最萌トーナメント支援用SSスレッド

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217ある朝の出来事(1/3)
いつもの朝、部屋に人の入ってくる気配で目が覚める。もちろん長森だろう。
…ゆさゆさ、ゆさゆさ…
「浩平、起きないと遅刻します」
珍しい。いつもなら速攻で布団をはがされるのに。慈愛の心にでも目覚めたのだろうか。
だがここで素直におきてはいけない。俺が素直に布団から出たら珍しすぎて槍が降っても
おかしくない。世界の平和のためにもここは粘らなくてはいけない。
「…うー、長森ぃ、そんな普通の起こしかた目が覚めないぞぉ」
それにこの朝のくだらないやり取りというのは長森と俺にとって毎朝欠かせない一種の
通過儀礼なのだ。…違うか。
「………」
「もっと奇抜で独創的に起こしてくれぇ」
うむ。だんだん意識が遠くなって来たぞ。この二度寝に入りかけのぼんやりした意識の
状態が大変気持ちいいのだ。
「…たとえば、どんな、ですか?」
「たとえばだなぁ、…そうだ、キスしてくれるとか」
「………」
しまった、このネタはもう使ったんだったっけ。同じネタを二度使うようでは芸人として失格だ。
まあいい。俺は芸人ではない。
「きっとどきどきして目が覚めるぞ」
「…わかりました」
「へっ?」

誰かが覆い被さってくる気配。

唇にやわらかい感触。

一気に目が覚めた。上体を起こした俺の前にちょっと顔を赤くした茜がいた。
218ある朝の出来事(2/3):02/02/02 22:30 ID:tFIDI4Le
「…目は覚めましたか?」
「あ、茜?なんで?な、長森は?」
「…長森さんでなくて残念ですか?」
しまった。
「そ、そんなことあるわけないじゃないか」
「そうですか」
まずいおこってる。
「ほんとだぞ。今の俺ならパリ−ダカールラリーにマラソンで参加できそうなくらい嬉しいぞ」
「…そのたとえは良くわかりません」
「じゃ、じゃあ、H2Aロケットで月までいけそうなくらいだ」
「…もっとわかりません」
「じゃ、じゃあ、えーっと…」
考えていると茜がくすっっと笑った…ような気がする。
「…もういいです。遅刻しますから、支度してください」
「は、はい」
「玄関で待ってますから」
「わかった、すぐ行く」
219ある朝の出来事(3/3):02/02/02 22:31 ID:tFIDI4Le
外は今日もいい天気だった。長森は先に行ったらしい。
「で、なんで今日は家まで起こしに来たんだ?」
「…ちょっと早く目が覚めたから」
「…そうか」
「…はい」
とはいうが、茜の家から俺の家までそれなりにあるはずだ。相当な早起きである。
たぶん今日早起きするために昨日は9時くらいにでも寝たのではないだろうか。
そういうやつである。
「なあ、茜」
「なんですか?」
「明日からは二人で待ち合わせて一緒に登校しようぜ」
「………」
そうだな、長森は幼馴染だけど…ちゃんとけじめはつけなきゃな。
「俺も一人で起きれるようにするからさ」
「…はい」
…そういったときの茜の笑顔は間違いなく最高だった。

「…寝すごしたら嫌です」
「…がんばります」
「とっても不安です」
「………」