茜とみさきさんの両支援?
『ケーキバイキングにて』 全3レスだよ。
「茜、ここってレストランだったっけ?」
柱に貼ってある張り紙を見て、あたしは茜に疑問をぶつける。
「…普通の食堂ですけど」
そう、確かにあたしたちは今、茜の学校の食堂にいるはず。
…あたしの記憶が操作されていなければ。
「なんで、学校の食堂でケーキバイキングがあるの?」
その張り紙には土曜日の午後にケーキバイキングをするということが書いてあった。
普通、ケーキバイキングといえば街のレストランで行われるもの。
そう思っていたけれど、
でも、茜は全然気にした風もなく、
「半年に一度だけあるんですよ」
ちょっと嬉しそうに、茜はあたしに告げた。
「詩子も来ますか?」
満面の笑み、裏返すと有無を言わさないような笑顔であたしに尋ねる。
あたしは、ただ黙って頷くのみ。
甘いもののことになると茜はてこでも動かないから。
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「詩子、楽しみにしていますね」
「なにが楽しみなのかな?」
茜の声に続いて聞こえてきた声、それはみさきさんの声だった。
「その声は茜ちゃん、そして、詩子ちゃんだね?」
笑顔で、そして、少し外れた視線であたしたちに顔を向けるみさきさん。
その後ろには雪見さんも一緒にいた。
でも、雪見さんは口の前でばってんを作っている。
「茜ちゃん、なにか面白いイベントでもあるの?」
「はい…」
ふたりの会話が始まると、雪見さんはいっそう慌てて顔の前で手を振っている。
茜はそれに気づいているのか気づいていないのか、話を続けてゆく。
「今度の土曜日に半年に一度のケーキバイキングがあるんですよ」
「ほんとう!?」
今までよりも大きな笑顔をみさきさんはほころばせた。
「茜ちゃん、一緒にどうかな?」
「はい、詩子も一緒ですけどいいですか?」
「うん、全然かまわないよ。雪ちゃんも…そうだ、澪ちゃんも呼んで5人で来ようよ」
「はい、そうしましょう」
ふたりは嬉しそうに頷きあって、話は決定してしまった。
その後ろ、雪見さんの表情は、なんとも悲痛な表情だった。
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「茜ちゃん、このモンブラン、すっごいおいしいよ!」
「このチョコレートケーキもとてもおいしいです。隠し味はなんでしょう…」
「チーズケーキもおいしいね」
「はい、とてもおいしいです」
あっという間にやってきた土曜日、
あたしたち5人はケーキバイキングに来たけれど、
ケーキの消費が進むのは、超甘党と超大食のふたり。
あたしの隣にいる澪ちゃんは、一口、ショートケーキを食べたまま、
ただぽかんと茜とみさきさんの様子を見ている。
あたしはふたりの様子を見ているだけでもうおなかいっぱい。
雪見さんはなにも食べずに少し青い顔をしていた。
けれども、そんなあたしたちに気づくこともなく、
ただ、ふたりはずっとケーキを食べ続けていた。
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