしの持ちうる「ウィル」の情報の全てだった。
「……なるほど」
さすがに爺さんどもの情報操作は完璧か。なにやらそんな事を男は呟いた。
「……」
また沈黙。あたしにはこの男の真意がまるで読めない。あたしを殺すつもりではないようだし、
かといって何か行動を起こそうにもこの状況では何もできない。
「ねえ……そろそろ、離してくれない?」
駄目もとで、そんな事を言ってみる。
「……いいだろう」
おや意外。
「ただし俺がこの手を離したらあんたは振り向かずに仲間のところなり自分の根城へ帰りな。」
まあ当然の念押しだろう。あたしも特に逆らうつもりは無かった。争う理由は無いからだ。
手荒な真似をして済まなかったな。最後にそう言って、男はあたしを解放した。
男に言われたとおり、あたしは雨の中を走って博物館へと帰っていった。

【ティリア合流】

補足:ティリアは天界の報道などでウィルの人相を知っている。
190名無しさんだよもん:02/02/17 23:59 ID:v6t6hxAi
>Frei さん
もう少しテン(、)を挟んでくれれば読み易くていいかも。
でもテン(、)を多く入れすぎるとテンポが崩れて読みにくくなるので難しい。
 
あと、これは私の好みですが、地の文の頭に一つ空白(スペース)を入れると
さらに読みやすく感じます。

これは完全におせっかいですが、コテハンは色々と諸刃の剣ですから、
取り扱いにお気をつけて(日本語変ですね)。
 
煽りじゃあ無いので、また頑張って作品書いて下さいな〜。

191名無しさんだよもん:02/02/18 00:05 ID:UOuuFM7u
ティリアは半神であるけれど別に天界の住人とか言う訳じゃない。
そのティリアが異世界の天界の報道を知っているとはこれいかに?
192Frei:02/02/18 00:27 ID:Kl1I0Ao0
>190
>もう少しテン(、)を挟んでくれれば読み易くていいかも。
ありがとうございます。
今後できるだけがんばってみます。
>コテハンは色々と諸刃の剣ですから、取り扱いにお気をつけて
すいません。
できれば、どの辺が諸刃の剣か教えていただけますか?
193名無しさんだよもん:02/02/18 01:00 ID:zzLHR4h6
>>Freiさん
う〜ん、私もはっきりと分かってる訳ではありませんが、
一番厄介なのは、何かヘマをした時に非常に叩かれやすい。槍玉に挙げられやすいって事でしょうか。
打たれ強い人なら、叩かれた事実を糧に反省してどんどん上手くなったりするのでしょうが、
叩かれてやる気を無くす人の方が多いんじゃないでしょうか。コテハンはある程度覚悟が必要みたいですね。
ハカロワの感想スレなり、ファンタジーの感想&討論スレ、リレー小説総合スレに
一通り目を通せば大体の事は分かるかと。

ちなみに今は、↓のスレがサバイバルの感想&討論スレになってますよん。本スレは作品発表の方向で〜。
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1012216672/82-
194名無しさんだよもん:02/02/18 02:58 ID:6lFNvByx
>コテハンはある程度覚悟が必要
同意。コレ重要。
195Frei:02/02/18 17:38 ID:Kl1I0Ao0
>193
ご説明ありがとうございます。
言われてみればそうですね。
そこらへんの覚悟はさせていただきます。
196決意:02/02/18 23:05 ID:13+wIHdu
 ギシッ・・ギシッと、安作りのイスを揺らす音がその空間に響き渡る。
 祐一、北川、そして久瀬の三人は絶え間なく降り続ける雨から逃れるため大蛇を撃退した後、近くに あった休憩場にいた。 
 そしてそのイス音を鳴らしてる張本人、久瀬はそんなことを気も止めず、手元の地図を眺めていた。
(ふむ・・・・生き残るためにはやはり僕一人では無理か・・・仕方がない)
 そこで一旦久瀬は思考を中断して、食料を探している祐一と北川がいる隣の部屋(といっても筒抜け になっているが)に足を運んだ。
「どうだ、なにか見つかったか」
「なんだてめえ、探しもせず偉そうに、何様だ?」
 祐一の久瀬に対する態度は、とても命の恩人とは思えなく、敵意すら感じるものだった。
「まあまあ相沢、あっ、取りあえず缶詰が何個か、食べます?」
 その祐一に比べれば、北川のほうが随分と久瀬には友好的だった。
「おい北川、こんな奴にやる必要はないぜ。おい久瀬、食いたかったら自分で探したら・・」
「お前とは会話をしていない。黙っていろ。それともこの程度の会話を理解する知能もないか?」
 小馬鹿にした口調で久瀬が言う。
「テメェ・・黙っていりゃあいい気になりやがって、ふざけんなよ・・・」
 久瀬の態度にムッとした祐一はゆっくりと立ち上がりかけるが、
「ま、まあ落ち着こうぜ相沢、久瀬先輩は俺達を助けてくれたんだしさ、久瀬先輩ももうちょっと言動 は優しくしてくださいよ、ね?ね?」
 二人のの間に険悪なものを感じた北川が慌てて止めにはいった。
 やがて、お互いにこんなとこで争っても仕方がないと思ったのか、祐一は床に座りなおし、久瀬もここに来た本来の目的を思い出していた。
「ふん、まあいい。それより二人ともこっちに来い。話がある」
197決意:02/02/18 23:06 ID:13+wIHdu
(三行開け)
「さてと、まずは確認だ。お前ら、ここから生きて出たいか?」
「当たり前だろ、何言ってんだお前?」
 祐一の返答に当然という顔で、北川も頷く。
「ああ、当たり前のことだ、だが実行するとなるとこれが中々難しい。見てみろ」
 そういって半径15cmほどの地図をテーブルの上に広げる。 
「この地図はさっきこの休憩所の管理室で見つけたものなんだがな、この地図に書かれてるものが本当だとしたら・・・これは生き延びるのは大変なものだな・・」
 その地図には、先程まで二人が居た『竜の巣』を始め『スライムの池』『妖精達の森』などの物から
『大蛇の棲む沼』『西洋怪物館』などの物騒な場所や『T−REXゾーン』などのその中ではおよそ人間が立ち向かえそうにもないアトラクション(もはや、アトラクションと呼べる代物ではないが)が何個もあるのである。
 この事実を知って愕然とする二人を尻目に、
「だが・・・この地図この地図には重要なものが欠陥している、そう、足りないんだ。なんだか解るか?」
(施設・・休憩所や緊急用の武器庫なんかもあるよな。何が足りないんだ?)
(まったく、もったいぶらずにさっさと話しやがれ、この傲慢野郎)
 それぞれ、考えることは思いっきり違ったが、結論は『解らない』だった。
「解らないか?なら教えてやる。『総合管理施設』が載っていないんだ」
 そう言われて二人があっ、とした顔になる。
「わざわざ隠すということは恐らくモンスターの制御装置や外部との連絡装置はここにあるだろう、生き残るためには・・・そこに行って制御装置とやらを再起動させるしかない」
「さ、三人でそれをやるのか?」
 久瀬の意図するところがわかった北川は、背筋に冷たいものを感じながら久瀬に問う。
「まさか、そんな無謀なことはしない、取りあえずは手勢集めだ。20人は欲しいな。
 それに武器も必要になる。幸いこの島にはモンスターの鎮圧に使う武器の置いてある場所がある。装備には困らないだろう。後は、お前ら次第だ」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
 沈黙が、流れる。
198決意:02/02/18 23:06 ID:13+wIHdu
 無謀ともいえる久瀬の話、だが恐らく生き残るための手段としては納得のいくものだった。
「いろいろ考えたが、これが一番生き残る確率が高いだろう。どうする?戦うか、それとも怯えてどこか隅のほうで振るえて助けを待つかだが、2週間位だったな。この島での参加者の滞在期間は」
「助けを待ってる間に死んじまうよな、普通は。くそっ・・あの野郎・・・」
 そう言って北川は天井を見上げ、やり場のない怒りに歯軋りしていたが、ふと久瀬のほうを向いて、
「俺は、あんたの案に賛成だ」
「オイ、北川!」
 北川の予想外の発言に祐一は驚いて北川を見るが、
「よく考えてみろ、相沢。武器も持ってない俺たちがうろうろしたって化物に喰われちまうだけだ。それに、この方法ならはぐれちまった水瀬さんや美坂を探せる。皆で、脱出する可能性が上がるんだ、俺はそれに、賭けてみたいんだ。頼む相沢。お前も・・・」
 その言葉に祐一は北川を見据えて、
「北川・・・お前カッコつけ過ぎだぜ」
「ほっとけ」
 そう言って北川と笑いあった。
 そして、久瀬を睨みつけて、
「久瀬・・・俺はてめえが大っ嫌いだ」
「僕も君のような人間は見るに耐えないと思っている。」
 祐一からの挑発をさらっとかわす久瀬。
「この・・・まあいい、この際仕方ねえ、俺も手伝ってやるよ、ただし、てめえの手伝いなんてこれっきりだぞ」
「僕も、君との付き合いはこれっきりにしたいね」
 今度は祐一の文句もさらっとかわしながら、久瀬は自分の持ってきたバッグの中から黒い筒、拳銃を取り出し、弾や説明書と一緒に祐一に投げ渡した。
「グロック17とか言う銃だ。お前に貸してやる、感謝しろ」
「・・・アリガトウザイマス」
 ほとんど棒読みに感謝の言葉を述べながら、祐一は説明書通りに、グロックに弾を込め始めた。
 ふと横を見ると北川も銃を受け取っている。
 ただし、北川の銃はいわゆる散弾銃(SPAS12)という奴で、祐一のグロックよりは格段に命中率があり、いい武器だといえる。
 それについては祐一には文句を言う権利もないし、黙っていることにした。
199決意:02/02/18 23:07 ID:13+wIHdu
【相沢祐一 北川潤 久瀬と共闘】
【グロック17 SPAS12 それぞれ祐一と北川が装備】

200へタレ書き手だよもん:02/02/18 23:10 ID:13+wIHdu
げっ・・いきなりミス。

といっても筒抜け になっているが

といっても筒抜けになっているが
にRTO氏お願いします。
201ふってわいた男:02/02/19 23:09 ID:aExzXsYz
油断した。不意をつかれたと言うべきか。
ともあれ今、あたし-------ティリアは、危険度Aのピンチに見まわれていた。



「動くな」
男はそう言って、あたしの首を締め上げる。
「殺しはしない、質問に答えてくれ」
そうも言って、あたしが反撃できない程度に体を宙に吊り上げた。
剣は無いし、口をふさがれている所為で呪文の詠唱もできない。残念ながらこの男に腕力で勝てる自信も無い。
口惜しいけど、あたしはとりあえず従う事にした。
「ユンナ、という人物を知っているか? ……いや、ここにいるのか?」
ユンナ?あたしは必死に記憶をたどるが、まるで見当がつかない。
「悪いけど……見当もつかない……」
あたしがそう言うと、男はそうか、と言ったきり黙ってしまった。

あたしはそこで、背後の男がやけに体に怪我を負っている事に気がついた。
あたしを締め上げているこの腕にしても、アザの数が尋常ではない。
それに、だんだんとからだから力が抜けていっているようだ。あたしに体重が少しづつのしかかってくる。
「ねえ、あなた一体……ちょ、ちょっと……あうっ!」
倒れこまれた。そして押しつぶされた。さらに舌を噛んだ。
202ふってわいた男(終):02/02/19 23:11 ID:aExzXsYz
「なんなのよー もう……」
そう呟きたくもなる。
今あたしに背負われているこの男は、命にかかわりそうな怪我を体中に負っていたのだから。
「電車か何かに身でも投げたのかしら……」
ぼやきながら、あたしはこの男を博物館まで運ぶ事にした。見捨てるわけには行かないし、夢見が悪い。
「うう……ユン……ナ……」
さらにこのうわごと。ようやく博物館が見える位置までこの男を背負ってきたわけだけど、
その数分の間にこの名前を7回も呟いている。

「う〜、雨で服が重いよう〜」
ぼやきながら、ティリアは博物館へ歩みを進めるのだった……


【ウィル気絶中 ティリアは博物館へウィルを運搬】

ファースト・コンタクトの直しです。
こうなってしまいましたがいかがでしょう。
203川辺にて:02/02/20 03:54 ID:8Zkp2b4s
「長岡さん戻ってこないねぇ〜」
「そうだな。心配か?」
「もちろんだよ。死んじゃったらかわいそうだよぉ」
「ふむ。佳乃が心配と言うのならば少し探してみるか」
 そうとだけ言うと、聖はすたすたと歩き出した。
 他のメンバーもすぐにその後を追う。
 「あんな奴探す必要無いよ」と清清しく抵抗していた雅史も、
メスを突きつけられるとおとなしく聖に従うようになった。
204川辺にて:02/02/20 03:55 ID:8Zkp2b4s
 しばらく歩いていると、目の前に静かに流れる川が見えてきた。
「川か……」
「あ! あそこに人がいるみたいだよ!」
 佳乃の指差す方向。
 そこには一人の男が川を夢中で見つめ続けていた。
「何を見てるの?」
 特別警戒もせず男に近寄り、佳乃が言う。
「自分の顔さ……ああ、僕はなんて美しいんだ。そして、僕は彼女になんてひどいことを……」
 佳乃の問いに男が答える。
「川ではなく、川に写る自分の顔を見ていたというわけか……」
「……ナルキッソス」
 美凪が呟く。
「お、遠野君は彼のことを知っているのか」
「少しだけ、本で読みました」
「難しいの?」
「難しいですよ」
「難しい本を読むなんて凄いね。よし、今から美凪さんをヨミヨミ博士さん1号に任命するよぉ」
「ありがとう」
 すっと佳乃にお礼のお米券を差し出す。
「封筒だぁ。中身は……お米券?」
「うふふ……」
 美凪は佳乃の問いには答えなかった。
 しばらく前に差し出した時には無視されて、そのあとも、ずっと出すタイミングを狙い続けてきた。
 そして訪れた瞬間。
 お米券を通して感じる他人の指の圧力。
 久しぶり快感に、目をキラキラと光らせながら恍惚の表情を浮かべている。
205川辺にて:02/02/20 03:56 ID:8Zkp2b4s
「……一人でお楽しみ中のところをすまないが、彼は無害なのかね?」
 聖が半分呆れながら美凪に問う。
「あ」
 ふと我に返り、その後何もなかったかのように答えを返した。
「多分無害だと思います。彼は訳あってここで自分の顔を見続けなくてはならない、それだけの人ですから」
「訳?」
「はい。自分のことを好きだといってくれた人の心をひどく傷つけ、死においやってしまった彼は、
 自分以外の人間を愛する事ができない呪いをかけられてしまったんです」
「へぇ〜。で、どうなっちゃうの?」
「最後には、彼もこの川から離れることができずに死んでしまいます……」
「なんかかわいそうだね……」
「彼は罪を犯した。そしてそのしっぺ返しをくらっているだけじゃないか。自業自得だよ」
 さわやかに雅史が言い放つ。
 あまりのさわやかさに、周りの人間全てがそのまま彼の言動を流してしまうところだったが、
聖だけが心にひっかかる何かに気付き、メスを雅史喉元に突き付けた。
「ふふふ……君がそれを言うのか」
「なんで僕が言っちゃいけないんですか……」
「遠野くんの説明と、長岡くんに対する君の行動は非常に似ていると思うが?」
「そんなの、昔のはな……」
「今すぐ君の両手足の筋を切断して、彼の横で自分の顔を眺めながら死を待つだけの存在にしてやってもよいのだぞ」
 聖はメスを刃の腹で撫でるように動かし、雅史の腕まで持っていった。
「あう……ご、ごめんなさい」
 雅史の言葉を聞き、聖がすっと彼から離れる。
 そして、雅史はそのままその場にへたりこんでしまった。
 そんな彼の視界に写るのは、白い封筒を差し出しながら目を眩しいくらいに輝かせる少女の姿だけだった。

【聖一行 志保を探して川辺にたどりつく】
206疾風食逃客:02/02/20 04:01 ID:8Zkp2b4s
>>203-205
久しぶりに書いてみました。
長い間忘れられていた聖一行です。
雅史の性格は一応前の話から引き継いでみました。

ぜんぜん書かれていなかっただけあって、時間的には雨のふる前になってしまいました。
周りの作品と比べて少し浮いてしまったかもしれません。
207猿(1/3):02/02/20 14:08 ID:bS+mAITq
 ジープは未だに道無き道を走っている。
(後ろからの気配は消えた…か)
 晴香はジープの運転に慣れたのか、最初より軽快にジープを運転している。
 まあ、密林の中だからまだかなり揺れるが…。
「瑞穂、良祐の様子はどう?」
 晴香の問いに瑞穂は慌てて良祐の表情を見て。
「え!?えっと、さっきより顔色はよくなったと思います…」
 瑞穂はさっきの事がきっかけで、晴香に対して少なからず恐怖感にも似た感情を持たしてしまったようだ。
 その証拠にこの返答も言ってくうちに、どんどん声のボリュームが小さくなっていったのが明らかにわかる。
 香奈子の視線が痛い…。
(一体、この二人の間になにがあったのだろう…?)
 晴香はその単純な疑問を思い浮かべたが、すぐに取り払った。
(でも、そんなこと後でもいいか…)
 そして、気まずい雰囲気からくるしばらくの無言が続いた。
208猿(2/3):02/02/20 14:10 ID:bS+mAITq
 車がまた大きく揺れる、おそらく木の根か石でも踏んだのだろう。
「きゃ!?」
 瑞穂が声をあげる。
「瑞穂、大丈夫?」
 と言って香奈子が声をかける。
「ウキ?」
 ウキ…?
 香奈子が首をかしげる。
 晴香もその返答に疑問を感じながらも運転をしている。
 同時にバックミラーを見る。
『ぶっ!?』
 驚きの声がハモる。
 後部座席の真ん中に猿が鎮座してるのある。
 ちなみに瑞穂は驚きと恐怖とで声もあげることができない 
 晴香が慌てて急ブレーキを踏む。
 車に乗ってる全員+猿が前につんのめる。
 態勢を崩した猿の顔が前方座席、つまり晴香と加奈子の間に飛び出してきた。
『ひゃあ!?』
 更に慌てる二人。
209猿(3/3):02/02/20 14:11 ID:bS+mAITq
 それを尻目に猿が態勢を立て直し良祐と瑞穂を肩に担ぎ上げた。
「きゃ!?」
 瑞穂が悲鳴をあげる。
「瑞穂を返してよ!!」
 その悲鳴に冷静さを取り戻した香奈子が瑞穂を取り返そうと、瑞穂に飛びかかる。
「ウキ〜〜〜♪」
 しかし、その香奈子の行動に猿は車から飛び降りることで回避、そのまま二人を抱えて逃げてしまった。
 香奈子の体が空しく空を切り、頭から後部座席に突っ込んでしまった。
 良祐も拉致されたのに、その一人と一匹の行動に呆然とする晴香。
「早く追って!!」
 シートに頭から突っ込んだ状態の香奈子の叫びに、晴香は良祐も一緒に拉致されたのを思い出し慌ててハンドルを切り返し猿の追跡に入った。
 急発進にもめげず後部シートで態勢を立て直した香奈子は、怒りのあまり普段のキャラクターではない台詞を吐いた。
「あのエテ公…コロス!!」
 晴香も肝が据わってるほうだが、香奈子の怒り方が凄く怖く感じた。

【良祐・瑞穂、猿に拉致される】
【晴香・香奈子、その猿を追跡。香奈子怒りゲージMAX、今なら超必殺技が使えるかも】
210R1200:02/02/20 14:14 ID:bS+mAITq
う〜ん、ここもかなり長い間放置されてたので書かせてもらいました〜。
猿のサイズや見た目は次の書き手様にお任せします。
あと、香奈子萌えの方すいません、かなりキャラクターが崩れてちゃったかも…(^_^;
レス間二行あけでお願いします〜
211名無しさんだよもん:02/02/20 14:29 ID:dv++r9OU
あいや〜。>>91-92 辺りで晴香達出ちゃってるアルよ。
残念ですがアナザー行きでしょう……。
212R1200:02/02/20 16:25 ID:VsNY5UQ/
あうあう…ホントだ…。
ちょっくら吊ってきます。
213保全age:02/02/20 21:04 ID:TqWbJhqi
ファイト!
214名無しさんだよもん:02/02/21 01:30 ID:H3JVxDzw
>>196
細かい突っ込みですまんが、
久瀬って確か2年(祐一、北川と同学年)じゃなかったか?
先輩ではないと思うが。
215名無しさんだよもん:02/02/21 21:31 ID:E1f6AP/1
目上(佐祐理)に対する言葉使いがどーたらいう記述が原作にあった。

よって久瀬はまず間違いなく2年生。
ついでに言えば生徒会長かどうかは不明(アニメでは生徒会長だが)。
216へタレ書き手さんだよもん:02/02/21 22:25 ID:OYdt/pLT
マジデスカ・・・・
どっかのSSに三年生という記述があったから間違いないと思ってましたが・・
ただいま修正しますので少し待ってやってください。
御指摘ありがとうございます。
217へタレ書き手さんだよもん:02/02/21 22:32 ID:OYdt/pLT
修正、
「まあまあ相沢、あっ、取りあえず缶詰が何個か、食べます?」
を「まあまあ相沢、あっ、取りあえず缶詰が何個あったぜ、食べるか?」に、
「ま、まあ落ち着こうぜ相沢、久瀬先輩は俺達を助けてくれたんだしさ、久瀬先輩ももうちょっと言動 は優しくしてくださいよ、ね?ね?」
を「ま、まあ落ち着こうぜ相沢、久瀬は俺達を助けてくれたんだしさ、久瀬ももうちょっと言い方を優しく頼むぜ、な?な?」に
「俺は、あんたの案に賛成だ」
を「俺は、おまえの案に賛成だ」にRTO氏お願いします。
鬱だ吊ってこよう。

 
218アレイの選択:02/02/22 06:20 ID:o3AfTdsq
「まったく、余計な事をしてくれたものね」
 突然、窓の外から声が届く。この部屋は二階なのだが。
 
 ふわりと白い羽をはばたかせ、ユンナが現れた。
 雨が降っているのにも関わらず、全く濡れていない。
「お前は私を召喚した天使か。何の用だ?」
「あなた、どうしてさっき人間達を逃がしたの?」
「あの者達は私の試練を乗り越えた。ならばもう害する必要はあるまい」
「なるほどね。でも、次からは容赦なく殺しなさい。試練なんて必要ないわ。これは命令よ」
「それは……できない」
「どうして」
「それでは私の意味が無くなってしまう」
「……ふう。なまじ知性があるとこういう時厄介よね。どうしても私の命令が聞けないの?」
「…………聞けない」
 毅然とした態度で妖精の女王は言った。

「そう、ならあなたはもう用済みね」
219アレイの選択:02/02/22 06:22 ID:o3AfTdsq
「あ、あんた、何なんや?」
 空だと思い込んでいた鎧に女の子が入っていた。驚きつつも智子は訊ねる。
「あぅあぅ。わ、わたくしはこういう者です〜。どうぞ」
 アレイは目を回しながらも律儀に答え、懐から取り出した紙を手渡す。
「ああ、おおきに」
 戸惑いながらも智子は紙を受け取った。その紙には

『魔族 アレイ お仕事何でも引き受けます』

 ……名刺? 魔族って? 智子と覗きこむ坂下の脳裏に疑問が浮かぶ。
「って、こんな事考えてる場合じゃないんや。はよ逃げんと」
 鎧たちはもう、すぐ近くまで迫って来ている。その時、
「はい、みなさん。お仕事終了ですー。わたくしが不甲斐ないばかりに失敗してしまい、申し訳ありません」
 あくまで『驚かすこと』が仕事だと勘違いしているアレイであった。
 まがりなりにも上級の魔族であるアレイの命令に、鎧たちは素直に従った。
220アレイの選択:02/02/22 06:23 ID:o3AfTdsq
「じゃあアレイさんは、ここで無理矢理働かされてるんや?」
「そうなんですよー。でも、お金はたくさん必要なんですよね。はぅぅ」
「なんでそんなにお金が必要なん?」
「わたくしの御主人様である魔界貴族、ルミラ様のデュラル家を再興するためです」
「はぁ〜。アレイさん、ほんまに人間じゃないんやなあ」
 未だ智子は信じられない。
 それもそのはず、鎧を脱いだアレイは人間と変わらない姿だった。心なしか級友の一人に似ている気さえする。

 と、その時、
「おい、気をつけろ! 上から誰か下りてくるぞ」
 談笑していた二人に対し、坂下が警告した。
221アレイの選択:02/02/22 06:25 ID:o3AfTdsq
 コツ、コツ、コツと階段を下りてくるのは――
「あなたは!」
 驚いた表情でアレイが叫ぶ。
「なんや、アレイさんの知り合いか?」 
「あ、あの人が、さっき話したわたくしをさらった悪い天使です」
 下りてきたのは、数分前に妖精の女王を始末したユンナだった。
「あなたは確か、アレイ、だったかしら」
「そうです。わたくしをルミラ様達のもとへ帰してください!」
「あら、あなたの御主人様ならこの島にいるわよ」
「えっ!?」
「ルミラの魔力は凄いわね。この分ならば計画の実現も遠くないわ」
「ル、ルミラ様は無事なのですか?」
「ええ無事よ。ただし、今のところはね」
「ルミラ様を返してください!」
「返せと言われて返す馬鹿はいないわ。
……でも、そうね。私の言うことを何でも聞く、と言うのなら考えてあげてもいいわ」
「聞きます。何でも聞きますから。だから、ルミラ様を返してください」
 アレイは必死に懇願する。
 アレイの返事を聞くと、ユンナは満足げに頷いた。

「じゃあ、手始めに」
 そしてユンナは、智子と坂下を指差し言う。


「その二人を殺しなさい」
 
【保科智子・坂下好恵 アレイと会った後、ユンナと遭遇】
222名無しさんだよもん:02/02/22 06:34 ID:o3AfTdsq
行間は3行開けで。 >>12-15 の続きですね。
智子とアレイは初めて出会った事にしました。まあ、忘れてるだけかもしれませんが。
ユンナが「ルミラ」と呼び捨てにするかどうかは謎ですが、これ以外の呼称は思いつかなかったので。

223名無しさんだよもん:02/02/22 14:54 ID:bxoOuooc
ちなみに原作でのユンナは。
一人称「私」、二人称「あなた」
初対面の芳晴はくんづけ、コリンは呼び捨て。
224女王の意地:02/02/22 22:44 ID:TDMUnTGd
長い沈黙。


「その二人を、殺しなさい」


坂下は身構えた。状況が「どちら」に転んでも対処できるように。
智子は息を飲む。アレイの「決断」に集中して。
「坂下さん、保科さん」
アレイが口を開いた。


「……ごめんなさい」


「ハァッ!」
坂下が跳ぶ。空を滑りながら突き出した左足は、まっすぐにユンナへと――――――

自分でも最高の跳び蹴りだと思った。これをかわせる人物は、恐らく二人しか――
いないだろう、と言う思考はその跳び蹴りをこともなげにつかんで止めた赤い鎧を確認して以降再び持ち上がる事は無かった。
「!?」
坂下に狼狽の表情が浮かぶ。馬鹿な、あの位置からここまでをどうやって一瞬で……!?
赤い鎧は坂下を床に叩きつける。頭を打ち付けた衝撃で坂下の思考が一瞬止まり――
再び頭が回転を始めた時、眼前に広がっていた槍の切っ先が、坂下が最後に見たものとなった。
225女王の意地:02/02/22 22:45 ID:TDMUnTGd
 智子は全てを理解していた。
 ああ、あの子なら、敬愛する主人の為ならば、初対面の私達の命などあの女に差し出してしまうであろう、と。
 坂下が、自分の位置から近いアレイではなくユンナを狙って跳び蹴りを放ったのは。
 上級魔族の従者たる鎧達は、それを使役するアレイを倒せば止められたかもしれないのに、それでもユンナを狙ったのは。
 アレイを狙うのは、忍びなかったからなのだろう、と。
 主人の為に悪役の命令を受け入れ自らの手を染めるアレイを、哀れんでしまったからなのだろう、と。
 そして、それが命取りになってしまった事も。
 赤い鎧の鉛のブーツが、坂下の流す紅い血で、赤く、紅く染まっていく。
 そして赤い鎧はこちらの方に、あるはずも無い視線を向けた。
 気がつけば、全包囲からがちゃん、がちゃんと鎧の歩く音が聞こえる。 

 これまでか――智子は覚悟を決めた。



 光が見えた。 
 緑色の、やさしげな光が。
 その光は智子を包み込み急速に収縮していく。
 智子が光の飛んできた方向を見ると、階段のところに美女と言って良いであろう女性がこちらを見ている。
 腹の部分から何故か体の向こう側が見えていた気がしたが、そのあと視界も完全に緑色しか見えなくなったので、あれは見間違いだったのだろう、と思った。
 同時に、自分はあの女性に殺されたのだろうか?とも考えた。考えて、やめた。視界が開けてきたからだ。 

「フ……フフフ」
 女王が笑う。何故笑いがこみ上げるのか、自分でもわからない。
 あるいはこちらを振り向いた、あの天使の表情が、あまりに愉快だったからかもしれない。

――――――ふん、私はここで死ぬが、いまの少女とあの青年は――――――

 その翼を広げた天使から、一斉に放たれた光の刃が女王の「核」をひきちぎり、その体と思考は消滅した。
226女王の意地 by RTO:02/02/22 22:48 ID:TDMUnTGd
視界が開けた智子の眼前には、医療施設と思われる建物が座っていた。
あの女王がここに送ってくれたのだろうか?降っている雨を冷たい、と思えるところを見ると、これは夢ではないようだった。
「うぁぁああ! やめて、やめて、やめてよぉぉ」
不意に、智子の耳に、そんな叫び声が飛び込んできた――――


【坂下好恵 死亡】【妖精の女王 死亡】


即リレーというのはあまり誉められた行為ではないかもしれませんけど。
実に20話以上あけてますので久々の死者ですね……
227後戻りはできない:02/02/23 04:58 ID:inXnyaZ6
 イビルやエビルとは違い、箱入りに育ったアレイは今まで人間を殺した事が無かった。
(ルミラ様のため。ルミラ様のためです。仕方が無かったんです。ごめんなさい、ごめんなさい……)
 もう息をしていない坂下に対し、アレイは心の中で謝り続ける。
 
「これで、いいんですよね? ルミラ様を……返して下さい」
 力無い声でアレイが言う。
「まだね」
「そんなっ!」

「私の計画を実現するにはね、魔力以外に人間の魂がたくさん必要なの。そのために
この島はとても都合が良かったんだけど、思っていたより魂が集まらないの」

「普通の人間ならあっという間に死んでるはずなんだけどね。
妙に強い力を持った人間が集まっているみたいで、死んでくれないのよ」

「だからあなたには、もっとたくさんの人間を殺して欲しいの。十分な量の魂が集まれば、
私の計画は成功するわ。そうしたらもうルミラは必要なくなるから、解放してあげるわ」

「そうすれば本当に、ルミラ様を返してもらえるんですね? 嘘じゃ、無いですよね?」
「ええ本当よ。天使は嘘がつけないのよ」
 いけしゃあしゃあとユンナは言い放つ。もちろんそんなのは真っ赤な嘘だ。

「わかり……ました。わたくし、人間の皆様を殺します。たくさん、たくさん殺します」
 一人殺してしまったのだから、もう何人殺しても同じだ。アレイはそう自分に言い聞かす。
 だが心の奥底では「違う、今ならまだ戻れる」と言う自分もいた。
 しかし、アレイはもう選んでしまった。

 そして、雨の中アレイは屋敷を後にした。
(ルミラ様のため、ルミラ様のため、ルミラ様のため、ルミラ様のため、ルミラ様のため……)
 その言葉が免罪符になるかのように、アレイはとなえつづけた。
228名無しさんだよもん:02/02/23 05:01 ID:inXnyaZ6
【アレイ ルミラのために人間を殺しに行く】

さらに即リレー。
好きな人のためなら人を殺しかねないって点でもあかりとアレイは似てるなー、とか思った。
容姿も似てるけどね。
229名無しさんだよもん:02/02/23 05:32 ID:inXnyaZ6
>RTO氏 >>220 でアレイは鎧を脱いでるようですよー。

つーか、マーダー化したアレイが鎧を装備してたら強すぎるかな、と。
鎧を脱いでたら、一般人でもやり方しだいでなんとか勝てるんじゃないかなと思う。
230RTO:02/02/23 12:46 ID:Rdd+Hpqy
>>229
「鎧」とはリビングメイルの事で、アレイではないです。
……ん?アレイの鎧は赤でしたっけ?
231名無しさんだよもん:02/02/23 15:45 ID:Gs+hXf1N
赤くは無いですよ>鎧
祖父の鎧を忘れるとは考えにくいので、着てないときに攫われて
ココで支給されたものだから、もととは違うという考え方もアリですけど。

ま、どっちにせよこの場合は鎧を着てないし、赤い鎧はリビングメイルのことですよね。
ちゃんとリビングメイルに関する記述もあったはずですし。
232波の音:02/02/23 22:39 ID:PN7YlP93

 フナムシとは何か。

 海に住む節足動物の一種で、日本各地に見られる。雑食性でなんでもよく食べ、岩の隙間などによくいる。
 岩切曰く……海辺のゴキブリ。

 よくもまぁ冗談とはいえ、から揚げにしたら美味いなどと言えるな、と御堂はそう思う。

「ひいぃぃぃんっ、気持ち悪いいいいっ!!」
 上着を脱ぎ捨て、シャツを捲り上げ、それでもまだフナムシは、志保の上を這い回っているらしい。
 よほど志保が気に入ったのだろうか?
「志保ちゃん、じっとしてて……御堂さん、初音を持っていて下さい」
 ついに見かねたのか、御堂に初音を押し付けると、千鶴は手を振り上げた。
「あ、止め…!」
「えいっ」

 ゴキブリを叩く要領で。

 運が悪いときは重なるもので、志保のグリーンのブラの中に入りこんだ丁度その時、千鶴の手が振り下ろされた。
 ぱちんっ
「あ………あうあうあうあうあうあうあう」
 志保のブラに、気色の悪いシミがじんわりと広がる。
「お、お気に入りだったのにいいいいぃぃぃぃ………!!」
「あ……ごめんなさい、志保ちゃん…」
 本気で泣き出した志保に、千鶴はただおろおろするしか無かった。
233波の音:02/02/23 22:40 ID:PN7YlP93

 志保は泣きながら、恐る恐るブラを外す。
 すると、触覚やら何やらが折れ、汁が出ているフナムシが、ぼて、と砂の上に落ちた。
「あうううう……」
 打ちひしがれながら、志保がハンカチで胸に付いた汁を拭いていると……

 次の瞬間、一陣の風が砂浜を突き抜けた。
「ぴこぴこぴこぴこ」
「くっ……食ってやがる!?」
 突然、どこからともなく現れた白い毛玉が、下に落ちたフナムシを齧り始めた。
「ぴこぴこ〜」
「これって…犬なんですか?」
「あたしに聞かれたって困るんだけど…」
 御堂の視線を気にしながら、志保は素早くシャツと上着を着直す。
 誰もが困惑する中、その毛玉は、いきなり飛び跳ねると、御堂の腕の中の初音の上に乗った。
 そして今度は、フナムシを食った舌で、初音の顔をぺろぺろと舐め始める。
「こっ、今度は初音まで食べる気!? 姉として、そうはさせないっ!!」
「落ち着け千鶴……気持ちはわかるが」
 千鶴はちょっと溜め息をつくと、初音の上の毛玉を地面に叩き落し、再び初音を抱きかかえた。
「おいおい千鶴、この毛玉、地面に完全にめり込んでるぞ……」
「あら、そうですか?」
 千鶴は小さく微笑むと、小首を傾げた。
「少し……疲れたので、休ませてもらいますね」
「あ、ああ……そうしてくれ」
 その仕草に、御堂は年甲斐もなく、狼狽したように口ごもった。
234波の音:02/02/23 22:41 ID:PN7YlP93

【フナムシ、死亡】

冗談です、すいません(ぉ
235名無しさんだよもん:02/02/24 00:58 ID:BPsnSWN2
>>230-231 勘違いしてました。申し訳ありません。
236名無しさんだよもん:02/02/24 01:40 ID:jtcLkNXH
>227
坂下を殺したのはリビングメイルなので、アレイは一人も人を殺してないのでは。
237名無しさんだよもん:02/02/24 01:47 ID:BPsnSWN2
>>236
ぐあ、言われてみれば……。>>227はNGって事で。 >RTO氏
あかり+マルチ÷2のようなアレイに殺しをさせる計画がぁー。
238:02/02/24 03:19 ID:wQcw0Xr1
 深夜。
 雨の勢いがようやく弱まってきた頃。
 薄く白みがかったもやのようなモノが、病院の中へ入っていく。

 たくさんの人間がいるということは、それだけで安心できる。
 その安心感からか、病院内のほとんどの人間は疲れや怪我を癒すため熟睡していた。

ある一室にて――

 白いもやが部屋の中に入ってくる。すやすやと眠っている少女のそばまで来ると
 そのもやは人の形に集まり、徐々に色を帯びていく。
 一瞬後には一人の男がそこに立っていた。
 男は唇を少女の首筋に近づけ、愛しげに吸い付いた。
 そして次の瞬間、男は大きく口を開け、その長い牙を少女に突き刺した。
 ごくん、ごくんと男は液体を嚥下する。
「……う、うぐぅ…………」
 少女が呻く。しかしそれでも目は覚まさない。覚ませないのだろうか。
 男が口を離す。
 少女の首筋には痕が二つ残されていた。

 また別の部屋で。
 男は同じことを繰り返す。
 二人分の少女の血を吸い終わった男は、満足したように微笑み夜の闇の中へと帰っていった。

【病院内メンバー 矢島・神尾晴子・神尾観鈴・白きよみ・上月澪・月宮あゆ・子ドラゴン
            太田香奈子・藍原瑞穂・巳間晴香・巳間良祐・里村茜・保科智子   】
239名無しさんだよもん:02/02/24 03:23 ID:wQcw0Xr1
題名のキャラクターが一人もいないワナ。
240名無しさんだよもん:02/02/24 12:18 ID:JX9X2aYo
委員長は病院内とは限りませんな。
241名無しさんだよもん:02/02/25 15:27 ID:Mm1Vj6W+
委員長は病院内にいるということになるのですか?
242目覚める衝動:02/02/25 20:59 ID:mvr9coYW
 夜中に、ふと目がさめる。
 のそのそと、ソファから起きあがる。少し首が痛い。寝違えたのだろうか。
「むにゃ……」
 どういうわけか、すごく喉が渇いている。なにな、飲みたい。飲まなければ。
 スリッパを履くと、ボクは洗面所へと歩いていった。
 
 洗面所には先客がいた。
 智子さんと言う、眼鏡をかけた賢そうな人。
 智子さんは何か鏡を睨んでいたけど、ボクに気がつくと話しかけてきた。
「どうしたあゆちゃん、眠れへんのか?」
「ええと、その、お、お水を飲みに」
 からからに喉が渇いているからか、たどたどしくしか言葉を紡げない。
 ボクの言葉を聞いて、智子さんはコップに水を注いで、ボクに手渡してくれた。
 お礼を言うのももどかしく、ボクはコップの水を一気に飲み干した。
243目覚める衝動:02/02/25 20:59 ID:mvr9coYW
「あゆちゃん」
 水を飲み干したのを見届けて、智子はあゆに話し掛けた。
「うぐ……あ、お水 ありがとうございました」
「いや、それはええねん……あんた、その眼……」
「眼?」
 あゆは鏡をのぞきこむ。いつものカチュ−シャと、栗色の髪の毛。大きめの瞳といった、
 いつもと何も変わらない顔のパーツが、こちらを見つめ返してきた。
(……あれ)
 心なしか、瞳の色が赤みを帯びている気がする。
 目をごしごしとこすってみても、やはり目はわずかに赤いまま。

 あゆが不思議そうに鏡をのぞきこんでいる間、智子はまるきり別のものに目を向けていた。
 あゆに気付かれないように、そっと首筋をのぞきこむ。
 そこには、縦に二つ、何かで穴をあけたような痕が刻まれている。
(……!)
 智子の背筋に戦慄が走る。あわてて鏡に自分の首筋を映してみるが、幸い、自分にはそれは無いようだった。
「あゆちゃん」
「はい?」
「あんた、今 ノド渇いてるやろ」
「……?」
 言われてみれば、またノドが渇いている。
 いや、喉というより、なにか、魂と言うか、ココロと言うか、体の奥からじわじわと、なにかが……
 その様子を見て、智子は大きくため息をつく。
244目覚める衝動(了):02/02/25 21:01 ID:mvr9coYW
 坂下と共にあの館を訪れた時、デュラハンという言葉がさらりと出てきた智子である。
 あゆの変化の原因が、吸血鬼と呼ばれるモンスターの仕業である事は既に理解していた。
 だが、そこからが続かない。
 ひとことに吸血鬼と言っても、地方や伝承にはさまざまな食い違いがある。
 智子とてその内容は一通り知識として持ちえてはいたが、一体そのうちのどれをベースにここの吸血鬼に仕立て上げたかが分からない。
 とはいえ、あゆの症状から、大体の特定はできるのだが。

 トランシルバニア地方に伝わる、元祖「ドラキュラ」。
 あるときは蝙蝠に、あるときは人型に、そしてあるときは霧にその姿を変化させる。
 夜な夜な村を徘徊し、清い少女の生き血をすする。
 血を吸われた少女は、じわじわと精神を吸血本能に蝕まれていき、最後にはドラキュラの忠実な下僕となる。
 その間……時間にして24時間。
 24時間以内に、ドラキュラを探し出して倒すか、「契約」を解除させる。
 それが、ドラキュラに魅入られしものを救い出す唯一の手段だった。
 ……智子の読んだ本には、そう書かれていた。

「他にも、いるんか……?」
 なにせ自分達に全く悟られずに(恐らく霧にでもなってきたのだろう)吸血を果たしたのだ。
 被害者があゆだけとは限らない。
(被害者を確認して……次は……どうすればええんや……)


【智子は吸血鬼の被害に遭わず】
245名無しさんだよもん:02/02/25 21:20 ID:IRM9XNKu
新作おつ〜。
最も人数が集まってる病院組、一体どうなるか…?
後細かい突っ込みですまんが
あゆは確かED後の帽子あゆだって記述が以前あったので、
カチューシャはつけてないはず。
そこの所修正希望。
246潮騒:02/02/25 23:28 ID:70xzvdB/

 御堂から初音を受け取り、千鶴は溜め息と共に、志保たちから離れた岩の一つに腰掛けた。
 先ほどから嫌な痛みが、頭の中を支配している。
 そしてそれは次第に、我慢が出来ないほどに増してきていた。
 だが、気付かれるわけにはいかない。
 …………そう、誰にも…………
 志保ちゃんにも、御堂さんにも、決して知られては………

「……千鶴さん、顔色悪いわよ?」
 いきなり、志保にそう言われ、思考に沈んでいた千鶴は、一瞬びくり、と身体を震わせた。
「大丈夫……なんでもないわ」
 だがすぐさま笑顔を浮かべると、心配そうな志保に向けて、千鶴は首を振る。
 そこには、他者の介入を許さない、張り詰めた何かがあった。
 その細い肩が微かに震えているのが、遠目からでもはっきりとわかる。
 だが、志保にはそれ以上、尋ねる事は出来なかった。

「……ちょっと御堂のおじさん、千鶴さん変じゃない?」
「そうか? ……疲れてるのかもな」
 おざなりな返事を返し、御堂は肩をすくめる。
 千鶴は、今だ目を覚まさない初音を膝に抱え、静かにその髪を撫で付けていた。

 夜明け前の海辺を背に、岩に腰掛ける美女と、その膝を枕に眠っている美少女という、完成された絵のような光景に、御堂はしばし見とれていた。
 それに気付いた志保が、にんまりと笑って、御堂のわき腹を小突いた。
「何よおじさん、千鶴さんを狙ってるの〜?」
「……馬鹿、そんなんじゃねぇ」
「ま、おじさんの顔と千鶴さんじゃ、美女と野獣どころの騒ぎじゃないし、超高嶺の花って感じよね」
 軽口を叩きながらも、志保はちらちらと心配そうに千鶴の方を見ていた。
247潮騒:02/02/25 23:31 ID:70xzvdB/

 初音の様子は、お世辞にも良いとは言えなかった。
 額にびっしりと汗を浮かべ、身体は小刻みに震えている。
 悪夢にうなされているのか、細い眉は、きゅっと寄せられたままだ。

 そして……千鶴は、何故初音が目を覚まさないのか……何故気絶していたのか、わかっていた。
 初音は、柏木の姉妹の中でも、最も精神感応能力が高い……それが、何を意味するのかも。

 志保と御堂の前では平静を装っていても、こうして独りでいると、動揺が震えとなって身体を蝕んでいくのがわかる。
「―――――――――!!」
 いきなり、初音が声にならない絶叫を上げて、飛び起きた。
「こ、耕一お兄ちゃんが……耕一お兄ちゃんが!!」
「落ち着きなさい、初音!!」
 凄まじい力で抱きすくめられ、目を覚ましたばかりの初音は、呆然と周囲を見回した。
「……お兄ちゃんが……お兄ちゃんが……」
「言わないで…………言わないで、初音」
 がたがたと痙攣し、まるで壊れたテープレコーダーのように、初音は光を失った瞳で、同じ言葉を繰り返している。
 だが、細い身体を折らんばかりに抱きしめてくる千鶴の身体が、小刻みに震えているのに気付いて、初音は焦点の合わない瞳を、姉に向けた。
「………あなたは、何も心配しなくていいのよ」
「千鶴……お姉ちゃん?」
 光を失っていた初音の瞳に、僅かに輝きが戻る。

 千鶴は、泣いていなかった。
 ただ、紅く……鮮血よりも紅く輝く瞳が、まるで血の涙を宿しているかのように、鈍く光を灯しているだけだった。
「もう、忘れなさい、初音………耕一さんの事は」
 優しげに初音に囁く……だがそこには、志保や御堂の前にいた、温厚な女性の面影は無かった。
「耕一さんの仇は………この私が、取るのだから」

 憎悪と復讐を秘めた、狂気の鬼の姿…………
248長瀬なんだよもん:02/02/25 23:35 ID:70xzvdB/

【千鶴、志保と御堂には隠したまま、耕一の復讐を決意】
【初音が目を覚ます】

長瀬です。
柳川、楓と耕一の死に気が付いているので、千鶴や初音が知らないのは不自然かな、
と思って、こんな形にしてみました。
それでは、誤字脱字その他修正ありましたら、指摘よろ。
249名無しさんだよもん:02/02/26 00:26 ID:G1/Guprf
ついでに梓の反応も書いてくれると面白かったと思う
御堂と志保はいいコンビになりそう
250名無しさんだよもん:02/02/26 01:10 ID:Vftbp7HZ
>>248
柳川と耕一の感応(と言うよりシンクロニシティ)は原作にある。
姉妹の中で感応が強いのは楓、原作で初音ちゃんが耕一の中に鬼を感じたりする感応系の描写は無い。
実際感応力は千鶴さんの方がよっぽど強いと思われ。
251242-244:02/02/26 01:31 ID:AY3AQbgB
すいません。あゆの"カチューシャ"の部分は削除でお願いします。
252名無しさんだよもん:02/02/26 17:17 ID:7skx5DgO
253翼の記憶:02/02/27 04:39 ID:LZ1QJbcG
「……ここは?」
 空、としかいいようの無い場所。
「たしか、俺は法術を使って……」
 そこからの記憶がない。
 おそらく、大きな力を使ったせいで精神的にまいってしまったのだろう。
 きっとこれは夢なんだろう、そう思ったときだった。
「ん、羽根……?」
 上から何枚かの羽根がふってくる。
 その一枚を往人は捕まえた。
「な、なんだ、これは……」
 その瞬間、目の前の光景が急に切り替わる。
 山が燃えている。
 その山から、必死に逃げる3人組がいた。
「はは、あいつら俺と遠野とみちるみたいだな……」
 追っ手に追われながらも楽しそうに旅をする3人。
 家族じゃないと知っていながら、必死で家族ごっこを続ける姿が美凪とかぶる。
 少女がお手玉を練習する姿が、まるでみちるのようでおかしかった。
「にしても何なんだ、この夢は……」
 これは自分の願望なのだろうか。
 そんな事を往人が考えている間も、夢は続く。
 母親との再会、そして別れ。
 直後、追っ手に追いつかれて……
「な、なんだ、あれは……」
 少女の体が宙に浮かび上がり、あたりを突風が襲う。
 その背中には、翼。
 直後、あたりに大量の羽根を撒き散らして、少女は消えた。
254翼の記憶:02/02/27 04:39 ID:LZ1QJbcG
「あ、あれが……翼をもった少女?」
 夢だとは思う。
 しかし、夢だとは思えないほどのリアリティーがあった。
「なんなんだよ、この夢は……」
 法術を使いすぎて、自分の精神が壊れてしまったのではないかと思ってしまう。
――柳也! おい、聞いておるのか!
 直後、今度はそんな泣き叫ぶような声があたりに響く。
 あたりを見回すと、すぐにその声の主は見つかった。
 背中には、翼。
 きっとさっきの少女だ。
 往人は、いてもたってもいられずに少女の元へ走りより、その肩を掴む。
「おいっ!」
 そして振り向いた、その顔は……
「み、観鈴……?」
――にはは、ブイ!
 そういうと、少女は往人の手から離れ、そのまま走り去ってしまう。
「おい、待てよ! おいったら!」
 慌てて引き止めるが、聞こうともせずに離れていく。 
 そして、手の届かないほど遠くで少女が呟いた。
――往人さん、どこにいるの?
「俺はここだぞ!」
――ねぇ、往人さん! どこ? ねぇ! 怖い、怖いよ!
「俺はここにいるぞ!」
――いや……やめて……お願い、怖いよ……!
「どうした? 俺はここだ! ここにいるんだよ!」
255翼の記憶:02/02/27 04:39 ID:LZ1QJbcG
「――みすず!!」

「にゃああああぁぁぁっ!」
 少女の叫び声がする。
 それはあの翼の少女のものでも、観鈴のものでもなかった。
「あ、あれ……」
「あ、ああ、気がついたんですね」
 少女が目に涙を浮かべながら駆け寄ってくる。
「ん、誰だ……?」
「酷いですよぉ。さっき出会ったばかりの女の子じゃないですか」
「つい、さっき……」
 必死に目覚めたばかりの頭を回転させて、その「さっき」を思い出してみた。
「……おい」
「あ、思い出しましたか?」
「ああ、思い出したさ。俺はお前のせいで死にかけたんだ!」
「にゃあ! そんな、千紗はさっきのお人形さんとは違います〜」
「その人形に加勢して、俺を殺そうとした張本人だろうが!」
「誤解ですよぉ〜」
「お前が勘違いしてるだけだ!」
 きつくお仕置きをしてやろうと振り上げた拳に、何かが握られていることに往人は気づいた。
「ん、なんだこれは……」
 真っ白い羽根。
「なんだって、俺はこんなものを?」
「さあ。知りませんです」
「私も知らない」
「どわぁっ!」
 上空から舞い降りる裸の少女に思わず驚いてしまう。
「ふふ、驚くなんて失礼だね」
 などと怪しげな微笑を浮かべる少女をなかば無視し、往人は彼女の背中を調べはじめた。
256疾風食逃客:02/02/27 04:41 ID:LZ1QJbcG
「ふむ、翼はないか……」
「な……」
「で、この羽根は何なんだろな……」
 何かが引っかかる。
 夢の中で見たような気もするが、まさか夢から持ってきたなんて事はないだろう。
「あれは、どんな夢だったか……」
 どんな夢だったのか、すでに記憶には残っていなかった。
 ただ、妙に現実感があったことだけを覚えている。
「夢と現実の境目が無くなってきてるのか……」
 夢の世界の生物がそこら中を闊歩しているような場所だ。
 そのくらい不思議ではない……と思う。
 そして、観鈴。
 なぜか彼女の事が頭から離れない。
 観鈴にもう一度会えれば、全ての謎が解ける気がする……
 そこまで考えて、往人の思考は急に止まった。
 ココロの魔法に吹っ飛ばされて……

【最高 気絶】
【ココロ セクハラ男に一撃】
【千紗 半泣き】

>>253-256
100番ゲットw
一応AIRメインヒロインの一人である神奈がこのまま登場しないってのもなんなので、
できるだけ全体に悪影響を与えないように登場させてみました。
あっちの世界の方々がいろいろこちらへ来ているのだから
こちらの世界の人間もあちらの世界を見るくらいなら可能かなという単純な考えですが(^^;
NG覚悟で、それでもできるだけNGにならないように注意しながら書いてみました。
257疾風食逃客:02/02/27 04:42 ID:LZ1QJbcG
あ、254と256の間のみ1行開けで、他は開けなくてOKです。
258疾風食逃客:02/02/27 04:43 ID:LZ1QJbcG
>>257
何意味不明なこと言ってるんだ……
254と255の間でお願いします(;´Д`)
259名無しさんだよもん:02/02/28 04:04 ID:RkKub3tP
           __________________
   ___   /
 /´∀`;::::\<  私は読んでないけどサバイバルが好きだ。
/   メ /::::::::::| \__________________
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260穏やかな時の片隅に:02/03/01 00:43 ID:KH7gLNqp
 博物館の受付で、浩之達は各々眠りについていた。
 ティリアが謎の男を背負ってきた時には驚いたが、怪我の治療以外にはできることはなかったし
 朝まで目を覚ましそうに無いと言うところから、毛布をかけて寝かせてある。
 展示用ディスプレイに使用されていた毛布をかっさらってきたもので、保温性はなかなかのものだった。
 夏と言う季節柄、寒くて眠れないと言う事は無いのだが、その分風邪をひく可能性も否定できなかったのだ。


 祐介は、ぼんやりと窓の外を見ていた。何の事は無い、単に眠れないだけなのだが。
 先程まで時折雷鳴を響かせていた雨空も、少しづつその雨足を弱めているようだった。
 ちらりと、沙織にその視線を落とす。こちらに背を向けている所為で、その表情を伺う事はできなかった。
 かわりに沙織と共に毛布で眠るピッケの表情なら伺えた。眠りながら微笑んでいる。どんな夢を見ていると言うのだろう。
 それでも、「まま……」という言葉をつぶやいている。

 あの日も、この位の時間だった気がする。
 夜中に学校に忍び込んだ祐介が、見て、体験したこと。
 そのおかげで祐介はある種のチカラを使えるようになったわけだ。しかして、代償、と言ってもいいものもまた発生した。
 それは沙織達あの事件に巻き込まれた女のこの純潔であり、また心に刻み込まれた癒える事の無いであろう傷痕。
 あれから変わった事と言えば、太田さんが退院して、月島さん兄妹の関係も大体修復され……
 祐介はといえば、沙織の記憶を消そうとした事が本人にバレ(消しかたが不完全だった)、そこでさんざん小言を聞かされた挙句、なし崩し的に付き合う事になってしまって今に至っている。
 それでも、今では沙織の事を特別に想ってしまっているのは慣れと言う奴なのだろうか。違うと信じたいが。
261穏やかな時の片隅に:02/03/01 00:44 ID:KH7gLNqp
「眠れないの?」
 どきっとして、祐介は背後に目を向けた。眠っていたはずの沙織が、毛布から抜け出してこちらに来ていた。
「うん、ちょっとね……沙織ちゃんは?」
「あたしも……眠ろうとすると、ちょっと、ね」
 目を閉じると、あの目が浮かび上がってくる。
 自分を、疾走するジープから引きずり落とそうとするグリフォンの目が。
 凄まじい速さで流れる地面と、頭の痛み。グリフォンの冷たい嘴と、刺すような眼。
 瞼を閉じた闇の中から、それらの光景がフラッシュバックしてくるのだ。


 窓の外を見つめる祐介を、沙織もまたじっとみつめながら、あることに思いを馳せる。
 そう、初めて見た時も、祐介はこんな表情で、じっと窓の外……運動場のほうを見つめていたのだった。
 一目見て、祐介がさして目立つような人物でもない事は分かったのだが、なにかこう、絵になっていたのだ。
 窓の外をぼんやりと見つめる祐介の姿は、はからずも沙織の心をつかんでしまっていたのだ。
 そうしたある日だ。祐介が「聞きたい事がある」と、沙織のもとを尋ねてきたのは。
 それはとある調査だったのだが、それが祐介と沙織とのファーストコンタクトとなった。
 調査の手伝いを申し出て見事断られた沙織であったが、それならば尚の事、自分自身で調査を進め
 それを解決してしまえば、祐介と話すきっかけができる……夜の学校を訪れた動機は、概してそのようなものだった。
 そして……その夜……
262穏やかな時の片隅に:02/03/01 00:46 ID:KH7gLNqp
「祐くん」
「なに?」
「あたし達、帰れるよね?」


 祐介は、そっと沙織を抱き寄せる。
「沙織ちゃんは、僕が、守るから」
 それから、どちらとも静かにくちづけを交わす。
 施設内のかすかな照明にてらされて、暗闇に浮かび上がった二人の姿は、儚げで、何故かとても幻想的に見えた。
263穏やかな時の片隅に(終):02/03/01 00:49 ID:KH7gLNqp
(こ……これでは起きるに起きられんじゃないか……!)
 そう。
 一部始終を見ていたこの少年、藤田浩之にはそれがとても綺麗な光景に見えていたのだ。
(ラブシーンはいい……俺はそれを邪魔するほど馬鹿じゃない……だがな)
 彼には時間が無かったのだ。
(まずい……はやくトイレにいかねーと……膀胱が……)
 いらいらしながら、何の気無しに彼は寝返りをうった。伸ばした肘が、何かを押しつぶした。

「ぷきっ!」
 眠っている者を起こすには至らないが、この状況下で目を覚ましている全員を凍りつかせるに十分な破壊力を持った、ピッケの叫びがこだました。
264RTO:02/03/01 00:53 ID:KH7gLNqp
【時間は午前0時を回ったところ】
【浩之、膀胱破裂まであと42秒】


どうもです。一度でいい、こんな話を書いてみたかった……
雫のENDをいじくろうとして破綻。目立つ矛盾はないはずだ……
情景描写に気合を入れたつもりが無理無く壊れている罠。
265鴉包囲網:02/03/01 03:21 ID:q9Whn3sI
カア、カア、カア、カア、カア、カア

ぐちゃ ぶちっ じゅぶ 

鴉の鳴き声に肉を裂き穿る音が混ざる。

ボリボリボリ、グチャ、ジュブ、グキッ、ブチブチブチッ

骨を噛み千切り。

グチャリ、ビリビリッ、

衣服すらも喰い裂かれ。

数分前までシンディと呼ばれていた存在の全てを、漆黒の鴉達はただひたすら、貪り食っていた。
対象が何であっても関係ない。
たとえそれが弱っている仲間であったとしても、彼らは容赦なく喰らうだろう。
まるでサメのように。
口に入るモノは何でも食い、食えないモノは吐き出す。それが彼らの精神にインプットされた「本能」

元々は客が棄てたゴミの中で、可燃ゴミを食い、非可燃ゴミは所定の場所に廃棄する「ゴミ処理要員」
として作られた彼らは、朝鮮製によってその仕事を封じられていた。
行うべき仕事は無い、だが、本能は何かを喰う事を求める。
その「追いつめられた状態」で彼らが選択した行為は、当然の如く「弱肉強食」であった。

(2行開け)
266鴉包囲網:02/03/01 03:23 ID:q9Whn3sI
肉を啄ばむ鴉たちの中で一際大きな鴉、・・・赤い眼をした大鴉が「カア」と一声鳴いた。
「シンディ」を食い終わった鴉達はそれに反応するかのように、医療施設に眼を向ける。
宝石のように感情の無い眼で。

――カア。

「赤眼」の鴉が鳴く。

黒い悪魔達は雨の中、空を舞い、シンディが開いたままにしていた扉に向かう。
あとに残されたのは、引き裂かれたシンディの衣類と鴉の羽・・・・そして血の跡だけだった。


【シンディ遺体 喪失】
【鴉達が医療施設の開け放たれた扉に近づく】
【止む気配の無い雨】
267鴉包囲網:02/03/01 03:39 ID:q9Whn3sI
シンディ死亡と、鴉が施設内に侵入するまでの話ってことで↑
赤眼の大鴉は現在正体不明に所在不明
268人魚の園で鬼姫は:02/03/02 01:21 ID:ou6G5p7r

 ────あの人は、わたし達の友達になったよ
 ────あなたはどうするの? 友達にならないの?

 心無しか、人魚達の声には嬉しそうな響きがあった。
 岩切が自分達の仲間になったと思い込んでいるせいだろう。

 ────友達になろうよ あなたも一緒に暮らそうよ
 ────躰が朽ちる心配もなく 永遠に生きていけるのよ

 人魚達の誘惑の声は、しかしその場に突っ立っている梓の耳には届いていなかった。
 梓の頭脳は、岩切から得た少ない情報を整理するためにフル回転しているところである。

『……仙命樹だな。 お前は喰うな』『心配するな、私は元からだ』
 岩切の言葉を思い返す。

(セン、メイジュ… って何だ? 元からって… あの人が人魚…? はは、まさか…
 いや、そんなことよりも…)

『無事だ、今のところはな』『一人にして来てしまった』

(初音は… 大丈夫なのか? あの人が保護してくれてるのか… いや、一人にしたって?)

 岩切は言葉少なく、来たと思ったらすぐに出て行ったので、詳しい状況を教えてくれなかった。
 断片的な情報は梓の頭を混乱させるだけで、何の役にも立たない。
 それどころか、岩切の「初音を一人きりにした」という言葉は、返って不安を掻き立てるだけだ。
 千鶴と楓は自衛手段があるにしても、感応能力ぐらいしか鬼の力を持たない初音はそうはいくまい。

(くそっ… 初音が危ないかも知れないってのに、あたしはこんなところで…)
269人魚の園で鬼姫は:02/03/02 01:24 ID:ou6G5p7r

 初音の事を考え出すと、他人の岩切には任せていられない、という思いが強くなってきた。
 まんまと閉じ込められて、何も出来ずにいる自分が腹立だしくなる。
 梓が思い詰めた表情で人魚達の顔を見ると、やはり彼女達は穏やかな微笑みで返した。

 穏やかで、残酷な微笑。

 ────食べる?

 人魚の一人が差し出したのは、先刻に岩切が噛り付いた物と似たような物体だった。
 肉と言うより、内臓をそのまま掴み取ったような不気味なモノ。
 それは脈打っている様な錯覚すら覚える。
 
 梓は俯いて、歯を食い縛り、血が上って痛む頭で考えた。

(あたし、あたしは…)

 妹の身の安全と、自分がヒトであること。 どちらが大事だ?

 ────食べなよ


 それから少しの間があって。
 ゆっくりと顔を上げた梓は、全てを覚悟していた。
 フラリと人魚達の方へ歩み寄ると、その肉へと手を伸ばす。
 人魚は満面の笑みを浮かべて、梓に肉を差し出した。
 これで、人魚達に新たな友達ができる。
 「食べるな」という岩切の命令は、もう梓の記憶するところではなかった。
270人魚の園で鬼姫は:02/03/02 01:26 ID:ou6G5p7r

 しかし、肉が人魚の手から梓に渡った瞬間だった。
 梓の全身が、まるで何かに打たれたかの様に震えた。 その眼が大きく見開かれ、驚愕の表情を作り出した。
 手は力を失ってダラリと垂れ下がる。
 滑り落ちた肉は、ポチャンと音をたてて池に波紋を広がらせた。

 人魚達は、梓の突然の変化を訝しげに眺めている。
 やがて、梓の口からポツリと呟きが漏れた。


「こう…いち?」



【梓、耕一の死を察知】
271名無しさんだよもん:02/03/02 01:31 ID:ou6G5p7r
俺は馬鹿か?
察知じゃなくて感知だろ、こういう場合…
編集の時は修正してお願いします(TAT)
272たたかうものたち(1):02/03/02 23:51 ID:cXlKjBK8
 瑞穂がドアノブに手を掛けたとほぼ同時・・・

―――カシャーン!

 と、ガラスの割れる音。
 続いて・・・

「なんなのよこいつらっ!?」

 晴香の怒声が廊下に響く。

「晴香さん!?」
 咄嗟に、何の迷いも無くドアを開けようとする瑞穂。
 私が「待って!」と言った時には既に、
 飛び出してきた黒いカタマリが瑞穂を突飛ばしていた。


 黒いカタマリ・・・・・・鴉・・・?

 見た目は間違いなく鴉。しかし、それは自分の知っているモノより
 ふたまわり以上は大きい化物鴉。

(・・・って、そんな事どうでもいい!瑞穂を助けなきゃ!!)

「か、香奈子ちゃん、来ちゃ駄目ッ!きゃああ!」
 ガッ、と、嘴を突きたてる音が響く。
 最早一刻の猶予もない。
「瑞穂っ!!」
 拳を振り上げて、全力で化物鴉におどり―――
273たたかうものたち(2):02/03/02 23:52 ID:cXlKjBK8
(三行開け)
―――バサァッ!!

「・・・・・・え?」

 油断・・・。
 瑞穂に気を取られていて、気が付いた時、既にそれは私のすぐ側まで・・・

「ギャアッ!」
「わあああっ!」

―――パンッ!!

「しまった!」と、咄嗟に両腕でかばった頭部に、
 ボタボタと容赦なく鴉の臓物が降り注ぐ・・・



「・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・え?」
 
 何かおかしい。


「2撃目がこない・・・?」
274たたかうものたち(3):02/03/02 23:53 ID:cXlKjBK8
(1行開け)
「・・・もう一回欲しいの!?」

「こんなのもういらないわよっ!!」

 がばっ、と顔を上げた先には、いかにも
「そのくらい自分で何とかしろ」と言わんばかりの顔をした晴香がドアの前に立っていた。
 その左腕には、今にも彼女に嘴を突き立てんとする鴉の爪が喰い込み、
 代りに、瑞穂に集っていた鴉が全てバラバラになって飛び散っている。

 つまり、あの彼女にとりついている鴉は私達を庇った為に倒し損ねた・・・・・・

「なんだ、まだ元気じゃない・・・
 だったら、今の貸しにしておくから―――ねッ!!」

 言いながら、左腕の鴉を振り払う。
 壁に叩きつけられた鴉は、叩きつけられた以上の力を受けて、パンッ!、と、弾けとんだ。

「な、貸って・・・・・・誰も助けてなんて頼んでないでしょっ!!」

「そ?だったら私はこっちに専念するから!
 瑞穂はあなたが絶対に守りなさいよっ!?」

「あなたなんかに言われなくても・・・・・・・・・」
 そうする・・・と言おうとした時には既に、晴香の姿は部屋の中へと消えていた。
275たたかうものたち(4):02/03/02 23:53 ID:cXlKjBK8
(2行開け)
『良祐に近づくなッ!!』
『ギャァッ!ギャァッ!』

 開いたままの扉の向こう側から、晴香の戦いが伝わって来る。
 そして―――


 晴香の取逃がした鴉が2羽、扉をくぐってこちらに向ってくる。
 それに対抗するために武器がないか、周囲を観察する。

「あなたなんかに言われなくても・・・・・・」

 鴉の最初の突撃を両手で払いのけると、
 素早く廊下の端にあるケースに駆寄り『消火器』と書かれた扉を開いた。


「・・・・・・瑞穂は絶対に守ってみせるわよっ!!」


―――こちら側で今、香奈子の戦いが始った。


【晴香・香奈子 鴉と戦闘】
【香奈子 消火器所持】
276地下へ…(1/5):02/03/03 00:31 ID:NaTIpCIa
「ホントに久しぶりネ!!」
「温泉での一件以来じゃないか」
 レミィや拓也はイビルとの再会に純粋に喜んだ。
「………」
 それに対して理緒は正直に喜べない状況だった…。
 なにせ相手は悪魔である。
 温泉での出会いでイビル達のことは信用できるけど、一般的に知れ渡っている「魔族」に対しての偏見は早々拭い去れるものではない。
「でさ、お前らこんなとこで何やってるの?」
 イビルが単純な疑問を投げかけた。
 イビルは空からの乱入で、全く参加者達の事情を知らない。
「いやさ…、テーマパークの無料見学に招待されて、主催の暴走でこんな様さ」
 と言って、拓也は両手を挙げてお手上げのポーズを取る。
「温泉といい、今回といい、トラブルによく巻き込まれてるなー」
 とイビルが苦笑い、そして…。
「それとさ、この眼鏡のアンチャン、誰よ?」
 イビルを興味深い目で見てる英二のことを聞く。
「ああ、彼は英二さんっていって同じ参加者ネ」
 とレミィ。
277地下へ…(2/5):02/03/03 00:33 ID:NaTIpCIa
「よろしく、イビル君」
 英二が握手を求める。
「よろしく…」
 笑いながらイビルも握手を返すが、実際には…。
(ぜってー、あたいを男と勘違いしてるな…)
 早くも英二の勘違いに気づくイビル。
「??」
 イビルの微妙な表情の変化に疑問をもつ英二。
(まあ、面白そうだからこのままかん違いさせたままでいっか)
「イビルさんもこんな場所に何で来てるんですか?」
 理緒が恐る恐るイビルの突然の出現の理由を聞いた。
「ああ、それがだな…」
 面倒くさそうにイビルが口を開こうとした時。
「こんな所もなんだから移動しないか?」
 英二がもっともな意見を提案した。
(二行空けてください)
 道中、イビルが話した内容はこうだ。
 ルミラとメイフィア、そしてアレイがユンナという天使に何らかの方法で捕まってしまったこと。
 残った面子で救出にきて、ユンナにばれないようにみんなバラバラに潜入したこと。
「ルミラさんやメイフィアさんも捕まってしまうなんて…」
 拓也は驚いていた。
 温泉でも一件でも、正面から戦ったらかなり強い二人が捕らえられていることが何よりの驚きだった。
「相手の天使はそのルミラって人より強力って訳かい?」
 英二が確信をついてしまう。
「さあ…?」
 イビルは茶をにごした。
「捕まった経緯、知らねーし」
 と言ってイビルは茂みをかき分ける。
278地下へ…(3/5):02/03/03 00:34 ID:NaTIpCIa
「WHAT?」
 レミィが自分の足元に何かがあるの事を築いた
「どうしたの?宮内さん?」
 理緒がレミィに聞いた。
「ココだけ、地面違うネ」
 レミィが地団駄を踏んで地面を確かめる。
「ここ下が空洞になってるっぽい」
 英二も地団駄を踏んで確かめる。
「下がってな!!」
 イビルが他の四人を自分の後ろに下げた。
 外国語だと思われる短い呪文詠唱を唱え。
「爆炎!!」
 イビルの声と共にレミィが地団駄を踏んだ場所にが爆発がおくる。
 煙が収まり、イビルが吹き飛ばした場所には地下へ続く人工の階段が出現した。
「どうします?」
 拓也が英二に聞く。
「どうするって聞かれてもな…」
 英二が困った顔をする。
(正直、入りたいが理奈や由綺の事が心配だ…。これだけの施設だ、中に化け物の暴走を止める手段もあるかもしれないな…)
 と英二が分析をしてると、イビルとレミィが中に入ってしまった。
「しかたがない、入るか…」
 と、英二はため息をついた。
「そうですね…」
 拓也もため息。
 男二人はイビルとレミィを追った。
「待ってくださいよ〜」
 理緒も慌ててついてった。
(二行空けてください)
279地下へ…(4/5):02/03/03 00:35 ID:NaTIpCIa
 中は何かの研究施設なのだろう…。
 薬品の独特な匂いが漂っている。
「イビル、何かいそう?」
 レミィが警戒しつつイビルに尋ねた。
「いや、ほとんど人間の気配はねえな…」
 後ろについている拓也、英二、理緒の三人も周囲を警戒している。
「だけど、この部屋には何かいるっぽいね」
 拓也が一つの部屋のドアを指した。
「二人いますね。あと、なんていうかノイズの近いものを感じる…」
 レミィがドアに耳をあてた。
「確かにいるネ、話し声が聞こえるヨ」
「青年、敵意みたいのをドアから感じるかい?」
「全然ありません、というかこちらにも気づいてませんよ」
 拓也はこの先の人物について安全という太鼓判をおした。
「それじゃあ、突入するか?」
 イビルは自分の性にあった作戦を提案した。
「そうだネ」
 レミィがと言うなりドアを蹴り破った。
「FREEEZ!!」
「手を挙げて金を出せぇ!!」
 弓を構えたレミィとイビルが突入した。
280地下へ…(5/5):02/03/03 00:36 ID:NaTIpCIa
 それを見た拓也が、
「イビル君、台詞が微妙に違う…」
 とツッコミを入れつつ英二達と入っていく。
 そこにいる二人は、一人はガリガリの貧相なメガネ、もう一人はただのデブ、その二人が手足を縛られて転がっていた。
「助けてなんだな…」
「右に同じでゴザル…」
 二人は憔悴しきった表情で侵入者を懇願した。
「青年、何かいたか?」
「いえ、何もいませんね。気のせいでしょう?」
「すでに二人の美的感覚から外されているぅ!?」
 理緒が英二と拓也の対応の早さに驚愕した。
「で、なんでこんなとこにいるんだよ?」
 と、イビルがデブを足で転がしながら尋ねた。
「高額バイトだったんだな、それで連れてこられて眠らされて、気がつけばこの状態だったんだな」
 デブが転がりながら説明した。
「だから、転がすの止めてほしいんだな」
「は〜はっは!!おもしれ〜」
 イビルが面白がって転がしてる一方、理緒が机に置いてあるメモを手に取った。
「良質・ソンビの材料…?」
281R1200:02/03/03 00:41 ID:NaTIpCIa
【月島拓也・緒方英二・宮内レミィ・雛山理緒、地下施設でタテ&ヨコを発見】
【英二、未だに勘違いに気がつかず】
【イビル、英二の勘違いに気がつく、でも指摘しない(面白そうだから)】

かなり、長くなってしましましたね…。(〜_〜;
読みにくいと思いますけど、ホントに申し訳ございません…。
がんばって行数すくなくしようと思いましたが、自分の力量に泣いてます。
タテ&ヨコはこんな感じで登場させてみました。
282名無しさんだよもん:02/03/04 02:09 ID:QVgRXAMG
         
283回想録:02/03/05 11:26 ID:/9g6q3ao
「あの、里村さ……じゃなかった。茜さんはどうして看護婦さんになったんですか」
 さっき、『茜でいいです』と言われた所だ。
「私は看護婦の免許は持ってません」
「え?」
「これはバイトです。私はまだ高校生ですから」
 という事は、自分とあまり変わらない訳だ。
「そうなんですか。茜さん大人っぽいから、ボク、勘違いしてました」

「それは、私が老けて見えるという事ですか?」
 爽やかな笑顔で、怖いことを言う。
「ち、違います違います違います」
「冗談です」
 さらに爽やかな笑顔。
「うぐぅ、ひどい。でも、茜さんも冗談言うんですね」
「当たり前です。……そうは言っても、以前の私は冗談なんてあまり言わなかったかもしれません」
「今は違うんですよね?」
 茜さんはどうして変わったのだろう。
「一人の馬鹿のせいです」
「馬鹿?」
「そう、馬鹿です。その馬鹿のおかげで、私はこんな風になってしまったんです」
 そう言う茜さんは、なんだか楽しそうだった。
「あははっ。そういう馬鹿ならボクも知ってます。いつもいつもボクのことからかって……」
「馬鹿、と言う割には嬉しそうです」
「茜さんだって」

(2行空け)
284回想録:02/03/05 11:28 ID:/9g6q3ao
「あんたらも逃げぇ〜〜!」
 ふいに叫び声が聞こえた。声の方に振りむくと、必死の形相で女の人が走ってくる。
 その後ろには、黒い塊がたくさん。あれは何だろう?
「あれは、鴉でしょうか。私達も逃げましょう」
「は、はい」

「あいつらかなり凶暴やで。囲まれたらひとたまりもないわ」
 走りながら眼鏡の女の人が言う。
「あの鴉達は何なのですか?」
 茜さんが尋ねる。
「分からん。でも、普通のカラスより大きいし凶暴や。
外で看護婦さんが襲われてたみたいやけど、……相当えげつなかったで」
 もしかして、さっきの看護婦さんだろうか。嫌な想像が広がる。
「とりあえずあそこの部屋に避難しましょう」
 息を切らしながら茜さんが扉を指し示す。が、

「うぐぅ」
 転んだ。
『何も無い所で転べるなんて、あゆは器用だな』
 『馬鹿』の言葉を思い出す。今ほど自分の不器用さを恨んだことは無い。
 倒れたボクに、一匹のカラスが襲いかかってくる――

「えい!」
 カラスが吹き飛ばされる。
「大丈夫ですか?」
 そこにはモップを手にした茜さんが立っていた。

(2行空け)
285回想録:02/03/05 11:30 ID:/9g6q3ao
 カラス達は、茜さんを『敵』とみなしたようだ。10羽を越えるカラス達が、一斉に茜さんに襲いかかろうとする。
「茜さんっ!」
 その時、何か焦げたような嫌な匂いが鼻先をかすめたかと思うと、
 茜さんに襲いかかろうとしていたカラス達は突然動きを止めた。
 そしてカラス達は、外に向かって元きた道を飛んで帰った。

「なんや知らんが、あいつら一時撤退みたいやな」
 眼鏡の女の人がつぶやいた。

 

「……ちゃん、あゆちゃん、どうしたんや」
「えっ、あっ、智子さん?」
 智子さんの声に、ボクは我に帰った。
「なんや? いきなりぼうっとして。私の声が聞こえてなかったみたいやで」
「ご、ごめんなさい。ちょっと、色々と考えてて」
「いや、別にいいんやけどな。で、何を考えてたん?」
 ボクは自分が考えていた事を話す。
「あのカラス達は、もう襲ってきませんよね?」
「さあ、分からんなあ。けど、警戒しとくに越したことはないやろ。それより……」
 智子さんはそこで言葉を止める。
「それより、どうしたんですか?」
「いや、なんでもないわ」

(私はあんたの体の方が心配やわ。ほんまに、どうすればええんや……)
286名無しさんだよもん:02/03/05 11:42 ID:/9g6q3ao
>>242-244 の続きで。
回想という形で間のエピソードを補完してみました。全然回想っぽくないけど。
鴉が一時撤退したのは誰かが(矢島or晴香辺りでしょうか?)追い払ったからということで。

ところで、茜ってあゆの事なんて呼びますかねえ。今回は逃げましたが。
「あゆ」 「あゆちゃん」 「あゆさん」 「月宮さん」 ……うーん。
あっ、こーいう話は感想スレのほうですべきですね。失礼しました。
287平穏:02/03/07 00:59 ID:ZkXHgSCT

今日も、ごく普通の日々が始まる。
取り合えず学校に行く前に、テレビでニュースを確認する。
テレビの中では、ちょっと角張った人が、記者に向けて何か話していた。

「……であるからして、我が社のスタッフとは無関係でして……」
「いえいえ、そんな事は……」
「はい、目下検討中で……」

なんか、頼りない返事だった。
これの人確か、『南海のモンスターパーク』を作った会社の社長さんだったと思う。
あそこは今、沢山の人が取り残されてて、大変なんだって。
社長さん、おでこにいっぱい汗をかいていた。

爆弾の部下を抱えてると、上司も苦労するんだね、とちょっと思った。
あ、学校に行く時間だ。


【清水なつk(以下略) 相変わらず普通に生活】
288名無しさんだよもん:02/03/08 10:20 ID:H/F6Y3Nr
めんて
289可能性:02/03/08 23:52 ID:HXgQa3nM
「なあ久瀬、お前はもう知っていると思うが俺と相沢は今回二人だけできたわけじ
ゃないんだ。」
「ああ、それぐらいはさっきのお前達の会話を聞いて知っているが」
「なら話は早い、お前のその作戦を実行する前に俺達の連れを助けたいんだが、手
伝ってくれないか?」
「それは僕の作戦が実行できる人数、つまり予定人数をこえても君達の探している
人が見つかるまで人探しをしてくれと?」
「ああ、そうだ」
「だめだ、それで僕に何のメリットがある」
「ならせめてお前の作戦の最中に見つけたら保護をしてくれ」
「悪いがそれもできない、保護したところでただの足手まといになるだけだ」
「そこを何とか頼む」
「おい、北川そんな奴に頼む必要ないぜ」
「相沢いい加減にしろよ。俺達はこんなところでいがみ合っている場合じゃないだろ!」
「北川…」
 祐一は北川の怒った顔をみて驚いた。
「なあ、久瀬この通りだ頼む」
と北川は言うと地面に膝をつけて久瀬に土下座をした。
「………」
「北川…」
「相沢、俺はみんなが生き残る可能性が増えるなら何でもするぜ」
「………」
「なあ、久瀬頼む俺はみんなを助けたいんだ」
「………」
「………」
「…だめか、ならしかたがないな」
290可能性:02/03/08 23:54 ID:HXgQa3nM
 と北川は言うとさっき久瀬にもらった銃を久瀬の方に投げると。
「俺は別行動をさせてもらう」
「北川!なら俺も…」
「相沢お前はそっちにいてくれ、何だかんだいったってそっちの方が生き残る可能性も、
みんなを見つけれる可能性も高いからな」
「おい」
「それじゃあな相沢」
「おい、待てといってるのがわからないのか?」
 久瀬はそう言いながら北川の背中に石を投げつけた。
 ドゴ!
「痛て」
「まったく、誰が手伝わないと言ったんだこれだから君達みたいなのの相手は困るんだ」
「え?」
「と言うことは?」
「勘違いするなよ、僕はここで君と別れる方が不利になるからその意見をのむんだ」
「本当か?」
「それと一言いっておくが死にそうだった君を助けたのは僕だよ、勝手な行動はやめてほ
しいな」
 久瀬はさっきの銃を北川に渡した。
「久瀬、ありがとうな」
 と北川は言うと握手を求めてきた。
「僕はここから生きて帰りたいだけだ、その為には仲間が必要なんだ勘違いするなよ」
 久瀬は北川の出してきた手を叩くとそう言った。
「へへ、やったな相沢」
「ふん、もったいぶらずに早く手伝うって言えばいいじゃねーか」
「やはり君みたいな奴と2人で行動しなくて正解だったよ」
「まあまあ2人とも仲良くしようぜ」
291可能性:02/03/08 23:54 ID:HXgQa3nM
「まず君達もそこら辺で銃のためし打ちをしてみたまえ」
「おう」
「いわれなくてもするよ」
「よしあの木を狙って」
 ダンッ
 と音が鳴ると北川の銃から弾がでて木にいくつかの弾痕がついていた。
「おい、久瀬これすごすぎないか?」
「いや、あれくらいでも倒せない敵はたくさんいるだろう」
「そ、そうか」
「よしじゃあ俺もあの木を狙って」
 パンッ
 と音が鳴ると祐一の銃からはBB弾がでてきた。
「おお、すげ−すげ−ってなんじゃこりゃあああああ」
「やはりモデルガンだったか…」
「お前俺を殺す気か」
「今のところはない」
 と久瀬は言い祐一に今度はちゃんとした銃を渡した

【祐一、本物の銃(グロック17)も装備】
292Frei:02/03/08 23:57 ID:HXgQa3nM
290と291のあいだは二行あけでお願いします。
いやーひさしぶりでしたわー。
293Frei:02/03/09 00:02 ID:Jz2n6u8E
>RTOさん
ついでに言うと、私の「いかだを作ろう」が見てみたら題名が鬼と強化兵になってい
ます。修正お願いします。
294覚悟:02/03/10 01:59 ID:IybW7w8x
 なつめにふっ飛ばされた往人は、相当な時間が流れた後、ようやく目を覚ました。
「うぐっ・・・ぐお・・・こ、ここは何処だ?俺は誰だ?」
 などと突拍子もない台詞を吐きながらでは有るが。
「うにゃ〜。ここは島にある売店で、お兄さんは・・・なんていうお名前でしたっけ?」
(こいつ・・そうだ、俺はあの女に・・・な、情けなすぎる・・・・)
 自分が助けた少女の言葉とともに往人はゆっくりと気絶するまでの事を思い出していた。
「お兄さんが意識を取り戻してくれてよかったです。千紗、あんまりお兄さんがを覚まさないからもうだめかと思っちゃいました」
「それは悪かったな。ところで、あの化け物と最初に戦っていた女はどうした?」
「ああ、なつみさんの事ですね。彼女ならあの後すぐどこかに行ってしまったんですぅ。『そろそろ戻んなくちゃね。それじゃ、縁があったらまた会いましょう』とかいいながら大急ぎで」
「そうか、それともう一つ聞きたい事がある」
 より表情を険しくして往人が言う
「はい、千紗答えられることなら何でもお答えしますよ」
「・・・・腹が減った。食い物はないか?」
(三行開け)
「ふう・・・満腹だ。もう食えねぇ」
「うにゃ〜。千紗も、もう食べられません、お腹一杯です」
 結局食べる物を持っていなかった往人と千紗は、売店の売り物に手を出していた。
「まあ、こう雨が降り続けてるんじゃ動けないしな。食い溜めしとかないといざ動く、って時に困るからな」
「え?お兄さん、どっかに行っちゃうんですか?」
 千紗が驚いたような表情で往人を見る。
「ああ、連れを探さなきゃいけないから、いつまでもこんな所にはいられないんだ」
「じゃあ、千紗も一緒に・・・・・」
「ダメだ、外は危険すぎる。ここならしばらくの間は大丈夫だろうし、正直お前がついて来たら足手まといだ」 
 ぴしゃりと千沙に言い放つ往人。
「俺は雨が上がったら行く。お前はおとなしくここに隠れていろ」
 と言って往人は立ち上がり、隣の部屋に入っていった。
295覚悟:02/03/10 02:00 ID:IybW7w8x
(三行開け)
「くそう・・・武器になりそうなものは何もねぇじゃねえか・・・」
 観鈴達を探しに行くのに、手ぶらでは心ともないと感じた往人が、武器になりそうな物を探してかれこれ三十分、一向に成果は上がらなかった。
(ちっ・・・これじゃあ自分の身を守るのも危ないぜ・・・)
 心の中で悪態をつきながら、手近にあった椅子の上に腰を下ろし、そこにあった机の中身をあさっていると、
「お、お兄さん!」
 千紗が入ってきた。しかも、
「・・・何の真似だ、お前・・・」
 いつのまにか見つけたのかオートボウガンを、往人に向けていた。
「お、お願いですお兄さん!千沙は千紗のお友達を探したいんです。でも千紗一人じゃとても探せません!だから千紗も・・・千紗も連れて行ってください!じゃないと・・・じゃないと・・・」
「そいつを俺に撃つ、って言いたいのか?」
「そ、そうです!千沙は本気ですよ!」
 とは言ってもやはり怖いのだろう。手と足がガクガクと震え、いつ誤射してしまうかと、見てる往人のほうが心配させられる。
 そのまま一分近くの間、お互いとも何も言わなかったが、
「いいぜ、撃ってみろよ」
 唐突に往人が、とんでもないことを口走った。
「え?え?」
「そんなに言うんなら口先だけじゃないところをちゃんと証明して見せろよ。それとも、やっぱりポーズだけなのか?」
「そ、そんなことはありません!もし千紗お兄さんが千紗の言うことを聞いてくれないんだったら、千紗は撃っちゃいますよ!」
 痛いところを疲れて、露骨に動揺しながらも千紗が叫ぶ。
「ああ、だから撃ってみろよ、さあ、どうした?」
「そ、そんな・・・」
 もはや脅す方と脅される方の立場は完全に逆転していた。
「・・・よし、お前が動かないんなら俺がお前を殺す」
296覚悟:02/03/10 02:01 ID:IybW7w8x
 その言葉に千紗の表情が引きつる。
「いいよな?お前が俺を殺そうとしているんだし、問題ないな」 
 いうが早いか、往人が千紗のほうに足を踏み出す。
 体格差からも考えても、往人なら簡単に素手でも簡単に千紗を殺せるだろう。
「こ、来ないでください!来たら、来たら本当に・・・」
「だから撃ってみろって、遠慮するな」
 ゆっくりと歩み寄る往人、千紗への距離はあと五歩程。 
(うっ・・うっ・・嫌、嫌ですぅ)
 あと三歩。
 千紗の目に涙があふれる。
(ダメですぅ、本当に、本当に・・)
 あと二歩。
「どうした千紗、本当に死んじまうぞ!いいのか!」
(し、死にたくないですぅ、死にたくない、死にたくないシニタクナイしにたくないシニタクナイ
 しにたくないシニタクナイ・・・)
 あといっ・・・
「千沙は死にたく、ないです――!」
 その瞬間、千紗の指がボウガンの引き金に掛かり、躊躇うことなく千沙は引き金を引いた。
297覚悟:02/03/10 02:01 ID:IybW7w8x
(1行開け)
 カチッ

「えっ?えっ?う、撃てない?」
 何度も引き金を引きながら、千紗は戸惑う。
「・・・矢が、セットされてないんだよ・・・」
 往人に言われて千紗がボウガンをよく見てみると、確かに矢がセットされていなかった。
「や、やっぱり千紗はドジです・・・、こんなんじゃみんなを探すことなんてとてもできないです・・・うっ・・うっ・・」
 と泣きながら、崩れ落ちる千紗。
 往人はそんな千紗を見ながら、
「まあ、いいさ。ちゃんと撃てたんだし、お前の覚悟ってやつを見せてもらったぜ」
 と、ポケットのハンカチを千紗に渡しながら言う。
「じゃ、じゃあ・・・」
「ああ、ついて来い。お前の知り合いとやらもついでに探してやるよ」
 

【国崎往人 塚本千紗 行動を共に】 

298へタレ書き手だよもん:02/03/10 02:16 ID:IybW7w8x
【牧部なつみ 往人達から離れる】

 なんか文章が稚拙・・・いつものことですがw

>Frei氏 
 私が書いた『決意』で祐一はグロックに弾込をしています。
 BB弾ならその時に気づいているはずなので、そこの描写を修正できませんでしょうか?
 お手数ですがよろしくお願いします。
>RTO氏
 編集サイトの133『悪夢再び』と139『決意』の作者を私にしてもらえませんか?
 一応自分が書いたんで・・・・よろしくお願いします。
299Frei:02/03/10 03:08 ID:KTAitWQ/
>298
すいません気づきませんでした。
では291はなしということでお願いします。
300名無しさんだよもん:02/03/11 19:00 ID:Yvzl+GxV
メンテ
301悪夢を告げる産声:02/03/13 00:40 ID:EICIh/Qd

どさっ、と音を立てて、彼女はソファに背を預けた。
無機質なはずのその顔には、深い疲労の色が見て取れる。
「やれやれ……詰まらない事で時間を食ってしまったな」
超先生……いや、朝鮮製は溜め息混じりに嘯くと、再び島中を映し出す監視カメラの映像に目をやった。
その細い眉が、かすかにしかめられる。
「……柏木千鶴は見失ったか……まぁいい」
高感度アイカメラが、小さな音を立てる。
朝鮮製は別の画面に目をやると、いくつか操作を繰り返した。
その先には、“何か”が順調に稼動している事を示していた。
「ふふ……やはり、液体窒素を使ったのが良かったな。細胞の鮮度がいい」

ディスプレイに浮かぶ文字……そこには、ES−01から04までの数字に、それぞれ%が振られている。
「かつて、隆山で暴れ回った鬼……その生体サンプルを手に入れられるとはな」
細い指が、キーボードの上を芸術的に踊り狂う。
「そして、犬飼より入手した仙命樹のエキスを注入し……魔力を注ぎ込んでやれば……」
満面の笑みが、朝鮮製の顔を彩った。

どくん……どくん……どくん……

今まさに生まれ出でようとしている、史上最凶、最悪の生物の鼓動が、聞こえるような気がしていた。
鬼の細胞は、凄まじい勢いで増殖し、仙命樹と魔力を喰らいながら成長している。
「くく……くくくく、これ以上は無い、凄まじい生物の誕生だ」
愉悦に顔を歪めながら、朝鮮製は立ち上がった。
302悪夢を告げる産声:02/03/13 00:40 ID:EICIh/Qd

こつこつ、と冷たいリノリウムの床を、ハイヒールが叩いていく。
朝鮮製は白衣をはためかせながら突き進み、やがて一つのドアの前で立ち止まった。
自動ドアが開き、中にあかりが灯る。
そこには、いくつもの液体が入った硝子の柱が、立ち並んでいた。
緑色に照らされたその液体の中には、いくつもの肉塊が浮かんでいる。
繋がれたコードからは、酸素や栄養などといったものが、与えられていた。

そこは、モンスターの生体研究所だった。

ゆっくりとした足取りで、朝鮮製はひとつの硝子柱の前に立つ。
『柏木耕一』
そう書かれた柱の中には、一人の男が身体を丸め、浮かんでいた。
「液体窒素の中でなお、生命を保つ……その凄まじい生命力は、私が長年追い求めてきたものだ」
あの瞬間……恐らく本能なのだろう、柏木耕一の肉体は、瞬時にして巨大な鬼へと変化していた。
勿論、そんなもので防げるほど、液体窒素は甘いものではない。
だが、それでも分厚い筋肉と構造により、内部の重要器官の多くが凍結を免れていた。
とはいえ、脳に深刻なダメージを受け、植物状態も同然ではあったが。

そして、その横に並ぶいくつもの異形の影。
柏木耕一のサンプルから細胞と血を抜き出し、いくつかのモンスターに与えた結果だった。
あるものは鬼の血に負けて身体中の肉を腐らせ、あるものは凶暴化し、あるものは脱走した。
しかし、ここにあるサンプル達は、その鬼の細胞を吸収し、融合した“成功例”だ。

「これこそまさに、ジョーカーと呼ぶに相応しいカードだ……待っているがいい……くくくく」
303名無しさんだよもん:02/03/13 00:43 ID:EICIh/Qd

【朝鮮製 耕一の細胞を元に、仙命樹と融合させたモンスターを製造】

 
放置プレイされていた、朝鮮製を書いて見ました。
耕一が生きているような描写なので、意義がありましたら撤回いたします〜
304名無しさんだよもん:02/03/13 01:09 ID:ivnLyLGv
>>303
細胞からモンスターを造り出すのはいい案だと思うけど
耕一を復活させるのはどうかなと思う。
植物人間状態って所は省いた方がいいと思う。
305名無しさんだよもん:02/03/14 00:42 ID:dC5INar9
>>304
了承しました。
それでは、
>とはいえ、脳に深刻なダメージを受け、植物状態も同然ではあったが。

>それによって、死亡しているとは言え、いくつもの生体細胞を入手する事が出来ていた。
に変更してくださいませ。
306名無しさんだよもん:02/03/14 02:07 ID:zkp1+Imh
メンテ
307名無しさんだよもん:02/03/14 02:11 ID:TAUR8Dsi
いっそ、死亡したキャラの中で面白い要素を取り込んだキマイラでも作ればいかがでしょうか?
凸の凸と耕一の右手(鬼の手)その他とか
308名無しさんだよもん:02/03/14 03:04 ID:Y26Lmv3P
>>307
ヤメレ(w
309名無しさんだよもん:02/03/14 22:43 ID:sXzRX7bp
>>307
凸の凸+鬼の手+みどりの乳+さいかの年齢+スフィーの触覚+玲子のコス+由宇の関西弁
310名無しさんだよもん:02/03/14 22:50 ID:rexg8NOc
>>309
そんな出たら参加者は全滅するな。
311:02/03/14 23:14 ID:IpRl/532

「ったく…いったいなんなんだ、ここは」
 産まれてこのかた一度も見たことの無い動物や植物にかこまれ橘啓介は少し動揺していた。
 なんでこんなところに僕はいるんだ。僕は神尾の家に観鈴を引き取りにいこうと家を出た筈だ。
 なのになんでこんなところにいるんだと。
 空を見上げるとぎらぎらと輝く太陽。
「暑いな…」
 啓介は呟く。
 とにかく考えよう。一体僕はどこをどう間違ったのか。
 会社からバスに乗って駅へと向かった。ここまでは何も間違いは無い。
 そして駅から電車に乗った。ここまでは完璧に覚えている。
 それから…。
 そうだ、電車に乗っている最中ある男にあった。その男はの隣に座り、「どこに行くのですか?」と聞いた。
 愛想のいい男で話も弾み、僕は行き先を告げた。
 ならばその男は「これから俺もそこにいくんだ」と言って、僕を誘ったのだ。
「俺の船に乗って行けよ。お代は無しでいい」
 その言葉に僕は甘えた。少しでも節制をするのは悪いことではない。
 浮いた金で帰りはグリーン車にも乗れる。
 そうすると観鈴も喜ぶであろう。そう思ったからだった。
 そして僕はある港から船に乗った。
 そこまでは記憶がある。そして気づいたらここにいたのだ。
「ぱぎゅう…」
 どこからか聞こえる訳の判らない声に啓介の考えは遮断される。
「ぱ…ぱぎゅう…」
 遠くから声はだんだんとこちらへと近づいてくる。続いてその姿も啓介の視界に入ってくる。暑苦しそうな服を着た、女の子だった。
「…どこにいるですの…? ネタになりそうな、大きな怪獣さんはどこにいるですの…?」
 バタンと目の前で暑苦しそうな服を着た女は倒れる。
 一体なんだというのだと橘啓介は呆気にとられた。
 少女は倒れたままうわごとを繰り返していた。
「同人誌のネタ…どこですの…怪獣さん…どこですの…」と。
312名無しさんだよもん:02/03/14 23:22 ID:C7/E1ULM
>>311
おいおい敬介は随分前に出てたろ?
313名無しさんだよもん:02/03/14 23:27 ID:m6UxXnCW
>>331
すばるも前に出てますの
314防衛線(1/3):02/03/15 01:32 ID:L/sH/tTA
 ゴブリンの部隊の一つ、その数5匹は全く明かりのついてない窓に向かって突入を敢行した。
 その内の前衛の三匹がほぼ同時に別々の窓に向かって飛び込んだ。
 だが、三匹が窓の向こうの空間に吸いこまれることはなかった。
 三匹が三匹とも何かにぶつかって跳ね返ってきたのだ、そして跳ね返った来たその内の一匹が残った一匹と衝突した。
 窓に仕掛けられた罠は簡単な仕掛けだった。
 ただ黒い板を窓枠に張り付けただけの代物、これが一階の窓全てにはめ込まれてるのである。
 ゴブリン達は夜目はきくといえど、その壁には全く気がつかなかったのである。
 いや、気づいたかもしれない…飛んでから…。
 ちなみにこれは芹香の提案した罠である。
 昼間行う儀式などでカーテンだけでは暗闇を作りきれない時に使う、付け焼刃の日除けだ。
 ゴブリン達の被害は、壁に激突した三匹中二匹は顔を抑えるなどしてもんどりをうっている。
 そして味方同士で激突した二匹は打ち所が悪かったらしく仲良く失神してしまった。
 残った一匹は戦闘不能の四匹を見て、窓から突破は不可能と見るや他の部隊に事の自体の報告のため合流しようと駆け出した。
 芹香の罠は期待以上の効果を発揮したのである。
315防衛線(2/3):02/03/15 01:33 ID:L/sH/tTA
 一方、二階のカフェテリアには琴音がテラスで不安そうに雨をみていた。
「はあ、私なんかこんなことできるでしょうか…」
 そこに石に植物の蔦を巻きつけた簡易ロープが投げ込まれた。
 ロープはテラスの手すりに絡まった。
「ひっ!!」
 琴音が悲鳴をあげる。
(慌てないで…落ち着いて…)
 琴音は自分を落ち着かせつつ下の状況を確かめるために、ロープの下を覗いた。
 そこには、一本のロープを必死によじ昇るゴブリンが4匹が琴音のことを睨みつけた。
(慌てない…水瀬さんに言われたことをすれば…)
 必死に自分の気を保ちつつ、琴音が取り出しのは一つの植木鉢。
「えい!!」
 琴音はそれをゴブリン達に投げつけた。
 直撃する先頭のゴブリンそして悲鳴そして落下、巻き込まれるゴブリン三匹。
 ボテッ!!
 琴音にははっきり聞こえた。
(なんて可哀想な子達…)
 思わず同情してしまう。
 だが四匹とも起きあがって再び昇り始めた。
 下が泥や草などで大してダメージがなかったらしい。
316防衛線(3/3):02/03/15 01:34 ID:L/sH/tTA
 また琴音が同じ手で叩き落す。
 ボロボロになりつつも起きあがるゴブリン三匹、どうやら一匹は完全にダウンしてしまったようだ。
 さっきの部隊よりかなり丈夫にできてるらしい。
(ホント可哀想な子達ね)
 少しづつ琴音に同情以外の感情もでてきた。
「そうだ!」
 琴音がカフェテリアの奥に引っ込んだ。
 その間にゴブリン三匹はロープを昇る。
 そして、もう少しのところで頂上に到達するゴブリン達。
 そこに琴音は帰ってきた、はさみを持って。
「ふふふ…」
 子供の様に微笑む琴音。
「本当に可哀想な子達!」
 もう同情より軽蔑の色の強い台詞を琴音は言いつつ。
 豪快にロープを切断。
 呆気にとられた顔でロープに掴まったまま落ちる三匹。
 ベチッ!!
 地面に落ちたショックか、はたまたもう少しで頂上につこうとした瞬間に落された精神的なショックかわからないが、ゴブリンは三匹とも失神してしまった。
 めでたくこの部隊は琴音によって壊滅させられた。
317R1200:02/03/15 01:42 ID:L/sH/tTA
【秋子の防衛策は建物中に罠をしかけることだった】
【琴音、カフェテリアからの進入を完全に防衛】
【防衛戦、コブリン7匹入ることもできず戦闘不能に】

琴音中心で書かしてもらいました。
かなり性格が違うかもしれないけど…調子に乗った琴音というものを書いてみたかったので…。
うう〜…琴音萌えの皆様すいません…。

>>RTO様
 お仕事頑張ってください。
 私も構想ばかり先行して書けない状態が…。(;_; 
318名無しさんだよもん:02/03/15 17:27 ID:OHeIDeHI
>>310
全滅するのか?(w
319守りたいと思う気持ち:02/03/15 23:05 ID:TPopLlBM

 暗い雲の間から、雨粒は途絶える事無く降り注いでいる。
 涙を連想してしまうのは、さっきまでの出来事のせいだろう。
 みさきと弥生は、運良く休憩所のような場所に辿り着いていた。
 気候はどちらかと言えば暖かい方だが、それでも夜通し雨に濡れるのは、ぞっとしない。
「みさきさん……どうぞ」
「ありがとうございます」
 その手に渡された缶コーヒーの温もりに、みさきは小さく息をつく。
 プルトップを開け、それを口に含むと、ほんのりとした甘さが舌をくすぐった。
 コーヒーではなくて、おしるこだったらしい。

 みさきの横では、同じく座敷童が、自分の身長近くもある缶に、悪戦苦闘しているところだった。
「ふぅ……お腹空いたな」
 みさきがポツリと呟く。
 その声を聞いて、弥生も朝から何も食べていない事を思い出した。
「そうですね、何とかして食料を手に入れたい所ですが…」
 そう言いながらも、弥生は内心驚いていた。
 強いショックを受けた人間は、往々にして拒食症に陥りやすいという。
 だが、みさきは空腹を訴えた。
 それは親友の死を悲しみながらも、彼女がそれを受け入れ、生きて行こうとする意志を見せた事に他ならない。
「……川名さんは、強いですね」
「え……?」
 思わず弥生が独白した言葉に、みさきは過敏に反応する。
「私は、正直何の食欲も有りません……むしろ、心が麻痺してしまったようで……」
320守りたいと思う気持ち:02/03/15 23:06 ID:TPopLlBM

人の死。
それは、普通に生活するならば、そうそう直面するものではない。
親しい者との永遠の別れは、深い悲しみと絶望をもたらす。
弥生にとって、雪見は決して親しい間柄ではなかったが、それでもついさっきまで、笑顔で会話していたのは間違いない。
その彼女が変わり果てた姿になった事実は、弥生の心に重く圧し掛かっていた。
ましてや、雪見と親友のみさきの悲しみは、弥生にとって想像も出来ない。
「……もし私が、私の大切な人の死を知ってしまったなら……多分、正気ではいられないでしょう」
淡々とした口調で、弥生は言葉を紡ぐ。
「だから……」
「違うよ」
決して大きな声ではなかったが、みさきの声に弥生は口をつぐんだ。
「私は別に、強くなんかないよ」
震えていた。
「今も、雪ちゃんの事を考えたら、苦しくて、辛くて、頭がおかしくなっちゃいそうだよ」
寒さからでなく、その手が、身体が、小刻みに震えていた。
「でも、だからって生きる意思まで捨てちゃったら……雪ちゃんに怒られちゃうから」
涙を零すことなく、みさきは泣いているようだった。

知る人も無く、たった一人の親友を失い、盲目のままこの危険極まる島に放り出された彼女。
どれほど辛いだろう。
どれほど不安だろう。
どれほど…………苦しいのだろう。
(やはり………川名さん、あなたは強い人です……本当に)
321守りたいと思う気持ち:02/03/15 23:07 ID:TPopLlBM

他の誰の為でもなく、弥生はただみさきの為にだけ、涙を零した。
この盲目の少女のあまりの強さに……そして、あまりの痛ましさに。
「泣いているんですか……」
「ええ……いいえ……」

冷たいみさきの身体を温めるように、弥生は強く彼女の身体を抱きしめていた。

どれほどそうしていたのだろう。
何時の間にか、二人は互いに抱き合うように折り重なり、眠りについていた。
休憩所のベンチの上で寄り添う二人の横には、ちょこんと座敷童が眠っている。

その時、ぴくりと座敷童が目を開き、立ち上がった。
みさきにも弥生にも聞こえない、小さな小さな音。
まるで大勢の人間が、神輿を担いでいるような、そんな不思議な音だ。
座敷童は二人を起こさないように立ち上がると、とてとてと音の方へ走っていく。
ベンチの裏を通り、自販機の横から現れたのは、座敷童と同じくらいのサイズの、小人たちだった。
だが、その本性は座敷童とはまるで別物である。
『レッドキャップ』……北欧の童話に出てくる、残虐な妖精たち。
その名の通り、犠牲者の血で染めた赤い帽子を被り、人を傷付ける事を喜びとする。

そしてレッドキャップたちは、己の欲望を満たす獲物を発見していた。
ベンチの上で安らかに眠る、みさきと弥生。
小人たちは、血塗られた鉈を次々に振りかざし、犠牲者を屠るべく駆け寄った。
322守りたいと思う気持ち:02/03/15 23:09 ID:TPopLlBM

 がたんっ……と大きな音と共に、ベンチの一つがレッドキャップたちの上に倒れこんでくる。
 小人たちは慌てて飛び退くが、不運な何匹かが、その下敷きとなって潰れた。
 キィキィ、と耳障りな声と共に、彼らはその所業を行った主を探し始める。
 その内の一匹が、自販機の陰にいた、おかっぱ頭の娘を発見した。

 座敷童は自分が見つかった事を悟ると、慌てて駆け出す。
 背後から追いかけてくるレッドキャップは、狩りでも楽しむかのように、陽気な声を張り上げる。
 言葉はわからないが、座敷童には、何となく言ってる事がわかった。
 自分を捕まえて、子供を産ませようとか、肉を食おう、とか言っているのだ。

 いきなり自販機が動き出し、中からホットコーヒーが飛び出した。
 その熱い缶が降ってきて、レッドキャップを何匹か巻き込む。
 だが、小人たちはそれで臆することなく、余計にいきり立って座敷童を追い掛け回した。

 どうしてあの人間たちを庇っているのか、座敷童にはわからなかった。
 自分の家を壊した奴なのに。
 きっと、あれのせいだ、と座敷童は思う。
 みさきの目から流れた、きらきらしたもの。あれをもう見たくなくて、自分はこんな事をしているんだ。
 あの時のみさきの顔を見たくなくて、こうしてるんだ。
 みさきが笑っている方が、嬉しいから。

 投げつけられた鉈の一つが、まともに座敷童の足を捉えた。
 切れ味の悪い錆びた鉈だったが、ぱっと血がしぶくと同時に、座敷童はばったり倒れこむ。
323守りたいと思う気持ち:02/03/15 23:11 ID:TPopLlBM

 汚い手が、次々と座敷童に掴みかかる。
 着物を半分引き千切られながら、座敷童は必死で念じた。
 次の瞬間、天井から剥がれ落ちた蛍光灯が、レッドキャップたちの上にまともに落ちる。
 これにはさすがに驚いたのか、彼らの動きが止まった。
 その隙をついて、座敷童は何とかレッドキャップの手を振り払う。

 今ので、レッドキャップたちは、最初の1/3にまで減っていた。
 ガラス片にまみれ、内臓を撒き散らしながらもがく仲間に、さすがの小人も怖気づく。
 10人近い仲間が殺されたとあっては、レッドキャップたちも退散するしかなかった。


 座敷童は荒い息をつきながら、よろよろとベンチの上によじ登っていた。
 髪はぼさぼさ、着物はボロボロ、おまけに足からは血が出ている。
 それでも、この人間たちを守れた事が、座敷童には嬉しかった。
 ふたりは何も知らず、今もまだ安らかに眠っていた。
 座敷童は抱き合っている二人の胸の間に潜り込むと、疲れた身体を横たえる。

 柔らかなよっつの丘の真中で、座敷童は目を閉じる。
 暖かさと柔らかさ、それに二つの心臓がとくんとくんという音を聞きながら、心地よい眠りに沈んでいった。

 この島でめったに得られる事の無い、安心感と、幸福感を感じながら……
324長瀬なんだよもん:02/03/15 23:16 ID:TPopLlBM
【みさき、弥生、休憩所で睡眠】
【座敷童、レッドキャップたちを撃退】
【座敷童、足を負傷】

座敷童をちょっとクローズアップしてみました。
弥生さんは、ゆきの死を知った時、どんな行動にでるんでしょうかね?
325名無しさんだよもん:02/03/17 01:22 ID:mnD9gTOt
メンテ
326決死行 〜序〜(1):02/03/17 20:52 ID:EpwOf6iR
下半身だけとなった人の体が、弁の詰まった噴水のように、不規則に血を噴き出した。


トカゲの頭のような印象を醸すその生物がいかにしてその体の上半身を食いちぎったか、桑嶋高子はその一部始終を見ていた。
だが、それが思考に繋がらない。「それ」がどういうことか、あるいは「何が起こったのか」。
高子は、理解できていない。

高子の体を、巨大な影が覆う。見上げれば、そこにT-REXと呼ばれるモンスターの牙を確認できただろう。
先程、三井寺月代という少女にそうしたように、凄まじい速度でT-REXの口が閉じていった。


ガチン! という牙の噛み合う音が響いた。
その牙には何も刺さっていないし、その口の中には何も入っていない。
不思議そうな表情をして、T-REXは"獲物"の行方を目で探し始めた。
327決死行 〜序〜(2):02/03/17 20:54 ID:EpwOf6iR
(くく……あのアホ、生きて再び会う時が来たら我が秘拳「ガンダーラ」で尻の穴を二つにしてくれる……!)
ずしん、ずしんと自身のからだの横で地鳴りを起こすT-REXの足を見て、高槻は改めて戦慄する。
と同時に、「力」で脅迫し自分に高子を救うよう命じた少年への怒りもあらわにした。
そこでいったん思考を切ると、自分が今組み伏している少女に目をやった。
(ち……)
思ったとおり、目をあけたまま気絶しているようだ。刺激が強すぎたのだろうか。
こんな状況でなければ、俺とここの支配人は親友になれたかもしれんな。高槻は、ふとそんな事を考えた。
(一般人に殺人ショーを演じさせ、自分は高見の見物か。惚れ惚れするな、ったく)
愚痴りながら、高槻は高子を抱えあげる。
(アイツはホテルで待ってると言ったな。「かわいそうに高槻さん、あの若さで」ともマルチが言ってたか)
頭の中に、ホテル周辺の地図は叩きこんである。コチを撒けて、かつホテルへ最短のルートとなると……?
「……上等だ」


ふと思う。俺ってこんなキャラだったか?
……まあ、この女を助けるのは脅迫されたからなのだが、「間に合わなかった」と女を見捨てて自分だけ逃げても良いのではないか?
328決死行 〜序〜 by RTO:02/03/17 20:57 ID:EpwOf6iR
(「あの若さで」どうなると言うのか……あとでたっぷり聞かせてもらうとするか)


高槻は駆け出した。
小雨の中、桑嶋高子と言う少女を抱えて、高槻は駆け出した。

(……報酬は体で払ってもらおうか、とでも言い含めれば面子も立つだろうしな……)


【高槻&高子 少年&マルチにそれぞれ分断 どちらも行き先はホテル】
【高子 ショックで意識がdj】

トクトクFTPが繋がらなくなり途方に暮れているRTOですこんばんわ。
今回はただ一言。                           「……許してくれ……」
329疾風食逃客:02/03/18 04:36 ID:Gh4dyymu
>>328
21日までメンテだそうなんで、それ以降は繋がるようですよ。

ずっと書こう書こうと思いつつネタがない……
しかも最近感想スレに感想をあげていない。
これはいかんなぁ。
330名無しさんだよもん:02/03/19 03:00 ID:gFY4uQQ6
メンテ
331死ぬ者と生きる者と(1):02/03/19 04:29 ID:bufpKzAo
 この二人とゾンビにどんな関係があるのだろうか。理緒は少し不安になった。
「あれ?」
 よく見ると、そのメモにはまだ続きがあるように見える。
 色が薄い上に、走り書きのような文字でとても見にくい。
「えーと……、失………敗……、これは作かな? って、し、失敗作ぅ?」

 月島拓也は戸惑っていた。
 ついさっき、拓也は二人に電波を飛ばしてみた。
 電波での命令は「イビルの足を舐めろ」というふざけたものだ。
 命令の内容はどうでもいいのだが、彼らには電波の影響が全く見られない。おかしい。

 ――と、イビルに転がされているデブが蹴ろうとしたイビルに対し大きく口を開ける。
 それを見、たまたま電波の効果が遅れていただけだったかと拓也は安心した。
「なんだこいつ。気色わりぃ」
 デブが口を開けたのでイビルは当たる寸前で足を止めた。

 その瞬間――
「え?」
 それは誰の発した声だっただろう。
 一瞬の内にデブの口が広がりイビルの足を飲み込んだ。
「ぐぅっ。ちくしょう!」
 状況を把握したイビルが背後に飛ぶ。が、既にイビルの体は右下半身の大部分が失われていた。
332死ぬ者と生きる者と(2):02/03/19 04:30 ID:bufpKzAo
「ひぃっ。な、何なのよあれ」
「Grotesqueネ」
 理緒・レミィが呻く。しかしそれも当然のことだ。
 デブの顔は膨張し横に広がり元の大きさの何十倍にもなっていた。
 顔の9割以上の部分を口が占めている。
 異常に長い唇がてらてらと光り、その上に不均一な歯がびっしりと生えていた。
 顔の面積に比して極端に小さい、元のままの大きさの目がイビルを見つめていた。
「キミ、ゆ、油断したんだな。お、女の子の足おいしいんだな。まだまだお腹空いてるんだな」
 変質した耳障りな声でわめく。
「うらやましいでござる。私も欲しいでござる」
 痩せ眼鏡の方もいつの間にか枷を外し、変形していた。
 こちらは縦に長い。蛇のような体に以前のままの人間の顔をくっつけている。
 グロテスクな体に、眼鏡をかけた人間のままの顔がアンバランスだ。

「イビル君!」
 翼を使ってなんとかバランスを取っているイビルに拓也が駆け寄ろうとする。
「来るな!」
 厳しい声でイビルが一喝した。拓也はびくりと足を止める。
「こいつはあたいが殺る。あんたらは逃げろ」
「しかし」
「うっせぇ! おめーら足手まといなんだよ。とっとと消えろ。あたいも後から行く」
 大量に血を流しながら、それでもイビルは強気だった。
「……分かった。英二さん、宮内さん、雛山さん。行こう」
333死ぬ者と生きる者と(3):02/03/19 04:31 ID:bufpKzAo
 拓也を先頭にして、英二・理緒・レミィと続く。
「イビルさんは大丈夫でしょうか?」
 走りながら、心細げな声で理緒が尋ねる。
「イビル君は悪魔らしいからな。大丈夫なんだろう」
 そんな事はこれっぽっちも思っていない。いくら悪魔とはいえあの怪我は致命傷に近いのではないか。
 そう考えながらも拓也は楽観的な事を口にしていた。
 
(電波が効かなかった……。あんな電波の効かない化け物がこの島にはウヨウヨしているのか?
瑠璃子が心配だ。瑠璃子は大丈夫だろうか。瑠璃子は瑠璃子瑠璃子僕はは瑠璃子を)
 
「何か来るネ!」
 レミィの声で拓也の妄想は遮られた。
 振り返ると通路の奥の方からずるずると、なにやら長いものが這って来ている。
 もう一人の痩せていた眼鏡の奴だろうか。イビルはどうしたのだろう。
 拓也は試しに電波を飛ばす。……何の変化も無い。やはり奴らには電波は効かないようだ。
(瑠璃子が心配だ。瑠璃子を助けに行かないと。瑠璃子、絶対に僕がが助けてあげるからね)

「急いだほうがいいね。アレ、意外と速いよ」
 こんな状況にも関わらず、いたって落ちついた声で英二が注意を促す。
 実際、少しづつ化物との距離が詰まってきていた。
334死ぬ者と生きる者と(4):02/03/19 04:34 ID:bufpKzAo
 イビルは拓也達が視界から消えるのを確認すると、食いちぎられた部位を自らの炎で焼く。
 肉の焦げる嫌な匂いが広がり、やがて流れつづけていた血が止まった。
 だが、腰にまで及んだ傷は致命傷に近い。どこまでやれるか。
「よくもやってくれたな。おめーら、覚悟しやがれ!」
 イビルは魔界から炎を召喚し、目の前の二人に放つ。
「あ、熱いんだな。君、ひどい事するんだな。許さないんだな」
 あまり効果が無い。こいつらは普通の怪物とは違うようだ。
「あちらの婦女子の方が良いでござる」
 眼鏡がそう言って、理緒達を追いかけようとする。
「逃がすかよ! 行けっ、槍よ、あいつを貫け」
 出口に向かう眼鏡の化物に、虚空から出現した槍が突き刺さった。
 しかし、トカゲの尻尾切りのように、槍の刺さった部分を切り捨て眼鏡は逃げていった。
「くそっ」

「隙あり、なんだな」
 側面に回ったデブの化物が、眼鏡に注意を逸らしたイビルに喰らいつこうとする。
「ばーか、わざとだよ。死ね」
 イビルは大口を開けた化物の口に自ら腕を突っ込み、そこに直接魔界の炎を召喚、解き放った。
「ひぃっ。お、おたす」
 叫び終わる間もなくデブは内部を焼き尽くされ、ぶすぶすと煙をあげながら倒れた。
「なんとかぶち殺せたか。でも……駄目だ、もう体が動かねえ」
 イビルの右手から肩までがごっそりと失くなっていた。
 自分はもう死ぬ。それは間違いない。だが、まだ眼鏡の化物が残っている。
「あいつらはもう脱出したか? 信じるしかないな……よし!」
 残された全魔力と引き換えにあの眼鏡の化物を潰す。イビルは決心した。
(エビル、後は任せた。ルミラ様を頼む)
 そして、イビルは全ての魔力を解放した。イビルを中心にして魔界の炎が渦になって吹き上がる。
 実験用の引火性・爆発性物質に次々と火がついていき、炎と爆風は地下施設全体にまで広がっていった。
335死ぬ者と生きる者と(5):02/03/19 04:35 ID:bufpKzAo
 このまま行けばギリギリで追いつかれる。英二はそう判断した。
「いやさ。俺も時々、別に死んでもいいかな〜なんて思ったりする訳よ。
昔の偉人達でも、死に取り付かれて自殺した奴って多いだろ? いや、別に俺が偉人って訳じゃないぜ」 
 訳の分からない事を突然英二は喋り出す。
「でも、俺が死んだら妹が泣くんだよね。あいつお兄ちゃん子だからなあ。はは、自分で言うと照れるね。
由綺もまだまだこれからだし、俺が必要だろう。いや、由綺が必要なのは俺の方かな?」
 何を言ってるんだ? 理緒とレミィに戸惑いが広がる。
「だからさ、俺まだ死ねないわ」

 言うや否や英二はスッと横に逸れ、走る速度を落とす。
 何を? と疑問を浮かべる暇も無く。
 出された英二の足につまづいて理緒は転んだ。そして突然倒れた理緒に引っかかりレミィも転んだ。
「うう……痛たた」
「な、何するネ!」
「そんな事言ってる暇無いんじゃない?」
 そう言って、前を走る英二が二人の背後を指差す。いつのまにか眼鏡の化物はかなり接近していた。
 早く、早く逃げないと。
 
 チリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリ。
「あれ?」
 逃げなければならないのに、何故か理緒は化物の方へと歩いて行く。 
「か、体が、勝手に……」
「わ、私もネ……」
 化物がどんどん迫ってくる。
「つ、月島さん、助けてください! 助けて、助けて、助けてよぉ!」
 これで瑠璃子を助けに行けそうだ。出口に向かって走る拓也の顔には笑みが浮かんでいた。
 化物は、二人の間近にまで迫っている。
「あはっ、やっぱり私って不幸だ。良太、ごめんね」
「Fuck you! Go to hell!」
 化物が二人に遅いかかろうとした時、化物もろとも炎の風が二人を吹き飛ばした。
336死ぬ者と生きる者と(6):02/03/19 04:38 ID:bufpKzAo
「はは、Go to hell! だってさ。言われなくても、なあ?」
 英二はへらへらと笑う。

 そして 英二と拓也が外にたどり着いた直後、辺りに爆発音が鳴り響いた。

 英二が地下施設の中を慎重に覗く。
「うわ、酷いな。こりゃあ中はもう駄目だ。
危ない危ない、危機一発ってやつか。……イビル君も死んだか? いい女だったのにな。残念」
「……イビル君が女だって、気付いてたんですか?」
「足を食いちぎられてた時にね。さすがに気付くよ。……にしても残念だなあ」
 全く残念そうでない声で、英二は残念がる。
 
 ぽつり。水滴が英二の眼鏡を濡らした。
「雨か……。これで火事にはならなさそうだ。ラッキーだな、俺達。さて、理奈と由綺を探しに行くか」
「そうですね。僕も瑠璃子を助けに行かないと」


【イビル・理緒・レミィ 死亡】 【雨】
337名無しさんだよもん:02/03/19 04:40 ID:bufpKzAo
(1)と(2)の間のみ1行空け。他は3行空けでお願いします。
長すぎでスマソ。
「とりあえず、縄を解くか…」
 一通り縦&横で遊んでやっとイビルは縄を解いた。
「恩にきるでござる」
「そうだ、恩にきれ〜」
 と言って、イビルはガハハと大きく笑う。
「じゃあ僕たちの自己紹介をするん…」
 とデブが言った瞬間、英二が手でその二人組みを制した。
 英二が細身貧相の方を指差し。
「縦」
 そしてデブを指差し。
「横」
「そんな名前じゃないでござるよ」
 縦の反論、たが拓也がクスクス笑い。
「いいよ、それで面倒臭いから」
 とうとう笑いが堪えなくなりイビルとレミィの過激派コンビが。
「ぎゃーはは!!縦&横だって!」
「言葉通りの『名は縦を表す』ネ!!」
「それを言うなら『名は体を表す』だよ!!ひゃ〜〜はは!!たまんねー!」
 理緒も後ろを向きつつ。
「そ…そんな失礼ですよ、初対面の人に」
 でもしっかり肩は震えてたりする。
「ぷぷ…そろそろ他の部屋を調べないか?」
「OH!そうネ!」
 英二の提案に他の四人は呼応し、ぞろぞろと部屋を出ていこうとする。
「だから…」
 横が間違いを正そうとするが。
「聞こえねー」
 イビルが反論をシャットアウトした。
 仕方なく縦&横はその五人組みについていくことにした。
 他の部屋も縦&横が捕らわれてた部屋と同じ様にガランとしていた。
 しかし、一番奥の部屋は何かが違った。
 まず薬品の匂いが間違いなくこの部屋からだ、それに奥に進むにつれ拓也とエビルが不快感を訴えはじめたのだ。
「この部屋が最期ネ…」
 レミィがドアに耳をあて、部屋の中の気配を探る。
「間違いない…このドアの向こうに何かあるネ…」
 理緒もレミィと一緒に耳をあてた。
「水の…音…?機械の音もしてる」
 レミィが英二や拓也に目配りした。
 二人とも頷きレミィは警戒しつつドアを空けた。
 その中の光景に驚愕しない者はいないだろう…。
 緑色の液体に満たした棺型の透明な水槽の中には、一体の人間だったと思われる生物。
 上半身は歳はまだ10代の日本人と思われる女性、だが下半身は違っていた。
 蛇だったのだ、大蛇を思わせるような巨大な蛇。
 その物体が棺の中で眠っていた。 
 その傍らには一人の科学者と思われる白衣の死体、その顔は苦悶の表情をしていた。
「これは…ラミア…」
 イビルは表情曇らせつつそのラミアの水槽の液体を調べた。
「魂の移植…。それも…あの馬鹿天使ぃ…とんでもないことしやがって!!」
 怒るイビルを諌めつつ英二が。
「もう一つ水槽あるよ、それも開いた奴が…」
 縦が死体を調べた。
「この死体は…腕の傷の毒による、毒殺でござるな…」
「つまり、これと同じ奴がもう一体いるのか…」
 拓也が心底嫌そうな顔をした…。
340R1200:02/03/19 09:31 ID:0G1a5kjM
やっぱ、あの時書き込めばよかった…。
アナザーでいいです…。(;_;)
341名無しさんだよもん:02/03/19 13:42 ID:ikaP3NyX
メンテage
342名無しさんだよもん:02/03/19 13:48 ID:a1kr9LVK
(T皿T)
343闘う者、戸惑う者(1):02/03/19 20:51 ID:7uaNIsN6
「うっ」
リアンは目を覚ました。
「あ、光岡さんリアンが目を覚ましました」
「そうか」
光岡はそう言うと一度ジープを止めた。
「浩平さん、姉さんはどこですか!」
リアンは起きてすぐにスフィーのことを聞いてきた。
「それは…」
浩平はリアンがスライムに取り込まれてから光岡が助けてくれたこと、リアンが気絶していたこと、
そしてスフィーが死んでしまったことを話した。
「………」
浩平が話している間、リアンは一言も喋らなかった。
そして浩平が喋り終わってからも、リアンはずっと黙ったまま喋ろうとしなかった。
「………」
どれくらい沈黙が続いただろう、光岡がジープを再び動かそうとした時。
「姉さんを見せてください」
とリアンがいった。
「わかった」
光岡は意外だった。
さっきまでのこの少女を見る限りでは、この少女の亡骸は見せないほうがいいと思っていたがこの少
女から見せてくれといったのだ。
光岡はそんなことを思いながらスフィーの亡骸をリアンに見せた。
「姉さん…」
リアンはそういうともう動かない姉にしがみついて泣き始めた。
344闘う者、戸惑う者(2):02/03/19 20:53 ID:7uaNIsN6
しばらくしてリアンが泣きやみ光岡達の方を向いていった。
「姉さんを埋葬したいのですが手伝ってくれますか?」
光岡達は無言で頷くと穴を掘り始めた。
ようやくスフィーが入れるくらいの穴を作ると光岡はスフィーを抱えて穴に入れた。
「埋めるぞ」
「待って下さい」
リアンはそういうとスフィーの方に歩み寄り
「姉さん、さようなら…」
と言いスフィーの腕から彼女がしていた腕輪を取り自分の腕にはめた。
「…光岡さんお願いします」
「わかった」
と光岡はいいスフィーを埋めた。
そしてジープは再び走り始めた。
「みなさん、頼みたいことがあるのですが」
「何だ」
「どうしても探して欲しい人がいるのですが」
「誰だ?」
「健太郎さんといいます。その人には時間がありません」
「どういうことだ?」
「それは…」
リアンは、健太郎が一度死んでしまっていてスフィーの魔法で生きかえったこと、常に魔力の供給を
受けなきゃ死んでしまうこと、その魔力を供給するには今自分がはめている腕輪が必要なことを話し
た。
345闘う者、戸惑う者(3):02/03/19 20:54 ID:7uaNIsN6
「お願いします。」
「その健太郎って人を探そう光岡さん」
「私も賛成です」
「…わかった。」
「ありがとうございます」
リアンは三人に礼を言い光岡の方を向いた。
「それと光岡さん…」
「何だ?」
「私にも武器を下さい」


「何!」
光岡は驚きを隠せなかった。
それは他の二人も一緒だった。
三人ともまだ知り合って間もないけど、この少女はモンスターと闘うことなどできないと思っていた。
「私も戦います」
リアンにはさっきの浩平と同様、モンスターと闘うことを決意した顔だった。
「…いいだろう、浩平君、彼女に武器を渡してくれ」
「はい」
と浩平は答えるとリアンに銃を渡した。
モンスターと闘うことを決意した浩平とリアン、その二人を見て瑞佳は戸惑っていた。
【リアン、銃を装備。モンスターとの徹底交戦を決意】
【瑞佳は一人、戸惑う】
【リアン御一行、健太郎を探しに行く】
346Frei:02/03/19 20:57 ID:7uaNIsN6
343と344の行間二行開けでお願いします。
RTO氏仕事が忙しいようですが生きてますか?
347ほんの少しの休息:02/03/20 03:23 ID:1rHLDAfV

 ジープのエンジンが急に止まった。
 エンジントラブルかまたはガス欠かと心配したのだけれど、キーをまたひねればすぐにエンジンはかかった。
 原因はただのエンストのようだったので、ひとまずは安心だった。
「光岡さんでも、エンストするんですね」
 浩平が訊くと、光岡はそれに応えた。
「…文明の機器はあまり使い慣れていないからな。多少は仕方のないことだ。…さて、それではまたいくか」
「…あの」
 瑞佳か小さく震えていた。
「トイ…レ…なんですけど…」
「そうか、トイレか…」
 そう言ってやれやれといったように光岡は頭をかいてジープから降り、辺りをぐるりと見回した。
「…大丈夫のようだ、何も感じない。その辺りの草むらでするといい」
 瑞佳は顔を赤らめながらジープを降りて、草むらへと歩いてゆく。
「ついていってあげたほうがいいんじゃないですか?」
 リアンの声に浩平は応える。
「…多分、大丈夫だろ?」
「でも…」
 ごてんと、瑞佳は倒れた。
「足取りがおかしかったですから…」
「わりぃ、んじゃちょっといってきます」
「あぁ、いってやれ」
 光岡の声に見送られ、浩平は長森の元へと向かった。
348ほんの少しの休息:02/03/20 03:24 ID:1rHLDAfV

「なぁ、どうしたってんだ、長森?」
「そこで、何かが…動いたの…」
 脅えた様子で長森はそう言った。
 そこをそっと浩平は覗きにいく。
「駄目だよ、危ないよ、浩平」
「大丈夫だって、光岡さんがいないっていったんだから」
 草むらを両手でかきわける。
 その瞬間だった、小さな兎が草むらから飛び出したのだった。
「ほら、長森。うさぎだったぞ、大丈夫だ」
「うん…。あ、浩平。そこで待ってて…」
「あぁ、待ってるよ」
「絶対、覗いたら駄目だからね」
「判ってるって」
 長森が草陰に隠れて、数分後。
「おまたせ…」
「おう、んじゃ帰るか」
 浩平は踵を返す。
「あ、ちょっと待って、浩平」
「ん…。どうしたんだ、長森?」
「いいから、そのままでいて…」
349ほんの少しの休息:02/03/20 03:25 ID:1rHLDAfV

 浩平が後ろを向くと同時に、そっと浩平のTシャツを後ろから瑞佳は掴む。
 スライムとの一戦でTシャツは少し破れ、肌からは微かに出血していた。
 その傷を撫でて、瑞佳は、
「…わたし考えてたの。ずっと…。あのね…。わたしはは戦いたくない。そして、浩平にも戦って欲しくない」
 思っていたことをすべて、浩平の背中に向かって言った。
「…無理言って、ごめん。わかってるんだよ、浩平の気持ちは。わかってるんだよ…。なんで浩平が戦うのかとか、判っているつもり。でも、でも、わたしは…」
 そのまま草むらに瑞佳は崩れ落ちるが、それを保護するように浩平はその体で瑞佳を受け止めた。
「長森…」
 瑞佳は涙を流して声を出しながら浩平の体に正面から抱きつき、その体にそっと頬を寄せる。
「わたし…、浩平が傷つくところを、見たくないんだよ…。そして、もう、誰も死ぬところも見たくなんか…ないっ…」
 こぼれ落ちる涙が浩平の肩を打った。
 …俺はどうすればいいんだ?
 長森の気持ちは判る、だけど…。
「大丈夫、俺は絶対死なない…」
 気休めだと判っているけど、浩平は自分に誓うように、そう言った。
武器を渡された時からずっと震える体を抑えながら、今にも泣きそうになっている自分の心を押さえつけながら。
350ほんの少しの休息:02/03/20 03:28 ID:1rHLDAfV
「そろそろいくぞ」
 光岡がかけたのだろう、ジープのエンジンの音が浩平と瑞佳の耳に届いた。
「はい…わかりました。だけど、あと少しだけ時間を下さい」
「時は急ぐ。できるだけ早急にな」
「はいっ」
 そう答えて浩平は立ち上がり、草むらに座り込んでいる長森の手を引いて長森も立たせた。
「なぁ…長森」
「なに…浩平?」
 長森の体を浩平は抱きしめる。
「大丈夫だから、俺は絶対大丈夫だから。俺は絶対死なない。そして、お前を絶対死なせはしない。生きて、生きてここから出るんだ…絶対っ」
「…うんっ」

 ジープの中で待つ光岡とリアンのところまで浩平と瑞佳は駆け寄る。 
「光岡さん、リアン、申し訳ありません」
 浩平が頭を下げると同じく、瑞佳も一緒に頭を下げた。
「ははは、まるで夫婦だな」
 光岡は声を出して、笑った。
 リアンも小さくクスリと笑う。
 スフィーが死んでからの初めて笑顔だった。
 浩平が先にジープの助手席へと乗り込むと光岡が小さな声で囁いた。
「戦いは、できるだけ俺一人でやる…。あんまり彼女を心配させるなよ」
「聞いてたんですか?」
「あぁ、すべて筒抜けだ。常人よりも俺は少し耳も目もいいものでな。それよりだ、なんであそこでキスをしない。普通ならするものだろ?」
「あの…それは…ですね…」
「はっはっは。冗談はさておき、いくぞ」
 その言葉と同時に瑞佳も左の後部座席へと座る。
「とりあえずは健太郎くんのジープの音はなんとなくだが記憶にはある。それを頼りに走ってみることにしよう」
 ジープは走り出す。
351ほんの少しの休息:02/03/20 03:28 ID:1rHLDAfV
「…あのですね、光岡さん」
「なんだ?」
「エンストなんですけど…」
 運転席は入れ替わり、浩平が運転席へと座る。
「さぁ、いくぞ。目指すは健太郎くんのところだ!」
 気合いの入った声でリアンは頷く。続いて、長森も小さく頷く。
「で、行き先どっちですか、光岡さん?」
「…多分、あっちだと思うぞ」
 指さすのは西の方向。
 ジープは動き出す、西に向かって、一刻も早く、健太郎を捜す為に。
「多分だからな。間違っていても責任はとらんぞ、わかっているな?」
「…はい」

【運転交代 運転席 浩平 助手席 光岡 後部座席左 長森 後部座席右 リアン】
【瑞佳の戸惑い少し解消?】
【リアン御一行、健太郎を探しにとりあえず西へ】
352迫り来る狩人:02/03/22 00:57 ID:jx/mqk5h

『それ』に気づいたのは聖一人。
 その為、突然メスを構える彼女の行動は、周りから見れば奇妙でしかなかったでろう。
「聖さん?………」
 様子を変に思った美凪の問いかけにも答えず、聖はやだ黙ってある方向を睨んでいる。
 その圧迫感に、誰もが口をつぐみ、話せないでいた。

 その沈黙を破るのは、他ならぬ聖自身、
「………佐藤君、頼みがある」
 顔を動かさずに、聖が口を開く。
「え、な、なんですか聖さん?」
 雅史自身も多分に漏れず圧迫感を感じていたクチだが、何とか声を出して聞き返した。
「ここから、佳乃と遠野さんを連れて逃げてくれ。この場所は、危険だ……」
 その言葉に、雅史はよく解らない、と言った表情で答えた。
「何を言ってるんですか聖さん?何処にも何も、いやしないじゃないですか?」
「まだ、こっちの隙を窺ってるだけだ。じきにこっちに来る、そうなる前にあの二人と逃げるんだ。こ こは、私が食い止める」
 自分の言うことを聞こうとしない雅史への苛立ちも混ざり、やや語気を荒めながら聖が言う。
「心配し過ぎですよ。さっきから僕ら以外の声なんて一度も聞こえてないし、モンスター一匹見てない じゃないですか、ここは安全ですよ。それに……」
 雅史は聖の言葉を信じていないのか、芝居がかった口調で、雅史は続ける。
「もし仮に化物が現れたらこの僕が皆さんを守りますよ」
「……頼む、私を信じてここは二人と一緒に行ってくれ…」
 大声で怒鳴りつけたいのをぐっと堪え、聖が頼み込む。
「だから安心してくださいって、この僕が化物ごとき……」 

『グエエエエエエエエッ!』
 
 まさに、一瞬。
 雅史の言葉が引き金になったかのように、頭上から黒い影が四人に迫ってきた。
353迫り来る狩人:02/03/22 00:58 ID:jx/mqk5h
(三行開け)
「佳乃に、手を出すなぁぁぁ!」
 突然現れた黒い影に対し、既に懐から抜き出されていたメスの束を聖が投げ付ける。
 メスはそのまま銀の残像を描き、黒い影の体に突き刺さる。
『グェェッ!』
 予想外の反撃にあい、着地もできず化物は頭から地面に叩きつけられた。
 
「や、やった!」
「まだだ!まだ死んでないぞ」
 難を逃れ喜ぶ雅史に、聖の緊張した言葉が飛ぶ。
 その言葉通り、血を噴き出しながらも、化物はゆっくりと立ち上がる。
 皮をむいたゴリラとでも形容するのが正しいのか、その化け物は、体に刺さったメスを気にすること も無く、その獰猛な瞳を炯々と輝かせている。
「だから逃げろと言ったんだ!私一人ならともかく、今は女の子が二人もいるんだぞ佐藤君!
 二人に何かあったらどう責任を取るつもりだ!?」
「ぼ、僕は悪くない、だってこんなのがいるなんて普通は誰も考えないし、何よりこういうのは僕は得 意じゃないんだ、ああ、そうだ!僕は悪くない!悪くない!悪くなんか……」
「二人ともそんなこと言ってる場合じゃないよ!前!前!」

 佳乃の言う通り血を撒き散らしながら、化物が両手にある爪を振り上げながら聖に襲い掛かる。
 それを見た聖は、素早くメスを抜き出して構え、迎え撃つ。
 交差する、二つの体。
 お互いの位置が逆になった時。
 聖の首には、薄い傷が、
 化物は、片目を潰されていた。 

354迫り来る狩人:02/03/22 00:59 ID:jx/mqk5h
「ふむ……素早い動きと目標をの首を一発で落とす爪……まさに『ハンター』だな。だが、
 この私相手には役不足だ」
 聖の視線の先には、片目を潰されてうめくハンター。
「さて、佳乃を傷付けようとした罪は深いぞ。まずは手足を…」
「お姉ちゃん!助けてっ!」
 聖がその言葉のした方を振り向くと、
 いつの間にか現れた新手のハンターに川辺の淵に追い込まれている佳乃と美凪と、
 この場を一人、全速力で逃げ出している雅史の姿があった。
(三行開け)
「くそっ!」
 さすがサッカー部と言うべきか、もう雅史との距離は豆粒ほどになっている。
 それより今は二人を助けるほうが先、と判断した聖は、一気にハンターとの距離を詰める。
 だが、間に合わない。
 飛び掛るハンター、狙いは――美凪。
 
 だが、その鋭利な爪が美凪にたどり着く前に、
「遠野さん!危ない!」
 佳乃が、美凪を突き飛ばしていた。 
 そして、一瞬遅く振り下ろされたハンターの爪に切り裂かれたのは、当然、佳乃だった。
 その瞬間、咲き誇る赤。
 傷口からの血が彼女の服を赤く染め、激痛をもたらす。
「ぐううううっ!」
 あまりの痛みにバランスを崩し、前によろける佳乃。
 その目前にあるのは、数時間前からの降雨で水量が増えている川。
「霧島さん!」
 そこでようやく、美凪が佳乃に手を伸ばすが、既に遅く。
「遠野さん…お姉ちゃん…往人クン…バイバイ…」
 投げ出される、体。
 佳乃は、川の中に消えていった。
355へタレ書き手だよもん:02/03/22 01:04 ID:jx/mqk5h
【霧島佳乃 水没 生死不明】
【霧島聖 遠野美凪 ハンターと戦闘中】
【佐藤雅史 逃亡】
 本編はここまでです。
 ハンター=バイオハザードに出てくる人間の体をベースに作られたモンスター
 話の中通り人間離れした動きと鋭利な爪で攻撃してきます。
 
 以上、迫りくる狩人でした。
 相変わらずへタレな内容ですが少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。 
 
356名無しさんだよもん:02/03/22 11:31 ID:wwvkPHps
雅史…(;´Д`)
357独り歩き:02/03/22 17:06 ID:ZqvDeISR
降り続く雨の中を青年は歩いている。
さっきまで走っていたせいか、靴やズボンに多くの泥が点々とつき、
まるでそれが模様のようにも見えた。
「独りになれた……」
その青年、佐藤雅史はつぶやく。
彼はずっと単独行動をしたかった。
酷いことを言ったり、臆病なまねも下手に信頼感を与えず、単独行動をしやすく
するためのものだった。
そして、チャンスは訪れる。
ついさっきの戦闘で、雅史は逃げ出すことに成功したのだ。
「これでやっと探しやすくなる」
そう言うと、雅史は足を止め、くるっと後ろに向き直り、叢の方を見る。
別段、叢に変わった様子はないが、その叢に隠れ、自分を狙っているモノを
雅史は知っている。
「走っている時に、追いかけてくるのは見えた。出てきなよ」
雅史がちょっと大声気味で言うと、叢が「ガサ」っと動き、それと同時に
大きな物体が雅史めがけて、一直線に突っ込んできた。
その物体は間違いなく、さっきほどの対戦相手の「ハンター」だった。
ハンターは一度狙った獲物を逃がすようなヘマはしない。
すると、ハンターは接近するや否や、その自慢の爪を雅史に突き出す。
しかし、雅史はよんでいたのか、前かがみになってそれを避ける。
「ワンパターンだなぁ」
358独り歩き:02/03/22 17:09 ID:ZqvDeISR
雅史はそう言うと、ハンターの左足に素早くローキックを打つ。
ローキックを打たれたハンターはあまりの衝撃と痛みにその場に膝をついて
しまった。
雅史はそのチャンスを見逃さない、すかさずハンターの眉間にミドルキックを打つ。
ミドルキックをまともにくらったハンターはその威力の強さにその場で
気絶してしまった。
「サッカーボールよりヤワなんじゃない?」
雅史は馬鹿にしたように言うと、近くにあった大きめの石を持ってきて、
一呼吸おいた後に、ハンターの頭めがけてその石を思いっきり振り降ろした。
鈍い音がすると、ハンターの頭から血らしきものがにじみ出る。
それでも、雅史は叩きつづけていた。
その行動はハンターの頭蓋骨がばらばらになるまで続いた。
雅史はハンターの頭蓋骨がばらばらになったのを確認すると、石をおいて、
手でハンターの目をえぐり出し、さらにはあごを踏み砕き、ハンターの爪を使って
ハンターの腹を切り開き、臓物を口でひきちぎリ始めた。
その姿はあまりにも異常で残酷な行動としか言いようがなかった。
そんな中、雅史は思う。
僕は犬や猫のような動物を躊躇なく殺せるのか?
答は否。躊躇する。
例えそれが化物だとしても、虫などとは違い、動物を殺すのには躊躇してしまう。
そして、この島ではその一瞬のできごとが命取りになりかねないのだ。
だったら、どうすればいい?
だったら、自分が最も残酷だと思う殺し方を経験すればいい。
そうすれば、その罪の重さで他の殺し方が軽く思える。
あの時の殺し方に比べればと思えば、躊躇することなんかなくなる。
決して狂っているわけではない。
これが僕なりの化物に対する殺しの慣れ方……。
359独り歩き:02/03/22 17:10 ID:ZqvDeISR
雨はいつのまにか上がっていた。
雅史はばらばらに解体されたハンターを背に歩き出す。
彼が歩く先には、ずっと友達でいてくれた幼馴染が待ている。
「浩之……あかりちゃん……君達は絶対に死なせない」
月明かりが雨の雫に反射して、とても明るい夜だった。

【佐藤雅史 浩之&あかり探しを開始】
360まかろー:02/03/22 17:14 ID:ZqvDeISR
358と359の間2行開けお願いします。

新入りです。へっぽこだけどがんばりますので、どうぞよろしく。
地の文にスペースを忘れてました。すいません、へっぽこで。
361戦慄の傷痕:02/03/22 21:01 ID:3OlK/wif
「うう、ううう」
 誰かがうめくような声を聞いて、太田香奈子は目を覚ました。
「うう……ん、うう」
 はあ、はあ という荒い息づかいを感じる。自分の近くのようだが、暗闇に目が慣れるのに少し時間がかかった。
 それからのことだ。声が、自分と共にソファで眠っていた藍田瑞穂の物だと分かったのは。

「瑞穂ちゃん……?」
 そっと話しかけてみる。返事はない。耳に届いていないのか、それとも返事が出来ないのか。
 軽く揺すってみて、瑞穂が全身に汗をかいているのが分かった。
 風邪……だろうか?なんにせよ、すぐに水分を採らせなければ。
 そう考えて、香奈子は立ちあがり洗面所へと向かった。

 洗面所。
 カップの中をを水で満たし、香奈子はすばやく踵を返した。
「あ」
 そこで足を止め、部屋の中に引き返す。水を出しっぱなしにしていたのだ。
 蛇口をひねって、流れ出ていた水を止めた。香奈子は、そこで一息ついた。
(私が焦ってどうするのよ……今は、瑞穂ちゃんを落ちつかせるのが先)
 ぴしゃぴしゃと頬を叩いて、顔を上げる。そこには、自分の顔がそこにあった。

 鏡に映った自分の顔。香奈子は、その顔が好きではなかった。
 理由は、そう、右頬のあたりに残る、一条の傷痕。
 いつのまにつけたのか覚えていない、ただ、その傷痕を見ていると胸の奥から沸沸とわきあがる感情がある。
 憎しみと、哀しみ。
 そして、そんな感情を覚える自分への戸惑い。
「……」
 自然と、香奈子の表情は険しいものになっていく。
 いくつもの感情が混ざり合ったまなざしで、香奈子は鏡の中の自分を睨みつけていた。
362戦慄の傷痕:02/03/22 21:01 ID:3OlK/wif
「太田さん、か?」
 突然の背後からの声に、反射的に右手で傷痕を隠し、香奈子は後ろを振り向いた。
 洗面所の入り口には、その声の主――――保科智子が立っていた。
「カラスにやられた傷は大丈夫か?」
 夕方頃に一団となってこの施設を襲ったカラスにやられた傷も、腕に二つほどばんそうこうを貼るだけの怪我にとどまっていた。
「ええ、ごめんなさい心配かけて……それで、保科さんはどうして?」
「うん、ちょっと、な……気になるというか、危ないと言うか……太田さんこそ、そうして?」
「瑞穂ちゃんの様子がおかしくて……汗を掻いてるみたいだから、水を」
そこまで聞くと、智子の顔から笑みが消えた。

「水を飲ませ……保科さん?」
 説明するのももどかしく、智子はソファに足早に向かう。
 なんとかあゆを寝かしつけ、ひととおりの人物は見てまわった……あとは、あの二人だけだったのだ。
(あの様子なら、太田さんは大丈夫……藍田さんもただの風邪ならええんや……)
 智子は瑞穂の眠っているソファの傍らに腰掛けた。
 はぁはぁという荒い息遣いの中に、時折「水……」という言葉が混じる。
 祈るような気持ちで、智子は瑞穂の首筋をのぞきこんだ。


「保科さん……なにこれ、どういうこと?」
 背後に立つ香奈子も、恐らくは智子と同じ物を見ているであろう。
 智子が先程あゆの首に見たものと同じ「烙印」を――――
363by RTO:02/03/22 21:03 ID:3OlK/wif
【吸血鬼の被害者 瑞穂と判明】

なにか、なにかを忘れているような気がする…….
メンテが終わったトクトクは激烈に重くなっていてさらに鬱。
364正論:02/03/23 02:49 ID:V+652MxF
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ――」
 ティラノサウルスが見えなくなったのを確認すると、少年は足をとめた。
「あの、大丈夫ですか?」
「うん。なんとか……」
 心配そうにたずねてくるマルチに笑顔でそう答えると、少年はその場に座り込んでしまった。
「逃げ切れたかな……」
「おそらくは……でも、少年さんの顔色が……」
「はは。あの力は結構体力を使うんだ。連続で使ったから少し疲れただけだから心配はいらないよ」
「そうですか……あ、そうだ。高槻さん達は……」
「大丈夫。見た目の通り根の悪い奴だけど、プライドだけは高いから。それに彼の実力なら君も見ただろ?」
「はい……」
 少年の問いかけにこくりと頷く。
「彼はしっかりと高子さんを守ってくれるよ」
 少年の言葉を聞いても、マルチから不安は消えなかった。
 高槻の人格や実力を信用していないわけではない。
 あんな恐ろしい化け物がそこら中をうろつき回っているこの島だ。
 もしかしたら、ホテルにたどりつく前に……
「君は他人のことばかり考えているんだね」
「……そう、ですか?」
 少年の問いかけに我に返り、マルチは答える。
「うん。高槻達のことよりも今は君の方が心配だよ、僕は」
「そんな……私なんかを心配していただかなくても……」
 落ち込んでいるからだろうか。
 いつもならはわはわ言いながら大慌てで叫んでそうなものだが、今回はそのまま俯いてしまった。
「私は、あの時ただただパニックになっているだけで何もできませんでした」
 ゆっくりと呟く。
365正論:02/03/23 02:49 ID:V+652MxF
「私には何もできないから、だから、誰よりも冷静になって皆さんのお邪魔をしないようにしなければならなかったのに」
「そんなことはないよ。あの状況だし、慣れてない人は慌てるのが普通さ」
「いいえ。人のお役に立つのが私の仕事です。それを果たせないばかりか、私のせいで月代さんは……」
「あれは仕方が無かった。君が悪かったんじゃないさ」
「でも私がしっかりしていれば、もしかしたら……」
「現実とはいつも過酷なものだよ。過去をずっと引きずっていたら、これからやってくる現実に押しつぶされてしまう」
 少年はずっと笑顔を崩さず、優しい声で語り続ける。
 そのおかげか、マルチは少しずつ落ち着きを取り戻してきたようだ。
「そう、でしょうか……」
「そうさ」
 少年はゆっくり立ち上がると、尻をはたいて土を落とした。
 体力が戻ってないのか、顔色はまだ優れていない。
「でも捨てちゃだめだよ。そこから何かを学ぶんだ。幸い僕らには次がある。次にあの時の経験を生かせばいい」
「経験、ですか?」
「あの羽根の生えたモンスターの習性とか、どういう行動が危険かとか。この近くに恐竜が住んでいるらしいとか。
 色々と学ぶべきポイントはあったはずだよ」
「……」
 マルチは、どう答えていいのかわからないという風に少年から目をそらす。
 おそらく言っていることは間違ってはいないだろう。
 でも……
「今までそういう環境にいなかったんだから、すぐに割り切れなくてもいいと思うよ」
「は、はい……」
「さあ、そろそろ出発しよう。高槻より到着が遅かったら大変なことになる」
 少年は苦笑しながらゆっくりと歩きだした。
「あ……ま、待ってください!」
 その一瞬後に我に返り、マルチはとてとてと少年の後を追いかけた。

「ああは言ったけど、やっぱり簡単に割り切れるものじゃないや」
 滲む空を見上げながら、少年はポツリと呟いた。
366疾風食逃客:02/03/23 02:50 ID:V+652MxF
【少年・マルチ ホテルへ向けて出発】

>>364-365
久しぶりに書いてみました。
少年&マルチの続きです。
偉そうにヘタレた説教たれてしまいました(^^;

>RTOさん
レス間は開けなくて大丈夫です。
367:02/03/23 23:17 ID:1xKIsukl
「ちっつくしょぉぉぉぉっ!」
 由宇の埋葬を終えた途端。和樹が怒号と共に近くにあった木に拳を 叩きつける。
「ま、まいシスター、黙っていようと思ったが今後のためにも聞いておく、猪名川由宇はなぜ死んだ? 一体お前達に何があったんだ?」
 激昂している和樹に事情を聞くのは無理と判断した大志は、自分の近くにいた瑞樹に話を聞いた。
「そうです、私達はともかく……あの二人は納得しないでしょうし」
 と言って南は舞と佐祐理に目をやる。
「うん、実はね……」
 そう言って瑞樹はゆっくりと語り始める。
 洋館で起こった。一つの悲劇を……。


「ほう、あの猪名川由宇が……」
 おおよその事情を聞いた大志と南が、和樹に目をやる。
「うん、それをアイツが自分のせいにしちゃって……」「『しちゃって』てなんだよ!どう考えたって俺のせいじゃないか!俺が、俺がもう少し常日頃から あいつと分かり合えていれば…俺がもっとあいつを理解してやれば…」
「調子に乗り過ぎ」
 その途端、ぶん、という風を切る音。
 舞の持っている剣の鞘が、和樹の頭に見事にヒットした。

「痛ってぇ!何だよてめえ!何で殴るんだよ!」
 突然の激痛に頭を抱えながらも、舞に詰め寄る和樹。
「殴らないと解んないと思ったから……」
 そこにしれっとした、舞の一言。
368:02/03/23 23:18 ID:1xKIsukl
「舞、暴力は行けませんよ〜、千堂さんだって人間なんですから、ちゃんと話せば解りますよ」
 こちらも可愛らしい声に反して手厳しいことを言う者が一人。
「な、何を…」
 怒りのあまり声が出ないでいる和樹に対し、舞は、
「貴方は、自分一人で何でも解決できると思っているの?
 貴方は、そんなに簡単に他人が自分を全部理解できると思っているの?
 そんなに簡単に上手く行くわけ、無い
 だから……」
 静かに、断言する。
「だから……なんだよ?」
 苛立ちげな表情を見せる和樹に対し、舞は答える。
「……今ある絆を、大事にして。私が言いたいことは、それだけ」
 それだけ言うと舞は和樹から背を向けて佐祐理のいる方に向かい、二度と和樹の方を見ることはなかった。
369:02/03/23 23:19 ID:1xKIsukl

(絆、か……)
 コブのできた頭をさすりながら、和樹はゆっくりと目を閉じる。
 脳裏に浮かぶのは、由宇との思い出。
 こみパで、こみパで、こみパで……。
(へっ、あいつとの出来事なんて、こみパだけじゃねえかよ……これじゃあ何思われてても仕方ないか 、なーんて な)
 そして、和樹は笑う。
 周りが突然起こった笑い声に、ぎょっとした表情で自分を見ても、気にはしない。
 彼女との思い出を大事に、心にしっかりとしまっておくに為に。
「か、和樹、あんた大丈夫なの?突然笑い出したりして……」
 心配したように瑞樹が声をかける。当然といえば当然だが。
「ああ、もう大丈夫だ、ゴメンな瑞樹」
「は?いきなり何謝ってんの?やっぱり何処かおかしくなったんじゃない?」
 突然の謝罪に、やはり戸惑う瑞樹。
「だから大丈夫だって、ああ、俺はもう後悔しない!今あるものを守るために!」


【千堂和樹 完全復活】
370へタレ書き手だよもん:02/03/23 23:22 ID:1xKIsukl
冒頭からいきなりミスってる・・・。
「ちっつくしょぉぉぉぉっ!」を
「ちっくしょぉぉぉぉっ!」に
 RTO氏お願いします。
371へタレ書き手だよもん:02/03/23 23:25 ID:1xKIsukl
あうーコピペミス…
本文ラストに

 空は、ゆっくりと夜明けの顔を見せ始めていた。

を追加お願いします。
ああ俺のヘタクソ……
372モリノタミ:02/03/24 16:35 ID:OoOEXM92
日が昇った。
下界に無関心な太陽は、今日も日課の日照を開始した。
日の光は、あるものには慈悲深く、ある者には残酷に降り注いだ。

彼------佐藤雅史は、日の光をどう感じただろうか。


あれから、4匹殺した。
異形の魔物ばかりでなく、中には人と見まがうほどのものも。
ことごとく、可能な限り残酷に。
彼のシャツには今、色とりどりの血液が付着している。
彼の「戦果」の賜物だ。

彼は視界の端に獲物を見つける。ゴブリンと言う奴だろうか。
誰かをよってたかって襲っているようにも見える。

彼は思案する。ひとりで行動したい。一人で友人たちを探したい。
もしあれが、まだ生きている「誰か」なら、助けた流れでともに行動してしまう公算が大きい。
373モリノタミ:02/03/24 16:36 ID:OoOEXM92
「くそ……体の調子さえ悪くなければ、こいつらなんかに……!」
ゴブリンに囲まれた少女は悪態をつく。やはりヨゼフの言うとおり、護衛を一人つけたほうがよかった。
このままこいつらの住処に運ばれたらおしまいだ。好きにされた挙句、殺されて打ち捨てられるだろう。
ゴブリンの一人が、醜悪な笑みを浮かべた。残る二匹もそれにならう。
とどめを刺す気か。少女は覚悟を決めた。


雅史は怖かった。
愛すべき親友たちに、拒絶されるのが怖かった。
血で汚れたこの手や体、拒絶には十分な材料がそろっている。彼はそう考えた。
彼を突き動かしたのは恐怖心。
友人に対する恐怖心。
モンスターを狩る事に、悦びを見出し始めていた自分に対する恐怖心。
最後に、心まで汚してしまうかもしれないことに対する恐怖心。
それが、「誰か」を少女を助けに向かわせたものの正体。


「誰か」に気をとられているゴブリンの首筋を、トゥキックで裂くように蹴る。
サッカーボールのようになったゴブリンの頭は、森のかなたへ消えていった。
「誰か」とは少女。緑を基調にした、独特の格好をしている少女。いまはあっけにとられたまま。
声をかけるのはあとだ。残り二体。突然の出来事に対処しきれずにいる二体。
---------だめだよ、死合中は集中しなきゃ。
うそぶきながら、彼は手早くその二対を処理した。
374モリノタミ:02/03/24 16:37 ID:OoOEXM92
「あ……ありがとう」
少女が雅史に声をかけた。
雅史はそれに応えずに、その場を立ち去ろうとした。
「ちょっと!」
少女が声を上げる。
我関せず、我関せず。心の中で、雅史はそうつぶやいていた。

「根よ!」
また背後の少女が何か言う。雅史はそれにかまわずに……
足を木の根に取られ、情けなく転んだ。
「……な……?」
足首を、木の根ががっちりと固めている。何だ?何が起こっているんだ?
「まったく礼儀を知らない男の人ね。礼くらいさせないさいよ」
いつの間にか目の前に来ていた少女が、雅史に向かって言い放つ。
「ちょ、ちょっと……これは、君が?」
「そうよ。まあ植物の扱いはちょっとしたものよ」
「だったら、どうしてさっき……」
「発作よ、ビョーキ。それよりあなた、ひょっとして人間?」
375モリノタミ:02/03/24 16:39 ID:OoOEXM92
ひょっとして、とはどういうことだろう。この力といい、目の前の少女はいったい?
「ま、まあそうだけど……君は」
「ほんとの、ほんとに人間? やったぁ、やっと捕まえた!」
捕まえた?
「とりあえず私の家に連れて行くのが先ね……あなた怪我してるみたいだし、ヨゼフやリーザ婆に見せてあげたいわ」
状況が飲み込めない。捕まえた?僕は獲物なのか?死ぬのか?ここで?
「何のことか知りたい?でもまだ教えてあげない。まずは私の家に行くわからあなたはじっとしてて。私はソフィア、エルフよ」
少女が口笛を吹く。途端、木の幹が雅史を優しく抱きかかえた。足を固めていた根もするりとその手を離す。
「ちょ、ちょっと……!」
抗議を言う暇も無いまま、雅史は森の中へと姿を消した。


【佐藤雅史 エルフの少女ソフィアによって拉致】

最後以外レス間は二行開けでお願いします
376最期の詞:02/03/25 16:43 ID:pvWC19Ot
この絶海の孤島にあらわれた男。
その男は学ラン姿で前をはだけていた。
「郁美……」
そう、彼には守るべき妹がいた。その為に彼は泳いできたのだ。
モンスターが徘徊するこの島。
病弱の妹がこの島を生き抜けるのは不可能だ。
彼が郁美の下に行くまでせめて彼女を守り抜ける人が同伴してくれていたら…
彼は今はそう願うしかなかった。


上陸して数時間たつ。
雨も次第に強く本降りになった。
「どこかに避難するか……」
そう思った矢先、彼は一人の人間を目撃する。

瀕死状態だった。
助からないだろう。
男は死にかけの身体なのに声を発した。
「あ、あんたは……」
「どうした、何があったんだ」
「見てのとおり、さ。モンスターに、ぐふっ、やられた……」
モンスターの凶悪さをこの男をとおして彼は思い知った。
「あ、あんたならモンスターにもか、かてそうだ…みんなをまも…れ」
「俺はもともと守るためにここに来たんだ」
彼の発言もあとわずか。
「スフィー、リアン、結花、なつ……」
学ランの男は男の心臓がとまったのを確認した。


377最期の詞:02/03/25 16:45 ID:pvWC19Ot
男は静かに埋葬した。
「墓石も木簡もたてられないがな」
そしてその場を後にした。
再び行動する。改めてこの島の恐ろしさを確認した。人の死によって。
それが一刻もはやく郁美と合流しようとせかしていた。

【宮田健太郎 死亡】
【立川雄蔵 健太郎を埋葬】
【雄蔵 なおも郁美を探し続ける】
378名無しさんだよもん:02/03/25 16:47 ID:pvWC19Ot
376-377間2行空けてください。
379名無しさんだよもん:02/03/27 23:32 ID:ow3AkFKJ
メンテ
380奇蹟を知るものたち:02/03/29 01:33 ID:h/Do0Y+o

ばりばり、むしゃむしゃ……

到底、食事をしているとは思えない音が、休憩所の中に響いた。
「おいコリン、食料はもう少し加減して食えよ……」
「ふあ? ふぁんがいっあ?」
「………いや、なんでもない………」
口の中いっぱいにパンを頬張りながら振り返るコリンに、芳晴は黙ったまま嘆息した。
深い疲労を感じていると、美汐が芳晴に声をかけてくる。
「……城戸さん」
「なんだい、天野さん」
「その、救援はいつになったら、来るんでしょうか?」
心細そうな彼女に、芳晴はちらり、とコリンの方に目をやった。
当のコリンは食べるのに夢中で、こちらの方には関心を払っていないようだ。
「正直、わからないとしか言いようが無い。この島全体には、結界のようなものが張られてるみたいなんだ」
「結界、ですか?」
「ああ……それほど強い結界じゃないが、空を飛んで逃げる魔物を防ぐ能力が、あるみたいなんだ」
「……入るのは容易だが、出るとなると苦労する」
エビルの補足に、美汐は考え込むように俯いた。

出合った瞬間から不思議だったのだが、芳晴は美汐に妙な気配を感じていた。
もっとも、それは彼女の隣に居る、氷上とかいう男も同じなのだが。
結界や、天使、死神といった怪異を、この二人はまるで日常の事であるかのように、普通に受け入れていた。
(つくづく……変な二人組みだよなぁ……)
もちろん、天使に死神という芳晴の方のコンビも、それ以上に変なのだが。
381奇蹟を知るものたち:02/03/29 01:34 ID:h/Do0Y+o

「あのさ、天野さん」
「はい、なんでしょうか」
澄んだ瞳に真っ直ぐに見詰められ、思わず芳晴は口篭もる。
「その……コリンが天使とか、江美さんが死神とか、よく信じる気になったね、と思って……」
「ああ……」
美汐はくすりと微笑むと、コリンの方をちらりと見た。
「コリンさんがそうおっしゃった時は、少しびっくりしましたけど……」
ふと目を細め、何かを懐かしむように美汐は、自分の体を抱きしめる。
「この世の中には、不思議な事や、奇蹟のような事が起こりうる……私は、それを知っているだけです。
ですから、天使や死神が現れても、それを受け入れる事ができるのです」
穏かに微笑んで、隣の氷上シュンも同意を示した。芳晴は思わず紅くなって、頭を掻く。

口の軽いコリンが、べらべらと彼女たちに本当の事を話した時は、どうしようかと思ったのだが。
どうしてどうして、これが逆に二人に親近感を与える結果となっていた。
不思議な事や、奇蹟が起こりうるという事を、知っている……それが何を意味するのか、芳晴にはわからない。
だが、この天野と氷上という二人が、ただの一般人でない事だけは、確かだった。

「死神か……初めて見たよ」
芳晴と美汐から少し離れて、氷上シュンはエビルに話し掛けていた。
氷上シュンは面白そうな色を目に浮かべ、エビルを見詰める。
「そして、天使もね」
散々に食い散らかしたコリンに目をやり、氷上シュンは苦笑した。
「お前は……」
「なんだい?」
彼の透き通った、奇妙に虚ろな瞳に見据えられ、エビルは口篭もり、何でもない、と首を振った。
382奇蹟を知るものたち:02/03/29 01:34 ID:h/Do0Y+o

「さ〜て、お腹も一杯になったし、作戦会議としゃれ込みましょうか」
ぱんぱん、と景気良く手を叩き、コリンは持参したノートを、テーブルの上に広げた。
その場に四人が集まってくるのを待って、コリンは持参した鞄を手に取る。
「コリンちゃん便利リュックの秘密道具その1、ダウジングペン!」
コリンは仰々しく、鞄の中から人差し指ぐらいの細い石を取り出した。
「この石はなんと、先が万年筆みたいになってて、インクにつけて紙の上に置くと……あら不思議」
コリンがノートの上にペンを置くと、それはまるで生きているかのように、立ち上がった。
目を見張る美汐と氷上シュンの前で、ダウジングペンはすらすらとノートに図を描いていく。

しばらくして、ノートの上には見事な島の地図が描かれていた。
「ハイ終了っ……このペンは、現在位置から周囲の図を書いていってくれる、便利なアイテムなのよ」
そう言って、コリンは真中の点を指差した。
「ココが現在位置って事。ふふん、いっこ3万もしたけど、ま、安い買い物だったわよね」
「お前、最近ショップに出入りしてると思ってたら、俺の金でこんな物買ってたのか……」
嫌そうな芳晴の顔を無視し、コリンは再びダウジングペンを紙の上に置いた。
「最も魔力の高い場所を検索せよ……うりゃ」
ちょい、とコリンがペンをつつくと、ペンはころん、とある一点を指して倒れた。
「……ここに、ユンナか……」
「ルミラ様がいる可能性が高い、というわけだな」
地図を凝視し、エビルはひとりごちた。
「でも、そのユンナという方、この島で何を企んでいるんでしょう?」
「……うーん、彼氏の開放ってのは、間違いないと思うんだけどね」
首を傾げ、コリンは眉を寄せる。
「まあ今日はもう遅いし、行動は明日にしましょ……各自、消灯〜」
「ってコリン、修学旅行じゃないんだぞ……」
383長瀬なんだよもん:02/03/29 01:36 ID:h/Do0Y+o

【コリン 美汐とシュンに、自分たちの素性をばらす】
【現在位置と、島で一番魔力の高い場所を把握】
【コリン、芳晴、エビル、美汐、シュン、休憩所で就寝】


長らく放置されてた、エビルパーティ&シュン美汐を書いてみました。
NWは久しくやってないから、コリンの性格が違うような気がする罠(ぉ
それでは、誤字脱字修正ありましたら指摘よろ。
384崩壊(1/2):02/03/30 14:31 ID:0SlkVhoZ
 あたしは埋葬されるパンダの姿を見ていることができなかった…。
 あたしは、形見を持って埋葬している皆から離れて、せめて皆が見えない所で一人でいたかった。
『━━━━━アホか!そんなん萌えでない!』
 いつかのパンダの台詞が聞こえる。
 初めて共通の趣味を持った友達……コミパでの先輩……増長するする自分を抑えようとしてくれた少ない知人。
 それがたった一瞬で…あんな一瞬で…。
 また涙が流れる…。
 その瞬間また、この島でのできごとがフラッシュバックしてきた。
 夢の中でのポチの豹変、パンダの静かな死、その直後のポチのピンチ、そして最期に埋葬されるパンダの姿。
「やだぁ…みんな…行っちゃやだぁ…」
 あの夢の中であたしは…意志と違う行動をしていた…全てのものを壊したい願望している自分姿、パンダを襲いかかるポチをただ見ていたわたし。
 夢の中のあの時は、普通はあたしがポチを止めなくてはいけなかった…、でも嬉しそうにそれを見ていた自分がいた。
「あんなの…あたしじゃないよぉ…」
 やっとのことで出た声…自信が無い…もしかしたら夢の中の自分が本当の大庭詠美かもしれない…。

━━━みんな、いなくなればいいのよ━━━

 ふと頭の中に響く一つのあたしの声。
「いやぁ…」
 あたしはその考えを振り払おうと頭を振ったけど、力がでない。
 ハリセンを落し頭を抱え、倒れこむように座る自分。
 涙が止まらない…多分この涙はあたしに対しての涙。
385崩壊(2/2):02/03/30 14:32 ID:0SlkVhoZ
「詠美さん、こんな所にいましたか」
 優しい声がかかる、南さんだ…。
 そこにはいつもの穏やかな表情をした南さんがいた。
「まあまあ、こんな顔して…」
 と言って、ハンカチを取り出してわたしに近づいてきた。
 暗くてよくわからなかったけど、南さんの目も赤かった…泣いたの後だと思う。
「パンダは…?」
「終わりましたよ」
 あたしの涙で濡れた顔を優しく拭いてくれた。
「皆さん待ってますよ…」
 と言って立ちあがる、声は優しいままだった。
 強い人…あたしよりパンダとの付き合いが長いはずなのに…。

━━━後ろを向いてる、殺るとしたら━━━

「いやぁーーーー!」
「詠美さん!?」
 突然の悲鳴に南さんは慌てて振り返る。
 体の震えが止まらない…ハリセンを抱きしめるしかできなかった。
「大丈夫です、ここには皆さんがいるから怖くないですよ…」
 南さんはあたしを優しく抱きしめてくれた…すごく暖かかった。
「いっしょに行きましょうね?」
「…うん」
 体の震えは止まったけど…心が…。
386R1200:02/03/30 14:40 ID:0SlkVhoZ
【詠美、夢と由宇の死に影響により心が黒く侵食されつつある】

「絆」のフォローシナリオって思って、詠美一人称で書いてみました〜。
ちょっと書いててNGになっちゃうかもしれないけど…。(^^;
詠美ファンの皆様、すいません…
387天使と悪魔の約束事(1/2):02/03/31 13:08 ID:mLcaUQcO
「……まだつけ終わらないの?」
「ハイ、ちょっとお待ちください……いつものものと勝手が違うものですから」
 そう言い訳しながら、慌てて鎧を身に着けるアレイ。
 普段身につけている鎧は攫われたときには身につけていなかったため、このパークで支給されたものを身につけている。
いつも身につけているものと違い、関節部分が動きやすいようにパーツで覆われていないタイプのもののようだ。
「早くしてね」
「ハイ、申し訳ありません……後はこの兜を被ってと、あ、できました〜」
 最後に、大きな盾を持ってそう告げるアレイ。
「まったくグズなんだから、分かってると思うけど、あなたが時間をかければかけるほど、あなたのご主人様の立場は悪くなるのよ」
「はわわ、す、すいません〜〜」
 敬愛する主人の名を出され、見ていて哀れなほど萎縮する。
「まぁ、いいわ、で……その鎧の調子はどうかしら」
「あ、ハイ、とっても軽くて動きやすいです」
 その答えに、満足げにうなずくユンナ。
「でしょうね、見た目こそ重そうに見えるけれど実際は着色した強化プラスチック製の甲冑ですもの、なんでも銃弾だって弾き返せるそうよ」
「あ、そうなんですか、凄いものなんですね〜」
「ええ、その盾も合わせて使えば、打撃系の武器はほぼ無効化できるでしょうね」
「ハイ、でもこの剣は凄く重いんですね〜」
 そう言って、手に持った剣を見る。
それは、普通の人間には片手でもてそうも無い、刃渡り1m以上はありそうな大剣「クレイモア」だった。
「そうね、武器は軽かったら意味ないでしょ」
 出来の悪い生徒に教えるように、ユンナが苦笑を浮かべて諭す。
本来ならば、武器についてはパワー系のアレイのほうが詳しい筈なのだが。
388天使と悪魔の約束事(2/2):02/03/31 13:10 ID:mLcaUQcO
 そして、そんな彼女を揶揄するような口調でユンナが告げる。
「さて、アレイちゃん、改めて条件を復唱してもらいましょうか?」
「はい、私……アレイは、ルミラ様の身柄と引換えに、この島に居る人間達の魂を集めます」
「そうよ、そして、貴方が十個の魂を集めたら、あなたのご主人様を開放してあげる」
 ユンナの出した条件、それを守る意思が彼女にあるかどうかは、アレイには見抜く事が出来なかったが
どちらにせよルミラが彼女の手の内にある以上、アレイがそれを拒否することはできなかった。
(頑張らないといけない、そうしないとルミラ様が)
 彼女の脳裏に、先程リビングメイルに殺された少女、坂下の映像が浮かぶ。
無惨な彼女の死体、その顔が何時の間にかルミラにすり替わり、アレイは頭を強く左右に動かして、その悪い想像を振り払った。
「魂を集める方法は問わないわ、その手にもったもので斬殺するなり、なんらかの勝負で魂を抜き取るなり自由になさい」
「ハイ……」
 脱衣麻雀勝負なら、直接やるより良いかもしれない、という考えが脳をよぎり、すぐさま心の中でそれを否定する。
彼女はそれほど麻雀の強いほうではなかったから。
「……でね、あなたがちゃんと仕事を果たしたという証明をしてくれる、従者をつけてあげるわ、いいわね」
「え、あ……ハイ!」
 話の前半部を聞き逃し、慌ててうなずくアレイ。
「じゃぁ、紹介するわね、あなたの従者を」
 そのユンナの言葉に応えるように、一つの影がアレイの目の前に現れた。
389天使と悪魔の約束事(まとめ):02/03/31 13:14 ID:mLcaUQcO
【アレイ、ユンナとの約束「十人の人間の魂を集めるのと引換えにルミラ開放」】
【装備、アクリルの鎧と盾、巨大なクレイモア】
【ユンナ、アレイの監視役を呼び寄せる】
390名無しさんだよもん:02/04/02 00:19 ID:PnZByKkg
メンテ
391名無しさんだよもん:02/04/02 00:51 ID:8eYsMVnt
メンテ上げ
392The Giant Squid:02/04/02 21:45 ID:Z7xozYr+
 岩切が『人魚の園』を出てから、まだ何分と経っていない。
 人魚達が梓や岩切を自分達の住処まで運ぶのに要した時間と比べれば、それは半分程度の短い時間
だった。
 しかしただ一人で泳ぐ岩切は既に、『人魚の園』へと続いていた海底トンネルの入口近くにまで
戻って来ていた。
 その速さは異常としか言い様がない。
 水戦試挑躰として仙命樹を受け入れた身体、そして岩切自身の無駄の無い動きが、常人には決して
到達出来ぬ水泳速度を生んでいた。

 さらに加えて、今の岩切には急がねばならない理由がある。

(初音、無事か…)
 
 ただ一人、海岸に残して来てしまった柏木初音。 その安否が気にかかった。

(雨を避けて、あの小屋まで戻っていてくれれば良いが… くそっ、なんであたしはこんな…)

 今更になって後悔の念が浮かんでくる。
 思うに、自分はこの島がいかに危険な状況にあるかを把握しきっていなかったのだろう。
 超先生とやらは確かに「君達とモンスターを分け隔てる物は何も存在しません」と言った。
 決してその言葉を忘れた訳ではない。 初音を背負いながらも岩切は周囲の警戒を怠らなかった。
 しかし、初めて目にした"もんすたー"らしき存在と言えば…
393The Giant Squid:02/04/02 21:46 ID:Z7xozYr+

『ぴっこり』

 鳴き声らしき奇妙な音が頭の中に響く。
 あの無害そうな姿を見たせいで、この程度のものなのかと、岩切は無意識に警戒の度合いを下げて
しまった。
 そう、油断したのだ。

(馬鹿なことを…)

 戦争から半世紀以上も経ち、平和になった現代に甘んじていたのだろう。
 岩切はゆっくりと瞼を閉じて、前線で戦った時の事を思い出した。
 戦場。
 そこは、人が使い捨ての道具として扱われ、ばたばたと死んでいく凄惨な場。
 少しでも油断などしようものなら、等しく誰にでも"死"牙を剥く、非常な場。

 少しして目を開けた時、岩切はもう考えることを止めていた。
 無心となって、ただひたすらに初音が待つであろう場所を目指した。
394The Giant Squid:02/04/02 21:47 ID:Z7xozYr+
 しかし事態は、そう簡単に進むものでもなかった。
 洞窟を抜けて広い空間に出たところで、岩切はその姿を目撃してしまったのだ。

 始めは小さな影にすぎなかったそれは、接近するにつれて徐々に大きくなっていった。
 輪郭がハッキリ見えるようになると、それが岩切もよく知る生物であることが分かった。
 さらにある程度にまで近寄ると、それが遠近感さえ失わされそうな巨体を持っていることが分かっ
た。

 そしてそれが、自分を捕食するつもりであることも、分かった。

 岩切の前に現れたのは、巨大な烏賊だった。
 それは、漁師が「大物を釣った」というレベルの大きさではない。
 まさにモンスターと呼ぶに相応しい、自然界では有り得ない巨体。

 岩切は知る由も無いが、この凶暴な生物を生み出した科学者達は、ノルウェーの伝承にちなんで彼
に「クラーケン」という呼び名を与えていた。

(厄介なことだ…)

 戦場とは、何事も思い通りいかない場。
 岩切はそんなことも思い出していた。
 

【岩切、クラーケンに遭遇】
【バカデカいってだけで、具体的な数値は出さないようにしときます】
395名無しさんだよもん:02/04/02 21:49 ID:Z7xozYr+
以上、まんまなタイトルで「The Giant Squid」でした。
393-394は二行空けてお願いします。
396名無しさんだよもん:02/04/04 10:13 ID:sMYhI2VK
保全カキコ。
397名無しさんだよもん:02/04/05 01:30 ID:tRLnw886


398モリビト:02/04/05 01:48 ID:kZz9NIpR
木々のゆりかごに運ばれて、なぜか遠くなる意識を自覚し雅史はふと考えた。
ああ、多分僕は、彼女達の、晩御飯に、なって、しま、うん、だ――――


乾いた木の匂いが、雅史の鼻を刺激した。
「ん……ん?」
鉛のようになったまぶたをやっとの思いでこじ開けて、雅史はあたりを見渡した。
(家の中……ここは、客間……?)
無論普通の家にしては小物などが豪華だし、そもそも部屋自体がかなりの広さだ。
だが、木を基調とした――――あるいは木をくりぬいてその中に家を作ったかのような――――装飾が、雅史の心を和ませていく。
「お目覚めになられましたか」
部屋の中に、一人の老人が入ってきた。
屈託のない笑みを浮かべたその老人は、手にしたティーカップを雅史の前におき、透き通った緑色の液体を注いでいく。
控えめな湯気とミントのような香りが立った。
「さあどうぞ。恐らくは人間のお口にも合うでしょう」
薦められるがままカップを手にし、雅史はそれを一口すする。
「これは……おいしい」
それを聞くと、老人は細い目をさらに細めて笑った。
「それはよかった。服のほうは、今こちらで洗っておりますので」
その言葉を聞き、雅史はようやく自分の上半身が裸にされていることに気がついた。
と同時に、体を少しばかりの震えが襲う。
「えっと……その、あなた方は」
この老人にはいろいろ聞きたいことがあるのだが。聞きたいことがありすぎて、雅史は言葉を組み立てられない。
「とりあえず自己紹介と行きますかな。わしの名前はヨゼフ。
あなた様に助けていただいたソフィア様に仕えさせていただいております。以後お見知りおきを」
「あ……雅史、佐藤雅史です」
老人につられて、雅史も自分の名前を名乗った。
399モリビト:02/04/05 01:48 ID:kZz9NIpR
「わしらは、エルフ。大地に暮らす緑のエルフですじゃ」
「わしら、といっても今は三人しかおりませんが……ともあれ、半月ほど前に、わしらはこうしてここに召還のですじゃ」
「召還?」
「さよう。わしらを召還した天使……ユンナと名乗りましたかな……奴は、もうすぐここに来る人間の魂を抜き自分に献上しろ、とこうのたまったのですじゃ」
「魂を抜き取る……」
「無論、わしらにはそこまで高等な魔術を操ることはできませぬ。つまるところ殺せ、とこういうわけですな。
……無論、わしらはそれを断固拒否しました。
……その結果が、これなのですよ。わしら三人を残して、ほかのものは全て殺されました。
そのうえで、奴はわしらにこういったのです。人を殺せば、仲間をくれると。
……ソフィア様のご両親は、わしらを統率していた御方でしてな。王、というわけではないのですが。
ソフィア様のお相手が見つからぬようなら、わしらはこのまま滅びを待つだけだ、と」
「お相手……? エルフは胞子や種子で繁栄すると聞いたことがありますが」
「それは恐らく妖精族のことですな。妖精とエルフは違います。生息環境や身体的特徴、寿命が違うくらいで、エルフと人間は
対して違いは無い物なのですじゃ」
「……それで、僕を殺すためにここに連れて来たのですか?」
「……最終的にあなた様をどうするかは、ソフィア様のお決めになることです。ですが……
雅史様と申されましたな。あなたはどうもソフィア様に……」


木の葉のベッドに寝転びながら、雅史は一人考える。
わかったことは、ここの住人の素性。自分が連れ去られた理由。がけっぷちに瀕している種族。そして。
(あなたはどうもソフィア様に……気に入られたようですな)
はあ、とため息をつく。
事態がどんどん妙なことになってしまっていく。困ったことに雅史はそれを修正する力を持たない。
(こんなところで、もたついてる場合じゃないんだけどな……)


【雅史、途方にくれる】
400名無しさんだよもん:02/04/05 01:49 ID:kZz9NIpR
レス間は二行あけでお願いします。
401不死者の領域:02/04/07 01:44 ID:tm2ueXjE
 ズダン!、という何度目かの銃声があたりに響く。
「全く……しつこいわねぇ!」
 その声と共に
 再びショットガンの引金を引くのは、石原麗子。
 その弾丸が喰らいつく先は――人間。
 いや、彼らは人というには余りにも酷い。
 体は腐食し、臓器の一部が露出して、見るに絶えられない姿、
 一般的に、アンデット、ゾンビと呼ばれるものである。
 およそこのようなテーマパークに必要なモンスターではないと思うが、開発スタッフの意向か、
 それとも超先生の唯の趣味かは窺うことはできないが、この怪物たちは確かな脅威となって麗子たちを襲っていた。
(完全に誤算だったわ……周りに生命活動をしてるものはなかったから大丈夫だと思ったけど……
 死人がいたとわね……)


「あ、あの……ち、ちょっと…」
 結局ジープを動かすのは誰もできないと言う事で、仕方なく麗子が運転もするという事になって、いざ出発という時にこれまで黙ってい たあさひが、急に言葉を発した。
「す、すいませんそ、そのまえにあ、あの……」
「なに?何かあるなら手早く、簡潔に」
 麗子の手厳しい言葉に、あさひはおどおどとした表情を赤くして、
「あ、のじ、実は……」
 と、もじもじと体をうごかす。
「あ、あさひちゃんひょっとして…トイレ?」
 その様子にピン、と来たのか詩子が解った、といった表情であさひに聞く。
「は、はい…そ、そういうことなんです……」
「……早く行きなさい。すぐに戻ってくるのよ」
 やれやれといった表情で麗子が、周りの気配を確認してあさひ行くように促す。
「は、はい。じ、じゃあ行ってきます…」
 その言葉と共に森の奥に大急ぎでかけだすあさひ。
「一人で、大丈夫かなぁ…?」
402不死者の領域:02/04/07 01:45 ID:tm2ueXjE
「一人で、大丈夫かなぁ…?」
 ジープの助手席から、心配そうな表情を見せる結花。
(まあ、今は夜だし、ほんの数分なら大丈夫でしょう)
 彼女がそう思ったまさにその時、
『いやああああああああああっ!』
 森に、あさひの悲鳴が響いた。

「い、今の!」
 と、詩子が言うより早く、
「叫ぶより行動!行くわよ!」
 と、麗子がショットガンの片方を結花に投げ渡しながら真っ先に駆け出す。
「ちょ、ちょっと石原さん!これを私に撃てってこと?」
「そう…みたいですよね……」
 後に残った二人も彼女に遅れまいと、急いで走り出した。


「石原さん!桜井ちゃんの様子が!」
 麗子の後ろでゾンビに襲われたあさひの看病をしていた詩子が青ざめた表情であさひを見ている。
 喰いちぎられかけた左腕からは血が止まらなく、危険な状態であることは誰の目にも明らかだった。
「今は見てあげられないわ!あなたが何とかしなさい!」
 そう言いながら自身の反対側に目をやるとこちらもショットガンを手に結花が数体のゾンビを相手に奮闘していた。


「こんのおぉぉぉぉっ!」
 叫び声と共に結花は素早くゾンビの懐にもぐり込み、その顔にショットガンを突きつけ、引金を引く。
 その刹那、ゾンビの顔面が凄まじい音と共に弾け、血飛沫を上げる。
 銃の反動を必死で押さえ込みながらのポンプアクション後、今度は左側から来た二体のゾンビに腰溜めからの散弾を浴びせた。
 飛び出した無数の弾は、ゾンビの胴、腕、足へと噛み付く。
 が、腐りきった体にはもはや痛覚というものは存在しないのか、体中から赤いものを迸らせながら、痛みを感じさせない足取りで確実に 結花との距離を詰める。
403不死者の領域:02/04/07 01:46 ID:tm2ueXjE
 さすがの結花も、これにはぞっとした表情を見せ、麗子に助けを求める。
「麗子さん!こいつら!」
「頭部を破壊しなければ動きつづけるわ!頭を狙いなさい!」
 そう言って彼女も引金を引く。
 先程から殆ど狙いを定めていない銃弾は、正確にゾンビの頭部をふっ飛ばしている。
 しかし、彼女の顔には焦りの色が浮かんでいる。
(マズイわね……このままだと桜井さんの命が……)
 事実、あさひの呼吸は目に見えて弱くなり、このままでは後幾分も持たないであろう所まできている。
「仕方、ないわね……」
 そう小さく呟くと、彼女は大きく息を吸い込み、
 次の、瞬間――、


【桜井あさひ 重体】
*麗子の行動は次の書き手にお任せです。
404へタレ書き手だよもん:02/04/07 02:35 ID:oH8s7TqF
修正、
 先程から殆ど狙いを定めていない銃弾は、正確にゾンビの頭部をふっ飛ばしている。
 しかし、彼女の顔には焦りの色が浮かんでいる。
(マズイわね……このままだと桜井さんの命が……)
 事実、あさひの呼吸は目に見えて弱くなり、このままでは後幾分も持たないであろう所まできている。
 を 
 先程から殆ど狙いを定めていない銃弾は、正確にゾンビの頭部をふっ飛ばしていた。
 しかし、彼女の顔に浮かぶのは焦りの色。
(マズイわね……このままだと桜井さんの命が……)
 事実、あさひの呼吸は目に見えて弱くなり、このままでは後幾分も持たないであろう所まできている。
 にRTO氏お願いします。
405名無しさんだよもん:02/04/07 02:55 ID:sI92Tzmy
406あぼーん:あぼーん
あぼーん
407:02/04/08 16:37 ID:6NJFIsJf

「雨、止んだみたいだね」
 誰にともなくぽつりと呟いたマナは、強張った体を解すように、大きく伸びをした。
 その顔色は、当然ながら冴えない。
 分厚いカーテンの隙間から覗く光は、闇になれた彼女にとって、眩し過ぎるように思えた。
 彼女の連れである、瑠璃子、楓は、まだ目を閉じ、小さく寝息を立てている。
 それを少し羨ましそうに眺めてから、マナは手すりに掛けてあった服を手にとった。
 まだ湿っているが、我慢をすれば何とか着れない程ではない。
 マナは思い切って、カーテンをぱっと広げた。
 昨日の雨が嘘のように、空は嫌になるほど晴れ渡っている。
 その眩い光に目を細めながら、マナは目を閉じた。

 すべてが夢だったらよかったのに。

 疲れ果て、泥だらけの身体も、このテーマパークも……そして、由綺の死も。
 だが、現実は変わる事無く、今ここにこうして存在していた。

 そうして彼女たちは、この島の二日目の朝を迎えた。

 朝日に目が覚めたのか、瑠璃子と楓が身を起こす気配がする。
 彼女たちについて、マナはほとんど知らないし、知りたいとも思わない。
 瑠璃子については、少しだけ教えてもらったが、ほとんど理解できなかった。
 ただ唯一わかった事といえば、彼女たち二人が、普通の人間ではない、という事。
「今日も、いい天気みたいだね」
「うん………そう、だね」
 どこか寝起きの猫のような、ぼんやりした表情の瑠璃子だが、
 それが朝のせいなのか、それとも地なのか、マナには判断がつかなかった。
408:02/04/08 16:38 ID:6NJFIsJf

 そんな瑠璃子とは対照的に、楓の表情は硬いままだった。
 昨日の夜、彼女が口走っていた『耕一さん』という言葉。
 そして、取り乱した彼女の様子から見て、それが大切な人である、という事はわかった。
 彼がどうにかなってしまった事、それを何故か彼女が知りえた事も。

「これからどうしようか?」
 マナ同様、湿った服を無理やり着込み、楓と瑠璃子は彼女のそばに座っていた。
 マナの持っていたポッキーを齧りながら、三人は考え込む。
「私は、千鶴姉さんを探しに行くべきだと思います。千鶴姉さんの傍なら、この島のどこにいるよりも安全でしょう」
 淡々とした口調で、楓は提言した。
「千鶴姉さんの場所なら、おぼろげながらわかります。
 ですが、その為にはこのモンスターの生息する島を、横切らなければなりません」
「………」
 瑠璃子もマナも、黙って彼女の話を聞いていた。
「もうひとつの選択は、このまま私たちだけで、再びホテルに向かう事です」
「あ、あの……このままここにいて、助けを待つのは……?」
 おずおずと切り出すマナに、楓は冷たい瞳を向けた。
「このモンスターだらけの島の、ど真ん中にあるこの屋敷に、いつ助けが来ると思うんですか?
 食料も殆ど無く、この屋敷の中も決して安全ではありません。
 今は、危険を覚悟で行動するべきです」
「……そう、だね」
 マナは俯いた。
 だが、脳裏を昨日の由綺の姿がちらつくと、身体の震えが止まらない。
409:02/04/08 16:41 ID:6NJFIsJf
「……ホテルまでの距離はどうなの?」
「パンフを見た限りでは、ここから直線距離で、約15キロほどだと思います……半日も歩けば、辿り着
けるでしょう」
「15キロ!!」
 思わず声をあげたマナだが、残る二人が平然としているので、決まり悪げに沈黙した。
「それじゃあ、そのお姉さんの位置は?」
「この島の真反対に、微かな気配を感じるので、多分30キロはあるかと」
「…………」
 ちらり、とマナが瑠璃子の方を見ると、流石の彼女も若干嫌そうに思えた。
 とはいえ、それもマナの気のせいかもしれないが。
「30キロも、この島の中を歩くなんて自殺行為だよ……」
「ちょっと危険かもね」
 マナと瑠璃子の意見に、楓は小さく頷いた。
「それでは、ホテルに向かいましょう……運がよければ、今日中に辿り着けるはずです」
「良ければ、ね……」

 どこか投げやりに呟いたマナに、楓は小さく笑みを浮かべていた。


【マナ、瑠璃子、楓、二日目】
【ホテルへ向かって、再び進行】

スレ名が公開二日目なのに、実際に二日目なのはこれが最初なのでは……(汗
距離に関しては、参考程度に考えてくださいませ。
410名無しさんだよもん:02/04/09 23:34 ID:Jd31Iwoi
メンテナンス
411キャパシティ:02/04/11 01:51 ID:uIHLq4vq
「それにしても光岡さん、どうして宮田健太郎の位置が判るんですか?」
 折原浩平はハンドルを握ったまま、光岡に尋ねる。
「なんというかな、感みたいなものだ。百発百中とはいかんがな、常人のそれよりは精度は高い」
 車はガタンガタンと揺れながら、舗装されてない土の上を走る。
 リアンの小さな体がぽんぽんと跳ねているのを見て、瑞香は言った。
「リアンちゃん、大丈夫?」
「あ、はい。なんとか。それよりなにより、健太郎さんが心配ですから」
 答えた瞬間だった。
「――っ!?」
 リアンの体がぴんと張ったように硬直する。
「どうしたの、リアンちゃん!?」
「んっ…あっ…ぁあ――っ!」
 頭を抑えながらリアンは絶叫を続ける。
「どうみても様子がおかしい。浩平くん、車を止めてくれ」
「駄目です、光岡さん。さっきからブレーキ踏んでるんですけど、全然止まらないんです」
「なんだと!?」
 浩平はリアンが声をあげはじめた直後からずっとブレーキを踏んでいた。
 しかし速度メーターの時速は一向に減らない。アクセルは勿論踏んではいない。
 アクセルを踏んでみても、速度もあがらない。
「一体、どうなってるっていうんだっ!」
 浩平はバンとハンドルを両手で叩いて叫んだ。
「落ち着いて、浩平。ちゃんと前を見て運転しないと駄目!」
「あぁ、わかってる」
 浩平はハンドルを握り直した。 相変わらず車のスピードは固定されたままだ。
「ぁああああああっ…ん…ああぁああぁっ!」 
 リアンの声はだんだんと大きさを増していた。頭を抱えたままぶんぶんと振り回す。
眼鏡が飛んで、地面に落ちた。パリンと音を立ててそれが割れる音がした。
…どうすればいいんだ。どうしたら彼女を止められる。 光岡は考えていた。
 その思考を遮るように、リアンは途切れ途切れの言葉で呟く。
「わ…た……しを…こ…ろ…してく…ださ…い」
412キャパシティ:02/04/11 01:54 ID:uIHLq4vq
「どういうこと? ねぇ、どういうことなの、リアンちゃん!?」
 瑞香がリアンの体に抱きつく。その瞬間リアンの体が青い光に包まれた。
「な…なに、これ?」
 驚きの声をあげる。
 光岡は後部座席に座る青い光に包まれるリアンをじっと見つめる。
…なんだ、これは。法術や魔術の類か? だったら、その発生源が近くにいる可能性があるということだ。光岡は剣に手を乗せた。
「わ…たし…のな…かに…ねぇさん…の…けん…たろ…さんが」
「何!? なんなの、リアンちゃん!?」
「け…ん……たろうさんがし…に…ま…した…」
 声にならないような声でリアンはたどたどしく言葉を続ける。
「ねぇ…さんのちから…魔…力が…わ…たし…に」
「魔力!? 魔力とは一体なんだ!?」
 光岡が目を丸くして浩平に尋ねる。
「リアンは魔法使いなんです。姉であるスフィーも同じく」
「…なに、魔法使いだと!? そんなバカな話が!?」
 光岡は激しく反応する。
「それじゃぁこの状況をどう説明するんですか!」
「…それはそうなのだが、しかし」
「ねぇ…さんが…けんた…ろう…さんの…腕…輪…にためていた魔…力が」
 
413キャパシティ:02/04/11 01:54 ID:uIHLq4vq
リアンの体をびくんと跳ねる。
「わ…た…しに…流れて、はぁんっ…んっ…」
「もういい、喋らなくていいよ、リアンちゃん」
 瑞香はリアンの体をさする。目には涙がうっすらと浮かんでいた。
「こ…の…ままじゃ、溢れ…ちゃいます、わたしにねぇさんほどの魔力の…許容量は…」
 車のメーターが大きく触れる。体が浮き上がるような感覚を浩平は感じた。
「あああっ!?」
 大きな衝撃が4人の体を襲う。一瞬20cmほど車が宙に浮いたのだった。
「わたしを…とめて…ください。じゃないとみ…なさんも…」
「どうしてリアンちゃんに魔力が流れてきてるの!?」
 長森は叫んだ。
「もしかして、姉妹だからじゃねぇのか?」
 浩平はさっきの衝撃で痛む両手でやっとのことハンドルを支えながら答える。
「姉妹だから、波長かなにかがあってんじゃねぇのか?」
「そんなことって…」
「…はんっ…ふぁんっ…駄目…もう…抑え…きれません…」 
 リアンの口から唾液がぽとり、ぽとりと落ちる。
 目はどこか遠くを見ていた。顔は赤く上気している。
 恍惚の表情ともとれる顔をしたまま、リアンはあえぎ声にも似た声をあげつづけた。

【リアンは許容量以上の魔力の逆流を受けたいへんな状況に】
【車は暴走中。浩平がハンドルを握っている】
414覚醒:02/04/13 00:03 ID:pd1yhVLa
「あとは紅茶と……麦茶……なんだこりゃ乾パン? 祐介そっちはどうだ?」
「砂糖と……あとは食器くらいかな……あ、こんぺいとう発見」
「……?」


朝がやってきた。
昨夜ティリアが背負ってきた謎の男はまだ目を覚ましていない。
それを尻目に、祐介と浩之は館内の給湯室を物色していた。
「食い物はこんなもん、か」
「お昼までに適当な売店で何か食べ物を確保しなくちゃね」
言いながら、祐介と浩之は腰を上げる。二人の鼻をコーヒーの香りがくすぐった。
「とりあえず玄関に戻るか。あかり達がコーヒー入れてくれたみたいだしな」
415覚醒:02/04/13 00:04 ID:pd1yhVLa
体の中に、ゆっくりと意識が戻ってくる。
それと同時に、談笑の声が聞こえてきた。誰かいるのだろうか?
男……ウィルは、ゆっくりとまぶたを持ち上げた。

意識がはっきりしてくると同時に、体中に鈍い痛みが戻ってくる。
「痛ぅッ……」
思わず漏れたうめき声。実際には、それほどの痛みでもなかったのだが。
「あ、動いちゃいけませんよー」
間延びしたような、それでも何か張りのある声が聞こえた。


「目立つ傷はとりあえず治しましたけど無理はいけませんよ」
人間……にしてはどこか感じの異なる少女が、ウィルを見下ろしていた。


【ウィル、目覚める 時刻は二日目早朝】
416受け継がれる、意思:02/04/13 20:35 ID:QXB+dvHF
 ざっ…ざっ…と、朝露にに濡れた草を踏み分ける音が辺りに響く。
 夜明けの光と共に、お互いの知人、友人を見つけるために往人、千紗の二人は、あてもなく島を歩い ていた。
「ったく……こう広んじゃ人と合うのも難しいってのに、そこら中にゴロゴロいるバケモンに出くわさないように人を探さなきゃいけない。全く、気が遠くなる話だぜ……」
 そう言って売店から持ってきた朝食用のサンドイッチに噛み付きながら、往人が疲れ果てたように肩ををすくめる。
「お兄さん…まだ一時間も探していないのに、そんな簡単には見つけられませんよ。何事も、地道が一番です」
 と、千紗は実に彼女らしい言い方で往人の愚痴を突っぱねた。
「地道、か……。俺だって本当は地道な人間だぞ。旅をしてるから金を得なきゃいけないしな」
「うにゃ? お兄さん旅人さんだったんですか?」
 旅先、という言葉を聞いた千紗が、興味津々と言った様子で、往人の顔を覗き見る。
「あ、ああ………今はちょっと居候の身だが、俺は元々あちこちを渡り歩いてるんだ、地道ってのは、その旅先でお金を稼ぐ時の事だな」
 ぐしゃぐしゃ、と空になったサンドイッチの袋を丸めながら往人は答えた。
「うわ〜。凄いんですねお兄さん、千紗のお家は貧乏だから旅行なんていったことありませんよ。お兄さんはお金持ちなんですね〜」
 心から羨ましそうな顔で往人を見ている千紗に対して、こちらは半ば呆れたような表情で往人は口を開く。
「いや……言っとくけど『旅』と『旅行』は違うぞ。旅行は金のある奴がただ目的地に行ってあーだ こーだと遊ぶだけだが、旅ってもんはは、やらなきゃいけない目的があるから、旅をするんじゃないのか? 第一、俺は貧乏だから楽しい事どころか辛い事ばっかりだぞ」
「え? そ、そうなんですか? がっかりですぅ」
 それまでの表情から一転してしゅん、と千沙は曇り顔になる。
417受け継がれる、意思:02/04/13 20:37 ID:QXB+dvHF
(二行開け)
「い、いや、まあ楽しいことだってそれなりにあったし、それに、ほら、なんていうかな……」
 しどろもどろになりながら、往人は何とか言葉を繋ごうとする。
「ま、まぁなんだ。お前がそんなふうに落ち込まなくてもいいじゃないか、そんな事よりまず俺達は人探をしなきゃいけない訳なんだから、えーっとなぁ……、取り合えずそんな顔をするのは止めようぜ って事なんだが……な? そうだろ?」
 普段の素っ気無さは何処へ行ったのか、気まずそうになんとか落ち込んだ千紗にもとの笑った顔にさせようと必死の往人。
「んっ…そうですね!千紗たちはこんな所で立ち止まってる場合じゃないです。さっ、お兄さん!早く行きましょう!」
 ぱっ、と今度は花のような笑顔を見せて千紗は走り出した。
(やれやれ、どうにか元に戻ってくれたな。なんか、あのガキが黙ってると調子狂うんだよな…)
 何故?、と聞かれても往人自身でも解らない、さっきだって、知らず知らずのうちに自分の口から勝手に出た言葉だった。
(まあ、いいさ。そんな事より今は…)
 今は、随分と先に進んでしまった千紗を追いかけるほうが先。と自分に言い聞かせ、彼もその足を速 める事にした。
418受け継がれる、意思:02/04/13 20:39 ID:QXB+dvHF
(三行開け)
「くそっ、本当に誰もいないじゃないか、どうなってんだオイ!」
 あれからさらに一時間ほど他の人間を探し回ったが、結局人間はおろか、モンスターにすら会わず、
 草原を越えてしまい、現在は森の中に二人の姿はあった。
「ふう……、千紗はちょっと疲れてしまいました…」
 そう言って千紗が草の上に腰を下ろしたその瞬間、下半身にひやっとした物が彼女に当たる。
「ひゃん!」
 異物の感触に、慌てて千紗が立ち上がる。
「ど、どうした?」
「わ、わかりません!千紗のお尻になんか硬い物が………うにゃ〜」
 言ってから自分の言葉で顔を真っ赤にする千紗。
 往人もそれに気付いたの少し顔を赤らめながら、千紗の座っていた所を調べて、怪訝な表情をする。
「こりゃあ……銃か?」
 そういって往人が手に持ったは、確かに銃の一種であるリボルバー銃(S&W M86)だった。
「ご丁寧に弾まで転がってやがる。なんだってこんな場所に……ん?」
 立ち上がった往人の目に入ったものは、
「マジか………」
 ボロ雑巾のように転がった、人間が二人。
 一人は、心臓を一突きにされて、絶命しているのは誰の目にも明らかだ。が、もう一人は切り刻まれてはいたが、まだ息がありそうだ。
 往人と千紗は急いでその場に駆け寄り、男を揺り動かす。
「オイ!おっさん!オイ!オイ!」
「おじさん!しっかりしてください!」
 二人の声が聞こえたのか、男はうっすらと目を開けた。
「うっ…お、オマエらは……そ、そうか。このパークに来た参加者だな…」
「ん?てことはお前が超先生か!」
 と、かなり飛躍した理論でその男を睨む。
「お、お兄さん。この人は多分スタッフさんですよ……。だってネームプレートにSTUFF 河田って書いてます……」
「そ、そうだ…俺はオマエら参加者を助ようと思って…だ、だが甘かった…竹林の野郎あ、あんなもんまで作っていたなんてな……き、気をつけろ、この島には、と、とんでもないバケモンが、い、いやがる……」
419受け継がれる、意思:02/04/13 20:43 ID:QXB+dvHF
「い。いや。オ、オレはもう助からん……そ、それより、こ、これを……」
そういって河田は内ポケットに手を伸ばして、そこから免許証のような物を取り出し、往人に手渡した。
「こ、こいつは俺のIDカードだ、こ、これがあれば大抵の施設は開けられる。これでし、島にある緊急だ、脱出用のヘリポートに行ける。き、救援をそこに呼んで他の奴らと逃げてくれ」
「ああ、わかった」
「そ、それと、そこにある俺のバッグにサ、サバイバル用品…が入っている……も、もう一人の奴のは潰されてダメだろうからお、俺のを使ってやってくれ……そ、それと俺の銃は……ち、チクショウ、もう前が見えねぇ……」
「……コイツがそうか? オッサン」
 と、往人がさっき拾ったS&Wを河田に握らせる。
「おう。コ、コイツは俺の銃だ、ニイチャンが使ってくれ……い、威力バツグンでウッハウッハだぜ……そ、そいつでカノジョを守ってやりな……」
「いや、別に彼女ってわけじゃないんだが……」
 憮然としながら、往人が言う。
「くっくっくっ……わ、若いモンが恥ずかしがるなってんだ……」
「……まあいいさ。コイツはありがたく使わせてもらうぜ」
「おう、じゃあ、頼む……ああ、なんか頭が……も、もう駄目だな……」
 そのまま目を閉じようとする河田に向かって、目に涙を溜めながら千紗が叫ぶ。
「だ、ダメです!死んじゃダメですよ!今手当てしますから……」
 そんな千紗を見て河田はかすかに微笑を浮かべる。
「へっ……嬢ちゃん達をこ、この島に連れてきたのはお、俺たちだってのに嬢ちゃんは俺のために泣いてくれるんだな……ニ、ニイチャン、こ、こんないい娘、そうはいないぜ……だ、大事にしてやれよ。じゃ、じゃあな。頑張れ、死ぬなよ………」
 最後にそう言って、河田は、息を引き取った。
「ったく……何回言わせんだ。彼女じゃねえっての……」


【河田他スタッフ一名 死亡】
【国崎往人 塚本千紗 S&W M86 IDカード サバイバル用具一式入手】 
420へタレ書き手だよもん:02/04/13 20:46 ID:QXB+dvHF
追加、むしろコピペミス(ぉ
418と419の間に、

 息も絶え絶えに、河田とかいうスタッフが往人に話す。
「わかった。わかったからもう喋るな。傷が開いちまうぞ」
「い。いや。オ、オレはもう助からん……そ、それより、こ、これを……」
そういって河田は内ポケットに手を伸ばして、そこから免許証のような物を取り出し、往人に手渡した。

をRTO氏追加お願いします。
421名無しさんだよもん:02/04/13 21:03 ID:/6bm8+W/
葉鍵ロワイヤル2、現在は感想スレとして再利用されています。
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1012216672/
422へタレ書き手だよもん:02/04/13 21:43 ID:fsXtkIye
あともう一つ有りました。
タイトルは受け継がれる、意思じゃなくて
受け継がれる、遺志でした
何度もすいません。
RTO氏お願いします。
423禁呪(1/4):02/04/14 15:25 ID:fUAhkc/G
 イビルが呪文を唱える。
 この死亡した科学者の魂の行方を探っているのだ。
『この手の呪文は得意じゃねーが、こいつには聞きたいことが山ほどある…』
 魂を操る呪…これは本来、メイフィアやエビルが得意といている系列であるが、イビルはあえて使った。
 魂に尋問したい内容は、逃げたもう一匹のラミアの場所、主催者側とユンナの関係、できれば主人のルミラの居場所などである。
『魂の移植なんて技術は人外の技術だ…それも天界や魔界の間でもタブーになってるからな…』
 
 魂の移植―――異なる数個の魂を合成し、一つの肉体に入れる禁呪。しかし、この呪は数個の魂を一つにするため輪廻転生する魂は一つになってしまうという弊害も持つ。

 イビルは精神を集中した、呪文を成功させるためだ。
 精神にノイズのようなものがかかった。
「くそっ!!完全に逃げられた!」
 イビルは壁を叩く、呪文は失敗したのだ。
「失敗か…?」
 拓也がイビルの失敗を知る。
 イビルが呪文を唱えている間、他の六人は部屋を調べていた。
「みんな、この部屋をもう少し調べよう」
 英二が促す、入ってきた入り口のドアの他にもう一つ奥に電子ロックで閉められたドアがある。
 おそらく、もう一匹が潜んでるとしたらそこであろうか…。
「タクヤ、ドアの向こう誰かいる?」
 レミィは拓也にドアの向こうの様子を聞いてみたが、
「わからない…、この部屋に入ってから調子がでないんだ…」
 拓也は怪訝そうな顔をして、首を横に振った。
「…拓也、多分原因はこれだ…」
 イビルが忌々しそうに棺に手をかけた。
424禁呪(2/4):02/04/14 15:27 ID:fUAhkc/G

「他の部屋で使えた能力が、この部屋で使えない。ということは…」
「この部屋にしかないものが原因って訳か」
 英二が続く、そして理緒が、
「それじゃあ、魔法を失敗したのも…」
「多分な…、魔術的な設備があるんだ。変な影響を及ぼしかねねぇ」
 それを聞いたレミィが、電子ロックのドアに耳をあてた。
「音はしないヨ、気配はわからない」
「とりあえず、危険だが鍵を探して奥に進むか…」
 英二が大きくため息をつき提案した。
「部屋からは出ないほうがいい気がするんだな」
「そうでござるな」
 縦&横はなすがままになっていた。
425禁呪(3/4):02/04/14 15:28 ID:fUAhkc/G
(二行開けてください)
 部屋の捜索開始から数分後、
「この机、鍵がかかっているでござる」
 縦が引出しを開けようとして引出しをガタガタひっぱている。
「あからさまに怪しいんだな」
 横が納得する。
「壊すでござるか、イビル殿〜」
「あん?」
「壊してほしいでござる」
 引出しを指差した。
「面倒くせえな〜、うら!!」

 ぐしゃ!!

 気合一発イビルの蹴りが引出しの炸裂。
「おお!!一発なんだな」
 引出しがかなり歪んだが力ずくで開くようになった。
 気がつけばメンバー全員がその引出しの机に集まっていた。
「開くでござるよ」
 ゆっくりと縦が引出しを開ける。

 ぎぎ〜

 金属同士が擦れる嫌な音が響く。
426禁呪(4/4):02/04/14 15:28 ID:fUAhkc/G
「これかな?」
 理緒が一枚のカードを手に取る。
「それっぽいにネ」
 レミィもそれに同意する。
「なんだ?これ」
 拓也が一枚のMOディスクを見つけた。
「わからないでござる」
「とりあえず、持っとくか…」
 拓也はMOをポケットに突っ込んだ、英二はそれを横目に一つのことを考えてた、
『それにしてはおかしい、電子ロックのドアの向こうにモンスターがいるとしたらどうやって侵入した?』
 縦横はそのまま机、レミィと理緒は本棚、拓也とイビルは棺と死体を詮索した。
 だが、英二一人はド電子ドアの前にいた。
『誰かがモンスターを連れてドアの向こうに行ったのか?ということはモンスターと一緒に知能をもった何かが一緒にいる可能性も高いな…』
 英二は表情を崩さず、ドアの向こうにありそうなことを想定していく。
『ロクでもない結果は間違い無いようだ…』
 大きくため息をつく。
「エイジ、一通り終わったヨ!」
「ん?何かあったかい?」
 柔和な表情で英二が聞く。
「MOとカードキーだけネ」
 レミィが残念そうな顔した。
「仕方ない、奥に行こう。危険だが、モンスターを止める方法があるかもしれないし…」
 拓也はそう言うと、縦からカードキーを受け取り、ドアのカード挿入口に差し込んだ。
 機械音と共にドアが開く。
427R1200:02/04/14 15:30 ID:fUAhkc/G
【英二一行、地下施設の奥へ】
【拓也、なぞのMOディスク入手】
 自分のダメ元で出したアナザーが混乱を招いてしまったようです。皆様すいませんでした。
 流れとしては自分の以前投稿したアナザーを本編にして、それの続きでお願いいたします。
428名無しさんだよもん:02/04/15 09:37 ID:VpUI5dA2
age
429名無しさんだよもん:02/04/17 17:22 ID:7gMXcNWD
時にはメンテ
430名無しさんだよもん:02/04/19 05:57 ID:LqdXb26h
メンテナンス
431平静なる四人組:02/04/19 18:11 ID:4mH/wfRb

ジープはホテルへ向け、ひたすらに道を爆走していた。
「そうそう、君……えっと、何て名前だったかな」
「橘です。橘敬介」
「そう、橘君。確かこの企画では、何人かがグループを組んで行動することになっていたはずだが、
 君のメンバーはどこに行ったのかね?」
「さぁ……あの放送があった時、僕たち3人はジープに乗りながら、古代動物の檻を見ていたんですが……」
古代動物、と聞いて、長瀬刑事は先ほどのサーベルタイガーを思い浮かべる。
「ところが、急にあのジープが暴走し、僕だけ跳ね飛ばされてしまったんです」
「ふむ、それは災難だったが……いや、幸運だったとも言えるかもしれないな」
独り言のようにつぶやいて、長瀬刑事は橘の顔を凝視する。
そこへ、長瀬主任が思い出したように振り返った。
「そうだ橘君、そのメンバーと別れた場所はわかるか? ホテルに向かう前に、その二人を拾っておくべきだと思うのだが」
「はい、大体なら。それよりも、さっきの彼を助けに行かなくていいのですか?」
「ああ、彼なら自力で何とかするだろう。どうやって、と聞かれると返答に困るがね」
「そうですか」

人事のようなのんきな3人の会話を聞いている内に、セリオは体内ジャイロの不調を覚えた。
視界が揺れたような気がして、セリオは目の周りを指で揉んでみる。

「……長瀬主任、少々緊張感が欠如していると思われますが」
「んん、セリオでもそう思うか。いや、私もそう思っていた所なんだ、うん」
誤魔化すように長瀬主任はそう呟くと、足元に転がっている銃から、手頃なものを橘に手渡した。
「橘君にも、自分の身ぐらい、自分で守ってもらわないとね。
 何、簡単な操作ですぐ撃てる。私は銃に詳しいわけではないので、説明は源三郎がしてくれるだろう」
432平静なる四人組:02/04/19 18:13 ID:4mH/wfRb

長瀬主任に頼まれ、長瀬刑事は肩をすくめた。
「ふむ、このタイプならここが安全装置だ。撃つ時は、両手でしっかり構えて、必ず2度撃つ。
 それから、目標にはきちんと狙いを定める。教えるのはこれくらいかな」
長瀬刑事の、至極簡単な説明にも、橘は異論も唱えずに素直に両手で構える真似をしてから、ホルダーに仕舞った。
それから、ふと天を仰ぎ、橘は目を細めた。
「雲行きが怪しくなってきましたね」
「そうだな……セリオ、急いでくれ」
「はい」
落ち着いている……と言うよりは、むしろ不気味なほど平静とした4人は、しばし黙ったままジープに揺られる。
「できれば雨が降る前に、ホテルにたどり着きたいものだが……っと、あれか」
『古代生物園』と書かれた檻に、鼻面を突っ込んだジープを見つけ、長瀬刑事は目を細めた。
「しかし、残念ながら誰も乗ってないみたいですねぇ」
聞く人間によっては、微塵も緊張感のない声だったが、僅かに滲んだ頬の汗が、彼の心境を物語っていた。
何故なら、そのジープには「人間は」誰も乗っていなかったが、別の客が占領していたからだ。
「参りましたね……スミロドンの次は、メガテリウムですか」
新生代に現れ、その後人間に絶滅させられた生物の内、有名どころが揃ったわけだ、とうそぶく。
スミロドン……サーベルタイガーとは対照的に、メガテリウムはどちらかと言えば「安全」な動物である。
地上性の巨大ナマケモノの中でも、最大の種類で、直立すれば3メートルにも達する。
気性としては鈍重で、象に近いものがあるだろう。
だが、その爪は鋭く、怪力とあわせれば人間など簡単に引き裂く。
当のスミロドンは、のんきにジープの上に乗っかり、ボーっと周囲の草を食べていた。

だが、そんな温厚そうな外見に騙されて、近づいたら最後、その鋭い爪で引き裂かれるかもしれない。
「……本来ならば、周辺を探すべきなのでしょうが……雨も近いことですし、一旦ホテルに向かいますか」
長瀬主任の言葉に、反対する人間はいなかった。
433名無しさんだよもん:02/04/19 18:15 ID:4mH/wfRb
【長瀬’s 橘のメンバーを探索しようとするが、結局ホテルへ】
【橘 銃を渡される】
434Misaki:02/04/20 04:02 ID:buDBhoC1
澤倉美咲がそこを見つけたのは、彼女が大樹「トレント」の元を離れてからしばらくたってのことだ。
トレントの庇護はありがたかったが、自分だけが安全圏にいるというのは彼女にはなんとなくはばかられたのである。

ふりしきる雨の中を駆けながら、美咲の目にひとつの建物がとまる。
周りに散らばる何かの死体が、そこで戦闘があったらしいことを仄めかしていた。
(……)
自販機を備えた休憩所らしきその建物を、美咲はそっとのぞきこむ。
動くものは、ない。死体は、北欧の文献に出てくる妖精……「赤帽」といったろうか?


寝息のようなものが聞こえる。
奥のベンチ。二人の、年の離れた女性が抱き合うようにして眠っている。
親子、だろうか?
美咲は、特になにをするでもなくその二人に近づいていった。
(……)
二人の胸の谷間に、何かささっているようなものが見えた。
(人形……?)
美咲の目には、それが精巧な日本人形のように見えた。少し乱れたおかっぱの髪、着物、そして足から流れる血。
(……血?)
これは……生き物なのか?
435Misaki(end):02/04/20 04:03 ID:buDBhoC1
足の傷がうずくような感じで、座敷童は目を覚ました。
足の傷が、誰か----------少なくとも自分の知る二人の人間ではない---------に、ぬらした布でふき取られているのが見える。
「……っ!」
染みるような痛みに耐えていると、自分の知らない誰かの声が落ちてくる。
「あ、もう少しだから、じっとしててね」
優しげな声。座敷童は、それで警戒心を緩める。

「はい、できあがり」
治療の終わった足をぱたぱたと振る座敷童を見て、岬はなんだか可笑しくなった。
「う……ん」
それと同時に、眠っていた女性のうち年下らしいほうが目を覚ます。
「おはようございます」
美咲は、そっと声をかけた。


【澤倉美咲 川名みさき一行と接触】
436復讐の狼煙(Murderous fiend):02/04/20 19:19 ID:Cegp/HYK
 何かの冗談だと思っていた。 
 化物に切り裂かれ、ゆっくりと落ちていった佳乃。
 これは夢だと、信じたかった。
 この後、今すぐにでも自分は目を覚まし、見慣れたポストから新聞を抜き出して、
 朝食の支度をしなければいけない。
 そしてまだ夢見ごごちで眠そうな佳乃と朝の挨拶をして、自分も仕事の準備をしなければ……まだ暑いから、
 今日も日射病で倒れる人が多いだろう……。
 そうだ、こんな夢を見てる場合ではない。
 早く、起きなければ……。
 そうして、うっすらと開けた彼女の視界に写ったものは、
 眩しいぐらいの朝の光と、
 なにかの拍子にほどけたのであろう。
 佳乃の付けていた、黄色いバンダナが、
 今にも風に流されそうに、寂しげに揺れていた。


「………………ははっ、はははっ……」

 絶望の余り、その場に座り込む。
 ああ、認めるしかない。
 確実にこれは、現実だ。
 もう、気付いているんだろう? こんな流れの速い川に落ちて、泳ぎも得意でない佳乃が
 助かるなんて事は有り得ないって。
 解っているんだろう? 聖?。
437復讐の狼煙(Murderous fiend):02/04/20 19:22 ID:Cegp/HYK
「はははははははははははははははははははっ!」
 
 でも何故だ? 涙が出ない。
 佳乃が、この世から消えてしまったのに、
 私の口が紡ぎだす音は、嘆きの詩ではなく、歓喜の叫びだ。

「はははははははははははははははははははっ!」

 心配そうに私を見ている……あれは……遠野、美凪さんだったかな?
 だが、そんなことは、どうでもいい事だ。
 知っていたって、佳乃が、生き返るわけでもない。
 ああ、佳乃、かのカノ佳乃かの佳乃カノかの佳乃カノ佳乃かの佳乃。
「何故だ……何故こんな事が……」
 その瞬間、聖の頭に浮かんだのは。
 この場を去った、一人の少年。

「佐藤……雅史!」
 アア、思い出した、そうだ、アイツだ。
「アイツが……佳乃を……そうだ……あの男が……」
 大丈夫だなんて自身満々な面をしやがって、危険になったら自分ひとりさっさと逃げ出しやがった。
 あの男さえ……アイツさえ私の言う事を聞いていれば……。
「殺して……やる」
 凄まじい殺気と共に、聖が立ち上がる。
「待っていろよ佐藤! すぐに貴様を佳乃のところに送ってやる! 地獄で佳乃に詫びるんだな! 
 でも無理か! 妹がいるのは天国だしな! ははははははははははっ!」 
438復讐の狼煙(Murderous fiend):02/04/20 19:24 ID:Cegp/HYK
 いつもと違う聖の様子と、先程までの発言で、明らかに聖は危険だとはわかっていた。
 だが、このままでは本当に聖は殺人者になってしまう。
 それは人としていけない事だと思うし、佳乃の件に関しては自分にも責任がある。
 その事実が、何とか美凪を奮い立たせていた。
「聖さん……人を殺すのは、いけない事です。それに……」
 多少の躊躇いを見せながら、美凪は口を開く。
「……そんな事をしても、虚しいだけです……」
 精一杯の、勇気と共に。


「遠野さん……そうか……そうなんだな……」
 そういって、薄っすらと微笑む聖。
「聖さん……わかって……いただけましたか……」
 ほっと、息をつきながら、川を首を向ける。
「まだ……死んだと決まったわけではありません。霧島さんを探しま…」 
 その言葉を言い終わる前に、美凪は腹に熱い衝撃と、強烈な異物感を覚え、慌てて下を向く。
 そこには、銀色に光るメスが、突き刺さっていた。

「キサマも、自分は助けてもらいながらも、そうやって佳乃を見殺しにしたんだな……許さん、許さんぞ……」
「ひ、ひじりさん……」
 その瞬間、美凪は確信した。
 この人はもう、駄目だと。
 本当は心の弱い人だったのに、たった一人の家族のために、今日まで一生懸命強いフリをしていたけど、
 佳乃という支えが消えてしまった事が、聖を壊してしまったんだと、彼女は気付いてしまった。
439復讐の狼煙(Murderous fiend):02/04/20 19:25 ID:Cegp/HYK
(一行開け)
「あの男も、あの男を殺す邪魔をするヤツも、ミンナ…ミンナ…コロシテヤル!」

 だから、聖のメスによって意識が無くなる瞬間まで、痛みより悲しみの方が、美凪には大きかった。


「さて……そろそろ行くか……」
 数分後、足元でバラバラになっている美凪には目もくれず、聖はゆっくりと歩き出した。
 全身に血を浴びながらも、その顔はどこか楽しげだ。
 愛するものの仇とはいえ、その姿は、まるで――


【遠野美凪 死亡】
440名無しさんだよもん:02/04/20 19:28 ID:Cegp/HYK
訂正、437〜438の間に

「ひ、聖さん!」
 堪えかねたように声を上げたのは、美凪。
(三行開け)

を付け足しといてください。
お願いします。
441へタレ書き手だよもん:02/04/20 19:30 ID:Cegp/HYK
ハンドル入れ忘れ……鬱だ。
442到達:02/04/20 22:23 ID:buDBhoC1
「大丈夫ですか、高槻さん?」
「この雨量ではな……ちょうどいい、あそこの自販機で少し休むとするか」


 目を覚ました高子を従えて、なんとかT-REXの追撃を振り切った高槻の前に現れたのは、
 川上から流れてくる桃ならぬ少女だった。
 失血こそひどいが、幸いなことに動脈を切断しているわけでもなし、
 内臓を痛めている訳でもなさそうなその少女の体を
 高子の手前ということもあり、高槻は回収することにしていた。
「……ホテルにつく前に目を覚まさなきゃいいんだがな」
 高槻はぼやく。ホテルになら多少の医療器具もそろっていることだろうが、
 今は高子の持っていたばんそうこうくらいしかない。
 それで治療が出来るほど、この少女の傷が浅いわけでもない。
 目を覚ましたら、この少女は恐らくかなりの苦痛に苛まれるだろう。
 それによるこちらのモチヴェーションの低下を、高槻は危惧していた。
443到達(了):02/04/20 22:25 ID:buDBhoC1
「あとどのくらいでホテルにつくでしょうか……」
高子が聞く。
「雨の所為で視界が悪いだけだ。本当ならこの位置にもなればホテルが見えるはず。
 もっとも、オレの暗記した地図が正しければだがな」
 高槻はというと、煙草の自販機に足を向ける。申し訳程度に懐をまさぐると、おもむろに自販機に回し蹴りを入れた。
 ガゴンという鈍い音に続いて、ドサドサとタバコが落ちてくる。満足げな表情を浮かべると、
 高槻はその中からマルボロを選ってポケットに入れた。
「犯罪ではないぞ。生活の知恵だ」
 振り向いて、釘をさすように高子に言う。
「まだ何も言ってませんよ高月さん……」
「ふん。ここの責任者からの慰謝料だ」


 高槻の言ったとおり、ホテルはそこから目と鼻の先だった。
 だが、とりあえず少女の治療に向かった高子とは違い、高槻の顔に安堵の表情はない。
 見た目と失血がいささか派手なだけだ。命に恐らく別状は無いだろう。
(別れてから2時間か……あのガキ、どこで油を売ってやがる)
 月代の死んだ場所からここにまっすぐ向かえば、一時間程度でここにたどり着けるはずだ。なにかあったのだろうか?
(まさか道に迷ってるなんて無いだろうが……いや、マルチが迷子にでもなったかもしれんな……)
 生きて帰ったら、奴には旅行鞄の中身を丸ごと弁済してもらわなければいけないのに。


【桑島高子 高槻 ホテル到着】
【霧島佳乃 生存】
【佳乃はもといた場所から相当な距離を流れている】
444名無しさんだよもん:02/04/24 02:01 ID:UGhIzUBI
メソテ
445物怪:02/04/24 14:54 ID:tu3Ifekz

 はっ、はっ、はっ、はっ………

 荒い獣の息遣いが、森の中を疾走する。
 “それ”は、この森の中では、最強に属する生物だった。
 高い知能、鋭い爪と牙、そして類まれなる運動性。

 はっ、はっ、はっ、はっ………

 “それ”は、獲物を探し求め、この島中をさ迷っていた。
 狭い檻から解放された今、“それ”の行動を妨げるモノは、どこにもなかった。
 いくつもの動物を継ぎ接ぎして得られた醜悪な体は、“それ”を最強の生物へと仕立て上げていた。

 はっ、はっ、はっ、はっ………

 森を疾走する。
 やがて目の前に、大きな丸い建物が見えてきた。
 “それ”は歓喜した。
 いつもいつも、檻の外の安全な場所から、自分を眺めていたモノ。
 そのモノの臭いが、幾つもその建物の中から漂っていた。
 建物の前にある、緑色の四角い箱にも、そのモノの臭いがこびり付いている。
 そのモノが、この箱に乗って移動するということも、“それ”は知っていた。
 ならば、ここにはそのモノがいることになる。

 ………今まで、食いたい食いたいと思っていたモノが、邪魔な檻の無い場所に。
446物怪:02/04/24 14:54 ID:tu3Ifekz


 変化は突然だった。
「にょわ?」
 今まで元気に騒いでいたみちるが、急にその場にへたり込んだ。
「……みちる?」
「あれ、どうしたんだろ……変だぞ、みちるの体」
 みちるは不思議そうに呟くと、何とか立ち上がろうとして……再び倒れた。
 しかも、その倒れ方は、まるで人形を放り出したかのような、奇妙に生を感じさせないものだった。
「ちょ、ちょっと、大丈夫なの!?」
「みゅ?」
 繭に髪の毛を引っ張られ、みちるの顔が上を向いた。
「にゃはは、わかんないけど……なんか体に力が入らないぞ」
「何、病気?」
 広瀬が近寄ってみちるを抱き起こすが、その体はぐにゃりと突っ伏した。
「ひゃっ……何、まるで寝てる子みたい」
「だいじょーぶ、多分立てる……にょわっ!」
「ちょっと無理しないで……七瀬、どっかに休めそうな所無い?」
「あ、うん……コロシアムの中とかに、休憩所ってあるんじゃない?」
 ぐにゃぐにゃと、完全に力の抜けているみちるを苦労して抱かかえ、広瀬は立ち上がる。
 その横には、ソードブレイカーを手にした七瀬と、その上着にしがみ付く繭が続いた。
「とにかく、どこかでみちるを休ませないと……天気も悪くなってるみたいだし」
「でも、またあの動く鎧みたいなのが出てきたら……?」
 恐る恐るそう言う七瀬に、広瀬はきっぱりと告げた。
「その時は七瀬、あんたの出番」
「……ひんっ」
447物怪:02/04/24 14:57 ID:tu3Ifekz

 コロシアムの内部は、さすがに古代そのままではなく、ちょうど球場と同じく、リノリウムに覆われていた。
 ごろごろ、と不気味に雷鳴を轟かせる空を見て、七瀬は思わず広瀬に擦り寄る。
「ちょっと、何よ」
「なんか不気味じゃない?」
「……天気が悪いから、そう思うんでしょ」
 自分でそうは言いつつも、広瀬も完全には信じてない口調だった。
 結局、自販機の横にあるソファにみちるを横たえ、3人は一息つく。
 外は完全に暗くなり、遠雷の音が不気味に響いていた。
「ひ、広瀬、何か飲む?」
「そ、そうね、じゃあココア」
「繭は?」
「………あまいの」
 ぎこちなく頷き返して、七瀬は自販機に500円を投入する。

 一応、コロシアムの中は蛍光灯が明々とついていたが、このがらんとした空間は不気味この上ない。
 あの繭でさえ、言葉少なにみゅーの頭を撫でている。
 その小さな動物はすっかり怯え、繭の腕の中で丸くなっていた。
「そのプレーリードック、随分怯えてるわね」
「オコジョじゃなかったっけ?」
 繭はそんな二人には構わず、じっと大人しくしていた。
 一方みちるの方は、眠っているのか、ぴくりともしない。
 時々怖くなって、口元に耳を近づけるのだが、幸い息の音は聞こえていた。
 薄い胸が微かに上下するのも、よく見ればわかる。
「この子、一体どうしたのかしらね」
「さぁ……どこか悪い子には見えなかったけど……」
448物怪:02/04/24 14:58 ID:tu3Ifekz

 その時、急にみゅーが跳びはね、ぱっと冷たい床を駆け出した。
「みゅー!?」
「あっ」
「オポッサムがどこか行っちゃうわよ」
 それを慌てて繭が駆け出し、七瀬がその後を追う。
「ちょっと七瀬!!」
「すぐもどるから!」
 そう言い捨てて、七瀬は懸命に繭の後姿に続いた。手にした剣は、一応護身のためだ。
 みゅーの白い後姿は、間もなく曲がり角の向こうに消えていく。
「みゅー!!」
「ちょっと繭っ、一人でうろうろするのは危ないって!」

 慌てて後を追うも、繭の足は妙に速い。
 角を曲がり、通路を超え、七瀬はとうとう繭を見失った。
「はぁ、はぁ、はぁ……まったく、どうしてあの子は……」
 壁に手をつき、荒い息を落ちつかせようとする七瀬。
 だがその時、凄まじい落雷の音と共に、眩いフラッシュが廊下を白く染めた。
 そして、一斉に蛍光灯が消える。
「ひっ……!」
 一瞬にして闇に沈んだ廊下で、七瀬はその場で凍りついた。
 ざああぁぁぁ、と壁の向こうでは、豪雨が地面を叩く音が聞こえて来る。
「ま、繭……どこにいるのよ……お願いだから、出てきて……」
 震える声で、七瀬は囁いた。だが、廊下からはなんの返事も返っては来ない………だが。
 奇妙な異音を聞き咎め、七瀬は顔を上げた。
449物怪:02/04/24 15:00 ID:tu3Ifekz

 激しい雨音の支配する、奇妙な静寂の中で、七瀬は確かにその音を聞いた。
 まるで鳥のさえずりのような、赤ん坊の泣き声のような、奇妙な声。
「ま……繭? 何?」
 恐怖に震えながら、七瀬は何かに憑り付かれたように、音のする角へと歩いていく。
 ねっとりと纏わりつくような、生暖かく湿った空気が漂う中、七瀬はそれを見た。
「………え?」
 わだかまる闇が、廊下いっぱいに広がっている。

 次の瞬間、轟いた雷鳴が“それ”の姿を照らし出していた。
 からん、と軽い音を立てて、手にした剣が床に転がり落ちる。
 それと同時に、七瀬はその場に座り込んでいた。

 あまりに恐ろしい目に会うと、息すら出来ないものだと、七瀬はそのとき初めて知った。
 気持ちの悪い染みが、自分のスカートと足を濡らすのを、どこか人事のように感じる。

 虎のような膨れ上がった四肢、毛むくじゃらの胴体……そして、醜悪な猿の頭。
 1メートルはあろうかという巨大な猿の、剥き出しにされた歯の間から、例の甲高い声が漏れる。
 その歯茎は血に染まり、獣はにたり、と笑った。
「ひ………いやああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」
 喉も裂けよとばかりの絶叫に、その獣……鵺は新たな獲物に、興味深げな視線を送る。
 たった今喰らっていた犠牲者の肉片を捨て、5メートルはある巨体を揺らしながら、鵺は七瀬に近づいた。
 闇の中に浮かぶ、赤い二つの点が、七瀬を獲物としてはっきりと見ていた。

 あまりの恐怖に、脳さえ凍りつきながら、七瀬は自分に死の瞬間が訪れることを確信していた。
450物怪:02/04/24 15:02 ID:tu3Ifekz

 凄まじい風圧と共に、虎の爪が七瀬に向けて振り下ろされる。
 七瀬はそれを、まるでスローモーションでも見ているかのように、はっきりと認識することができた。
(あたし……死ぬんだな……ここで)
 臨界を越えた恐怖に、奇妙に冷めた頭の中で、そんな事を考える。
 だがその時、七瀬の視界を何かが横切った。

 腹に重い衝撃を食らい、七瀬は吹き飛んだ。
 廊下の壁に頭を打ち付け、鋭い痛みに目から火花が出る。
 手に滴り落ちる熱い液体に、七瀬は自分の腹が引き裂かれ、内臓からあふれる血だと思った。
 もう助からない、自分はあの化け物に食べられて死ぬんだ。
 ……そのはずが、何故かぶつけた後頭部以外、ほとんど苦痛を感じていなかった。

 ただ、自分の上に何かが乗っているかのように、体が重い。
 その自分に乗っているものが、か細い声をあげた。
「……みゅー……へいき?」
「ま……ゆ?」
 自分に圧し掛かるようにして倒れている繭と、ざっくりと裂かれたその背中を見て、七瀬はすべてを悟った。
 繭が自分に飛び掛って、鵺の爪から助けたのだ。
 その代償が、無残に引き裂かれた繭の背中だった。
「繭……繭っ、しっかりして、大丈夫っ!?」
 七瀬の言葉に、小さく笑みを浮かべてから、激痛と出血に繭は意識を失った。
 だが、そんな二人を嘲笑うかのように、醜く歯を剥き出しにしながら、大猿の頭がゆっくり迫ってくる。

 もはやこの獲物は、逃げる事は出来ないと……そう確信しているようだった。
451長瀬なんだよもん:02/04/24 15:04 ID:tu3Ifekz

【七瀬 広瀬 繭 みちる  コロシアムの中へ】
【みちる   意識不明】
【七瀬、繭  鵺に襲われる】
【繭 鵺の爪にかかり、重傷。失神する】


長らく放置されていた、七瀬組でした。
再びホラー調に挑戦、あえなく玉砕(ぉ
それでは、誤字脱字修正ありましたら、指摘よろ。
452敗戦1:02/04/25 03:02 ID:Lf/pnlOn
 ゴブリン達は、1階の窓からの進入が不可能とみて先程、芹香の考えた罠にひっ
かかった中でただ一人無事だったゴブリンを先頭に、裏口からの侵入を試みた。
 幸いにもそこのドアは開いていて、進入が可能である。
 だが、ゴブリン達も馬鹿ではない。
 つい先程、仲間のゴブリン達が壁に激突して、気を失ったばっかりである。
 ゴブリン達は、慎重にドアを開けると罠がないのを確認してから進入しようとし
た。
 先頭のゴブリンが、資料館に侵入したのを確認して次のゴブリンが入ろうとした
その時。
「ブギィ!」
 と言う声とともに、先頭のゴブリンが飛び出てきた。
「もうそろそろ、来る頃だと思っていたわ」
 といいおわった瞬間に、次に入ろうとしたゴブリンの鳩尾に前蹴りを入れその後
にすかさず右のストレートを顔面にヒットさせて、ゴブリンを倒した綾香は、残り
のゴブリン達を数え始め。
「えっと、残り3人ね」
 綾香が再び構え始める。
 人数で劣っているが、余裕の表情の綾香とは対照的に、あっという間に二人やら
れてしまったゴブリン達は動揺を隠せない。
 こうなってしまえば、勝負は目に見えている。
 綾香は、残りのゴブリンたちを倒すと、扉を閉めて再び資料館に戻った。

 
一方、ゴブリン達は半分以上の数が僅かの間にやられてしまい慌てていた。
 ゴブリンの中のボスであろう者が、指示を出している。
 それを、二回の窓から見ている者、琴音だ。
 彼女は、秋子からこの集団を束ねているものを見つけ出して、その超能力で仕留
めるようにいわれていた。
 その為に、資料館の周りには金槌やガラスなどが置いてあった。
453敗戦2:02/04/25 03:04 ID:Lf/pnlOn
(どうしよう、モンスターでもあんなの当たったら危ないだろう)
「もし当たり所が悪かったら…」
 「死」という言葉が、琴音の頭をよぎった。
 その瞬間、汗がほほを伝って落ち、呼吸が荒くなってきた。
(駄目、そんなことできない、いくら敵でも私の能力で傷つけることはできない)
 琴音がそんなことを考えていると。
 ガシャーン
 と言う音とともに窓が割れ始めた。
 ゴブリン達がもうやけくそで、石を投げ始めたのだ。
 中には1階の壁を壊し始めたものもいる。
「姫川さん! 早く、あそこにいるのが敵のボスよ」
 綾香が琴音に言うが、もうそんなことは解っていた。
 だが先程、死という言葉を意識したせいでその言葉が頭から離れない。
「やっぱり、私にはできません! こんなの私には無理だったんです」
「姫川さん、いまさら何言ってるのよ」
 と綾香が言うが、琴音はその場にしゃがみ込んでしまった。
 そして、壁が壊されたときだった。
「綾香さん、琴音さん、乗ってください」
 ジープに乗った秋子が、壁を壊して入ろうとしたゴブリンを轢き飛ばして二人を
呼んだ。
「姫川さん、早く乗って」
 芹香はすでにジープに乗っていてあとは綾香と琴音が乗るだけだ。
 綾香が、座り込んだ琴音を立たせて、ジープに乗せ自分も乗った瞬間ジープは発
進した。
454敗戦3:02/04/25 03:06 ID:Lf/pnlOn
「すいません、私が作戦を実行しなかったばかりにこんなことになってしまって」
 すかっり夜も明け始めていた頃、ジープの中では先程の会話がされていた。
「琴音さん、そんなに気になさらないで、あなたがあのままボスを倒していても
ジープで逃げる羽目になっていましたから」
「…(コクコク)」
 ジープを走らせながら、秋子と芹香は誤りつづける琴音を慰めている。
「………」
 そんな中綾香は琴音を納得のいかない表情でじっと睨みつづけていた。


【秋子・綾香・琴音・芹香 資料館からジープで逃亡】
455Frei:02/04/25 03:10 ID:Lf/pnlOn
453と454の間二行あけけでお願いします。
久しぶりに書けました。
感想や意見よろしくお願いします。
456困惑、それは時として……:02/04/27 00:42 ID:n5BGUSic
「雨は……上がったか……」
 数分前まで猛威を振るっていた雨音がしなくなったのを確認し、久瀬は唇の端をゆがめた。
「これで、僕の作戦も少しはやりやすくなるな」

「作戦、ねぇ……」
 いつ入ってきたのか、隣の部屋で休んでいたはずの祐一が現れ、その場に座り込む。
「……北川はどうした?」
「……寝てる。『明日からおまえらの仲裁役をしなきゃいけないんだからな、
 俺は今のうちに疲れを取っとくぜ』だとよ」

 愛想のかけらも無く、ぶっきらぼうに答える祐一。
 その手が、胸の内ポケットをまさぐる。
「しかしよ……いつ助けが来るかわからない島でいくら名雪達のためとはいえ、
よりにもよってお前と組む事になるなんてな……最悪だぜ……」 
 よほど納得いかなのか、しきりに愚痴をこぼしながらも祐一が取り出した物は細長の箱――煙草だ。

 それを目にした久瀬は、明らかな怒りの表情を浮かべ、
「おい、貴様……まさかそれを吸う気ではあるまいな……」
 と、こめかみの辺りを引きつかせながら祐一を睨む。
「まあ、そう堅い事言うなよ、高校生にもなってコイツの味を知らないなんてお前ぐらいだぜ?」 
 そう言って祐一は久瀬にかまわず、ライターで煙草に火を付け、煙を吸い込んだ。
「……ここから出たらすぐ停学にしてやるからな、覚悟しておけ」
「ああ、無事にこの島から脱出できたら停学だろうが反省文だろうが好きにしてくれ。
 その時点で命が残ってるんだったら、俺は多分喜んでやってるぜ」
 ふぅ、と煙を吐き出しながら答える祐一。
457困惑、それは時として……:02/04/27 00:43 ID:n5BGUSic
「……フン……未成年の飲酒と喫煙は違法だぞ。子供でも解る社会のルールも守れんとは、
 嘆かわしい奴だ……」

「なぁ……久瀬よ……」
 怒る、と言うよりは呆れた顔で久瀬を見る祐一。
「確かにお前の言った事はその通りで、俺には反論の余地は無いけどよ……」
「ああ、何しろ僕は嘘は言わない主義だしな」
 と、久瀬は誇らしげに胸を張る。

「でも、でもよ……」

「……」

「何でお前は俺の煙草を口に咥えてて、しかも自分のポケットからライターを出してるんだ?」
 
 確かに祐一の目線の先には、煙草に火をつける久瀬の姿がある。
「僕は、昼間切らしてしまったんでね、悪いけど一本貰っておくよ」
 口に煙草を咥えたまま、それが当然の事ように久瀬は言う。
「吸うんだな……お前……ていうかさっきまでの発言はなんなんだよ……」


「ふう……誰の目も気にしないで吸えるというのはいいもんだな……おい相沢、もう一本くれ」
 休憩所にあった灰皿に煙草を押し付けながら、満足げな表情を久瀬は見せる。
「てめぇ……全然吸い慣れてるじゃねえかよ……よくもまぁ真面目な顔して『社会のルール』
 だなんて言えたもんだな……」
458困惑、それは時として……:02/04/27 00:44 ID:n5BGUSic
 そう言いながらも煙草を差し出す辺り、祐一も人が好い。
 が、彼の興味は久瀬本人から、彼の手にあったものに変わる。

「随分変わったライターだな……ジッポか?」
「ん、これか? この島の武器庫に落ちていたんだが……確かに変わった形だな……」
 二本目に火を付けた後、じっくりとライターを見つめる久瀬。
「底に何か書いてあるぞ……『超先生ライター』と彫ってあるな……」
「ちょ、超先生ライタ―? なんじゃそりゃ……お前なんか見間違ってないか?」
 ライタ―に付けるには余りにも間抜けな名前に、祐一は唖然とする。
「いや……目の錯覚だと信じたいが違うようだ……他にもいろいろ書いてあるぞ。
 『感感俺俺』『誰彼10万本』『竹林』『リアル・リアリティ』……よく解らんな……」
「ああ、俺もよくわかんねぇ……」
 しばし、二人の間に流れる沈黙。
 いや、沈黙と言うより、この意味不明のライターに呆れていると言ったほうが正しいだろう。

「とりあえず……100円ライター、て感じだよな、それ」
「ああ、これ自体も、これを考えた奴もな……。まあ一応持っておくか……」
 最後はそんな結論のもと、この二人は初めて意見が合ったのだった。

【久瀬秀一 超先生ライター入手】
459名無しさんだよもん:02/04/28 22:09 ID:XcDg6+9f
めんて
460名無しさんだよもん:02/04/29 17:20 ID:N3Dm6hUe
圧縮警戒メンテ
461模索:02/04/30 01:19 ID:zZn5M81k
「きゅう、けつき?」

 昨日の鴉騒動の疲れが抜けきっていないのか、ぐったりと備え付けのベッドに寝転んでいた晴香が、
 智子の言葉に目を丸くする。

「そや、吸血鬼や、名前はわかるやろ?」
「そりゃあ、吸血鬼ぐらいは知ってるけど、まさかあの二人の傷は吸血鬼の仕業だって言うの?」
 余りにも常識外の出来事に、戸惑いを隠せない晴香。
「ウチも信じられへんかった。たけどな……これ見てみぃ」
 そう言いながら智子は、机の上に置いてあったファイルを晴香に手渡す。
「この治療施設に置いてあった、モンスターの資料や」

「遺伝子研究によって生成、成る程ね。こんな事やるのはあのゲス野郎ぐらいだと思ってたけど、
 世の中にはまだいるのね……こういう事考える変人って奴は……」
 やれやれ、といった感じで、ファイルをめくる。
「……で、肝心なのは最後のファイルや、読んでみ」
 言われた通りに晴香が最後にあったファイルを捲ると、
 そこには、『吸血鬼の被害への治療法』とあった。 
 ざっと目を通してみるが、聞いた事の無い単語や、
 所々にある複雑な数式は、とても一介の学生である晴香に理解できる物ではなかった。

「なんか小難しい事ばっかり書いてあるわね……智子、これ簡単に言うとどういう……」
「私が説明します」

 と、そこに唐突に響く、物静かな声。
「うわっ! さ、里村さん……貴方何処に居たのよ?」
462模索:02/04/30 01:20 ID:zZn5M81k
 気配が無い所からの音によほど驚いたのか、晴香の額には冷や汗が流れている。
「……? 私は最初から貴方の隣に居ましたが、何か?」
「い、いえ、なんでもないわ……気にしないで」
 正直かなり焦ったが、今はそんな事を気にしている場合じゃない。今は、
「そうですね……では、説明を始めます」
 この少女の言葉に、耳を傾けなければいけない。


「簡単に言うとこのファイルは、何らかのトラブルで吸血された人間に対する治療法であるワクチンの
 作り方です。このパークにいる吸血鬼に血を吸われた人は、まず喉の渇きを訴えます。
 この段階では、水分を大量に補給すればまだ理性を保てるので、他人を襲う危険は少ないのですが、
 時間の経過と共にだんだんと人間の血液を求め、そのまま他人の血を吸ってしまえば最後、
 肉体を失う事以外では、永遠に吸血鬼の下僕になってしまいます」
 と、そこまで一気に説明した後、持っていたジュースにストローを差し、
 ちゅ―ちゅ―と吸い始める。
「……美味しいですね、これ」

 それを見た晴香は、青い顔で茜を凝視しながら、智子に耳打ちする。
(と、智子、もしかしてあのジュース昨日私たちが神尾さんから貰ったのじゃない?)
(ああ、どろり濃厚何とかって言うやつや、里村さん平然と飲んでるで、信じられへん……)
 ちなみにこの二人は、一口飲んだだけでジュースはゴミ箱行きとなっていた。

「……続けます。症状が最終段階、つまり他人の血を吸う前にワクチンを投与すれば、
 その人は吸血鬼の下僕化が止められます」
「なんだ、じゃあワクチンをあの二人に打っちゃえばそれで解決じゃない。そうでしょ?」
 ホッとした表情の晴香、だが対照的に、二人の顔は暗い。
「ですが……問題があるんです、この病院では、ワクチンが作れません……」
463模索:02/04/30 01:22 ID:zZn5M81k
 申し訳なさそうに、茜は下を向く。
「え? だってここ病院でしょ? それなのに作れないの?」
「はい……いかんせんこのパークは開園前だったので、正直不足している物だらけなんです。
 私たち医療班はそのことを何度も言ったのですが
 超先生と言う方が『もう特別参加者はこっちに来ている』と強引に……」
 言いながら、そのときの出来事を思い出したのだろう、茜の顔に、ほんの少しだけ怒りの色が見える。


「すみません、話が逸れてしまいました……本題に入ります。この病院から約三時間ほど
 歩いた所に研究所があるのですが。そこに本来この病院に搬入される予定だった薬品があるはずです。
 ここに行って、ワクチンの生成に必用な物を集め、持って帰ってくるというのが、
 現状で唯一行える治療方法です」
 その言葉と共に茜はファイルを閉じ、説明は終わりです。といったリアクションをとった。

「……だれが行くかややな、その研究所に……」
「危険ですが、恐らくこの方法でしか二人は助かりません。私一人でも、行きます」
 茜がそう断言した、その時、

「俺も行くぜ! こんな状況で女の子を助けないなんて、男じゃないからな!」
「私も行くわ、もしあんたが薬を持ってくるのを失敗したら、瑞穂が助からないからね!」
 その声と同時に、ドアが開き、その向こうには矢島と香奈子の姿があった。


 数十分後、一階待合室に彼女たちの姿はあった。
「あの二人以外には事情を智子さんが説明しておいてくれるそうです。
 準備もできましたし、すぐに行きましょう。時間との戦いもありますから」
464模索:02/04/30 01:23 ID:zZn5M81k
 茜の言葉に矢島、香奈子、そして晴香の三人が頷く。
「それと矢島さん。気休め程度ですが、わたしは撃てませんので……」
 と、茜が一丁の拳銃を矢島に手渡す。
「おっ! デザートイーグルじゃん! コイツなら化物相手にも効きそうだな!」
 と、嬉しそうに受けとる。
「矢島君、しっかりやらなアカンで……男は矢島君一人なんやから」
 心配そうに矢島を見る智子。
「OKOK! 俺はこの銃で必ず皆を守ってやるぜ!」
 と、高らかに宣言したのもつかの間、
「はいはい、アンタはこっちね」
 と、横にいた晴香にデザートイーグルは取り上げられ、代わりに一本のサバイバルナイフを手渡される。
「え……ちょ、ちょっと晴香さん! その銃は女性に使えるような銃じゃ……」
 
 ズダアァァンー!
 
 その瞬間、矢島の後方に立てかけられていた観葉植物が、凄まじい音と一緒に弾ける。
 撃った晴香との距離は、ゆうに30mはあったが、弾丸は見事に木の中心に命中していた。
「……まだ文句ある?」
 水平に銃を構えたまま、晴香はニヤリと笑う。
「いいえ! 僕はこのナイフで十分です晴香様!」
 あれほどの腕を見せ付けられては、その答えしか矢島には残っていない。
 そこで、気付いた。
 銃撃に驚いたのであろう。視界の隅で転んでいる観鈴が居た。


「お、驚かせちゃったかしら……」
「当たり前ですよ!」
 ツッコミを入れながらも矢島はすぐに観鈴のそばに駆け寄り、助け起こす。
465模索:02/04/30 01:24 ID:zZn5M81k
「観鈴ちゃん、大丈夫?」
「が、がお……すごく怖かった……じゃ、じゃなくてあ、あゆちゃんが、あゆちゃんが……」
「!! 月宮さんがどうかしたんですか!」
 嫌な予感を感じ、それを心の中で振り払いつつ、茜が観鈴に近寄る。
「あゆちゃんが外に……泣きながら走っていっていっちゃったの……」
「な、なんだって!」
 最悪の状況に、叫ぶ矢島、凍りつく茜。
「もしかして……さっきの話を……」
「聞かれてもうたんやな……アカンで、これは……」


【月宮あゆ 病院から姿を消す】
【巳間晴香 デザートイーグル装備】
【矢島 サバイバルナイフ装備】
466悪夢の檻:02/05/01 12:21 ID:iEmI6VKO

 がちがち、と奇妙な音が聞こえる。
 それが、恐怖に打ち鳴らされる自分の歯の音だと、七瀬はしばらく気付かなかった。
 膝の上にずっしりと圧し掛かる繭は、背中の傷の為か、ぴくりとも動かない。
 だが、七瀬のスカートにべったり染み込んで来る血の量は、あきらかに危険な域に達している。
 すぐにでも医者に見せなければ、間違いなく死は免れないだろう。
 そこまで考えて、七瀬は思わず苦笑した。
 医者。
 もう次の瞬間には殺されているだろうに、自分はこの島で医者の心配をしている。
 七瀬の口から、ヒステリックな笑い声が漏れた。
 それに困惑したのか、それとも獲物をなぶるつもりなのか、鵺は一気に跳びかかろうとしない。
 七瀬は気を失っている繭の身体を抱き締め、顔をその柔らかい髪の中に埋めた。

 自分はもう死ぬ。逃れられない運命によって、このおぞましい化物に食い殺されるんだ。
 焼けるように熱い繭の身体を抱き締め、七瀬は泣きながら目を閉じた。

 怖い怖い怖い怖い。
 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。

 けれど身体は鉛のように重たくて、全ての気力が失われたような気がしていた。
 絶対的な死の恐怖を、疲労と諦めが塗りつぶしていく。
「もう疲れた………ゴメン、折原」

 だが、運命は彼女に安らぎを与える事は無かった。
467悪夢の檻:02/05/01 12:22 ID:iEmI6VKO

「七瀬ぇーーーっ、どこよ、どこにいるの−−っ!?」
 突然の悲鳴に近い叫びに、七瀬は跳び上がるほど驚いた。
 だがそれは鵺も同じだったらしく、ぱっと七瀬から距離を取ると、声のした角へ油断なく視線を向ける。
「ひ……広瀬っ、来ちゃ駄目っ!!早く逃げてっ!!」
「七瀬っ!?」
 七瀬の絶叫は、逆効果でしか無かった。

 ぱっと角を曲がって来る広瀬。
 そして、正確に彼女に跳びかかる巨体。
 その全てが、七瀬にはスローモーションのように見えた。


 鵺は一瞬にして広瀬を押し倒すと、猿面を思いきり近付けた。
「あ………ひ?」
 広瀬の頭を飲み込めるほどに大きく開けられた口。
 それが自分を飲み込もうとしている、と気付いた時には、広瀬はとっさに左手を突き出していた。

 水気をたっぷり含んだ分厚い布と、細い枝を千切るような音。
 次の瞬間、広瀬の獣じみた絶叫が廊下中に響いた。
 広瀬の左手は、半ばから鵺に食い千切られていた。
「ぎゃああああああぁぁぁぁっ!!」
「うわあああああああああぁぁぁぁっ!!」
 広瀬の叫びに、七瀬の絶叫が重なる。
 落ちていた剣を拾い、七瀬は無我夢中で鵺に突進していた。
468悪夢の檻:02/05/01 12:23 ID:iEmI6VKO

 七瀬の剣は、油断していた鵺の尻に、まともに突き刺さる。
 鵺が怒りと驚きに満ちた咆哮を上げ、蛇の形をした尾を闇雲に振り回した。
 大人の腕ほどもある蛇に腹を打たれ、七瀬の身体は再び床に叩きつけられた。
 鵺は広瀬、七瀬から距離を取ると、忌々しげに剣が刺さった場所を睨みつける。
 それから、器用に蛇がくねると、剣を叩き落した。

 その間に、七瀬は焼けつくように痛むわき腹を押さえ、床にうずくまっている広瀬を引き寄せた。
「……げほ、い、今のうちにっ、早くっ」
「いだいいだい、痛いよぉっ!!」
 食い千切られた場所を押さえ、泣き喚く広瀬に肩を貸しながら、七瀬は今度は繭を背負った。
 そして、ちらり、と背後の鵺に視線を向ける。

 全長5メートルを超す鵺からすれば、尻に少し刺さった剣など、画鋲が刺さった程度だ。
 だがそれでも、怯えていたはずの獲物から不意打ちを受け、鵺は少し警戒したように七瀬を見た。
 そして、吼えた時に落とした広瀬の腕を見つけ、それをがつがつと食い始める。

 広瀬の腕を食べ終わるまでは安全、そう思った自分に、七瀬は嫌悪感を覚えた。
「なんとか……なんとか、あの子の所まで戻って、ジープで逃げなきゃ……」
 広瀬を引きずり、繭を背負いながら、七瀬は懸命に歩いた。
 コロシアムは円形なので、ぐるりと回ればまた元の場所にたどり着く。

 二人を置いていけば、自分は確実に助かる………
 そんな悪魔の囁きを必死で押さえ込み、七瀬は早足でみちるの元へ向かった。
469悪夢の檻:02/05/01 12:25 ID:iEmI6VKO


 幸いな事に、鵺は警戒したのかすぐには追って来なかった。
 だが、危険が去ったわけではない。
 普段なら十分もあれば一周できる距離を、七瀬は30分以上かけてようやくみちるの元に帰ってきた。
 闇の中、打ち捨てられた人形のように、ソファに横たわるみちるに、七瀬の背筋に冷たいものが走るの。

「お願い、起きて……お願いだから……」
 広瀬をソファに座らせ、七瀬は必死でみちるを揺さぶるが、まるで死人のようにぴくりともしない。
 その横で、広瀬は自分の傷口を押さえ、しくしくと泣いていた。
「……いたい……いたいよぉ」
「あ……広瀬……な、何か止血できそうな……」
 広瀬の食い千切られた腕の断面から滴り落ちる血を見て、七瀬はとっさに止血できそうなものを探す。
「ハンカチと……何か紐のようなもの……そうだわ!」
 そこまで考えて、七瀬は自分のツインテールを縛っている紐をほどいた。
 そして、それで広瀬の腕を取ると、傷口にハンカチを押し当てる。
 闇の中が幸いし、うっすらとした光でほとんど生々しい痕を見ずに済んだ。
 もし、鵺に食い千切られた断面を、光の下で凝視していたら、いくら七瀬でも冷静でいられたか怪しい。
「ひぃ……」
「が、我慢して……それから……」
 手にした紐で、ハンカチで巻くように、傷のすぐ上をきつく縛りつける。
 そうしてから、今度は腕の付け根を、ぎゅっと絞った。
 おぼろげな知識の応急処置を施してから、七瀬は決意を固めた。
 繭を背負い、広瀬に肩を貸して立ち上がらせ……そして、動かないみちるの身体を抱き上げた。

 一人一人は決して重くはないが、三人分の体重を受け止めて、七瀬は喘いだ。
 蛇に打たれた場所が、凄まじい苦痛を発している。
 肋骨が折れているかもしれない、そんな予感を必死で押し殺し、七瀬はふらつきながら足を踏み出した。
470悪夢の檻:02/05/01 12:31 ID:iEmI6VKO

 三人分の体重が、ずっしりと肩に掛かってくる。
 中身のない鎧との戦い、鵺との遭遇、そして打たれた傷。歩く事さえ苦痛な状態で、七瀬は気力だけで立っていた。
「七瀬ぇ……どうするのよぉ……」
 血と涙で汚れた顔で、広瀬が弱々しく尋ねる。
「何とか……あのジープの所にまで行けば、ここから逃げ出せるわ。そうしたら、繭もあんたも、病院に連れて行ける」
「無理よ……あんな化物から、逃げられっこないわ……」
 泣き言を言う広瀬を無視し、七瀬はゆっくりと歩き始めた。
(……何とかなる、何とかなる、何とかなるんだから……)
 滲み出る汗が額を伝い、ふらつく足は、ほとんど言う事を聞かない。
 それでも、七瀬は懸命にジープの停めてある場所に向かっていた。

 突然廊下に、鵺の甲高い鳴き声が響く。
「ひっ……な、七瀬っ、もう無理だよぉ! 置いてこうよ、その子! ねぇ!!」
「馬鹿言わないで」
 鋭い声……実際にはか細い声にしかならかったが……で、七瀬は怒鳴りつける。
「この子も、繭も、あんたも、みんなで逃げるのよ……ジープに着けば、何とかなるのよ」
「無理よ!! あの化物に追いつかれちゃうわよ! そんな見ず知らずの子、どうして構うのよ! みんな死んじゃうのよ!?」
 泣き喚く広瀬に、七瀬は頑固に首を振った。
「生き残るなら全員、死ぬのも全員……みんなで助かるの、絶対に………」
「……みゅー……」
 肩越しから聞こえてきた、弱々しい声に、七瀬ははっと顔を上げた。
「繭、目が覚めたの?」
 繭は自分の血に染まった小さな手で、七瀬の頬に触れる。

「……私を置いてって」
471悪夢の檻:02/05/01 12:35 ID:iEmI6VKO

 一瞬、七瀬は言葉を失った。
「私を置いてけば、みんな助かるから……」
 それはつまり、鵺が『餌』に気をとられている内に逃げられる、という意味だった。
「この………馬鹿っ!!!」
 広瀬がギョッとするほどの大声で、七瀬は叫んだ。
「あんたが死んだら……!! あんたが死んだら、悲しむ人がいるって事、わかんないの………!!」
 血が滲むほど強く唇を噛み締め、七瀬は押し殺した声で囁く。
「馬鹿……本当馬鹿なんだから………」
 涙混じりのうめきに似た声に、繭も広瀬も、何も言えなかった。
 そのまま、七瀬は一度も口を開かず、黙々とジープに向けて歩き続ける。
「七瀬っ、あそこ!! ジープが見えるっ!」
「……え?」
 ほとんど無意識で歩いていた七瀬は、広瀬の声に顔を上げた。
 窓の暗闇の向こうに、ぼんやりと緑色のジープの姿が浮かび上がっている。
「た、助かった……」
 泣きながら、広瀬が窓を開け、外に飛び出していく。
 外は雨が降っていたが、これで助かると思えば、気にもならない。
 七瀬も遠退きそうになる意識を必死で繋ぎ止め、広瀬の後を追った。

「………え?」
 七瀬は一瞬、それが何か理解できなかった。
 無茶苦茶に壊され、歪められた、ただの鉄の塊。 ……かつて、ジープだったもの。
 広瀬はそれにすがり付いて、泣いていた。
「嘘よ、こんなの嘘よぉ………どうして、あたし何も悪い事してないのに……どうしてよぉ……」
 七瀬は、ようやく理解した。あの化物が、どうしてすぐにでも自分達を追い掛けて来なかったのか。
 初めから知っていたのだ……この乗り物を壊してしまえば、人間達は身動き取れないのだと。

 ………背後に、鵺の息遣いが迫って来ていた。
472長瀬なんだよもん:02/05/01 12:40 ID:iEmI6VKO
あまりにも寂しいので、自分でリレーしてしまいますた。
スンマソン。

【七瀬 腹部を打たれ、肋骨骨折。髪留めのリボンは、広瀬の応急処置に使用】
【繭  背中に傷。かなりの重傷】
【広瀬 左手を鵺に食い千切られる。七瀬によって応急処置】
【ジープは鵺によって破壊されていた】

それでは、誤字脱字修正異論ありましたら、指摘よろ。
473:02/05/01 18:25 ID:j16aUjMh
わかっていた。
他の誰でもない、繭は、わかっていた。

自分の傷は、既に致命傷なのだ---------

七瀬達に気づかれないようにそっと咳き込む。口元に添えた手には、吐き出した血がべっとりと。
「……」
痛みもだんだんと鈍くなる。あるいは、痛みとともに命が遠ざかっていっているのか。
あまりにも客観的な、だが同時に絶望的でもある自らの分析眼に、繭は内心驚いていた。
---------それとも、その心すら麻痺し始めていたのか。


「あんまりよ……どうして、どうして……!」
半狂乱……というにはいささか力なく……広瀬が叫ぶ。
七瀬にも、もはや歩くための気力も体力も残されていない。
ただ、生きるという意思だけは、あるいは呪いとでも言うかのように、はっきりと胸に焼き付いている。
(……でも……)
あまりにも状況が絶望的過ぎる。足となるべきジープは既になく、ある意味では荷物とも言える重症の怪我人が、自分含め3人。
(やっぱ、ここまで、かぁ……)
あきらめの思考が、ふっと頭を掠める。なぜか、不思議とやすらかな気分になった。
---------ああ、あたしは死ぬんだ。ここで---------
474:02/05/01 18:27 ID:j16aUjMh
ひゅん、となにかが七瀬の脇を掠め、ばらばらになったジープの残骸に突き刺さる。
所々に赤い液体が付着した、何かで見覚えがある白いそれ……

手の、骨。

「------------------!!」

広瀬が、声にならない叫び声を上げ。
七瀬が、同時に言いようのない恐怖を感じ。
繭は。

---------あ、武器だ---------


踏みしめるようにして、鵺が近づいてくる。パフォーマンスは終わった。
これからは宴の時間。彼にとっての愉悦、殺戮の時間。
凶悪な顔は、ますます凶悪な形に歪み。
まずは未だにジープにすがりついている女を--------


気がつかない。
気がつけない。
圧倒的優位に立つもの特有の、その錯覚。油断。
先程、あのニンゲンたちに恐怖を与えるために投げつけた骨。広瀬の骨。
自分がその爪で傷つけた、背の低い人間。
彼の視界にはそれがない。その事は、彼に何の疑問も抱かせない。
彼には、それに気を配る必要などなかったからだ。
だから、彼は自分の足元を濡らす、ジープのオイルにも気がつかず、自分の視界の外にいる人間の攻撃にも気がつかない。

475:02/05/01 18:27 ID:j16aUjMh
「やめ……ろぉっ!」
無駄な足掻きとわかっている。それでも、何かをせずに入られずに。
七瀬は、鵺を蹴り飛ばす。
もっとも鵺にしてみれば、それはかゆみすら感じぬ攻撃に過ぎなかったのだが。
ただ、彼の足を濡らすオイルが、それを変えた。
オイルで地面との摩擦を失った彼の両足は、止まることなく彼の体を前のめりに傾けた。

倒れる鵺の目に映ったものは、彼が食らおうとしていた女ではなく、オイルが広がる地面でもなく。
小柄の少女の、あまりにうつろな瞳。
そして、その手に握られた------------------


鵺が倒れるずしんと言う音にまじり、何かがつぶれるような不快な音が響いた。
鵺はおきあがらない。ただその手足が、不規則に痙攣を繰り返して。
しばし呆然とその様子を見つめた後に、七瀬はふとそれに気付いた。
鵺の後頭部から奇妙に生えた白いもの。鵺の頭を貫いた衝撃で指の部分が折れていなければ、それが先程の骨であると理解できたはずである。
そして気付く。
「繭……まさか……!?」

繭が何を考えて、鵺の前に骨を持って立ちふさがったのかは分からない。
七瀬の行動を予測していたのか、それとももはや筋道を立てた思考など望むべくもなかったのか。
476槍(了):02/05/01 18:31 ID:j16aUjMh
苦しいな。
とても、苦しい。
でも、これも、もうすぐ終わるんだろうな。
終わったら、どこへ行くのかな。わたしは、どこへいくのかな。
……まぶしい。光だ。
目の前の邪魔な頭を、だれかがどけてくれた。
かすんで良く見えないけど、多分、あのふたりだ。
いいよ、私を置いていって。もう、動けないから。歩けないから。
でも、こいつは私がつれていけると思うから。

「……み、ゅ……ー……」

彼女の最期の言葉は、七瀬や、広瀬に届いたであろうか---------?


【繭 死亡】
【鵺 繭の行動によって脳を貫かれ死亡】
【七瀬 広瀬 依然消耗】
477名無しさんだよもん:02/05/02 08:42 ID:Bo9jTzq4
危険なところなのでageます
478名無しさんだよもん:02/05/04 10:20 ID:D8qkBK+X
めんて
479彼たちの見解:02/05/04 15:26 ID:aR2ULAIl
「さあ、みんなで考えよう…」
 6人が円を組んで座っている中、大志はそう言った。
 なぜ、こんなことをしているのかというと、今後のことについて話し合いをするからだ。
「今後のことについてだろう…そんなこと言われても、急には決めれないぞ」
 あぐらをかき、膝にほお杖をつきながら、和樹が答えた。
「では、同志よ!お主はまずどうしたいのだ!」
「この島で起きているくだらないことを早く終わらせたい」
「うむ、それはここにいる一同全員が同じ意見だと思う。しかぁーし、そうなると、その方法を考えなく
 てはならない」
「そんなの、この島を脱出すればいいだけじゃん」
 和樹はやる気のない声で言う。
「ふふふ…同志よ。そう結論を出すのに、慌てるでない。作戦というのは、2重3重にたてるのが鉄則」
「……と言うと」
「吾輩がすでに6つの作戦を用意しておるわ」
「ほう〜、それは用意のいいこって。とりあえず、6つ全部聞こう」
「ふふふ…6つの作戦とは

   1:この島を脱出する
   2:救援を待つ
   3:この事件の企画者の超先生を倒す
   4:なんらかの方法で外界と連絡をとり、助けに来てもらう
   5:モンスターどもを全滅させ、平和な島にする
   6:疲れたので、天国に行く
                               」
「どうだ!このパーフェクトな作戦の数々」
 大志は立ち上がり、得意そうな顔して笑っている。
「……とりあえず、『5』と『6』は却下だな。特に『6』は」
「なぜだ?『6』は1番手っ取り早いぞ」
「問題外だ。なんで死ななきゃならないんだ。それを避けるための作戦なのに」
「残念。それでは、『5』・『6』は置いといて、残りを考えよう」
480彼たちの見解:02/05/04 15:26 ID:aR2ULAIl
「まず『1』だが、これは同志も言っていたな」
「ああ、これが一番いいんじゃないか」
「では聞くが、海を渡る乗り物もない。方角どころか、この島がどこにあるかも分からない。この状態で
 どうやって脱出できる」
「た…確かに。けど、それは何か脱出する方法があるから作戦に入れてるんじゃないのか?」
「いや、吾輩はこの企画の終わらせ方を言っただけで、それができるかはまた別だ」
「役に立たない作戦だな」
「まあ、同志よ。そう悲観することはない。吾輩は『3』ならできそうな気がするのだが」
「『3』か…」
「考えてみよ。『2』の場合、救援がくる=帰る日以降ということになる。この企画者、超先生は吾輩達
 の滞在予定期間中にリアルリアリティーというものを完成させようとしているのだから、この作戦は
 利口だとは思えん」
「『4』は?」
「『4』はだな。ある場所を除いて、連絡をとれるような所はないだろうな」
「ある場所とは?」
「それは決まっているだろ。超先生が退避している場所。しかし、あの超先生のことだ。もうすでに、
 通信機器等は使えなくしているだろう」
「なるほど、それで残りの『3』か…。けど、それでも『3』の作戦には…」
「うむ、超先生のアジトを探すことが必要となってくる。しかし、同志よ。作戦というのは、1つに搾る
 必要はどこにもない」
「……どういう意味?」
「つまり、『3』を主にして、『2』と『4』も実行すればいいのだ」
「なるほど、『3』を実行している時に、通信機器があれば、『4』に変更し、もし日にちが経てば、
 『2』にする」
「そうだ。吾輩達は『3』をやりつつ、『2』と『4』をするのだ」
「そうか…。よし、これなら」
「しかし、同志よ。まだ、もう1つ可能性がある」
「もう1つ?」
481彼たちの見解:02/05/04 15:28 ID:aR2ULAIl
「うむ、それは『5』のことだ」
「待て。あの作戦は…」
「本当に不可能だろうか?吾輩はそうは思わん。この島には、確かに人を殺すモンスターが存在する。
 しかし、それは全体の何割だ?吾輩はさっき、モンスターを全滅させると言ったが、それはあくまで
 危害を加えるモンスターだけだ。危害を加えないモンスターを殺す必要はない。どうだ?」
「た、確かに、人を殺すようなモンスターは全体の半分にも満たないかもしれない。しかし、例え
 少なくても、1匹1匹が強かったらどうする?返り討ちにあうだけだ」
「それはどうかな。パンフをよく見てみろ。武器倉庫という場所が記されている。たぶん、モンスター
 どもが暴れだした時に使うものだろうな。あたり前だが、殺傷能力も高いだろう」
「しかし、大志…」
「馬鹿者!このような体験はもう2度とできないかもしれないのだぞ。このことを(同人誌の)ネタに
 せんでどうする!」
「大志、お前…。やっと本音が出やがったな」
「ふっ、吾輩としたことがつい短気になったしまった」
「そんなことだろうと思ったよ。お前が真面目になる時は、何か裏がある。…しかし、その作戦は
 のったぜ」
「さ、さすが!まい同志!それでこそ、一緒に世界征服を目指す者」
「それじゃあ、大志。意見もまとまったところでモンスターどもを倒しに(ネタを作りに)行くか!」
 和樹は立ち上がりそう言った。
482彼たちの見解:02/05/04 15:28 ID:aR2ULAIl
「ちょっと待った!」
「おお、その声はまいシスター」
「どうした?瑞希」
「あんたらねぇ〜。さっきから黙って聞いてれば。なんなのよ、全滅って!始めはなかなかいい感じに
 進んでたのに、どうして、そういう結論になるわけ」
「何を言うか、まいシスター。あたり前の結論ではないか」
「あんたは黙ってて。和樹、冷静に考えて。そんな作戦が成功するはずないじゃない」
「いや〜、けど、ネタが…」
「あんたネタで死ぬ気!」
「……瑞希。俺は同人誌のためなら命を懸けれる」
「おおおおお!同志和樹よ。よくぞ言った!」
「ここに馬鹿かがいるわ」
「馬鹿でけっこうさ」
「むう〜、まあいいわ。けど、よく考えなさい。それはあんた達が勝手に決めたことでしょでしょ。
 他の人が果たして賛成するかしら」
 そう言うと瑞希は、詠美と南の方を向いた。
「…いやぁ……わたしは…わたしはぁ…ブツブツ」
「ここにいるよりはずっといいんじゃないですか」
「……。まあ、この人達は初めから数には入ってないわ。他の2人、確か川澄さんと倉田さん、あなた達
 の意見を聞きたいわ」
「……」
「…私は魔物を討つ者だから」
「あははー、舞にまかせます」
「諸君どうやら、意見は一致したようだな」
「わ、私は認めてなーーい!」
483彼たちの見解:02/05/04 15:29 ID:aR2ULAIl
 朝日が昇り、いよいよ出発の時が来る。
 あれから、さらに会議は続き、結局ネタを書くためのスケッチブックやら、今後、必要になるような
 物を取りにいくためホテルまで向かうことになった。
 瑞希もホテルに向かうのは賛成し、とりあえず、この場からは移動することにはなった。
「あ〜あ、結局徹夜しちゃった〜」
「まいシスターよ。1日寝なかったぐらいでだらしがないぞ」
「あんた達と違って私は慣れてないの」
「まあまあ、喧嘩は後にして、今はジープに乗ろうぜ」
「うむ、では皆の衆いくぞ!」
「「おうーーーー!」」
 みんなかけ声とともに拳を空に上げる。
 瑞希は除いて…


 【大志一行 ホテルに向かう】
 【危害を加えるモンスターを全滅させる作戦開始】


 ・

 ・

 ・
「ねぇ、ところでジープに全員乗れるの?」
「…………あっ…」
 瑞希の声に残り一同は拳を上げたまま、声をそろえ言った。


 【ジープ 定員オーバー】
484まかろー:02/05/04 15:33 ID:aR2ULAIl
RTO氏、482483の間は2行あけでお願いします
485名無しさんだよもん:02/05/04 21:24 ID:RyRkxYYM
大志達って六人だっけ?
486名無しさんだよもん:02/05/06 12:06 ID:fwQwpXtB
めんて
487名無しさんだよもん:02/05/08 02:05 ID:CmYxwRMs
動いた時と、止まってる時の差が激しいな……
488名無しさんだよもん:02/05/08 09:36 ID:EG3+Q3xt
メンテ
489名無しさんだよもん:02/05/09 03:14 ID:QQaLL5lc
メンテ。
490名無しさんだよもん:02/05/09 23:44 ID:LL1D7EmU
メンテ上げ
491Deep Devil:02/05/10 01:05 ID:/o3dDBtj

 巨大な烏賊は、悠々と海底を泳いでいた。
 岩切はとっさに、岩のひとつに身を隠す。

(……でかい)

 思わず内心で感心してしまうほど、その烏賊は巨大だった。
 岩切の目測では、頭から足の先まで、30メートルは下らないはずだ。
 じっと岩陰でクラーケンの様子を窺いながら、岩切は唇を噛む。
 こうしている間にも、初音には刻一刻と危険が迫っているかもしれない。
 だが、いくら水戦試挑躰とはいえ、素手であの化物と戦えるとは、岩切も思っていなかった。

 海洋生物の知識は、海中で行動することの多い岩切にとって、必要不可欠なものだ。
 烏賊という生物は、見掛けによらず力も強く、吸盤には歯まで生えている。
 30メートルを超す化物烏賊の足に捕まれば、いかに強化体とはいえ、一瞬でずたずたにされるだろう。
 その上、水中のジェットの名の通り、烏賊はかなりの速度で泳ぐ事が出来る。
 結果、今の岩切では、じっと隠れてやり過ごすしか、この烏賊への対処法はなかった。

(ちっ……早く、早く行ってしまえ!)

 クラーケンは、その触手を振りたくりながら、岩切の頭上を通過していく。
 岩切は、ほっと胸を撫で下ろした。

(何とかやり過ごせたようだ……っ!?)

 安堵した矢先、岩切は硬直した。
 クラーケンの巨大な目は、しっかりと岩陰の岩切を捉えていたのだ。
492Deep Devil:02/05/10 01:07 ID:/o3dDBtj

 生物の中で、ダイオウイカの目が最も大きいといわれている。
 このクラーケンも例外ではなく、1メートルはあろうかという巨大な目を、ぎょろり、と岩切に据える。

(くっ、気付かれていたか!!)

 岩切がとっさにその岩場から飛び出すのと、クラーケンの足がその岩を粉々に砕くのは、ほぼ同時だった。
 必死で海岸を目指す岩切を嘲笑うかのように、クラーケンは10数メートルはある足を、岩切に伸ばす。

(このっ……捕まってたまるか!)

 それを、何とか身を捻り、海水を蹴ってかわしていく。
 元々動きは緩慢なので、決して逃げるのに苦労する相手ではない。
 だが、一瞬でも気を抜けば、待っているのは間違いなく死だ。

(いくらこいつでも、陸上にまでは追ってこないだろう……何とか、浜まで行かねば……)

 必死で海水を掻き分ける岩切だが、クラーケンの方も、その図体の割には意外に俊敏に足を伸ばしてくる。
 クラーケンの吸盤のひとつが足を掠め、岩切は歯を食いしばった。
 触れただけにも関わらず、鋭利な刃物を当てられたかのように、そこから赤い煙が噴き出す。

(後少し、後少しだ!)

 身体中の力を振り絞り、岩切は必死で水面を目指す。
 だが、その背後で、クラーケンは烏賊がそうするように、高速移動用の為の、大量の水を吸い込んでいた。
493名無しさんだよもん:02/05/10 01:09 ID:/o3dDBtj
岩切パート書いてみました。
しかし、ほとんど動いていない罠。

【岩切 クラーケンと遭遇、やり過ごそうとするも失敗、浜まで泳ごうとする】

494名無しさんだよもん:02/05/11 01:26 ID:Pw0zRbna
メンテー
495本音と建前(1/3):02/05/11 22:45 ID:h8WAnQCG
 郁未の負傷に三人は全く別の反応を示した。
 返り血で血塗れになった名雪は呆然自失の状態で血でべっとりと汚れた自分の手見つめるだけだった。
 真琴は、郁未の負傷と戦闘が終わった影響に緊張の糸が途切れ、恐怖が襲ってきたのだろうヘタヘタと座り込み、半泣き状態で震え出してしまった。
 この中、一番冷静だったのは彩であろう、すぐさま郁未背中の様子を見るや否、自分の服の袖などを破って止血処理を行おうとした。
 彩の慣れない手付きでの止血作業が終わる頃には他の二人もようやく冷静さを取り戻してきた。
「沢渡さん、水瀬さんの顔を拭いてあげてください」
 ちらっと、彩は真琴の顔をみてこう告げた。
 真琴は「あっ!」って言って、慌てつつポケットからハンカチを取ると血がついた名雪の顔を拭き始めた。
 未だに、呆然としている名雪自身もそれに呼応するかのように自分の顔や手の汚れを落とし始めた。
「止血作業は終わりました、これで暫くは大丈夫なはずです…」
 彩の止血作業が終わり、これからどうするかの相談をすることにした。
「このままここにいて、また襲われたら困るよ〜」
 名雪はもっともなことを言う。
「それでは早速管理室に向かいますか?」
 彩がそれに同調する。
「でも、誰が担いでいくの?」
 真琴が郁未を指して一つの問題に触れてしまった。
(せっかく、その問題に触れないようにしていたのに…)
(真琴ちゃんも気が利かないだお…)
 気まずい雰囲気が漂ってしまう。
「ここは言い出しっぺがやるべきだよ〜」
 名雪は担ぐ係りを真琴に勧めた。
「え〜、いやだよ。だって重そうだもん」
496本音と建前(2/3):02/05/11 22:47 ID:h8WAnQCG
「……」
(あ〜あ、言っちゃっただお)
「……」
(核心、ですね)
 また重い雰囲気があたりを覆う。
「こほん、担ぐ係りは沢渡さんがいいと思う人、手を挙げてください」
 彩の台詞に、彩と名雪が手を挙げる。
「はい、多数決で沢渡さんに決定です」
「え〜〜!?」
 真琴が不満の声をあげる。
「民主主義の勝利だよ」
 にっこりと名雪が真琴の肩を叩く。
「数の暴力だ〜!!」

(二行開けてください)

 結局、郁未は真琴が担ぐことになって、道沿いに進むことになった。
「あう〜、疲れたよ〜」
 郁未をおんぶしている真琴が弱音を吐く。
「でも、よく止血の方法なんて知っていましたね〜」
 少し間延びした名雪の台詞、また眠くなってきたのであろう。
「それは昔、本の…」
「あ!!前から人が来るよ!」
 彩の台詞を遮って真琴が前方を指す。
「あ、ホントだ〜」
「でも…裸です…」
 二人組みの男女がこっちに向かってくるのだが、男の方は裸だったりもします。
 いざ、対峙して名雪達3人娘が一言。
497本音と建前(3/3):02/05/11 22:48 ID:h8WAnQCG
「ターザンだお?」
「変態さん?」
「…攻め…」
 酷い言い様である。
 流石の柳川でもこの台詞には開いた口も塞がらない。
「初対面の人に言う台詞かい?」
「だってその格好は、確実に変態さんだよ」
 真琴が容赦なくツッコミをいれる。
「だから、この格好はだな…」
 慌てる柳川、そこにはるかが。
「事情があってこんな格好してるんだよ」
「と…とりあえずだな。君達は行くあてあるのかい?」
 3人は顔合わせる。
「管理室に向かおうかと思っていたのですが…」
 と彩が答えた。
「管理室…、この近くにあるのか?」
 柳川もこれには初耳だった、だが柳川はこの3人だけで向かわせるのも危険と判断した。
(管理室か…後で長瀬さん達に報告の必要有りだな…)
「もう行けばば、仲間達がいるホテルがある。そっちのほうが安全だ」
 名雪と彩は顔を見合わせたが。
「は〜い!!ついてきま〜す!!」
 真琴が即答してしまった。
「よし、いいだろう。ついて来い」
 柳川がホテルの方向へ進むと、背中に軽い衝撃が走った。
「持って♪」
 真琴が郁未を柳川の背中に乗せたのある。
「ぐ…」
 柳川は苦い表情をしたのをはるかが見てクスクスと笑った。
498R1200:02/05/11 22:50 ID:h8WAnQCG
【彩 真琴 名雪、柳川&はるかと合流。ホテルへ目的地変更】
【柳川、郁未を背負うことに。管理室は後で長瀬’sに報告】
【郁未、怪我はそこまで酷くない(?)でも意識戻らず】
499探求者、住井護:02/05/12 01:35 ID:LrzU8xA0


 数十分後――

「む、むむむむむっ!」
 眠れん、ちっとも眠れん。
 確かに心身ともに疲れているし、明日以降もまだサバイバルが待っているんだから、
 ここは一分でも多く寝ておかないといけない所なんだが、

「あっ! お、お姉ちゃん! あん! あ、あん!」

 奥の部屋から女性の喘ぎ声が聞こえて来たら、眠れるわけ無いだろう。
 そもそもなんだ、あの姉妹は一般的にいうアレなのか?
 ヤバ、激萌え……じゃなくて!
 蝉丸さんが部屋から出てきてないからその可能性はないから……もしや蝉丸さんと
 禁断のトリプルプレイ中か?
 ヤバ、勃っちまいそう……でもなくて!
 暫くさまざまな考えが頭をよぎったが、所詮は推論に過ぎない。
 駄目だ! やはり俺は探求者だ! 真実は自らの目で確かめるしかない!
 
 と、いう訳で早速奥の部屋の扉に移動し、ドアのノブに手を当てる。
(よし、鍵はかかってない、ではいよいよ正解の発表だ!)
 と心の中で大声を上げながらも、ほんの数センチ扉を開け、中の様子を見る。
 そこで繰り広げられている光景は、
(おおおおおおおおおっ!)
 正に鼻血ものだった。
 っていうか俺、生きててよかった。
500探求者、住井護:02/05/12 01:35 ID:LrzU8xA0

「ぐっ……まだか! 香里!」
 なんだか知らないが栞ちゃんをがっちりと押さえつけている蝉丸さん。
 いや、この際野郎なんかはどうでもいい。

「ちょ、ちょっと待って! ほら栞……どう……?」
 重要なのは、栞ちゃんの耳たぶに息を吹きかけている香里さんだ。
 何であんな行為に及んでいるかは全く解らないが、これを見逃すなんて男ではない。
 男、住井はじっくりと堪能させてもらおう。

「ほら、気持ちよくなってきたでしょう……」
 言葉とともにはだけた服の上から栞ちゃんの胸に妖しく手を添え、じっくりと愛撫する。

「あっ! あっ! うん、き、気持ちいい……」
 栞ちゃんは朱に染まった顔を更に上気させていて、ハッキリいって物凄くエロい。
 その上香里さんまで半裸だ。もう俺の息子は勃った勃たないなんて次元を通り越している。
 お祭り状態だ。ワショーイワショーイ。

 んなくだらない事を考えていると、香里さんは既に栞ちゃんの秘部に手を当てていいた。
「そう……我慢しなくていいのよ」
 と、似合いまくりの台詞の後、指を栞ちゃんの茂みに一本二本といれていき、
「あうっ! あん! わ、私……わたしもう!」
「いいのよ……ほら!」
 と女性にとって一番感じる部分を香里さんが摘んだ瞬間、

「んんんんんんんんんんんんっ!」

 声にならない声が、部屋に響いた。
501探求者、住井護:02/05/12 01:36 ID:LrzU8xA0
「坂上さん、これで大丈夫なの?」
 寝静まった栞に毛布を掛けながら、香里が浮かない顔で蝉丸を見る。
「うむ、催淫効果も収まったようだし、恐らくは大丈夫だろう」
「そう……よかった……栞あのままだったらどうしようって思ったわよ」
 ホッとした様子で、息をつく香里さん。
 
 成程、どうやらワケありだったようだな。
 そうと解ればもう俺はここにいる必要は無い、探求者住井の冒険はめでたく幕を閉じ……
 その時、唐突に目の前のドアが開き,
「で、住井君、いつまでそこにいるつもり?」
 仁王立ちの香里さんが、そこに立っていた。


「い、いつから気付いていたんでしょう?」
「ついさっきよ、あなたに気が付かなかったのは私の一生の不覚だったわ……」
 や、やばい、なんか上手い言い訳を思いつかないとマジで死もありえる……。
「で、何か言いたい事はあるの?」
 よ、よし! これが生きるために俺に残された最後のチャンスだ! やってやるぜ!

「探求者たるもの、疑問に思った事は確かめなければいけないのです」

 やった! エレガントさに溢れたこれ以上ないぐらいの申し開きだ! 
「納得したでしょう? 香里さ……」
「んなわけないでしょうが!」
 と、叫びと同時に無数の鉄拳が唸り、俺を吹っ飛ばす。
 ああ、折原、先に逝ってるぜ……。
502探求者、住井護:02/05/12 01:37 ID:LrzU8xA0
「以上、回想終わり……やっぱり俺が悪いよな、これは」



【坂上蝉丸 住井護 美坂栞 美坂香里 立川郁美 二日目】
503へタレ書き手だよもん:02/05/12 01:39 ID:LrzU8xA0
レス間は2行開けでRTO氏願いします。
504名無しさんだよもん:02/05/14 13:35 ID:XXLZUY0w
メンテです
505探求者、住井護(修正版):02/05/15 23:35 ID:ZBPG5gv/
「ううっ……顔が痛てぇ」
 俺――住井護は、さっきからずうっつと赤く腫れた頬をさすっている。
 いわゆる男の傷ってやつだ。名誉の負傷とも言うな。
「ったく、香里さんは……もう少し手加減してくれりゃあいいのによ……
 こんなになるまで殴るなんて……俺は悪くなんか無いのに」
 そう言って俺は目を閉じ、昨晩の出来事を思い浮かべた。


「し、栞! どうしたの! なにがあったの?」
 あからさまに様子がおかしいこの少女――美坂栞ちゃんにこちらも明らかに狼狽の表情を
 見せる姉の香里さん。
 まあ、当然の反応だよな。いきなり妹さんが現れてしかも普通の状態じゃないときたもんだ。
 だが男の俺にとってはむしろ美味しすぎ……ゲフンゲフン……やめておこう、ぶっ殺される。
「むっ、君はこの娘の家族なのか?」
 ちなみにその栞ちゃんを抱えているのは坂上蝉丸さん。
 プロレスラーのような厳つい体格と、凛々しい顔つきがマッチしたナイスガイだ。
「は、はい。姉の、美坂香里です」
「そうか、丁度よかった。すまないが手伝ってくれ! 訳は後で話す!」
 言うが早いか蝉丸さんは香里さんの手を引き、奥の部屋に駆け込んんでいく。
「あの……俺はどうすれば?」
 って二人とも無視かよオイ!
 ええい、仕方がない。
 耕一さんもまだ帰ってこないが、男手は蝉丸さんがいるので、俺のやるべき事はただ一つ。
506探求者、住井護(修正版):02/05/15 23:36 ID:ZBPG5gv/
「も、もう限界だ、に、二時間だけ……」
 己の睡眠欲を、満たす事だ。

 数十分後――

「む、むむむむむっ!」
 眠れん、ちっとも眠れん。
 確かに心身ともに疲れているし、明日以降もまだまだ生き残りを賭けたサバイバルが
 待っているんだから、ここは一分でも多く寝ておかないといけない所なんだが、

「あっ! お、お姉ちゃん! あん! あ、あん!」

 奥の部屋から女性の喘ぎ声が聞こえて来たら、眠れるわけ無いだろう。
 そもそもなんだ、あの姉妹は一般的にいうアレなのか?
 ヤバ、激萌え……じゃなくて!
  蝉丸さんが部屋から出てきてないからその可能性はないから……もしや蝉丸さんと
 禁断のトリプルプレイ中か?
 ヤバ、勃っちまいそう……でもなくて!
 暫くさまざまな考えが頭をよぎったが、所詮は推論に過ぎない。
(駄目だ! やはり俺は探求者だ! 真実は自らの目で確かめるしかない!)
 
 と、いう訳で早速奥の部屋の扉に移動し、ドアのノブに手を当てる。
(よし、鍵はかかってない、ではいよいよ正解の発表だ!)
507探求者、住井護(修正版):02/05/15 23:37 ID:ZBPG5gv/
 と心の中で大声を上げながらも、ほんの数センチ扉を開け、中の様子を見る。
 そこで繰り広げられている光景は、
(おおおおおおおおおっ!)
 正に鼻血ものだった。
 っていうか俺、生きててよかった。


「ぐっ……まだか! 香里!」
 なんだか知らないが栞ちゃんをがっちりと押さえつけている蝉丸さん。
 いや、この際野郎なんかはどうでもいい。

「ちょ、ちょっと待って! ほら栞……どう……?」
 重要なのは、栞ちゃんの耳たぶに息を吹きかけている香里さんだ。
 何であんな行為に及んでいるかは全く解らないが、これを見逃すなんて男ではない。
 男、住井はじっくりと堪能させてもらおう。

「ほら、気持ちよくなってきたでしょう……」
 言葉とともにはだけた服の上から栞ちゃんの胸に妖しく手を添え、じっくりと愛撫する。

「あっ! あっ! うん、き、気持ちいい……」
 栞ちゃんは朱に染まった顔を更に上気させていて、ハッキリいって物凄くエロい。
 その上香里さんまで半裸だ。もう俺の息子は勃った勃たないなんて次元を通り越していて、
 お祭り状態だ。ワショーイワショーイ。

 んなくだらない事を考えていると、香里さんは既に栞ちゃんの秘部に手を当てていた
508探求者、住井護(修正版):02/05/15 23:40 ID:ZBPG5gv/
「そう……我慢しなくていいのよ」
 と、なんとも似合いまくりの台詞の後、指を栞ちゃんの茂みに一本二本といれていき、
 彼女の秘部刺激を与えている。
「あうっ! あん! わ、私……わたしもう!」
「いいのよ……ほら!」
 と女性にとって一番敏感な部分を香里さんが摘んだ瞬間、

「んんんんんんんんんんんんっ!」

 声にならない声が、部屋に響く。
 


「坂上さん、これで大丈夫なの?」
 寝静まった栞に毛布を掛けながら、香里が物憂げな表情で蝉丸を見る。
「うむ、催淫効果も収まったようだし、恐らくは大丈夫だろう」
「そう……よかった……栞があのままだったらどうしようって思ったわよ」
 ホッとした様子で、息をつく香里さん。
 
 成程、理由はわからないがどうやらワケありだったようだ。
 そうと解ればもう俺はここにいる必要は無い、探求者住井の冒険はめでたく幕を閉じ……
 しかしその時、唐突に目の前のドアが開き,
「で、住井君、いつまでそこにいるつもり?」
509探求者、住井護(修正版):02/05/15 23:40 ID:ZBPG5gv/
 そこには仁王立ちの香里さんが、憤怒の形相で立っていた。


「い、いつから気付いていたんでしょう?」
「ついさっきよ、あなたに気が付かなかったのは私の一生の不覚だったわ……」
 ヤ、ヤバイ、なんか上手い言い訳を思いつかないとこれはマジで死もありえる……。
「で、何か言いたい事はあるの?」
 よ、よし来た! これが俺が生きるために残された最後のチャンスだ! やってやるぜ!

「探求者たるもの、疑問に思った事は確かめなければいけないのです」

 やった! これはエレガントさに溢れた、これ以上ないぐらいの申し開きだ! 
「納得したでしょう? 香里さ……」
「んなわけないでしょうが!」
 と、叫びと同時に無数の鉄拳が唸り、俺を吹っ飛ばす。
 ああ、折原、先に逝ってるぜ……。 


「以上、回想終わり……やっぱ俺が悪いよな、これ……」



【坂上蝉丸 住井護 美坂栞 美坂香里 立川郁美 二日目】
510へタレ書き手だよもん:02/05/15 23:43 ID:ZBPG5gv/
修正版です。
RTO氏、編集の際にはこちらを使ってくださいませ。
511選択:02/05/16 04:12 ID:/+LUPXaD
「ダメぇ…姉さん……あぁあっ!」
絶叫するリアンに同調するかのごとく車が大きくバウンドする。

「オイ、このままじゃやばいんじゃねぇのか!?」
必死にハンドルを操作しながら浩平が叫んだ。
リアンを包む青い光は次第にその輝きを増して見える。
「でも、どうすれば…」
「そんなの俺にもわからん!」
「浩平〜〜」

「…俺がこの娘を抱えて飛び降りる」
「「えっ?」」
突然の光岡の提案に絶句する浩平と長森。
「おそらくこの車の暴走もこの娘の言う魔力のためなのだろう…」
「で、でも…そんなことしたら」
慌てる長森に浩平も振り返りながら意見する
「そうっすよ、このスピードの車から人を抱えて飛び降りるなんて―」
「この程度なら問題ない」
きっぱり言い切って光岡はリアンを抱え込んだ。
「…いいか、私たちが降りてこの車の暴走が止まるようなら―」
「ええ、すぐに引き返して」
「いや、そのままここから離れるんだ」
「「なっ?」」
立て続け二度目の絶句。
512選択:02/05/16 04:13 ID:/+LUPXaD
「車の暴走が止まってもこの娘の暴走が止まらなければ意味がない」
「でも光岡さんたちだけでこんな森の中を」
「いいか、この娘の放つ気配に森がざわめいている」
「へっ、森…って?」
「これだけの異常な気配…野生動物なら近寄ってくる事はあるまいが―」
光岡は抱えたリアンを見て言葉を続ける。
「我々に害意を持つモノにとっては狼煙を上げているようなものだ」
「だったら…だったら尚更光岡さんたちを放って置けません!」
必死に自分たちの身を案じてくれる少女に光岡は薄く笑って応えた。
「何、俺一人なら…まだ彼女をかばって敵を退ける自信がある」
「…わかった」
「浩平っ!」
「でも光岡さん、これで最後なんて無しだぜ!?」

「あぁ、もちろんだ」
言うと光岡は後部座席から身を投げ出した。
513選択:02/05/16 04:20 ID:/+LUPXaD
車が遠ざかっていく。
幸い周囲にはまだ何者の気配も感じない。
光岡は胸に抱いていたリアンを地面に下ろすと話し掛けた。
「…おい、まだ大丈夫か?」
「ぁぁ…ぅぁあっ…」
最早リアンにまともな受け答えをするだけの力はない様に見えた。
リアンを包む輝きは既に眩しいほどの青い光条で辺りを照らしている。

『わ…た……しを…こ…ろ…してく…ださ…い』

おそらく、それが一番良いのだろう。
魔力の暴走は彼女を蝕み激しく消耗させている。このままでは長くは持つまい。
自分なら痛みを感じさせる事なく一瞬で終らせる事ができる。
だが…

「っ、聞こえるか。気をしっかり持て!」
弱り行く少女の姿が他の誰かとダブって見えた。

「リアン、しっかりするんだ。リアン!」
今、守るべき少女を前にただ成す統べなくその名を呼び続けるしかなかった。

【光岡・リアン降車。リアン今だ暴走中】
【車の暴走が沈静化したかは不明】
514名無しさんだよもん:02/05/16 22:02 ID:ZLm0f33+
メンテ
515死の館:02/05/16 22:10 ID:M2vm5Y2R
 物々しい扉が、ギギギッと錆びた音を立てる。
 それを今か今かと心待ちにしていた高槻は、入ってきた男を誰かと確認することもなく、
 あらん限りの大声で叫んだ。
「遅いぞおおおおおっ! 貴様なにをやっていた!」
 だだっ広いホテルのロビーに、高槻の怒号が響く。

「……なにを、と言われても、ジープでこのホテルを目指していたんだが……」
 耳を抑えながら言葉を返したのは少年――ではなく橘敬介。

「むっ、スマン……人違いだ」
「人違いって、何事にも確認は大事だぞ、君」
 その声と共に入ってきたのは、同じような顔の男が二人と、無機質な感じのする少女。

「た、高槻さん、一体なにがあったんです?」
 声は彼女にも聞こえたのだろう、隣の部屋にいた高子が慌てて顔を出す。
「気にしなくていい、ちょっとしたアクシデントという奴だ」
「今は治療中なんですから、大声を上げないで下さい……」
 佳乃の事で頭が一杯なのか、初めて見た4人にはさほど気にした様子も無く、佳乃のいる部屋に
 高子は戻っていった。
「ふむ……怪我人が居るのかね?」
 雨に濡れた白衣を脱ぎ、長瀬主任が高槻に訊ねる。
「ああ……背中をやられている。傷は浅いから大丈夫だと思うが、微妙だな……」
 億劫そうに高槻は答える。
「そうか、なら私達も手伝いをしないとな。セリオ、来い」
「はい」
 高子の後を追うように、二人も部屋に入っていった。
516死の館:02/05/16 22:11 ID:M2vm5Y2R
「どうしてくれるうううううっ! 貴様のせいで俺は恥をさらしてしまったぞおおおおおおおっ!」

 一時間程の時間の経過の後、入ってきた人間に再び怒鳴る高槻。
 だが、またしても入って来たのは少年ではなく、
「長瀬さん、お待たせしました」 
「こりゃあ……随分と大人数だな。」
 高槻を無視し、ホテルに現れたのは柳川裕也ら六名。
「ええ、あの後いろいろとありましてね……それよりも彼女を……」
 柳川が背負っていた少女を長瀬刑事に見せる。
「怪我人か……向こうでも同じような人を治療している。悪いが運んでやってくれ」
 と、顎で高子たちの居る部屋を指し示す。
「わかりました……君達はもう休むといい」
 隣にいた四人の少女達を促しながら、柳川もその場へ足を運ぶ。
 柳川に言われ、『あう〜疲れた』だの、『うにゅう……もう眠いよ』などの言葉を残し、
 名雪たちはエレベーターに乗り込んでいく。
「さて、俺も休むか……」
 そう言って長瀬刑事も階段を上っていき、
 後に残ったのは、叫んだ高槻一人だけ。
517死の館:02/05/16 22:13 ID:M2vm5Y2R
 三度目の正直……少年は入ってくるなり高槻の叫び……もはや咆哮といったほうが
 しっくり来る怒声にも、少年はやんわりとした表情を崩さない。
「ちょっと事情があってね……それよりも随分と人がいるようだけど……」
 広いロビーを見渡しながら、受付のチェックインに律儀にもサインをする少年。
「うむ……お前とマルチで十四人目だ、怪我人からロボットまで色々と集まっているぞ」

 ロボット、と聞いてマルチがハッとした表情を浮かべる。
「あ、そのロボットって、もしかして私と同じような耳をしていませんでしたか!?」
「ん、そういえばそうだな……知り合いか?」
「ハイ! 多分セリオさんです! 私ちょっと会ってきますね」
 顔見知りが居た事で、嬉々とした表情で走り出すマルチ。
「ああ、急いで転ばないようにね」
 と、少年も笑顔で、それを見送った。

「そうだ、知り合いといえば、天沢郁未がいたぞ」
 煙草の煙吸い込みながら、高槻が思い出したように言う。
「ふうん……そうかい」
 一方の少年はあまり気にした様子も無く、適当に相槌を打つ。
「なんだぁ、以外に淡白だなぁ?」
「……そういう君は、声をかけなかったのかい?」
 売店に置いてあるポテトチョップス(スクリューパンチ味)の袋を開けながら、少年は高槻に聞く。
「特に話す事も無いし、気絶していたからな。今は部屋で寝ていると思うぞ、
 後で見舞いにでも行ってやったらどうだ?」
518死の館:02/05/16 22:14 ID:M2vm5Y2R
「まぁ、考えとくよ……それより高槻、君はどう思う?」
「どう思う……ってなんのことだ?」
 要領を得ない上、いきなりの質問に、高槻は戸惑いを見せる。
「このホテルの事だよ、モンスターが開放されたっていうのに、
 ここには化物一匹現れていない。これにはちょっと、作為的なものを感じるね」
 笑顔でとんでもない事を言う少年に対して、高槻は首を傾げ、口を開く。
「じゃあ何だ、お前はこのホテル自体が……罠だとでも言うのか?」
「そう、参加者に、リアルリアリティとやらを見せるためにね」

 少年がそう断言した、正にその時。
 ロビーの一角にあったモニターに、映像が現れ、端麗な容姿の女性の顔が、そこに映し出された。


『すばらしい洞察力だ、君には賞賛と賛辞を与えよう……』
 モニターに写っているのは、無論の事朝鮮製だ。
「な、なんだぁ! そのおかしい日本語は! しかしお前が超先生なのかぁ! いいのかぁ!
 敵役のくせにお前はそんないい女で本当にいいのかぁ!」
 おかしな言葉回しの朝鮮製と、こちらも意味不明な発言の高槻。

「貴方が、超先生なのかな?」
 取り合えず高槻を無視し、少年はモニターの朝鮮製に訊ねた。
『正確には少し違うが、今はそうだといっておこう……それよりこのパークはどうだい?
 最高だろう?』
 絶対の自信があるのだろう、尊大な態度で朝鮮製が問いかけるが、
「悪いけど、人の趣味を押し付けるような奴の作った物を誉める気にはなれないね」
「たしかに面白いが不満がある! お前がそうやって俺たちを見下した位置にいる事だぁ!
 お前を殺して、このパークは俺が研究に使わせてもらうぞおおおっ!」
519死の館:02/05/16 22:15 ID:M2vm5Y2R
 完全に理由は違っているが、二人は口々に非難の声を上げる。
「ぐっ、貴様等……まあいい。そんな台詞も何処までほざいていられるか楽しみだ。
 これより第一夜の特別アトラクション、『無間地獄』を始める!」
 その言葉と共に、映像は途切れ、ホテル内に何かが開け放たれる音と、閉じる音が響き渡った。

「くそっ、扉を閉められた! おい少年! コイツを抉じ開けろ!」
「……無理だね、この分厚さでは『力』を使える人間がもう一人は必要だ」
 堅く閉じられた扉に手を当てながら、参ったという仕草で少年は答える。
「なら……天沢のところに行くぞ! 奴とお前を使って、俺はここから逃げ出す!」
「高子さんとマルチちゃんは、どうするんだい? 僕は別に、置いていってもいいと思うけど」
 その言葉に、高槻はエレベータのボタンを連打しながら、
「ええぃ、こうなったらヤケだ! あの二人も連れて行くぞ! 文句は無いな!」
 何故か、そう言ってしまった。



【ホテルは朝鮮製によりモンスターの巣窟と化していた】
【高槻 少年 天沢郁未の部屋へ】
【マルチ セリオのいる部屋へ これ以外の参加者の居場所、行動は次の書き手にお任せ】
520へタレ書き手だよもん:02/05/16 22:16 ID:M2vm5Y2R
レス間はすべて二行開けで、RTO氏お願いいたします。
521へタレ書き手だよもん:02/05/16 22:54 ID:4XW0zSFR
 修正、
「うむ……お前とマルチで十四人目だ〜
 の部分を
「うむ……お前とマルチで十五人目だ〜
 にRTO氏、編集の際には変更しておいてください。
522:02/05/17 00:15 ID:+EK0fByk
溢れる魔力の奔流にリアンの意識は翻弄されていた。
『………………』
先ほどまで凄まじいほどの痛みがあったが今はもう何も感じる事ができない。
『…リ………し……』
自分の存在が消えていく。
『…リア……しっ……』
そんなことを考える事すらできなくなって―
『リアン、しっかりしなさい!』
「ね、姉さんっ!?」
瞬間意識が覚醒し、同時に痛みが蘇る。
「あぅぅっ!」
走る痛みに混乱する。
『慌てないの。魔力を拒まないで同調して!』
「……どう…調?」
『いい、同調よ?さっきみたく同化しようとしたらあんたがなくなっちゃうんだからね』
残った精神力を全導入して魔力の奔流に身を任せようとする。
―怖い。怖い、恐い、こわい―
突然、先ほどまで感覚が蘇ってくる。
自分が無くなってしまう。それすら認識できなくなる不安―
『大丈夫、気をしっかり持って。リアンならできるわ!』
「姉ぇ…さ…ん」
やさしい姉さん。大好きな姉さん。もう逢えないと思っていた―
『怖がらないで、それはあたしだから』
「姉さん」
『だから、受け入れて』
「うん、わかった」
523:02/05/17 00:16 ID:+EK0fByk
(前レスと二行空けで)

気が付くとリアンはスフィーの胸の中にいた。
『気が付いた?』
「うん」
『ごめんね、私の魔力のせいで』
「ううん、そんなこと…ないよ」
リアンは涙をその双眸から溢れさせながらスフィーに答えた。
「それより私…姉さんを助けられなかった」
『リアン』
「私…私にもっと魔力があれば姉さんは」
『いいのよ』
「だって」
『いいの!そもそもあんな粘液お化けに油断した私が悪いんだから!』
「だってぇ」
スフィーはリアンの頭をくしゃくしゃかき回しながら微笑んだ。
『いいの』
「だってぇ…」
リアンはスフィーにしがみ付き泣きじゃくった。
『いい?あんたは生きてこの島から出る事を考えなさい』
「…うん」
『そうすれば…お父様達がなんとかしてくださるかもしれないでしょ?』
「うん」

『さて、それじゃあその為にもあんたには現状を把握してもらわなくちゃあね』
リアンが落ち着いたのを見計らってスフィーが切り出した。
「現状?」
『そう…黒幕の事とか…ね』
524:02/05/17 00:18 ID:+EK0fByk
「黒幕…」
『まず、今のわたしは私のアストラル体の切れッ端。本体は黒幕に幽閉されてるわ』
「魂を、幽閉?」
『えぇ、奴の持ってる水晶球の中に』
『多分集魔の鏡とか深遠の水晶球みたいな類のアーティファクトなんだと思うわ』
「そんな事を…誰が」
『敵は天使。こっちの世界の神の御使いみたい』
「どうして天使がこんな事を」
『それはわからないけれど…どうも私情で動いてるくさいわね』
「堕天使…なのかな」
『それはわからないけどまっとうな感じじゃなかったわ』
「でも…なんでこの島でなのかな?」
リアンの質問にしばらく思案して答えた。
『多分…質なんだと思う』
「質?」
『私のほかにもう何人も命を落としているみたいなんだけど…みんな総じて魂の質が常人とは違っているわ』
「それじゃあ、高い魔力を持つ人をこの島に呼び出して…」
『そういうことなのかもね…』

答えながらスフィーは思い出す。水晶球の中に一際深く昏く強い力を感じさせる誰かがいた。
あんな魂を感じた事は今だ無かった。
もし私を含めあんな力ある魂が他にもあるのか…それはあるのだろう。
だから自分やあの魂を得て、なおあの天使の狩りは続いているのだ。
だから先程……

『それからリアン。落ち着いて聞いてね』
「えっ?」
『さっき、健太郎も死んじゃったの』
525:02/05/17 00:20 ID:+EK0fByk
スフィーの言葉にリアンは大してショックは受けなかった。
姉の魔力の奔流をその身に受けた時から予想はついていた。
だからただ悲しくて悲しくてリアンは涙を流した。
『それでね、健太郎の魂が水晶球に取り込まれる瞬間キャンセルされた魔力に自分のアストラル体を乗せてリアンのところまで来たの』
「でも姉さん、すごい。よく咄嗟にそんな事が」
『何言ってる。のアストラル体の制御なんて魔法使いのいろはよ、イロハ』
「わたしそんな事できないわ」
普段どれだけおちゃらけていた所でスフィーの実力は本物なのだ。
『なんてったってこれでもマウンテンゴリラ級なんだから』
といって胸を張るスフィー。
「ふふっ、そうだね」
思わず微笑んだリアンだったが眼前の姉の姿が薄くなっているのに気が付いて青くなる。
「姉さん、姿が!」
『あぁ、そろそろ限界みたいね』
「そ、そんな…」
見る見るうちに薄らいでいくスフィーの姿。
『いい、あんたが生きていてくれれば…きっとわたしも健太郎も他のみんなも何とかなるから』
『だからあんたは生きてこの島から出るのよ』
「…うん」
リアンはもう泣いていなかった。
『体は死んでいても魂は捕まっていても心はあんたと一緒だからね!』
それがわかったから―
「うん一緒、ね」
526:02/05/17 00:23 ID:+EK0fByk
そう答える妹の姿を満足そうに眺めてスフィーの姿は消え失せた。
『そうそう、最後に…』
スフィーの声が響く。
                      『………………』
『目を覚ましたら…お礼を言うのよ』
「お礼?」
                『…リ………し……』
『あの人があっちから…リアンの名前を呼んでいてくれたから…私の声もあんたに…届いたんだから……』
         『…リア……しっ……』


「リアン、しっかりするんだ。リアン!」

輝いていた青い光が次第に弱まっていく。
「こ、これは…」
「うぅっ…」
小さくリアンがうめく。
「リアン!?気が付いたのか!」
自分の手を握っている光岡の手を感じた。
「はい…」
「…そう、か」
まだ体は動かせそうに無いけれど、僅かな力で光岡の手を握り返す
「…光岡さん」
「どうした」

「ありがとう…ございました」

青い光は、もう消えていた。

【魔力の暴走収束・リアン消耗中】
527懺悔(1/5):02/05/17 21:49 ID:XIYked7D

 桑島高子はベッドの側に椅子を置いて、目の前に横たわる少女の顔を見詰めていた。
 桃か何かの様に川を流れてきた少女は、今は暖かな毛布に包まれて安らかな息を洩らしていた。
 少し前までは苦しそうに魘されていたのだが、それもどうやら落ち着いた様だ。
「…安静にしていれば大丈夫、ね」
 呟く様に声を出して、高子は自分自身を安心させた。


 ホテルに到着するや否や、高子は高槻の手を借りて少女を一階医務室に運び込んだ。
 医務室の場所は最初にホテルを訪れた時に確認済みなので、いちいち迷うことはなかった。
 少女をベッドに寝かせると、すぐに背中の裂傷の手当てにかかる。
 その最中は高槻を使い走りにして、部屋のあちこちから医療道具を取り出させた。
 高槻は嫌そうな顔をしていたが、一方では高子の手際の良さに感心している風にも見られた。
 一通りの処置が終わると、少女は絶対安静だということで、高槻はさっさと追い出された。
 高子は少女が目を覚ますまで看ているつもりで、その場に残った。
 それから十分以上経つ。 医務室には高子と少女二人きりだった。


 高子は少女──霧島佳乃という名を高子はまだ知らない──の青い髪を眺めた。
 肩まで垂れ下がることもなく、短くカットされた髪。
 そこからはどこか活発な印象を受け、今は静かに眠っているこの少女が、目を覚ませばさぞ元気に
話し始めるのではないか、という想像を引き起こさせた。
 明るい太陽の下で元気に走り回る、短髪の少女。
 脳裏に浮かんだその光景に、一瞬だけ三井寺月代の影がよぎり。
 高子は込み上げて来るものを抑えきれず、嗚咽を漏らし始めた。
528懺悔(2/5):02/05/17 21:50 ID:XIYked7D
「じゃ、おじいちゃん、行って来るねーっ」
 坂神邸を発つその日も、月代はいつもと変わらず元気だった。
 犬のジュリィに手取り足取りで一時のお別れを言い、よく日焼けした小麦色の肌を舐められては陽
気にはしゃいでいた。
 坂神老人はそんな月代の姿を微笑ましげに見て、若き蝉丸と高子にこう言った。
「月代を、頼む」

「夕ちゃん、この車で周るんだって。 この前見た映画みたいだね!」
 島内見物用のジープを見て楽しそうに言う姿は、歳相応とは少し言い難いものだった。
 しかし実年齢よりも幼い無邪気な心は、周囲にいる者達を笑顔に変える。
 同じジープに乗ることになったメイドロボット相手に談笑している月代を見て、蝉丸は高子にこう
言った。
「月代を、頼む」

 高子は二人の坂神蝉丸に、同じ言葉で月代の安全を託された。
 微笑みながら頷く高子だが、そう言われなくとも彼女は月代の面倒を見ていくつもりだった。
 
 猛獣のいる動物園よりも危険かも知れないこの施設で、好奇心旺盛な月代が厄介な行動を取らないか。
 彼女の迂闊な言動が、同乗する二人の男性の機嫌を損ねたりはしないか。
 
 高子の中では、それはほんの小さな決意に過ぎなかったが。
 それでも、月代を見ているのは自分の役割だと、思っていたのだ。

 なのに、月代は。
529懺悔(3/5):02/05/17 21:51 ID:XIYked7D
「…ごめんなさい…」
 俯いた高子の口から謝罪の言葉が漏れた。
「…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
 何度も謝り続ける。
 誰に?
 月代と、彼女に関係する者、全員に。

 ほんの少し目を離していると、月代は何かを感じたらしく、一人で皆から離れた場所を歩いていた。
 それぐらいの行動は予想出来る筈だった。 月代なら、知らぬ間にあちこち動き回る。
 離れては危険ですよと、もっと早く言えば良かった。
 それが遅過ぎたせいで、月代は死んだ。
 巨大な顎門に、生命を噛み砕かれた。

 蝉丸さんに、何と言えばいいのだろう。
 旦那さまに、何と言えばいいのだろう。
 夕霧ちゃんに、先生に、学校にはもっと大勢いるだろう月代の友達に。
 どう詫びればいいのだろうか。
 
 高子は罪の意識から逃れられなかった。
 
 或いは、全ての責任を月代自身に押し付ける、というのも選択肢の一つだったろう。
 状況を顧みず月代は無用心な行動を取って、それがために死んだのだ。
 事の責任は何から何まで月代にあって、自分が苦しむ必要など無いのだ────

 しかし高子は、それができる人間ではなかった。
530懺悔(4/5):02/05/17 21:51 ID:XIYked7D
「…お姉ちゃん…」
 不意に、か細い声が聞こえた。
 高子は顔を覆っていた手を離し、視線を少女に向ける。
「…お姉ちゃん…」
 同じ言葉がもう一度、小さく開いた口から紡ぎ出された。
 目が覚めたのだろうか。 高子は涙を拭って、少女の顔を除き込んだ。

 だがそれは、意識があっての言葉ではなかった。

「…おねえ…ちゃ…ぁ…ん」

 少女は苦しそうに顔を歪める。 悪い夢を見ているのか、先刻までと同じく魘されている様だった。
 その華奢な肢体が汗を滲ませ、何かに耐えるように捩れる。
 
 そのか弱い姿が、月代のそれと重なって見えて。
 高子は思わず手を伸ばした。
 少女の小さな手を、自分の両手で優しく包み込んでやる。

「お姉ちゃんは、ここに…いるわよ…」

 高子は嘘を吐いた。
 
 それで充分だった。
 少女は次第に安らかな表情を取り戻し、また静かな息を漏らし始めた。
 その様子を見て、高子も安堵の溜め息を洩らした。
531懺悔(5/5):02/05/17 21:52 ID:XIYked7D
(…ごめんね、月代ちゃん)

 高子は声には出さず、詫びた。


 今も心の中は、後悔の念で一杯だった。
 元気な月代の姿が脳裏に浮かんでは消えて、悲しみが精神を蝕んでいく。

 だけど、今は。
 
 私の心の、少しでも多くの部分を。

 この娘の為に、使わせてちょうだい。

 
 高子はゆっくりと椅子から立ち上がった。
 そして手近にあった小さなタオルを取って、少女の身体に浮かんだ汗を拭き取った。

 それから三十分ほどして高槻の絶叫が響き渡り、医務室に患者が増えた。



【佳乃の傷は安静にしていれば問題無し】
532名無しさんだよもん:02/05/17 21:53 ID:XIYked7D
以上、『懺悔』です。
各レス間は二行空けでお願いします。
533黒き獣:02/05/18 00:42 ID:UBdgQ3xQ
「雨、上がったみたいですね……」
 そこにいた三人の中で、誰よりも早く起きた由衣が、まだ寝ぼけ眼のきよみとすばるに声をかける。
 彼女らがいるのは、島にある休憩所の一つ。
 幸いにして鍵はかかっていなく、彼女たちはこの施設で一夜を明かしていた。
「で、どうするの名倉さん? やっぱり貴方のお姉さんを探すの?」
「ハイ。あ、でも、えっと……御影さん、いいですか?」
 申し訳なさそうに、由衣がすばるに目をやる。
「ええ、助けてもらったお礼もまだですし、喜んでお手伝いさせていただきますわ」
 と、笑って答えるすばる。
「あ、ありがとうございます!」
「いえ、どういたいたしましてです、では、善は急げといいますし、早速しゅっぱーつ!ですわ」
 こんな状況でも元気なすばるの声が、休憩所に響いた。


 休憩所を出た三人はがまず最初に決める事は、今後の方針。
「まず、私ときよみさんが最初にいた付近まで戻りましょう、もしかしたらお姉ちゃん
 たちもいるかもしれませんしね」
「まあ、可能性としては低いけどね、いつまでも同じところにいるのは危険すぎるわ……」
 由衣の提案に、あまり気が乗らなそうに答えるきよみ。
「でも、他にあてもありませんし、そこに行くしかありませんわ」
「仕方ないわね……それで行きましょう、ただし、化物に見付からないようにむやみに声を合げないで、
 なるべく気配を殺すのよ。」
 そう、この島では、少しの油断が死につながる。
「じゃあ……あそこを進んでいくってのはどうです? 見付かりづらいとは思うんですけど……」
 と、由衣が指し示したその先は、
534黒き獣:02/05/18 00:43 ID:UBdgQ3xQ
「藪の中……悪くはないわね、そうしましょう」

 だが、世の中はそんなに甘くない。
(もう! この子を信じた私が馬鹿だったわ!)
 道なき道を歩き始めてから数十分、早くもきよみは後悔に襲われる事になった。
 予想以上に歩きづらく、皮膚を傷つけるささくれの葉が、三人に容赦なく襲いかかる。
 だが、自分から音を立てるなといった手前……無闇に声を出すわけにはいかない。
 彼女たちも、きっとそれを理解しているからこそ……
「あっ! かわいい〜!」
「ほんとうですの! 可愛い動物さんですわ!」
 ちっとも、わかっていなかった。


「ほら、見て下さいきよみさん! かわいいい熊さんですよ!」
「少しは人の話を聞いていたかと思えば……って貴方! その小熊は……」
 よく見ればすばるも、由衣と同じように小熊を抱きかかえながら嬉しそうにしている。
「ばぎゅ〜う……小熊さん、可愛いですの」
 
 その光景を見て、きよみは凍りつく。
 野生の小熊に触れるなど、あまりにも、無知で愚か。
「貴方たち……なんてことを……」
 彼女の仙命樹が、警告を鳴らす。
「きよみさん? どうなさいましたのですか?」
 そんな事に答えている場合では、ない。
「逃げるのよ……二人とも早く! 走って!」
 そう叫ぶや否や、きよみはすばるの手を取り、駆け出す。
 その拍子に、すばるの手から転げ落ちる小熊。
「あっ、ちょっと待ってくださいよ〜、くまさんを戻してあげないと……」
 と、由衣は自分の持ち抱えていた小熊を最初に居た位置に下ろし、もう一匹に近づく。
535黒き獣:02/05/18 00:45 ID:UBdgQ3xQ
「よしよし、今戻してあげるから、おとなしくお母さんを待つんですよ〜」
 と、小熊を抱きかかえたその途端、彼女の周辺が薄い黒――即ち影に覆われる。
「えっ? えっ?」
 突然の出来事に戸惑いながらも、後ろを向く。
 
 その視界に、見えたものは、
 振り下ろされる熊の腕、避ける余裕など、存在しない。
 
 グシャ! という不快な音が一瞬起こり、ゆうに七メートルはある熊が、
 その巨大な腕を振り下ろした後、名倉由衣というカタチをしたものは、真っ二つに引き千切れられていた。


 一方、あまりの出来事に、二人は口を開けない。
 この島に着いてから、始めてであった怪物が、巣に入ってきた自分達への報復の為に、追いかけて来る。
 その事実が、ひたすら二人の恐怖を駆り立てる。
 死者を悲しむ気持ちなど、今この二人には、存在できるはずもなかった。



【名倉由衣 死亡】
【巨大熊 超先生の遺伝子実験により、化物と化している】
536誓い:02/05/18 23:32 ID:C1abaQqa
(最悪だ……)
 彼――国崎往人は、先程からこの言葉を何度も頭の中で繰り返していた。
 その理由は、至って単純。
 頭上にに照りつける、灼熱の太陽。

「アジィ……昨日は雨で肌寒かったのに今日はこの温度、なんなんだこの島は……」
 肩にしょっている愛用の荷物袋を開き、中に入っている水を飲もうとするが、
「もう空、か。千紗、お前まだ水残っているか?」

 隣で暑そうに汗を拭っていた千紗が、申し訳なさそうに首を振る。
「ごめんなさいお兄さん、千紗もさっき全部飲んじゃいました……」
「いや、きっちり半分ずつにしたんだし、別に千紗が謝る事じゃない」
 実の所、出発前にペットボトル一本分多く詰め込んでいたというのはご愛嬌だ。
「でも、お水がないと大変なんじゃ……」
「大丈夫だ、地図によると近くに湖があるらしい。そこまで行って、水を確保するぞ」
 そう言って地図をしまい込み、歩き出す。
「ま、まってくださいよお兄さ〜ん!」
 先を進んでいく往人を見て、慌てて千紗も後を追った。
537誓い:02/05/18 23:33 ID:C1abaQqa
「うわぁ〜、きれいな湖ですね〜」
 さっきまでの疲労はどこへやら、千紗は感嘆した声を上げてる。
 まったく、こいつは見ていて飽きない。
「飲めるかどうか心配だったんだが、これなら問題ないな」
 そう言って岸辺に体を預け、口を水面に近づけて直接水を飲む。
「んっ……うめぇ」
 喉がカラカラだったから、なおさらに美味く感じる。
 見れば、千紗も両手で水をすくい、一心不乱に水を喉に流し込んでいた。

(………どうかしてる、俺は)
 出会ってまだ一日足らずだというのに、本当は急いで観鈴たちを探さなければいけないのに、
 俺はこうして、この少女とのんびりとした時間を過ごしている。
 だがそれは決して不快ではなく、むしろ心地よさを感じる時の流れだ。
 もし叶うのであれば、こうしてこのまま……、

「ったく……俺はなにを考えてるんだか」
 唇が、自嘲気味に歪められる。
 そうだ、所詮、俺達はただ偶然出会っただけ。
 この島を抜け出れば、それで終わり。
 それに俺は今まで独りで生きてきただろう? こんな感情になるなんて、笑ってしまう。
 さあ、もう先に進まなければ。俺達には、まだやる事が沢山ある。

「千紗、そろそろ……ん?」

 感じたのは、強烈な違和感。
 澄み切ったこの湖に、そう、一面の蒼に、
 一つだけ混じっている、その黒い影は何だ?
538誓い:02/05/18 23:34 ID:C1abaQqa
「千紗! 岸から離れろっ!」
 その叫びと同時に、往人は腰に差し込んでいたS&Wを抜き放ち、水面に向かって二度、引き金を引く。
 銀の牙は黒い影に向かって一直線に飛び掛かり、水を弾いた後、派手な粉砕音を起こした。
「きゃっ!」
 その音と往人の大声に驚き、その場から飛び跳ね、後方に転がる千紗。

 一瞬遅れて、水面に飛び散る血と、這い上がってくる異形の塊。
 頭部は人の形をしているが、こめかみに着いた目と、両の手に有している爪、
 細長い尾に付着している無数の刺が、見るものからその考えを奪い去る。
 ニクスという、両生類を連想させられるモンスターだ。


「くそっ! 数ばっか出てきやがる!」 
 新たに現れた二匹に対して、素早くS&Wを向けて二発容赦なく撃つ。
 銃口から飛び出した弾丸は、一匹の頭部を破砕して、脳漿をあたりに撒き散らさせる。
 しかし、もう一体は仲間と自分の腕がやられた事にも怯まず、突っ込んできながら鋭い爪を振りかぶる。
 だが、斜めに振られた爪からは、ブン! という空気を割る音しか聞こえなかった。
 その攻撃に上体を反らして、怪物の一撃を上手く避けた往人はそのまま下半身に力を込め、
「うおおおおおっ!」
 ニクスの即頭部に、渾身のハイキックを叩き込む。
 ゴキッ! という骨の砕ける響きと共に、再び湖に落ちていくニクス。
 それを確認した往人は、千紗のもとに全力で向かう。
539誓い:02/05/18 23:36 ID:C1abaQqa
「お兄さん!」
「千紗! 動くんじゃないぞ!」
 
 往人を手強いと踏んで千紗に向った二クスが、後ろから走ってくる人影を確認し、
 慌てて尻尾の一撃を往人に走らせた。
 それを見た往人は、冷静にS&Wを構え、迫り来る尾に向って銃弾を浴びせる。
 再び鳴り響く、粉砕音。
 腕をやられた奴とは違い、引き千切られた尾にニクスが驚愕の表情を見せ、痛みに全身を弛緩させる。
 当然、往人がその隙を見逃すはずもなく、
「じゃあな、」
 ニクスの懐に潜り込み、六度目の引き金を引いた。


「千紗、大丈夫だったか?」
「ち、千紗すごくこ、恐かったです〜」
 あまりの恐怖に腰が抜けてしまったのか、立てないでいる千紗。
 だが、それ以外は特に傷もなく、無傷といっていいだろう。
「ふぅ……無事みたいだな」
 だが、その安堵も束の間。
 三度水を破る音と共に、現れる二クス。
540誓い:02/05/18 23:36 ID:C1abaQqa
「そんな……あんなにお兄さんが倒したのに……」
 絶望に、がっくりと千紗が項垂れる。
「大丈夫だ。安心しろ」
 そう、俺は絶対に、絶対に……
「俺がお前を、守ってみせる」
 それは、誓い
 静かな、それでいて力強い誓い。
 そう叫び、己を鼓舞した、正にその時だった。

「その心意気や、天晴れなり!」
 その声と共に、後方のニクスが派手に音を立てて吹き飛ぶ。
「だ、誰だ?」
 状況が飲み込めず、往人はその人物にを確かめようとする。
 そして、姿を見せたのは学ラン姿の巨漢。

「俺の名は……立川雄三! お前達に力を貸そう!」



【国崎往人 塚本千紗 立川雄三 戦闘開始】
541へタレ書き手だよもん:02/05/18 23:38 ID:C1abaQqa
レス間は二行開けで、RTO氏お願い致します。
542名無しさんだよもん:02/05/19 16:04 ID:syy1w0vM
メンテ
543名無しさんだよもん:02/05/20 08:12 ID:oaafLzDs
メンテ
544名無しさんだよもん:02/05/20 19:17 ID:WBVdvA76
メンテ
545名無しさんだよもん:02/05/22 14:46 ID:0hkP3DHw
めんて
546侵蝕:02/05/23 01:10 ID:+8UGNMCQ
病院を飛び出したあゆは、わけもわからず駆け続けた。

--------ボクは、吸血鬼、なの?
--------ボクは、バケモノ、なの?
--------ボクは------------!


首筋をなでたその指先が、つけた覚えの無い傷痕にふれる。
地面に広がる水溜り、それに映るその眼の中には紅みを増した瞳が二つ。
あゆは走る。逃げるために走る。
自分を捕らえて逃がすまいと、迫るまわりの現実から。
自分の体を蝕みはじめた吸血鬼という因子から。
そして、怪物になった自分のことをどう見るのかわからない他人から。
あゆは、逃げるために走る。


「はっ……はっ……意外と走るの早いじゃないの、あの子は!」
走り去る影をなんと視界に捕らえながら、憎々しげに晴香は言う。
「……逃げなれた走法ですね」
それに併走する茜。
「か……顔色一つ変えずに、そんな事言えるの、あんたは……」
「……見えなくなっちゃいましたが」
547侵蝕:02/05/23 01:11 ID:+8UGNMCQ
虎。
通常、動物園などで見るそれよりも何倍も鋭い眼光を放ち、口からだらだらとよだれをたらすその姿。
丁度あゆの想像するバケモノが、そのまま彼女の目の前に現れたかのように。
「う……うぐ……」
あゆは動けない。陳腐な表現だが、それは蛇ににらまれた蛙のように。
彼女を狙う虎の眼光とその容姿が、彼女を捕らえてはなさない。
そしてその鋭い目が、ひときわ異彩な輝きを放つ。
次の瞬間、その爪は正確に、獲物の胸元を裂いていた。


「なによ……これ」
晴香と茜が見たものは、おびただしい了の血痕と、なにか生物であったらしい肉片とその臓物、

そしてその只中で、呆然とするあゆの姿。

548侵蝕:02/05/23 01:11 ID:+8UGNMCQ
あたりに充満する、鉄錆びのそれににた血の臭いが、晴香の足を止めさせる。
だが、それが意に介さぬかのように、茜はすたすたとあゆの元へ。
茜の手があゆの肩に触れた。瞬間、びくっと肩をふるわせる。
あゆの服は、胸元のあたりが真一文字に切られていた。そにて、あゆ自身の胸もまた、服の通りに傷がついていた。
奇妙な点といえば、まるでビデオテープを早送りで見るかのような、異常なまでの傷の回復速度。
「……あゆ」
茜が、そっと名前を呼ぶ。それであゆは、またびくりと体を緊張させる。
「……あか、茜さん、ボク……」
弱々しい声だったが、その声が今あゆの味わっている感情を全て表しているようにも思えた。
茜は、そんなあゆの肩を静かに抱く。
「いいんです……なにも言わなくても。でも……あゆ、これだけはいわせてください」
目に涙をためながら、あゆは顔を上げた。
「あなたがモンスターになってしまう前に……私たちが、わたしが、あなたを助けますから」
顔を上げたそこには、微笑と共にその言葉を紡ぐ、茜の顔があった。
「……うっ……ひっく」
その言葉に、あゆは。
「うわああああああん!」
茜の胸に顔をうずめて、号泣した。
549侵蝕:02/05/23 01:16 ID:+8UGNMCQ
そして、あゆの中に揺り返してくる恐怖。
それは、ほかならぬ自分に対する恐怖。
胸を深々と切り裂かれ、それでもなお命を失わない自分の体に対する恐怖。
敵を、まるでパンのように細かくちぎって捨てていた自分に対する恐怖。
……ゆっくりと「自分」から剥がされていく自分の自我に対する恐怖。
そして……


今、自分を抱いてくれている人を、自分ではない自分が殺してしまうかもしれない恐怖────


【月宮あゆ 捕獲】
550RTO:02/05/23 01:17 ID:+8UGNMCQ
以上「侵蝕」でした……
突っ込み、修正お待ちしております……


(あ、またスペース入れ忘れた……鬱)
551名無しさんだよもん:02/05/24 17:20 ID:hKIwLF/y
そしてメンテ
552名無しさんだよもん:02/05/25 23:37 ID:xdNJpigg
めんて
553名無しさんだよもん:02/05/26 13:55 ID:uyH4nIiY
メンテ
554名無しさんだよもん:02/05/26 19:09 ID:4ctzKwWE
めんてだよもん
555犠牲(1/4):02/05/26 20:58 ID:VY3Wn8Vq
 あれからもうどれくらいたったのだろう…。
 もはや、消耗しきった彼女達には涙を流す力もなかった。
 ただできることは、繭の遺体を雨の濡れない場所においてあげる事しかできない。
 みちると繭を担ぎ、再びコロシアムに戻った広瀬と七瀬は、もといたソファに二人を寝かす。
「今夜はここで夜を明かそう…」
 七瀬と広瀬の消耗具合からしてこれしか選択肢がなかった。
 七瀬にはもう一つ思惑があった。
(せめて、今夜だけは繭といたい…。これが…せめてのも繭へのたむけ…)
 みちるも全く動かない、それも気になるところだ。
 広瀬も失血による痛みと疲労で、立つことさえ困難な状況だった。
「広瀬はゆっくり寝て…。見張りはあたしがするから…」
 広瀬はその七瀬の言葉に甘えることにした、だが寝つけるのであろうか?
 左手の感覚がそのまま無いのである、慣れずに寝ることができないかもしれない。
「七瀬ぇ…あたし達どうなっちゃうのかな…?」
 広瀬の泣き言に近い台詞に七瀬ははっきりと答えることができなかった。
「…多分、大丈夫だから寝なさい。明日にはきっと助かるから…」
 根拠の無い言葉…と広瀬は思いつつ、彼女は目を瞑った。
 七瀬の言うように少しでも多く寝るために。

(2行開けてください)

 雨の中、彼女はその監視役と共にコロシアムに近づいていた。
 監視役は神話の世界でいわれるガーゴイルという奴だ、洞窟や神殿などにおかれている、死神を象った石人形である。
 しかし、今回は本来の侵入者の抹殺などではなく、表向きアレイの監視という任務なのだが。
 だが、ガーゴイルにはアレイの知らない任務もあった。
556犠牲(2/4):02/05/26 21:00 ID:VY3Wn8Vq
『この魔族が10人、参加者を殺したらこいつも殺しなさい』
『変な真似をしようとしても、殺しなさい』
 ユンナは、ルミラを開放する気など無かった、何故ならルミラはまだ利用価値もあり魔族だからである。
 アレイは魂を集めるためのただの道具、さらにはアレイの魂まで己の目的に利用しようと考えているのだ。
「ここに、一人以上は人間がいますね」
 アレイは全てを割り切ることにした、全てが自分の主人のためである。
 堂々と抜き身の大剣を手にコロシアムの中に入っていった、その悪意ある傍観者と共に。

(2行開けてください)

 アレイは無機質なコロシアムの通路をゆっくりと歩いた。
 目標は意外と簡単に見つかったがアレイ自身も七瀬に見つかった。
「…あんた…何者!?」
 七瀬はアレイの後ろにいるガーゴイルを見て、思わずソードブレイカーを構える。
「…貴方には知る必要は無い!!」
 クレイモアを上段に構え、アレイは叫ぶ。
 この声に広瀬は目を醒ました。
「ひっ…!!」
 ガーゴイルを見て混乱する広瀬、その隙にアレイは目標を広瀬に変える。
「貴方から死になさい!!」
 気合と共に振り下ろされるクレイモア、だがその剣は彼女を捕らえることをできずに床を叩く。
 七瀬がアレイに体当たりをしたのだ。
「邪魔をしないでっ!!」
 必殺の一撃を邪魔されたアレイは武器の刃の方向を考えずに七瀬を目掛けて横薙ぎに振る。
 態勢を崩している七瀬の胸にクレイモアの腹の部分がまともヒットする。
557犠牲(3/4):02/05/26 21:01 ID:VY3Wn8Vq
 七瀬は吹き飛ばされ、壁に激突する。
 ミシッ…
 嫌な音が七瀬には聞こえた、そしてそのまま熱いものが喉からこみ上げてきた。
「がっはぁっ!?」
 七瀬は口から血を吐きつつ、なおも立ちあがろうとする、広瀬とみちるを守るために…。
 一方、アレイは再び広瀬に照準を定めた。
「一体、あたし達が何をしたって言うのよ!?」
 泣きじゃくりながら広瀬は喚く。
「ルミラ様のためよ…許して!」
 アレイは少し悲しい顔したが、すぐに険しい顔になり一撃で葬るために再び上段に剣を構える。
「まだ終わってない!」
 振りかえるアレイに七瀬がクレイモアを持つ両手に飛びついてた。
 しかし、ぼろぼろの体に無傷の体、人間と魔族。力の差は歴然としてた。
「いやでも邪魔する気なの!?」
 あっさりと弾き返し、アレイは七瀬に照準を合わせた。
 七瀬のほうは弾き返され、態勢を崩したがふんばり、剣を構えてアレイを見据える。
(もう、だめ…応戦しないとみんながやられる…)
 七瀬はアレイの様子からそうとると、アレイに向かって一気に間合いをつめる。
「広瀬ぇ!みちるちゃんを連れて少しでも逃げて!!」
 七瀬の叫びに広瀬は困惑した。
558犠牲(4/4):02/05/26 21:03 ID:VY3Wn8Vq
「でも、それじゃあ七瀬は!?」
「いいから!いって!」
 ソードブレイカーを必死に振りまわしている七瀬を見て広瀬は決心した。
「絶対死なないで!!」
 痛む左腕を我慢しみちるを担ぎ駆け出した。
 アレイは広瀬を追いたかったが、七瀬と切り結んで追えなかった。
 ガーゴイルはあくまで監視役だから追わなかった。
(広瀬…あたし達の分まで生きるのよ…)
 七瀬は冷たくなった繭を見て、自嘲気味に笑ったがすぐに顔を引き締め、気合を吐いた。
「最期の意地よぉ!!」
559R1200:02/05/26 21:09 ID:VY3Wn8Vq
【七瀬、アレイと交戦。重症の傷を負うものの戦闘は続行】
【広瀬、意識不明のみちるを連れ逃走】
【アレイ、ガーゴイルのもう二つの任務のことは知らず】

少し長くなってしまいましたね。次は気をつけます。
えっと、文章的に変な所があるような気がします。つっこみよろしくお願いします
560名無しさんだよもん:02/05/27 06:25 ID:7GSN2iNH
メンテ
 
561名無しさんだよもん:02/05/27 13:41 ID:TFAFzLhH
メンテ
562海より来たる(1/6):02/05/27 15:52 ID:nFNfApnU

 ふあぁぁぁ、と遠慮の欠片も無い大あくびをして、志保は目を擦った。
 その大きく開いた口の中に、フナムシでも投げ込んでやろうか、などと思いながら、御堂は口を開く。
「おい志保、眠いなら寝とけ。岩切が帰ってきたら、すぐに出発するんだからな」
「……うー」
 志保は半眼でうめくと、頑固に首を横に振った。
 そして、再び海の方へ視線を向ける。

 ようやく、夜が明けようとしていた。
 水平線の彼方の色が、うっすらと夜空以外の色に染まっていく。
 夜明け前の空が最も暗い色をする、とはよく聞く話だが、実際空は不気味なほど黒かった。
 何かが……それも、悪い事が起こる前触れのようなものを感じ、御堂は舌打ちする。
 千鶴は相変わらず岩に腰掛けたまま、静かに妹の髪を撫でていた。

 水が苦手な御堂にとっては、海岸というものは近寄るのもぞっとする場所である。
 岩切を待つ、という目的が無ければ、すぐにでも立ち去りたかった。
(ちっ、岩切の奴何をもたもたしてやがる……ん?)
 その時、僅かに海面が揺らいだ。
 御堂は目を凝らし、岩切が帰ってきたものと思って立ち上がる。
「千鶴、志保、どうやら岩切がかえ」

 水の弾ける凄まじい轟音が、御堂の言葉を遮った。
563海より来たる(2/6):02/05/27 15:52 ID:nFNfApnU

「どわぎゃあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
 降り注ぐ水飛沫に、御堂は絶叫を上げて砂浜を転げまわる。
 そのあまりの叫びに、半分寝ていた志保、視線を落としていた千鶴はぎょっと顔を上げた。
 そして、海面から顔を出したあまりに非常識な物体に、口をあんぐりあけて硬直する。
「………………い、イカ?」
 ポツリと呟いた志保の言葉は、図らずもそれを的確に言い表していた。
 三角形の頭、ひれ、そして金色に光る目玉が、陸上の御堂達を一瞥する。
 ただし、海面から10メートルも触手を伸ばすその生物を、イカと言えるのであれば、だが。
「おのれえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ………!!」
 さらに、その触角の先から声がする……と思えば、そこにいたのは髪の短い一人の女だった。

 ドップラー効果を存分に効かせながら叫ぶその女は、触手に巻きつかれたまま宙を舞う。
 傍目には、りかちゃん人形を持ったイカにも見えるが、それはサイズの違いによる錯覚だろう。
「い、岩切っ!?」
 まるで熱湯か塩酸でも浴びたかのように苦しんでいた御堂であったが、何とか復帰すると驚愕の声をあげた。
 その岩切は、ぐるぐる宙を回転させられた後、触手と共にあっさりと海面に沈む。
「まっ、まずい!! いくら岩切だって、あんな化けモン相手にどうにか出来るわけねぇ!」
「御堂さん、私が行きましょう。 あなたは水に触れられないのでしょう?」
 初音を起こして横に置くと、千鶴が立ちあがった。
 だが、御堂は渋面で首を振る。
「しかし、いくらお前さんでもあんな化物相手に……」
「いえ、作戦はあります。 ただし、倒すのではなく彼女を救出するのが目的で、ですが」

 一瞬沈黙した御堂は、千鶴の真剣な目に躊躇いながらも頷いた。
564海より来たる(3/6):02/05/27 15:54 ID:nFNfApnU



 岩切の腹に巻きついた触手は、予想以上に硬かった。
 気付かれずに傍をすり抜けとうとした目論見は、十メートルを超える触手によって、あっさり打ち破られていた。
 鋭い歯をそなえた吸盤に腰を締め上げられ、岩切の口から空気と血が吹き出る。
 もやの様に海中に滲む血に、岩切は苛立たしげに触手を殴りつけた。
 だが、そんなものでどうこうできる代物ではない。

 元々他の強化兵に比べてスマートな岩切ではあるが、それでも今の彼女のウェストは、余裕で30センチを切っていた。
 ただし、これは触手の締め上げで内臓が潰され、上下に迫り上げられているからなのだが。
 その上、タコの吸盤が筋肉なのに対し、イカのそれは鋭い歯が付いている事で有名である。
 もうひと巻き触手を狭められ、否応無しに岩切の口と鼻から鮮血が吐き出された。
(……まずい、これ以上締められると千切れる)
 不死身に近い生命力を持つ強化兵だからこそ、このような状況でも、死なないでいられる。
 だが、胴体を引き千切られ、頭から食われればその限りではないだろう。
 霞む頭でそんな事を考えていると、急に目の前に女が現れた。
「っ!?」
 海中に潜ってきた女は、クラーケンの振りまわす触手を何とか掻い潜ると、岩切に取り付く。
 勿論、岩切を助けるべく、海に潜ってきた千鶴であった。
 千鶴は動きにくい海中で、何とか岩切にしがみ付くと、その手刀を触手に振り下ろす。
 まるでナイフでも突き立てたかのように、千鶴の細い手は触手を切り裂いた。
 だが、丸太のようなサイズの触手である。
 一太刀、二太刀、切り裂かれる場所は、遅々として広がらない。
 やがて、その髪の長い女は苦しげに口から泡を吐き出す。

 その時だった。
565海より来たる(4/6):02/05/27 15:55 ID:nFNfApnU
 イカにとっては小さな傷とはいえ、しっかり苦痛は感じたのか、クラーケンは千鶴を振り払うべく、再び触手を振りまわした。
『……………………!!!!!!!』
 凄まじい速度で、触手が海の中を猛進する。
 千鶴は引き離されないよう、必死で岩切にしがみ付いた。
 と、急に海中の強烈な抵抗が消え失せ、代わりにひんやりした風が全身を包み込む。

 水飛沫と共に、千鶴と岩切は触手によって空高く持ち上げられていた。
 遥かなる水平線の向こうは、うっすらと登った太陽によって、水面が金とオレンジに輝いている。
 一瞬、そのあまりの美しさに、千鶴は息をする事すら忘れた。
 そして――――

「どりゃあああああああぁぁぁっ!!!」
 野太い掛け声が、千鶴と岩切の思考を引き戻す。
 全身の筋肉を膨張させた御堂は、手にした即席の長斧を思いきり投げ飛ばした。
 長斧は一条の矢のように宙を裂き………正確にクラーケンの、海面に出ていた眼球に突き刺さる。
 地震にも似たクラーケンの咆哮が、地響きのように海を波打たせた。
 そして、苦痛のあまり緩んだ触手から、千鶴と岩切は中に投げ出される。

 浅瀬に落下した岩切を視界の端に捉えながら、千鶴は自分の失策に気付いた。
 自分が投げつけられたのは、岩場だ。
 砂浜ならばともかく、岩場になどに投げつけられれば、まともな受身が取れるはずもない。
 しかも、自分は頭から落下している。
 覚悟を決める間もなく、千鶴の全身に凄まじい衝撃が襲いかかった。
566海より来たる(5/6):02/05/27 15:57 ID:nFNfApnU

 全身を貫く苦痛はしかし、予想したものより遥かに小さかった。
「がぶっ……!!」
 千鶴がその理由をいぶかしむよりはやく、自分の体の下から、聞き覚えのあるくぐもった呻きが耳に届く。
「み……御堂さん!?」
「ぐぅ……だ、大丈夫みてぇだな……」
 呆然とした千鶴は、ようやく事態を把握した。御堂が、自分を助けるために岩の間に下敷きとなったのだ。 
「御堂さん、何て事を……」
「さ、触るな。俺の血に触ったら、エライ事になる……安心しろ、しばらくすれば回復する」
 震えながら立ちあがる千鶴に、御堂は血に塗れた顔を無理にほころばせる。

「おじさんっ!?」
 浅瀬に落ちた岩切を引き上げた志保が、慌てたような声を出した。
 そのまま動けない岩切を砂浜まで引き起こすと、ばたばたと志保が駆け寄ってくる。
「ちょ、ちょっとしっかりしなさいよぉ……カッコ悪いくせに、無理してんじゃないのよ、馬鹿……」
「何、泣いてんだ馬鹿……言ったろ、仙命樹の力があるから、この程度じゃ死なねぇ」
 御堂は涙ぐむ志保に言い捨てて、起き上がろうともがいた。
 だが、千鶴との衝突で砕けた両足は、仙命樹の力を持ってしても、簡単に治るものではない。
「ちっ……まいったな」
「お、お姉ちゃんっ!!」
 自嘲気味な御堂の台詞に、悲鳴混じりの初音の声がかぶさった。
 ギョッと振り返った三人の前で、片目を潰され怒り狂ったクラーケンが、陸に上がろうとしていた。
 うねうねと伸びる触手に、初音が悲鳴を上げる。
「初音、森まで逃げろ!」
 よろめきながら立ちあがった岩切に急かされ、初音は千鶴達の方を何度も振り向きながら、後退する。
567海より来たる(6/6):02/05/27 16:08 ID:nFNfApnU

「ほれ、お前らも逃げろ……あのイカ、誰が目ん玉潰したかわかってやがる」
 片方だけ残った、クラーケンの無機質な金色の目玉に凝視され、御堂は頬を吊り上げた。
「に、逃げろって、おじさんはどうすんのよ!?」
「俺の事は構うな馬鹿。千鶴、さっさとこのうるさいのを連れてけ……って、おい!?」
 無造作に千鶴に抱かかえられそうになり、御堂は慌てて身を捩って逃げようとする。
「馬鹿野郎! 俺に触れたら、とんでもねぇ事になるんだぞ!」
「それでも、身を呈して自分を助けてくださった方を、見捨てる事はできません」
 あくまで逃げようとする御堂、そしてそれを助けようとする千鶴。
 それを見ていた志保が、ポツリとつぶやいた。
「ていうか、血がつかないように、服か何かで包んで持ってけばいいんじゃないの?」
「………あ」
「………そういえば」


「行きますよ、志保ちゃん」
「おっけー!」
 志保の上着と、千鶴のシャツで(なぜか顔まで)グルグル巻きにされた御堂を手に、二人は勢いよく岩場を駆け下りる。
 間一髪、二人が飛び退いた岩場に、クラーケンの触手が叩きつけられた。

 途中、何度か御堂の頭を岩にぶつけた様だったが、二人とも気にしなかった。
 

【岩切 海中から何とか脱出。ウェストが細くなる】
【初音&岩切 森の中へ】
【千鶴&志保 御堂を簀巻きにして、岩場から逃げる】
568長瀬なんだよもん:02/05/27 16:13 ID:nFNfApnU
久しぶりの投稿です。

当初は千鶴さんを発情させて、えろえろにしようかな、とも思いましたが、
無理にエロにする必要もないし、仙命樹で発情は二度目なので、自粛。

だって千鶴さん×御堂とか、誰も見たくないでしょうし(苦笑
あ、いえ、千鶴さん×志保でもありですが。貧乳クイーンVS貧乳キラーで。

それでは、誤字脱字修正その他エロにしろ、などと要望がありましたら、指摘よろ。
569名無しさんだよもん:02/05/28 20:44 ID:gnX/KqX4
そしてめんて
570せめて、誰かの為に:02/05/29 01:52 ID:LQUegYyr
「ねぇ、折原…」
「あん?」
「何でさ…、あの時私の事助けてくれたの?」
「あの時?」
「広瀬にちょっかい出されてた時…」
「ああ、あれか…あそこで助けなきゃ男が廃るだろ」
「え…?」
「何せ、七瀬は漢だからな、男として助けない訳には…」
 バキャ!!
「何じゃそりゃ!このアホッ!!」
「ぐお…ふっ、いいパンチだ、世界を狙える…」
 バキィッ!!
「浩平、それはあんまりだよ…」
「くっ、長森、しかしだな…俺は事実を…」
「まだ言うか…ギャーー!!」
「みゅーー。」
「こら、繭!髪引っ張らないで、…ギャーー!!」
「どうやら繭も七瀬が漢だと言いたいらしいな」
「それは違うと思うよ、浩平…」
「俺は誉めてるんだぞ長森、七瀬のような漢になら安心して背中を…」
 グシャッ!!
「いい加減にしろっ!!」
571せめて、誰かの為に:02/05/29 01:54 ID:LQUegYyr
 口の減らない少年と、その優しい幼馴染。
 手がかかるけど憎めない妹のような少女。
 何気ない日常ではあったけど、楽しかった毎日。
 …何時までも続くと思っていた日常。
 
 だけど、それは突然奪われて。
 自分はどうしようも無く無力で。
 繭は自分の目の前で逝ってしまった。
 恐らく、自分もここで死ぬだろう。 
 自分の体から、だんだんと命が失われていくのが解る。 
 
 だが、いや、だからこそ、ただここで殺される訳には行かなかった。
 この目の前に居る女はこの後も参加者を殺して回るのだろう。
 倒せないまでも、せめて一太刀浴びせなければ、逃げて行った広瀬達が殺されるかもしれない。
 それに、命をかけて自分を救ってくれた繭に申し訳が立たない。
(……もし、折原が聞いたら『やっぱりお前は漢だな、乙女なんて柄じゃない』なんて言うのかしら?)
 
 …結局、自分は彼が好きだったのだろうか?
 それは解らなかった。
 彼の側には何時も瑞佳が居たし、自分は彼女も好きだったから、彼女と彼を奪い合う気にはなれなかった。
 …ただ、今考えると自分の気持ちをはっきりさせておくべきだったかもしれない。
(…未練ね)
 きっとあの2人はまだ生きている。
 彼等には、こんな馬鹿馬鹿しいイベントで死んで欲しくは無かった。
 その為に自分にできる事があるなら、全部やろう。
(…繭、寂しい思いをさせたわね。私もすぐそっちに行く…。
 広瀬、貴方とは色々あったけど、今は良い友達だと思ってるわ。
 瑞佳、しっかりあの馬鹿の面倒見なさいよね。
 折原……、貴方は馬鹿だったけど、楽しかったわよ…、しっかり生き延びなさいよね!)
 そして、七瀬は立ち上がる、その最後の命の灯を燃やして−−−−
572せめて、誰かの為に:02/05/29 01:56 ID:LQUegYyr
「……な?」
 七瀬を倒し広瀬を追おうとしたアレイは後ろの物音に思わず振り返った。
 そこには自分が倒したはずの七瀬がよろめきながらも立ち上がっていた。
「待ちなさい…よ。まだ終わってないんだから…」
 七瀬は、立ち上がると、手にもったソードブレイカーを構える。
 肋骨は折れ内臓に突き刺さり、もはや死の秒読みが始まっているのに、その眼の光は衰えていない。
 それを見て取ると、アレイは七瀬に向き直りクレイモアを上段に構えた。
 そこには、先ほどまで彼女に合った狼狽や同情の色は無い。
 アレイの戦士としての本能が告げる、この眼をした人間は危険だと。
 小手先の技は無用…一撃で勝負を決するのだ、と。

「何故、貴方がそこまでするのかは聞きません…只、私もここで果てる訳には行かない…!」
「…上等よ」
 次の瞬間、今までとは比べ物にならない速さでアレイが跳んだ。
 渾身の一撃が七瀬の頭上に振り下ろされる。
 そして、吸い込まれるように七瀬の頭部に剣が振り下ろされ…。
 手応え無く空を切り、次の瞬間アレイのクレイモアは地面に叩き落された。
573せめて、誰かの為に:02/05/29 01:57 ID:LQUegYyr
「……なっ!?」 
 それは、まさに奇跡のタイミングと言って良かった。
 七瀬は紙一重で後ろに跳びアレイの斬撃をかわした後、ソードブレイカーでアレイの剣を上から打ち払ったのだ。
 この一撃に全力を込めたアレイの腕は
 全力故に剣に対して新たに上から加えられた七瀬の僅かな攻撃の過負荷に耐えられなかった。
「あああああああっ!!」
 剣を打ち落とされて隙だらけのアレイの対して七瀬が突進する。
 重厚にアレイの体を覆う鎧の僅かな隙間、肩の間接部にソードブレイカーは突き刺さった。
「ぐあっ!!」
 そのまま押し倒す形で馬乗りになる。
(殺られる−−!!)
 これから来る死の恐怖と救えぬ主君への無念でアレイは目を瞑る。
 しかし、予期していた痛みは何時まで経っても来ない。
 恐る恐る目を開けると、そこには力無く笑っている七瀬の顔があった。
 そして、そのまま彼女は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた……。
574せめて、誰かの為に:02/05/29 01:58 ID:LQUegYyr
「何故…止めを刺さなかったんですか?」
「……ハハ…、もう…体が動かなかったのよ、さっきの一撃が大まぐれだったってだけで…」
 上から見下ろすアレイに、七瀬は答える。
 その瞳にはもはや光は無く、彼女の命の灯が間もなく消える事を示していた。
「嘘です、貴方には十分止めをさせたハズです!!」
「……本当よ…、貴方の顔見たら…、力が抜けちゃって…さ」
「!!」
「貴方も…誰か大切な人、守る為に戦ってたんでしょ? …私と同じで…」
「………」
 アレイは何も言えなかった。
 七瀬の言っていた事は正しかったから。
 そして、自分の殺そうとした人間も、自分と同じ理由で戦ったという事実を改めて突きつけられて。
「ねぇ…お願いがあるんだけど…」
「…はい」
「あそこに居る娘…側に連れてきてくれない、かな…。1人じゃ寂しくて…」
「……はい」
 答えると、アレイはソファの上の繭の体を七瀬の横に寝かせる。
 七瀬に刺された腕は痛んだが、その位はやってやりたかった。
 そんな事で罪滅ぼしになるとはとても思えなかったが…
「あ……」
 七瀬の手が繭の手を掴もうと宙を泳ぐ。
(もう、目が…) 
 七瀬の目が見えていない事に気付いたアレイが、2人の手を繋がせてやった。
「…ありがと」
 そして、その手を暫くの間慈しむように弄んでいたが、やがて動かなくなり……
 
 …力無く、落ちた。

【七瀬留美 死亡】
575名無しさんだよもん:02/05/29 09:42 ID:i2Y25MDH
あれ、感想スレ逝った?
576そして雨の夜に:02/05/29 20:49 ID:cjDv6LRg
 降り注ぐ雨が地面に降り注ぎ、パラパラと音をたてる。
 この島に来て、初めての夜。
 折原浩平と長森瑞香は体を寄せ合い、待合所か何かだったのだろ
う、それは今や廃屋になっていて鍵も開かない建物の入り口で体を
休めていた。
 ここなら屋根もあるし、雨にも濡れない。それにコンクリートな
ので土にも汚れないので好都合なのである。
「ねぇ、浩平…」
「…なんだ?」
「リアンちゃん…ぐっすり寝てるね」
 すやすやと寝息を立てているリアンの顔を見て長森瑞佳は微笑む。
 ここに来てから、長森瑞佳の表情はすぐれたものでは無かった。
ずっと暗い表情。それが少し和らいだので、折原浩平は少し安心し
た。
 ガサリと音がした。草むらが揺れる。
 安心も一転、とっさに折原浩平は銃を手に取り引き金に手をあて
立ち上がる。
「誰だッ!!」
 折原浩平は叫ぶ。その瞬間、長森瑞香は体をびくんと震わした。
 銃口を揺れた草むらの方向へと向ける。
「むぅ…」
 呟きながら現れたその姿。
 ――光岡彰であった。
577そして雨の夜に:02/05/29 20:51 ID:cjDv6LRg
「…光岡さんでしたか」
 折原浩平は銃口を光岡から外す。
「あぁ、すまんすまん」
 両手をあげて光岡彰は少しはにかむ。
「悪かった。戻ってくる時は先に声をかけるんだったな、忘れて
た」
 折原浩平は溜息を吐いて肩を落とした。
「で、何か見つかりました?」
「…全然」
 両手の手のひらを肩まであげて空へ向け、ふるふると首を振りな
がら光岡彰は言った。「とりあえずリアン待ちだな」
「そうですね」
 答えて、折原浩平は座る。その瞬間、少し欠伸をしてしまった。
「少し、眠るか?」
 光岡彰は言った。
「いえ、大丈夫です」
「無理は…禁物だぞ」
 それだけ言って、光岡彰は折原浩平と長森瑞佳の正面に座る。

 …それから少しの時間が流れた。
578そして雨の夜に:02/05/29 20:52 ID:cjDv6LRg
 …それから少しの時間が流れた。
 折原浩平、長森瑞佳、そして光岡彰の三人はなんでもない話をし
た。学校の話。生活の話。ほかにもいろいろな話をした。ここでや
るような話では無い話。
 それが何より心を落ち着かせることを光岡彰は知っていたからだ
った。
 折原浩平、長森瑞佳は笑みを見せて話し合っている。少し、羨ま
しいと光岡は思っていた。…俺にもこんな頃が…。いい、そんなの
は昔のことだ。
 パアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!
 ガラスの砕け散る音。
「…なっ!?」
 折原浩平は声をあげた。
 光岡彰の視線が一瞬で鋭くなる。
 眠っているリアンを長森瑞佳はぎゅっと抱きしめる。
 ドンドンドンと目の前の木の扉が鳴り響きはじめる。
 内側から何者かが扉を叩いている。
「なんなんだ、一体っ!?」
 バンッ!
 音を立てて扉が吹き飛ぶ。
 建物の中から現れたのは異形のモノだった。
 人間のようで、人間でないそれは折原浩平らのほうをギロリと睨
み付けた。
579そして雨の夜に:02/05/29 21:00 ID:cjDv6LRg

「瑞佳逃げろっ!」
 叫びながら、折原浩平は銃口をそれに向け、引き金を――引いた。
 バキバキと音をたて、球はそれに見事命中する。
「やった…か…?」
 折原浩平は呆然と呟く。自分が殺ったのだ、自分が…。
「まだだッ、まだ油断するな…。まだ何か居るかもしれん」
 光岡彰は折原浩平を諭す。
 しんと静まりかえる。聞こえるのは木々のざわめきと雨の音。
「ギキャアアアアアアアアアアアアアッ!」
 折原浩平の打った銃弾が間違いなく命中したはずの異形のモノは
急に、立ち上がる。
「…やはり、な…。またくるぞ!」
 光岡彰は叫んだ。
(もしかして…あれはゾンビというやつなのか!?)
 折原浩平が思った通り、その人間のようで人間でないそれは、元
人間…いわゆるゾンビというやつだった。

【光岡 浩平 ゾンビとの戦い ゾンビが何体居るかは不明】
580イシをつぐもの:02/05/29 23:57 ID:1OBcO49M
疾駆するその足が地面につくたび、泥を帯びた水がぱしゃりとはねた。
彼女――広瀬は、右手一本で器用にその少女の体を支えつつ、叩きつける雨の中ひた走る。
どちらへ向かえばいいのか。
どこへ行くのか。
この傷ついた体と、一向に覚醒の気配のない抱えて
……そんな事は、わからない。今はただ、憎らしく、あるいは妬ましく、
だがどこか奇妙な友情を感じていた人物の依頼を遂行するのみ。
雨粒が眼に入ろうとも、泥水が左手の傷を汚そうとも、まったく意に介さぬまま。
左手の傷がどうなっているのか、それは広瀬には分からない。そんな事は頭にない。
そう、今は、ただ――――

「この子を……この子と、遠くへ……!」
581イシをつぐもの:02/05/29 23:59 ID:1OBcO49M
広瀬が自分の行動に何の迷いも持たず、しかしてその足だけは逃げ場を探していまだに迷っているように、
アレイもまた、広瀬を追うべきかどうか迷っていた。
守るべきあるじのため。その信念を殺人の理由にこじつけるには、
たった今自分が奪ったこの少女の命は、ほんの少し、だがある面ではあまりにも重いものだったのかもしれない。
目の前に今も横たわる、長い髪の少女の想いが、アレイの心をいわば蝕むようにして。
「でも……」
彼女は心の中で詫びる。だが彼女にも、こうするより他に方法がないらしいのだから。
「こうするしか、ないんです。 ……ごめんなさい」
自分にもまた、守るべきもの、救うべきものが在るのだから。
手にした刀を握りなおし、彼女はそっとひとりごちた。

「彼女達は……あっちに逃げていきましたよね……」

狂気、とも言えるかもしれない何かが、アレイの足をつきうごかす。
アレイはそれに抗えず、それとも抗うことをやめたのか。


道化を演じる殺戮者。その行く先に待っているもの。それが一体何であるか、今はまだ、分からぬままに――――
582RTO:02/05/30 00:00 ID:ybOp0KUe
【アレイ、広瀬達の追跡を決意】


感想スレ大誤爆。申し訳ないです。
583遺志と魂と(1/5):02/05/30 14:59 ID:Ft2wEYjl

 唐突に……足がもつれた。
 木の根にでも躓いたのであろうか、広瀬の体は一瞬宙を舞い、ぬかるんだ地面に叩きつけられる。
「……ぐぇ!」
 食い千切られた腕の先が地面にぶつかり、広瀬は激痛のあまり身体を丸めて、呻き声をあげた。
「……痛……っ…」
 激痛に喘ぎながら、広瀬は泥の中から何とか体を起こす。
 震えながら傷口に手をやると、七瀬の巻きつけてくれたハンカチに指が触れる。
「七瀬……」
 何度となく敵対し、いがみ合っていたはずなのに。
 自分を逃がすために七瀬はあの場に残り、そして恐らく今ごろは………
「うっ……く……ぅ」
 堪えようとしても零れる嗚咽に、広瀬はうずくまって右手で顔を覆う。
「んに……」
 唐突に聞こえてきた声に、広瀬はびくりと顔を上げた。
 倒れた拍子に手放してしまったみちるは、少し離れたところに転がっている。
 そのみちるが、ぼんやりとした目で広瀬を見ていた。
「目が……覚めたの」
「うん……長い長い、夢が覚めたみたい」
 みちるはどこか虚ろな瞳で立ち上がると、不意に森の奥に視線を向けた。
「そこにいるのは知ってるから……出てきて」
「えっ!?」
 一瞬、さっきの女がやって来たのかとも思った。
 だが、みちると広瀬の前に現れたのは、もっと別の、長身で髪の長い女だった。

 全身を白衣に包み、その表情は濡れそぼった前髪に隠れて、伺う事ができない。
 胸元に印刷された通天閣の文字だけが、ただ場違いなまでに日常を残していた。
584遺志と魂と(2/5):02/05/30 15:02 ID:Ft2wEYjl

「だ、誰なの、あんた……」
 せっかくの人が現れたにも関わらず、彼女の持つ雰囲気に、広瀬は安堵することさえできないでいた。
 みちるの声が無ければ、幽鬼とでも勘違いしたかもしれない。
 だが、彼女は広瀬をまったく無視すると、みちるの方に顔を向けた。
「………君は………確か遠野君の」
「みちるだよ」
「そうか………みちるか」
 それきり、彼女は押し黙ってしまう。
 その時ようやく広瀬は、だらりと垂れ下がった彼女の両手に、鋭い刃物が握られている事に気付いた。
 いや、白衣を着ている事から考えれば、それはメスなのかもしれない。

「聖、美凪がどこにいるか知らない?」
「………知らないな」
 奇妙な低い声で尋ねるみちるに、聖も押し殺した声で返す。
 だが、それを聞いて、みちるは僅かに肩を振るわせた。
 聖と同じく、濡れた前髪が、みちるの表情を覆い隠している。

「嘘つきはドロボーの始まりって、美凪がよく言ってたよ」
「そうか」
「嘘つく子は悪い子なんだって。だから、みちるは嘘つくのは嫌い」
「そうか」
「でも、聖は嘘つくんだね」
「………」
 顔を上げたみちるは、能面のような無表情で、聖をじっと見詰めた。

「美凪がね、悲しい悲しいって……聖が私を殺したから、悲しいって言ってるよ」
585遺志と魂と(3/5):02/05/30 15:03 ID:Ft2wEYjl
 驚愕が、広瀬の目を見開かせた。
 だが、それを言われた聖の方の驚きは、それ以上だったようだ。
 能面のような無表情の中で、僅かに強張った頬が、劇的なまでの内心の動揺を表している。
「……まさか、見ていたのか?」
「ううん、美凪が教えてくれたの」
 みちるは自分の薄い胸にそっと指を這わせると、か細い声で囁いた。
「美凪は、今ここにいるの」
「………」
 凍りついたような無表情で、みちるは聖をまっすぐに見詰めた。
「死んじゃった美凪の魂が、みちるの中にいるの」
「魂……だと?」
 その時初めて聖の無表情が壊れ、憎悪と憤怒の激しい感情がほとばしり出た。
「魂! 魂だと!! そんなもの、あるはずがない!! あるとするなら出して見せろ! 佳乃の魂をだ!!!」

「……霧島先生……愛する人を失ったからといって、他人を傷つけていい理由にはなりません」
 悲しげに首を振るみちるに、聖はぎょっとした顔で彼女を見返した。
「なん……だと?」
「霧島先生、雅史さんが逃げてしまったのだって、何か理由があるんだと思います。ですから」
「猿芝居はやめろ!!」
 絶叫と共に投げつけられたメスが、みちるの頬を深く切り裂いた。
「はっ、遠野君の真似でこの私をたぶらかすつもりか! そんな事では誤魔化されんぞ!!」
「霧島先生……佳乃さんを探すべきです。もしかしたら、どこかに流れ着いているかもしれません。
 川に落ちたからといって、必ず死ぬとは限らないです」
 今度こそ、聖はその場に立ち尽くし、驚愕の表情でみちるを見返していた。
「何故だ……どうして……本当に遠野君だと……」

「みちると美凪は一緒になったの………魂の器として」
586遺志と魂と(4/5):02/05/30 15:05 ID:Ft2wEYjl

 仮初の肉体に宿る、もうひとつの魂……美凪とみちるは、一枚のコインの表裏。
 僅かな奇跡のかけらを元にして作られた、偽りの存在である、みちる。
 だがその希薄な魂は、本体である美凪の魂を取り込むことで、初めて実体を得ていた。

 長かった雨が、ようやくあがろうとしていた。
「美凪が聖に殺された時、みちるの中に、美凪の声が聞こえてきたの。
悲しい悲しいって……痛いよりも苦しいよりも、いっぱいいっぱい、聖と佳乃の事心配してた」
「………」
 ようやく立ち上がった広瀬は、俯いている聖の肩が僅かに震えているのに気付いた。
「美凪は、死んじゃう自分の事より、聖の事を心配してたんだよ。だから、美凪がみちるに魂をくれたの」
「………遠野君が」
「みちると美凪の魂は繋がってたから……」

「見つけました!!」
 突然の叫びが、みちるの言葉をさえぎった。
 はっと顔を上げる広瀬のとみちるの前に、荒い息を上げながら、アレイが立っていた。
「……死んでください……ルミラ様のために」
「あ、あんた……七瀬、七瀬はどうしたのっ!!」
 広瀬の悲痛な叫びに、アレイは僅かに頬を強張らせながら答える。
「私が、殺しました」
「…………っ!!」
 目を見開き、絶望に口元を押さえる広瀬。
 そして、アレイは彼女の命を奪うべく、ゆっくりと剣を構える。

 だがそのアレイを遮るように、彼女が立ちはだかっていた。
587遺志と魂と(5/5):02/05/30 15:07 ID:Ft2wEYjl

「あなたは……」
 見た事のない女に、一瞬アレイに戸惑いが生まれる。
 その瞬間だった。
 じゅぷ……と湿った小さな音を立てて、一陣の光がアレイの眼球を貫いていた。
「……っああああああああああああああああ!?」
 そこは、どれほどの鎧を身に纏おうとも、決して遮る事のできない場所。

「ふふふ……どうしたのだ? 君だって、人を殺したのだろう?」
 顔を押さえ、苦しみもがくアレイに、聖は優しげとさえ聞こえる声をかけた。
 だらりと下げた両手に、幾本ものメスを下げて。
 聖は、アレイの行く手を阻んでいた。
「聖っ!?」
「……みちる……いや、遠野君と呼んだほうがいいのか」
「……みちるはみちるだ」
 背を向けた聖の表情は、二人からは伺う事はできない。
「例え君がどう言おうとも、私は佐藤雅史を殺す」
「………」
 一瞬、みちるの表情が、苦痛にも似た色をたたえる。
「行ってくれ、みちる。今回だけは……見逃してやる」
「………」

 何とか目からメスを引き抜き、立ち上がったアレイは、霞む視界の中で、広瀬とみちるの姿が遠ざかるのを見た。
「………なぁ、君………君はどうして、彼女たちを殺そうとするんだ?」
 囁くような聖の声に、アレイは苦痛に悶えながら、きっぱりと言い放つ。
「わ、我が主ルミラ様の為、魂を集めなければならないんです!」
「大切な誰かの為、か………それを聞いて安心した」
 アレイの返答に初めて、聖の顔に狂気じみた笑みが浮かんだ。
「これで遠慮なく、君を解体できる」
588長瀬なんだよもん:02/05/30 15:17 ID:Ft2wEYjl
【みちる&広瀬 聖に遭遇】
【みちるが目を覚ます。美凪との魂の融合】
【聖、アレイと交戦。聖はアレイの片目を潰す。その間に広瀬とみちるは逃げ出す】


毎度毎度、長くなってすいません。長瀬です。
またもや今回、NG覚悟で書いてしまいますた。なぎー&ちるちる融合です。
ハカサバ初NGを出した書き手ですけど、一回も二回も同じかなと(ぉ

マーダー聖VSマーダーアレイは、どちらが勝ってもおかしくない組み合わせですが。
それでは、誤字脱字修正NG要請ありましたら、指摘よろ。
589悪寒:02/05/30 21:24 ID:vw2kO8zi
(おかしい…)
 …戦闘開始から約10分が経つ。
 光岡は、疑念を抱いていた。
 それはまるで水面に落とした油の様に彼の心に不審の膜を張っていく。
(余りにも、手応えが無さ過ぎる…?)
 廃屋から出てきたゾンビ達は光岡と浩平によって次々と倒されていく。
 自分はともかく、素人同然とも言える浩平にも、だ。
 数が多く、再生能力も大した物だが、緩慢な動き、肉体の脆さ。
 戦闘能力という意味では問題にならない。
(早く倒して、長森君とリアンを追わなければ…)
 
奇襲故に敵の戦力が解らず、彼女達を逃がした事が悔やまれた。
 この程度ならば、守りながらでも十分に戦えたかもしれないのに…。
(もし、彼女達が逃げた先で襲われたら−−)
 そこまで考えて、光岡は背筋に悪寒が走ったのを感じた。
 それはまるで、見えざる手で心臓を鷲掴みにされたかのような。
 もし、目の前に居るゾンビ達が囮で、自分達から戦闘能力の無い彼女達を引き離す為の罠であったら−−−?
 
 それは何の根拠も無い、ただの勘。
 しかし、光岡は戦場で勘を軽んじる程素人では無かった。
 一流の戦士の勘は今までの数々の経験の積み重ねの結果である事を知っていたし、
 何よりも、光岡自身それに救われた事が何度もあったから。
590悪寒:02/05/30 21:27 ID:vw2kO8zi
 そこからの光岡の行動は早かった。
 目の前のゾンビを切り伏せ、浩平に向かって叫ぶ。
「浩平君、ここは私が食い止める、長森君達を追え!」
「な?でも光岡さんは…」 
「これは罠だ!私達を長森君達から引き離す為の!」
「!?」
 浩平の顔が驚愕の色に変わる。
 だが、光岡は浩平が落ち着きを取り戻すまで待ってはいなかった。
 今は一分一秒の時間さえ惜しい。
「だから行け!私は一人でも何とかなる! だが彼女達は何の力も無いのだぞ!」
「わ…解った! でも死ぬなよ、光岡さん!」
 …そう行って駆け出す浩平の背後に迫る一匹のゾンビを光岡は一刀の元に切り捨てる。
(…これで良かったのか? いや、他に手は無い。 後は浩平君を信じるしか…)
 光岡の勘は、まだ危険を告げている。
 それは、まるで見えざる何者かの手によって操られているような感覚。
 遠ざかる浩平のジープの音を聞きながら光岡はどうしようもない焦燥感にかられるのであった−−−。
591名無しさんだよもん:02/05/30 21:28 ID:vw2kO8zi
【光岡 ゾンビと戦闘中】
【浩平 ジープで長森達を追う】
【ジープは無事】

ジープについては触れたけど、
合流話に関しては触れると恐ろしく長くなりそうなので盛り込むのを諦め。
…一番気になるのは光岡の口調。
何か間違いあったら指摘よろ。  
592一つの推理(1/6):02/05/31 02:15 ID:IWNPd8w7
「……あの馬鹿女が……」

 目の前のウィルという人が私の目の前で発した言葉でした。
 一体誰のことを指しているのか、それ以前に何の事を話しているのか私に分かるはずが
ありません。掠れた声で懸命に言葉を発していました。
 目に見える範囲の傷は回復したつもりです。だが、完全に回復させたというわけではな
いので無理はいけないと、先程話したのにも関わらず更に言葉を続けようとする。人の話
を聞いていなかったようでした。
「今無理に口を開かなくても……」
「……もう大丈夫だ……」
「どう見たって大丈夫じゃないですよー」
「うるせぇ女だな……自分の体のことぐらいは分かる」
 ウィルさんは傍若無人な言葉を吐き、私を睨みつけてきました。
 その視線からはとてつもない威圧感を感じました。
 私は思わず体をびくつかせてしまい、それ以上何もいう事が出来ませんでした。
 ――数え切れないほどの戦いを潜り抜けてきた戦士――
 そんな印象をこの人から感じることが出来ました。
593一つの推理(2/6):02/05/31 02:17 ID:IWNPd8w7
「うっ……おい」
 ウィルさんは再度私を睨みつけてきます。
 ただ、先程とは違って不満を顔に表していました。
「……傷……まだ治りきってねぇ……。どうなってんだよぉ……」
「だから〜、まだ完治したわけじゃないですから〜」
「それを早く言えよ……」
 ため息を吐きながら、ゆっくりと横になりました。
「……とにかく、今はここはどんな状況になってるんだ。俺、あまりここがどんなのかし
らないからさ……」
 多少彼が落ち着いた感じになったのが窺えたので私はこの島の現状を知っている限りで
話すことにしました。

「実は……」

(二行あける)
594一つの推理(3/6):02/05/31 02:18 ID:IWNPd8w7
「……成る程な。 
 早い話がその超先生って奴が魔物を作り出して、それを人に襲わせているって訳か。
 道理でこの世界にはいないスキュラやドラゴンやバンシーやゾンビが我が物顔で徘徊し
ていたんだな。よくそんなものを作り出すとはご苦労なこったといいたい所だが……」
 ウィルさんは一旦ここで言葉を切り、私が差し出したコーヒーを少し啜りながら考え込
みました。体には爪痕や火傷が多く点在していました。彼もまたこの島に上陸してから、
傷だらけの体で魔物と格闘したようです。
 少しして後、口を開きました。
「しかし……ドラゴンやスキュラなら人間でも作り出せないことはないが、アンデッド系
統や精霊系統の魔物となるとそいつだけが作り出したとは考えられねぇ。あんたの知って
る限りじゃ、そいつは魔力を操れるタマじゃないはずだよな」
「ええ……私はそう聞いています。ただ、実際の所はそうだと断言できかねるのですが」
「まあいい。とにかくこの騒動には人間以外の奴――天使か悪魔が関わっていねぇと到底
起こせるもんじゃねぇ。アンデッド系統の魔物や精霊系統の魔物を作り出すには精霊を自
由自在に操ることが必要だ。一体操るだけでもとんでもない量の魔力と体力がいる。下手
をするとそいつ自身の命と引き換えにするほどな。
 しかも今回の場合は数え切れないほど存在しているわけだ。人間一人がそこまでの数の
ゾンビを作り出せるわけがねぇ。第一、魔力を多少持った人間でも一体のゾンビを作り出
すにもまずは悪魔と契約して魔力を増幅でもさせない限り到底不可能だと言ってもいい。
 もっとも、その超先生って奴が大天使や大悪魔をも超える魔力を持っていたとしたら話は
別だが、そこまでの奴なら天界の連中が見逃しているわけがねぇ。何かしらの形でマーク
されている筈だ……」
「と、いいますと……?」
595一つの推理(4/6):02/05/31 02:20 ID:IWNPd8w7
「早い話が大天使、もしくは大悪魔クラスの奴が関わっている可能性が極めて濃いってこ
とさ。超先生はそいつと結託もしくは拘束して魔力を利用しているってことが考えられる」
 ウィルさんは長々と話し終えた後、手にしていたコーヒーを一気に飲み干しました。
「……」
 私はじっと黙ったままでした。
 彼が話した推測に多少は驚きましたが、それよりもやっぱりと思う気持ちの方が強かっ
たようです。今回のこの島の出来事にはとんでもない魔力を持った人外の者が関わってい
るという事は大方予想がついていました。もっともその正体は私たちがずっと追っている
”あいつ”だと私は思うのですが……。
 
 私はふと窓の外に目をやりました。
 真っ暗な夜空の中で延々と降り続く雨。
 勢いよく雨水が窓の叩きつけているので大きな音を立てていました。
596一つの推理(5/6):02/05/31 02:21 ID:IWNPd8w7
「……だが、それでも解せねぇ」
「え?」
 突然、ウィルさんが発した言葉に私は思わず彼の顔の方に向き直りました。彼はそれに
気付く様子は無く、ただぼそぼそと独り言を口にしました。
「……ユンナがこの島に来ているのは確かだとは思うが、あいつがこれほどのとんでもね
ぇ魔力を持っている訳がないし……」
 そこまで言いかけたとき、ようやく彼は私が目の前にいることを思い出したらしく、
すまないと謝りながら話を続けました。
「実は俺はある事情でユンナっていう天使を探してこの島にきたのだが、そいつはこれほ
どのとんでもない魔力を持った奴ではないのでね……。
 そうだ、確かこの島に来た奴らはその超先生って奴に招待されて来た訳だろう?」
「ええ、そうですけど。それが何か?」
「その招待客のリストかなんかはあるか?」
「残念ながら……私たちにはそういったものは持たされていません」
 私はすぐさま返答しました。無いものは無いのだから仕方がないのです。
 ウィルさんはさらに招待客の中に人以外の者が紛れ込んでいたかという事も訊いてきま
したが、やはりこれもいいえというしかありませんでした。私の知っている限り、そのよ
うな人はティリアとサラとマルチさんを除いて見かけていません。(もちろん、マルチさ
んにはそのような魔力をお持ちでないことも知っています)
597一つの推理(6/6):02/05/31 02:22 ID:IWNPd8w7
「そうか……」
 ウィルさんは少し残念そうな顔をして窓の外をじっと見ていました。
「でも……浩之さんたちならひょっとしたらそのような方をお見かけしているかもしれま
せん。後で私が尋ねてみます」
「そうか……悪いな。是非、頼む。
 それとあんたは今煙草を持っているかい?」
「ええ。浩之さんらがいろいろ調達していたのを見ていましたから」
「なら持ってきてくれ。できればハッカ入りのほうがいい」
 ウィルさんの頼みに一旦私は部屋を離れました。そして、この資料館の入り口にあった
自動販売機から浩之さんらが勝手に盗んできた煙草とライターを一通り持って、ウィルさ
んのいる部屋へと戻ります。
「マルボロライトメンソールにセーラムピアニッシモにクールか……重いやつがいいな」
 ウィルさんはすっとクールとかいう煙草を取り出して、手馴れた手つきで煙草を取り出
して火をつけます。すうっと一息吸いながら、彼はじっと窓の外を見ながら独り言をぼそ
っと口にしました。

「……ユンナ……てめぇは何がしたいんだ……」
598名無しさんだよもん:02/05/31 02:30 ID:IWNPd8w7
【ウィル、意識が戻る。但し、全身が完治するにはまだまだ時間が掛かる模様】
【エリア、懸命にウィルの看護をしている】
【浩之ら、隣の部屋で休息中】

 多少リスクはあるかなとは思いながらもウィルの話を進めてみました。
 気になるのはこのときに雨が降っているかという事と、登場人物の口調が
気になるのですが……。
 なお、ウィルも含めユンナとデュラル一家との事情は存じないという事を
前提としていますが、その辺も微妙な所です。
 間違いしてきおよびNGあれば指摘よろ。
 なお、行空けおよび書き込みの間の行空けは注の無い限り一行でお願いします。
599敵は吸血鬼:02/05/31 21:43 ID:NHLX1rJb
 最終的に矢島、香奈子、晴香、茜の四人がワクチンを取りに病院を出たのは朝日が昇ってからだった。
 彼らは一刻も早く出発したかったが、さすがに真夜中に動くわけにもいかなかったのだ。
 あゆと瑞穂にはとりあえずカーテンを閉ざした部屋に入ってもらっている。
 太陽光が彼女らにどう作用するのかはわからないが、念のためにとの智子の指示だった。
 しかし、そうなると瑞穂に対して吸血鬼のことを説明せざるをえない。
 瑞穂は今のところ、冷静にそれを受け止めてくれたようだ。

 智子はさっきからずっと考え込んでいた。
 あゆと瑞穂に関してはワクチンを取りに行った面々に任せるしかない。
 そちらはそれでいいとしても、まだ考えなくてはならない問題があった。
 それは大元となった吸血鬼のことだ。

 吸血鬼は昨晩、誰にも気付かれずに病院に侵入し、二人の女の子を噛んで、再び出ていった。
 どういう方法を取ったのかは知らないが、モンスターの襲撃にはみんな警戒していただけに呆れるほどの手際のよさと言える。
 きっと吸血鬼にとって彼女らの目を盗むことは赤子の手をひねるようなものだろう。
 その吸血鬼が、昨晩の成功に満足してもうやってこないということがあるだろうか?
 可能性は低そうに思えた。
 他の犠牲者を出すためか、それともあゆと瑞穂を連れ去るためか、ともかく吸血鬼はもう一度、近いうちにやってくる。場合によっては今晩にでも。

 それが智子の読みだった。
 だが、そこまでは読めてもそれでどうしたらいいのかがわからない。
 吸血鬼といったら、ホラー映画の花形だ。強力な再生力とパワー。霧になる力や狼をしもべにする力をもっている。
 銃器だって効くかどうかわからない。
 この病院に集まっている女子供や怪我人たちでどこまで対抗できるのか、それが疑問だった。
600敵は吸血鬼:02/05/31 21:44 ID:NHLX1rJb
 ただし、希望もないではない。
 吸血鬼は確かに恐ろしい。だが、多くの弱点を持つ怪物であることも事実だ。
 オカルトに興味のない智子ですら三つ四つの弱点くらいそらで言える。

(来栖川先輩がいたらもっと教えてくれるやろな。ま、この場におらん人をアテにしても始まらんけど)

 つまり弱点をつけば、智子たちにも充分勝ち目があるはずだ。
 しかし……。そう、しかし事情はそう甘くはない。
 相手が吸血鬼と言ったってわかっているのは噛んだ人間を吸血鬼に変えてしまうということくらい。
 この島にいる吸血鬼がどこまで伝説上の吸血鬼に近い存在なのか、そのあたりがさっぱりわからない。

 夜に現れたところを見ると、太陽に弱いのはおそらく確かだろうが、それ以外はどうなっているのか。
 例えば吸血鬼に十字架は本当に効くのか。効くとしても単に十字に組み合わせただけの棒でも問題ないのか。 
 そういうことがわからなくては手の打ちようがない。
 役に立つかどうかもわからない武器で強敵と戦うなんて無理に決まっている。
 智子はため息をつく。

(あーあ、せめてどっかに実験に協力してくれそうなおとなしい吸血鬼でも落ちとらんかな)

 アホ、そんなん落ちとるわけないやろ。
 関西人の習性なのか、そう心中でノリツッコミをしようとした智子。
 その頭の中に電光のようにそのアイデアがやってきた。
 智子は大きく目を見開いて、口をぽかんと開けた。
 吸血鬼の弱点を探るための具体案。
 なんでこんな簡単なことを思いつかなかったのか。

(そう……そう、おるやん。おとなしい吸血鬼。実験に協力してくれそうな……女の子が二人も!)

        (3行開け)
601敵は吸血鬼:02/05/31 21:46 ID:NHLX1rJb
 智子は二人が閉じこもっている病室を訪れた。ノックをしてから、
「入るで」
 一声かけて中に入る。中はカーテンをかけているせいでひどく暗かった。
 あゆと瑞穂は二人ともベッドに入っているようだった。

「起きとるか、二人とも」
「……はい」
「僕も、起きてるよ」
 ベッドの方から二人分の返事が来る。
「そか、実は二人にな、話したいことがあんねん」
「……なにか、困ったことでも?」
 そう瑞穂が聞いたのは智子の口調に暗いものが混じっていたからかもしれない。

 実際、智子は気が重かった。
 このアイデアの有効性自体は疑ってはいない。二人に協力してもらえば必ず吸血鬼と戦うときの助けになると智子は考えていた。
 だが、吸血鬼に噛まれて、自分が人間ではなくなっていく恐怖に怯えているであろう二人に「実験体になってくれ」とはいいづらい。
 そんな智子の心の動きが態度の端々にまで出てしまっていた。

(それでも、言わないわけにはいかへん)

 智子は意を決して二人に説明することしたした。
 吸血鬼が再び襲って来る可能性があること。吸血鬼を撃退するためは相手の弱点を狙う必要があること。そのために、二人に実験に協力してほしいことなどを。
602敵は吸血鬼:02/05/31 21:50 ID:NHLX1rJb
 二人は智子の手際のよい説明をだまって聞いていた。
「……その、こんな話、二人にとっては酷なことかもしれん。
 吸血鬼に噛まれたいうことを受け入れたばかりやのに、実験に協力せえなんて。
 だから、断られるのもしゃあないと……」
「……智子さん」
 瑞穂が智子の話の途中で口を挟んだ。
「わたし、やります」
「藍田さん……」
「わたし、やります。このままその吸血鬼をほうっておけばみんな危ないんでしょう?
 わたしたちだけでなく、香奈子ちゃんや他の人たちまで危ないんでしょう?
 それなら……。わたしで役に立てるのなら、なんでもやりますから」
 暗い部屋なので表情までは読み取れなかったが、その声には断固とした意思が感じられた。

「ボクもやるよ」
「あゆちゃん……」
「ボク、昨晩からずっと怖かった。自分が自分じゃないみたいで。
 このまま吸血鬼になっちゃったらどうしようって。怖くてずっと泣いてた。
 ……こんな怖い思いをするの、ボクたちだけで十分だよ」
 震える声で、それでもあゆは言いきった。
「……あんたら……」
 智子の声がつまる。ちょっとだけ、泣けた。暗い部屋でよかったと智子は思った。
 涙声を気付かれたくなくて、智子は景気のいい声を出す。
「よう言った!
 そんなら、夜中にしのび込んであんたらを襲った不埒な奴は私がきっちり退治したるわ。
 大船に乗ったつもりでまかしとき!」
(どこの馬の骨か知らんけど、こんなけなげな子たちに手ぇだしたこと、今にきっちり後悔させてやるで!)

 そう、智子は言葉と心で同時に誓いを立てたのだった。
603旅猫:02/05/31 21:58 ID:NHLX1rJb
【病院組、ワクチン捜索組、共に2日目朝へ】
【保科智子、あゆと瑞穂の協力を得て、吸血鬼撃退の準備を開始】

こんにちは。新入りです。なんか矛盾とかあったら指摘してください。よろしく。
ちなみに特に記入がなければ1行開けってことで。
後、あゆのセリフで一人称が僕になっている部分がありますが、間違いです。
正しくはボクなんでよろしく。
604旅猫:02/05/31 22:10 ID:NHLX1rJb
も一つ訂正。
瑞穂の苗字が藍田になっています。
藍原でしたね。
605真世界:02/06/01 06:54 ID:Vqz4vEAs
〜序曲〜

「そろそろ時間か…」
朝鮮製はそう言葉を発すると、椅子に座り、モニターを見ながら、コンピューターの
操作を始めた。
「くくく、やっとこの時が来たか」
そう言いながらも、彼女はコンピューターの操作を続ける。
朝鮮製、彼女はモニターに話しかける癖があった。
(2行空けで)

〜指揮者〜

「ふふふ、参加者達よ。君達が私のことをどう思っているかは知らないが、
この島をこのように作り上げたのはこの私だ。つまり、私はこの島の神なのだよ。
そして、君達はその神の手の中にある物でしかないのだ」
朝鮮製は誰に話すわけでもなく、ただモニターに向かって独り言を言っている。
いや、モニターにではなく、モニターに映る参加者全員に言っているような感じだ。
「君達は私の物だ。ビデオゲームで例えるなら、私がコントローラーでプレイする
プレイヤーで、君達はそのゲームの中の登場人物だ。楽しいゲームになってくれよ」
(2行空けで)
606真世界:02/06/01 06:57 ID:Vqz4vEAs
〜レクイエム〜

 作業をし始めてから1時間。
「しかし…」
 朝鮮製はそう言うと、作業している手をいったん止めて、自分の顎に右手を
 持っていき、考える格好をしてた。
「思っていたよりも参加物がたくさん死んだな。本当はもっと生かすつもり
 だったのだが、難度が高すぎたか?そのことを考えると、ここまでこれなかった
 物達には悪いことをした。思えば、死んだ物のほとんどが未成年の若物だったし、
 中には即死できず、苦しみながら死んでいった物もいる。それを考えたら私は…」
 朝鮮製は涙声になりながら、悲しい顔している。
 自分のやったことに対して、罪悪感を抱いたのだ。
「…だが、君達は結局、私の物だ。所持者がどうしようと勝手だ。
 この程度死ぬような欠陥商品はいらないな」
 さっきまでとはうらはらに、朝鮮製はまたコンピューターを操作し始めた。
 彼女の心にはもう罪悪感などなくなっていた。
(2行空けで)
607真世界:02/06/01 07:00 ID:Vqz4vEAs
〜真世界〜

「よし、後はここをクリックするだけで終わりだ」
 そう言うと、朝鮮製は椅子の背にもたれかかった。
「これでリアル・リアリティーの準備は終わりだ。ここよりさっきが私の
 求めっていた世界となる」
 朝鮮製は2つの要素により、自分のリアル・リアリティーが完成すると考えていた。
 1つは、檻により外に出れないモンスター達を開放し、参加者達と一緒に
 リアルの痛み、リアルの死を感じさせること。
 そう、痛み苦しむのは、何も参加者だけじゃない。モンスター達もまた同じなのだ。
 そして、もう1つは参加者のほうだ。モンスターの檻は外した。
 しかし、参加者のほうの檻はまだ外していない。正確に言えば、
 外すのに時間がかかる。
 その時間のかかる参加者の檻とは、作り出した自分。世間体、常識、道徳、
 今まで社会によって作られてきた自分。
 この島に対して、そんなものがある以上、自分の求めるリアル・リアリティーは
 完成しない。必要なのは解き放たれた心だ。
 ならば、どうすればそれを取り除けるのだろうか?
 そこで考えだされたのが、人間のリミッター解除による極限状態。
 朝鮮製はまず、この島にリミッターを解除させる結界をはり(結界の作用により、
 リミッター解除をしても体が壊れたりなど副作用はない)、参加者全員のリミッタ―を
 解除させる。
 結界により、リミッターは徐々に解除されていく。
 しかし、これには素質があり、それがない物はリミッターを限界まで
 解除できないのだった。
「私のリアル・リアリティーは物を選ぶ。この程度の素質がない物は
 私のリアル・リアリティーにはいらない。
608真世界:02/06/01 07:04 ID:Vqz4vEAs
 そして、この島は素質のないものは生き残れないようになっている。少なからず、
 気づいている物もいるようだが、おかしいと思わないか?
 ただの人間がモンスターを倒したり、銃を正確に撃てたりするのは。
 これらはすべてリミッター解除の効果なのだよ。力や集中力が上がるのは
 もちろんのこと、聴覚、視覚までも上がっている。
 運でモンスターを倒したというのも、運ではなく、第6感。
 いわゆる勘というやつで瞬時に判断して倒しているのだよ。
 しかし、ここで大切なのは君達が強くなることではない。限界まで
 強くなるということは、逆に言えば、それ以上能力が上がらないということ。
 そう、大切のはそこ。自分の限界を知り、すべての力を出しきっても
 どうにもならない極限状態で見せる人間として、自分としての本当の性質だ。
 そう、自分すら知ることのない隠してきた本性。
 そして、そこから生まれる行動を私は求めている。
 モンスターの檻が解除され、人間の檻も解除された時、
 そこにこそ私のリアル・リアリティーは存在する」
 参加者が映るモニターを本当の神なったかのように見る。
「ここからは前のように甘くない。モンスターのレベルを上げるからな。
 こうなったら、必ず死ぬことはないにしろ、もう無傷ではいられない。
 それが肉体的か精神的かはわからんがな」
 そして、朝鮮製は午後12時になると同時に、マウスに手をかけ、クリックをする。
「さあ、見せてくれ、君達のリアル・リアリティーを!!」
 その言葉に共鳴するかのように、モンスター達が雄叫びを上げた。
 モンスターの雄叫びが島中にこだまする中、
 朝鮮製はうっすらと笑いを浮かべていた。


【モンスター達のレベルが上がる】
【時間は午後12時ジャスト】
609まかろー:02/06/01 07:07 ID:Vqz4vEAs
最初のレスは空白入れるの忘れていました。
すいません。他にもミスがありましたら、指摘を
作品のほうですけど、かなりNGは覚悟です。
610名無しさんだよもん:02/06/01 09:11 ID:OJLze6En
「おお……何だかオラ、強くなっているぞ……」
「何言ってるんだ浩之ーっ!!」

【浩之 覚醒】
611知的な狂気、愚鈍な正気:02/06/02 08:46 ID:YPN0EFnV
「解……体?」
 虚ろにつぶやくアレイ。彼女の目に映る世界は、その半分が朱に染まっていた。
「わるいが、君と問答をする気はないんだ」
 冷酷な宣告とともに、再びメスをアレイに向かって投げつける聖。
 しかし、そのメスは、彼女に届く前に彼女の手に持った半透明の盾によってはじかれていた。
舌打ちする聖、アレイは盾を掲げた状態を維持しつつ聖に向かってきていた。
普段と違い、軽い鎧を身に着けた彼女の動きは意外に機敏で、すぐに聖に近づき大剣を振るう。
 だが、やはり片目では遠近感が狂ってしまうのだろう。
アレイの一撃は聖には当たらず、巻き起こった剣風が聖の前髪をなびかせただけだった。
聖は、後ろに飛び退って間合いを開ける。
アレイはそれ以上深追いすることもなく、改めて剣を下段に構えなおし、じりじりと聖に近づく動きを見せた。

 そんな彼女を見やりながら、聖は自分の頭をフル回転させて作戦を練り始める。
メスはそもそも相手に投擲することを考えて作られたものではなく、その有効射程は短い。
 ましてや、相手は全身を鎧に覆われていて当てればダメージを与えられるとは限らないのだ。
少なくとも3m以内には近づいてからメスを投じたい、それ以上はなれては狙った部分にメスを当てることはできないだろう。
 しかし、相手の持つ武器は刃渡り二メートルはあろうかという大剣だ。
彼女が一歩間合いを詰めてこちらを攻撃すれば、3mという距離はあってないようなものとなる。
 となれば、結論は一つしかなかった。
612知的な狂気、愚鈍な正気:02/06/02 08:47 ID:YPN0EFnV
 聖は両手にメスを握り、右手のそれをアレイに投げつけ、同時に一気にアレイに近づく構えを見せた。
「無駄ですよ!」
 その言葉どおり、アレイの持つ盾は、あっさりと聖のメスをはじき返した。
 そして、こちらに向かってくる聖に対して、アレイは下段に構えた大剣をふるう。
 もし、そのまま聖が突っ込んでいれば彼女の体は上下に切り分けられていただろう。
 しかし、彼女の動きはフェイントに過ぎなかった。
アレイの振るった一撃。それをぎりぎり届かない間合いで踏みとどまりやり過ごす。
「もらった!」
 常識外のサイズの大剣は重い武器だけに威力は高いが、はずせばその隙は非常に大きいものとなる。
左手のメスを右手にもちかえつつ間合いを詰める聖、このまま一気に近づき、相手にメスをつきたてるつもりだった。
 しかし、それを悟ったアレイは、無理に大剣を構えなおそうとはせず、聖に向かって背を向けた。
 そして、後わずかのところまで間合いを詰めた聖がメスを振りかぶったそのとき、彼女の左側面を強い衝撃が襲った。
アレイが盾を持った左腕を聖にたたきつけたのだ。
弾性のあるポリカーボネートの盾は、その面積が大きかったせいもあって、
ダメージはそれほどでもないが、そこに込められた力は人間の常識外のものだった。
 聖はあっさりと1mほど吹き飛ばされ、右肩から地面に落ちる。
「くぅぅぅっ」
うめき声を上げつつも、必死で地面を転がるようにしてさらに間合いを離し、勢いよく立ち上がる聖。
(マズイな……)
 右腕がしびれてうごかなかった、骨折や脱臼をした時ほどの痛みではないにしろ、これはかなりまずい状況だった。
(逃げる、しかないか?)
 状況は圧倒的に不利だ、このままでは相手に有効な一撃を与えることは不可能だろう。
(佳乃……!)
 聖は心の中で今は亡き最愛の妹を思い浮かべた。
613ナマ月見:02/06/02 08:48 ID:YPN0EFnV
【聖、右腕にダメージ】
614サトリ:02/06/02 12:27 ID:L8TDnF7k
 ピチャ、ピチャ…。
 水が床に落ちる音で、長森は目を覚ました。
 朦朧とする意識、記憶がはっきりしない。
(私は…?) 
 重い頭で何とか記憶の糸を手繰り寄せようとする。

(待合所の入り口で雨を凌いでいたら突然建物の中からゾンビが出てきて…、
 浩平が逃げろって叫んで、リアンちゃんを背負って逃げ出して、それで、森に入った所で…)
「入った所でぇ、どうしましたか〜〜?」
「!!」
 突然耳元で聞こえた声に跳ね起きる。
 蛍光灯の光に慣れるまでいくばくの時間を要した彼女が目にしたのは1人の男。

 その男は…正直、この殺し合いが展開されている島では余りに場違いな格好をしていた。
 黒のタキシードとシルクハット。
 手にはステッキを持ち口元にはくるりと巻かれたヒゲ…。
 英国紳士とやらを解り易く図解すればこんな感じだろう、という印象を受ける。
 それだけに、長森にはこの男が非常に浮いて見えた。

「あなたぁ、私の事おかしな人だと、そう思いましたね〜??」
「い、いいえ、そんな事…」
「いいや、思ってましたぁ。私に隠し事は通用しませ〜ん!
 何せ私はぁ、人のこころをぉ、読む事ができるからで〜す!!」
「……え?」
615サトリ:02/06/02 12:28 ID:L8TDnF7k
 とんでもなくイントネーションが狂った日本語の為、
 長森はその男の言葉が一瞬理解できなかった。
(心を…読む?)
「そうっ、でーす!!」
「ひゃあっ!!?」
 突然目の前に男の顔がどアップで現れた為腰を抜かした長森にのしかかり
 いきなり彼女の胸をもみ始める。
「む〜、この感覚、たまりませんね〜」
「え…きゃ、や…やめて下さい!!」
 バシィッ!!
「ギャプェ!!」
 とっさに出てしまった長森の平手を食らって、男はゴロゴとロ床を転がる。
「し、しまったで〜す。つい、手を出してしまいました…紳士の風上にもおけませ〜ん!」

 長森は、この人は格好は紳士のようだが、
 中身は単なるスケベオヤジでは無いかと思ったが、それにツッコミは入らなかった。

 …そこでようやく落ち着くと、長森は今自分の置かれている状況を確認する。
 どうも、何処かの建物の中らしい。
 かなり広く、何かの資材が多く積まれている所を見ると、倉庫か何かだろうか?
 自分達2人は目の前の男にここに連れ込まれたのだろうか…。
 そこまで考えて、長森は自分と一緒に居た少女の事をようやく思い出した。
「そうだ!リアンちゃんは…、リアンちゃんは何処ですか!?」
「おおぅ!!忘れてました〜!」
「……」
 
 長森は、この人は格好だけ見ると頭は良さそうだが、
 実は結構馬鹿なのでは…と思ったが、それにもツッコミは入らなかった…。
616サトリ:02/06/02 12:29 ID:L8TDnF7k
「そうそう、それで、リアンさんですねぇ〜…あぁ、私の事はぁ『サトリ』とお呼び下さ〜い。」
 恐らく昔話に出てくる心を読む妖怪の事だろう。
 そんな自己紹介をしながら、サトリはリアンを柱の影から引っ張り出してきた。
 先の魔力の暴走のせいか、未だ眠っているようだが外傷は無く無事のようだ。
「リアンちゃん! …キャッ!」
 思わず駆け寄ろうとした長森の足元に一本のナイフが突き刺さる。
 何時の間にかサトリの手には数本のナイフが握られている。
「ノンノンノン…いけませんねぇ〜」
「そ…その娘を、どうする気ですか!? リアンちゃんを返してください!」
「駄目で〜す…。この娘はぁ、ユンナ様の元へ連れて行かねばならないのですから!」
 そこで大仰に仰け反ると、後ろにこける。
 ……起き上がった…、後頭部を抑えている。
「…し、心配は無用ですよ、大丈夫ですから」  
 …と言いつつ後頭部を抑えている。
 とても大丈夫そうには見えないのだが…。
「大丈夫と言ったら大丈夫なので〜す! がっ…!」
 そんな長森の心を読み取ったのであろう、サトリは声高に叫び…今度は舌を噛んだようだ。
 …何だか、こんな人間に捕まったのかと思うと、内心情けなくなってきた。
「し、失敬な! 私を何だと思っているですか、貴方は!?」
「え、え〜と…」
「……」
 一時の間。
「そ、そんな風に思われているなんて…ショックで〜す…」
 どうやらダメージは大きかったようだ。
617サトリ:02/06/02 12:32 ID:L8TDnF7k
 サトリ曰く、雨が止むまではこの倉庫に居るらしい。
 その後はユンナという人物の元に連れて行かれるそうだ。
 最も、それが何者なのか、という事は教えてもらえなかったが…。
「あの……」
「何でしょ〜か?」
「リアンちゃん…寝苦しそうだから、膝枕してあげていいですか?」
 おそるおそる…とは言っても先ほどのやり取りである程度緊張がほぐれたのだろう。
 そう尋ねた長森にサトリはリアンを長森に渡す。
「別にいいでしょ〜、逃げるつもりは無いようですしね」
「あ…ありがとうございます」
 サトリは、リアンを膝枕している長森を見ていると口を開く。
「一つ…聞いてよろしいでしょ〜か?」
「はい?」  
「その娘は…そんなに大切なのですか? 昨日今日会ったばかりなのに?」
618サトリ:02/06/02 12:33 ID:L8TDnF7k
「…はい」
「ジープが彼女の力で暴走した時、貴方が光岡さんの言いつけ通り離れていれば、
 貴方は攫われずに済んだはずで〜す…。後悔はしてませんか?」
 心を読んだのか、それともその時から監視していたのか。
 その質問に少し笑って長森は答える。
「私が、浩平に戻るように言ったんです…。自業自得です」
「戻ったのは、姉を失った彼女に対する同情ですか?それとも使命感?」
「……多分、違うと思います」
 少し考えた後、長森は口を開く。
「こんな島に居るから…、私、とても怖くて…。
 でも、こんな女の子があんな風な事になっても頑張ってる…。
 それを見てると、私も頑張らなきゃいけないって気持ちになれるんです。だから…」
「そうですか…貴方は正直で、優しい方で〜す…」
 長森の言っている事に嘘が無いと解っているのだろう。
 サトリはそう言うと穏やかに…だが少し寂しそうに笑った。
「貴方は将来、いい母親になるでしょ〜…そこで、今のうちに私にもその温もりを!」
「え、きゃっ、やめ…やめて下さい!」
 そしてまた、倉庫に乾いた音が響いた…。

【長森、リアン、サトリ 雨があがるまで倉庫で待機】

122話「はなたれるもの」で出てきた
ユンナの刺客×2の内の1人を出してみる。
後、合流話のフォローも入れてみた。
何か間違い等あったら指摘よろ。
619夜間飛行:02/06/02 16:16 ID:rDMNZK6k
(畜生…っ!)
 心の中で、折原浩平は何度も呟く。
(どこに居るんだ、どこに居るんだよ、長森っ!)
 アクセルを踏む足が震える。心だけ焦っても仕方が無いのは判っ
 ている。だけど…。
 
 折原浩平が光岡悟と別れてもうすでに30分が経っていた。相変
わらずの勢いで降り続ける雨の中、長森がリアンを背負い走り去っ
た方向へ折原浩平はずっとジープで走り続けた。長森瑞佳、そして
リアンを折原浩平はまだ見つけることが出来ていない。
 折原浩平の中でだんだんと焦りが大きく膨らんでいく。
(所詮、俺は何も出来ない子供にすぎないのか…? サバイバル能
力、戦闘能力、判断能力。全てにおいて光岡さんとは比べものにな
んかならないほど俺は低い…。それに…俺は愛する人を守ることす
ら出来ないのか?)
 悔しくて、折原浩平は下唇を噛んだ。一筋の血が流れ落ちる。
620夜間飛行:02/06/02 16:18 ID:rDMNZK6k
 それは一瞬のことだった。
(しまったっ…!)
 そう思った時にはもう遅かった。
 目の前には大木。
 スローモーションで世界がぐるりと回った気がした。
 雨だというのに鳥たちが一斉に飛び立つ。
 地面に体が叩き付けられた。
 体全体に一気に電気が駆けめぐるような感覚。
 雨と汗で滲んだ片手がハンドルから滑り落ち、舵を失ったジープ
は大木へと突入したのだった。
「長…森…」
 ジープから放り投げ出された体が凄く痛み、うまく言葉を出すことが出来ない。
(カッコ悪ぃ、俺…)
 灰色の空を仰ぎ、降り注ぐ雨に打ちひしがれながら、折原浩平は静かに目を閉じた。


【折原浩平 重症 】
621偽者(前編):02/06/02 22:49 ID:p1B0n3EA
「これは……食べられるのか?」
 高く伸びきった木が茂る森の中で、久瀬は目の前に生えてあるキノコを手にとり、
 それをじっと眺めていた。
「まあ、相沢に食わせてみればわかるか……」
 当人が聞いていたら憤慨する事間違えない台詞を言い、僕はそのキノコを袋の中に仕舞う。
 袋の中身は、僅かな数の木の実。
 そう、彼は完全に見落としていた。
「まいったな。もう少しはあると思っていたんだが……」
 この島におけるモンスター以上の難関、食料の確保だ。


 その事に気付いたのは、少し前の話。
「こ、これだけしか残ってないのか……」
 休憩所の一角で僕は『携帯型ハートーッチップル』と表記してある缶詰を手に取り、中身を空ける。
622偽者(前編):02/06/02 22:50 ID:p1B0n3EA
「しかも、食べるとくさくなる以前に、腐ってるじゃないか……」
 意外にマニアックな事を言い放った久瀬は、落胆した顔で中身を放り投げ、部屋を出た。
 扉の向こうには、こちらも浮かない顔の相沢と北川がいた。

「だめだ、ここにある食料も全部腐ってる」
 あるのはハートッチップルだけだったが。
「なぁに、そんなに気落ちする事はない。食料が無いのなら、外で集めればいいだろう?」
 さすがは僕、ナイスな判断と鋭い考察。
 この二人とは頭の回転が違うって事が、また一つ証明されてしまったな。

「てめぇ……いい加減にしろよ!」
 急にキレ出した相沢が、僕の襟元を掴み、激しく前後に揺らしている。
 まったく野蛮な奴だ、育ちの悪さが窺えてしまうぞ。
「や、やめろよ相沢! こんな事で仲間割れしたってしょうがないだろ!」
 おっ、北川のほうは冷静だな、一般生徒にしておくのは惜しい逸材だ。

「いいや! 我慢できねぇ! 大体残っていた缶詰はコイツが食っちまったんだぞ!
 その上でこの言い方……怒らないお前のほうがどうかしてるんだよ!」

 確かに部屋の隅には、大量に開けられた缶詰が転がっている。
 昨日彼らが開けた缶詰は微量だったので、久瀬は相当な量を食べていた事になる。
623偽者(前編):02/06/02 22:52 ID:p1B0n3EA
「わ、わかったわかった、とにかく食料を集めよう。この島でなら、手分けして三十分も探せば
 朝食分ぐらいは集まるだろう」
 さすがにこの事に関してはに悪いと思ったのか、友好的な口調を示す久瀬。
 だが、彼の後ろに積み上げられた缶の山が、それを台無しにしていた。


「しかし、やはりキノコと木の実だけでは辛いな。売店でもあるといいのだが……」
 と、半ばキノコ狩りのような状態に彼が辟易としていると、

「きゃああああああああああああっ!」

 久瀬の耳に入ってきたのは、森に響きわたる恐怖の声。
(!! 今の声は!)
 勘違いかもしれない、だが、もし本人だったら……
 久瀬は声のした方向を見定め、全力で走り出す。
 すぐに森は終わり、小高い崖に出て、視界が一気に開ける。
「くっ! どこだ? どこにいる?」
 確かに声はこちらから聞こえてきた、近くに必ずいるはずだ!
 細心の注意を払い、辺りを見渡す。
 そして、視界の隅に見覚えのある人物を見て、
 僕の推測は確信に変わる。
 間違いない! あの姿は――
624名無しさんだよもん:02/06/03 03:01 ID:+YDR8j0W
625ただ、憎しみを:02/06/04 01:17 ID:tdkQsl9K
 その少女は、全てを憎んでいた。
 全ての幸せを知る人間達を。
 自分を実験体と称して研究し続けて来た人間達を。
 人となった母を、実験体と称して犯し、殺し、標本という肉片にした人間達を。
 そして……。

『あなたを助けたのも、あなたがその人の姿を維持出来るのも、全ては私のお陰。その恩は、忘れてないわよね?』
『……はい、ユンナ様』
『ふふ、余り無理して嘘をつかなくてもいいわ。そのかわり、ひとつだけ任されてくれるかしら?』

 ユンナが私に差し出した、一枚の写真。リアンという、女。
 この女を生きたまま連れて帰れば、あとは私は自由になるという。


『リアンさえ殺さなければ、そうね……あとは貴方の自由にしていいわ』
『…………』
626ただ、憎しみを:02/06/04 01:17 ID:tdkQsl9K
『人間たちが憎いんでしょう?』
『…………』
『聞くだけ野暮かしらね。あなたはもう記憶も命も捨てて、ただ憎しみだけを頼りに人化したのだから……』

 私は走る。
 リアンという女を探すため。
 そして、実験体という地獄の日々、その一時も忘れなかった憎しみの対象を、探すため。
 ユンナが私にくれたこの力も、全てはその時のため。

『7年前、重傷で動けなかった貴方たちを見捨てた人間も、貴方たちの味わうはずだった幸せを全て奪い取った貴方の姉も、この島にいるはずよ』

 相沢祐一。
 そして、沢渡真琴。

【妖狐、放たれる】
627名無しさんだよもん:02/06/04 01:19 ID:tdkQsl9K
ユンナの刺客のもう一人のつもりで、名前は決めてませんし、ユンナがくれた力もここでは決めていません。
憎しみで動くマーダーであり、島に潜むモンスターでもある、という方向性で考えてみました。
ちなみに時間帯不特定です。
628偽者(中編):02/06/04 22:37 ID:zyvvuXBt
「くそっ!」
 降りる所を探していたのでは間に合わない。
 覚悟を決め、15mはあるであろう崖から久瀬は一気に飛び降りる。
 一瞬の浮遊感の後、物凄い勢いで体が落ちていく。
 落下の速度に歯を食いしばりながら、右手に持っていたM16を撃ち、
 崖下の女性に襲いいかかろうとしている怪物を牽制する。
 直後、凄まじい音と共に地面に体を打ちつけ、激痛に見をよじらせる久瀬。

「痛っ! いくらなんでも無理をしすぎたか……」
 どうにか痛みを堪え、立ち上がってその女性に襲い掛かろうとしていたトカゲのような
 化物に視線を移す。
 それはリザードマンと呼ばれている、爬虫類系のモンスターだ。
 命中した場所が悪かったのか、目の前にいる二匹は、あまり動じることなくこちらを睨みつけている。
 その喉が急速に膨れ上がり、それを見た久瀬の思考が、警告を鳴らす。
「危ない! 下がるんだ!」
 その女性に一声掛け、久瀬は全力でリザードマンに突撃する。
 数瞬遅れて久瀬の立っていた場所の土が弾け、土砂が舞い上がる。
 リザードマンが得意とする、水砲だ。
 本来は水辺や湿地などで使ってくる技なのだが、昨晩の雨で島全体にできた水溜りのせいであろう。
 二体のリザードマンは、絶え間なく水の帯を撃ち続けて来る。
「無理だ無理! 少しは手加減しろ!」
 痛みでふらつく足を叱咤し、久瀬はM16を構え、銃口をリザードマンに向け引き金を引くが、
 弾丸を放つはずの銃から聞こえてくるのは、カチッっという弾切れを示す音のみだった。
 ――くそっ、そういえば大蛇に撃った後、僕はこの銃に弾を込めていない!
「と、とにかく弾を……」
 そこで浅はかにも目をバッグに移したのが――二つ目の油断。
 替えのマガジンを取り出した瞬間、腹部に熱い衝撃が走る。
 リザードマンの口から飛び出した水の弾丸によって久瀬は吹き飛ばされ、崖に背中を派手に打ち付ける。
629偽者(中編):02/06/04 22:39 ID:zyvvuXBt
「ぐううっ!」
 再び駆け巡る、衝撃と痛み。
 加えて先程の水砲、腹部からこみ上げてくるものを堪えもせず、久瀬は吐捨物を撒き散らす。
「今日は……よく叩きつけられる日だな……」
 胃の中のものを全て吐き出し、頭を振って前を見据る。
 久瀬の視界に写ったのは、再び水砲の姿勢とっているリザードマン。
 目標は、痛みにより足腰の立たない自分ではなく、
「久瀬さん!」
 あの、女性だ。

 ――撃つ気か? あの人に?
 ――駄目だ! ここであの人を見殺しにしてしまったら、親父になんて言われるか!
「化物! こっちを見ろおおっ!」
 腹に力を込め、久瀬はあらん限りの大声で叫ぶ。
 それが功を奏したのか、りザードマン二体は自分に視線を移す。
「よし、お前等にとっておきのプレゼントだ……受け取れ!」
 そう言って久瀬は、あらかじめ手を突っ込んでいたバッグからコーヒー缶のようなものを取り出し、
 リザードマンに向って放り投げ、地面に体を投げ出す。
 それを危険と感じたのか、上空に浮かぶそれに水砲を撃つりザードマン。
 水の片方がそれを捉え、缶は破裂する。
 ――それで、いい。
 久瀬はそれを確認すると、口の端を歪め、目を閉じる。
 ――それがお前達の見る、最後の光景なのだから。
 破裂した缶から生まれたのは、膨大な――光。
 ――せいぜい、よく見ておけ。


 凄まじい音と共に、目などとても開けていられない光が視界を飛び回る。
 その光を直に見てしまったリザードマン達は目を手で覆い、
 視界の見えない恐怖に怯え、のた打ち回る。
630偽者(中編):02/06/04 22:41 ID:zyvvuXBt
 そのうちの一体が唐突に、背中から突っ伏す。
 ――後ろを取られた、殺される、あの男の持つおかしな武器でコロサレル!
 狂ったように水砲を乱射する、半狂乱のりザードマン。
 体中に残っている余分な水分を限界まで使い、水を打ち尽くす。
 そこで薄っすらと、見えた。
 自分が撃っていた相手が、同族である事に。
 そのリザードマンは、ズタズタになった仲間より、自身の身を案じる。
 ――じゃあ、あのニンゲンは何処に?
 その答えは、至極簡単。
「だああああああっ!」
 仲間が倒れこむのと一緒に、その背部にいた男――久瀬が現れたのだから。

 軋みを上げる身体に鞭を撃って、久瀬は一気に間合いを詰める。
 化物は再び水を吐き出そうとしているが、もう遅い。
 窄まった化物の口に、今度はしっかりと弾を込めたM16を突っ込み、
 容赦なく、引金を引いた。
 途端、リザードマンの口内で暴れまわる無数の弾丸が頭部をメチャクチャにする。
 後ろに仰け反るリザードマンが、完全に動かなくなった事を確認すると、
「つ、疲れた……」
 疲れと痛みで久瀬は、ゆっくりと地面に倒れこんだ。


「久瀬さん! 大丈夫ですか? しっかりしてください!」
 ――あの人が駆け寄ってきて、僕を優しく抱き起こしてくれる。
 ああ、貴方は無事ですね。それなら頼みます、久瀬秀一は立派に貴方を守ったと、
 自分は最高の男であると、貴方のお父上に伝えてください。
 そこんとこお願いしますよ? 倉田先輩。
631偽者(後編)
「く、倉田先輩……勘弁してください」
「いいえ、久瀬さん傷だらけじゃないですか……手当てして差し上げます」
 そういって僕の身体に倉田先輩は僕のバッグから救急セットを取り出し、傷を診てくれている。
 ……なんというか、少し恥ずかしい。
「あ、そういえばさっきの光、あれはどうやって起こしたんですか?」
 腕に消毒薬を吹きつけながら、倉田先輩は興味津々といった様子で聞いてくる。
 意外なものに気を留めるんだな、と少し戸惑いながら僕は同じ物をバッグから取り出し、
 それを倉田先輩に手渡す。
「これはスタングレネード、もしくは閃光手榴弾と呼ばれるものです。殺傷能力は皆無ですが、
 強烈な爆裂音と多量の光で相手の視力、聴力を奪うことができる代物です」
 ――と、武器庫に書いてあった事をそのまま復唱してみたりする。
 そこでふと、思い出す。
 あの少女――上月澪にもこの閃光手榴弾を渡した事を。

『絶対駄目なの 助けるの』
「そうかい。それじゃあ、ここからは別行動だね。
 僕は余計なリスクを背負うなんて馬鹿な真似はしたくないんでね」

 あれからほぼ一日。
 順当に考えれば、彼女は死んでいるだろう。
 あの時見つけたドラゴンの血で集まってくるモンスターか、あるいはドラゴン自身に。
(いや、結構な数の武器をあのバッグには詰めたし、もしかしたら生きているかもな)
 まぁ、僕にはもう関係ないことだ。
 そう締めくくって僕は、この事に着いて考えるのはもうやめにした。
 そうさ、過ぎた事をあれこれと考えていても、仕方ないだろ?


「そうだ……倉田先輩、川澄さんはどうしたんですか? 一緒に来ているんでしょう?」
 間違いない、昨日一度だけ姿を見た。
 睨み合うだけで、会話など成立するはずもなかったが。