「みゅぅ…」
繭が小さく唸り声を上げる。
2月、嵐の様に強い雨、その雨のおかげか、
静かな授業中にもかかわらず繭の声は誰にも聞こえなかった。
ただふたり、繭を気にかけている浩平と瑞佳を除いては。
「椎名、どうした?」
「みゅぅ…」
授業が終わり昼休み、浩平と瑞佳は繭の元へとやってくる。
浩平は繭に心配そうに声をかける。
少し苦しげな表情、胸をぎゅっと押さえて繭は小さくなっていた。
「繭、どうしたの?」
瑞佳も同じように声を掛けるけれども、繭からの返事はない。
ふたりは心配そうな顔を顔を見合わせる。
「とりあえず保健室でも連れて行くか」
「そうだね」
「ほら、椎名歩けるか?」
「う〜…」
繭からの返事は唸り声ばかり。
仕方ないので、浩平は繭を負ぶってゆくことにした。
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廊下を早足で素早く抜ける浩平と瑞佳、
浩平の背中に負ぶさった繭は、時折苦しげな唸り声を上げるばかり。
ふたりの足は自然に速まってゆく。
そして、到着した保健室。
元々この学校の生徒ではない繭、でも、今はそんなことは行ってられない。
思いっきり力を入れて瑞佳はその扉を開けるが、そこには誰もいなかった。
「保健の先生、いないみたいだね」
瑞佳は部屋の中をみまわして小さく呟く。
「とりあえず椎名を寝かせるか」
浩平はそれだけを言って、繭をベッドの上に横たえる。
繭はまだ小さく体を縮めて胸を苦しそうに押さえている。
「繭、どうしたんだろう…」
「さっきまであんなに元気だったのにな」
ふたりはただ心配そうに繭のことを見つめている。
繭はしきりに胸を押さえている。
「繭、どこか痛いの?」
瑞佳は繭の枕元でひざ立ちになってたずねる。
でも、繭はなにか言いたさそうに口を開くけれど、小さく唸り声をあげるだけ。
「椎名、ほんとに大丈夫か?」
浩平も心配そうに尋ねるけれど、唸り声が続くだけだった。
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「浩平、ちょっと外に出てもらっていいかな?」
瑞佳は浩平に顔を向けてそれだけを短く伝える。
「ん? なんでだ?」
「繭は女の子なんだよ」
「あ、ああ、スマン」
瑞佳の短い言葉から真意を汲み取った浩平は、
素直に保健室の扉を開けて出てゆく。
その音を聞いて、瑞佳は繭に尋ねる。
「繭、どこが苦しいのか教えてくれるかな?」
優しい、柔らかい、ゆっくりとした口調で尋ねる。
「みゅ、おっぱいがいたい…」
「おっぱいが?」
「いたい…」
「ど、どんな風に痛いの?」
痛いという言葉を聞いてだんだんと気が焦ってしまう瑞佳。
なるべく落ち着こうと思っても気ばかり焦ってしまう。
「ぐーって、される…」
「ぐー?」
「みゅー…」
繭の瞳は涙に濡れてゆく。
瑞佳は躊躇していたけれど、その瞳をみて決心したのか、
「繭ごめん、胸、見せてもらっていい?」
そう伝えるけれど、
「みゅ?」
何のことか分からないと言う風に繭は眉をひそめる。
「繭、服脱いでおっぱいを見せてもらっていいかな?」
「みゅ?」
やはり分からないと言う風に繭は瞳をそっと細める。
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瑞佳は覚悟したように、
「服、脱がせちゃうね」
それだけを言って瑞佳は繭の背を起こし、
黄土色のカーディガンを脱がせ、
ピンク色のセーラ服をその下に着ているシャツと共にめくる。
突然のことで、繭は驚きの声を出すことも出来ない。
ただ、瑞佳のすることを黙ってみているだけだった。
瑞佳は露になった繭の胸を見て少しだけ驚きの声をあげる。
繭の胸の先は綺麗な桃色、しかし、
「もしかして、これって…」
その、桃色のまだ未発達の蕾を乳白色の液体がまとわりついている。
「母乳…?」
確かに、繭の胸の先には母乳が滲み出していた。
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「みずかおねえちゃん…?」
繭は止まったままの瑞佳をいぶかしげに見て小さく声を出す。
「繭、おっぱいが痛いんだよね?」
「うん…」
「ぎゅーってされる感じなんだよね?」
「みゅ…」
小さく頷いて同意を示す。
「ちょっと苦しいかもしれないけど、ごめんね」
それだけを伝えて瑞佳は繭の胸に手を伸ばす。
突然のことで繭は身を硬くして瑞佳を見つめる。
その瞳に瑞佳は一瞬たじろぐけれども、
小さくうめき声をあげる眉を見て再び手を伸ばす。
小さな、まだまだ未発達な胸、
手のひらにそのまますっぽりと収まってしまう。
感触も少し硬いのは、まだ成長していないからか、
それとも、母乳で胸が張っているからか。
繭の苦痛にならないように、瑞佳はゆくりとその胸を揉みしだいてゆく。
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突然の行動に繭は驚いて後ずさりしようとするけど、
瑞佳の暖かいひとみ、優しい手の動きで、
次第にただ、瑞佳に身を任せるように、ただ、じっとしていた。
瑞佳の手の動きに合わせて、たくさん滲み出してくる乳白色の液体。
瑞佳はハンカチを取り出してふき取り、そして、胸を揉み、
そして、ハンカチでふき取るという行動を続けていた。
次第に、繭の表情が和らいでくる。
それと共に、胸から出てくる母乳の量も少なくなってきたようだ。
瑞佳はその様子を見て手を止める。
「どう? 落ち着いた?」
「みゅ…」
繭はちいさく呟いて首を縦に振る。
瑞佳はそれを見て安堵のため息をついて、繭の服装を整える。
「ごめんね、繭、嫌だったよね?」
繭の服装を整えながら、瑞佳は少し悲愴を込めた声で尋ねる。
でも、繭はいつもと変わらない声で、
「だいじょうぶだもぉん、みずかおねえちゃん、ありがと…」
と伝えてベッドから飛び降りた。
瑞佳も少しほっとした顔をして繭の手をとり、保健室の外へ。
そして、3人は教室へと戻っていった。
瑞佳は、なぜ繭がこんなになってしまったのかと、
ただ、それだけを頭の中で考え続けていた。
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