最萌トーナメント支援用SSスレッド

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602詩子さん ◆SHIIko2U
ラストの茜支援二次小説。
『大きな傘の理由』 全2レス。

 今日は雨。
 私はいつものように傘をさしてあの空き地へ行く。
 来ないことはわかっているけど、
 でも、でも、私はわずかな望みを託して、雨の中歩いてゆく。

 空き地の少し手前、小さな女の子が立っていた。
 小さな傘、かわいい顔立ち、
 その子は興味深そうに私の傘を見ている。

「お姉ちゃんの傘、大きいね」
 かわいらしい笑顔で、感心したように話しかけてくる。
「どうしてそんなに大きいの?」
 興味津々の顔で言葉をつないでゆく。
 私は少しためらってから、
「ふたりで入れるようにですよ」
 それだけを伝えた。

「お姉ちゃん、わたし、入ってみていいかな?」
 目を輝かせて、期待に満ちた目で私に尋ねる。
 私は再び躊躇しながらも、
「いいですよ」
 それだけを伝えると、その子は自分の傘をたたんで、私の傘の中に入ってきた。

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603詩子さん ◆SHIIko2U :02/02/17 22:45 ID:v//89X4C
「本当に大きいね」
「…はい」
 私の顔を見上げながら、
 傘の水玉模様を眺めながら、
 その女の子は嬉しそうな顔をしていた。

「これだと、どんな人でも入れるね」
「…はい」
 肯定の返事をしたけれど、
 私がこの傘で一緒に雨をよけたい人は、
 一緒にこの傘ので歩きたい人は、
 …悲しい考えに私は瞳を閉じた。
 悪い癖、時々暗い思考にはまってしまう。
「大丈夫だよ」
 でも、突然そんな声が聞こえてきたので、
 私は瞳を開いた。
 真剣な、年相応と思えない瞳が私の姿を捉える。
「一緒に傘に入ってくれる人は、帰ってくるよ」
「えっ…」
 なにをこの子は言っているのだろう?
 なんでそのことを?
 私の心は混乱に陥ってゆく。
「信じてあげて、それが大切だから」
 それだけを言うと、小さな傘を開いて私の傘から出る。
「約束だから、ね」
 それだけを残して走り去っていった。
 私はただ、その方向を見続けていた。
 雲の切れ間、わずかに光の指す方向を。

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