ラストの茜支援二次小説。
『大きな傘の理由』 全2レス。
今日は雨。
私はいつものように傘をさしてあの空き地へ行く。
来ないことはわかっているけど、
でも、でも、私はわずかな望みを託して、雨の中歩いてゆく。
空き地の少し手前、小さな女の子が立っていた。
小さな傘、かわいい顔立ち、
その子は興味深そうに私の傘を見ている。
「お姉ちゃんの傘、大きいね」
かわいらしい笑顔で、感心したように話しかけてくる。
「どうしてそんなに大きいの?」
興味津々の顔で言葉をつないでゆく。
私は少しためらってから、
「ふたりで入れるようにですよ」
それだけを伝えた。
「お姉ちゃん、わたし、入ってみていいかな?」
目を輝かせて、期待に満ちた目で私に尋ねる。
私は再び躊躇しながらも、
「いいですよ」
それだけを伝えると、その子は自分の傘をたたんで、私の傘の中に入ってきた。
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「本当に大きいね」
「…はい」
私の顔を見上げながら、
傘の水玉模様を眺めながら、
その女の子は嬉しそうな顔をしていた。
「これだと、どんな人でも入れるね」
「…はい」
肯定の返事をしたけれど、
私がこの傘で一緒に雨をよけたい人は、
一緒にこの傘ので歩きたい人は、
…悲しい考えに私は瞳を閉じた。
悪い癖、時々暗い思考にはまってしまう。
「大丈夫だよ」
でも、突然そんな声が聞こえてきたので、
私は瞳を開いた。
真剣な、年相応と思えない瞳が私の姿を捉える。
「一緒に傘に入ってくれる人は、帰ってくるよ」
「えっ…」
なにをこの子は言っているのだろう?
なんでそのことを?
私の心は混乱に陥ってゆく。
「信じてあげて、それが大切だから」
それだけを言うと、小さな傘を開いて私の傘から出る。
「約束だから、ね」
それだけを残して走り去っていった。
私はただ、その方向を見続けていた。
雲の切れ間、わずかに光の指す方向を。
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