※本スレブロック準決勝「香里VSセリオ戦」で投入したSSに、結末を付けてまとめて掲載したものです。
◇セリオ復活 1◇
綾香「セリオ、量産型発売おめでとう」
一同「おめでとう〜!」
セリオ「――ありがとうございます」
先日、遂に来栖川の誇るHMシリーズの最高峰、『HM−13セリオ』が発売された。
今日はそのお祝いを、ということでマルチが試作機HMX−13セリオを連れてきてきてくれた。
セリオ「――何だか、この体を動かすのは久しぶりのような気がします」
浩之「そうなのか?」
マルチ「セリオさんは、プログラムの最終チェックのためにずっとスーパーコンピューター上で動作シミュレートされてたんですよ」
浩之「ほう。…そしたら、シャバの空気は懐かしいんじゃないか?」
あかり「浩之ちゃん、シャバって…」
セリオ「――多少二酸化炭素が増加したようですが、しかし、はい」
綾香「セリオ。懐かしい空気、ってそういう意味じゃないのよ…」
セリオ「――ちなみに、私がシミュレート調整に入っていた期間はおよそ三年。その間に増加した二酸化炭素の量から、温暖化による人類滅亡までの日数を算出しますと…」
一同「しなくていい!!」
◇セリオ復活 2◇
浩之「…はぁ、ところで綾香、パーティーって言うくらいなんだから、飲み物くらい出してくれよ…。喉が渇いた」
綾香「そうね。今持って来させるわ」
パンパン!と手を打ち人を呼ぶ。お約束だ。
浩之「…っておい!」
…大量のHM−13が大広間に乱入。どうやらこのパーティーの給仕をさせるつもりらしい…。
しかも、なぜか全員寺女の制服だった。
志保「ちょっとちょっと! これじゃあ主賓のセリオがどこに紛れ込んだか分かんないじゃないの!?」
雅史「乾杯の音頭が取れないね…」
浩之「…なあ、綾香」
綾香「ん? なあに?」
浩之「せめて、量産型のほうはメイド服にするとか、服装を変えてくれよ…」
綾香「……。ふーん…」
浩之「な、何だよ…。その沈黙といやらしい目付きは…?」
綾香「あら、いやらしいこと考えてるのは浩之のほうでしょ? 今度私も着てみようかなぁ〜、メ・イ・ド服! アハハッ」
浩之「どっ、どうしてそういう方向に話が逸れるんだっ!!」
芹香「……」
浩之「え? 浩之さんが喜んでくれるのなら私も着てみたいです、って? だからそれは勘違い――」
マルチ「わたしもがんばりますっ!」
あかり「私も負けないよ〜」
◇セリオ復活 3◇
浩之「はぁ…何考えてるんだよ、お前ら…」
大コスプレ大会の開幕、種目は『メイドさん』だった。
あかり「ええっ! だって浩之ちゃんに喜んで欲しかったし…」
芹香「……」
浩之「え? 恥ずかしいけど浩之さんのために頑張りました、って? ううっ、それはそれで嬉しいんだけどよォ…。
おっ、さすがにマルチはその格好、似合ってるな」
マルチ「ぽっ…あ、ありがとうございます〜」
浩之「…で、なんでお前らまでそんな格好してるんだよ…」
志保「どう? ファッションリーダーの志保ちゃんは、こんな使用人向けの服装でもバッチシ着こなしちゃうのよ〜」
雅史「え? あれ?? なんで僕まで着てるんだろ…?」
浩之「それはこっちの台詞だ…」
ちなみに、本来『メイド役』として登場したHM−13群は寺女の制服のまま…。
主客転倒、とはまさにこの光景か。
綾香「どう? 私も捨てたもんじゃないでしょう?」
浩之「おう、かなり…って違うっ! オレは、『どうして量産型にセリオと区別できる服装をさせなかったんだ』って言いたかっただけだ!!」
綾香「えーっ! なんでちゃんと言わないのよっ!? 私たち、着替え損じゃないのよ!!」
浩之「オレの話をろくに聞こうとしなかったのは誰だっ!?」
トントン…。
誰かに肩を叩かれ、振り向いた。
???「――……」
ちょっぴり頬を赤く染めた、メイド服姿のHM−13が立っていた。
◇セリオ復活 4◇
浩之「セ、セリオ…か?」
セリオ「――はい」
照れたように俯き加減に頷く。その表情は、破壊的に可愛く思える…。
浩之「も、もしかして…さっきの綾香とのやりとりを聞いて…」
セリオ「――はい」
浩之「オレのために着替えてきてくれた…のか?」
セリオ「――はい」
…なんだ、この、体の奥底から湧き上がる感情は…?
ぐおーっ、公衆の面前だってのに、思わずセリオを抱き締めたくなっちまったぞ…。
だ、ダメだ…手が勝手に…セリオの背中に回ろうとして…。
???「セリオーッ! 復活おめでとーっ!!」
セリオ「――田沢さん」
突然の来客と、それに対するセリオの反応に、すっと手を引っ込める。
危ない、危ない…。セリオに手を出したら、綾香が黙っちゃいないだろうしな…。
圭子「ごめんね、遅くなっちゃったけど、はい! セリオが復活するって聞いて、慌ててプレゼント買ってきたんだよ!!」
セリオ「――ありがとうございます。…開けてもよろしいですか?」
圭子「うん、もちろん! …ところでさ、あの…今日のパーティーには佐藤さんも来てる、って聞いたんだけど…ハァ、ちょっとドキドキ…」
セリオ「――はい、いらっしゃってます。佐藤さんなら、向こうに…」
セリオが指差した先。
雅史「僕、いつまでこの格好でいればいいのかな…?」
エプロンをひらひら。
圭子「!? …えぐっ、佐藤さんのバカーーーーーーッ!!」
セリオ「――あっ、田沢さん…」
…そして彼女は涙と共に走り去った。
◇セリオ復活 5◇
浩之「……」
その場に残されたのは、嵐のように過ぎ去った少女を見送る俺。
そして、セリオ。
一人と一機…いや、『二人』は見つめ合う。
(いいムードだ…)
もう周囲の視線(口うるさい上に手の早い綾香も混じっているが)なんてどうでも良かった。
オレは、オレに正直に生きる!
オレは、セリオを抱き締めるんだ…!
ひしっ。
セリオ「――浩之さん…」
セリオも、オレの背に手を回す。
セリオ「――戻って来れて、嬉しかったです…。一番会いたかったのは浩之さんでし――」
グキッ。
浩之「ぐはっ」
セリオ「――浩之さん…?」
……。
気が付くとオレは病院のベッドに横たわっていた。
ちなみに、体は全く動かせなかった。
セリオ「――申し訳ございません。私、この体を動かすのは久しぶりだったので…」
声も全く出せなかった…。
セリオ「――上腕筋力の出力レベルが狂っていたことに気付きませんでした」
……。
セリオ「――本来出すべき力の100倍の力をもって私は…」
藤田浩之、全治三ヶ月。回復の見込みがあるだけマシだと思え、とは医者からのありがたい言葉だった…。
(完・以上5レス分です。失礼しました)