最萌トーナメント支援用SSスレッド

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169夏鴉 7/19

「悪りぃ、まったか? それがさ、このソフトクリームカレー味激辛が今大人気でな」
「ほら形とか色とか、もー匠の世界だぜ・・・って観鈴?」

「・・・・・・どうして・・・・・・」

「・・・おい。どうした?しっかりしろ観鈴・・・」

ぼと、ぼと・・・

「・・・・・・どうして・・・せっかくの初デートなんだよ・・・ひっく・・・
 ・・・今から一緒にいろんな乗り物に乗って・・・えっぐ
・・・手つないだり・・うぐ・・膝枕してあげたり・・・・・
 ・・・はっく・・・写真とかいっぱっえぐ・・昨日もたくさん泣いたのに・・・
・・・どうして・・あぐ・・っぐ・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「観鈴っ!」

「ゆきとさん・・・ゆきとさんどこ・・・ゆきとさん・・・ゆきとさん・・・」

「観鈴っ!」

がっ!

「・・とさん・・・ゆ・とさん・・・・ん・・・・・・」
「観鈴、俺はここにいる。ここにいるぞ・・・」
(往人さん・・・あったかい・・・)
170夏鴉 8/19:02/01/28 18:53 ID:dz9p+FaJ

「んっ・・・」
「おっ気がついたか?」
「あれ? 往人さん・・・わっ」
気がつくと私は往人さんの膝の上で寝ていた。
「寝てろ・・・」
やんわりと額を押さえつけられる。
「うん・・・」
「・・・・・・・・・」
「風が気持ちいいね〜」
「ああ・・・」
「夕日・・・きれいだね・・・」
「ああ・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「デート・・・」
「うん?」
「にはは・・・デートにならなくてごめんね・・・」
「・・・・・・・・・」
「観鈴、手かせ・・・」
「えっ・・・わっ」
ふいに往人さんがきゅっと手をにぎる。
「えっ・・・えっ・・・」
そして、戸惑う私の頬に往人さんの頬が重なった。
171夏鴉 9/19:02/01/28 18:54 ID:dz9p+FaJ

パシャッ
「よし、オッケー」
「?」
「手をつないで・・・膝枕して・・・写真を撮る・・・これでデートだろ」
にこっと往人さんが微笑んだ。
「わっ、往人さんが笑った・・・」
「なんだそんなにめずらいことか?」
「うん、初めてみた。でもやっぱりちょっぴり目つきが悪いけどね・・・」
ポコリッ
「にはは・・・イタイ」
「・・・んしょっと」
「もう大丈夫か?」
「うん」
「よしっ、じゃもう帰る時間だけど、土産屋ぐらい行けるよな?」
「うん」

・・・・いらしゃいませ・・・・

「人形がいっぱい・・・。でもどうして?」
「行きに言ったろ、一つだけ好きなもの買ってやるって」
「ん〜とじゃあこれいいかな?」
「どれどれ・・・。マジか! このハムスターの人形が50万!? 俺の臓器売れってか? 却下却下」
「残念・・・じゃこれがいい」
三個の恐竜のお手玉を手に取る。
「本当にこんなんでいいのか?」
「うん」
「そっか・・・」

・・・・ありがとうございました・・・・
172夏鴉 10/19:02/01/28 18:55 ID:dz9p+FaJ

「往人さん恐竜、がお〜!」
「がおー!」
今日の往人さんやさしい・・・なんか新鮮・・・
「ところで観鈴、お前お手玉なんてできんのか?」
「う〜んやってみる。観鈴ちんふぁいと!」

ポン、ポン、ポッ、トス・・・
ポン、ポン、トス・・・

「がお・・・」
「へったくそだなぁ」
「どれこの天才ジャグラー国崎の妙技とくとごらんあれ!」

ポン、ポッ、トス・・・
ポン、トス・・・

「に、二回すらできない・・・。がお・・・」
「あっ、往人さん『がお』した」
「えいっ」
ポカリと往人さんを叩く。
「がお・・・」
173夏鴉 11/19:02/01/28 18:56 ID:dz9p+FaJ

それからしばらくして私は足が動かなくなり、往人さんもお母さんもいなくなった。
窓から入る西日を頼りに私は自分の部屋で陽が落ちるまで恐竜のお手玉を天井に投げ続ける。
床に落ちたお手玉を拾おうとしてベットから幾度落ちても私のお手玉は舞うことを止めない。
往人さんがいなくなってから毎日毎日、お手玉は休むことなく舞い続ける。これが私の夏休みだった。

ポン、ポッ、トス・・・
ポン、ポン、ポッ、トス・・・
ポン、ポッ、トス・・・

「・・・・・・・・・」

ポン、ポン、ポッ、トス・・・
ポン、ポッ、トス・・・

「どうしてうまくいかないかな〜。うーん・・・」
バサバサバサー
「あっ、そらだ。そら・・・おいで」
「あのね、そら、わたしね、お手玉がちゃんと三つできるようになってね」
「往人さんが帰ってきたらお披露目して、往人さんにもう一度『がお』っていわせるんだ」
「そしたらね〜、私はまたポカリって往人さんを叩くんだよ。にはは」
         
ポン、ポン、ポッ、トス・・・
ポン、ポン、ポッ、ポッ、トス・・・
ポン、ポン、ポン、ポッ、トス・・・

「!」
「そら! 今見た!? 私、三つできたよ。ちゃんと全部綺麗に舞ったよ」
「これで往人さんがいつ帰ってきても大丈・・・夫」
「はぁ・・・ちょと疲れた・・・寝よう・・・おやすみ、そら・・・」
174夏鴉 12/19:02/01/28 18:57 ID:dz9p+FaJ

「・・・ず。・・・すず」

(往人さんの声がする・・・)
(今日も往人さんと夢で会えるかな・・・)

「・・・すず。・・・みすず・・・」
「観鈴!」
「え、あっ、往人さん!!!」
瞼を開くと窓から差し込む淡い月明かりの中に往人さんが立っていた。
うにーと頬をつねってみる。イタイ・・・
「いつ帰ってきたの?」
「たった今だ。だけどもう時間がない。行かなきゃならないんだ」
「往人さん。待って・・・私お手玉三つできたんだよ。見てて」
「ああ、わかってる。ほら、やってみろ」
ぎゅっと恐竜のお手玉を握る。
(お願い・・・私に力を貸して・・・)
175夏鴉 12/19:02/01/28 18:58 ID:dz9p+FaJ

「いくね」
「えいっ」
(ひとつ)ポン
(ふたつ・・・あっ)ポッ、トス・・・

「にはは。失敗失敗・・・もう一度見てて。それ」
(ふー集中、集中・・・えい、ひとつ)ポン
(ふたつ)ポン
(みっつ・・・っ)ポッ、トス・・・

「ほんとにできるんだよ」
(ひとつ)ポン
(ふたっ・・・)ポッ、トス・・・

「ふぅ・・・」
(しっかり、落ち着いて・・・ひとっ・・・あっ)ポッ、トス・・・

「・・・・・・・・・」
(・・・・・・・・・)ポッ、トス・・・

「・・・どうして・・・どうして舞ってくれないの!?」
「往人さんの前なんだよ・・・ずっと練習したんだよ」
「この日の為に、ずっとずっと頑張ってきたんだよ・・・。なのに、どうして・・・お願いだから・・・」
176夏鴉 14/19:02/01/28 18:59 ID:dz9p+FaJ

ポン、トス・・・
ポン、ポッ、トス・・・
ポン、トス・・・

「・・・ひっく・・・お・がい・・・お願いだから・って・・・舞ってよお手玉・・・」
「できて、往人さんに『がお』って言わせるんだから・・・」
「また、往人さんをポカリって叩くんだから・・・」

(もうまえがにじんで見えない・・・でもみすず・んふぁ・と・・・ひ・つ)ポン、
(・たつ)ポッ、トス・・・

(まだだよ・・・まだいっちゃやだよ往人さん・・・)ポン、ポン、ポッ、トス・・・
(ちゃんと最後までみててよ・・・)トス・・・
(わたし一生懸命がんばったんだから・・・だから・・・)ポッ、トス・・・

「・・ず、よく頑張ったな・・・」
往人さんの手が私の髪をやさしくなでる。
月にとける往人さんの体・・・

「!」
「往人さん、行かないで・・・ホントにできたんだよ・・・」
「一人は・・・もう一人ぼっちはやだよ・・・往人さん!」
「オレは・つもお前の・ばにいるから・・・」
「・・・!」
トストストス・・・
手から滑り落ちるお手玉・・・

・・・ぼやけた往人さんが月のベールに目つき悪く微笑んでいた・・・
177夏鴉 15/19:02/01/28 19:00 ID:dz9p+FaJ

「往人さん!!」
がばぁ!
だれもいない。いつも通りの人気のない私の部屋・・・
そして布団の上には三つのお手玉と、そらの羽根があった。
ガチャ!
「ゆき! ・・・あ・・・お母さん・・・」
「観鈴、うちいま帰ったでーってなんやまた泣いとったんか?」
「んっ、あの居候はどこいったん? まーええわ、今日な観鈴にえー知らせがな・・・」
「・・・・・・・・・」
ぼふっ
「なんや観鈴急に抱きついたりして。観鈴ちんは甘えん坊さんやなぁ」
「お母さん・・・往人さんが・・・往人さんが・・・」

・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
178夏鴉 16/19:02/01/28 19:04 ID:dz9p+FaJ

長い長い夏休みが終わり、明日から二学期が始まる。
この日も私は堤防に腰かけいつものように一人お手玉で遊んでいた。
髪をさらさらと梳く海風と空に舞うお手玉が私をやさしく包みこむ。

ポン、ポン、ポン・・・
ポン、ポン、ポン・・・
ポン、ポン、ポン・・・

「往人さん・・・見てる? ほら、ちゃんと三つできてるでしょ」

ポン、ポン、ポン・・・
ポン、ポン、ポン・・・
ポン、ポン、ポン・・・

バサバサバサー
「あ、そらだ。今までどこ行ってたの? 捜したんだよ」

ポン、ポン、ポン・・・
ポン、ポン、ポン・・・
ポン・・・・・・・・・
179夏鴉 17/19:02/01/28 19:04 ID:dz9p+FaJ

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

とてとてとて・・・ぷす!!

「にょええぇぇぇ!!! そらが目つついた。イケナイ子!」
ポカリとそらを叩く。
「があ!」
「・・・・・・・・・」
「・・・がお?」
ポカリ
「があ!」
「・・・・・・・・・」
きゅっとそらを抱きしめる。
(そら・・・あったい・・・)
「・・・うん。一人じゃない。そらがいる」
「そうだ明日から頑張って友達を作ろう・・・うん、いいアイディア」
「よしっ、観鈴ちんふぁいと」
「おーーーっ!!」
180夏鴉 18/19:02/01/28 19:05 ID:dz9p+FaJ

キーンコーンカーンコーン
「今日いまから遊びに行こっ!」
「もっちろん!」

「にはは・・・」
いつも通り私は一人だ。急にグループの中なんかに入る勇気はまだない。
「あした・・・また明日ガンバロ!! うん」

バサバサバサー
「あっ、そら・・・ダメだよ学校まで来ちゃ」
「あれ? 神尾さんって鴉飼ってたんだ。名前は?」
「わっ、川口さん・・・」
クラスメートの川口茂美さんだ。
「な、名前? ・・・えっと・・・そ・・・」
「そ・・・?」
「ううん。田淵さん」
「えっ・・・」
「田淵往人さん」
ブスッ!
「にょええーー」
「神尾さんが、飼い鴉に目を刺された!」
「イケナイ子!」
ポカリと叩く。
「があ!」
181夏鴉 19/19:02/01/28 19:06 ID:dz9p+FaJ

「あはは。んで田淵くんだっけ? 知ってる田淵さんってすごいんだ・・・」
ブスッ!
「ふにょー。」
「だっ大丈夫? 川口さん」
「ふに・・ふに・・・ふー・・・あー驚いた。もしかして・・・」
「田淵・・・」
スカッ! 今度は攻撃を避けた。
「神尾さん。この子、田淵って名前が気に入らないみたいだよ?」
「う〜ん。いい名前なのに残念・・・」
「もっといい名前つけてあげようよ」
「そうだなー・・・例えば黒いし『ごっきー』なんてどう?」
「あっ、それいいね」
ガス! ゴス!
「にょええーーー!」
「ふにょろーーー!!! ろーろー・・・・つー・・・」
「もう怒ったっ! この鳥類め、鳥鍋にして食ってやる!!」
「わっ、川口さんがべらんめい口調になった・・・。びっくり」

繰り広げられる川口さんとそらの熱戦。
「ハア、ハア・・・」
「があ、があ・・・」
「やるわねあなた・・・」
「があ!」
「わっ、二人が手を組んでる。人と鴉って分かり合えるんだ・・・」
「よし、決めた。あなたの名前は、ミザリーブラックよ!」
ブスブスブスー!
わっ、すごい連続攻撃。しかもそら、羽根の先っぽ曲げてこいこいしてる。
「ふんごー。挑発までしよったなー! もー怒った、2R目開始じゃい!」
「がーーーーーー!」
182夏鴉 20/20:02/01/28 19:07 ID:dz9p+FaJ

(そら・・・ううん往人さんありがとう。私これから一生懸命頑張るよ・・・
頑張って川口さんと友達になって。川口さんと往人さんの三人で学校に行って、
帰ったらお母さんと往人さんの三人でご飯食べて・・・そして朝になったらまた三人で学校行って・・・。
そうだ、今度お母さんと遊園地に行こう。そして、カレー味のソフトクリームを一緒に食べよう。
もちろん往人さんも一緒だよ。うん、そうしよ・・・私、頑張るから・・・ね、往人さん)




                                     (おわる)