由起子さん支援二次小説、
『由起子さんのはつ恋』
全部で4レスかな? 落としてくね。
「由起子さんって結婚しないのか?」
珍しく由起子と浩平が一緒になった夕食時、
一瞬の静寂にはさんだ浩平の言葉。
「手のかかる同居人がいるからね」
「ぐあ、身も蓋もないな」
少しいじわるな質問だと思っていた浩平は、
あっさりと反撃されるが、たじろぐ様子はない。
「恋人もいないのか?」
「手のかかる居候がいるからね」
いまや同居人から居候へと格下げされた浩平は落ち込む。
でも、それにも負けずに質問を繰り返す。
「そういえば今まで恋人っていたことないのか? 生まれてから」
その浩平の質問に、由起子は一瞬体の動きが止まる。
浩平は興味深そうに由起子の顔を覗き込む。
「まぁ、いたけどね」
「聞きたいな」
興味津々な瞳で浩平は由起子の顔を見る。
由起子は小さくため息をついて、
「女性の大切な想い出話は高くつくわよ」
それだけを前置きして、ゆっくりと流れる時間のなか、由起子は口を開いた。
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「ともかく、元気な人だったわ…」
遠い想い出を頭に浮かべているのか、
少しだけ涙に濡れる瞳、その視線を遠くの宙に漂わせている。
「中学のときの同級生だったんだけどね」
浩平も自分の中学時代を思い出してみる。
瑞佳と一緒に毎日学校へ行っていたあのころ。
恋愛についてはあまり興味がなかった浩平。
女子が騒いでいるのを鬱陶しく感じていた、
それだけが残る恋愛に関する想い出。
「勉強もできるし、運動もできるし、クラスの女の子の憧れの男の子だった…」
目を潤ませて少し乙女モードに入る由起子。
その、珍しい姿に浩平は少しだけ驚きの表情をする。
もともと行動や考えが若々しい由起子だが、ここまでの表情は初めてかもしれない。
その姿をしっかり焼き付けようと目を見開いて由起子を見ている。
「バレンタインのときに告白したの、チョコを作ってね」
今でもお菓子作りがかなり上手な由起子、
その当時からもかなり腕が立っていたのだろうか。
浩平はその男に少しだけ嫉妬を感じてしまう。
「そしたら『俺もおまえのことが』な〜んて言ってくれて、もう、それは驚きよっ!」
由起子の口は滑らかになってゆく。
浩平の顔はだんだんと複雑になってゆく。
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「…で、付き合いだしたと」
「うん、そうよ」
心底うれしそうに返事をする。
浩平はふたりの関係がどこまで言ったかをたずねたい衝動に駆られる。
でも、今の状態の由起子ならどんなことでも話し始めるような気がして、
それこそ、沢山のティッシュが赤い鼻血にまみれるような気がして、
とりあえずは止めておいた。
「でも、やっぱり子どもだったのね、私は」
「ん?」
急におとなしくなってしまう由起子に、浩平は不思議そうな顔を向ける。
由起子は話を続けている。
「彼の事を知りたかった、私のことも知ってほしかった。
だから、私たちは沢山話をした」
少し憂いた眼で話を続けている。
「でも、彼は私にとっては大きすぎた、追いつけなかった。
おいていかれるような感じがして、高校進学とともに破局、
さすがの私でも悲しかったなぁ…」
「そうだのか」
今にも瞳から涙がこぼれそう。
浩平は思わず由起子の肩に手を置いていた。
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「由起子さん若いから、まだ出逢いはあるさ」
「ふふ、ありがとう、浩平」
由起子の瞳は笑顔に戻っていた。
「もしかしたら、そいつとも再会できるかもしれないだろ」
「そうね、そうだね。やだな、浩平に恥ずかしいところみせちゃったな」
由起子は小さく舌を出して微笑む。
「いや、たまにはオレのことも頼ってくれよな」
浩平も力強く答える。
「かなり心配だけどね」
「ぐあ、そりゃないだろう」
「あははっ」
ふたりはずっと、幸せそうに笑いつづけていた。
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以上です。
お騒がせしました。