1 :
名無しさんだよもん :
02/01/23 12:26 ID:z7Rha+VS
【Q&A】 <注意> ここに書かれていることはあくまでも目安です。 実際の運用法は場の雰囲気を読んで適宜判断してください。 Q.どのくらいの長さまでならトーナメント本スレに投下して大丈夫? A.大体の目安は次の通りかと思います。 1〜3レス 本スレ投下 4〜6レス グレーゾーン 7レス以上 SS総合スレッド なお、最初の1、2レスだけ本スレに投下して 「続きはここで」とこのスレへのリンクをはるのも効果的でしょう。 (本スレでは、長ければ長いほどうざいと感じる人が増えて逆効果になりますし、 他の支援を流してしまうことにもなります。 また、スレの流れが速いときは間にいろいろ挟まるので読みにくくなります。 スレに人が少ないときはやや長いものを本スレに投下しても大丈夫かとも思われますが、 そのあたりは空気を読んで判断してください。) Q.トーナメント支援用SSの投稿はここじゃないとダメ? A.そんなことはありません。支援目的ではあるけれど、もっと一般的なSSとして感想の欲しい人は SS統合スレへ投稿するのも良いでしょう。また、内容・長さ・投下先スレの状態によっては キャラスレやシチュスレに投下する方が喜ばれるかもしれません。 Q.トーナメント本スレでSSの感想を書いちゃいけないの? A.そんなことはありません。むしろ、簡単な感想や作者へのねぎらいは支援になるので 本スレでどんどんやってください。ただし、感想への感想、ねぎらいへの返答、 長文の批評や議論などはこちらでやった方がいいでしょう。
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
立てやがったか(w とりあえず様子見かな。
あぼーん
あぼーん
あぼーん
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ああ、同意を取らずに建てるから……いきなり荒らされてる…… まあ、何はともあれ乙彼>1 で、いきなりで悪いんだが >Q.どのくらいの長さまでならトーナメント本スレに投下して大丈夫? >A.大体の目安は次の通りかと思います。 > 1〜3レス 本スレ投下 > 4〜6レス グレーゾーン > 7レス以上 SS総合スレッド SSスレに誘導してどうする…… 誘導するならここだろうが……
あぼーん
あぼーん
あぼーん
19 :
後援会の方 ◆AAAAAAAo :02/01/23 13:01 ID:lyWyqNZl
>>1 スレ建てお疲れ様!
って、自分はSS書いた事もありませんがw
う〜ん、澪で一筆とろうかな…。
あぼーん
あぼーん
早速大嵐か(w 前途多難だが、とりあえずSSのひとつでも入ったら、少し落ち着くだろ… 俺はしばらく、支援はしないけど。
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
ハジルス山積みコピペuzeeeeeeeee!
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
芸がない叩きばかりだなぁ…… どうせなら葉鍵的に叩いてみろよ。
33が葉鍵的な素晴らしい叩きを披露してくれるらしい。
35 :
名無しさんだよもん :02/01/23 13:40 ID:mJtU8N+T
>>33 キターーーー(・∀・)ーーーーー!
1ハッケソ!
あぼーん
>36 確かに葉鍵的だ(w
38 :
名無しさんだよもん :02/01/23 13:44 ID:g3gKCs6e
33 名前:名無しさんだよもん 投稿日:02/01/23 13:31 ID:4EwyxPRL 芸がない叩きばかりだなぁ…… どうせなら葉鍵的に叩いてみろよ。 これ以降、ここは葉鍵的な叩きAAを貼り付けるスレになりました(w
あぼーん
ωはきんたま、あるいはふぐり、きんき、といいます。 っ、はおちんちん、おちんち、よくぼう、です。ときたま、 つ、になったりします。
なんつーかあんなまだ結論が出てない状況でスレッド立てたら こうなる事位1は・・・わからなかったんだろうね。 まぁ放っておけばそのうちどうにかなるだろって考えている様だけど それはかなり間違い。大体こんな雰囲気でSSを貼ろうという 初心者なんかいるわけないじゃないか。ターゲットがこんな 荒らししらねーよの玄人さんだったらわからんでもないが。 一応1はみちゃくれないだろうがマジレス。
あぼーん
あぼーん
とりあえず、マラびんた100回 >1
あぼーん
007?
あぼーん
あぼーん
あぼーん
51 :
名無しさんだよもん :02/01/23 14:08 ID:K3yye9pS
ここが1を罵倒するAAのテンプレート集スレッドですか?
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
( ´_ゝ`)フーン
あぼーん
あぼーん
仕方ないあえて泥を被るか・・・ これを期に職人が増えることを願って 10レス分です。
2月27日。 由綺の晴れ舞台になるであろう音楽祭の前夜。 この時計の針が後二回転すると由綺の孤独な戦いが始まる。 ピンポーン… ん、だれだこんな夜遅く… 冬弥「は〜い」 ガチャ… ドアを開けるとそこには はるか「ん」 冬弥「はるか…どうした、なにかあったのか?」 はるか「冬弥、来て」 俺の返答も聞かず、はるかは短く用件を告げるとさっさと外に出ていってしまった。 その表情ははるかにしてはどこか切迫していた気がする。 俺はジャケットを手早く羽織ると鍵もかけずに雪の降る暗闇へと身を繰り出した。
ATBが雪の町を疾走してゆく。 俺は車軸に足をかけ、振り落とされないよう必死にはるかの肩を掴んでいた。 家に着てから終始無言のままのはるか。 いったい、なにがあったのだろうか。 しばらくしてATBにブレーキがかかった。その終着駅は俺がよく知っていている場所だった。 雪を無意味に生産し続ける黒い雲を目指すように聳え立つ建物。そう、由綺のマンションだ。 冬弥「ここ?」 由綺は今、英二さんのスタジオでレッスンを受けているはずだ。由綺がここにいるわけがない。 はるか「………………」 しかし、はるかの答えはなかった。その眼は吸い込まれるようにマンションの入り口に寄せてある一台の車に向けられている。 グリーンのミニクーパー…あれは英二さんの車… はるか「冬弥…」 俺の瞳をまっすぐみつめるはるか。 冬弥「…………………」 俺は無言で頷き、雪の荒野を駆け出した。
嘘だろ…英二さん…由綺… エレベータを待てず俺は階段を駆け上がっていた。 胸の動機が早く、四肢が鉛のように重い…体がばらばらになりそうだ… あと、この階段を上がれば由綺の階だ。そうすればきっとこの黒い夢から覚めることができる。 『由綺…愛してる…』 どこかで聞いた声が頭の方から聞こえてきた… …いや…この独特の音域はひとりしかいない… 頼む、たちの悪い冗談であってくれ…
冬弥「由綺!」 由綺の住む階のコンクリートを踏んだ瞬間、俺の叫びがマンションの壁に激しく響き渡った。 由綺「!」 英二「!」 俺の声に弾かれたように、顔を離す二人。 由綺の唇がしっとりと濡れていた。 俺を待っていたのはどっきりでもなんでもない、ただ辛いだけの現実だった。 由綺「冬弥君…」 英二「青年…」 冬弥「はぁ…はぁ…」 由綺「冬弥君、大丈夫!」 俺の姿を見るなり、心配そうな面立ちで駆け寄ってくる由綺。 冬弥「来るな!」 再度、冷たいコンクリートの壁を走る絶叫。 由綺「………!」 視界の端の方で反射的に両手を胸の辺りにあげ、身をこわばらせる由綺が見えた。 くそ…くそ………。 英二さんはおびえる由綺に微笑みかけ、 英二「さ、由綺ちゃん。明日は大事な音楽祭だ。ほら、今日はもう遅い、ゆっくり休んじゃってくれ」 英二「俺は今からこの青年と大事な話があるからさ、ね」 いつもと変わらない、飄々とした感じで由綺にやさしく話しかける。 由綺「冬弥君…」 冬弥「………………」 俺は…由綺の顔を見ることができなかった。 いったい、どういう顔をして由綺に話せばいいのかわからなかった。 だから… 冬弥「由綺…俺は大丈夫だからもう休んで、明日に備えてくれ…」 うつむいてこれを言うのが俺には精一杯だった。
英二「青年、いるかい?」 ハンドルを片手で操る英二さんが、タバコを指し出す。 冬弥「いえ、タバコはちょっと…」 英二「そうか、健康第一ってことだな、うん、いい心がけだ」 そう言って、窓の外へと灰を落とす。 灰は雪に溶けて、すぐに後ろへと流れていった。 それきり、俺と英二さんは会話らしい会話もせず、 俺は車内に流れるよくわからない個性的なインストルメンタルミュージックに耳を傾けていた。 しばらくすると、クーパが低いうなりをあげて停止した。この場所は… 英二「懐かしいな、青年」 バタンとドアを閉めつつ、モミの木を見上げる英二さん。 そう、クリスマスの日、俺はここで英二さんと由綺をかけて握手をした場所だった。 その時、聞かされた現日本最高のプロデューサの本心。 『俺、由綺のこと…好きだからさあ…』 そして、先程の由綺への愛の告白… 由綺はそれを受け入れた。 俺は…今でも由綺を愛せるのだろうか… 英二さんはタバコを携帯灰皿に押し付け、ゆっくりとこちらを向いた、 英二「青年、君に仕事がある、頼まれてくれるか?」 いつになく真剣な英二さん。 冬弥「なんでしょうか、内容によりますが…」 英二「その前に簡単な試験がある」 胸から再びタバコを取り出し火をつける。 冬弥「試験というと?」 英二「なに、簡単な面接さ」 冬弥「……………」 英二さんはフィルターを深く吸い込むと、俺の顔を正面に捉え声を紡いだ。 英二「君は由綺のことまだ愛してるかい?」 その瞬間風が吹き、二人の間の雪がつむじを巻いた。
冬弥「はい・・・」 英二「・・・・・・・・・」 冬弥「・・・・・・・・・」 英二「青年、それはマジかい?」 冬弥「・・・はい」 英二「・・・・・・・・・」 静かに、でもはっきりと俺は答えた。 それは、考えた末の返答だった。 冬弥「俺は…由綺のことまだ好きです」 さっきより語調を強め、英二さんの瞳をしっかりと見つめ俺は二度目の返事を出した。 英二さんは二本目のタバコを潰すとゆっくりと瞼を閉じ、 英二「オーケー、合格だ」 英二「さ、早く車に乗ってくれ、ほら」 わざわざ助手席のドアを開けて、俺を車に促した。
冬弥「ここは…」 そして、着いた場所は由綺のマンションだった。 いつのまにか降りた英二さんが入り口で手招きをしている。 冬弥「英二さん…」 英二さんはにこりと笑って。 英二「青年、歯を食いしばれよ」 冬弥「え?」 ばきっ! 一瞬なにが起きたのかわからなかった。 急に世界が暗転し、次の瞬間俺は雪の草原の上に倒れていた。 冬弥「英二さん…なにを…」 血の味がする…どうやら、口の中が切れたらしい。 英二「おいおい…君はそんなに甘ちゃんなのかい?」 ごっ 寝そべる俺の顎が跳ね上る。 冬弥「ぐ…」 英二「青年…そんなんで、本当に由綺を守れるのかい?」 英二さんは襟首を掴み、無理やり俺を立たせる。 英二「そんなんじゃ、君に由綺は任せらないなっ!」 そして、再度俺の頬に右ストレートが入る。 目に火花のようなものが弾け、頭がぐらりと揺れた。だが、今度はなんとか踏みとどまることができた。 完璧に足にきてる。俺は、倒れないよう下半身に力を込めつつ、英二さんを睨む。
英二「おっ、少しは頭に血が昇ったみたいだな、やっぱり男の子はそうじゃなきゃいかんよ、うん」 独特な英二節を回しつつ、無防備に近づき、 英二「殴ってみろよ、ほら」 挑発的に頬をちょいちょいつつく。 冬弥「く、くそ…」 俺は弱々しく、その頬めがけ拳を放つ。 がっ! 英二「ははは、カウンターだ。残念だったな青年」 情けないことに俺はその一撃で雪の上に大の字に倒れてしまった。 無傷の英二さんは懐からタバコを取り出すと、 英二「俺はプロデューサーとして音楽祭を成功させないといけなくてね、だから今回は特別サービスだ」 そう言って、眼を細めた。 そして、くるりと俺に背を向け、タバコに火をつけた。 英二「青年、ADなんかでくすぶってないで、はやいとこ上がってこいよ、俺は気が短いからな」 タバコのいい香りが雪と共に風に乗って運ばれてくる。 英二「じゃあな青年。由綺ちゃんを頼んだよ」 英二さんは背中を向けたまま、右手を何度か振るとクーパに乗り込み、瞬く間に雪の中へと融けていった。
はるか「冬弥…」 冬弥「はるかか…」 冬弥「悪いけど、手…貸してくれないか…ひとりじゃ立てそうにないみたいなんだ」 はるか「ん」 冬弥「さんきゅ」 まだ、頭がくらくらするがどうやら歩くことはできるらしい。 はるか「冬弥、これ」 はるか「まずうがいをした方がいいと思う」 あらかじめ注いでおいたのであろう、はるかの差し出した水筒のコップには水らしきものが張っていた。 俺は、それを半分ずつ、二回に分けて口を漱ぐ。 はじめはしみたが、二回目を吐き出すと幾分口の中がすっきりとした。 冬弥「はるか…」 はるか「ん?」 冬弥「ありがと」 はるか「うん」 すると、はるかは俺の背中をぽんっと押して、 はるか「冬弥、まだ大事な仕事が終わってないよ」 いつもの笑顔を浮かべた。 冬弥「うん、そうだな…」 冬弥「じゃあ…いってくる」 はるか「うん、冬弥は頑張って由綺を追い続けて、私は草葉の陰で応援してるから」 冬弥「はるか…それ、使い方が違ってると思うんだけど」 はるか「……………………」 はるか「ん〜めんどくさい」 冬弥「ホントにいいかげんだな、はるかは」 はるか「あはは」
そうだな… 俺は今から走り続けなきゃいけないんだ。 今は英二さんと比べると蟻みたいに無力な自分だけど… 由綺を守れる力をつけるまで俺は走り続けなければならない。 後ろを振り返れば、真っ白な雪に斑点を浮かべる俺の血。 それらはすでに黒く染まりはじめていた。 俺はあとどれくらい血反吐を吐けば英二さんに追いつく…いや、追い抜くことができるのであろうか…
そして、俺のアルバムはめくられはじめる。 何も書かれていない純白のページが無限に綴られたホワイトアルバム。 その最初のページには緒方英二の名が記されていた。 これからこの白紙には俺の汗と血でできた黒いインクでその歴史が記されてゆくであろう。 いつか、俺が由綺を本当に支えることのできるその日まで… (おわる)
>>60-70 以上、はるか支援SSでした。10レス→11レスに訂正です。
葉鍵SS職人さんの皆様、肩の力を抜いて気楽に投稿してください。
そして初めて執筆される方はまずは当たって砕けろの精神です。
必ずとはいえませんが、何度も叩かれるうちにSSらしきものは書けるようになると思います。
それではここらへんで失礼さしていただきます。
>>71 まずは雰囲気を変えてくれたことに感謝を。
せっかく立てられてしまった以上、使うのも手でしょう。
はるか支援と言うよりは男トーナメントの時に投稿した方が良かったのでは?(w
最後のはるかのシーンも良かったのだけど私にはあくまでおまけにしか見えなかった。
話自体は少しありがちかな?と思いつつもこの手の話は何度読んでも(・∀・)イイ!
駄感想で済まないが誰かがすばらしい感想をつけてくれると思うのでこの辺で。
>>71 登場人物名の表記があるせいで、正直、読み辛い。
モノローグ部分があるから尚更だ。
後、掴みが弱い。と言うか自己満足に陥ってる。
冒頭で冬弥がうろたえている理由が全くわからなかった。
頭で書くんじゃなくて、もっと感覚的に書くべし。
とりあえずそんなところ。
74 :
名無しさんだよもん :02/01/23 18:33 ID:Ia5hwnCi
えーっと、とりあえずスレ立てされた方にお尋ねします。 このスレはスレ立て相談スレへ提案されないまま立てられてますよね? 通常スレ立て手順を踏まずに立てるのは、これまでの自治スレの話し合いなどを 無視する行為だと思うのですが、それについてはどう思われますか?
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76 :
名無しさんだよもん :02/01/23 18:50 ID:yc9dmRzv
あぼーんの嵐だ… 削除人様お疲れさま
正直助かった……あのまんまじゃSS書いても落とし場所無かったもんな。
今後は有効活用させていただきます。今さらですが
>>1 乙〜
ぐぁ・・・初誤爆。 ヲチスレに貼るつもりが・・・吊ってくる。
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81 :
SS中尉 :02/01/24 01:44 ID:5ixLiiU8
まだSSスレでくだらん議論をしているようだなあ。 古参住人はSSスレ#8の伝統やらが誇りで、育成とやらををしたいだけなんだろう。 頭を下げて仲間に入れて頂いても、二流職人の指導しか受けられんのだがな。 あっちはこれより徹底放置、というのも面白いかもな。 葉鍵板の伝統で力のあるほうは生き残り、無いほうは沈む かつて全盛を誇っていた萌えシチュスレも、いまは影もかたちも無い。 本家SSスレは厨が暴れて大破状態、あの調子ではどうせ正常化はしばらく不可能 落ちても討論スレの連中が立て直しするさ。 SSスレの厚顔な連中も、このスレまで来て質の低下など偉そうにいえんだろ。(藁 実のところ、ネタが面白ければ手法や文章など問題ではない。 トーナメントの支援と同じで、板の連中を萌えさせればいいのさ。得意だろ? 強烈なSSを撃ちまくれ。板を震動させるほどにな。 なるべくなら、以後トーナメントで作成したSSはここか、シチュスレ等に貼り付けること ここに本文貼り付けてリンクする支援もスマート。
>>81 SS中尉とかいう名前の割には、句読点がお粗末ですね(w
SSだけこのスレへ隔離しようとするのはおかしいと思うがな。 最萌トーナメントの支援活動は自由。 画像、SS、一発ネタ、何でも気にせず本スレでやったほうがいいんじゃないか。 未熟者は去れ、がSSスレの方針なら、それはしょうがないよ。 トーナメントは祭り優先、勢い重視だから、 そういう軽い気分でSSスレを使われるのが嫌、ってのもわかる気がする。
>84 まぁ、しょうがないよね SSは場所(スレ)とるし、動画や画像はURLだけだからそうでもないけど 試合の進行によっては、投票や応援なんかと、ごっちゃになる事が多い。 こうなると、お互いに不幸だから住み分けた方が良いと言う事かな。
スマソ、>84は >83へのレスね。
SSスレの「討論」ほんのちょっとでもまじめに読めば、 「なれあい禁止」と「レベルの低下」を非難してる人間が同一人物だって分かるのに。 祭りにはなんでもかんでもケチつけたい厨にからまれただけ。 SSスレが特に厨耐性が低かっただけのことなんだがね
87 :
ss 中尉 :02/01/24 03:03 ID:hAOPn+1C
>>86 そのとおりだな。
しかしまあ、追い出された連中に惜しい人材が多いのは確かで。
すでにある程度の実力を身に付けた人の作品に感想を書いて何になる。 そんなの育成の内に入るか。 ハードモード選ぼうぜ。
90 :
88 :02/01/24 05:04 ID:AzZUQmsR
>>89 毎回つまらないゲームを出すメーカーに愛情を感じたりしたことがないのか、
お前は。
>>90 あったりなかったりするが、それがなにか?
お前ら、SS総合スレの二の舞をしたいのか? / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>>92 むしろあぼーんされる前の、
>>1 を葉鍵的に叩くAAスレッドの方が
面白かったんだが(w
て言うか萌えが絶対基準になってる今の葉鍵板の方がおかしいと思う。 もっとケレン味溢れるシリアスSSを見てみたい。
そういうのはSS総合スレに期待すればいい
|_ |━ |ハ))) ダレモイナイ |ー`リ SSヲハルナライマノウチ |⊂#) ここにはいい批評家がいるみたいなのでまた10レス分貼ります。
キュ・・・キュ・・・ 「暇だ」 「暇だね・・・」 冬の淡い光にキラキラと反射する喫茶店「エコーズ」のフローリング。 そろそろ正午にさしかかる時刻なのに開店から一度もその床に足跡がつく事は無かった。 結局、一族集会に出席する店長の代わりを任された俺と彰は汚れてもいない皿を磨いて午前中を終えてしまった。 「そろそろお昼にしようか」 「そうだな。じゃあ、彰が先でいいよ」 「うん、ありがと。奥の調理場にいるからお客がきたら呼んでね」 エプロン姿の彰はそうにっこりと微笑むと静かに奥へと消えていった。すると・・・
カランカラ〜ン・・・ まるで彰と入れ替わるように入り口のベルが鳴った。本日一人目の客だ。 「あ、いらっしゃいませ」 「冬弥」 「なんだ、はるかか・・・」 「うん、遊びにきた」 「ここ座るね」 「だめ」 「あはは」 何事もなかったようにカウンター席につくはるか。 相変わらずはるかはぬかに釘って感じだ。 「だれ?」 奥の調理室から彰がひょっこりと顔を出す。 「あ、はるか」 「ん」 「そうそう、またシフォンケーキ作ってみたんだけど、どう? はるか食べてみる?」 「ん、じゃあ砂糖」 「え・・・」 「待て、はるかまた飛んでる」 「・・・・・・・・・」 「あ、そうか」 「彰のケーキ食べるから紅茶がほしい。だから、その砂糖をちょうだい」 「あいよ。彰、ティーパック買って来い」 「えー寒いからやだよ」 「こんなやつに高い葉使う必要ないって」 「どうせ味なんてわからないんだから」 「あはは」 そこで、はるかが笑うなよ・・・
「・・・・・・・・・」 もっくらもっくら・・・ 実にはるからしいスローモーな動き咀嚼されていくケーキ。 「どう?」 「ん、ふつう」 「ふつう、ってまた?」 「だろ」 「別に高い金払って食べるものでもないって感じだよな」 「うん、そんな感じ」 そういって、またフォークを口に運び 「あはは、ふつうだ」 ほがらかに批評。そして、つられるように俺も食べてみる。 「うん、ふつうふつう。ここまでふつうなのもそうめったにないよな」 「ん、そうだね」 そうんなことを言いつつ、またケーキにフォークを伸ばそうとすると 「もういいよ・・・」 あ、彰がへこんだ。さすがに悪ノリしすぎたか。 仕方ない少しぐらいフォローしてやるか。 そう思った矢先・・・ 「あ、でもこれはこれで芸術なのかも」 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 閑散とした喫茶店にはるかの呟きが走った。 「もっくら、もっくら・・・」 「・・・・・・・・・」 「僕、もう帰る・・・」
カランカラ〜ン・・・ 「あれ? 彰いっちゃった、せっかく褒めたのに」 「あのな・・・」 「ったくど〜すんだよ店番ひとりになっちまたぞ」 いや、別にひとりでも余裕なんだけどさ・・・ 「大丈夫、彰はすぐ帰ってくるよ。ほら」 言われるままにはるかの視線の先を追うとそこには確かに彰のシルエットが写っていた。 カランカラ〜ン・・・ 「・・・・・・・・・」 「なるほど、エプロンか」 前掛け姿の彰が仏頂面をして手ぶらのまま店の中へと入ってくる。 なんつーか、マヌケな格好である。 「帰る・・・」 前垂れを手早く解きその場で180度ターンをする彰。 「ん」 しかしフォークをくわえたはるかの腕がその機先を制する。 その先には食べかけの琥珀色の物体。彰のケーキだ。 「ん」 ずいずいっと皿を前に出すはるか。 「まーいいから食ってみ、自分の作ったのを客観的に見つめるのも大切だぞ」 「なんだよ、それ・・・」 ぶつくさ言いながら、一口サイズに切り取られたかけらをぽいっと口に投げる。 「・・・・・・・・・」 「どうだ?」 「ふつう・・・」 「だろ」 そういって俺も手ごろな塊を口に運ぶ。
「おかわり」 と、その時視界の端にいたはるかがするりとカウンターのこちら側に身を乗りだし、 ケーキ本体が乗った大皿を掴んだ。 「あ、ずるいぞはるか。そう簡単に食わせてたまるか」 俺もその片側を掴み、二人はカウンターを挟んで大皿を引きあう。 「んがががががが・・・」 「ん・・・ん・・・」 はるかと言えども男の力には敵わないらしく皿が徐々にこちら側へと引き寄せれてゆく。 「ほら冬弥、お皿が苦しんでる。離したほうが真のケーキの母だと思うよ」 「その手には乗らん」 そんな熱戦を訝しげに見つめる彰。 「なんで?」 「彰のケーキがふつうだから」 視線をあくまでもケーキに向けたまま呟くはるか。 「いや、だからなんで?」 「あのな・・・。はるか、もっと他に言い方があるだろ」 「いくら食っても彰のケーキは飽きがこないんだよ」 「うん、それ。彰のケーキはおいしくないんだけどおいしい」 「なんだよそれ・・・」 そう、ぼやきつつも破顔する彰。 「彰、手伝って」 「あ、うん・・・」 「ずりーぞ、はるか」 「早い者勝ち」
カランカラ〜ン・・・ 「あ、いらっしゃいませ」 「あっ、冬弥く・・・」 絶句する由綺。そりゃまあいい年した連中が喫茶店で皿を取り合ってたら当然だ。 「ん、由綺手伝って」 「そりゃないだろ」 「早い者勝ち」 「それはさっき聞いた!」 「えっ・・・えっ・・・」 いまいち状況が飲み込めずはるかと俺を交互に見返す由綺。 「由綺、とりあえずこっちに来てくれ」 「う、うん」 言われるままに由綺はぱたぱたとカウンターのこちら側へと回りこむ。 「冬弥君、私何をすれば・・・」 「話はこのケーキを食べてからだ」 「わ、わかった」 少しずつはるか側へと引きよされる大皿からケーキを適量小皿に移し、それを口の中へと入れる。 「ど、どうだ・・・」 ぷるぷると体を震わせ由綺に視線を投げる。 由綺はしばらくの間、瞳を閉じその小さな口でもってゆっくり味わっていた。 カウンター越しに皿を引きあう若者三人とその傍ら直立不動の姿勢でケーキを咀嚼するアイドル。 何かが間違っている喫茶店だ。 「家庭的な味だね」 「ナイスな感想だ」 「つーことで由綺、引っ張ってくれ」 「うん、よくわからないけどわかったよ。私、頑張るね」
「どうだ、はるかこれで二対二だぞ・・・って、なに片手で食べてるんだよ」 「ん」 口元についたクリームを親指ですくうはるかがこちらを向く。 いつのまにか皿のケーキは三分の一に減っていた。 「てめ、はるか!」 「冬弥・・・口あけて」 「あん?」 ぐしゃ! 素っ頓狂な声をあげた口に残りのケーキが捻り込まれる。 もちろん平均的な俺の口には入りきらずその多くが、というよりほとんど全部が俺の顔へとぶちまけられる。 「僕のケーキ・・・」 「あはは、冬弥真っ白」 「は・る・か・・・て・め・え・・・」 大根をおろせるほど体が小刻みに震える俺の体。 「冬弥、脳溢血を起こすから急に怒らないほうがいいと思うよ」 「さてと、コレからいくか・・・」 「ん、彰お願い」 皿から手を離し、そそくさと彰の背へと逃げ込むはるか。 「えっ、えっ、えっ?」 べちゃ! 「うわ」 戸惑う彰にマロンケーキが直撃した。 「冬弥・・・それ売り物」 「知るか!!」 ぼこっ 今度はショートケーキのイチゴが彰の頬に刺さる。 くぃ・・・くぃ・・・ 「と、冬弥君・・・」 俺のエプロンを泣きそうな顔で引っ張る由綺。
「ほら、由綺も投げろ」 冷蔵庫から取り出した誕生日用5号ショートケーキをばかっと半分に割って由綺に手渡す。 「わ、わ、わ・・・」 「投擲!」 「は、はい」 ぶおん 中空を舞う白い悪魔。 「彰、右」 「う、うん」 ぼふ! 「わぷ」 絶妙なコンビネーションでそれをかわすはるか。 「次!」 「はい!」 ぶーん 今度はきりきりと錐揉みしつつ先程より大きな弧を描くバースデーケーキ。 「彰、ジャンプ」 「うん!」 ぼむ! 「く・・・なかなかやるな」 「彰、このまま奥の調理室へ」 彰の顔にへばりついた誕生日専用の家をちゃっかり頬張りつつ、はるかは彰を盾に奥の調理場へと逃げ込む。
「逃がすか! 由綺来い」 硬く由綺の手を握り締め、はるかの後を追う。 「はぁ、はぁ・・・冬弥君」 「なんだ?」 「なんだか、高校時代に戻ったみたいだね」 少し頬を紅潮させながら由綺は笑いかける。 そこにはフィルターを通したようないつもの遠い笑顔ではなく、俺達の知っている由綺本来の笑顔があった。 「ああ、そうだな」 俺も由綺と同じように無邪気に微笑む。そのとき・・・ ごっ! 「あ」 なにかとてつもなく硬いものが俺の口を直撃した。 「と、冬弥君大丈夫?」 「は、歯がぁぁぁぁーーー!」 「はるか、やっぱり砥石はまずいと思うんだ」 「ん」 瞳を少し脇にそらし呟く彰。つーか投げたのお前だろ。 「ひゃ、ひゃるかぁぁぁーーー!」 「!」 「!」 「あはは、冬弥おもしろい顔」 俺の顔を見て驚愕する二人と対照的にいつものほんわかとした笑みを浮かべるはるか。 そして、彰と由綺もそれにつられたようにくすくすと声を震わせる。 鏡を見ると前歯が一本は根こそぎ、もう片方は半分欠けていた。 「ぷっ・・・誰だよこれ」 そのあまりに間の抜けた顔に俺は思わず吹き出してしまった。 俺は笑いながら余ったシフォンケーキの生クリームを雪玉のようにはるかの顔に投げつけた。 真っ白に染まるはるか。はるかも笑いながらクリームを投げる。脇に逸れ由綺に当るはるかのパイ。 その報復とばかりに由綺の投げたパイははるかの彰ガードで弾かれる。そして、彰も生クリームを投げる。
はるかは笑った。 俺も彰も由綺も、みんなバカみたいに笑った。 俺達四人は子供のように無邪気にパイを投げあい、顔が真っ白になってもなお笑って、 生クリームに染まる喫茶店を狂ったようにくるくる踊り続けた。 そして、めくられる純白の生クリームに彩られた俺達のホワイトアルバム。 俺の周りには由綺や彰やはるかがいて、みんなでこうしてバカをやって、 本日閉店の札をかけて笑い声をBGMに全員でモップをかけて、ちょっと遅いアフタヌーンティーを取る。 俺達のアルバムの空白にはそんなページがめくられ続けるだろう。 きっとこれからも・・・。 (おわる)
以上、再びはるか支援SSです。
訂正
>>105 8/10→9/10
ここって長文の支援SS用のスレじゃなかったっけ?(´ー`)y-~~
はるかの試合は一週間後やね 支援に使う予定のSSに意見が欲しいってことじゃない? ところで、作品のプロモーションとしてSSを書く場合、 最も効果的な手法ってなんだろうね? ・未プレイ層を作品に引き込む ・内輪で盛り上がる ・浮動票を取り込む トーナメントでSS書く目的はイロイロあると思うけど、 (言葉は悪いけど)最もあざとくやるとしたらどんな方法がベストだろう。 キャラをドタバタ動かす方法だと内輪ウケは良くても外部にはイマイチっぽい。
未プレイ層を作品に引き込むがいいと思われ。 浮動票を取り込むのもいいかと。 内輪で盛り上がるだけでは勘弁してくれといいたくなるな。
>109 支援する作品によると思われ。 マイナーな作品 or 人物で「キャラをドタバタ動かす方法」をやれば 「なんか面白そう」という浮動票を得る可能性が高い(例:雀鬼、吉井)けど なまじメジャーな作品だと、逆効果になりそう。 個人的に WA はドタバタしてもらった方がいい。原作がアレなんで (w 話は前後するけど、自分がトーナメントで SS 書く目的は、支援が半分と 『このキャラのために SS を書いたぞ〜!』という自己満足が半分 (w (集計人には悪いけど) 2 ちゃんねるで完全に公平な判断を下すというのは無理だろうし、 それよりも『祭に参加できた』というカタルシスを得た方が精神衛生上も良いはず。 ちなみに、集計人のことを悪く言うつもりは本当になくて、試合会場がここである限り あれ以上のシステムは望めないと思う。むしろ、毎晩 23 時に集計結果をすり合わせている 姿に本当に感謝したい。 長文&微妙にスレ違いスマソ
このSSは短いのか?
>>2 では7レス以上はやばいと書いてあるのだが?
10レスは超すまいと必死こいて圧縮したのに。
むぅ・・・
>112 そこにある「7レス超すと良くない」というのはトーナメントの本スレのことで、このスレは特に制限はないのではないでしょうか。
ま。トーナメントでせっかく書いたSSもあまり読まれないまま過去ログの山に埋もれる なら、もう一度ここに貼り付けてみるのもいいのでは。 たとえば秋子さんの試合ではまとめてSS読めるのは嬉しいけど過去ログから該当スレを 掘り起こす気はない、という人には結構ありがたいのではないかなあ。 また、試合中ばかりではなく、試合前でも茜とか大好きなキャラの萌えSSを連載して いけば、印象もかなり変わるのでは? トーナメント支援SSは短めにして本スレに貼る方が効果的なせいか皆ここで書かないね そもそも一般的には長いSSなどエロシーンでもない限り読んでられないし SSスレなど誰も読んでない事実はあそこの住人は認めたがらないけど、萌えシチュスレ はその昔に結構人気あったんだよ。 理由は読み易いからだろうけど。このスレもそんな方向で(書き手読み手とも敷居が低い) 盛り上がればなにより。1レスのシチュでもいい。庶民的なノリでいこうよ。 SSスレでは一部の人を追い出したがってるのは明らかだし、そうなるとやはりSSスレが 分裂するのも自然の流れ。この板も同じ理由で出来た。 必要性があれば、このスレがトーナメント終了後も続いてほしい。 訓練所のように現役職人用、練習用のSSスレに分けてしまうのも手ではあるが。 もちろん本家をしのぐ重厚なタッチの本格SSも混在きぼん。
>114 でも支援SSは回収所があるぞ。 ここはトーナメントの間だけの臨時的なものと思ってたんだが…… 萌えシチュスレを再建するとか言うなら判るが、最終的には統合スレに移る方が良くないか? それに今のSSスレの書き手で現役と初心者の違いなんて、そうないと思われ。 今のSSスレのコテ書き手で古参は将軍ぐらいだろ? そう考えたら、初心者用なんて要らないと思うが。
>>115 でもむこうでは『初心者ウザイ』とか『トーナメント用のSSなんか貼るな』
みたいなこと言ってる人も少なくなかったから、
こういうとこがあったほうがいいんじゃない?
いいさ、レベルが高いらしい小難しい話は 向こうに任せて、こっちはもっと気楽に 肩の力抜いて楽しめる方向に持っていけば良いんじゃない。 新しい事を否定している「老人」どもは、放っておこうよ。
>116 あれは『初心者ウザイ』ではなく、書き手の態度その他を言っていた様に思えたけどね。 あ、あの不毛な論争をここで繰り返す気もないから。 人それぞれの考え方だけど、俺は支援用としてのこのスレは良いと思う。 でも、終わった後も続けるとなると疑問だよ。 初心者用を建てるとしても、萌えシチュスレを再建するにしても、少なくともスレ建て相談スレ等で 相談してから建てた方良くないかな? 只でさえこのスレは、話し合いを無視して単独行動で建てられたスレなんだし。 どっちにしても、まだ先の話だけどね。
せやね。終わってから考えてもいいんじゃない?
>>117 じゃあほっとけばいいのに。なんでわざわざ煽りに行く?戦争ふっかけてるようにしか見えん。
ていうかあっちで「素人追い出せ運動」始めたのお前だろ?
そんなにこのAA貼って欲しいのか? 懲りない連中だな。 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しかし、古参SSスレ住民というかSSスレに現役の古参など居ないよ。 将軍氏もキャラスレではわりと古いが、訓練所以降のSSコテが自分は古参だと 大きな顔しているだけで。 育成スレの過去ログを見れ。最近のはなしだよ。 それ以前に名無しで古くからこの板で書いていたのに、トーナメントで初めてコテ になった人も居るんだが・・・ 昔は名無しのSS書きばかりで、SSコテは少なかったからな。 オフ会なら駄コテでも古いから先輩だと持ち上げる奴も居るが、この匿名掲示板で SSコテが新人だの古参だの、そんなことで威張るのが厨そのもの。 このスレを立てた人が、どういう理由で建てたのかは知らないけど、多分新人さん じゃなくて・・・ 荒れの原因を隔離したい古参SSスレ住民あたりが「あっちでやれ」と言う意味 でやったんだと思うが・・・ 本家SSスレでは勝手に新人が物別れしたなどという事で片付けたい意向だが。 早い話が追放なわけよ。そうなると統合するのは無理な話。 問題は、悪意でしょう。 気楽に書く、読むのが楽しいのであって余計な雑音は入れて欲しくないのが本音。 ま、偉そうな奴、とは関わり合いになりたくないスレでいいんじゃないの。 そゆこと。
123 :
名無しさんだよもん :02/01/26 03:57 ID:AzbbqP5k
>>121 >このスレを立てた人が、どういう理由で建てたのかは知らないけど、多分新人さん
>じゃなくて・・・
>荒れの原因を隔離したい古参SSスレ住民あたりが「あっちでやれ」と言う意味
>でやったんだと思うが・・・
>本家SSスレでは勝手に新人が物別れしたなどという事で片付けたい意向だが。
>早い話が追放なわけよ。そうなると統合するのは無理な話。
>問題は、悪意でしょう。
相当に電波を受信している方みたいですね♪
妄想垂れ流しは良くないですよ?(w
124 :
117 :02/01/26 04:06 ID:whtQpIRn
ID替わっちゃったけど >119 >ていうかあっちで「素人追い出せ運動」始めたのお前だろ? んにゃ、ちゃうよ、一応SSスレのROMだったんだけど 向こうの535の意見があまりにも腹に据えかねたんで書いただけ まぁ、確かに煽り口調にはなったけど、間違った事は書いていないと思う んで、こっちに来たら >116の意見が有ったんで書いただけ 正直な話、荒れる直前のに投稿された トーナメント系のSSをシカトして、新しいのが投稿されたら アリの如く群がるのが、ちょっとね。 そりゃぁ、感想は任意だけど、あれだけ馬鹿みたいに 感想付けまくっていた連中が、そこだけ黒歴史にして 無かった事にしてしまうのがムカツク 育成とか、お題目上げているのなら 悪いとこだけでも書いてみろってんだ。 レベルの差はあれど、書こうとする意志は替わらないと思うんだがなぁ。 そこだけでも、汲んでほしいと思うぞ。 まぁ、ここで書く事ではなかったな スレ違い&気分を害させてスマソ
125 :
117 :02/01/26 04:14 ID:whtQpIRn
×荒れる直前のに ○荒れる直前に だな、急いで書いたんで間違えていた (w
ところで支援キャラの試合前にここにSSを投稿して 意見を求めるのはいいのかな?
>>126 単体でのこのスレの使い方はそれでもいい、っていうか、現在投下されてる
SSは二編とも、準決勝のはるか戦を意識したものだから、問題ないと思われ。
129 :
近畿人 :02/01/26 19:05 ID:re6cJ155
ちょっとお借りします。
130 :
近畿人 :02/01/26 19:06 ID:re6cJ155
『締め切りまであと7日』 そう書かれた紙を机の前に貼って、和樹はもう一度ペンを握った。 「今ペン入ってんのが5枚だから……うん、今回は楽勝だな」 「楽勝とか言うたんはこの口か――――!!」 がらららッ!! 「うわぁ、由宇っ!? どこから入ってきてんだよ!?」 「窓からやん。見れば分かるやろ」 開け放った窓から、靴と旅行鞄を持った由宇が入ってくる。 それ自体はこみパ前の普通の光景なのだが、いつもと違うのは今日がまだこみパ一週間前だということだ。 「どうしたんだ? 今回はえらく早いじゃないか。入稿はもう済んだのか?」 「………」 「はっ、まさか……」 「ふふふ、そのまさかや………」 由宇の眼鏡が妖しく光るのを見て、和樹の背に冷や汗が流れる。 「うわ〜〜〜んっ、手伝ってぇな和樹〜〜〜〜〜!!」 「ああ、やっぱり……」 えぐえぐ泣きながら抱き付いてきた由宇の背中をぽんぽんと叩いてやって、和樹はこっそり溜め息をついた。 「ええやん、今回楽勝なんやろ?」 「まぁ俺の方はいいけど、まだ一週間あるのにそんなに追い詰められてるってことは、相当ヤバイんだな?」 「………」 「……そこで目を逸らすなよ」 ふっと薄く笑った由宇は、静かに和樹から離れた。 そして、明後日の方向を遠く見遣りながら口を開く。 「一応ネームは半分くらい出来てるんやけどな……それもまだ不完全っちゅうか……」 「いや、それ全然『一応』じゃねぇだろ」 「うぐぅ」 「ええい、うぐぅ言うな!」
131 :
近畿人 :02/01/26 19:06 ID:re6cJ155
ったく、そうとなればちゃっちゃとネーム切れよ、手伝ってやるから」 「……手伝ってくれるん?」 「ああ、そんなに切羽詰ってんじゃ一人じゃ無理だろ」 「……ほんまに手伝ってくれるん?」 「手伝うって。だから早く……」 「なら早よやってしまお!!」 どんっ! 「……あ?」 満面の笑みで、由宇が何かを机の上に勢い良く置いた。 見れば、けばけばしいピンク色のボトルである。化粧水の瓶に似ているかもしれない。 「あのな、うちが今回ネームで詰まっとんのはな、未体験のことを描こうとしてるからやねん」 「はぁ」 「そこをカバーするのが同人作家の妄想力やいうのは分かってるんやけど、いまいち感じが掴めんでな、ここは実際に体験するのが一番いいと思ったんやけど」 「けど?」 「一人じゃできひんことやねん」 「……それを俺に手伝えってことか? なんなんだ? というかこの瓶は?」 「えっとな」 由宇は和樹に体を寄せて、その耳に口を寄せた。 ひしょひしょひしょ。 「はぁ!? お尻でエッチがしたい!!?」 「あほぉっ! 大声で言うたら恥ずかしいやんかッ!!」 スパ―――ン!
132 :
近畿人 :02/01/26 19:07 ID:re6cJ155
『今回うちの新刊、18禁本なんやけど、そういうシーンを入れようと思ってん。 でもちゃんと描写しよ思うたら、なんや考えれば考えるほど分からんようになってしもうて…… やっぱ実践が一番かなぁって……』 どこから出したのか分からないハリセンで叩かれた後、結局和樹と由宇はベッドに移動していた。 『こんなこと頼めるん、和樹しかおらへんもん……』 (うーん、やはりああいうこと言われると男は弱いよなぁ……) 「和樹、えと、全部脱いだんやけど……」 下着も含めて、全てを脱いだ由宇は、恥ずかしそうに頬を染めてシーツを胸に当てていた。「隠すような胸なんて……ゴフッ!?」 「なんか言うたか……?」 「……いえ、何も……。とりあえず、手と膝ついて、こっちにお尻向けてくれるか?」 「う、うん……」 和樹の言うままに、由宇はオズオズとベッドの上で四つん這いになった。 白く、ふっくらとした尻が和樹の方に向けられる。 いくら由宇が貧弱な体型とは言え、十分に柔らかそうな後ろ姿だ。 「もうちょっと上げられるか?」 「……上げんとあかん?」 「うん、これじゃ何もできない」 「………」 由宇は無言で上半身をベッドに押し付け、下半身を高く掲げた。 まだピッタリと閉じた割れ目が、ちょうど和樹の目の前にくる体勢である。 我知らず、和樹はごくんと喉を鳴らした。が、今回のターゲットは其処ではない。 それよりも少しだけ上の、糸でくくったように縮こまっている小さな窄みだ。 「じゃ、触るぞ……」 「う、うん……」
133 :
近畿人 :02/01/26 19:08 ID:re6cJ155
由宇のその窄まりが小さく震える。和樹はそこにそっと指を這わせた。 「っ!」 途端、ビクンと由宇の体が震えた。 そっと背後から由宇を盗み見ると、その顔は真っ赤に染まっている。 (な、なんか、新鮮だよな……。最近じゃやってる最中に照れることってあんまり無いし……) 自分が段々と興奮してくるのを感じながら、和樹はローションを手に取った。 そう、由宇が持ってきたショッキングピンクのボトルは、ローションの瓶だったのである。 とろりとした液体を指に絡めて、再び由宇の後ろに触れた。 「ん……っ」 ローションを捏ねるように、入り口を指で何度も撫で上げる。 由宇はその度に小さく声をあげながら体を震わせたが、それが気持ちいいからなのか、くすぐったいからなのかは分からない。 しかし、ローションを垂らしながら刺激していると、徐々に由宇の窄まりは緩くなっていった。 (そろそろ指を入れてもいい頃かな……) ぬるぬるとローションで濡れた手のひらで太股を撫でながら、和樹はそっと開きかけた穴に人差し指を潜り込ませた。 「んんっ!」 「痛いか?」 第一間接を埋めたところで指を止め、由宇の顔を覗き込む。 「い、痛くはないんやけど……」 「んじゃぁ」 ぬぐっ。 「んんぅっ!」 一気に根元まで埋めてまた由宇の反応を伺う。
134 :
近畿人 :02/01/26 19:09 ID:re6cJ155
「やっぱ痛いか……?」 「ん、ううん……。ええから、続けて……」 とは言うものの、由宇の其処は指一本で既に一杯で、動かすのも躊躇われるほど痛々しく見えた。 「う〜ん、そうだなぁ……」 ひとしきり考えた後、和樹は空いた方の指をその下の割れ目に滑り込ませた。 「ひゃっ!」 くちゅ……。 その指先に、濡れた感触があった。 「なんだ、感じてたのか」 「なっ、あ、あほ……やぁんっ!」 指を滑らせるように由宇の秘所を刺激する。 「あっ、そこはええって、あん、はぅぅ……っ」 にちゃにちゃとわざと音をさせながら、クリトリスを指先でくすぐり、膣口を抉る。 暖かさが熱さに変わり、溢れた愛液が手のひらまでも濡らし始めたのを見計らって、和樹は尻に入れた方の指も少しずつ動かす。 「ん、んくぅっ、な、なんかおかし……っ」 さきほどギチギチだったその穴も、今ではスムーズに出し入れが出来るほどに緩んでいた。 ゆっくりと前後に抜き差ししたり、時には中に埋めたままぐりぐりと回したりと、更に責め立てる。 「はぁ、あ、ああっ!」 前の方の穴にも指を突き入れると、由宇の背中が大きくしなった。 白い肌には玉のような汗が浮かんでいる。 「由宇……、2本に増やすからな」 「あ、え、え?」 ローションに濡れて真っ赤に充血した後ろの窄まりに、更にもう一本指を増やす。 「……あっ、く、ぅ……っ」 さすがにキツいが、前の指を動かしながらゆっくりとなじませると、少しずつ締め付けが柔らかくなってきた。
135 :
近畿人 :02/01/26 19:09 ID:re6cJ155
「ふぅ、んんっ、あ、あ……っ」 ゆっくり、ゆっくりと動かしながら、時折中で指を曲げる。 「ぅん……んっ、んんんっ!」 (もういいかな……後ろは指が2本入ったら入るペニスも入るって聞いたことあるし……) なにより、ずっと由宇の痴態を見せ付けられている己が限界である。 「由宇、そろそろ入れたいんだけど……本当にいいんだな?」 「う、うん……ええよ、来て……」 ちゅぷんと音を立てて両の指を引き抜く。 長い間弄ったおかげか、指を抜いた後も由宇の其処は小さく口を開いていた。 忙しなくジーンズから自身を取り出し、そっと窄まりに当てる。 「ん……っ」 その上から更にローションをかけ、和樹はゆっくりと由宇の中に肉棒を進めていった。 「んっ、んんぅ……んぅうっ」 柔らかくしたとは言っても、未通のそこはやなりかなりキツい。 背中や太股を撫でて由宇の体の力を抜いてやりながら、少しずつ切り開いていく。 「あ、ああぁ、は、入ってくるぅ……っ!」 長い時間をかけて、肉棒を全て由宇の中に埋めた。 と、途端に根元が締め付けられる。 「あ、あ、お腹ん中、すご、キツイ……っ」 膣の熱く蕩けるような感触とは違うが、このキツい締め付けもなかなか悪くない。 背中から由宇の体を抱き締めて、和樹は恐る恐る腰を動かし始めた。 「んくぅ! んぁっ、ああっ」 ささやかな胸をそっと揉み、固く張り詰めた小さな乳首を親指と人差し指と擦る。 「はぅぅっ、そ、あ、あかん、ちょ、ちょぉ待って……っ」 和樹の下で由宇が掠れた声をあげた。 一旦腰を止めて由宇の顔を覗き込む。
136 :
近畿人 :02/01/26 19:10 ID:re6cJ155
「やっぱり痛いか? やめた方が……」 「そ、そやのうて……あの、その……」 もともと赤く上気していた由宇の顔が、耳まで真っ赤に染まっていく。 「……気持ちいいねん……」 「じゃぁいいじゃないか」 「でも! お、お尻の穴でこんなことしとんのに、感じて……」 言い淀んだ由宇は、そっと目を伏せて枕に顔を埋めた。 「嫌いにならへん……?」 小さな呟きが、和樹の耳に届く。 「……嫌いになるわけないだろ?」 「ほんまに?」 「ああ。……やらしいヤツとは思うけど」 「な……んあぁ!」 由宇の小さな体を腕の中に抱きこんで、和樹は再び腰を動かし始めた。 固く締め付けられる中を肉棒で抉るように腰を打ち付ける。 「あぁっ、あ、やぁっ、あかんって、感じてまう……っ」 「感じていいんだって」 「でも、でも、あっ、はぁんっ、んっ、んんぁっ」 由宇の声が切羽詰ったものに変わるのにそう時間はかからなかった。 和樹を締め付ける内壁も、びくびくと痙攣している。 「ああ、か、和樹っ、いきそぉ……っ」 「いいぞ、お、俺ももう……っ」 「あ、あああっ、んぁあ……!!」 びくっ、びくんっ! 2、3度大きく体を震わせて、由宇はシーツの中に沈み込んだ。 どく、どく……。 「あん、熱……」 一瞬後、和樹も由宇の中にその猛りを全て注ぎ込んだ。
137 :
近畿人 :02/01/26 19:10 ID:re6cJ155
「ごめん、外で出そうと思ったんだけど、間に合わなくて……」 ベッドに座った由宇の髪を拭いてやりながら、和樹は力なく謝った。 「別にええって。まぁ、その……気持ち良かったし」 バスタオル一枚を体に巻いた由宇は、風呂上がりのせいだけでなく頬を赤くした。 それを誤魔化すように勢いよく立ち上がる。 「ま、これで原稿も描けるってなもんや!」 「……やっぱそれなのか」 「あったりまえや! なんのためにうちがあんな恥ずかしいことしたと思ってるん!?」 服を身につけるために由宇は身を離したが、何かを思い直したようにもう一度和樹に体を寄せた。 「でも……」 そっと屈みこんで、耳元で囁く。 「和樹がしたい言うんなら、またしてもええけど……?」 ――――後日。 「あの〜、由宇?」 「なんや?」 こみパ会場で、和樹は由宇の新刊を手に立ち尽くしていた。 その漫画は、切ないストーリーを展開させつつも18禁の名に恥じない濃い描写も有り、売れ行きも好調である。 ……が、そのスペースに群がっているのは、何故か女の子ばかりなわけで。 「……これ、入れられてる方が男に見えるんだけど……」 「やおい本なんやから当たり前やろ」 「や………」 思わず絶句する和樹。 「いやー、和樹のおかげでいい漫画が描けたでぇ。 最初は大志はんと絡んでくれって頼もうかと思ってたんやけど、やっぱ自分で体験すんのが一番やな!」 「……はは、そうか……良かったな……ははは………」 心にぽっかりと穴が空いたような虚しさを感じつつ、和樹はそっとやおい本(18禁)を置いた……。
138 :
近畿人 :02/01/26 19:11 ID:re6cJ155
お目汚し失礼しました〜。
ていうかAF団スレ向き(w 堪能したけどね。
長いSSを投稿する方法が上手だね〜
141 :
琉一 :02/01/28 08:12 ID:yLo/BbEa
トーナメント支援SS。長くなってしまったので、こちらに落とします。 ごめん、その前にちょっと語る。気取るともいう。 僕はマルチシナリオを認められなかった。 マルチが悪いんじゃない。彼女が嫌いなんじゃない。 ただ、意志を持った機械を作ってしまう、残酷な人間達が許せなかった。 だからマルチのことは好きでも、あのシナリオは、どうしても素直に賛美できなかった。 たとえ帰ってきたマルチに、涙ぐんで喜びはしても。 セリオの方が、まだましだった。 機械的で、感情を表に出さないセリオの方が、まだ救われると。 だけど違った。 彼女の方が、もっと辛かった。 そのことを、こんなものを書くまで気づかなかった自分に、自己嫌悪を覚えるけれど。 それでも彼女の想いに触れることができて、良かったと思う。 悲しくて残酷で愛おしく美しい彼女らに、できる限りの祝福を送ってあげたいと思う。 それでも僕は――意志を持つ機械の残酷さに、強い反発を消すことはできないけれど。 セリオSS。11レス+1。 『笑顔と、祝福を――』 開幕します。
142 :
琉一 :02/01/28 08:13 ID:yLo/BbEa
その日、セリオは一人で商店街を歩いていた。 マルチは浩之の家に呼ばれ、綾香はセバスチャンの猛追を振り切るため、逃亡中。 セリオは黙々と、研究所への道を歩いている。 その姿を、ちら、と遠くから眺めては、まじまじと観察したり、 声をかけようとしてためらったりする、挙動不審な人物がいた。 「……?」 気づいたセリオが視線を送ると、いたずらを見られた子供のように固まってしまった。 マルチと同じ制服に身を包んだ、ボーイッシュな、青いショートカットの女の子。 その人物のパーソナルデータは、すぐに見つかった。 「松原様?」 セリオの方から話しかけると、松原葵は照れ隠しにあはは、と笑い、訪ね返した。 「あ……えっと、セリオちゃん……だよね? 綾香さんのところの」 微かに、不思議な心がセリオの中で乱れる。 「はい。私はHMX−13。通称、セリオです。 松原様とは、綾香様と一緒に、何度かお会いしたことはありますが」 その返事に、葵は大げさに胸をなで下ろす。 「ああ、よかったぁ……。セリオちゃんと同じ機種の、違う人だったら どうしようかって思ったら、ちょっと声かけられなくって……ごめんね」 「いえ……」 また波形が乱れる。 試作品であるセリオの同型機が、他にあるはずもないのだが――。 思い切りがいいようで、時に人見知りもする、葵らしい反応だった。 本人だと確認して安心した葵は、親しげに話しかける。 「セリオちゃん、今日は一人なの? マルチちゃんと綾香さんは?」 「マルチさんは、藤田様のおうちに遊びに行っていらっしゃいます。 綾香様は、現在、長瀬様の追跡をかわそうと、南東に向けて全力疾走している模様です」 藤田様、と出たところで、微かに葵の顔が曇った。 だけどすぐに、綾香の近況を聞いて、おかしそうに笑う。 コロコロと変わる表情が、セリオの映像データバンクの中で、不思議な存在感を持つ。
143 :
琉一 :02/01/28 08:13 ID:yLo/BbEa
「そっかぁ。綾香さんも大変だね」 「最近、練習を怠りがちでしたので、丁度いいかと存じます」 セリオは、綾香の最近の運動量から推測されるデータを披露したに過ぎない。 だけど葵は楽しそうに笑う。 マルチの無垢な笑顔とは違う、生き生きとした、躍動感のある微笑み。 セリオは無表情なまま、どこか不思議そうに、その笑顔を見つめる。 「あ、セリオちゃん、時間あるかな? 私、通っている道場が急に休みになって、 少しヒマだったんだ。良かったら、だけど」 「私と……ですか?」 「うん。だめかな……?」 「少々お待ちを」 サテライトサービスを通して、研究所に伺いを立てる。 僅か数秒の、だけどなぜかじりじりと過ぎる待ち時間の後、 1時間ぐらいなら構わないという返事が返ってきた。 「それじゃ、私のお気に入りの場所があるんだけど、そこでいい?」 セリオはこくりと頷いた。 葵に案内された場所は、街中を流れる川の、ちょっと上流。 川縁の土手の上に立ち、さわやかな涼風に髪を流す。 ゆったりとした流れに、のんびりと竿を垂らす釣り人がいる。 水辺に鳥が降り立ち、羽を繕い、また飛び去ってゆく。 青い流れと、白い砂利と、芝生の緑の取り合わせが、目に優しかった。 「……綺麗なところですね」 セリオは自然と、そう呟いていた。 「そうでしょ! ちょっと歩かないといけないけど、この辺まで来るとすごい綺麗な風景になるの」 「松原様は、よくここに来られるのですか?」 「うん。ロードワークの途中で見つけたんだ。それからはコースに入れて、毎日来てるよ」 と言ったところで、葵がためらいがちに、口を開く。
144 :
琉一 :02/01/28 08:13 ID:yLo/BbEa
「あの……なんだか松原様って落ち着かないから、葵でいいよ」 「葵様、ですか?」 「様もちょっと……」 「では……葵さん?」 「うん。そう呼んでくれると嬉しい!」 呼び方一つで、葵は、なぜ? と聞きたくなるほど喜ぶ。 そう考えたとき、セリオも自分の中の、数値で割り切れない気持ちに気づいた。 演算が終わらないまま、口を開く。 「葵さん……。あの、私の……」 だけどなにを言いたいのか自分でも分からず、セリオは珍しく口ごもった。 「え……あ、セリオちゃんって呼ぶの、ちょっと馴れ馴れしかった?」 そう、その呼び方だ。 「いえ……そう呼ばれるのは初めてです。なのに、なぜでしょう。 気持ちが……揺らぐような気がするのです。ですが、けして不快ではありません」 「えっと……それって、嬉しい……のかな?」 嬉しい。 それが、一番正しい答えのような気がした。 演算を飛び越えて出てきた解答を正解とするなど、自分の価値観を壊しかねないことなのだが、 セリオの回路はなぜか、その解答をよしとする。 「はい……嬉しい、気がします」 ――まるで、あなたの笑顔がそのまま私の中で響くように。
145 :
琉一 :02/01/28 08:13 ID:yLo/BbEa
ほとんど初対面と言ってもいい二人だが、話は弾んだ。 柔らかい芝生の上に座り、身振り手振りを交えて話す葵に、 セリオは時に相づちを打ち、時に自分から話を紡ぐ。 綾香のこと、マルチのこと、葵のこと。 学校のこと、家族のこと、部活のこと。 二人の共通項のエピソードが、楽しく語られる。 だけどセリオ本人の話は、悲しいまでに少なかった。 綾香とマルチの話題は、尽きることなく出てくるのに。 「そこで綾香様は『私とつきあいたいなら、熊ぐらい倒せるようになってからいらっしゃい!』 と言い放ち、勢いよく席を立ったのです」 「あはは。綾香さんってば、そんなことしていたんだ」 「はい。人前では優雅に、しなやかに、場合によってはおしとやかに振る舞って居られますが、 時に感情的になったり、思わぬミスをしたり、予想外のことを平気でするのも、綾香様の特徴です」 「セリオちゃんは、なんでも完璧って感じだよね」 それは、葵にしてみれば誉めたつもりだったのだろう。 だけど今は、セリオはその完璧さが疎ましく思える。 今まで一度もそんなことは考えなかったのに。 その揺らぎが、言い訳めいた言葉を言わせた。
146 :
琉一 :02/01/28 08:14 ID:yLo/BbEa
「……ですが、私の機能は、サテライトサービスで得た情報を、忠実に再現しているだけです。 逆に言えば、それ以上のことはできません。たとえば私が格闘家のデータをダウンロードした場合、 綾香様より弱いデータでしたら、私は絶対に綾香様に勝てません。 ですが、葵さんの場合は、どんな強い相手でも、戦えば勝てる可能性があります。 ……私は時に、それをうらやましく思うこともあります」 「でも、データにあることは、完璧にできるんだよね?」 「はい」 「……難しいね。どっちがいいのか、分からないよ」 「私も、どちらがいいのか、分かりません……」 なぜだか、冷たい風が吹いた。 葵がなんのきなしに、つぶやく。 「マルチちゃんは、時々失敗するのにね」 ――マルチ……HMX−12。私の姉。 ――私と違って感情を与えられ、失敗もするけど、学んでいける……。 ――人と同じように、一緒に、笑顔で、共に生きていける……。 「私は……マルチさんになりたいと、時に思います」 「え?」 聞き返されて、初めて自分が何を口走っているかに気づいた。 違うアプローチから制作された、2種類のメイドロボ。 違うようにできているのだ。違わなくてはならないのだ。 なのに、口に出してみると、自分がどれだけマルチのことをうらやましく思っているかに気づいた。 気づいてしまったら、思いを整理する間もなく、矢継ぎ早に言葉が出てきた。
147 :
琉一 :02/01/28 08:20 ID:yLo/BbEa
「そう。マルチさんの笑顔。彼女の笑顔は、いつでも周りの人を幸せにしています。 困っているときには、手を差し伸べたくなり、 泣いているときには、慰めたくなります。 あの、”人”と同じ、心と表情。私にはないものをマルチさんは持っている……。 ただ仕事をこなすための機械ではなく、人間のパートナーとして。 あの笑顔を見ていると、私にもマルチさんの心が伝わるようでした。 私の中にほんの少しだけ残された感情プログラムが、もっとあの笑顔を見ていたい。 私もあの笑顔を作りたい。皆さんに……幸せになって欲しい。 私はそのために生まれたのだからと。そう願うのです。 なのに……持って生まれた感情なのに、私はそれを表現する術を持ちません。 笑顔も、涙も。 マルチさんが持っているものを、私は持っていないんです! どうしてですか!? どうして私にはっ………!」 「セリオちゃん……」 呆然とする葵を見て、セリオがはっと我に返った。 「…………私、今……? 今、なにを?」 セリオの表情は変わらない。 いつもと同じ、淡々とした顔。 ただ、声だけが、僅かに激しく、そしてひどくうろたえている。 自分をコントロールできないと言う事実に、セリオのシステムがパニックを起こす。 自己診断プログラムは、空しく空回りを繰り返していた。 「セリオちゃん……」 セリオの顔に、葵の指がそっと触れる。 固く閉ざされた表情の奥で、泣いている心。叫んでいる心。 それが、葵にははっきりと感じられた。 まるで子供のように、無垢に泣きじゃくるセリオの心が……。 葵は、セリオを胸に抱きしめた。
148 :
琉一 :02/01/28 08:20 ID:yLo/BbEa
「……葵さん?」 触れれば人と同じ感触、人と同じ熱を持っているセリオの体。 ただ、その胸には心臓がない。 心はあるのに、心臓はない。 かわりに脈打つ、葵の心臓の音。 「聞こえる……? 私の音」 「……はい」 ――でも私は、胸がドキドキすることはないんです。 「私の体、暖かい?」 「……はい」 ――体が熱く、燃え立つように震えることもないんです。 「セリオちゃんは……人間じゃないかもしれない」 それはひどく残酷な事実。 ピノキオは、人間になれた。 でも、セリオは人間になれない。 絶対に、なれない。 その事実はひどく、セリオの心を震わすけれど。 葵はなにかセリオに伝えようと、言葉を懸命に探し、真摯に告げる。
149 :
琉一 :02/01/28 08:20 ID:yLo/BbEa
「人間じゃないけど……でも、心は、あるよ。 さっきのセリオちゃんの声……本当の人間と一緒だよ。 マルチちゃんのことをうらやましいと思う心。 人間になりたいって、願う心。 そう感じられることって、すごく、素敵だと思う。 私は、上手く、伝えられないけど……でも、ここにいて、気持ちを聞けて、良かったって……。 出会えて良かった。生まれてきて良かった。 セリオちゃんが生まれてきてくれて、本当に良かったって思うよ……。 それじゃ、だめかな? だめ、かもしれないけれど……でも、私にはそれが精一杯で……」 セリオの頬に、熱い雫が落ちてきた。 それは葵の涙。 とめどなく溢れる葵の悲しみが、セリオの頬も濡らす。 同じように涙を流せないことが、ひどく悔しく、寂しい。 ただ、かわりに強く抱きしめ返す。 不自由な顔を、必死で強ばらせて、なにかを……なにかを伝えたいと。 「ごめん……なに、言ってるんだろう、私……ごめん。ごめんね……」 セリオは懸命に首を振った。 「葵さんは……悪くないです。嬉しいと、思っています。絶対に。 私の中に、本当に心があるのなら、嬉しいって、ありがとうって、 そう、思っています。本当に、思っていますから……」 涙でくしゃくしゃになった葵の顔が、セリオにはとても美しく見えた。 「だから……泣かないでください………」 セリオの声も、泣いているように震えていた。
150 :
琉一 :02/01/28 08:20 ID:yLo/BbEa
オレンジ色の光が、二人を優しく包む時刻になっていた。 「どうぞ……」 「あ……ごめんね」 セリオからハンカチを受け取り、涙の後を拭う。 「ごめんね。こんなに長い間引き留めちゃって。おまけに、変なこと言って……」 ふるふるとセリオは首を振る。 1時間なんて、とっくに過ぎていた。 何度か研究所からのコールもあった。 ただ、それをひたすらに無視したのは、葵が泣いていたから。 それが原因で、不良品として廃棄されても、構わないとさえ思っていた。 「私は、今日という日を、永遠に忘れません……」 葵の驚いた顔が、夕焼けに鮮やかに浮かび上がる。 「やだ……大げさだよ、セリオちゃん」 もう一度、セリオは首を振る。 葵は安らいだような笑顔を浮かべ、もう一度零れかけた涙を拭った。 「うん。私も……絶対に忘れない。セリオちゃんの心。聞けて、良かった」 「はい……」 思いを交わしあう二人に、足音が近づいてきた。 「葵、セリオ……帰るわよ」 「綾香さん……」 「綾香様……」 夕焼けに染まり、全てを分かったように微笑む綾香。 その後ろには、セバスチャンと、研究所職員もひかえている。 「ご迷惑をおかけしました」 セリオは頭を下げ、研究所のワゴンへと歩く。
151 :
琉一 :02/01/28 08:21 ID:yLo/BbEa
「あ、違うんです! 私が……」 駆け寄ろうとした葵を、綾香が遮る。 「大丈夫よ。分かっているから」 「綾香さん……?」 乗り込む寸前、セリオは振り向いて、深く頭を下げた。 「葵さん。今日はありがとうございました。それではまた」 「あ……ハンカチ! 洗って返すから! だから、また会おうねっ!」 なにかを感じたのか、閉まるドアの向こうに葵は叫ぶ。 音を立てて、ワゴンは走り去った。 ワゴンの中、うなだれたようなセリオは、呟くように言った。 「夢を……一つだけ、夢を下さい」 返ってきた沈黙に耐えかね、セリオは顔を上げた。 「それがかなうなら、私は解体されてもかまいませんから……」 まるで泣いているような表情で、今にも壊れそうな瞳で、セリオは頼んだ。
152 :
琉一 :02/01/28 08:21 ID:yLo/BbEa
それから、三日が過ぎ、葵はセリオに会えずにいた。 丁寧に畳んだハンカチは、ずっと鞄の中にしまってある。 寺女の方角を眺めていた葵は、不意に背後から懐かしい声を、求めていた声を与えられる。 「――葵さん」 セリオの声だ。 葵が振り向き、一瞬笑顔を作り、微かに戸惑う。 「セリオちゃん……」 セリオは、葵の真っ正直な優しい心を、嬉しく、愛しく思った。 葵を真っ直ぐ見つめる、水晶の瞳が和らぎ、口元が、笑みの形にほころんだ。 にこ、と、ほんの微かに。 「セリオちゃ……」 葵の顔が、みるみる喜びの輝きに染まる。 よく見なければ気づかない程度の、ほんの僅かなセリオの微笑み。 だけどそれはセリオにとって、葵にとって、最高の笑顔だった。 駆け寄る葵の足音が、天使の福音のように響いた。 ――私は、生まれてきて良かった。あなた方に会えて良かった。 ――心というものを与えられて、育むことができて、本当に、良かった……。 ――私の後に生まれる妹たちにも、笑顔と、祝福を……。
153 :
琉一 :02/01/28 08:26 ID:yLo/BbEa
セリオ支援SSを落としたいので、この場をお借りします。 5分割で、4レス+エピローグ1レスになります。 題名は【デウス・ウキス・マキーネ】にしました。なんとなく。 では失礼します。
機能を停止していたのは数秒のことだった。 回路の損傷を防ぐために緊急停止機構が作動したのが17.3秒前。 自己診断プログラムがメモリバンクと情報処理ユニットの走査を終了したのが12.8秒前。 動力ユニット及び運動機能の制御が通常モードに引き渡されたのが0.7秒前。 光学センサーが復帰すると、視界いっぱいに綾香様の顔があった。 顔を紅潮させて、いつになく感情を乱している様子だ。 「まったく、なんてことするのよ!」 なぜかは解らないが、綾香様は怒っているようだった。 私たちの周囲には冷たい水がある。 川べりの浅い水のなかで、私は綾香様に抱きかかえられていた。 制服のまま水の中で立て膝を突いているため、私の主はずぶ濡れの状態だった。 「綾香様、身体が冷えてしまいます。すぐに水から上がってください」 論理的に正当なはずの私の提案を聞いて、綾香様はますます感情を高ぶらせたようだった。 白い頬に赤みが増して、その目がわずかに細くなる。 お仕えするようになって日が浅いとはいえ、提案を聞き入れてくれる気がないことは私にも解った。 しかし、不機嫌の理由が判らない。 私はなにか間違ったことをしたのだろうか。 原因として考えられるのはやはり数十秒前の出来事だろう。 私は意識を綾香様に向けたまま、知覚ブロックの余剰リソースを使って先ほどの出来事を再生してみることにした。 まず、綾香様が私を伴って、川べりの石を踏んで散歩をする場面からだ。 遠くで手を振る子供に気を取られて、綾香様は濡れたコケに足を取られてバランスを崩す。 そこでメモリのなかの私は、瞬時に運動能力のリミットレベルを変更していた。 十メートルほどの距離を一瞬で詰めて、綾香様の手を取って川への落下を防ぐ。 そして、私はそのままの勢いで川へと突っ込んだ。 その先に、たまたま水中から顔を出した大きな岩があったのだが――。 黒々とした岩が眼前に迫ってくるところで、映像はブラックアウトしていた。 <続く 1/5>
やはり、綾香様は私が破損したことに腹を立てていると考えるべきだろう。 フレームごと折れ曲がった私の手首を見て、綾香様はさらにショックを受けたようだった。 私はこの方の所有物なのだから、私を壊す権利など私にはないのだ。 「申し訳ありません。最後に制動をかける余裕がありませんでした」 とにかく、いまは綾香様に感情を静めていただく必要がある。 生身の主を、いつまでも真冬の水の中に置いておくわけにはいかない。 「そういう問題じゃ…ないんだけどね」 打って変わって沈んだ声でそう言うと、綾香様はようやく立ち上がってくれた。 「立てる? セリオ」 「はい、問題ありません」 綾香様に手を引かれて、私も水から立ち上がった。 身体が濡れたまま無為な時間を過ごすことはできない。 主の体調を推し量りながら、来栖川邸への最短ルートを検討する。 「話は帰ってからにするわ。でも、二つだけ言いたいことがあるの」 長い髪から水を切り終わると、綾香様は私に向き直った。 真剣な眼差しが私を見据えている。 私は叱責を覚悟した。 しかし、綾香様が口にしたのは叱責の言葉などではなかった。 「セリオ、私はあなたが好きよ。あなたは?」 私は想定していた対応パターンをすべて破棄し、質問への答えを組み立てる。 「綾香様は私の主です。主に従い、お護りすることが私の存在意義です」 綾香様は困ったように首を傾げた。 どうやら私の返答はお気に召さなかったらしい。 「もっとシンプルにいかない? イエスかノーで」 「YESです」 それを聞いて、綾香様の顔に笑みが浮かんだ。 <続く 2/5>
「私はあなたが好きだし、あなたも私が好きなのよね?」 「はい」 「普通、好きな相手の嫌がることはしないものだけど、あなたはどう?」 「はい、私は綾香様が望まないことは致しません」 いま綾香様が確認しているのは、アンドロイドにとっては当たり前の常識に属することだった。 主の要望を実行し、主の望まないことは遠ざける。 私の答えなど聞く前から判っているはずなのに、綾香様は上機嫌だった。 そう、まるでお目付役の目を盗んで、屋敷を抜け出す算段を練っているときのように。 「いいわ。そう言ってくれると思った」 綾香様はそういってにっこりと微笑んだ。 どうやら話は終わりらしい。 ようやく屋敷に戻って着替えていただけそうだ。 しかし、その後に続いた言葉は、私の推測パターンから大きく外れたものだった。 不意に真剣な表情に戻った綾香様が、私の目をまっすぐにのぞき込む。 「だったら、『私にとって大切なあなた』を大切にして頂戴」 私は返答に詰まった。 なぜ綾香様がさっきのような無意味な問答をしたのか、ようやくその理由が解った。 そして、私が機能停止から回復したときに怒っていた理由も。 この方は、私の行動指針に手を加えようとしているのだ。 『主の安全』という絶対的な基準を、あろうことか私の身と秤に掛けるように言っている。 「私はセリオがこんなことで怪我するのを見るのは嫌なのよ」 「申し訳ありません。ですが、先ほどの状況では…」 「嫌なの」 「主の危機を見過ごすわけには…」 「嫌、なの」 綾香様は容赦してはくれなかった。 <続く 3/5>
「川に落ちたって死ぬわけじゃないんだから…ね?」 私は降参するしかなかった。 いまこの瞬間にも、綾香様は体温の低下と共に体力を奪われ続けている。 それにも関わらず、私の返答を聞くまで動く気はない様子だ。 それに、私はさっき『綾香様の嫌がることはしない』と明言してしまっていた。 「解りました。しかし本当に危険だと判断した場合、私はためらわず職務を果たします」 「それなら私だって同じ。友達のピンチは救いにいかなきゃね」 「友達……ですか」 私には、この方の言動がどこまで本気なのか判らなかった。 あるいは――。すべてが本気なのかも知れない。 「それともう一つ……、家に帰る前に言っとくことがあるわね」 次の瞬間、私はおもむろに抱きしめられていた。 音響センサーの真横で、柔らかい声がささやく。 『さっきはありがとう。嬉しかった』 矛盾に満ちた言葉だった。 この言葉は何重にも保護を施して、いまでも記憶装置の奥に分散格納してある。 いつか私がこの言葉を完全に理解できる日まで、ずっとそうしておくつもりだ。 <続く 4/5>
<エピローグ> 「でも、セリオも分かってきたじゃない」 歯をカチカチ鳴らしながら、毛布にくるまった綾香様がつぶやいた。 なにか悪戯をやり遂げた後、この方は大抵こんな笑顔になる。 「しかし、寒いぞコレ。マジで」 隣では仲良く歯を鳴らしながら、同じく毛布にくるまった男性がぼやいていた。 この方は、たしか綾香様のお友達で藤田様といった。 どういう経緯なのか見当もつかないが、私が着いたとき二人は川べりでお互いを突き落とし合っていた。 「冬にあんなことやれば寒いのは当たり前でしょう? バカ丸出しって感じよね」 「ホント、丸出しだ」 最初は、二人を止めるつもりだった。 しかし歓声を上げて“バカ丸出し”に没頭する二人を見て、私は屋敷に引き返したのだ。 自分でも理由は判らない。 だが、私は二人を止める代わりに乾いたタオルと暖房の効いた部屋を用意することにした。 むろん、綾香様のお目付役はこのことを知らない。 私は嘘をつくことはないが、訊かれないことをわざわざ報告する必要もない。 綾香様と藤田様は、私の運んできたマグカップを幸せそうに口に運んでいる。 その光景を絶え間なく分析しながら、考える。 私は許される限りこの方の側にいて、この方を観察し続けよう。 いつか私の思考ユニットが、ロジカルな結論を得られる日が来るかも知れない。 欲求らしい欲求を持たない私が、唯一データを欲しているあの謎についてだ。 姉に実装され、ついに私に組み込まれなかったあのモジュール――。 この方の側にいればそれが分かる。 これは何の根拠もない推論だったが、私はそんなことを気に留めてはいなかった。 <FIN 5/5>
>>154-159 お目汚しでした。
宣言で書けばよかったんですが、
セリオと綾香が出会って間もない時期を想定してます。
割と即死系の駄スレ
半年前に書いたSSが使えるかどうかのテスト 19レス分です
季節は夏。 私はバス停の欄干に身体をあずけ海を臨む。 紺碧の海から吹き上げる風が私の髪をさらさらと梳いてゆく。 鼻をくすぐる海と木々の香り。風薫る私の夏休み。 私はゆっくりと目を閉じ、手を広げる。 9時00分 みーんみーんみーんみぃぃぃ・・・ 「うーーーん」 「はっ・・・」 「うん良い天気。これもてるてるぼうずさん達のおかげ・・・」 「あっクモさんだ」 「あのねクモさん、私昨日とてもびっくりしたんだよ」
ガラララー 「・・・ちっす」 「わっ、往人さん。だめだよ中庭から入ったら」 「勝手知ったるなんとやらって言うだろ。まー気にするな」 「ところでな明日デートするぞ」 「往人さんいいな。誰と行くの?」 「・・・・・・・・・」 「・・・晴子だ」 「えっ、お母さんと。じゃ明日は大変だよ。きっといっぱい物とか買わされるよ。お金大丈夫?」 「ボケを素で返すな!」 ポカッ 「イタイ、どうして叩かれるかな〜。え〜とじゃだれ?」 「お前本当にわからないのか?」 じーと睨まれる・・・その視線の先に・・・ 「わかった。そらでしょ! 観鈴ちん大正解」 「・・・・・・・・・」 ポコッ 「がおしてないのにまた叩かれた・・・」 「何が楽しくて鳥類と行くんだよ! 一緒に行くのはそこのお前だ」 あれ? 往人さんの指が私を差している。 「えっと、私つっこめばいいんだよね」 「えいっ」 なんでやねんと、つっこんでみる。 「はあ・・・。もーいいや・・・」 「オレのデートの相手は、神尾観鈴! お前!!」 「えっ、私!?」 「・・・えと・・・あと・・・観鈴ちんピンチ!」 (ああああ頭の中、真っ白・・・どどどどうしよう)
「えっ・・・あっ・・・ダ、ダメか?」 「えっ・・・あっ・・・うん・・・」(おおお落ち着かないとととと) 「そうか・・・じゃ帰るわ・・・」 (えっ? ち、違う、えと、あと、こうゆう時どうすれば・・・が・・・が・・・) 「・・・がお」 ポカリ 往人さんが踵を返して叩きにきた。イタイ・・・ 「じゃあな、オレはもう駅に帰るから」 (往人さんがいっちゃう) 「えっと・・・ゆ、往人さん!!」 わっ、叫んじゃった。 「なんだ?」 「あの・・・おやすみなさい・・・」 「ああ・・・おやすみ・・・。じゃな」 (違う違う。えーと。人人人人人人人人・・・ゴックン。ふーー) 「往人さん」 「今度は何だ?」 「あのね・・・私・・・お金ない・・・だから・・・」 「ああ、なんだそれでか。安心しろ全部俺のおごりだ」 「見よ! これが夏目金之助大先生様だ!! 観鈴、これでお前はウッハウハ!!!」 ジャーンと往人さんのポケットからしわくちゃの千円札が十枚出てくる。 「わっ、往人さん大金持ち・・・」 「でもまた佐久間リサイクルショップなんだよなぁ。俺のアイデンティティーが・・・」 あっ、往人さん落ちこんだ。畳に『の』の字をいっぱい書いてる。 「でも、往人さん本当にいいの? 私、少しなら小遣いあるよ」 「いいんだよ、日本にはデートの時は男がおごるっていう理不尽な法律があるんだとさ」 「そうなの?」 「知らん、本に・・・」 「本?」 「・・・なんでもない。つーことで明日10時ジャストにバス停な。早くきすぎんなよ」
9時05分 「だからね、私、今日初デートなんだよ。にはは」 「あっ、クモさんいっちゃった・・・バイバイクモさん」 9時30分 「あっクワクワだ! お相撲お相撲・・・」 10時01分 「来ないな〜。駅に行ってみようかな〜」 10時02分 「えっとバスは10時05分。うん、まだ三分もある。観鈴ちんファイト!」 10時03分30秒 「にはは・・・」 10時04分 「あっバス・・・」 山の向こう側からバスの排気音が流れてくる。 10時04分30秒 ブロロロロロロォ・・・キキィ・・・ 「・・・・・・・・・」 バスはもう目で見えるほど大きくて、ゆっくりとその速度を落とし・・・ プシュゥ・・・ そして、私の前でゆっくりとその口を開けた。
「また、からかわれただけ・・・いつものことだよね」 「でも、すごく・・・楽しみにしてたんだけどな・・・」 「・・・・・・・・・」 「・・・がお・・・」 ボカリ・・・ 「!」 「ハァハァ・・・。ほらバス来たぞ。乗んべ」 「え・・・うん!」 私達はバスへと駆け込んだ。 「待ったか?」 「ううん。今来たところだよ」 ポカッ 「どうして叩かれるかな〜」 「じゃなんで『がお』してたんだよ」 「私、がおがおしてないよがおがお」 ポカッ! ポキッ! ポクッ! ポケッ! ポコッ! 「一つ多いよ・・・。ちょっと言ってみたかったんだよ。今来たとこって・・・」 「まあいい、つーことで遅れたお侘びに今日は一つだけ欲しいもんなんでも買ってやるぞ!」 「・・・・・・ど」 「おーっと。プレゼントはちゃんと形に残るものな」 「どろり濃厚も紙パックが残る・・・」 「頼むからそんなしょぼい物にしないでくれ」 「じゃあ、どろりシリーズ詰め合わせセット、ゲルルン入り。一ダース」 「却下!」 「でも重量感はあるよ」 「そういう物質的な重さはいらない」
そんな他愛のない会話をしているうち私達は遊園地に着いた。 往人さんの買った入場券を太陽に透かしながら二人で中へ入る。 「わ〜・・・ジェットコースター・・・。ほんもの・・・」 「なんだ遊園地ははじめてか?」 「・・・うん」 「そっか・・・。じゃ、初デート、初遊園地で観鈴ちんだぶるハッピーだな」 「うん!だぶるハッピー」 ぐうーー 「おっ、腹がなった。今は11時59分30秒だぞ」 「わっ、すごい」 「ちなみに今のは予鈴だ。あと30秒たつと・・・」 ぐっ! ぐっ! ぐっ! ぐうーーー! 「ほら本鈴だ」 「にはは・・・」 ぱちぱちと手を叩く。 「つーことで先に飯でいいな? なんか買ってきてやるから待ってろよ。何がいい?」 「う〜ん・・・なんでもいいよ」 「そうか本当に何でもいいんだな?」 「うん」 「・・・わかった後悔するなよ」 「? うん、いってらしゃい」 手をぱたぱたふって、とすっと椅子に座る。 みーんみーんみーんみぃぃぃぃ・・・ (セミさんの歌声が聞こえる・・・) (なんか夢みたい。遊園地に誰かと遊びに行けるなんて・・・。)
「悪りぃ、まったか? それがさ、このソフトクリームカレー味激辛が今大人気でな」 「ほら形とか色とか、もー匠の世界だぜ・・・って観鈴?」 「・・・・・・どうして・・・・・・」 「・・・おい。どうした?しっかりしろ観鈴・・・」 ぼと、ぼと・・・ 「・・・・・・どうして・・・せっかくの初デートなんだよ・・・ひっく・・・ ・・・今から一緒にいろんな乗り物に乗って・・・えっぐ ・・・手つないだり・・うぐ・・膝枕してあげたり・・・・・ ・・・はっく・・・写真とかいっぱっえぐ・・昨日もたくさん泣いたのに・・・ ・・・どうして・・あぐ・・っぐ・・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 「観鈴っ!」 「ゆきとさん・・・ゆきとさんどこ・・・ゆきとさん・・・ゆきとさん・・・」 「観鈴っ!」 がっ! 「・・とさん・・・ゆ・とさん・・・・ん・・・・・・」 「観鈴、俺はここにいる。ここにいるぞ・・・」 (往人さん・・・あったかい・・・)
「んっ・・・」 「おっ気がついたか?」 「あれ? 往人さん・・・わっ」 気がつくと私は往人さんの膝の上で寝ていた。 「寝てろ・・・」 やんわりと額を押さえつけられる。 「うん・・・」 「・・・・・・・・・」 「風が気持ちいいね〜」 「ああ・・・」 「夕日・・・きれいだね・・・」 「ああ・・・」 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「デート・・・」 「うん?」 「にはは・・・デートにならなくてごめんね・・・」 「・・・・・・・・・」 「観鈴、手かせ・・・」 「えっ・・・わっ」 ふいに往人さんがきゅっと手をにぎる。 「えっ・・・えっ・・・」 そして、戸惑う私の頬に往人さんの頬が重なった。
パシャッ 「よし、オッケー」 「?」 「手をつないで・・・膝枕して・・・写真を撮る・・・これでデートだろ」 にこっと往人さんが微笑んだ。 「わっ、往人さんが笑った・・・」 「なんだそんなにめずらいことか?」 「うん、初めてみた。でもやっぱりちょっぴり目つきが悪いけどね・・・」 ポコリッ 「にはは・・・イタイ」 「・・・んしょっと」 「もう大丈夫か?」 「うん」 「よしっ、じゃもう帰る時間だけど、土産屋ぐらい行けるよな?」 「うん」 ・・・・いらしゃいませ・・・・ 「人形がいっぱい・・・。でもどうして?」 「行きに言ったろ、一つだけ好きなもの買ってやるって」 「ん〜とじゃあこれいいかな?」 「どれどれ・・・。マジか! このハムスターの人形が50万!? 俺の臓器売れってか? 却下却下」 「残念・・・じゃこれがいい」 三個の恐竜のお手玉を手に取る。 「本当にこんなんでいいのか?」 「うん」 「そっか・・・」 ・・・・ありがとうございました・・・・
「往人さん恐竜、がお〜!」 「がおー!」 今日の往人さんやさしい・・・なんか新鮮・・・ 「ところで観鈴、お前お手玉なんてできんのか?」 「う〜んやってみる。観鈴ちんふぁいと!」 ポン、ポン、ポッ、トス・・・ ポン、ポン、トス・・・ 「がお・・・」 「へったくそだなぁ」 「どれこの天才ジャグラー国崎の妙技とくとごらんあれ!」 ポン、ポッ、トス・・・ ポン、トス・・・ 「に、二回すらできない・・・。がお・・・」 「あっ、往人さん『がお』した」 「えいっ」 ポカリと往人さんを叩く。 「がお・・・」
それからしばらくして私は足が動かなくなり、往人さんもお母さんもいなくなった。 窓から入る西日を頼りに私は自分の部屋で陽が落ちるまで恐竜のお手玉を天井に投げ続ける。 床に落ちたお手玉を拾おうとしてベットから幾度落ちても私のお手玉は舞うことを止めない。 往人さんがいなくなってから毎日毎日、お手玉は休むことなく舞い続ける。これが私の夏休みだった。 ポン、ポッ、トス・・・ ポン、ポン、ポッ、トス・・・ ポン、ポッ、トス・・・ 「・・・・・・・・・」 ポン、ポン、ポッ、トス・・・ ポン、ポッ、トス・・・ 「どうしてうまくいかないかな〜。うーん・・・」 バサバサバサー 「あっ、そらだ。そら・・・おいで」 「あのね、そら、わたしね、お手玉がちゃんと三つできるようになってね」 「往人さんが帰ってきたらお披露目して、往人さんにもう一度『がお』っていわせるんだ」 「そしたらね〜、私はまたポカリって往人さんを叩くんだよ。にはは」 ポン、ポン、ポッ、トス・・・ ポン、ポン、ポッ、ポッ、トス・・・ ポン、ポン、ポン、ポッ、トス・・・ 「!」 「そら! 今見た!? 私、三つできたよ。ちゃんと全部綺麗に舞ったよ」 「これで往人さんがいつ帰ってきても大丈・・・夫」 「はぁ・・・ちょと疲れた・・・寝よう・・・おやすみ、そら・・・」
「・・・ず。・・・すず」 (往人さんの声がする・・・) (今日も往人さんと夢で会えるかな・・・) 「・・・すず。・・・みすず・・・」 「観鈴!」 「え、あっ、往人さん!!!」 瞼を開くと窓から差し込む淡い月明かりの中に往人さんが立っていた。 うにーと頬をつねってみる。イタイ・・・ 「いつ帰ってきたの?」 「たった今だ。だけどもう時間がない。行かなきゃならないんだ」 「往人さん。待って・・・私お手玉三つできたんだよ。見てて」 「ああ、わかってる。ほら、やってみろ」 ぎゅっと恐竜のお手玉を握る。 (お願い・・・私に力を貸して・・・)
「いくね」 「えいっ」 (ひとつ)ポン (ふたつ・・・あっ)ポッ、トス・・・ 「にはは。失敗失敗・・・もう一度見てて。それ」 (ふー集中、集中・・・えい、ひとつ)ポン (ふたつ)ポン (みっつ・・・っ)ポッ、トス・・・ 「ほんとにできるんだよ」 (ひとつ)ポン (ふたっ・・・)ポッ、トス・・・ 「ふぅ・・・」 (しっかり、落ち着いて・・・ひとっ・・・あっ)ポッ、トス・・・ 「・・・・・・・・・」 (・・・・・・・・・)ポッ、トス・・・ 「・・・どうして・・・どうして舞ってくれないの!?」 「往人さんの前なんだよ・・・ずっと練習したんだよ」 「この日の為に、ずっとずっと頑張ってきたんだよ・・・。なのに、どうして・・・お願いだから・・・」
ポン、トス・・・ ポン、ポッ、トス・・・ ポン、トス・・・ 「・・・ひっく・・・お・がい・・・お願いだから・って・・・舞ってよお手玉・・・」 「できて、往人さんに『がお』って言わせるんだから・・・」 「また、往人さんをポカリって叩くんだから・・・」 (もうまえがにじんで見えない・・・でもみすず・んふぁ・と・・・ひ・つ)ポン、 (・たつ)ポッ、トス・・・ (まだだよ・・・まだいっちゃやだよ往人さん・・・)ポン、ポン、ポッ、トス・・・ (ちゃんと最後までみててよ・・・)トス・・・ (わたし一生懸命がんばったんだから・・・だから・・・)ポッ、トス・・・ 「・・ず、よく頑張ったな・・・」 往人さんの手が私の髪をやさしくなでる。 月にとける往人さんの体・・・ 「!」 「往人さん、行かないで・・・ホントにできたんだよ・・・」 「一人は・・・もう一人ぼっちはやだよ・・・往人さん!」 「オレは・つもお前の・ばにいるから・・・」 「・・・!」 トストストス・・・ 手から滑り落ちるお手玉・・・ ・・・ぼやけた往人さんが月のベールに目つき悪く微笑んでいた・・・
「往人さん!!」 がばぁ! だれもいない。いつも通りの人気のない私の部屋・・・ そして布団の上には三つのお手玉と、そらの羽根があった。 ガチャ! 「ゆき! ・・・あ・・・お母さん・・・」 「観鈴、うちいま帰ったでーってなんやまた泣いとったんか?」 「んっ、あの居候はどこいったん? まーええわ、今日な観鈴にえー知らせがな・・・」 「・・・・・・・・・」 ぼふっ 「なんや観鈴急に抱きついたりして。観鈴ちんは甘えん坊さんやなぁ」 「お母さん・・・往人さんが・・・往人さんが・・・」 ・・・・・・・・。 ・・・・・・。 ・・・。
長い長い夏休みが終わり、明日から二学期が始まる。 この日も私は堤防に腰かけいつものように一人お手玉で遊んでいた。 髪をさらさらと梳く海風と空に舞うお手玉が私をやさしく包みこむ。 ポン、ポン、ポン・・・ ポン、ポン、ポン・・・ ポン、ポン、ポン・・・ 「往人さん・・・見てる? ほら、ちゃんと三つできてるでしょ」 ポン、ポン、ポン・・・ ポン、ポン、ポン・・・ ポン、ポン、ポン・・・ バサバサバサー 「あ、そらだ。今までどこ行ってたの? 捜したんだよ」 ポン、ポン、ポン・・・ ポン、ポン、ポン・・・ ポン・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 とてとてとて・・・ぷす!! 「にょええぇぇぇ!!! そらが目つついた。イケナイ子!」 ポカリとそらを叩く。 「があ!」 「・・・・・・・・・」 「・・・がお?」 ポカリ 「があ!」 「・・・・・・・・・」 きゅっとそらを抱きしめる。 (そら・・・あったい・・・) 「・・・うん。一人じゃない。そらがいる」 「そうだ明日から頑張って友達を作ろう・・・うん、いいアイディア」 「よしっ、観鈴ちんふぁいと」 「おーーーっ!!」
キーンコーンカーンコーン 「今日いまから遊びに行こっ!」 「もっちろん!」 「にはは・・・」 いつも通り私は一人だ。急にグループの中なんかに入る勇気はまだない。 「あした・・・また明日ガンバロ!! うん」 バサバサバサー 「あっ、そら・・・ダメだよ学校まで来ちゃ」 「あれ? 神尾さんって鴉飼ってたんだ。名前は?」 「わっ、川口さん・・・」 クラスメートの川口茂美さんだ。 「な、名前? ・・・えっと・・・そ・・・」 「そ・・・?」 「ううん。田淵さん」 「えっ・・・」 「田淵往人さん」 ブスッ! 「にょええーー」 「神尾さんが、飼い鴉に目を刺された!」 「イケナイ子!」 ポカリと叩く。 「があ!」
「あはは。んで田淵くんだっけ? 知ってる田淵さんってすごいんだ・・・」 ブスッ! 「ふにょー。」 「だっ大丈夫? 川口さん」 「ふに・・ふに・・・ふー・・・あー驚いた。もしかして・・・」 「田淵・・・」 スカッ! 今度は攻撃を避けた。 「神尾さん。この子、田淵って名前が気に入らないみたいだよ?」 「う〜ん。いい名前なのに残念・・・」 「もっといい名前つけてあげようよ」 「そうだなー・・・例えば黒いし『ごっきー』なんてどう?」 「あっ、それいいね」 ガス! ゴス! 「にょええーーー!」 「ふにょろーーー!!! ろーろー・・・・つー・・・」 「もう怒ったっ! この鳥類め、鳥鍋にして食ってやる!!」 「わっ、川口さんがべらんめい口調になった・・・。びっくり」 繰り広げられる川口さんとそらの熱戦。 「ハア、ハア・・・」 「があ、があ・・・」 「やるわねあなた・・・」 「があ!」 「わっ、二人が手を組んでる。人と鴉って分かり合えるんだ・・・」 「よし、決めた。あなたの名前は、ミザリーブラックよ!」 ブスブスブスー! わっ、すごい連続攻撃。しかもそら、羽根の先っぽ曲げてこいこいしてる。 「ふんごー。挑発までしよったなー! もー怒った、2R目開始じゃい!」 「がーーーーーー!」
(そら・・・ううん往人さんありがとう。私これから一生懸命頑張るよ・・・ 頑張って川口さんと友達になって。川口さんと往人さんの三人で学校に行って、 帰ったらお母さんと往人さんの三人でご飯食べて・・・そして朝になったらまた三人で学校行って・・・。 そうだ、今度お母さんと遊園地に行こう。そして、カレー味のソフトクリームを一緒に食べよう。 もちろん往人さんも一緒だよ。うん、そうしよ・・・私、頑張るから・・・ね、往人さん) (おわる)
>>163-182 以上、観鈴支援。
しかしこのオノマトペアの多さ、どうにかならんのかな・・・。
んじゃ、今から投下するよ!
トーナメント会場の地下バーで一人、グラスを傾ける。 頬杖をつき、カウンターに広げた冊子を、ぼんやり眺める。小さく溜息。 そんな彼女…天沢郁未の背にかかる声があった。 「横、いいかしら?」 巳間晴香だった。彼女は郁未の答えを待たず、隣にすとんと腰を落ち着けた。 "私の他には誰も居ないんだから、どっか空いてるとこ行きなさいよ" そう言いかけた郁未だったが、思い直し、またグラスをあおった。 「隣、いいですか?」「失礼しますね」 また、お邪魔虫。 郁未は顔をしかめた。名倉由依と鹿沼葉子だ。彼らも郁未の意志などてんで無視。 バーのカウンターに四人並んで座る格好になった。 何だか落ち着かないが、席を離れるのもおっくうだ。 それに…。郁未は思う。本当は、彼らの思い遣りに感謝している。未夜子が消えて しまったとき、郁未に向けられた彼らの目は、痛々しいものを見るときのそれだった。 未夜子が消えていったとき、泣かなかった、と自分では思っている。ほんの少し 目が湿ったかも知れないけれど、もう大丈夫。自分は強いんだから。その証拠に、 こうやってアルコールを楽しむ余裕もある。 四人並んだまま、無言で居るというのは奇妙な光景だ。 「ホント誰も居ないですねぇ」
薄暗い店内を見回し、いかにも感心したという口振りで、由依。 「お子ちゃまはお黙り。大体アンタみたいな貧乳が来ていい場所だと思ってんの」 「ひ、ひどいです、晴香さん、貧乳とどう関係があるんですかーっ!」 いつものように賑やかな言い合いになりかける。それにつられ、華やぎかける心。 …でも。 「静かにしてよ」 低く呟く郁未。そのまま普段通りの日常に雪崩れ込むのが鬱陶しかった。黙って いて欲しかった。晴香と由依はシュンとなり、口をつぐむ。 気まずい沈黙。 間をもたせるためか、晴香が懐をごそごそとやり出した。 「晴香さん、たばこはダメですよ」 「ここは喫煙してもいいの!」 「健康に悪いんですから。ね、葉子さん」 「その通りです」 しぶしぶ煙草をカウンターに置く晴香。 と、由依が、郁未の前にある冊子を目敏く見つけた。 「それ、なんの本ですか?」 「え?」 「ああこれ? この前対戦相手だった大庭詠美って子がくれたんだ」 そのときのことを思い出すと、微笑が漏れる。 試合の後、舞台裏で、母親とお別れをした。抱きしめていた筈の母親の肉感が消え、 気が付くと独りぼっちになっていた。その後のことはよく覚えていない。呆然と廊下を 歩いていたとき、詠美と出会った。 彼女は郁未を待ち伏せていたらしい。顔を真っ赤にして、はいっと何かの冊子を突き出した。
「これ、あげる。ひょっとしたら面白くないかも…ううん、面白いから! このあたしが 描いたんだから! だから、絶対見てよねっ!」 渡されたのは、綺麗なオフセット印刷の本と、コピー誌の2冊だった。 「こっちは(オフセットの方だ)未夜子さんのことよく分からなくて描いたから、 ち、ちょっと似てないかも。でで、でもね! コピー誌の方はちゃんと未夜子さんを 見て描いたから! そっくりに描けてると思うから!」 どうやらトーナメント会場の何処かでこの本を創っていたらしい。よく見ると詠美の 服はあちこち煤けている。突貫工事だったのだろう。ご苦労なことだと半ば呆れ、何だか 励まされた気になって、郁未は詠美に礼を言った。 郁未はグラスを置いた。 オフセットの方は何人かの合作らしかった。晴香や由衣たちのギャグマンガは彼らの 日常をこっそり観察していたのではないかと思えるほどよく出来ていた。 「…さて」 もう一冊のほう、コピー誌を手に取る。ページをめくろうとした郁未の動きが止まった。 「ホント、似てる。よく描けてる」 そこに居たのは、未夜子と郁未。手を繋いで、屈託無く笑い合っている。 またページをめくった。 クレヨンタッチの食事の風景。あたたかな思い出。 美味しかったクリームシチュー。 待ちわびた母親の、思い出の手料理。 テーブルで待ち遠しそうにする郁未。まるで歌っているかのように大きな口を開けて。 "母さん、お腹空いたよ"
お鍋を持った母親もまた、スキップをするように料理の腕を振るっていて。 "もうすぐよ、待っててね" 「母…さん…」 もう、彼女は居ない。居なくなってしまった。僅かに残る母親の感覚を確かめようと、 自分の身体を抱きしめてみる。 …駄目だった。哀しさしか残らなかった。 「ち、ちょっと、あれ」 急にペースを上げだした郁未に、由依が怯えた声を出した。 見かねて止めに入る葉子。 「郁未さん、あんまり飲み過ぎると」 「うるさいわね! ほっといてよっ!」 怒鳴りざま、ぐーッとあおる。もう何杯グラスを空にしただろう。 母さん…母さん…どうしていつも…私を置いて行っちゃうの…? ぎゅっと顔の筋肉が歪んでいくのが分かった。 このままだと泣いちゃう。子供みたいに。 郁未はカウンターに顔を突っ伏した。 「…晴香、煙いよ」 「え?」
郁未の言葉に、由依はカウンターに放り出されたままの煙草を見、首を傾げる。 「晴香さん、煙草吸ってないですよ…」 葉子が由依の肩をそっと叩き、静かに首を振った。 微笑む晴香。そっと煙草を手に取る。 「ごめんね、郁未。何だかがまん出来なくて」 郁未の身体が小刻みに震えた。 「目に浸みるなぁ。何だか煙がさぁ」 「ごめんね」 晴香は何度も謝りながら、カチリと煙草に火を点ける。 「ごめんね、郁未」 「ホント浸みるんだから…勘弁してよ…もう…」 「アハハ、ホントにごめん」 そんな二人を由依と葉子は優しげに見やり、それから顔を見合わせて微笑み合った。 [Fin]
>>185-189 煙が目にしみる。どっかで聞いたようなタイトルだけど、よくあるパターンだけど、
これが精一杯、許して(;´_`;)
最後に、MOONのファンに、心より感謝を!
MOON.勢はこれで敗退… が、あの4人の関係はこんな感じで続いていくんでしょうかね。 本編だと葉子さんが絡まないから、なかなか想像し辛かったんですが。
おおう、これは!
>>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>146 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152 >>153 琉一さんのは、エキシビションのも含めいくつか読ませていただきましたが、
この作品が一番印象的でした。
琉一さんが抱かれているであろうもろもろの感情が、
素直にぶつけられていてとても好印象です。
もうひとつ欲を言えば、それらをもう少し整理して、
お話としてすっきりとさせた方が私の好みです。
これからも、こんなお話をお願いします。
追記
「意志や感情を持つ機械――」
自分では、それは人間と同義です。
>>155 >>156 >>157 >>158 >>159 >>160 人間というのは、矛盾に満ちた生き物ですね。
論理的に物事を組み立て、それに沿って行動できる。
一方、感情だけでその場の指針を決定づけたりもする。
自分では普段気が付かないそんな矛盾を、
セリオの思考という形で表現してみせる。
話の書き始めが秀逸です。
おやっと感じてから、そこから話に引き込まれました。
ただそれだけに、本スレの投下の仕方にはもう一工夫あったかも。
一コラムだけ投下して、「続きはこちらで……」というやり方の方が
良かったと思います。
>>185-190 なにがしだよもんさん、そして他力本願寺さん、ありがとうございます。
MOON.勢は全員敗退しましたが、最萌戦での戦いは本当に誇れるものだったと
思っています。
ただ自分が最萌戦で支援できたMOON.キャラは、未夜子さんだけだった(トーナ
メントに気づくの遅かったのもあるんですが)のが今更ながら心残りです。
この最萌戦を通して感じたんですが、MOON.って、正直、鍵の中では一番知名
度低いし、マイナーで、不遇だと思っていたんですが、支援される皆様を見て、
MOON.ってこれだけ愛されている作品なんだと再認識できました。
それがすごくうれしかったです。
もうトーナメントではMOON.勢の試合はありませんが、MOON.というゲームは
これからもいろんな人に愛されて、さらに、新たにやってみよう、という方も
おられるでしょうし、それだけでもう自分は満足です。
長くなって申し訳ないですが最後に、MOON.に投票して下さった皆様、熱い支援
をして下さった皆様、本当にありがとうございます。そしてお疲れ様です。
それではこれで。
乱文になってすいませんでした。
場を、お借りする。 宿題のお出かけセリオ、上がる目処がついたのじゃが、Part1〜6はリンクで Part7、8を実弾投入という形で構わんじゃろうか。 全部連続で上げた方が読みやすかろうとは思うんじゃが、なにせ、30レスオーヴァーになるのでのう。 とりあえず、あさっての0200時くらいに上げるつもりなので、ご意見あったら頂戴じゃ。 自垢はちょっと無理。
>>195 あさって(2/1)、ではなく明日(1/31)、じゃった。
>>163-182 キャラを活き活きと動かすのには成功してると思う。
特徴をよく掴んでるというべきか。
本編の一部みたいなシチュエーションで、
このキャラならこう動くだろうなっていう感じはよく出てる。
会話主体の進行も、そういうものだと考えれば長さのわりにテンポは悪くない。
ただ、シチュエーション止まりになってるのが少し惜しいな。
シーンごとに見ればなかなかなんだが、一つのストーリーとして流れをみると粗がある。
起承転結が無いというか、作中でのキャラの動機が見えてこない。
良いモノは持ってると思うから、後は因果関係の流れにメリハリを付けると良いと思う。
あとちょっと記憶に自信がないんだけど、夏休みは簡単に明けちゃって良かったっけ?
オフィシャルは時間軸が二本あるからややこしいんだが。
>>185-189 トーナメントならではのSSだね。
本スレでの試合を「シナリオ」に見立てるとしたら、MOON編のエピローグって感じかな。
MOONのキーである母親が最終戦に残ったのは天の配剤と言うべきか。
最終戦の余韻を上手く引いた上で、MOONらしく郁美と母親の関係でオチを着ける…。
んー、綺麗にオチてると思う。
エピローグにインパクトはいらないし。
本スレの余韻と明日につながる予感が見えれば充分。
>>195 名無し坊氏
失礼しました。感想こちらに書けばよかったですね。
あまりキャラスレ以外見ないもんで……
期待しつつマターリと待たせていただきます。
お出かけセリオPart 7 決勝戦(1/5) 「やぁ、セリオ、藤田君」 決勝戦開始まで数時間。控え室でくつろぐ俺たちの前に、長瀬のおっさんが現れた。・・・・・・相変わらず覆面したまんまだよ、この人。 「ミスターX・・・」 セリオが、息を飲む。 自称ミスターXはそれに構わず、手近の椅子に腰をかけた。 「決勝進出おめでとう」 「ありがとうございます」 セリオは、自称ミスターXの目をまっすぐに見つめて答えた。 「どうかね、セリオ。君はここまで、心をこめて戦い抜いて来られたかね?」 言われたセリオは、ちらっと俺のほうに視線を送り、そして、笑顔で答えた。 「はい。そうでなければ、決してここまで来ることは出来ませんでした」 「・・・・・・いい笑顔だ」 覆面越しの、自称ミスターXの目が細められる。 「では、もはや私から言うべきことは何もないな。決勝戦思う存分闘いたまえ」 「はい」 「残念だが、私のメイドロボは、既に負けてしまった。最初に大口を叩いておきながら、お恥ずかしい次第だが ね。決勝で当たるマルチは強い。頑張りたまえ」 それだけ言うと、自称ミスターXは席を立った。 「では、失礼する」 「ちょ、ちょっと待ってくれ」 扉を開けて出て行く自称ミスターX、長瀬のおっさんを、俺は思わず追いかけた。
お出かけセリオPart 7 決勝戦(2/5) 呼び止めたことを気にもとめず、そのまま扉から出て歩いて行く長瀬のおっさん。 控え室から、少々離れたところで追いついて、俺はもう一度声をかけた。 「長瀬のおっさん」 「何かね、藤田君」 長瀬のおっさんは、ようやっと覆面を取って、にやりと笑った。 「どういうつもりなんだ。悪ふざけが過ぎるんじゃねぇか?」 「どうやら、セリオは本気で気がついてないようだね」 「だから言ってんだろう」 「それで良いんだ。私の言葉は、セリオにとっては絶対的な命令になってしまうからね」 謎めいた言葉をつぶやく長瀬のおっさん。 「藤田君、メイドロボの心は、所詮プログラムに過ぎないと思うかね?」 「そんなわけはないだろ」 何を今更、と思いつつ俺は即答する。 「そう思う人間にしか、メイドロボの心は育てられないんだよ。開発者である私に出来るのは、ほんの少し、 その手助けをしてやるくらいのものだ」 寂しげにも見えるその笑みに、俺は、かけるべき言葉を失った。 「前に藤田君が推測したとおり、セリオの感情プログラムは成長型だ。感情プログラムというものは、メイドロ ボの『心の素』でしかない。つまり、メイドロボの心は、感情プログラムの成長の結果、生まれてくるものだ、 と私は推測している。だが、同じ感情プログラムを搭載したからといって、必ず心が生じる、というわけでもない」 つまりは育て方ひとつなんだよ、と長瀬のおっさんは言った。 「私はこう見えてエゴイストでね。せめて、直接この世に送り出した娘ぐらいは幸せにしてやりたい。君なら、 うちの娘たちを幸せにしてくれるだろうと思っているんだ」 長瀬のおっさんは、すっと、右手を差し出した。 「今後とも、セリオとマルチをよろしく頼むよ、藤田君」 「ああ、任せとけ」 俺はおっさんの手を握り返し、力強く頷いてみせた。
お出かけセリオPart 7 決勝戦(3/5) 三位決定戦があるという長瀬のおっさんと別れて控え室に戻ると、おなじみ応援団ご一行様が顔を見せていた。 「ちょっと、ヒロ、どぉこ行ってたのよぅ」 俺の顔を見るなり、早速志保が絡む。 「ちょっと野暮用でな。それよりお前ら、三位決定戦は見なくていいのか?」 「そぉんなことより、セリオを励ます方が大事に決まってるでしょうが。それくらい理解しなさいよね」 呆れたように志保が言う。こいつはほんとに口が減らない。だけど、本気で応援しに来てくれてるのはわかるか らな。大目に見てやる。 「私の妹同士で決勝だなんて、なんだか複雑です。どっちにも負けて欲しくないです」 実にマルチらしいコメントに、俺は思わず苦笑する。 「セリオ、はい」 田沢が差し出したのは、白いリボンだった。セリオは、両手で受け取って、田沢を見上げる。 「昔、私が使ってたやつなんだ。今はもう、短くしちゃったから使ってないけど。掃除するのに、髪の毛まとめ てないと大変でしょ?よかったら使って」 セリオは、リボンと田沢の顔に何度か視線を往復させると、立ち上がってぺこんと頭を下げた。 「田沢さん、ありがとうございます。大事に使わせていただきます」 「いいのよ、セリオ。私に出来るのはこれぐらいだもん」 田沢は、リボンを受け取ったセリオの手を両手で包み込んだ。 「頑張ってね、セリオ」 「はい」 セリオは、やわらかく微笑んで、田沢に応えた。 そして、いよいよ、大会最後の呼び出しアナウンスがかかる。
お出かけセリオPart 7 決勝戦(4/5) いつもの通り、寺女の制服に身を包んだセリオは、田沢のリボンで髪をまとめ、あかりのエプロンをつけた。 準備は完了。 応援団一同の声援を受けて、セリオ、綾香、俺の三人は決勝の場へと向かう。 ジャム対ピースの三位決定戦の終わった午後二時。決勝戦のセレモニーがアリーナで始まる。 セレモニーといっても、たいした事をやるわけじゃない。 場内アナウンスで紹介があった後、自分のコーナーに向かって入場行進するだけだ。 アリーナへ向かう通路で出番待ちをしていると、三位決定戦を終えたばかりのジャムが、パートナー氏と一緒に やって来た。 「こんにちは、セリオさん、藤田さん」 優雅に一礼するジャム。 「どうだったんだ?三位決定戦」 「はい、おかげさまで、勝つことが出来ました。セリオさんとの試合の経験が力になりましたので」 俺の質問にジャムはいい笑顔で応えた。また綾香に叩かれたくはないので声には出さないが、ほんと萌えだ。 「セリオさん、決勝戦、頑張ってくださいね。わたくしの分まで」 「はい、ありがとうございます」 セリオが一礼すると、ジャムとパートナー氏は観客席の方へ去っていった。 どうやら、マルチサイドの入場が始まったらしい。アリーナからは、大きな歓声が聞こえてくる。 「セリオ選手サイド、そろそろ出番ですので、準備お願いします」 係員から声がかかる。 「セリオ、綾香、行くぞ」 「はい」 「ええ」 アリーナへのドアが開く。とどろくような歓声。俺たち3人は、その中へと足を進めていった。
お出かけセリオPart 7 決勝戦(5/5) ついに、ここまで来た。 大会会期はたった二日、セリオが出場を決意してからでもまだ二週間の出来事だというのに、俺は感慨無量だった。 割れんばかりの歓声の中、俺たちはゆっくりと、アリーナ中央の『回廊』へ進む。 隣を歩くセリオも、心なしか緊張しているようだ。 アシスタントの綾香は一足先にコーナーにおさまり、俺とセリオだけが一段高い『回廊』に昇る。 そこには、既にマルチが待ち構えていた。隣には、長瀬のおっさんの言っていた新米研究員と思われるパートナー が立っている。彼は、マルチに耳元に何かをささやくと俺たちに一礼して、『回廊』から下りていった。 初めて間近で見るHMX−12B、マルチ2nd。あのマルチとの見た目の違いは、髪が少々長いくらい。 「はじめまして、藤田さん、セリオさん」 ペコリとお辞儀をして、マルチは言った。 「ずっと、お会いしたいって思ってました。それが、こんな晴れ舞台で実現するなんて、夢みたいです」 はきはきと言葉を継ぐマルチ。どうやら、あのマルチよりは積極的な性格のようだ。 「私も、お会いできて嬉しいです、マルチさん」 セリオも丁寧にお辞儀をする。 「本当は、お姉さんのマルチさんにもお会いしたかったんですけど・・・」 ちょっと残念そうな顔をするマルチ。素直なところは同じなようだ。 「あいつなら会場に来てるから、すぐに会えるぜ。でも、まぁその前に」 「はい。試合、ですね。よろしくお願いします、セリオさん」 「こちらこそ」 またお辞儀の応酬を始めた二人に、俺はこの大会最後の決め台詞をかけた。 「じゃぁ、二人とも、思いっきり楽しんで来い」 「「はい」」 俺が回廊を降りる。それを待ちかねたかのようにアリーナに響く、試合開始の合図。 「始めましょうか、マルチさん」 「はい、セリオさん」 ・・・・・・そして、二人の少女たちによる、世界最高のメイドロボの名を賭けた『お掃除』が始まった。
お出かけセリオPart 8 Epilogue(1/4) 機嫌の良さそうな鼻歌と、鼻をくすぐる味噌汁の匂いで目が覚めた。 大きく伸びをして時計を見る。 AM10:00。 日曜日に起きるには丁度良いくらいの時間だ。 俺はあくびをかみ殺しつつ階段を降り、鼻歌と匂いの源、キッチンを覗いて声をかけた。 「おはよう、セリオ」 「おはようございます、浩之さん。そろそろ起こしに行こうかと思っていました」 振り向いて笑顔で答えるセリオ。 「茄子の味噌汁か、いいねぇ」 「はい、浩之さんの好物だと、あかりさんに伺いましたので。3分ほど待ってください」 「んじゃ、顔でも洗ってくるわ」 大会が終わって一週間。セリオはうちで生活を続けていた。セリオの希望に対して、週に2日ほど研究所と来栖 川家に顔を出すことを条件に、綾香と研究所のお許しが出たのだそうだ。 俺としては願ったり叶ったりという感じだし、何よりマルチが喜んだ。あかりはあかりで、 「妹がもう一人増えたみたいだね」 などと言ってるし。 キッチンに戻ると、テーブルには既に朝食が並べられていた。 茄子の味噌汁に、焼鮭、小鉢にサラダと言う、オーソドックスな朝食。 「いただきます」 いつもの習慣で、箸を持って両手を合わせてから、俺は朝食を食いだした。 「美味いぞ、セリオ」 「ありがとうございます」 俺が誉めると、セリオは本当に嬉しそうに微笑む。
お出かけセリオPart 8 Epilogue(2/4) メイドロボチャレンジが終わってからは笑顔の事が多いセリオだが、今日はなんだかやけに機嫌が良い。 「なんか、やけに機嫌良いな、セリオ」 「はい。メイドロボチャレンジの時の写真が出来上がってくるそうですので」 そう言えば、昨日電話してきた志保が、そんなことを言ってたな。今日の午後に、みんな集めて持ってくるとか。 「そうか。でも、ほとんど志保が撮った写真だからな。あんまり期待しない方がいいと思うぜ」 「そうでしょうか」 微笑みながら訊き返してくるセリオ。俺は、こっくりと頷く。 「第一、素人のくせに、どっかから借りてきたとか言う一眼レフなんか使ってただろう?デジカメにすれば扱い は簡単だし、失敗してもすぐ撮り直しがきくし、メールのやり取りで配布も出来るってのにな」 「志保さんは、記録よりも記憶に残したいのなら、データではなくて写真が一番だとおっしゃっていました」 む、志保のくせに味なことを言うな。記録よりも記憶、か。 「セリオも、そう思うか?」 「はい。今回のメイドロボチャレンジは、私にとって一番の思い出になりましたから」 そうか、となれば、あれが必要だな。 「よし、セリオ、出かけるぞ」 「志保さんたちがいらっしゃいますが・・・」 「来るのは午後だろ?セリオの思い出を保存するのに必要なものを買いに行く余裕くらいはある」 「私の思い出を保存するのに必要なもの、ですか?」 首を傾げて考えるセリオ。どんなことでもサテライトサービスで一発回答のセリオが考え込む光景は、そうは見 られるもんじゃない。 「わかんないか?アルバム、だよ」
お出かけセリオPart 8 Epilogue(3/4) 着がえた俺とセリオは、連れ立って近所の写真屋を覗いた。 大仰な分厚いものから厚紙表紙のちゃちなものまで、様々な種類のアルバムがある。 その中からセリオが選んだのは、A4サイズのアルミの表紙のアルバムだった。ポケット式ではなく、自由にレ イアウトできるものだ。 まだ中身の写真が無いそのアルバムを、嬉しそうに胸元に抱えながら歩くセリオ。 途中、志保、雅史、田沢の3人とばったり会って、そのまま俺のうちに向かう。 写真に期待しているのか、やけに嬉しそうに田沢と話し込むセリオ。 俺はちょっと心配になって小声で志保に確認を取った。 「おい志保、写真、どうだったんだ。ちゃんと撮れてんのか?」 「ばっちりよ、って言いたいところだけど、今まさに取って来たばかりだから、まだ中身見てないのよねぇ」 何となく不安に襲われる俺。 「なによ、そのじとっとした目は」 「いや、志保が身の程知らずにも一眼レフなんぞで撮った写真見て、セリオががっかりしなけりゃいいんだがな」 「なによう、失礼ね、って言いたいところだけど、実は使い方わからなかったんで、雅史に撮ってもらってるのよ」 「そりゃ安心だな」 間髪入れずに言った言葉は志保に気に入ってもらえなかったらしい。 結局いつも通り、志保と俺の言い合いを雅史がなだめる、と言う展開が俺の家の前で綾香に合流するまで続いた。
お出かけセリオPart 8 Epilogue(4/4) あかりとマルチも呼び寄せて、フィルム3本分の写真の大公開。 会場で売っていた弁当を撮っただけのわけのわからんものから、控え室の風景、対戦中の楽しそうなセリオの姿 を的確に捉えたものまで、まさに玉石混交と言った感じだ。 みんながあーでもない、こーでもないと言いながら見ている中、セリオは一枚一枚の写真をいとおしげに、丹念 に見ている。 「気に入った写真はあったか?セリオ」 俺が声をかけると、セリオは写真から目を上げた。 「はい。お気に入りが多くて、選ぶのに困ってしまいます」 「いいわよ、セリオ。気に入ったのはどんどん持ってっちゃって。焼き増しも出来るんだし、何より、セリオが 主役だったんだから」 「はい」 志保の言葉に頷いて、またセリオは一枚一枚、丁寧に見て行く。 写真に集中していたセリオが顔を上げた。 「浩之さん、質問があるのですが」 「何だ、セリオ」 「アルバムに整理する時は、時系列に沿って整理するべきなのでしょうか」 そんなことを考えたこともなかった俺は、腕組みをして少し考え込む。 「ま、そういう整理の仕方をする人が多いかな。ただ、俺なら、一ページ目は一番気に入った写真にするな」 「一番気に入った写真、ですか」 俺の言葉を繰り返したセリオは、またしばらく丹念に見続け、やがて一枚の写真を取り出した。 「一ページ目は、この写真にします」 それは、大会終了直後に撮られた一枚だった。 前列に、セリオを中心として二人のマルチとジャム。後列に、俺を中心として綾香と応援団一同。 いわば、メイドロボチャレンジを通してセリオに心を分け与えた人たちの集合写真。 「私の一生の宝物です」 写真を貼った銀色のアルバムを抱きしめて、セリオは心からの笑顔を見せた。 ・・・・・・それは解き放たれた、プログラムではない、心。
>>201-209 お出かけセリオ、一巻の終わりじゃ。
最後の最後に改行エラーが出たので、エンドタイトルは削ってしまったのじゃ。
ほんとに、萌え尽きた。次の支援までにネタと体力を溜めねばのう。
test
212 :
偽駄スレ管財人 :02/02/02 14:21 ID:FDbCWi52
test
>>210 乙彼〜、次も(;´д`)ハァハァしながらお待ちしております。
本すれで誘導されたので、 何かを書いてみるテスト。 『茜の櫛』 「茜、いつもそれ持ち歩いているよね」 茜がかばんの中から櫛を取り出すのを見て、 あたしは感心したように呟いた。 「…とても大切な櫛なんです」 それだけ言うと、茜はゆっくりと髪を梳きだした。 綺麗に流れる淡い栗色の髪、 丁寧に梳いてゆくつげの櫛。 あたしはただその様子を眺めながら、 「どうしてそんなに大切なの?」 そう、茜にたずねた。 すると、茜は、 「おばあさんからもらった大切な櫛だからですよ」 そう、笑顔をあたしに向けながら髪を梳いていった。
いまから投下します。3レスくらい。
てすと
いつもの朝、部屋に人の入ってくる気配で目が覚める。もちろん長森だろう。 …ゆさゆさ、ゆさゆさ… 「浩平、起きないと遅刻します」 珍しい。いつもなら速攻で布団をはがされるのに。慈愛の心にでも目覚めたのだろうか。 だがここで素直におきてはいけない。俺が素直に布団から出たら珍しすぎて槍が降っても おかしくない。世界の平和のためにもここは粘らなくてはいけない。 「…うー、長森ぃ、そんな普通の起こしかた目が覚めないぞぉ」 それにこの朝のくだらないやり取りというのは長森と俺にとって毎朝欠かせない一種の 通過儀礼なのだ。…違うか。 「………」 「もっと奇抜で独創的に起こしてくれぇ」 うむ。だんだん意識が遠くなって来たぞ。この二度寝に入りかけのぼんやりした意識の 状態が大変気持ちいいのだ。 「…たとえば、どんな、ですか?」 「たとえばだなぁ、…そうだ、キスしてくれるとか」 「………」 しまった、このネタはもう使ったんだったっけ。同じネタを二度使うようでは芸人として失格だ。 まあいい。俺は芸人ではない。 「きっとどきどきして目が覚めるぞ」 「…わかりました」 「へっ?」 誰かが覆い被さってくる気配。 唇にやわらかい感触。 一気に目が覚めた。上体を起こした俺の前にちょっと顔を赤くした茜がいた。
「…目は覚めましたか?」 「あ、茜?なんで?な、長森は?」 「…長森さんでなくて残念ですか?」 しまった。 「そ、そんなことあるわけないじゃないか」 「そうですか」 まずいおこってる。 「ほんとだぞ。今の俺ならパリ−ダカールラリーにマラソンで参加できそうなくらい嬉しいぞ」 「…そのたとえは良くわかりません」 「じゃ、じゃあ、H2Aロケットで月までいけそうなくらいだ」 「…もっとわかりません」 「じゃ、じゃあ、えーっと…」 考えていると茜がくすっっと笑った…ような気がする。 「…もういいです。遅刻しますから、支度してください」 「は、はい」 「玄関で待ってますから」 「わかった、すぐ行く」
外は今日もいい天気だった。長森は先に行ったらしい。 「で、なんで今日は家まで起こしに来たんだ?」 「…ちょっと早く目が覚めたから」 「…そうか」 「…はい」 とはいうが、茜の家から俺の家までそれなりにあるはずだ。相当な早起きである。 たぶん今日早起きするために昨日は9時くらいにでも寝たのではないだろうか。 そういうやつである。 「なあ、茜」 「なんですか?」 「明日からは二人で待ち合わせて一緒に登校しようぜ」 「………」 そうだな、長森は幼馴染だけど…ちゃんとけじめはつけなきゃな。 「俺も一人で起きれるようにするからさ」 「…はい」 …そういったときの茜の笑顔は間違いなく最高だった。 「…寝すごしたら嫌です」 「…がんばります」 「とっても不安です」 「………」
本スレ、次が始まりそうだから、 ここに退場二次小説落としちゃうね。 退場二次小説 『親愛なる夏の町の少女へ』 「終わったね、茜」 「はい、今回も終わりました」 長い23時間に続く戦いが、今終わった。 だんだんと人がはけてゆく会場。 あたしたちはゆっくり手を取り合って、 控室へと戻ろうとしたところで、観鈴ちゃんがやってきた。 「茜さん、詩子さん、どうもありがとう」 「いいえ、こちらこそ、楽しかったですよ」 「うん、あたしも楽しかったよ」 観鈴ちゃんはあたしと茜のつないだ手の上に右手を乗せる。 そして、茜に顔を向けて、 「そのリボン、あげるねっ」 ポニーテールの茜の髪を指差して伝える。 「はい、では、そのゴムも差し上げますよ」 みつあみになっている観鈴ちゃんの髪を止めているゴムを指差して茜は伝える。 「にははっ、また遊ぼうねっ」 「はい、また機会があったら是非にでも」 「あたしも楽しみにしているよっ」 あたしたちは手を振って別れる。 いつまでも嬉しそうに手を振っている観鈴ちゃんがとても印象的だった。 ……おしまい……
>>221 こんなところにひっそりと載せられているとは……
本当にお疲れさまでした。
223 :
名無しさんだよもん :02/02/03 13:43 ID:JYxdkICf
855 名前:去りゆく者へ 投稿日:02/02/02 23:43 ID:J/bmU03M 退場のアナウンスと共に、とぼとぼと出口に向かう観鈴。 観客席に近づいたそのとき。 「…ちゃぁーん!」「観鈴ちーん…!!」 少女ははっと声の方を見上げた。 沢山の人が、フェンスに張り付いていた。金網をしゃんしゃんと揺らし、口々に観鈴の名を呼んでいる。 そのうちの一人が、とりわけ大きな声で叫んだ。 「観鈴ちーん! 好きだぁぁー!! 友だちになってよぉぉ!」「ぼくもー!!」「わたしもーっ!!」 とも…だち…? 観鈴は顔を上げ、観客席をぐるり見回す。本当に沢山の人がそこに居た。 観鈴に向けられる彼らの言葉一つ一つに、熱い想いがこめられているのが分かった。 ともだち…こんなにいっぱい。 感極まり、にははっとテレ笑いする以外何も出来なかった観鈴の身体が痙攣を始めた。 あの発作だった。ぼろぼろと涙がこぼれだし、今にも泣き出しそうになる。 だが。 「うわぁぁぁーんっ!! 観鈴ちん、好きだぁぁーー!!」 えっ。泣き声が迸りかけた観鈴本人がビックリして息を呑んだ。ちょうど、背中をどやしつけられて、しゃっくりがとまったときみたいに。 さっき観鈴に友だちになってと言った男の子が、人目も憚らず大声で泣き出した。 それはたちまち全員に伝染して、トーナメント会場は泣き声の大合唱に埋め尽くされた。 みんな、泣いた。訳も分からず、嬉しいような、悲しいような、不思議な感情にとらわれて。 試合には負けたかも知れない。けれど彼女には、こんなにたくさん友だちが出来た。 それは最高に幸せな記憶ではないかと…そう思うのだ。 作者さん、勝手に載せて悪いですがココに貼っときます。
茜戦では支援できなかったので、ブロック決勝用に。 2回戦で投下した支援の続きですので、先にそちらを書かせて 下さい。既出でごめんなさい。 (3/3)、つづけて新規のやつ(4/4)です。
『こんにちわ、なの』 「……こんにちは、澪さん」 澪さんと偶然会ったのは、いつもの空き地へ向かう途中だった。 『どこへ行くの?』 「……いつものところです」 『今日は寒いの、ずっと立っていると風邪ひいちゃうかもなの』 「大丈夫です、慣れてますから」 澪さんは、いつものように無邪気に、“話かけて”くる。 『どうしていつもあそこに居るの?』 そして無邪気に―――無神経に、そう聞いてくる。 澪さんと知り合いになったのは、“あの人”がまだこの世界にいた頃だった。 最初はただ挨拶を交わすだけの間柄だったけれど、次第に親しくするように なり。 そして“あの人”が消えてからも、その関係は続いている。 素直で、無垢で、純粋で。 私は、上月澪というこの少女が…… 大嫌いだった。
空き地へ向かう私の後を、ずっとついてくる澪さん。 「ついてこないで」 そう言いたくなるのを我慢する。 無神経さに苛立つ。 この気持ちを直接ぶつけることができたら、どんなにか楽になることだろう。 ……わかっている。 そんなのが、ただの八つ当たりだということくらい。 だけど苛立つ気持ちが消えるわけではない。 澪さんは、人の心に土足で踏み込んでくる。 何事にも前向きで、一生懸命が故に。 あの人もそうだった。あの人も、しつこいくらいに私に付きまとって、私の 心に入り込んできた。 澪さんは、あの人に似ているのだ。 姿形ではなく、その内面が。あまりにも、似ているのだ。 だからこそ、大嫌いだった。 澪さんと“話し”ていると、あの人を思い出すから。 今は居ない、帰ってくるかどうかわからないあの人を、思い出してしまうから。 あの人がもう居ないことを、思い知らされてしまうから。
「澪さん、あなたは……」 『なになに?』 言いかけて、躊躇う。 聞いてどうするというのだ。 だが、私の口は躊躇う私の意思に反して、言葉を紡いだ。 「この世界が好きですか?」 『え?』 「答えてください、あなたは、この世界が好きですか?」 唐突な問いだったのだろう、澪さんはしばらくきょとんとした顔をし。 そして、“言った”。 『大好き、なの』 ああ。 やっぱり、聞くのではなかった。聞くべきではなかった。 答えなど、わかりきっていた。 彼女ならきっとそう言うだろう。そして、あの人もきっと同じ事を言うに 違いないのだ。 だから私は…… この子が、大嫌いなのだ。
『とっても、大好きなの』 続けてそう書いた澪さん。 不意に、私は嚇っとした。 「どうしてですか! どうしてそんなこと笑顔で言えるんですか!」 頭の中が真っ白……ううん、真っ赤になって。 「あなたは喋れないでしょう!? 生きていくの、辛いでしょう!?」 自分が、いま何を口走っているのかも分からぬままに。 「なのに、どうして!」 私は、人として最低の言葉を澪さんにぶつけていた。 叫んだ後、少し冷静になって。 自分の言ったこと、口に出してしまったことがどれだけ酷いことかわかって。 自己嫌悪に押し潰されそうだった。 澪さんに申し訳なくて、自分が情けなくて。 このまま、消えてしまいたかった。 『茜さんは、この世界が嫌いなの?』 だから、澪さんがそうスケッチブックに書いて見せた言葉に、気付くのが遅 れた。 「え……?」
『答えて』 『茜さんは、この世界が嫌いなの?』 あんな醜い言葉をぶつけた私に。 どうしてあなたは笑顔でそんなことが聞けるの……? 「わ、私は……」 「嫌いです」「こんな世界、あの人のいないこんな世界、大嫌いです」 私は、すぐさまそう口に出すつもりで ――言えなかった。 あの人のいた、この世界。 あの人と心を、身体を重ね合わせたこの世界。 私がこの世界を嫌いになってしまったら、あの人はどこに帰ってくればいいの だろうか。 何も言えなくなってしまった私に、澪さんは微笑みながらスケッチブックに ペンを走らせた。 『生きていくのは、つらいの』 『この世界は、優しくはないから』 『でも、それでも』 『私はこの世界が大好きなの』 笑顔で、笑顔のままで。 澪さんは、泣いていた。
「あっ……」 とめどなく溢れる涙を拭わぬままに。 それでも笑顔で、澪さんはペンを走らせ続ける。 『だから茜さんも、嫌いにならないで』 『この世界を嫌いにならないで』 「あっ、ああっ……」 『この世界は、優しくないけど』 『きっと、悪いことばかりじゃないの』 「ああっ、あうぅ……」 『ね?』 「う、あ……うっ…うあああぁぁぁ!」 気付けば。 私は澪さんを抱きしめ、泣き叫んでいた。
この世界は、優しくはない。 あの人自身を、皆の記憶に残ったあの人を、そして澪さんの声を。 この世界は、全て奪い去っていった。 私はこの世界を好きにはなれない。 あの人のいないこの世界。 私はこの世界を嫌いにはなれない。 あの人のいたこの世界。そして、いつか帰ってくるであろうこの世界。 私と同じように、ううん、きっともっと辛い十字架を背負っているであろう 澪さん。それでもこの世界を好きだと胸を張って言える澪さん。 強い人だ。こんなところまで、あの人にそっくり。 「澪さん」 『はいなの』 「私と、友達になってくれますか?」 澪さんはしばらくきょとんしていたが、やがてにっこり笑ってスケッチブック にこう書いた。 『ずっと前から友達なの』 「はい、友達ですよね」 『茜さん、変なこと言うの』 「そうですね、変です、私」 お互いに涙でぐちゃぐちゃになった顔で、笑いあう。 私はきっといつか、この世界を好きになれると思う。 優しくはない、この世界を。
みつきさん、おつかれさまです。 あたしからはみさきさん支援二次小説をこれから投下します。 全部で4ないし5レスです。 どうぞよろしく。
『風の見える日』 「がたんっ」 大きな音を立てて重い扉は開く。 刹那、わたしに向かって強い風が吹きぬける。 3月の、山の方から下りてくる風はまだ冷たく、 急激に体温が奪われる感覚に襲われる。 扉を急いで閉めると、穏やかになる風。 それと共に小さな歌声が聞こえてくる。 あれはみさきの歌声、わたしは柵のそばに居るみさきに近づいてゆく。 「みさき、やっぱりここだったのね」 「あ、雪ちゃん」 ぱっと歌を止めてわたしに顔を向けるみさき。 顔はこっちを向いているけど、その瞳は少しだけわたしの瞳から外れている。 「雪ちゃんも景色を眺めに来たの?」 その、胸元に向けた視線のまま口を開く。 「誰かさんがサボってるから迎えに来ただけ」 「もしかして、私かな」 「もしかしなくてもそうよ」 わたしは溜息混じりに小さく呟いた。 1/4
もうすでに母校となったこの学校。 もうしばらくは来ることもないと思っていたけど、 演劇部の子たちがどうしても手伝ってほしいことがある、ということで せっかくなのでみさきも連れて母校に来ていた。 制服ではない、私服での登校、少し恥ずかしかったけど、 上月さんをはじめ、みんながわたしたちの私服姿を褒めてくれたのは嬉しかった。 みさきはそのまま再び山の方へと視線を向ける。 わたしもその横に並んで山を眺めている。 茜色に染まる木々、そして、雪。 みさきは再び、小さく歌を歌い始めた。 いつもと同じ歌、在校していた頃から変わらない歌。 いつも小さな声で歌うから、あまり内容はわからないけど、 なんとなく、みさきらしい歌だなって思っていた。 2/2
「みさき、その歌いつも歌っているけど、なんていう歌なの?」 風の中に小さく言葉を溶け込ませる。 みさきはその歌を止めてちょっと恥ずかしそうな顔をわたしに顔を向ける。 「この歌は『風の見える日』っていう歌だよ」 嬉しそうに、笑顔で、答えを返してくれる。 なんとなくそんなところがみさきらしいな、と思った。 「私、歌は好きだよ」 「うん、わかるわ」 芸術の選択は音楽を3年間取り続けたみさき。 その毎時間、嬉しそうに授業に出ていたみさき。 歌を歌うときも嬉しそうに大きな声で歌っていた。 思い出してわたしは小さく微笑む。 3/3
「私、目が見えないでしょ?」 いつの間にか歌は止まり、視線がこちらに向いている。 穏やかな笑顔のまま、みさきは言葉を続ける。 「だから、感触とか、匂いとか、音とか、そういう情報が大切」 少し強めの風がみさきとわたしの髪を揺らす。 「風は色々な匂い、素敵な香りを運んでくれるから大好きだよ」 みさきは瞳を閉じて、深呼吸をする。 もう少しすれば桜も咲いて、みさきの楽しみがひとつ増えるのだろうか。 早く咲けばいいな、そんな風に思いながらみさきを見つめ続ける。 「音楽は色々な楽しいこと、悲しいこと、嬉しいこと、教えてくれるんだよ」 確かに音楽の持つ力は偉大。 演劇をしていたのでそれは嫌というほど知っていた。 「だから、歌を歌うと楽しくなったり、ちょっと悲しくなったり」 再びみさきは遠くの山へと視線を注ぐ。 「でも、その中でもなんだか元気になれるこの歌が、一番大好きなんだよ」 「そうだったんだ」 みさきの嬉しそうでいて元気な声、 わたしはみさきの歌を聞くために再び柵の際で横に並んだ。 「雪ちゃん、横に並ばれると私の下手な歌が聴こえちゃって恥ずかしいよ」 「いいじゃないの、減るもんでもないし」 「そういう問題じゃないよ」 「いいから、わたしは居ないものだと思って」 「うー、ほんと恥ずかしいんだけど…」 しぶしぶといった感じでみさきは再び口を開く。 みさきの優しい、それでいてやわらかい歌声は、 わたしの心まで元気に、そして優しくさせてくれるような、 そんな素敵な歌声だった。 4/4
以上です。 レス番間違ってるような気ががするけど、 気にしない気にしないっ♪ お騒がせしました。
239 :
あぁっ、綾香さま! :02/02/04 21:32 ID:gpl2KQVA
綾香さま支援で、ついでにvsすばるの格闘書きたいと思ってSS書いて みたら、なんか、こみパのキャラが暴走してしまい、肝心の綾香さまが ちょー脇役になっちゃいました・・・途中で断念したのを最後まで書いて みると、更に影が薄くなっちゃって・・・でも、勿体無いのでこちらに 上げさせて貰いますの☆ 全部で4ないし5レスになると思いますの☆
240 :
<綾香inこみパ その1> :02/02/04 21:33 ID:gpl2KQVA
「これが、あの『こみパ』ってヤツか・・・噂に聞く以上にスゲー所だな」 何故か開場前の春こみ会場内を見渡す浩之達。 実は、最萌トーナメントであかりが詠美ちゃん様と対戦して勝った時、残念会に 呼ばれた(半ば強制的に連行されたとも言う^^;)際に、春こみで売り子として 手伝うよう頼まれて、あかりが押し切られて承諾してしまったのである。 和樹や由宇は、そんなの真に受けなくても良い、とフォローしてくれたのだが・・・(^^; 「それにしても、浩之も人が良いわね〜・・・まぁ、おかげで姉さんに頼まれた探し物が出来てありがたいけどね」 「芹香せんぱいの探し物って同人誌?・・・まさか、や○い本とか・・・?」 ドスッ!バキッ! ・・・鳩尾への肱撃ちから掌底アッパー、綾香の2HITコンボが炸裂。 彼女のレベルからすると、軽いジャブ程度と言った所か。浩之は涙目で蹲って悶絶しているが・・・(^^; 「ぐぉぉ・・・俺が・・悪かっ・・・た・・・スマン」 「分かればよろしい♪・・ともかく、錬金術とか黒魔術関係の同人誌って事だけどね ・・・って、いつまで悶えてるのよ。葵とスパーやってるんでしょ、最近?」 「いや本気出されるとまだ全然・・・とりあえず大丈夫、手加減でコレは情けないけどな(^^;」 ようやく立ち上がった浩之に、今度はあかりが情けない声で泣き付いてくる。 「浩之ちゃぁ〜ん、なんか周り中から視線が突き刺さるみたいで怖いよぅ・・・」 「そりゃぁ・・・その格好はヤバイとは思ったけどな・・・」 そう、あかりは詠美ちゃん様のリクエスト(ほとんど命令)で、カードマスターピーチの コスプレをさせられているのである!(爆 丁度そこに、詠美ちゃん様が・・・というか、彼女のスペース前なのだから当然ではあるが。 <続く>
241 :
<綾香inこみパ その2> :02/02/04 21:33 ID:gpl2KQVA
「ちょっとぉ〜っ、アブラうってないで早く手伝いに来なさいよぉ〜っ!ちょおムカツキーっ!」 ピッ♪という効果音付きで、■の中に「怒」文字の入った怒りマークを頭に貼り付けながら やって来た詠美ちゃん様であったが、あかりのコスプレ姿を見るなり、 「超ちょぉ似合うじゃない〜!この超天才・詠美ちゃん様の見込んだとおりカンペキねっ! その衣装、高かったけどゴホービにあげるわ♪」とのお言葉。 本当は某ファミレス店員のコスプレ娘(笑)に実費で作らせたらしいのだが・・・(^^; (それでも一応、気前は良い・・・というか謎の人脈おそるべし!^^;) 「ぁぅぅ・・・恥ずかしくて他所では着れないよぅ・・・」 真っ赤になって半泣きで硬直するあかり。 その背後から、 「ぉお〜っ、イイ!・・グッドだ!まいしすたぁ〜!これでオタク達のはぁとを釘付け!我等と共に世界に君臨しようではないか!」 「えっ?えぇ〜〜っ?!」 パコーン!・・ズルズルズル・・・ 「はいはい!アンタが出てくると話がややこしくなるんだから退場!」 「カタギの他人を無理矢理巻き込むなよ・・それに自分のサークルの準備サボるなよな・・・」 唐突に出てきて唐突に連行されて逝く九品仏大志であった・・・(笑 「ふぅ・・・何だったんだ、一体?」 「これは姉さん来れなくて良かったかも・・・」 唖然として引き摺られて逝く大志を見送る浩之達と呆れ顔の綾香・・・すると今度は反対側から、 「にゃぁぁ〜〜っ、止まらないですぅ〜!ごめんなさいですぅ〜〜っ!」 という悲鳴と共にダンボール箱満載の台車が爆走してくる。 その進路上には自分達がいて、あかりと詠美は硬直している。さらにその先には詠美のスペースが! 避ける訳には行かない事を見て取った綾香が走り出す。 「止めるわよ、浩之!」 「お、おぅ・・・しゃぁねぇな、まったく」 台車に向かって駆け寄る2人。 しかし一足早く、もう一組の二人連れが台車の前に割り込んで来ていた。 <続く>
242 :
<綾香inこみパ その3> :02/02/04 21:34 ID:gpl2KQVA
「まかせとき!ウチが・・・」 「すばるが止めますの〜!」 猪名川由宇、御影すばるの師弟コンビである。 「ぱぎゅぅ〜っ!大影流合気術奥義、流牙旋風投げっ!『飛び出すな!車は急には 停まれないバージョン』ですの〜〜っ!!」 「あかん!スの字、その技は〜〜〜っ!」 由宇が必死で制止しようとしたが間に合わず、すばるの必殺技が炸裂する! 「チッ、しゃぁない・・人だけでも!」 少しアレンジしたのか、真っ直ぐ逆方向に放り投げられようとする台車。 それにしがみ付いていた塚本千紗の首根っこを、間一髪、由宇が掴んで引き離す。 さらに台車に猛ダッシュで追い付いて並走しながら、こぼれ落ちる箱を垂直落下させて行く。 そして通路扉前、十分に速度と高さが落ちてきた所で台車を掴んで引き落とす! ガンッ!・・・トス、トス、トス・・・ 当然、着地で跳ねた箱のフォローも忘れない。 「ふぅ〜〜っ、さすがにコレはキツかったでぇ〜・・・」 肩で息を付きながら独りごちた由宇の元へ、すばるが駆け付けてくる。 反対側の詠美ちゃん様スペースの方では、我に返ったあかりが千紗を介抱している。 綾香と浩之は落ちた箱を整理しているようだ。 「由宇さ〜ん、大丈夫ですの〜?!」 パコーン! 「アホかぁ〜〜っ!見境無く大技つかうんやないわぁ〜〜〜っ!」 真っ先に傍まで来たすばるの頭を由宇が思い切りはたいた。 「ぱぎゅぅ〜〜っ!!ごめんなさいですの・・・」 <続く>
243 :
<綾香inこみパ その4> :02/02/04 21:37 ID:NjG8H5G1
「千紗ちぃが台車にしがみ付いとったん忘れとったやろ? ・・・それに、この台車に乗っとったモンは何や?」 「ぱぎゅぅっ!?・・・同人誌・・・・!」 「そうや、同人誌はウチら同人作家の命や!・・・今度それ忘れたら許さへんで?」 「ぱぎゅぅ〜〜・・・」 己の犯した重大な過ちに気付いたすばるは、しぉしぉと項垂れる。 「まぁ今回は許したるさかい、そんな落ち込まんとき・・・次は無いけどな」 「ぱぎゅぅ〜・・・本当にごめんなさいですの。肝に銘じますの!」 諭すように、(しかし少しキツイ落ちを付けながら)撫でるように頭にポンと 手を置いた由宇に、すばるは健気に頷く。 そんな2人をいつの間にか暖かく見守る綾香と浩之、あかり達も加わっている。 さらに、少し離れて彼等を取り巻く形のギャラリーもマターリと見守っている。 「取り込み中のようで悪いんだけど・・・」 「何や?今エエとこやのに、無粋なん分かっとるんやったら・・・」 背中越しに掛けられた声に振り向いた由宇が顔を引き攣らせて凍り付く。 「げ・・・牧やん!?・・・ち、違う・・暴れとるんやないねん、堪忍やぁ〜・・・」 そう、由宇の後ろから声を掛けたのは南さんだった。 ひょっとして南さん、いつも通りにこやかな顔だけど目が笑って無い・・・? 「由宇ちゃん、詠美ちゃん・・・すばるちゃんも、ちょっといいかしら?」 「ま、待ってぇな・・落ち着いて・・・誤解や、誤解やねん!」 「詠美ちゃん様、今回は何もしてないもん・・・ふみゅぅ〜〜ん!?」 「ぱぎゅぅ〜〜〜っ、もうしませんの、ごめんなさいですの、許して下さいの〜〜〜っ!」 「にゃぁああ〜〜っ、千紗が、千紗が悪いんですぅ・・・うぅぅ、ごめんなさいですぅ〜っ!」 <続く>
244 :
<綾香inこみパ その5> :02/02/04 21:41 ID:gpl2KQVA
「あの・・・私達、一部始終を見てたので第三者として言いたいんだけど・・・」 それぞれパニックに陥った4人を見かねた綾香が割って入る。 あかり、浩之に便乗してサークル入場証を貰っているのは、この際無視である。 「分かってますよ♪・・・私も最初の方から見てましたから」 クスクスと笑いながら南さんは答えた。 どうやら怒っていた訳ではないようだが、それなら一体、何を言おうとしていたのか・・・? 「でも、もう開場5分前だから、そろそろスペースに戻った方が良いんじゃないかしら♪?」 「そ、そう言うたら・・・」 「すっかり忘れてましたの〜っ!」 「ふみゅみゅ〜〜んっ!?」 <続く>
245 :
<綾香inこみパ その6> :02/02/04 21:41 ID:gpl2KQVA
慌てて各自のスペースに戻って行く3人を尻目に千紗が途方に暮れていた。 「千紗、お届けがまだ・・・」 そこで綾香は浩之にウインクして、 「あら、それなら皆で手分けして配っておいたわよ♪」 「自分で取りに来た人もいたしな」 俯いた千紗の頭を優しく撫でながら言った。 「え?・・・あ、ありがとうございますぅ・・綾香おねぇさん達は千紗の大恩人ですぅ!」 「当然じゃない、こんな可愛い娘が困ってるのを見過ごしには出来ないもの♪」 「元はと言えば千紗が悪かったのに・・・うぅ、おねぇさん、綾香おねぇさぁ〜ん!」 綾香に抱きつき、胸に顔を埋めて(<うらやましい^^;)泣きじゃくる千紗・・・ それをマターリと微笑んで眺める浩之・・・ ・・・そんな中、無情にも場内アナウンスが時を告げる。 (そう、実はマターリしてられる状況では無かったのである^^;) ぴんぽんぱんぽ〜ん♪ 「只今より、こみっくパーティを開催いたします」 <終劇>
246 :
あぁっ、綾香さま! :02/02/04 21:43 ID:gpl2KQVA
<綾香inこみパ あとがき> えぇと・・・長々と駄文すみません(^^; 結局6レスになっちゃいました・・・ ってか、我ながら無茶苦茶な話&ひどい終わり方ですね・・・(汗 でも、綾香さま支援には間に合わないけど、綾香vsすばる激闘編も書いて アップするつもりです・・・ブーイング少なければ(笑
sageでやれ、sageで。
典型的こみパ厨やな・・・自信がないものなら最初から貼るなや・・・
内容的には、まぁいいんでないかと(当方、かなり甘いですが) ただ、誰が目立つかって千紗が一番目立つ気も… ただ、顔文字、()での括りは止めたほうがいいんでないかと。 三点リードは「・・・」でなく「…」が普通(と思う)
>>246 ageてやると、注意されたり、煽られたりするから
今度から気を付けて
>>1 をちゃんと読んでね
すみません、慌てて投稿してsageにするのを忘れてました・・・ いまさらですが、sageといて逝ってきます。
言い忘れたけど、キャラ出し過ぎ。 こみパメインで東鳩クロスオーバーSSとしてならまだ分かるけど。 綾香支援に使うんなら、すばると由宇、綾香の3人で十分。
>>246 次回作をアップするのは全然構わないけど、
今回出た感想を参考に、推敲はしてくれ。
主に会話文の掛け合いで話が進み、地の文なんてものは申し訳程度、 主題なんてものは何もなく、只々キャラクターの暴走だけで終わる・・・。 こーゆーものと一緒にされるのを本家SSスレの連中は嫌がったんだろうな・・・と。
どうしても、ここと投稿スレを争わせたい人が居るようなので放置よろ。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最後の1行は要らん事だが 言ってる事はそう間違ってないと思うのだが
>>264 主題は「萌え」だろう。
それだけで彼らの創作意欲は十二分に充足されるのだよ。
空恐ろしいが。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
260 :
名無しさんだよもん :02/02/05 02:41 ID:i961/nda
まぁまぁ、そう、熱くならずに とりあえず オ茶ドウゾ♪ ∧ ∧ (*゚ー゚) 旦~~ ノ つ━━ 〜 ノ (( (/ J
何か知らんが、キツイ意見はぜんぶ向こうのスレとの対立を煽るヤツって事になるのかねぇ?
おめでてーな。
一応
>>254 で間違ったことを言ったつもりは無かったんだが・・・違うのか?
262 :
全日空 :02/02/05 03:47 ID:VkfpOrp9
>>261 正論は人を論破はできても、共感は得られないから正論と呼ぶのだ。
お分かりかな?
>>261 上2行だけで終わっていればな。
「おめでてーな」といい、余計な一言が特異なようですね。
煽り荒らしに見られても、自業自得だな(w
264 :
全日空 :02/02/05 03:49 ID:VkfpOrp9
× 特異 ○ 得意 スレ汚しすまない > ALL
そろそろ >次から何事もなかったかのようにどうぞ。 のAAが貼られそうだな(w
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>>267 何も意見を言わずに、思考停止なAAを間髪入れずに張り付ける・・・いや、別にイイんだがな(w
269 :
全日空 :02/02/05 04:03 ID:VkfpOrp9
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ(w ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
271 :
全日空 :02/02/05 04:13 ID:VkfpOrp9
>>270 このトーナメントSSスレ住人(低脳の新たな代名詞)め。
屑コテが構ってもらいたくて必死だな(w
繭ちゃん支援(?)母乳二次小説、 『大好物の功罪』を落とすね。 多分全部で6レスかな。
「みゅぅ…」 繭が小さく唸り声を上げる。 2月、嵐の様に強い雨、その雨のおかげか、 静かな授業中にもかかわらず繭の声は誰にも聞こえなかった。 ただふたり、繭を気にかけている浩平と瑞佳を除いては。 「椎名、どうした?」 「みゅぅ…」 授業が終わり昼休み、浩平と瑞佳は繭の元へとやってくる。 浩平は繭に心配そうに声をかける。 少し苦しげな表情、胸をぎゅっと押さえて繭は小さくなっていた。 「繭、どうしたの?」 瑞佳も同じように声を掛けるけれども、繭からの返事はない。 ふたりは心配そうな顔を顔を見合わせる。 「とりあえず保健室でも連れて行くか」 「そうだね」 「ほら、椎名歩けるか?」 「う〜…」 繭からの返事は唸り声ばかり。 仕方ないので、浩平は繭を負ぶってゆくことにした。 1/6
廊下を早足で素早く抜ける浩平と瑞佳、 浩平の背中に負ぶさった繭は、時折苦しげな唸り声を上げるばかり。 ふたりの足は自然に速まってゆく。 そして、到着した保健室。 元々この学校の生徒ではない繭、でも、今はそんなことは行ってられない。 思いっきり力を入れて瑞佳はその扉を開けるが、そこには誰もいなかった。 「保健の先生、いないみたいだね」 瑞佳は部屋の中をみまわして小さく呟く。 「とりあえず椎名を寝かせるか」 浩平はそれだけを言って、繭をベッドの上に横たえる。 繭はまだ小さく体を縮めて胸を苦しそうに押さえている。 「繭、どうしたんだろう…」 「さっきまであんなに元気だったのにな」 ふたりはただ心配そうに繭のことを見つめている。 繭はしきりに胸を押さえている。 「繭、どこか痛いの?」 瑞佳は繭の枕元でひざ立ちになってたずねる。 でも、繭はなにか言いたさそうに口を開くけれど、小さく唸り声をあげるだけ。 「椎名、ほんとに大丈夫か?」 浩平も心配そうに尋ねるけれど、唸り声が続くだけだった。 2/6
「浩平、ちょっと外に出てもらっていいかな?」 瑞佳は浩平に顔を向けてそれだけを短く伝える。 「ん? なんでだ?」 「繭は女の子なんだよ」 「あ、ああ、スマン」 瑞佳の短い言葉から真意を汲み取った浩平は、 素直に保健室の扉を開けて出てゆく。 その音を聞いて、瑞佳は繭に尋ねる。 「繭、どこが苦しいのか教えてくれるかな?」 優しい、柔らかい、ゆっくりとした口調で尋ねる。 「みゅ、おっぱいがいたい…」 「おっぱいが?」 「いたい…」 「ど、どんな風に痛いの?」 痛いという言葉を聞いてだんだんと気が焦ってしまう瑞佳。 なるべく落ち着こうと思っても気ばかり焦ってしまう。 「ぐーって、される…」 「ぐー?」 「みゅー…」 繭の瞳は涙に濡れてゆく。 瑞佳は躊躇していたけれど、その瞳をみて決心したのか、 「繭ごめん、胸、見せてもらっていい?」 そう伝えるけれど、 「みゅ?」 何のことか分からないと言う風に繭は眉をひそめる。 「繭、服脱いでおっぱいを見せてもらっていいかな?」 「みゅ?」 やはり分からないと言う風に繭は瞳をそっと細める。 3/6
瑞佳は覚悟したように、 「服、脱がせちゃうね」 それだけを言って瑞佳は繭の背を起こし、 黄土色のカーディガンを脱がせ、 ピンク色のセーラ服をその下に着ているシャツと共にめくる。 突然のことで、繭は驚きの声を出すことも出来ない。 ただ、瑞佳のすることを黙ってみているだけだった。 瑞佳は露になった繭の胸を見て少しだけ驚きの声をあげる。 繭の胸の先は綺麗な桃色、しかし、 「もしかして、これって…」 その、桃色のまだ未発達の蕾を乳白色の液体がまとわりついている。 「母乳…?」 確かに、繭の胸の先には母乳が滲み出していた。 4/6
「みずかおねえちゃん…?」 繭は止まったままの瑞佳をいぶかしげに見て小さく声を出す。 「繭、おっぱいが痛いんだよね?」 「うん…」 「ぎゅーってされる感じなんだよね?」 「みゅ…」 小さく頷いて同意を示す。 「ちょっと苦しいかもしれないけど、ごめんね」 それだけを伝えて瑞佳は繭の胸に手を伸ばす。 突然のことで繭は身を硬くして瑞佳を見つめる。 その瞳に瑞佳は一瞬たじろぐけれども、 小さくうめき声をあげる眉を見て再び手を伸ばす。 小さな、まだまだ未発達な胸、 手のひらにそのまますっぽりと収まってしまう。 感触も少し硬いのは、まだ成長していないからか、 それとも、母乳で胸が張っているからか。 繭の苦痛にならないように、瑞佳はゆくりとその胸を揉みしだいてゆく。 5/6
突然の行動に繭は驚いて後ずさりしようとするけど、 瑞佳の暖かいひとみ、優しい手の動きで、 次第にただ、瑞佳に身を任せるように、ただ、じっとしていた。 瑞佳の手の動きに合わせて、たくさん滲み出してくる乳白色の液体。 瑞佳はハンカチを取り出してふき取り、そして、胸を揉み、 そして、ハンカチでふき取るという行動を続けていた。 次第に、繭の表情が和らいでくる。 それと共に、胸から出てくる母乳の量も少なくなってきたようだ。 瑞佳はその様子を見て手を止める。 「どう? 落ち着いた?」 「みゅ…」 繭はちいさく呟いて首を縦に振る。 瑞佳はそれを見て安堵のため息をついて、繭の服装を整える。 「ごめんね、繭、嫌だったよね?」 繭の服装を整えながら、瑞佳は少し悲愴を込めた声で尋ねる。 でも、繭はいつもと変わらない声で、 「だいじょうぶだもぉん、みずかおねえちゃん、ありがと…」 と伝えてベッドから飛び降りた。 瑞佳も少しほっとした顔をして繭の手をとり、保健室の外へ。 そして、3人は教室へと戻っていった。 瑞佳は、なぜ繭がこんなになってしまったのかと、 ただ、それだけを頭の中で考え続けていた。 6/6
以上です。 お騒がせいたしました♪
本人が負けてもONE勢の支援を黙々と続ける<<詩子さん>>には頭が下がる… 当方ONEスキー。
繭・20歳(2/7) 驚いた。 長身で、細身のスーツがよく似合う、モデルかと見紛うばかりのオトナの女性になっていた。 「ぐあ…しかし、変われば変わるもんだな、椎名」 「はい、今年成人式を迎えました。もう20歳なんですよ、私」 「ってことは…今度は俺たちが年齢不詳になる番か」 「…いろんな人たちの夢を壊しちゃいけないもんね」 「ホント、オトナっぽくなったよ、椎名。瑞佳なんて、いまだに牛乳好きなだよもん星人だってのに」 「余計なお世話だよっ」 「みずか…?」 椎名が怪訝そうな顔をした。 「確か以前は、『長森』ってお呼びになってましたよね…?」 「あ、ああ…。俺たち、結婚したんだ」 「あははっ、なんか、照れ臭い…」 「そうだったんですか。おめでとうございます」 ぺこり、と頭を下げられる。 「そういえば、椎名も結婚式に呼ぼうと思って、連絡しようとしたんだけど…」 「うん、繋がらなかったんだよね」 「あ…。はい、ごめんなさい…。あれから、引っ越したもので」 「そうだったのか…」 「はい…」 椎名の目が、少し遠くを見たような気がする。
繭・20歳(3/7) 「あ、浩平…」 「うん? どうした?」 「布団、干したままなんだよ。早く帰らないと湿っぽくなっちゃう…」 「そうか。じゃあ帰るか?」 「あ、いいよいいよ! 浩平は繭との『同窓会』を楽しんで!」 「え…」 「瑞佳さん…」 「それじゃ、繭。また今度ね。バイバイ」 「お、おい、瑞佳…!」 「あ、はい。さようなら…」 …二人、残された。 しかし、どうにも間が持たない…。 「し、椎名」&「浩平さん」 二人、同時に喋っていた。 「な、なんだ、椎名?」 「いえ、浩平さんこそ」 「あ…その、これから時間あるのか…?」 瑞佳の勝手な思い込みで、俺はこの場に残されたけど…。 相手の都合ってもんもあるだろう? 「え、ええ…。あまり遅くならなければ大丈夫です」 「そうか。…そしたら、どこか落ち着いた場所で話でも…」 「…はいっ。あ、でも立ち寄るのでしたら…」
繭・20歳(4/7) 二人は懐かしいハンバーガーショップに座っていた。 「今でもてりやきバーガー、好きなんだな」 「はい。…今では6つは食べられますよ?」 「女の子一人でそんなに頼むのか」 「いえ、さすがにお店では食べませんけど。時々、テイクアウトでこっそりと」 フフフ、と口元を押さえて笑う。 この清楚で上品な女性が椎名だとは俄かには信じられないけれども。 でも、なんとなく懐かしい匂いはする…。 そして、あの頃の思い出話も、符合しあって…。 やはり、この女性は椎名だった。 ハンバーガーショップを出て、少し歩いた。 街頭が灯り始めたころ、小さな公園に辿り着いた。 「…浩平さん」 椎名が俺を見つめる。 「どうした、椎名?」 「いえ…。浩平さん、あの頃と全然変わってないな、って」 「それはガキのまんまだ、ってことか?」 「いえ、そういうことじゃなくて…」 遠くを見つめる目。 「成長、というものを教えてくれたのは、浩平さんでした…」 「そう言われると照れ臭いものがあるが…。椎名は、立派になった。こんな、綺麗でしっかりしてて――」 「でも、今また教えてくれたことがあります」 「? なんだ?」 「私は変わり過ぎてしまいました…。それこそ、浩平さんたちに一目で気付いてもらえなかったくらいに」 「う…悪い…」 「いえ、浩平さんは悪くありません。…変わろうと、幼虫を経てさなぎへ、さなぎから蝶へなろうとしたのは私の意志なのですから」 「………」
繭・20歳(5/7) 「今日、浩平さんを見ていて気が付いたのは…変わらぬもの、変わらぬことも大切なのだ、と…」 「私、浩平さんのことが好きでした…。でも、あまりに子供っぽい自分に、瑞佳さんや七瀬さんと比較して気後れしてしまって…」 「それから、必死に変わろうと努力しました」 「ですが、その成果を見てもらう前に…家の事情であの街を離れることになってしまって…」 「私のことを誰も知らない場所で、私はどんどん変わっていくことができました」 「でも…その結果、浩平さんたちの知っている私は…私が愛してもらいたかった『椎名繭』はどこに…?」 「それが、ちょっぴり悲しく思えたんです…」 「そんなこと全然ないぞ」 「…え?」 「どんなに変わったって、椎名は椎名だ。それは、話をしていてよく分かった」 「今の椎名と、あの頃の椎名は、俺の中で結び付いている」 「浩平さん…」 「実は…私の中でも、あの頃の繭が目覚めてしまったんです、浩平さんと話をしてたら…」 椎名は目を伏せて、頬を赤らめる。 「…もう一度、甘えてもいいですか…?」 「…ああ、構わないぞ」 椎名は俺の胸に顔を埋める。 「…みゅー」 そんな椎名の頭を、ぽん、と叩いてやる。 「みゅー、みゅー」 ぽん、ぽん…。 「みゅー! みゅー…!」 …椎名は泣いていた。 そんな椎名の背を、俺は撫で続けた…。
繭・20歳(6/7) 「それじゃ、この辺で失礼します」 彼女はすっかり元の笑顔に戻っていた。 「あ、ああ…送らなくて大丈夫か?」 「はい、大丈夫です。…早く瑞佳さんのもとに、帰ってあげてください」 くすくす、と笑みを浮かべる。 「そ、そうか…。それじゃあここで別れるか」 「はい」 「………」 「………」 二人、見つめ合ったまま。 「これじゃ、なかなか帰れませんね」 「あ、ああ…そうだな…」 「『いっせーのーせ!』でお互い、後ろを向きましょうか?」 「おお! それいいな。そうしよう」 「じゃあいいですか? いっせーのー…」 「せっ!!」&「せっ」 俺はくるっと椎名に背を向ける。 これで、お別れだ。 俺は前に歩き出した。 「………」 …けれど、椎名の姿が気になる。 最後にもう一度くらい、見送っても…。 俺はちらっと後ろを見た。
繭・20歳(7/7) 「!?」 椎名はさっきの場所から一歩も動かず俺を見ていた。 「なんだよ〜、ずるいじゃないかっ!」 俺は思わず叫んでしまった。 「浩平さんっ!」 椎名も声を張り上げる。 「さようならっ、私の好きだった人っ!!」 「さようなら、昔の私…!」 「瑞佳さんと、お幸せにっ!!」 「えっ…」 あっけに取られたままの俺に、くるっと背を向けて、自分の道を歩き出す椎名。 「椎名もっ!」 俺はもう一度叫ぶ。 「幸せになるんだぞっ!!」 …彼女は俺の声に振り返ることはなかった。 変わらぬテンポで、俺から少しずつ遠ざかっていく。 でも、きっと彼女は俺の願いを叶えてくれる。 …お前は十分、頑張ったんだから。 (完)
>>287 あれ? 繭・20歳(1/7) はどこ?
>>240-245 『綾香inこみパ その5』
すでにお歴々のレスが付いていますが、私が感じたことを。
お話が些か冗長な気がしますので、冒頭からすぐすばるが出るように、プロットを組み替えると
良いかと思います。
トーナメント用のSSは、通常と異なり、簡易な作りが好まれます。何せじっくり読んでいると
本スレから取り残されるのですから、出来る限りコンパクトに作るのが吉です。
上の方々のアドバイスにもありますが、あかりと大志はちゃちゃいと削っちゃいましょう。あと、
ちゃんさまはもっと「アホの子」に調整するとオイシイです。
そんなこんなで、以下のようなあらすじでイッてみてはどうでしょう。
(1) 浩之・綾香コンビが詠美ブースを訪れる
(2) いきなり千紗の台車が突っ込んで来る
(3) あわやというところですばるが二人の前に立ちふさがる
(4) 投げ飛ばされる台車
(5) ところが千紗、台車にしがみついたまま。千紗も一緒に投げ飛ばされる。「ぱぎゅーっ!?」
(6) 綾香ダッシュ、千紗を抱き留める。「浩之、荷物お願い」「重いのオレ担当かよっ!」
(7) おたおた謝るすばる。背後では段ボールを回収する浩之の姿が…。
(8) 綾香の目があやしく光る。「あなた、強そうね」 (ガチンコのよかーん)
…なんか、よくわかんなくなった気もしないでもないナー。これ以上はすばるスレか
SS Training Roomでってことになるのカナ。うーん…。ボクのこと、忘れてください(;´_`;)
>>290 おいおい・・・。
プロットの組み替えについてアドバイスするのはともかく、
ご丁寧に「あらすじまで一から組み立てて差し上げる」っていうのは、
一体どう言った御了見でいらっしゃるので?
そのくらいは書き手自身が考えなきゃいかん領域じゃねーのか?
そもそも自分でやらなきゃ実力(文章力・発想力)はつかないっつーの。
さて。
暇人がいたらこの下に、いつもの脳味噌停止AA貼ってくれ(ワラ
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これから煽りやる奴は、ちゃんと次のレスでフォローを入れておけ。 自分でな。
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297 :
名無しさんだよもん :02/02/06 23:47 ID:6IK/gHbi
くだらね〜
今からSSを投下させていただきます。 由起子さんモノでほのぼの系、長さは7レスです。 ではよろしくお願いいたします。
夜の9時過ぎ。 テレビの画面に「金曜ロードショー」というテロップが映り、 哀愁を誘うトランペットが印象的なテーマ曲がスピーカーから流 れ出す。 「いいの? 本当に見るの?」 私の問い掛けに対し、浩平が力強く頷く。 こうなってしまってはもう梃子でも動かないだろう。 「ふぅ・・・・・・まあ、無理はしないでね」 そうため息を吐きながら私は浩平からテレビの画面に視線を移 した。 エイリアン2。 そう画面には映し出されていた。 意外と怖いものが駄目な浩平にとって、苦手な部類の映画だ。 先週のバタリアンでは途中で逃げ出してしまった程だ。 しかし逃げ出したものの、自分の部屋に行って一人でいるのも 怖いらしく、結局はテレビが見えない位置にいて番組が終わるま で耳をふさいでいた。 怖いのなら見なければいいと思うのだが、どうもそうもいかな いらしい。 次の日のクラスの話題は金曜ロードショーの話題で持ち切りに なるらしく、絶対見逃せないのだそうだ。 今日は・・・・・・どうだろう。 すでにもう、CMに入る前に流れた映画本編の予告で浩平は落ち 着きを無くしている様子だった。 ここまで怖がりだともう、可愛いとすら思えてしまう。 映画が始まった頃、冷蔵庫から缶ジュースを持ってきて浩平に手渡す。 私は缶ビール。 これでもう集中する体制は整った。 後は浩平が最後まで見れるかどうか、それだけだった。
「ひっ」 時折、浩平の短い悲鳴が上がる。 画面には主人公の女性の腹部からエイリアンが飛び出す様子が 映し出されていた。 『ヒィイイイッ!』 という悲鳴がテレビから上がると、浩平の身体がビクッと大き く震えた。 「そんなに怖がらなくても・・・・・・」 と私が苦笑すると浩平が恨めしげに睨む。 「叔母さんは・・・・・・怖くないの?」 CMに入ったとたん、浩平がそう切り出した。 多分誰かの声、それも生の声を聴かないと安心できなくなって きているのだろう。 私はまた苦笑しながらもそれに答えた。 「うーん、叔母さんはこういうの苦手じゃないから」 「・・・・・・裏切り者」 私の返答が気に食わなかったのか浩平がそう呟く。 「まあ、これ映画だからね。本当に起こったら怖いかも知れない けど」 そう付け足すと、浩平が頬を膨らました。 「でも、怖いよ・・・・・・」 「浩平は特別怖がりすぎるの」 とまた笑うと浩平が拗ねたのかそっぽを向いてしまった。 「あ、CM終わったよ」 画面を指差しながらそう伝えると、浩平はうー、と唸りながら も画面に視線を移した。 映画はまだまだ始まったばかり。 私は2本目の缶ビールを取りにキッチンへと向う事にした。 居間を出る時にふと思い立って振り返ってみた。 浩平はやはり、時折ビクッと身体を震わせていた。
『さぁ!掛かってらっしゃい!』 画面の中では女性がウォークリフトを無理やりロボットにした ような物に乗り込み、エイリアンの親玉と対峙していた。 「・・・・・・かっこいい」 浩平が見惚れたように呟く。 まさかクリスマスプレゼントにアレを買ってくれとは言わない だろうか。 ちょっと心配だ。 私の心配を他所に、浩平は食い入るように画面に見入っていた。 「浩平、そんなに画面に近づくと目が悪くなるよ」 あまりにも近づきすぎていたのでそう注意する。 「うん」 しかし浩平はそう生返事を返したきり、また画面に見入る始末 だった。 「もう、しょうがないわね」 その様子に少しだけ呆れ、私は浩平の身体を掴み、丁度いいと ころまで引き摺って画面から離した。 しかしそれでも浩平は画面に集中し続けていた。 私はもう、苦笑するしかなかった。 やがて映画も終わり、浩平が画面からようやく視線を離す。 「今日は最後まで見れたね」 来週の予告が流れ出した頃、そう声を掛けると浩平は満足げに 頷いた。 「うん。最後まで観れた」 浩平はそう言って、欠伸を漏らした。 そろそろ睡魔が襲ってくる時間だろう。 「それじゃ、寝ようか」 と私が言うと、浩平は頷きながらまた欠伸を漏らした。
戸締り、ガスの元栓のチェックなどをして、ようやく私も2階 の自分の寝室に向った。 浩平はすでに自分のベッドの中で夢を見ているようだ。 私も自分の寝室のベッドに横になる。 ビールを飲んだせいか、すぐに心地よい眠気が襲ってきた。 今夜は熟睡出来そうだった。 瞼を閉じ、眠る事だけを考えようとすると、こん、こんと控え めにノックする音が聞こえた。 「浩平?」 身体を起こし、部屋のドアの方にそう呼びかけると、かちゃ、 とドアが開いて自分の枕を抱いている浩平が姿を見せた。 「どうしたの?」 薄闇の中、入り口付近にぬぼー、と立っている浩平に声を掛ける。 暗いせいか、その表情までは見えなかった。 「あの・・・・・・」 浩平はそう言ったきり、体をもじもじさせて何も言おうとしな かった。 ま、大体の予想はつくけど。 「ほら、いらっしゃい」 布団を捲り上げ、浩平の分のスペースを作る。 すると浩平はとてとて、と嬉しそうに飛び込んできた。 「やっぱり怖かったんでしょ?」 ちょっとからかい気味にそう訊ねる。 「怖くないなんて一回も言ってないよぅ」 すると浩平はひねくれ気味にそうやり返してきた。 「ぷっ」 それを聞いて思わず笑ってしまうと、浩平はそっぽを向いてし まった。 「ごめんごめん。ほら、もっとこっちに寄りなさい」 謝りながらそう言うと、浩平がもそっと動いて私にくっついた。
何か嫌な予感がして急に目が覚めた。 暗闇の中、目を凝らしてステレオの時計に視線を定める。 どうやらまだ眠ってから数時間しか経っていないようだった。 「うう・・・・・・」 という浩平のうめき声に気付いたのはその直後だった。 「浩平!?」 すぐに揺さぶり起こそうとする。 「んはっ・・・・・・ううぅ・・・・・・」 慌てて浩平を抱え起こすと、浩平は苦しげに息を吐き出した。 パジャマはびっしょりと汗に濡れている。 「浩平、どうしたの!?」 再度、今度は先ほどよりも強く揺すった。 すると浩平の瞼がうっすらと開く。 「浩平?」 もう一度呼びかけると、浩平は急に声を上げ、泣き出した。 「ひ・・・・・・うぁああんっ!叔母さ・・・・・・わぁああんっ!」 とりあえず浩平が目を覚ましたので安心出来た。 「ほらほら、どうしたの?」 あやすように浩平の頭を撫で、ゆっくりとそう訊ねると、浩平が私のお腹に手を当てた。 そして確かめるように何度も強く押す。 「・・・・・・良かった・・・・・・ぐしゅっ・・・・・・ひぐっ」 浩平は私のお腹に手を置いたまま、そう呟くと、ようやく泣き 止んだ。 とは言っても号泣がすすり泣きに変わっただけだが。 「・・・・・・ほら、もう大丈夫だから。ね?」 未だすすり泣きをやめない浩平の頭を撫で、そう言うと、浩平 は頷いた。 でも、何でこんなにうなされて、そして泣き出したのか私には 理解出来なかった。
すっかり汗でびしょびしょになってしまった浩平を別のパジャ マに着替えさせると、浩平がぽつり、ぽつりと話し出した。 「叔母さんのお腹からエイリアンが出てきてね、叔母さんが死ん じゃうの・・・・・・」 浩平はそう言うと、また瞳を潤ませた。 「僕は一生懸命、叔母さんを助けようとするんだけど・・・・・・助け られなくて・・・・・・ひっ・・・・・・それが・・・・・・ひぐっ・・・・・・悔しくて」 言い終えると、浩平がまた泣き出した。 たまらなくなり、浩平を抱きしめる。 「馬鹿ね・・・・・・」 呟きながら、さらに強く抱きしめた。 嬉しかった。 本当に嬉しかった。 夢の中とはいえ、浩平がそんなにも私の事を大事に思ってくれ ているなんて。 ああ、私は浩平に大事に思われている。 そう実感する事が出来る。 それが私にはとても誇らしかった。 そこまで思われているという事は、私は浩平にとって『大事な 人』になれているという事だから。 多少なりとも、浩平の『親』代わりになれていると言うことだ から。 「浩平・・・・・・叔母さん、とっても嬉しいよ」 浩平にそう伝えると、浩平は涙を拭いて笑顔を見せてくれた。 「ありがとうね」 浩平を抱きしめたまま、ベッドに横になる。 「もう、怖い夢見ない?」 浩平が私を見上げ、呟く。 私は浩平の頭を撫でながら、ゆっくりと頷いた。 このまま、浩平を抱いたまま眠るのもいいだろう。
「本当に立派な世界地図ね」 小さくなっている浩平にそう咎めるように声を掛ける。 すると浩平が肩を落とし、さらに縮こまる。 もう一度、庭の物干しに干してあるベッドマットに視線を移す。 そこには黄色い染みで出来た地図が広がっていた。 「どうしてトイレに行かなかったの?」 地図から視線を浩平に移し、そう言うと浩平がぼつりぼつりと 弁解を始めた。 「トイレ行きたくなって起きたんだけど・・・・・・やっぱり怖くて」 「・・・・・・我慢しているうちに眠っちゃったわけね」 ふぅ、とため息を吐くと、玄関の方から聴き慣れた声がした。 「浩平ー、学校いこうよー」 一瞬だけ玄関の方に視線を移し、また浩平を見る。 すると浩平が急に落ち着きを無くし、懇願するように喚く。 「瑞佳には内緒にしてっ!お願いだよぅっ!」 必死の形相で浩平が何度も繰り返す。 「もうしないからっ!お願いだよぅっ」 「うーん・・・・・・」 いたずら心で一度言葉を止めて焦らしてみると、浩平が半泣き になりながら私の足にすがり付いた。 「お願いっ」 あんまりいじめるのも可哀想なので、今回は許してあげよう。 ・・・・・・嬉しかったしね。 「しょうがないわねぇ・・・・・・ほら、瑞佳ちゃん待ってるよ」 ウインクしてそう言うと、浩平はカバンを引っつかんで、嬉し そうに『いってきまぁす!』と叫んで飛び出した。 「いってらっしゃい!」 玄関先からそう声を掛けると、浩平が振り返り手を振った。 さて、これから会社に行く準備をしなければならない。 会社に行って仕事をして、そして・・・・・・。
由起子さん支援の母乳二次小説、 『愛しいおいのために』 全部で6レスくらいかな。 家に戻ると、浩平はまたひとりで遊んでいる。 カメレオンのおもちゃをテーブルの上で転がす。 無機質な音が部屋に響き続けている。 夕方をとっくに過ぎているのにいまだ灯りの点けられていない居間、 窓から入る街燈に仄かに照らされて、ただひとり、浩平は遊んでいた。 「浩平、ただいま」 「ころころ…」 私の言葉が聞こえていないのか、浩平は同じ動作を続ける。 「浩平、暗くなったら電気を点けないとだめよ」 私はスイッチを入れながら話を続ける。 もうすっかり慣れてしまった、毎日同じやり取り。 夜、私が帰ると浩平はここでいつもひとり遊んでいる。 そして、いつものように食事の用意をする。 すると、そのときだけひとり遊びを止めて私と一緒に食事をする。 それがすむと、またひとり遊び始める。 その、食事の間、そして、私が片づけを終えて一緒にお風呂に入るとき、 そして大きなベッドでふたりで寝るとき、 浩平がカメレオンの呪縛から離れることができる時間だった。 1/6
家のことをすべて済ませて寝室へと向かう。 少し寝相の悪くなっている浩平の体勢を、起こさないように直して、 私はその横にもぐりこんだ。 最近の私は寝つきが悪い。 そのままゆっくりと迫る眠りを待ちつづけていた。 「由起子おばさん…」 でも、先に来たのは浩平の小さな声。 「どうしたの?」 合わせるように小さな声で返事をする。 でも、浩平は何も言わずに私の胸に顔を埋める。 私もしっかりと浩平のことを抱きしめる。 守るように、安心するように。 時々浩平はこうやって甘えてくれるのは私にとってもうれしいことだった。 いつもであれば浩平の行動はそこで終わるはずなのに、 浩平は、まだなお私の胸をぎゅっと埋めていた。 子どもといってももう小学2年生、力もついてくるころ。 私はその頭をなでて、 「苦しいからそれくらいでぎゅっ、はやめてほしいな」 と伝えると、浩平は私に顔を向けて突然こんなお願いをする。 「由起子おばさん、おっぱい…」 私は一瞬浩平が何を言ったのかわからずに、きょとんとしてしまった。 でも、私はすぐに意味を理解して、 「私はおっぱいが出ないから、浩平にあげることはできないわ」 落ち着いた口調で、たしなめるように浩平に伝える。 浩平は少しがっかりしたような顔をして私の胸に顔を軽く埋めなおす。 やがて瞳が閉じ、小さくため息をひとつつくと、そのまま寝息を立て始めた。 私は、その急な浩平の言葉がただの気まぐれかと思い、 やがて来る眠りの世界にそのまま入っていった。 2/6
浩平の要求が出始めてから、 日に日に浩平は元気がなくなっていくのがわかった。 なんとなく、雰囲気だけだけど。 私はどうしたらいいか、 たくさん本も読んでみた、医者に相談に行こうかとも思った。 でも、私は意地になっていた。 浩平の要求を私自身が解決する。 浩平を育て上げるのは私自身。 そんな意地にかられていた。 女性ホルモンの薬を薬局で買うとき、 店員さんにかなり不思議な顔で見られる。 なぜ? こんなに若い女性が? そんな視線も浩平のためだと思えば耐えることができた。 飲み始めて半月ほどで胸が張り始め、 1ヶ月もするとブラジャーに半透明な液体の染みができるようになっていた。 3/5
「由起子おばさん、おっぱい…」 いつものようにベッドの中で浩平の要求が始まる。 昨日までなら私はたしなめて終わりだったけど、 「いいわよ、飲ませてあげる」 今日は浩平の要求に応えてあげることができる。 浩平は驚いたような顔を一瞬私に向ける。 私はパジャマのボタンを外して張った胸をさらけ出す。 浩平はゆっくりと乳首にくちびるを寄せてくる。 軽く触れる浩平の域に少しくすぐったい感触を覚える。 浩平は乳首を吸い始める。 暖かい口の中、ぎこちない吸い方。 時折妖しげに動く浩平の舌が私の感じたことのない性の感覚を掘り起こそうとする。 自分で触ったときには感じない、とても甘美な感覚。 まさか、幼い甥の行動に感じ始めている? あまりに背徳的なその考えに、私は強い罪悪感を感じてしまう。 だから、浩平にはすぐに止めさせようとその顔を見るけど、 あまりにも幸せそうに吸うその表情を見ていると、 浩平の行動を止めさせることはできなかった。 私は背徳感と時折身を覆う性の感覚に漂っていた。 4/5
やがて、満足したのか浩平は私の胸から口を離す。 私の乳首と浩平の口の周りは、同じように乳白色の液体で濡れていた。 枕もとにあるティッシュを取り出して浩平の口の周りをぬぐってゆく。 そして、私の胸の周りもぬぐっていった。 浩平は幸せそうな顔をしてもう眠りに入っていた。 私もパジャマを着なおして、ゆっくりと眠りに入る。 甘やかすわけにはいかないから一度だけ、そう思っていたけれど、 本当に一度限りでやめられるのか… そう考えるたびに疼く私の胸が、 はっきりとした答えを持っていることに、私はまだ気づかないのだった。 5/5 以上です。 お騒がせしました。
313 :
:02/02/07 12:32 ID:cGUMlsJv
こんなつまらね‐SSをよく人に読ませたいとか思えるなー あんた今までに小説とか読んだ事一度も無いだろ まさにヤオイ文章炸裂だな、プッ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
由起子さん支援二次小説、 『由起子さんのはつ恋』 全部で4レスかな? 落としてくね。 「由起子さんって結婚しないのか?」 珍しく由起子と浩平が一緒になった夕食時、 一瞬の静寂にはさんだ浩平の言葉。 「手のかかる同居人がいるからね」 「ぐあ、身も蓋もないな」 少しいじわるな質問だと思っていた浩平は、 あっさりと反撃されるが、たじろぐ様子はない。 「恋人もいないのか?」 「手のかかる居候がいるからね」 いまや同居人から居候へと格下げされた浩平は落ち込む。 でも、それにも負けずに質問を繰り返す。 「そういえば今まで恋人っていたことないのか? 生まれてから」 その浩平の質問に、由起子は一瞬体の動きが止まる。 浩平は興味深そうに由起子の顔を覗き込む。 「まぁ、いたけどね」 「聞きたいな」 興味津々な瞳で浩平は由起子の顔を見る。 由起子は小さくため息をついて、 「女性の大切な想い出話は高くつくわよ」 それだけを前置きして、ゆっくりと流れる時間のなか、由起子は口を開いた。 1/4
「ともかく、元気な人だったわ…」 遠い想い出を頭に浮かべているのか、 少しだけ涙に濡れる瞳、その視線を遠くの宙に漂わせている。 「中学のときの同級生だったんだけどね」 浩平も自分の中学時代を思い出してみる。 瑞佳と一緒に毎日学校へ行っていたあのころ。 恋愛についてはあまり興味がなかった浩平。 女子が騒いでいるのを鬱陶しく感じていた、 それだけが残る恋愛に関する想い出。 「勉強もできるし、運動もできるし、クラスの女の子の憧れの男の子だった…」 目を潤ませて少し乙女モードに入る由起子。 その、珍しい姿に浩平は少しだけ驚きの表情をする。 もともと行動や考えが若々しい由起子だが、ここまでの表情は初めてかもしれない。 その姿をしっかり焼き付けようと目を見開いて由起子を見ている。 「バレンタインのときに告白したの、チョコを作ってね」 今でもお菓子作りがかなり上手な由起子、 その当時からもかなり腕が立っていたのだろうか。 浩平はその男に少しだけ嫉妬を感じてしまう。 「そしたら『俺もおまえのことが』な〜んて言ってくれて、もう、それは驚きよっ!」 由起子の口は滑らかになってゆく。 浩平の顔はだんだんと複雑になってゆく。 2/4
「…で、付き合いだしたと」 「うん、そうよ」 心底うれしそうに返事をする。 浩平はふたりの関係がどこまで言ったかをたずねたい衝動に駆られる。 でも、今の状態の由起子ならどんなことでも話し始めるような気がして、 それこそ、沢山のティッシュが赤い鼻血にまみれるような気がして、 とりあえずは止めておいた。 「でも、やっぱり子どもだったのね、私は」 「ん?」 急におとなしくなってしまう由起子に、浩平は不思議そうな顔を向ける。 由起子は話を続けている。 「彼の事を知りたかった、私のことも知ってほしかった。 だから、私たちは沢山話をした」 少し憂いた眼で話を続けている。 「でも、彼は私にとっては大きすぎた、追いつけなかった。 おいていかれるような感じがして、高校進学とともに破局、 さすがの私でも悲しかったなぁ…」 「そうだのか」 今にも瞳から涙がこぼれそう。 浩平は思わず由起子の肩に手を置いていた。 3/4
「由起子さん若いから、まだ出逢いはあるさ」 「ふふ、ありがとう、浩平」 由起子の瞳は笑顔に戻っていた。 「もしかしたら、そいつとも再会できるかもしれないだろ」 「そうね、そうだね。やだな、浩平に恥ずかしいところみせちゃったな」 由起子は小さく舌を出して微笑む。 「いや、たまにはオレのことも頼ってくれよな」 浩平も力強く答える。 「かなり心配だけどね」 「ぐあ、そりゃないだろう」 「あははっ」 ふたりはずっと、幸せそうに笑いつづけていた。 4/4 以上です。 お騒がせしました。
>詩子さん ほのぼのとしたSSで清涼感がありますね。 でも、由紀子さんに恋した人が誰かは気になりますけど……。 どうして、破局したのかも気になってみたり。 じゃあ、私も由紀子さんのSSを投稿させて頂きます。 内容はONE『由紀子』シナリオ。とか。 長さは……40レスくらいの長いSSなので、しかも内容が伴っているかどうか。 脳内あぼ−んの準備してください。
「……あれ?」 薄っすらと視界は閉じられていった。澄んだ空気は、今も頬を撫でている。 寒空で、今日はいつより冷え込んでいた。着用していたコートを胸元で押さえて、息を吐く。 白い。 はあーっと、夕闇の中に溶け込んでいく。 耳に付いた雑踏は、多少うるさくもあったが今は気にならない。 もう一度、首を傾げた。 「……あれ?」 何かを忘れているのか、気分が乗らない。 心の中に空白ができたように、ぽっかりと穴が開いていた。 がちゃ。 玄関のドアを開けて、靴を脱いで、バックを適当に置いて、リビングにもたれ込んでしまう。 「……疲れたわね、今日も」 このところ、毎日のように帰りは遅かったが、今日はわりと早く帰ってこれた。 もうすぐ、春が訪れる……。
「お茶でも淹れようかしら?」 ひとりでいると何かと声に出してしまう。これは、悪癖なのかもしれない。 寂しさを誤魔化している気はなかったが、自重はしよう。 久しぶりのハーブティ。葉が痛んでいないことを願って、ふたを開ける。 お湯も沸いてきたようだった。まずは、ティーカップを暖める。 部屋の中に、ミントの匂いが漂いはじめた。 ………。 ……。 …。 「もう、余計なお世話よね……」 夕刊に混じっていた結婚相談所のダイレクトメールを見て、わずかに溜息をこぼす。 とんとん、と机を指先で叩いてからハーブティを口に含む。 結婚したくないわけじゃない。 私だっていつかはウエディングドレスを着てみたいと思っている。 (女性としての憧れだもの……) 私は鏡を覗き込んでみた。
鏡は私を映していた。 現実のままに、私は鏡の中の世界に存在していた。 少し肌が荒れている。 「…………な、なんですと!?」 ちょっとショックだった。 でも、このところの生活を顧みたら当然なのかもしれない。 もうすぐ三十路。いつまでも若いままではいられない。 「……永遠なんてないって思い知らされるわ」 姉さんのことを思い出す。 私は姉さんのことを誇りに思っていたし、年も離れていたせいか姉さんも優しくしてくれた。 胸を張って言える。自慢の姉だった。 しかし……。 ちょっとしたボタンの掛け違えで何もかもが水泡に帰してしまう。 「姉さん……」 今は、どこかの宗教団体に属している姉を思い出して、私は哀しくなった。 結婚式では、あんなにも幸せそうだったのに、羨ましいくらいに綺麗だったのに……。 子供だってふたりも授かって、嬉しそうに私に自慢してきたのに……。
「……由起子も早く結婚しなさいよ」 「大きなお世話よ。姉さんったらいくら自分が幸せだからって人に押し付けないでくれる?」 「誰も、相手にしてくれないの?」 「そりゃあ……何人かに、言い寄られてはいるけど……私より仕事のできない人なんてナンセンスじゃない」 「そんなことじゃあ、いつまで経っても結婚どころか恋人だってできないわよ」 「だから余計なお世話だって! 今は、仕事が私の素敵な恋人なのよ!」 「あらあら、由起子ったらあまり大きな声を出さないで、みさおが起きちゃうわ」 ゆっくりとした抱擁は、私に理想の母親像を連想させた。 まだ小さい赤子は姉の手の中で、気持ちよさそうに眠り込んでいる。 私だったら、こうはいかないだろう。 そして、気づく。 姉さんは、いつの間にか私の姉さんから……子供たちの母親になっていたのだ。 ちょっとぴり妬けてしまう。 「お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん……」 みさおちゃんの耳元で私が呟くと、姉さんはびっくりしたように遠ざけた。 「……何してるのよ?」 「いやいや、浩平みたいにならないように、いまからしつけておかないと……」 「おーい、叔母さん」 どこからか私を呼ぶ声が聞こえて、ふふふっと含み笑いを漏らしてしまう。 いくら言っても私を『叔母さん』と呼んでくれる子には、多少のお仕置きが必要かと思われた。 「ちょっと浩平と、アイアンクローごっこしてくるわ」
………。 ……。 …。 壊れてしまった。 何もかもが硝子のようにぱりーんと割れてしまったのだ。 ……なんて脆いのだろう? 「……浩平?」 みさおの葬儀の時に会った浩平は、もぬけの殻だった。 随分と会ってなかったような気もするが、こうも人は変わってしまうのだろうか? 「……本当に、浩平なの?」 「…………」 答えは、いつまでも返ることはなかった。 そして、私は……いつの間にやら浩平を預かることになっていた。 押し付けられたのだ。 どこの親戚も自分たちの生活があるし、文句も言えなかったが。 それに宗教団体に吸い尽くされた折原家の財産では、引き取ることのメリットもないのだろう。 「お前は、あの姉の妹だろう!」 誰かがそう私に言った。 ……私は、泣きたくなった。
……永遠なんてなかった。 ―― 人は、ずっと幸せのままではいられない ―― そのことを、私は知ってしまった。 だから、泣いてしまった。 何度も、姉さんに会おうとしたが……頑なに断られて、門前払いの毎日だった。 浩平は姉さんの大切な子供。 ……子供より大切なものがあるのだろうか? 祈りは、届かない。 それでも、祈り続けているのだろう、姉さんは。 この空に向かって……無意味に。無慈悲に。 そして、私は姉さんとの思い出が詰まったこの家で暮らしていく。 今も、これからも……。 ……辛かった。 ……とてもとても辛かった。 いつまでたっても浩平は泣きわめいていた。 私は、それを見ているだけだった。 だって永遠はないのだから……。 いつか幸せは壊れるものなのだから……。 それを知ってしまったら、誰に優しく出来るものか……。
「……あれ?」 気が付くとソファーでうたた寝をしていた。 ひどく疲れていたのだろう。頭がぼんやりとしている。 すでに窓の外は真っ暗で、ひとり残されたような感覚だけがあった。 このところ調子が悪い。 頭痛がひどい。 何だか記憶喪失でもなったみたいに物事を忘れていくような……。 そんな、不思議な感覚。 どたどたどた、と階段を下りる音。 「…………!」 私は有り得ない事態に遭遇したと認識して、頭の中が真っ白になった。 人がいる……。 この家に人がいる……。 (私はずっとこの家にひとりきりで……) 体の震えは最高潮まで達して、この状況に笑い出してしまいそうにさえなっていた。
「……由起子さん?」 高校生くらいの年齢の男の子が私の名前を知っている。 どういうことだろう? 高校生。男性。不法侵入。名前を知っている。こちらに向かって微笑んでいる。 「ひぃ!」 私はがたがたと震えて、これまでの人生の中でもっとも恐怖した。 体を抱き締めて男性の顔だけを見つめる。 (悲鳴をあげないと……) 理性はそう訴えかけてきたが、喉までもが震えてうまく声が出せない。 何かをしないと……。 思っているうちに、男性の手がこちらに伸びてきた。 私は気を失いそうになる中で、少しでも体を男性から離そうとする。 じりじりと、動くだけの体は何とも頼りない。 ――終わった。 私は……そう思った。
「どうして……」 「……?」 男性が私を見ていた。 私の体よりも男の子の瞳が揺れていて、ひどく傷付いているように……。 (この瞳、見たことある……) 「……浩平?」 次は、浩平が私を見て、信じられないように……。 「オレのこと、分かるの?」 何を浩平は言ってるんだろう? 当たり前のことじゃない。 それなのに、忘れてしまうなんて……。 「……馬鹿ね」 そういって、浩平を抱きしめる。 馬鹿、とは自分のことだ。 どうして、忘れていたのだろう? 「本当に、馬鹿ね……」
………。 ……。 …。 私は有り合わせの材料で夕食を作っていた。 コロッケだった。もちろん味噌汁にだって自信はある。 「料理なんて久しぶりね……」 私は手に取ったお玉で味見をして、少し辛いかもと思いつつ、別にいいかとも思う。 テーブルには、浩平がお皿を並べてくれている。 ご飯は炊けているだろうか。 「由起子さん、オレもう腹減って動けない……」 「もうすぐよ」 何気ない会話。 どこまでも続いていく日常。 「ほら、美味しそうでしょう?」 私の作った料理を、浩平が頬張って……。 美味しい、と返してくれて……。 私は、その答えに満足して……。 でも、食べてみたら、それほどでもないことに気づいて……。 それなのに、浩平が食べてる姿を見ていると、ああ、やっぱり美味しいかも、と思う……。
(そうか、これが家族ってことなんだ……) どこかで無くしていた記憶。 子供のころに描いていた確かな幸せがここにあった。 ――永遠はない。 だから、この瞬間をいつもいつも人は持とうとしている。 そう、信じられた。 浩平はいつか私のもとから去っていく。 優しくしたら……しただけ、私は傷付くことになるのだ。 幸せなんて要らないから、不幸にはしないでほしい。 私は、ずっとそうやって生きていた。 「浩平」 「なに、由起子さん?」 「ううん、ただ呼んでみただけよ」 「なにそれ?」 「いえ、なんとなく……」 なんとなく、こういう瞬間を求めるために、私はこれから生きてみたい。 そういうのも、きっと悪くない。 ぼんやりしながら、私は思った。
浩平と出会った日。 悲しみにくれていた浩平を見て見ぬ振りしていた毎日。 優しくしないことは自分への優しさ。 もう傷付くことは嫌だった。 放任主義とは聞こえはいいが親権放棄に他ならない。 壊れる幸せ。 不意に襲ってくる不幸。 どこにもない永遠。 「あのさ、浩平」 「うん?」 「私、明日会社休むから浩平も休みなさい」 「……えーと」 「あら、浩平? 家主の言うことが聞けないっていうの?」 「もうしょうがないな……分かったよ」 浩平の眼を見てなんとなく悟ってしまう。 (もう学校には行ってないのね……) 私は、悔しくて唇が歪みそうになったけど、笑ってみせた。 「じゃあ、決まりね」 明日を、楽しみに……。
カーテンを開けて、窓も開けると、春の風が吹いていた。 気持ちいいほどに、部屋中を満たしてくれる。 今日は、きっといい日になる。 予感は期待になって私の心を豊かにしてくれた。 「ほら、浩平、起きなさい」 時計はゆうに通学時間を回っていた。 そして、思うこと。 (瑞佳ちゃんは、もう……) 浩平が過ごしてきた時間の長さを思って私の胸は押し潰されそうになった。 信じられないことを、私は甘受している。 浩平の部屋。 ここも浩平のことを私が忘れていたら、どうなっていたことか。 多分、私は発狂して、この部屋のものをぶち壊していた。 知らない人。 記憶から消えしまうのは、まさしくそういうことだった。 (……私は、忘れたりしないから……) そう、私は絶対にこの思い出を忘れたりはしない。
ゆっくりと、ゆっくりと、すべては流れていく。 「ほら、出掛けるわよ」 ひとつひとつが、思い出の欠片だ。 「ふわぁー」 大きく欠伸をする浩平をぽかりと叩く。 「なんで叩くんだよっ」 「こんなことだから瑞佳ちゃんが呆れて来なくなるのよ」 わざと日常を装って……。 「ぐ、痛いところを……」 いつまでも、こんな瞬間が続くことを祈って……。 「……出掛けるって、どこに?」 浩平が言う。 「あら、何を言ってるのかしら?」 私は笑う。 「どこだっていいじゃない」
春の商店街。 春の通学路。 春の並木道。 すべては光り輝く彩りに塗り替えられていく。 輝く季節へ。 浩平はもうひとりじゃない。 私もひとりじゃない。 誰かのために、生きてみて……。 誰かのために、笑ってみる……。 「すっかり春になってたのか……気づかないものね」 「由起子さんは、いつも朝は早くて、夜は遅いから仕方ないよ」 他愛のない会話。 こうして、二人で散歩することもなかったのだ。 でも、これからは……。 「これからは、もう少し早く帰って来ようかしら?」
例えば、朝。 いつまで経っても浩平は起きてこない。 私はそれに苛立ってしまう。 「学校に遅刻する!」 慌てて、階段を下る浩平の襟元を正してあげながら、 「そんなことより、朝食はどうする気?」 学校のことより、今を大切に……。
例えば、昼。 仕事もひと段落。 私は自信作のお弁当を机に広げる。 「うん、上出来ね」 時計を見て、今頃、誰かさんも昼食の時間だと思いながら、 「残してきたら、許さないんだから」 ひとりよりも、ふたりのために、作ること……。
例えば、夕暮れ。 思い切り伸びをして、茜色の眩しさに眼を細める。 今夜の夕食は何にしようかと、思い巡らせる。 「あ、浩平じゃない」 偶然見つけて、そのまま一緒に買い物に連れて行って、 「今日、何食べたい?」 荷物を持たせて、私はそう訊いてみる……。
例えば、夜。 夕食の後、浩平に晩酌させる。 今日一日のことを振り返って、語り合う。 「そう、そんなことを……瑞佳ちゃんの慌てっぷりが眼に浮かぶわ」 誰に似たんだかと苦笑して、今度は私の番で、 「でさ、そこの上司ったらね……」 何気なく、私という人間を知ってもらうため……。
そして、朝。 また、朝。 陽は巡り昨日という日は返らない。 でも、新しい一日の始まり。 終わらない日常。 いつか変わっていく日常。 その月日を、今、この時を……。 誰かと一緒に過ごせることの幸せを……。 分かち合う。 それは、幸せ。 ずっと、ずっと、心に残るもの。 忘れない。 だって、それは……。
「私、ずっと怖かったんだ」 公園の桜のつぼみを見て、 「だって、浩平は私の子供じゃないんだもん」 変化していく風の中、 「それに、私に母親なんて無理だしさ」 暖かな陽射しを浴びて、 「姉さんみたいになれないから」 しっかりと足を地面につけて、 「浩平のこと遠ざけて、見ない振りしてたけど……」 輝く季節の中を、 「やっぱり、家族だもんね……」 「……由起子さん」 「うん、家族なのよ。私たちは家族なのよ」 誰かと一緒に過ごせる喜びを、 「少し、気づくの遅かったけど……お待たせ、浩平」 抱き締めて、いつまでも護り続けたい……。
春の木漏れ日。 二つの影がひとつになって大きく重なって……。 誰かに必要とされること。 想いに応えること。 「家族の絆って、決して千切れたりはしないから」 いつかは姉さんに、 浩平の母親に、 出会う勇気も必要で、 「私は、浩平のこと離したりしないからね」 別れを告げる勇気も必要で、 いつか許しあえる時の中で、 「浩平の居てもいい場所は私の家なんだから、もう遠慮とかはしないで頂戴よ?」 甘えて欲しい。 あの泣いていた……いつまでも、泣いていた子供のころの浩平のままだったから……。 「もう、私は怖くないから……」 別れの時まで、家族として一緒に過ごしたい。 そして、いつか思い出に。
「由起子さん……!」 子供だと、ずっと思っていた……けど、今は。 「オレ大丈夫だから……」 「そうか、こんなにも大きくなっていたのね……」 胸の中にいる浩平は、育ち盛りの男の子で……。 抱きしめているつもりが、抱きしめられているようで……。 (……姉さんみたいにはなれないのは分かっていたのに、ね……) 他の人からは、どう見えるのかな? 仲のいい親子? 私としては姉弟が希望なのだけど……。 (……もしかして、恋人とか?) ……苦笑。 浩平に失礼よ、それじゃあ……。 「そろそろ帰りましょうか?」 意識してしまったら、人目が急に気になってきた。
帰るところのある幸せを……。 お帰りなさい、と言ってくれる人が家で待っていてくれる幸せを……。 冷たい空気ではなく、暖炉で暖められた空間を……。 望んで……。 「あ、そうだ」 家路を辿り行く中、ちょっとした提案をする。 「私は先に帰るから、浩平はもう少しぶらぶらしときなさい」 「え? 一緒に帰ったらいいじゃない?」 そうだけど……。 「いいからそうしなさい。浩平が帰ってきたら……」 言ってあげたい言葉がある。 いつも遅くて、顔もめったに合わせることなかったあの家で……。 ……夕食を作って待つことの幸せと、浩平を出迎えることの嬉しさと……。 『お帰りなさい、浩平』 冷たい外の世界から「ただいま」という浩平に私はそう言ってあげたい。
「今日は、何がいい?」 「えーと、何でもいいの……?」 「まあ、レシピがあれば、大抵のものは作れるわよ」 「じゃあ……」 少し迷ってから浩平が言う。 「由起子さんを食べたい――――ぐわっ!」 「殴るわよ」 「もう殴ってるわっ!」 他愛のない冗談を言い合って、 何気ない会話に興じて、 今までこんなこともしてなかったのかと、過去の自分を笑ってやる。 「冗談じょうだん。コロッケでいいよ」 「……ん? 昨日も食べたじゃない」 「それでもコロッケがいい」 「そう? 浩平がそう言うのなら私は構わないけど……」 昨日は牛肉コロッケだったし、今日はクリームとかにしてみよう。 「じゃあ、2時間くらい暇つぶしして来なさい」 「はいはい、分かりましたよ」 約束して、私たちは一端、分かれることにした。
………。 ……。 …。 悪戦苦闘の夕食の準備だった。 ここまで腕が落ちているとはショックだった。 勘が鈍っている。 指先にはいくつもバンソーコーが貼ってある。 「まったく、これじゃあそこいらの女子高生と変わらないじゃない」 自分に有利な点のひとつの崩壊。 由々しき事態だった。 しかし、今日は何とか合格点に入る出来栄えになった。 それだけでいい……。 時間が過ぎていく。 かちかちと時計の針は時を刻んでいる。 (……まだかしら?) 胸をときめかせて、今か今かと待ち続けている。 まるで、恋人との待ち合わせをしている女の子みたいだったので、私はまた笑ってしまった。 もう若くはないのだから……。
………。 ……。 …。 一時間。二時間。気が付けば8時を回っていた。 料理はとっくに冷めている。 なかなか帰ってこないぐうたら亭主でも気取っているのか。 「暖め直さないと……」 溜息を吐き出して、机に肘を乗せてみる。 もう少し待ってみよう……。
………。 ……。 …。 そして、待つこと6時間。 もうすぐ日付けが変わろうとしている。 私はようやくことの重大さを思い打ち震えてしまった。 事故。病気。事件。失踪。喪失。存在を……。 「まさか……」 その時、家の中に電話のベルが響いた。 (浩平?) 私は、慌てて受話器を手に取った。 「あ、もしもし、小坂さんですか?」 会社の知り合いの声だった。 明日は、出社できるのかという内容……。 「小坂さんがいないと仕事がはかどらなくて」 私は、曖昧に返事をしていた。
そして、時計の針が空を指すように、二つに重なった。 今日という日に終わりを告げる。 浩平は、まだ帰ってこない。 外は、あんなにも天気だった外の世界は、今は暗く、雨がざわめいていた。 浩平を探しに行こうと、私は傘を持って、玄関の扉を開ける。 そこには、夕焼け。 「え?」 あかい。大きくて、沈まない。いつだって、そこにある。 「……え?」 外は暗いままのはずだったのに……。 ここは、一体どこなのだろう? それに応えてくれるかのように、ひとりの女の子が私の前に立っていた。 「……永遠はあるよ」 カメレオンの玩具をもって私に言う。 「……ここにあるよ」
「……みさおちゃん?」 いや、どこか違う。 面影は似ていたけど決定的なところでみさおちゃんではないように思えた。 でも、見たことある……。 どこでだったか、とても身近にいたような……。 栗色の髪……赤いリボン……。 「…………みずかちゃん?」 うわ言のように呟くと、少女はくすっと笑い消えていった。 私が見ていたのは薄暗い雲と、その陰に見え隠れしている月とになった。 それは、大きな月。 もう、夕焼けはない。 「……あれ?」 私は、目を閉じた。 「うそ、でしょう……?」
………。 ……。 …。 気が付いたら定刻の時間を回っていた。 また仕事に集中していたようだ。 急いで荷物をまとめる。 「お先に失礼します」 私は同僚にそう挨拶して退出した。 もう狙っていたポジションは、回って来ないだろう。 課長に、と薦められたのも私は断ったのだから。 「小坂さん、飲みに行きましょうよ」 「また、今度ね」 私はそう応えるのが日常になっていた。 「ごめんなさい、付き合い悪くて」 時計を見る。 もうすぐ6時になろうとしていた。 「早く買い物に行かないと……」 お帰りなさいって言うために、私は家であの子の帰りを待っている。 ずっと、ずっと、いつまでも……。
……夏。 暑い夏の日。 私はひとりでお墓参りに来ていた。 『折原家代々ノ墓』 セミの声がうるさいくらいに山間の木々につかまって鳴いている。 「……久しぶりね、みさおちゃん」 水をかけて、花を添える。 ……と思い見たところで、すでに花が添えられているのに気づく。 ここに来る人は、限られていた。 「そうか……」 今すぐ探せば会えるかも知れない。 でも今の私には、その勇気がなかった。 「また、会えるかしら……?」 この夏の日に……。
……秋。 木の葉が紅く染まり散っていく。 短い季節。 不意に悲しくなって涙が零れてしまう。 ……優しくするんじゃなかった。 それ見たことか。 こうなるのは初めから分かっていたのだ。 大切な人が、突然……居なくなる。 それは、時に耐え切れないほど……悲しい。 姉さんの気持ちが、今ならよく分かる。 だから、こそ……。 前向きでいたいという姿勢は守りたかった。 前を見よう。 あごを引いて真っ直ぐに……。
……冬。 冷たい雨の音。のちに雪。 白い結晶が舞い降りる。 この町では珍しいもの。 でも、明日になれば陽射しに負けて、すぐにも解けて消えてしまう。 雪解けの水。 ほのかに光る日差しを浴びて、私の心も溶かしてしてくれるなら……。 草木の先端に、零れるシズクの糧になれるのなら……。 落ちていく玉のように、涙を零すことがなくなるのなら……。
……春。 穏やかな季節の到来は、風の中……。 そして、陽射し。 出会いと別れ。 交錯していく人の想い。 たくさんの人と出会って……別れて……。 これも日常で……。 それらを、甘受していく季節……。 でも……。 それでも、私は待っているのだ。 今でも、ずっと……あの子のことを……。
「うー、さすがに欠伸も出来なかったわね……」 この日は、卒業式……。 当然のように、折原浩平という名前は呼ばれることがなかった。 「……留年かもね」 有り得ないことじゃないので失笑してしまう。 「あれ? 由起子さんじゃないですか?」 「あ、瑞佳ちゃん? 久しぶりね」 この子と会うのも一年振りだ。 世間話に興じる。 もう瑞佳ちゃんにとっては、近所の知り合い程度の認識しかないのだろう。 あの子の名前は出てこない。 「瑞佳さん、そちらの方は?」 「えーと、由起子さん。里村さんも知ってるよね?」 「……はい。え? あれ? ……どうして? ずっと御礼を言おうと思っていたのに……」 里村さんのことは、私も覚えていた。 雨の日に倒れてしまい、浩平の頼みで面倒を診たことがある。 でも今は、浩平という接点がなくなって、私と会う必要はなくなっているのだ。
「いえ、いいのよ。大したこと出来なくて」 「……そんなことありません。ありがとうございました」 ぺこり、と丁寧に頭を下げられる。 「本当にいいのよ。それより……」 少し喉が震えた。 「瑞佳ちゃんのクラスって、人が少ないの? あまり居なかったみたいだけど……」 何を言ってるのか。何を言いたいのか。 「あ、それは転校していった子が居たからで……あれ? 名前……なんて言ったかな?」 「……相沢君のことですか?」 「うん、その子だよ。里村さん、よく覚えてるね、すごいよー」 「クラスメートの名前くらいは……覚えてとけ、と誰かに言われたような気がしますから」 「わー、わたしって駄目な子だもん」 「でも、ヘンですね。相沢君の代わりに留美さんが……」 「おーい、瑞佳、茜、こっちでみんなで写真撮ろって住井君が呼びかけてるよ」 「噂をすれば、なんとやら、ですね……」 「あはは、じゃあ、由起子さん」 手を振って、二人が去っていく。 ……私も家路に付いた。
……いちねん。 長い。とてつもなく長い。 これからも、こうして私は生きていくのだろうか。 来ない人を待つ……。 それでも、自然に体は動いて、夕食の準備に取り掛かっていた。 ずっと、憧れていた。 こうやって、誰かと家族でいられること。 誰かを待つ喜びと、待ってくれている人のいる嬉しさと……。 「今日は、肉じゃが。昨日は、カキフライ……備え付けは、ゴボウサラダでいってみよう」 随分、料理は上手くなっていた。 でも、意味がない。 誰かが、食べてくれないと意味がない……。 食卓に並んだ料理、すべてが空しい。 過ぎ去って行く時間は惨酷……。 私の側に、あの子が居ないから……。
……もう、やめよう。 明日からは、また仕事に生きよう。 仕事をして、何もかも忘れてしまおう……。 今までのように、これからを……。 姉さんと同じ……。 ずっと同じだった。 ただ、逃げ込んだ場所が違っていただけなのだ。 こっちの方が、楽だから……。 それとも普通に生きて、見合いでもしようか。 ……いえ、無理に決まってる。 もう、いやだ。 誰かを失うことはしたくない。 ひとりで生きよう。 幸せなんていらないから、不幸にはしないで欲しい……。
ピンポーン。 呼び鈴が鳴いていた。 出る気にはなれなかった。 でも、もうこれからは、ひとりで生きていくことになるから……。 強く在りたい……。 これは、その第一歩だった。 「はい」 『郵便です。荷物が届いています』 こんな遅くに? 「分かりました。すぐに出ます」 事務的に返して、判子をもって、玄関に向かう。 がちゃ。 玄関の扉が開かれる。 そこに、いた。
「はい、これは由起子さんにオレからの贈り物です」 両手でも持ちきれないくらいの花束を、あの子が私にプレゼントしてくれる。 「……馬鹿、こんなので騙されないからっ!」 「いや、ちょっと卒業式の打ち上げで遅くなっちゃって……」 「ご馳走作って……待ってるっていったでしょう?」 「だから、本当にごめん、由起子さん」 手の平を合わせてこちらに向かって笑いかける。 そう、こんなことで許してあげない。 もっともっと、いじめなくちゃ気がすまない。 「明日からは、夕食は浩平が作ること……いいわね?」 「ぐわー、味の保証はできないって!」 「それでも……作るの……!」 一年は長い……。 でも、こうやって瞬間、瞬間の喜びを分かち合えるなら……。 人に優しくするのは、優しくした分だけ、自分が優しい気持ちになれるから……。 「ただいま、由起子さん」 照れたようにあいつが言うから、私は……そう、嬉しいことで出てきた涙を拭って、前を見る。 そして、言うのだ。 「お帰りなさい、浩平」 この輝く季節への始まりに……。
「さようなら、浩平」 そして、少女の声が響いていた……。 嬉しそうに……。 悲しく……。 FIN.
長文、お目汚ししました。 以上です。
>361 最初に(1/42)を見たときにびっくりしたよ。 本当に、おつかれさまでした。 本スレにリンクは張らないの?
乙かれです〜 すみません 仕事中に読ませていただきました 泣きました(w 本スレで由起子さんに投票します
>>361 ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!
すでに吉井に投票してしまっていることを激しく後悔してます。
これ本当に最高です。
涙が出てきました。
「由起子さんシナリオ」と呼べそうなくらい完成された作品だと思います。
本スレにもう一度リンクを貼らせていただきますね。
これでお詫びにさせてください。
>>361 まず、あなたの熱意に素直に敬意を感じました。
本当に凄いと思います。
>>361 すごく良い。
構成力も文章力も中々だし、由起子の心情描写も丁寧でよかった。
ただ、あえて苦言を呈するなら、改行を節約すればもっと少ないレスでまとめられたのでは?
本レスのリンクから見に来て、42という数字を見たときは流石に少し引いてしまったから。
長いSS読み慣れている人ならともかく、そうでない人は、42を見た時点で読むの止めてしまうだろう。
内容が良いだけにすごくそこが残念。
でもまぁ、まとめても30レス弱にまでしかならないだろうな。
いや、内容は本当に良かった。そこは強調しときます。
まとまりも何も無い ただ長文を書き連ねればいいってもんじゃ無いだろう キャラの名を借りてだらだら書いたという感じ あと、不必要な改行は何とかならないか まあ、由起子さんのファンなら名前さえ出てれば満足だからそれでいいんだろうが
>>367 トーナメントSSだから別に構わないと思われ
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トーナメント用SSなんかに何求めてんだよ キャラ名さえ入ってれば総てマンセーなんだよ!ボケが!
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>>361 感想2言。
凄げ〜!!!そしてお疲れさま。
ひとことだけ、鉱脈というのは意外なところに有るものだ。
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>>319-360 正直、矛盾点が多く見受けられます。
浩平が現れたり消えたりしているのは単なるご都合主義ですか?
物語の構成は無きに等しいです(例えば、中盤の回顧のシーンが無くとも話は通じる)。
特に
>>359 の浩平が現れるシーンは取って付けたようで不自然です。
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
377 :
名無しさんだよもん :02/02/08 00:44 ID:tLNe0KgW
…このやりとりは何の支援なんだ?
ここで批判されるようなSSなら、かなりイイ!SSの証明。
>>319-360 冒頭のシーンはいいんだけど、最初の浩平とのやり取りがはっきり言って変。
あそこまで浩平の事に思いを馳せている直後に何でああ言うやり取りになるんだ?
この時点で一気に醒めてしまった。
後、自分の文章に酔っ払い過ぎてだらだらと話を伸ばし過ぎ。
もっと短くまとめられるはず。
長けりゃあいいってもんじゃあない。
後、致命的に問題なのが由紀子さんの心情とONE本来の流れとが表層的には
リンクしてるように見えるが、実際には不協和音を奏でている事。
もうちっと推敲すべし。
381 :
名無しさんだよもん :02/02/08 01:19 ID:204u4mSR
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>382 age荒らしに何を言っても無駄。 もし>376や>381が荒らしでないのなら……いや、何も言うまい。
>375 これがご都合主義なら、ONEそのものもご都合主義だよ 浩平は現れたり消えたりする生き物です
ONEは好きだけど、トーナメント本スレにリンクしまくって感動を押し付ける態度に
引いてしまった。
『泣いた』『感動した』と一つ覚えのように賛美する態度も、投票の口実にしている
ように見受けられた
あと、
>>375 と同様、浩平を話の都合に合わせて消したり出したりしているところが
どうしても納得できない。
由起子のファンなら、彼女が幸せになるだけで納得できるだろうが。
提案があるのですが、トーナメント支援用SSスレッドを「投稿用」と「感想用」 に分けてはどうでしょうか。 現状ではSSを書いた方も投稿しづらいと思いますし、少し批判的な感想を書いたら 直後AAを貼り付けられて揚げ足を取られるのでは感想を書く気も萎えるというもの です。 このスレッドは投稿専用にして、感想スレッドを別に立て、ここにSSを投稿された職人 さんは感想スレッドにリンクを貼るようにしてはどうでしょうか。
これからSSを投稿します。 長さは8レス、内容は・・・麻雀です。
「ふぅ、さっぱりした〜」 頭にバスタオルを巻いた名雪が、居間に入ってきた。 夕食後の水瀬家。あゆと真琴の二人は、秋子さんに買ってもらった 家庭用ゲーム機で、麻雀ゲームに熱中している。 最近、水瀬家では静かなブームなのだ。名雪も時々やっているらしい。 「あゆちゃんも真琴も、あんまりゲームやりすぎたら駄目よ」 「「はぁーい」」 そのやり取りをぼんやりと眺めている俺の隣りに名雪が座った。 心地よいシャンプーの匂いでふっと我に返る。 「ねえ、祐一。明日の約束、覚えてる?」 「・・・何だっけ?」 「もう〜。明日は私の陸上の大会でしょ」 「あ、そうだ、応援しに行くんだった」 我ながら間の抜けた返答だ。そんな事、すっかり忘れてた。 それを聞きつけたあゆが俺たちのところにやってきた。 「祐一君、今の話、ホント?」 「なんだあゆ。何か問題でもあるのか?」 「だって、明日はボクと映画見に行く事になってるのに・・・」 「あ・・・」 そういえば、確か1週間くらい前に、そんな事を言われたような気がする。 秋子さんが仕事先からもらったチケットを、あゆに渡したんだったか。 すると真琴もコントローラーを放り出して、こちらに口を挟んできた。 「ちょっと待ってよ。明日はあたしと『国際肉まん見本市』に 行くんでしょ。忘れたの?」
「ひどいよ、祐一・・・」 「映画のチケット、指定席なのに・・・」 「このイベント、明日までなのよ。どうするの祐一?」 俺は返答に窮した。どの約束も微妙に時間がかぶっていて 順番に、というわけにはいかない。いつもなら名雪やあゆは 譲り合いそうなものだが、よっぽど俺と行くのを楽しみに していたのか、退く気配はない。 「三人とも、喧嘩しちゃ駄目よ」 そこに、会話を聞いていた秋子さんが、仲裁に入った。 「それなら、麻雀で白黒つけるというのはどう?」 「麻雀で・・・?」 かくして、麻雀に勝った者が、俺を明日一日独占できる権利 を得ることになった。公平を期すため、秋子さんが参加する。 俺が入ると、誰かをアシストするかもしれないからだ。 俺に発言権はない。というか、俺は景品だ。 コタツの板をひっくり返し、麻雀牌を広げる。昔ながらの練り牌だ。 起家はあゆ。左回りに名雪、真琴、秋子さんの順に座る。 ギャラリーの俺は、あゆと秋子さんの手が見える位置に腰を下ろす。 もちろん、アドバイスは禁止されている。 こうして、運命を賭けた真剣勝負が始まった。
序盤は意外にも真琴が速攻でペースを掴む。 「チー!ポン!・・・ツモ!さあ何点かしら?」 「点数もわからないでいばるな!」 何でも食い散らかす、滅茶苦茶な打ち方だが、 そのスピードに他の三人はついて行けない。 速い流れの中で、名雪は面前で丁寧にアガリを重ねて、 懸命に真琴に追いすがる。出親を蹴られたあゆは、 いまいち流れに乗り切れないようだ。 南場に入ると、あゆにようやくドラ三のチャンス手が入る。 「うぐぅ、リーチだよ!」 三つ鳴いて四枚しか手牌のない真琴が放銃した。 「あう〜」 秋子さんは傍観者の立場を決め込んでいるのか、 目立った動きを見せていない。 あゆ、名雪、真琴の三者が僅差のまま、ついにオーラスを迎えた。 泣いても笑っても、これが最後の局だ。三人とも、 トップの可能性が残っているので、目つきは真剣そのものだ。 親の秋子さんが、優雅な手つきでサイを転がす。 「五ですね」 三人は配牌とにらめっこしながら、手作りを考えている。 めくられたドラに気付かず、一巡目で切りかねないほどだ。
運のいいことに、トップのあゆの配牌には、白が暗刻で入っていた。 早アガリにはうってつけの手だ。 秋子さんの方は――― 「☆※∬!?」 「静かにしてよ、祐一君」 「祐一さん、勝負の邪魔をしてはいけませんよ」 おれはパニックを起こしかけた脳をなんとか鎮めようとした。 あ、あ、あれは・・・。 三巡目。 「あら・・・?ツモりました」 そう言って、秋子さんが開いた手は国士無双。役満だ。 「「「ええー!?」」」 「このアガリで、私のトップですね」 親のアガリやめで、ゲーム終了。 あまりの出来事に、秋子さん以外の三人は言葉もない。 待てよ?秋子さんが勝ったらどうなるんだ? 秋子さんと・・・デート? 「祐一さん、明日はよろしくお願いします」 「は、はい・・・」 信じられないような逆転劇。だが、俺は見てしまったのだ。 あがる直前、秋子さんがツモ牌と王牌をすりかえるのを・・・。
日付も変わり、ひっそりと静まりかえった薄暗い廊下を、 俺は音を立てないように歩きながら、秋子さんの部屋に向かう。 コン、コン・・・。 そのドアを、ためらいがちにノックした。 「・・・だれ?」 「祐一です。お聞きしたい事があるので、入って良いですか?」 「こんな時間にですか?」 「どうしても、いま聞きたいんです」 「・・・わかったわ祐一さん。どうぞ」 秋子さんは寝間着の上にカーディガンを羽織っていた。 深夜の突然の訪問にも、さほど慌てている様子はない。 妙な駆け引きなどするつもりもなく、単刀直入に切り出した。 「秋子さん。さっきの麻雀、オーラスでイカサマしてましたね?」 俺が秋子さんの配牌を見たときには、すでに一、九、字牌――― いわゆるヤオチュウ牌が十二種もあった。サイの目が五で秋子さんの 山からの取り出しである事を考えると、積み込んだ可能性が高い。 だがそれだけだは八枚しか欲しい牌が来ないので、ドラをめくる前に 山を直す振りをして、四枚ぶっこ抜いたのだろう。そばにいた 俺が気付かなかったのだから、大胆というほかはない。
「あら・・・見られてたんですか?」 秋子さんは、意外なほどあっさりと、その事実を認めた。 「ええ。見えたのは、すり替えの時だけですけど」 「残念です。しばらく打ってなかったから、私の腕もだいぶ なまってしまいましたね。素人の方に見つかるなんて」 一体、どこの鉄火場で打ってたんですか?秋子さん・・・。 頭の中で疑問が渦巻いた。が、口にしたのはもうひとつの疑問だった。 「どうして、あんな事を?」 「三人とも、あの時、だいぶ熱くなっていました。あんな状態では 三人のうち誰が勝っても、あとでしこりが残りますから・・・ いっそのこと、私が勝ってしまおうと思ったんです」 確かに、秋子さんなら誰も文句は言えないな・・・。 「でも、イカサマを見られて、わたしは祐一さんに秘密を握られて しまいましたね。・・・困りました」 そう言って、秋子さんはため息をついた。 頬に手を当てる仕草が悩ましげだ。 「ははっ、誰にも言いませんよ、秋子さん」 「ありがとうございます、祐一さん」 いつのまにか、秋子さんがそばに来ていた。 顔を寄せて、俺の耳元でささやく。吐息が熱い。 「口止め料は・・・私の体でお支払いしますね」 な、な、なんですとぉ!
少しの間、眠っていたらしい。 ベッドの上で漂っていた俺は、ゆっくりと意識を取り戻した。 体を起こして周りを見渡すと、秋子さんが隣りで穏やかな 寝息を立てていた。 俺はさっきまでの情事を思い返してみた。 立場が上な筈の俺は、完全に秋子さんにリードされていた。 俺の上で秋子さんは激しく動き、俺も秋子さんも、 繰り返し絶頂を迎えていた。 (よりによって、自分の叔母と関係を持つなんて・・・) 快楽の波が過ぎ去った後に来るものは、後悔の凪だ。 だが、俺には目の前に転がり込んできた好機を 見逃す事など、到底出来なかった。 美貌の肉親との、ばれる心配のない密通。 それはあまりにも、甘美で背徳的な果実だった。 秋子さんを起こさぬよう、忍び足で俺は自分の部屋に戻った。 すぐにベッドに体を横たえる。疲れ切っているにもかかわらず、 気持ちが昂ぶって、なかなか眠りはやって来なかった。
「おはようございます、祐一さん。 ・・・どうしたんですか?なんだか顔色が悪いわね」 「ははっ、秋子さんとデートだと思うと、緊張して眠れなくて」 「もう、お上手ですね、祐一さんは」 「名雪の奴はもうでかけたんですか?」 「ええ。大会が終わったら、陸上部のみんなと打ち上げに 行くと言ってました」 あゆと真琴は、仕方ないので二人で映画を見たあと、 『国際肉まん見本市』とやらに行って、試食しまくるつもりらしい。 呉越同舟の二人はどんな騒動を巻き起こすのだろうか。 俺と秋子さんは支度を整えて、玄関から外に出た。 秋子さんの後姿を見ているうちに、ふっと頭に閃いた事があった。 もしかしたら、ゲーム機と麻雀ソフトを買ったのも、あゆにチケットを 渡したのも、麻雀による勝負を提案したのも、全て秋子さんの 計算だったのかも知れない。ひょっとしたら、俺にだけ イカサマを見られたことさえ。 「考え過ぎですよ、祐一さん」 と、秋子さんがいきなり言ったので、心臓が止まる思いがした。 いつのまにか、こちらをじっと見つめている。 自分の考えを口にする悪い癖が出てしまったのだろうか。 それともただ物思いに沈む俺の心中を見透かしたのか。 秋子さんの表情からは、何の解答も得られなかった。 「さあ、行きましょ。早くしないと、日が暮れてしまいますよ」 そう言って、俺の腕を取る。いつもと変わらぬ微笑みを浮かべて。 今日からずっと秘密を共有していく共犯者たちは、二人にしかわからない 視線を交わしながら、眩しい日差しの中を並んで歩き出していった。
>>397 サマを見抜かれた女雀士がチョンボ料の代わりに自分の身体で……という
麻雀劇画お約束の展開を逆手に取るアイデア、なかなか見事です。
にしても秋子さん……20年間無敗の女?
>>398 早速のレス、ありがとうございます。
感想をいただけると嬉いっす。
しかし、読むの速いですね・・・。
>>398 葉鍵では投稿の後に回さなくてもいいのだけど、
少なくとも無意味にageるのはやめてください。
SS投稿系スレは、すべてsageでお願いです。
>>400 感想を書くついでに、
>>387 の問題提起をしたかったのですよ。
普段は何の脈絡もなしにageたりしません。
402 :
名無しさんだよもん :02/02/08 14:02 ID:OE4DV8p5
読むときに前提知識がないと、まるでワケが判らない典型的SSの見本だね♪(w この0場合、麻雀をある程度知っていないと話にならないよ♪ イカサマを仕掛けるだけだったら別にトランプでも、スゴロクでも構わなかったのにね?(w
回し
廻し
mawashi
>>401 ということで、あなたのやっている行為は、
煽り屋や荒らしの呼び込み行為です。
これ以降、お控えいただきますようにお願いします。
レス不要。
407 :
名無しさんだよもん :02/02/08 14:18 ID:vUVa0ZQ6
作品に好意的な感想以外は、すべて煽り・荒らし扱いですか・・・ やれやれですね♪
ageられてるよ…。
>>387 それについては反対。ただでさえ、最萌関連スレッドは乱立しすぎとの批判があるんだから、
トーナメント保護の観点から言うと、これ以上関連スレを立てるのは避けた方がいいと思う。
どうせ、感想スレとか立てたところで、マナー守んない奴は守んないし。
感想なんて、書いた本人がどう思うかであって、周りがどう思おうと本来関係ないでしょ。
批判的感想にAAがはっつけられようが、荒らしが来ようが、負けずに投稿する姿勢が大事だよ。
それが出来なきゃ、短くまとめて本スレか、SS書くの止めるしかない。
このスレの住人(この言い方は正しくないかも知れんが) は、 どうしてここまで煽り耐性がなさ過ぎるんだ? そもそもこのスレ自体、SSスレでの煽りにまんまと乗せられて 一部の厨な人が先走って立てたものだし。 ホントに書き込んでるヤツ、21最以上か?到底そうは思えねーがな。
マジレスしちゃっといてなんだけど、この手の議論をここで起こすこと自体が投稿者には迷惑だよな。 ともあれ、投稿も、感想(批判的なのも含め)も自由に、マターリ行きましょうやってことでひとつお願いしたい。 吊られちゃったのはスマソ。
>>397 真琴が麻雀のルールなんて知ってるわけないやん…。
そもそもどういう時系列のお話なんだ?
厨房SSの良いお手本だね。
412 :
名無しさんだよもん :02/02/08 14:45 ID:HnfrfLB2
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から『まるで』何事もなかったかのようにどうぞ(ゲラゲラ ∧ ∧ |/\___________ (,,゚∀゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (,, ) < 久しぶりに来てみれば .( つ | こりゃまた とんだ厨房SSばっかりだなぁ オイ | , | \____________ U U | まあ せっかく感想書いといてやるよ \ ハイハイ 萌えた! 感動した! っとくらぁ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∧∧ (゚Д゚O =3 ⊆⊂´ ̄ ソ ヤレヤレ
>409
それは支援SSスレ住人は固定住人ではなく、日替わり住人が多いからだと思われ。
>408
激しく同意。
それと感想・批評・技法評価の目的で書くなら、みこぺーの訓練所を利用する事をお勧めするよ。
ttp://hakagi.net/ss/ 訓練所を利用した事のある書き手は多いし、最近は投稿も増えている。
ここを知らない書き手がまだ居るなら、一度は見に行った方がいい。
マジレススマソ。
>>397 とりあえず感想を。
秋子さんのクセ者っぷりがそこはかとなく発揮されていて良い感じ。
題材の取り方も、麻雀だからこその泥臭さを狙ったってことなんでしょう。
他のゲームじゃこの感じは出せないだろうし。
総評としては良品ってことで。
一つ気になったのは…あゆ萌えってコテハンの割に、これは秋子さん支援だよねぇ。(w
折角だから俺はこの支援SSを投下するぜ! というわけで、失礼いたします…。 まじでヘタレSSですが、みなさんのお目汚しにならなければ幸い…ですね。
どうしてこんなことになってしまったんだろう…。 今更後悔してもはっきり言ってもう遅い。 もとはといえば、今日俺が秋子さんと2人で買い物に行く約束を忘れて 自分の部屋でKanonというゲームをやっていたのがバレて 秋子さんを怒らせてしまったのが悪い。 だけど、今PCの前に座っているのは秋子さんで、Kanonをやっているのも秋子さんで…。 「祐一さん、どうしてあゆちゃんにお金を貸してあげなかったんですか? これではあゆちゃんがかわいそうです」 普段よりも少しだけ不機嫌そうな声が俺を現実へと引き戻す。 「祐一さんにはこのときおこずかいをあげたばかりだったはずですよ?」 困った顔をわざと見せつけるかのように俺の方を向き、 秋子さんは食い逃げ…もとい持ち逃げしたあゆを心配している。 「い、いや…このときはまだあゆのことを思い出せてなかったので 知らない奴にお金を渡すのはどうかと思いまして…」 「ダメですよ、祐一さん。例え知らない子でも女の子には優しくしてあげてください」 そう言うとモニタにゆっくりと向き直る。 女の子には優しく…その言葉が今日の買い物をすっぽかした俺の心をチクチク刺す。 「はい、肝に銘じておきます…」
しばらくして秋子さんが口を開いた。 「あら…わたしのジャム、香里ちゃんにも好評なのね」 ドキッ!! 「通学中に名雪も混じってジャムの話で盛り上がっていたなんて知りませんでした」 ほおに手を当てながら、モニタに映し出される我が子を凝視する秋子さん。 殺気だ…かすかに殺気を感じる…。 もしかして、怒ってるカナ? 怒ってるカナ? 「あの、俺は純粋にパンよりご飯のほうが好きなだけですよ…」 とっさに子供のような言い訳をするが、無論賢い秋子さんに通用するわけが無かった。 「あら、残念ね。お米を切らしてしまったので、ご飯好きの祐一さんのためにも 今日買ってくるつもりだったのですが」 にこにこしながらそう話す秋子さん。 明日の朝食はトーストにジャムのフルコースで決まりカナ? 決まりカナ?
「あ、違いますよ秋子さん。そこは下の選択肢を選ぶんです」 秋子さんが誤った選択肢を選びそうになったので思わず口をはさむ。 「あら…どうして『帰る』んですか? 祐一さんのことだからきっと『隣、歩けよ』と 男らしく真琴に言ったのかと思いました」 「いや、そう言われても、それだと真琴シナリオに…」 と言いかけたところで秋子さんが はぁ… とため息をつく。 「祐一さんは、自分の好みの女の子だけに優しくするんですね?」 目がマジだ。目がダンスしてないよ…。 水底1THzとも言われている秋子さんの頭の中では、 「買い物すっぽかし=わたしに優しくない=わたしが嫌い=否了承=ジャムの刑」 という「=」が持つ推移的性質(transitive)の本質を無視した方程式が 常に1秒以内に処理されて了承か否か判断しているのだろう。 「まぁ…では今回はわたしの思った通りにやらせていただきますね」 その後モニタの中の俺は何のためらいも無く一人で帰らせられていた。
「あゆちゃん、がんばって2階のベランダまで登ったのね…。 寒くて可愛そうだから「カーテン開けて」あげましょう」 「…えっ!?Σ( ̄□ ̄;)」 ……… …… … えいえんは、あるよ…
結局秋子さんは最後のエンディングまでプレイし続けた。 「ふふふ…いいお話でした。天使が起こした奇跡だなんてロマンチックでいいですね」 椅子からゆっくりと立ち上がると、俺の方を見ながらそう言った。 あゆシナリオが良かったのか、秋子さんの機嫌は少し良くなったようだ。 「ところで祐一さん、わたしのシナリオはないんですか?」 ごくいつものようににこにこしながら俺に禁句を聞いてくる。 …言えない…今の俺の立場と秋子さんの今日の機嫌を考えたら、 口が裂けても「ない」とは言えない…どうにかごまかさねば!! 「あ、ええと、あるらしいんですけど、俺もどこで分岐するのかわからなくて、いっつも逃してしまうんですよ…」 「あら、そうなんですか? 残念ね」 そういう秋子さんだが、口で言うほど残念そうにも見えない。 「でも、わたしはどこで分岐するか知っていますよ。祐一さんがわかっていないだけです」 そんなことを言う。あれ…? 秋子さんシナリオは確かにないはずだが…? 「あ、そうなんですか? どこだったんでしょう?」 「さぁ、どこでしょうね? ふふふ…」 俺の質問を軽く受け流すと、部屋から出ようとする…が、俺の方を振り返ると にこにこしながらこう言った。 「祐一さん。今度はわたしのお買い物に付き合ってくださいね」
以上です〜 うむ…なんのまとまりも無いダメSSだ…。 ドラム缶押してきます。
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本スレで感想を1つも貰えない様な糞SSでもここでなら 一つぐらい感想が貰えるんじゃないかと思ってる奴 それは大きな間違いだぞ! 本スレは糞SSでもムチャクチャ採点が甘いがここは違うんだよ! お前らは多重房の口実の為だけに支援SSとか言うのでも貼ってろ!
>>422 kanonの登場人物がkanonをプレイするという、
メタ風味のコンセプト自体は良いと思う。
でも最萌えの試合のために、
にわかごしらえの感があるのが残念。
時間があったらもう一回この路線で挑戦して
ほしいなーとか思ったり。
鳥肌実 鳥肌実で御座います。 打倒自民党 打倒共産党 くたばれ公明党で御座います。 天皇陛下、ご推薦。鳥肌実 鳥肌実に熱き一票を。 私の 私による 私の為の政治。王政復古の大号令で御座います。 今日本が一番しなければ成らない事は何か?戦争で御座います。 私の基本政策は撃って撃って撃ちまくれで御座います。 撃ちてしやまむ。全弾撃ち尽くし外交を貫いてまいります。 ご声援有難う御座います。宮内庁お墨付き鳥肌で御座います。 個人の幸福より国家の繁栄。消費税80%は当たり前。 国民当然の義務で御座います。 今、不況のどん底で喘いでおる日本。何をすべきか? 徴兵制度の復活であります。男子は8歳から65歳まで兵役を! 女子は産めよ増やせよの富国強兵政策を全うしていただきます。 少子化などとんでもない!サッカー・ベースボールなど毛唐の 玉遊びに一喜一憂してる暇は御座いません。 先の大戦による同じ失敗を繰り返さない為にも 無敵の軍隊が必要なのであります。 陛下とともに42年。鳥肌で御座います。 朝鮮半島は今や、負け犬根性一色で御座います。 ボロツキ国家北朝鮮に 拳を上げましょう!!! 目には目を!!ミサイルにはミサイルを!! 威嚇射撃ではなく全弾命中で御座います。 テポドンが恐くて国家の頭が勤まるか!!! 私の辞書に平和の二文字は御座いません。 和平の二文字も御座いません。 鳥肌実 鳥肌実はホップステップ玉砕で頑張ってまいります。
∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (,, ) < 久しぶりにSS読みに来てみれば .( つ | こりゃまた とんだ厨房SSばっかりだなぁ オイ | , | \____________ U U | まあ せっかくだから感想書いといてやるよ \ ハイハイ 萌えた! 感動した! っとくらぁ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∧∧ (゚Д゚O =3 ⊆⊂´ ̄ ソ ヤレヤレ
431 :
名無しさんだよもん :02/02/09 21:41 ID:Oppf1MmE
ウシャシャシャシャシャシャ 煽るのってターノシーイヒッツ!
>>431 まぁ、そんなに自暴自棄になるなよ。
誰もお前らの発言なんてまともに読んでいないのだから(w
433 :
名無しさんだよもん :02/02/09 22:01 ID:Oppf1MmE
>>432 まぁ、そんなに自暴自棄になるなよ。
誰もお前のSSなんてまともに読んでいないのだから(w
天皇担いで真っ暗です、真っ暗です
板的にSS職人潰しが流行る中、よくこのスレは頑張ったよ。 正直200もちゃいいほうだと思ってたからな。 だが、これだけ基地外の遊び場と化してはもう終わりだろう。 正常化の努力も実らず、か…。 さらば支援SSスレ。 それでも、俺はここが好きだったぜ。
行数いってるのは長いSSがパカパカ貼られてるからだろ 内容的には酷いもんだよ、スレ分けした意味無し!
内容的には酷いもんだ、って言えることは、少なくとも目は通してくれた ってことだよね!? ありがとう、誰も読んでくれないような駄文を見てもらえたってだけで、 本当に嬉しいよ、俺。もうそれだけで胸がいっぱいだ!! 欲を言えば、どこが酷いのか教えてもらいたいとこなんだけど、贅沢 は言わないことにする。また今度も斜め読みでもいいから、俺のSS みかけたら、よろしくな!
>>437 最萌SS=酷い内容の図式だけで喋ってるだけでしょ。
何が酷いのか一々言えたらたいしたもんだ。(w
最萌潰したい奴が、つつがなく決勝までいきそうな状況に焦り 多重するも票は削られって現状で搦め手でSSの方を潰す手に 出てきたと空想してみる。
>>439 SS投稿スレまで荒らしまくっているようだから、
ただの愉快犯だと思われ。
この間の分裂騒ぎのときに、味をしめたんだろ(w
SSが嫌いだったら、わざわざ投稿スレにまで来る必要ないし、
SSに恨みをもつ者なんているわけないしな。
まあ、アフォは放置でいきましょう♪
535 :名無しさんだよもん :02/02/09 21:41 ID:Oppf1MmE
ウシャシャシャシャシャシャシャシャシャ
煽るのってターノシーイヒッ!!
433 :名無しさんだよもん :02/02/09 22:01 ID:Oppf1MmE
>>432 まぁ、そんなに自暴自棄になるなよ。
誰もお前のSSなんてまともに読んでいないのだから(w
548 :名無しさんだよもん :02/02/10 04:03 ID:iFBYQJD6
なんだ、所詮エロゲーかよ
436 :名無しさんだよもん :02/02/10 04:41 ID:iFBYQJD6
行数いってるのは長いSSがパカパカ貼られてるからだろ
内容的には酷いもんだよ、スレ分けした意味無し!
なんだかんだ言って結局釣られるここの住人萎え。
最初から掲載していただけますか? >白い微笑の人
444 :
名無しさんだよもん :02/02/11 10:38 ID:K0LDeacn
揚げ
445 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:40 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/1 夏はもうそこまで来ていた。 冬の寒さは少しずつ春の陽気で緩み、町中を白一色に染めていた雪も、嘘のように消えている。今は窓から見えるプラタナスの緑が目を刺して眩しい。生命力に溢れた彩り。 「あ、駄目ですよ祐一さん、動いちゃ」 窓の外へ目を向けた俺を、目の前に座っている栞がとがめた。手には水彩絵の具筆と、スケッチブック。俺の似顔絵を描こうと四苦八苦しているらしい。 絵を描く栞はいつも真剣だ。それはいつだって、例えば学校の美術の時間だろうが、授業中の落書きだろうが、例えば今みたいに…サナトリウムのベッドの中で、見舞いに来た俺を描こうとしている時だって。 白い手が動く。一筆一筆、その物の存在を確かめるように動く栞の手が俺は好きだ。 「ほんと真剣だな」 それでもつい野次をいれてからかってしまう俺である。 「なんでそう一生懸命描けるんだかな」 「…よくわからないですけど、多分…残したいんだと思うんです。自分の記憶の中に」 「写真じゃ駄目なのか?」 「写真はそのものを映してくれますけど、私が見たものを映してくれませんから。それに絵を描く方が覚えられるんです」 栞はそう言っていつものように晴れやかに微笑む。 「いつ、私自身いなくなってしまうかなんて、わからないですから」 しかし、その時俺はなんとなく、栞が『いなくなってしまう時期』という物を予感していた。自分でもロマンチックな空想だとは思うが、きっと彼女は、そのスケッチブック…紺色のリボンを結んだ茶色いA5版の…それを使い切るまでは果たして生きてはいないだろうと。 俺も、その時の栞の笑顔を忘れたくなくて 「…そうだな」 そう言って長い間栞を見つめていた。
446 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:41 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/2 奇跡はおこったのだろうか? ある意味それは正解である。彼女は自分の誕生日を過ぎても生きていることができたのだから。 だが、『死ななかった』というのと『病気が治った』ということは必ずしも一致しない。その奇跡と名づけるには足らなすぎる『救い』は、栞を癒してはくれなかった。 『よくあるんですよ。患者が生きることを本当に望むと、医者の出したカルテ通りの日時には亡くならないことが』 栞の主治医はそう語っていた。 『人間の命はわからないものですよ。特に愛情が絡みますとね』 その厳粛そうな老医師は、ほんの少しだが目を細めた。 だが、状況は変わらない。それどころか栞の病は刻一刻と栞の命を削っている。もはや学校に行くのは不可能なので、今栞は家の側のサナトリウムで療養生活を送っていた。 そして俺はほぼ毎日のように彼女の所に押しかけている、といった感じだ。
447 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:42 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/3 「きゃっ!!」 栞の小さな声がして俺は我に返った。 「どうした?!!」 見れば栞はスケッチブックに頭をもたせかけてぐったりとしていた。 「えへへ…なんか、はしゃぎ過ぎて疲れちゃったみたいです…」 そう言って笑顔で体を立て直す栞。 真っ白な寝巻きを着た栞は、その寝巻きに負けないくらい青白い顔をしている。その笑顔も、どことなく翳りが見うけられた。 「おいおい、絵は止めにして、とりあえず寝てろ」 「……はい……」 俺が体を支えてやると、何故だかその栞は変に軽く、こんなにも…細かった。 急激に、胸の深い部分が抉れるように痛んだ。 「俺はもう帰るからさ。ゆっくり休めよ」 病気に触るといけないからな。そう言って栞の部屋をあとにしようとしたその時。 「待ってください!」 小さな声で栞が俺を静止した。 「行かないで…」 もっと小さくか細い声で栞は俺の腕を掴んだ。 「側にいてください…手を、握ってもらえますか」 そう言って水のように冷たい手を差し出した。 俺は栞の手を力の限り握り締めた。少しでも俺の体温が栞を暖めることを期待して。
448 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:44 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/4 「そうだ、栞」 穏やかで、なんとなく空虚なその間を突然俺が破った。 「いつかまた外に出かけないか?」 「え…?」 唐突な提案に、栞は目を丸くした。 「例えばどこにですか?」 「どこでもいいけど…できれば、野原でピクニックと洒落込みたい気分だな。 こんな所にいつまでもいたら気が滅入るだろ?!いくら安静にったってたまにデートくらいは許されるだろ」 栞は、しばらくぼんやりと虚空を見つめたいたが、やがて満足そうに頷いた。 「はいっっ……!是非、連れて行ってください、祐一さん!!」
449 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:44 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/5 俺が香里にその話を聞いたのは、栞と約束をしたすぐ後だった。 いきなり香里が投げ捨てるように、俺に紙の束を放ったのだ。 「うわ…!おい、香里!なんの恨みだ!」 「あげるわ、それ」 「あ、あげるわって…」 栞の寝巻きと同じ色、真っ白な紙束に、事務的な紺のボールペンでたくさんの薬品名が書かれている。医師の処方箋だろうか? 「おい、これ栞に渡さなけりゃいけないんじゃないのか」 香里が自分の髪をぐしゃぐしゃと弄びながら答える。 「だから…あんたが栞に渡して」 「理由はなんだ」 「なんでもよっっっっ!!!」 香里が叫んだ。その声が、前に聞いた香里の泣き声と同じに聞こえたのは、俺の気のせいではないだろう。 一瞬取り乱した香里だったが、すぐに彼女らしく我に返った。 「…ごめんなさい。やつあたりだったわね」 「気にするな」 「いいえ、気にしなきゃいけないのよ、私は…」 どことなく憂いを帯びた目をして、香里は俺を見る。 「貴方に相談しなきゃならないことがあるのよ。大切なこと」 思いつめているような様子が気掛かりで、俺はその先を聞くことになった。
450 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:45 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/6 「安楽死って知ってるかしら」 香里が出した相談というのは、とてつもなく単刀直入に始まった。 「・…成る程」 その切り出しで、大体わかってしまった。 「栞の、ことだよな?」 「ええ・・……あの子のことよ」 今にも泣き出しそうな表情で、香里は繰り返した。 「……その処方箋はお医者さんにかいてもらったの。その…死ねる薬を、使うときがあるならって」 治る見込みがないものね、と香里は薄く笑った。 俺にはよくわからなかった。何故今更になって、香里はそれを俺に渡すのか。そして、何故…彼女が栞の死を望むのか。 「どうしてだ。香里。あいつはお前の妹じゃないのか」 「妹だからよ……!」 押し殺した声を搾り出す香里。また、栞といた時とそっくり同じように、胸の深い部分が痛んだ。 「もうあの子は…助からない。あの病気は治らない。これからもっと酷くなるはずよ。知ってるでしょう?」 知らないとは言えなかった。彼女の変調に香里も俺も気づいていたのだから。 「あの子、私に向かって言ったのよ。『この頃背中にキリで穴を開けられているみたいなんです…』って。笑顔で」 まるで栞でなく香里の背中が痛んでいるように、香里は続ける。 「これからもっと痛みがひどくなるなら…もし、栞がそうしたいと言うなら、私も両親も、賛成するって決めたわ」 だから、何なのだろう。その後の香里の言葉は続かなかった。 「俺が……栞に聞けってことか…今のうちに死にたいかどうか」 「………………………」 俺の言葉とほぼ同時に。 ぽろぽろと、香里の目から涙が零れた。 「・・……ごめんなさい…ごめんなさい・・………」 俺の腕にしがみついて。 ずっと、香里はそればかり繰り返していた。
451 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:46 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/7 「うふふっ」 緑の草が一杯に続く野原で、栞は笑ってばかりいた。 「余程外に出られるのが嬉しかったんだな」 「違いますよ。祐一さんと・…デート、ですから」 そう言って栞は顔を赤らめた。俺もなんとなく照れてしまって、次に返す言葉がみつからない。 「ほら、祐一さん!!早く行きましょう!!今日一日しか外に出るお許しが出てないんですから!!」 ざっざっざっざと、栞が俺を置いて走っていく。ひらひらと栞の帽子についた青いリボンが揺れる。 ペパーミントグリーンのワンピースを着て、麦藁帽子を被った栞は、なんだか……本当に普通の女の子のようで、病気だというのが嘘のようで、悲しいくらい切なかった。 「・・……」 ズボンのポケットに入った処方箋を確かめる。栞の命の重さと比べるには格段に軽い、それ。 渡すのは、デートを楽しんだ後でもいい筈だ。それぐらいの幸せは許してもらおう。 俺は急いで栞のもとに走った。
452 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:48 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/8 一日はあっというまに過ぎてしまった。 栞が作ったという(果たしてどこで作ったのか)巨大重箱四段入り弁当を完食し(死ぬかと思った)草むらに寝転んでとりとめもない話をした。 でもどの瞬間も栞は笑ってばかりいて、どんなにくだらない、とるにたらない話でも、俺達はその一瞬一瞬を惜しむように、笑ってばかりいた。 そして、デートはお開きになった。 「寂しいですね…あともう一日、デートの日があるといいのに」 しみじみと呟く栞の傍らで、俺はその横顔を眺めていた。でもそこには、死んでしまうことに悩むような影は少しも見られない。ただ幸せそうで…強く、微笑んでいた。 俺は立ち上がる。 ズボンのポケットから、栞に白い紙束を手渡した。 「…なんですか、これ?」 まるでグリコのおまけの中身を聞くような気軽さで、栞が尋ねる。 また、胸の底が激しく痛んだ。今度は突き刺すように、激しく。理由などわからない。 栞は、自分が死ぬことなど半ば案じていないように、毎日を送っている。隔離されたサナトリウムの生活に幸せが見出されるなど、そんなのは嘘だ。本当はもっと…普通の女の子のように、生活できる筈だったのだ。それなのに俺は…こんなものを、渡そうとしている。 「………栞、それは処方箋だ」 自分の声は今まで聞いたことも無いくらいひきつっていた。言いたくない言葉が堰を切ったように溢れてくる。
453 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:49 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/9 「もしその薬を飲めば、お前は楽になれる」 「………………………」 「楽に、死ねる」 そう。多分苦しくなく、幸せの絶頂で死ぬことも出来る。 「……どうする。今ならまだ、間に合う」 「・……………………」 この俺より一つしたの少女には、酷な選択だ。正しい答えなどある訳が無い。ただ楽か否か、それだけの答え。くだらなくて、重荷になる馬鹿みたいな。 「・………」 栞は長い間その処方箋に目を通していた。 ちらりと、俺の目を見ると、栞は。 ばりり。 その処方箋を引き千切った。
454 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:50 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/10 「・・……………?!」 あまりの決断の速さに、俺は言葉を失う。 栞は微塵も迷いの無い様子で、処方箋を破る。半分を半分に、その半分をまた半分に。瞬く間に、処方箋は細かい紙のカケラになってしまった。 「祐一さん」 ばっと、振りまくように細かい紙をその場に投げ捨てる。無数のカケラは季節はずれの雪のように、さらさらと風に舞って落ちた。 「私のこと、かわいそうだって思いますか?」 振り向きざま、栞はこんなことを問うた。 「すぐにでも死にそうな病で、もう助かる見込みもないから、せめてもの救いが死だって、そう思いますか」 「…ああ」 そうかもしれない。そう思っていなけば俺の胸はこんなに痛まなかったのだろう。 その答えを聞いて、栞は穏やかに笑った。 「…馬鹿にしないで下さい、祐一さん。 私、今幸せですよ。……去年の冬のこと、覚えてますか。」 それは、起こらない奇跡に絶望した少女が、最後まで普通の女の子として精一杯生きようとした、季節だっただろうか。そして奇跡は…起こらなかった。彼女は治らなかった。 「あの時から私、ずっと幸せです。それはきっと、いろいろなことが見えるようになったから。 日常の、どうでもいいようなことの積み重ねが。 例えばおひさまが上るとか。それが見られただけで、私幸せなんです。また一日、精一杯生きられるぞって。 例えばおつきさまが上るとか。それだけでも、一日精一杯生きたぞって、自分を誉めてあげられるんです」 おめでたい話でしょう?栞は俺の顔を覗き込むようにして言葉を繰っていく。
455 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:50 ID:UxZHKV9i
一発栞支援シリアスSS・『名残雪』/11 「本当に、毎日…お姉ちゃんや、お父さんやお母さんや、それと・……祐一さん。みんないてくれる。嬉しいです。毎日がきっと幸せのカケラに溢れているんです。私は失いそうになってようやくそれに気づくことができました」 何故こんなに栞の目は優しいのか。それがやっとわかった気がした。 恐れることなど何も無かったのだ。明日死ぬかもしれない、それは生きているならいつでもつきまとう命題だったのだ。 「祐一さん。起こらないから奇跡って言うんです。でも、起こる必要がないから、奇跡って言えるんです」 そして栞は、最後にこう言った。 「どんなに痛くたって、私生きていたいです。幸せでいたいんです。家族や、友達や、……祐一さんと、一緒にいて、幸せのカケラを探していくんです」 不意に泣きたくなった。自分の心の痛んでいた部分が丁度かさぶたにおおわれるように消えて。その痛みだけが外に押し出されたようで。涙腺が痛いくらいに大粒の涙が溢れ出した。 「……祐一さんったら、泣かないで下さい」 よほど酷い顔で泣いていたのだろうか。栞が自分の帽子で俺の顔を覆った。 全く、どちらが年上で、どちらが病人だかわかったもんじゃない。 この冬だけで、少女はもう、大人になっていたのだ。もう泣いていた彼女ではないのだろう。 俺は帽子のつばを押し上げる。 そこには、俺の心にしこりのように残った重い雪の塊をとかしてくれるような栞の笑顔がある。 今でもそこに、ある。
いちいち上げるな。 うぜぇ。
457 :
玉砕小ネタ人 :02/02/11 19:57 ID:UxZHKV9i
>>446 >>447 >>448 >>449 >>450 >>451 >>452 >>453 >>444 >>445 祐一:お目汚しになりましたが、己の萌えを賭けた栞SS『名残雪』だ
栞:勢いだけ話ですね
祐一:いま読んだ琉一さんやらはね〜さんやらの支援とは比べ物にならないな
栞:でも…凄く、書きたかったみたいです。『栞さんの良さは儚さと強さと心強さなんだ!!』っていう私論で
祐一:栞支援に少しでも役立つといいな
栞:しんみり感想述べてる暇合ったらさっさと栞de ALL Nightの第二弾でも考えてください!!
祐一:ううう…ネタ詰まりが苦しい…悲しいけど、これって戦争なのよね
栞:誰の真似ですかっ!!!ということで。栞陣営さん!!お互い頑張りましょう!!
こっちにリンク張ってどうすんだ? ヴァカか?
>>1-2 を読んでから使うと良いと思いますよ
万に一つ、分断される可能性もありますから
千鶴さん支援にお借りします
6レス分【夜が来る!】です
[耕一] 走っている。 夜の闇のなかを、ただひたすらに疾駆していた。 自分のなかの獣が、心臓を食い破らんばかりに急き立てる。 まだだ。まだ止まるわけにはいかない。 家に戻るのは、警戒の手薄な今しかない。 何喰わぬ顔で玄関から入って、何喰わぬ顔で部屋に戻ってしまえばいい。 たかだか直線距離で十メートル程度。 それさえやり過ごしてしまえば俺の勝ちだ。 頭まで布団をかぶって朝までタヌキ寝入りをしてしまおう。 朝だ。朝になれば、梓が合宿から帰ってくる。初音ちゃんも友達の家から戻ってくる。 明日の朝になってしまえばこっちのものだ。 それまでは、廊下で百鬼夜行が行進したって部屋から出てたまるか。 出かけるときに油を注しておいた玄関の戸は、するすると音もなく開いてくれた。 あとは部屋までの距離を踏破して立てこもるだけだ。俺は半ば成功を確信する。 その刹那――。 玄関の照明がパッと点けられて、俺のこそ泥じみた間抜けな姿を照らし出していた。 柳のようにすらりとした容姿の女性が、優しく微笑んでいる。 「おかえりなさい耕一さん。遅かったんですね」 「ち…千鶴さん。この時間はTVを観てるはずじゃ…」 「ビデオに録ったんです。今日はお料理に専念したかったから…」 この人は本気だ。 俺は自分の運命を呪うしかなかった。 千鶴さんは鼻歌まじりに手料理を温め直してくれている。 俺のために作ったと言って出されてしまっては、もう覚悟を決めるしかない。 俺にできるのは、念仏を唱えながら十字を切って神に祈ることぐらいだった。 スプーンを口に運ぶ直前、どこかで見たようなキノコが食材として使われているのに気が付いた。 <続く 1/6>
[四姉妹] 山盛りのまま残された皿を、梓がうさんくさげにスプーンで突いていた。 不揃いにぶつ切りにされた野菜の間からは、気味の悪いキノコがほとんど原型のまま飛び出している。 「で…。これを喰った耕一は錯乱状態になって外に飛び出していったわけだな」 そのキノコの恐ろしさを、姉妹の誰もが骨身に染みて理解している。 知らせを聞いた姉妹は、外出先から数時間のうちに家に集まっていた。 「だって、隠し味になると思ったのよ…」 「アンタは進歩ってモンがないのか!?」 千鶴は言われるままにひとりで小さくなっている。 さらに詰め寄ろうとする梓を制して、初音が間に入った。 「それより、大事になる前にお兄ちゃんを見つける方が先じゃないかな?」 ひとり建設的な末妹の意見にうなずいて、楓は手にしていた図鑑をぱたりと閉じた。 「耕一さんが反転したのは初めてだから、どうなるか予想がつかない」 八つの瞳が、従兄の青年が消えた夜の闇を見つめる。 長い夜になりそうだった。 [鬼] わき起こる衝動のままに夜を跳ぶ。 今の俺を止められるモノなどこの地上には存在しないだろう。 実に気分が良かった。 せっかくの機会だ。この夜を味わい尽くさない手はない。 ――人間の多い場所に向かうとしよう。 内なる声に従って、俺は市街地のひときわ目立つ建物に向かって移動を始めた。 <続く 2/6>
[四姉妹] 「はい……、はい、分かりました。対処はお任せしますが、何かあったらすぐに連絡をお願いします」 千鶴はいつになく強ばった面持ちで電話を切った。 「仕事関係で何かあったわけ?」 梓が素っ気なく訊ねる。 すぐにでも行動に移りたいのにどうしていいか判らない。そんな苛立ちが仕草の端々に仄見えていた。 「旅館の露天風呂にのぞきが出たらしいんだけど…」 「のぞき? こっちも面倒が起こってるっていうのにな。ヒマ人てのはどこにでも居るもんだね」 「それなんだけどね。十数メートルの岩場を一気に駆け上ったとか、 助走なしで十メートル以上の距離を跳んで逃げたって証言があるらしいの」 「………」 「やっぱり…お兄ちゃんかな?」 「そう考えるのが自然でしょうね」 「どどどうしよう…、お兄ちゃんこのままじゃ警察に捕まっちゃうよ」 「あたしゃあんまそっちの心配はしてないけどね」 もし話が通じないようなら実力で取り押さえるしかない。 しかし、あの柏木耕一を取り押さえるのがどれほど困難なことか――。 少なくとも、地元の警察では荷が重いのは間違いないだろう。 テーブルを囲んだ姉妹たちからため息が漏れた。 「あいつ、何がどう反転してるんだろうな…」 [鬼] 市街地の旅館はいまひとつだった。 何かが決定的に物足りない。 しばらくして、普段から質の高いエモノを見過ぎているせいだと気が付いた。 ――そうだ、最高のエモノはすぐ近くに居るじゃないか。 灯台もと暗しというヤツだ。 そう考えた俺は、もと来た方角に引き返すことにした。 <続く 3/6>
[四姉妹] 「ふええん、びっくりしたよう」 初音はほとんど泣きべそをかいている。 数分前に、耕一らしき人影がこの柏木家の浴室に現れたのだ。 そのとき浴室に居た楓と初音が、疾風のように逃げていく人影を見ている。 人影の背格好は、柏木耕一のそれと一致していた。 「しかし、耕一もやることがせこいな…。のぞきばっかり」 「でも、それだけで済んでよかったじゃない」 「まあそれはね。良いかどうかは知らないけどさ」 「でも、どうして私と梓じゃなくて楓と初音のときに来たのかしら?」 「……姉さん、それは深く考えない方がいいと思う」 一瞬しらけそうになった雰囲気のなかで、梓の声が響いた。 「しかし、これで耕一が近くにいることは判ったわけだ。 亀姉も荒事だけは得意だろ? 責任持って後始末してもらうからな」 「そういう言い方はないでしょう。もう…」 具体的な行動が見えてくると、梓は俄然元気になる。 [鬼] うかつだった。 最年長の女は充分に警戒していたものの、その下の戦闘力を侮りすぎていた。 最初から長女はおとりだったのだろう。 侮れない同族を迂回して離脱しようとしたら、待ちかまえていた次女の攻撃を死角から受けることなった。 息の合った連携が立て続けに襲ってきて、俺は逃げるタイミングを逃すことになる。 そして後頭部にフライパン(シルバーストーン加工)の一撃を受けて、俺の意識は闇に沈んでいった。 <続く 4/6>
[耕一] 「まあ、今回は耕一も被害者みたいなもんだろ? 誰かさんが性懲りもなくキノコなんか使うから…」 目を覚ますと、千鶴さんにお説教する梓の声が耳に入ってきた。 どうやら、俺は客間に敷いた布団に寝かされているようだった。 後頭部がズキズキと痛い。 「でも、味は良くなるんだし…」 「副作用がシャレになんないだろ!」 小さくなりながらも弁解を試みる千鶴さんに、さらに追い打ちでツッコミが入る。 これを聞いてると、どっちが年上だか判らない。 「あ、お兄ちゃんが気が付いたみたいだよ」 真っ先に俺に気付いてくれたのは初音ちゃんだった。 続いて楓ちゃんが新しい氷嚢を持って来てくれる。 「耕一さん、大丈夫ですか?」 後頭部をさするとちょっとしたタンコブができていたが、別にどうということはない。 「みんなに迷惑かけちゃったな」 「ごめんなさいね。耕一さん。次こそはちゃんと作りますから」 「いいよ。千鶴さんだって悪気はなかったんだし」 言葉の後半部分が少し気になったが、俺は鷹揚に笑ってみせた。 長い不安の夜が終わって、ようやく柏木家にも平和な日常が戻りつつある。 ――ふと、テーブルの上に残っていたキノコと図鑑を見比べていた初音ちゃんが声を上げた。 「でも、このキノコ、この前のとはちょっと違うみたいだよ」 「セイカクなんとかっていうけったいなキノコだろ? アレは忘れようったって忘れられないって」 梓が気味悪げにキノコをつまみ上げて、初音ちゃんの後ろから図鑑をのぞき込む。 「たしかに見た目はそっくりだけど、ほら、こっちは傘の下に白い斑点があるよ」 初音ちゃんは指をずらして、セイカクハンテン茸と書かれた項目の一つ下を指した。 「こっちは『軽度のめまい、腹痛』ぐらいしか症状はないみたい」 「へえ、セイカクハンテン茸モドキねえ。って、ちょっと待てよ。そうすると…」 「一カ所に固まって生えてたのを採りましたから、料理に使ったのはぜんぶ同じキノコですよ」 その場の全員の視線が、俺ひとりに向けられた。 <続く 5/6>
「つまり耕一さんは、最初からセイカクハンテン茸を口にしていなかったことになりますね」 楓ちゃんの冷静な分析を境に、時間が停まった。――ような気がした。 「………はは、そういう考え方もあるかな」 凍り付いた刻のなかで、八本の視線が矢のように俺に降り注いでいた。 まずい、実にまずい。 「残念だよ、耕一。あんたとはよくどつき合ったけど、本気でやったことはなかったのにな」 どつき合いというが、片方が一方的に殴るのをそう呼んでいいものだろうか。 それはそうと、梓の体重は明らかに増加していた。 「ちょっと待て梓、拳はやめろって……。いや、脚はもっとダメだ」 全身凶器に変貌しつつある梓から逃れようとして後ろを振り向くと、冷たい水のような眼差しに出会う。 長い転生の果てに、哀しみも怒りも呑み込んで透徹した静かな瞳。 楓ちゃんの“可哀相だけど明日の朝にはお肉屋さんに並んでしまうのね”という視線が俺を射抜いていた。 「……耕一さん。来世でも私を見つけてくださいね……」 「あ……あう」 最後の希望として、俺はこの世で最も無垢な魂に救いを求めて目で訴えかけた。 この娘ならあるいは――。 「いくらお兄ちゃんでも、今回はひどいと思うよ……」 ――だめだった。 初音ちゃんは天使のような顔を曇らせて、これから起こるであろう惨劇から目を背けている。 狩猟者の本能、というより生物としての生存本能が真っ赤な警戒信号を発していた。 チガウ……、コイツラジャナイ……、本当ニ危険ナノハ……。 そうだ。本物の脅威はまだ姿を見せていない……。 それに比べたら、梓の放つ冷気に似た気配なんて可愛いものだ。 俺を取り囲んだ三人の背後で、恐怖はすでに実体化を始めていた。 周囲の温度をすべて奪い去って、凍てついた闇が人の形を取りつつある。 『耕一さん、あなたを……殺します』 ――夜は終わらない。 <FIN 6/6>
>457みたいなのを見ると、最萌のせいで公式厨が流入してきたという 意見も分かる気がする…
>>467 同意。
マジでどっか行ってくれないかなあ。
まあ最萌が終わるまで大人しく待つか…。
こんな流れの中でこのような真似をするのは心苦しいが、 SS落とさせて下さい 2,3レス分になるが...........実はまだ完結してない 間に合わないと鬱なので落とさせてくれ〜
470 :
無題 :02/02/11 22:33 ID:TqAD8iAG
一昨日、千鶴姉が死んだ。 梓は窮屈な礼服に身を包んで家の入り口で参列者達の受付をやっていた。 「この度はなんと申して良いやら.............」 見たこともない人達が何人も千鶴姉の葬式に来た。 『いい加減受付にも慣れてきたかな? 』 初音は、足立さんの奥さんが一緒にいてくれているから大丈夫。 『あの子は見た目よりずっと強い子だから』 楓は無表情に参列者に挨拶をして回っている。 『元々無愛想なのが幸いしたみたいだ』 それでも梓は知っている。 楓が昨日の夜一晩中泣きあかした事を。 梓や初音に見られないよう一人で静かに。 何にしてもやる事があるってのは良いことだと思う。忙しいと泣いている暇もないから。 初音は料理をする足立夫人の手伝いをしていた。 「えっと..........お塩はこっちで...........」 『あれ? お塩ってこっちの棚じゃなかったかしら?』 『わあっ! そっちはお砂糖だよ! こっちこっち! 』 『あ...............もう遅いかも.............てへっ』 「千鶴お姉ちゃん.................ぐすっ...........う.....ううっ........」 初音はその場に崩れ落ちてしまった。 「初音ちゃん! 」 足立夫人が駆け寄るが初音の涙は止まらなかった。
471 :
無題 :02/02/11 22:34 ID:TqAD8iAG
楓が現場にたどり着いたときには全ては終わっていた。 結局最後の最後は自分一人で決着を付ける。とても.............とても千鶴らしいと思った。 「一人で何もかも背負って................どんなに辛くても私達の前では笑って見せて.........家長、会長、二つの仮面を被って必死に私達を守って..............」 鬼の宿命、それに付随するいくつもの不条理を何もかも受け止めてたった一人で戦ってきた千鶴。 「私は.............ただ見ているだけだった..............見ているしかできなかった」 中学の頃、初めて鬼の血に覚醒した楓。 それと気が付いて、ものの十分もしない内に千鶴が目の前に現れた。 『楓! あなたまさか! 』 そう言って学校に飛び込んできた千鶴の姿を楓は今も覚えている。 「全身汗だく、自慢の長髪もぐちゃぐちゃで.............それに体育授業の真っ最中だったのね、運動着にブルマ、何故か手にはバットを持ってた。」 後で聞いた話だとソフトボールをやってて丁度バッターだったとか。 そんな格好のまま町中を走ってきたかと思うと不意におかしくなって............. 「鬼の不安もどっかいっちゃって、つい吹き出しちゃったんだっけ」 『もう! 笑い事じゃないのよ! 』 『だって.....ふふっ........千鶴姉さん..........山姥みたい』 『がーん! 』 『ご、ごめんなさい..........でも.........おかしくって』 口とお腹を押さえている楓を千鶴は黙って抱きしめてくれた。 『..........大丈夫、恐くないわよ...........私がついてるから...........』 「私、あれ聞いて泣いちゃったんだっけ」 あんなに暖かい抱擁は..............もう二度と.............. 楓は自分の体を抱きしめた。 「うっ.............千鶴姉さん..............」
472 :
無題 :02/02/11 22:35 ID:TqAD8iAG
こっから先はもう少し待ってくれ ホントスマン!
>472 昔、同じような状況に陥ったことのある自分としては 「頑張れ」とだけ言っておく。
>>467-468 「トーナメント支援用SSスレッド」でトーナメントの存在を否定する発言を
行なっても無意味ですよ♪
嫌なら見るな、来るなってか(w
;゚д゚) <472は寝過ごして続き書けなかったらしいよ (゚Д゚ ボケガ! ................ゴメソ
>>475 本人…だよね?
完成だけはさせておいたらどう? 次の試合の時に出せばいいわけだし。
なんか我が身を見てるようでとてもドキドキ やぱーり当日にオタオタしてるようじゃいかんよな(;´Д`)>わし
>>474 お前のようなコテ晒して厨にかまう輩が一番ウザイ。
そういった行為がスレを荒らす一番の要因になると、なぜわからん。
SSスレでの教訓がまったく生かされてねえ。
そんなんだから最萌厨なんて呼ばれるんだYO!
479 :
名無しさんだよもん :02/02/12 19:59 ID:Oq4n+aWG
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚Д゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>>478 厨に構うなと言いながら、私にレスをするとは中々粋狂な人ですねぇ?
あなたこそ一番の荒しではないですかぁ? 自重してくださぁい?
盛り上がって参りました!!
482 :
名無しさんだよもん :02/02/12 21:01 ID:j9tyYb5s
>>480 お前、ほんとに馬鹿だな。
俺が荒らしと思ってるなら放置しろよ。
ちっぽけな自己顕示欲の為、このスレの機能を犠牲にしてるんだぞ。
多分ここの住人は、俺と同等、もしくはそれ以上にお前の存在を迷惑がってるだろうよ(ワラ
483 :
名無しさんだよもん :02/02/12 21:03 ID:j9tyYb5s
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚∀゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>多分ここの住人は、俺と同等、もしくはそれ以上にお前の存在を迷惑がってるだろうよ あなたの素敵な妄想、誠に感服いたちまちた☆ スレの機能を説きながらage&AAのコンボ☆ 同じ穴の狢という言葉はご存知ですか☆
ウシャシャシャシャシャシャシャシャシャ 煽るのってターノシーイヒッ!!
486 :
名無しさんだよもん :02/02/12 21:35 ID:aACcXTX6
(゚Д゚)ハァ? なにヤケッパチになってんの? SSスレにまで顔出して、お前、ほんとはSS系優良コテあたりの地位でも狙ってたんとちゃうんか? この程度の煽りでヤケにならずに、もうちょっと頑張ってくれよ(ツマンナイノ
487 :
名無しさんだよもん :02/02/12 21:37 ID:aACcXTX6
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 次から何事もなかったかのようにどうぞ。 ∧ ∧ |/\___________ (,,゚∀゚)____. |.. | (つ/~ ※ ※ \ | | /※ ※ ※ ※ \  ̄|| ̄ ̄ ̄|| ̄ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>SSスレにまで顔出して、お前、ほんとはSS系優良コテあたりの地位でも狙ってたんとちゃうんか? おやおや、今のは煽りでござったか。 それにしても葉鍵板の煽りは霧雨のような優しさでござるなぁ。
┌────────────────────────┐ │ ( ̄ ̄) │ │ ) ( 煽り荒らし認定書 │ │ / 萌 \ │ │ | ∧_∧ | 認証番号第8号 │ │ |< `ш´ >| │ │ \__/ >>◆jFsthi92 殿 │ │ │ │ 貴殿が最萌トーナメント委員会の定める煽り荒らし │ │ 認定基準(第3項)を達成していることをここに証する。 │ │ │ │ 平成14年2月9日 トーナメント煽り認定委員会 │ │ 理 事 長 管理人@ひろゆき │ │ 認定委員 名無しさん │ └────────────────────────┘ 煽り荒らしは徹底放置してください。。。。。管理人@ひろゆき
>>489 大作SS『白い苦笑』でも投稿しようかな(w
491 :
名無しさんだよもん :02/02/12 22:02 ID:2tXDt76F
つまんね
>>490 まぁ、投稿してくれや。
一行目くらいは読むから。
内容の薄さも作者の痛さもいっしょかえ?
◆jFsthi92のSSってどんなんなの? 非常に興味がある。
>>494 オリジナルで勝負できないと思われるのは癪なので書いたことはありません。
>>495 なるほど! では無理にキャラシチュを書いてとは言いません。
オリジナル作品の“あなたの公開するサイト上への”UPを希望。
「これは」というような作品だといいなぁ。
>>496 そんなずばっと正論言ったら泣いちゃうかもよ、◆jFsthi92ちゃんが
頭の回転遅い子と長く遊ぶんなら、アホの子でもある程度反論出来る
余地残しておいて上げないと
×オマエガマ(ガラ ○オマエガナ(ゲラ
む、残念です。流石にオリジナルをこの板にあげることは ◆jFsthi92さんの為にもならないと思って、レスしたのですが・・・ね。
>>500 クラスメイトには概ね好評です>オリジナル
授業中に回し読みして先生に見つかるのは
勘弁して欲しいですが・・
>>501 ん?あ、あれ?冗談のつもりだったのに、マジレスですか?
いや、本当に良作ならば読みたいのですがね。
>>502-503 ウシャーッシャッシャッシャ、君ら釣られすぎ(ワラ
俺が21未満なわけネージャーン!
とっくに三十超えてるよ。
仕事もバリバリ!
年収1千万円オーバーですよ。ヒッキーの君らと一緒にしないでね♪
>>494 オリジナルで勝負できないと思われるのは癪なので書いたことはありません
ワラタ 君、おもしろい。
>大作SS『白い苦笑』でも投稿しようかな(w
と、パクリを明言している人物とは思えない(w
みんなも文章力に劣等感持っているヤツをいじめるのやめろよ。かわいそうだろ(w
>>504 ああ、そうですか……。
ヒッキーの私には年収1千万円オーバーに、どれほどの意味があるのか
解りかねます。この板以外で、解説していただけるのなら
あなたのご高説を承ることも、吝かではないのですが。
>>506 年収一千万→月五十万→一日一万円使える。
ヒッキーにとっては夢のやうな金額では?
月に一回フーゾクにもいけますよハァハァ
面白いが、SSを投稿したい人ができなくなるからそのへんにしとけ。>ALL
話がずれてきましたねー ここいらで私の二次創作でも投稿してみますか。 なにぶん初めてなもので色々不都合があるかと思いますが、その辺りはどうか ご了承下さい<ALL
>>508 うーん、世の中には年収一千万で、月五十万の収入があって、一日一万円使えて
かつ、風俗に月一回通いつつ、葉鍵板でカキコする方がいるということが解っただけでも
実りある会話だったと思うのですが・・・。
もう、やめます>507-508
511 :
名無しさんだよもん :02/02/13 04:03 ID:U11CBthP
∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (,, ) < 久しぶりにSS読みに来てみれば .( つ | こりゃまた とんだ厨房SSばっかりだなぁ オイ | , | \____________ U U | まあ せっかくだから感想書いといてやるよ \ ハイハイ 萌えた! 感動した! っとくらぁ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∧∧ (゚Д゚O =3 ⊆⊂´ ̄ ソ ヤレヤレ
>ウシャーッシャッシャッシャ、君ら釣られすぎ(ワラ
>俺が21未満なわけネージャーン!
>>504 よ、むしろそれで21以上な方がヤヴァイがな
513 :
472 :02/02/13 04:49 ID:MK2vxiJI
葬式も一段落したので、梓は足立に声をかけた。 「足立さん、会社の事なんだけど...........」 「あ? ああ梓ちゃんか.......」 「この後どうすんの? 足立さんの考えを聞きたいんだ」 梓の言葉に足立は一瞬驚いた顔をした。 「それは.............つまり梓ちゃんには梓ちゃんの考えがあるって事かい? 」 「そんな大したものじゃないんだけどさ」 そう言って梓は照れながら頭を掻く。 「足立さんには悪いけど、今のわたし達じゃ鶴来屋の会長は務まらないよ。だから会社は足立さんに任せるのがベスト...........というかそれしかないと思う。」 「ふんふん」 「それでわたし達の事なんだけど、昨日貯金見たら五百万ぐらい入ってたんだ。それに家を売って金に変えれば、わたしが就職するまでならなんとかなると思う」 梓は勢いこんで続きを話す。 何せ昨日寝ないで考えたのだ、早く足立の意見を聞いてそれが通用するものかどうかを聞いてみたかった。 「初音と楓の学費は奨学金とかいう制度でなんとかなる。調べたら二人とも条件にはあてはまってるんだ。それに.............」 梓の言葉を足立は途中で遮る。気持ち俯いているようだ。 「それは梓ちゃんが見られる貯金の話だね? 」 「え? 」 「ちーちゃんはね、柏木家の資産として一億近いお金を持っているんだよ」 「な! なにぃい! 一億ぅう! 」 「それに私が君たちを放り出したりすると思うかね? 」 「で! でも! これ以上足立さんに迷惑は.........」 梓はその先を口にできなかった。 「頼むよ梓ちゃん............私にも何かさせてくれ」 足立の顔は見たこともないほどの苦悩に満ちていた。 「私はねえ、ちーちゃんが会社で孤立しながらもずっと頑張ってきたのを見ているんだよ。」 「足立さん............」
「まだ若いのに並の大人の何倍もの苦労を背負って、よってたかって周りから攻められながらも必死に会社を支えようとしているちーちゃんに...............私は何もできなかったのだよ」 「そんな! 足立さんはいつも千鶴姉の力になってたって! 」 「私の力なんて微々たるものさ.............」 そう言って肩を落とした足立が余りに弱々しく、それでいて安易な同情を拒絶しているようで、梓はかける言葉が見つからなかった。 葬式が終わった。 梓は虚ろな顔をしている二人の妹の背中を叩く。 「ほら、後かたづけ残ってんだ。しっかりしろ! 初音はテーブルの上の食器集めて! 楓は残り物をゴミ袋に入れて! 」 「う、うん」 「................(コクン)」 二人は言われたとおりに後かたづけを始める。 足立はそんな梓に話しかけた。 「それで? 耕一君はどうしたんだい? 」 『耕一』という単語に三人の体がびくっと震える。 「耕一は............まだ部屋にいる」 その言葉を聞いた足立は黙って部屋を出た。 「任せて! 」 不安げな残りの人間を置いて梓は後を追った。 足立は大股に耕一の部屋を目指していた。 「足立さん! 」 梓が後ろから続くが足立は返事もしない。 怒り肩で耕一のいる部屋のドアを開いた。 「耕一君! 」 部屋の中では耕一が壁にもたれて座り込んでいた。 「こう........いち君? 」 最後に会ったのはいつだったか、少なくとも今の耕一よりは覇気に満ちていたと思われる。 「足立さん? 」
そう言って耕一は足立の方を向く。 今にも消えてしまいそうな表情。 だが、それは足立の怒りを誘うだけだった。 「耕一君、君は何をしてるんだね? 」 大人になると理屈が激情よりも先に来る。 「.................」 「君の従姉妹達は立派にちーちゃんを送り出したよ」 「.................」 「それで君はなんだね? そこで何をしているんだ? 」 足立の詰問口調を、梓が見かねて止めに入る。 「足立さん! 」 「黙って! 」 足立は耕一に歩み寄る。 「いいかい、みんな頑張ってるんだよ? 初音ちゃんも楓ちゃんも」 「...................」 「それに............梓ちゃん............彼女がどんな思いでいると思ってるんだ! 」 「.........あずさ? 」 「そうだ! 彼女はな! 最初の訃報以来一度も涙を見せてないんだぞ! 葬儀をまとめて二人の妹を励まして! この後の自分たちの生活を考えて! 何歳だ? この子は一体今幾つなんだ? 私は! わたしは........」 そこまで言うと感極まったのか涙をこぼす足立。 足立の言葉に耕一は肩を震わせていた。 「俺が..............俺さえまともだったら..............千鶴さんは....................畜生!!!!」 立ち上がった耕一は壁に裏拳を叩きつける。 漆喰の壁はまるで粘土か何かの様に簡単にへこんだ。 「俺のせいなんだよ! 俺が力に溺れなきゃ千鶴さんは! 」 耕一の叫びに足立は更なる怒りをかき立てられる。 「何が自分のせいだ! それが君の言い分か? そんな事で! そんなくだらない事で! 」 「なんだと! 」 怒りに任せてつかみかかろうとする耕一だったが、先に足立の方が耕一の肩をつかんだ。 「君は...............ちーちゃんがどれだけ君を頼りにしていたか知っているのか? 」 「なっ! 」
「君がこちらに来てからのちーちゃんは傍目に見ても嬉しそうだった!」 『あ! すみません足立さん、今日は...........残業は...........その........』 『そうだね、部下の育成という意味でもこの仕事を振るのは悪くないと思うよ』 『え? あ、あはは〜、そ、そうですよね! 』 いそいそと片づけを始める千鶴。 足立はにやにやしながらそれを見ていたが、ついちょっかいを出したくなった。 『あれ? そういえば耕一君はもう帰ってきているんだよね? 』 がたーん! がらがらがしゃーん! ちなみにこれは机に足をぶつけてすっころぶ音。 『きゃーっ』 ずがん! そしてこれは起き上がろうとして机の角に頭をぶつけた音。 『..................いたい〜』 足立は笑いを堪えるのに必死だった。 『今日は五人で晩餐かい? おっと二人だったかな? 』 すてーん!ごぶっ! これは落とした書類に足を取られたあげく、つんのめって鳩尾を机の角にぶつけた音。 『!!!!!!!っ〜〜〜ん! 〜〜ん! む〜〜!!! 』 ごろごろごろ そして床を転がりながら痛みに悶える千鶴。 『あ〜だ〜ち〜さ〜ん』 『はっはっは、ごめんごめん』 「君がいる事でちーちゃんは悩みも増えたさ! でもな! そんな事忘れるぐらい君がいてくれるのが嬉しかったんだよ! 家族が増えるのが嬉しかったんだよ! 」
やっと落ち着いた千鶴は書類を拾って身支度を整えた。 『では、失礼します』 『ちーちゃん』 『はい? 』 『............いや、なんでもない。早く帰ってあげなさい、みんな待ってるよ』 『はい! 』 こぼれる様な笑みで千鶴は答えた。 耕一が帰ってきただけで千鶴は信じられない程笑顔になれる。 会社では千鶴の余所行きの顔以外は滅多に見られないというのに、耕一の話題になった途端これである。 『さて.........と仕事、仕事』 そう言って千鶴の机にまとめてあった書類を手に取る。 すぐに目に付いたのは明らかに誤った位置に捺印されている会長印だ。 『ん? ちーちゃんらしくもない.............こんな初歩的なミスを』 よく見るとそこかしこに似たようなミスを見つける。 『................何か心配事でもあるのかな? 』 その心配事が柏木家の事であるなら足立にはどうする事もできない。 部外者を頑なに拒否する何かがそこにはあった。 『だが、耕一君なら家族になれる...............彼なら..........』 「君ならちーちゃんの力になれる! 一人苦しんでいるあの子を助けてあげられる! 私はそう思っていたんだ! なのに! なのに! なんだこのザマは! こんなんでちーちゃんの力になどなれる訳がない! 」 足立は耕一の胸ぐらを掴んで上下に揺する。 余りの足立の取り乱しように、ただ呆然と突っ立っているだけだった梓だが、力無く揺さぶられるままの耕一を見て我に返った。 「足立さん! 」 梓が後ろから足立を取り押さえる。 「なんて!..................なんて情けない! 」 最後に足立はそう叫ぶとその場にしゃがみこんだ。 顔を両手で覆って泣き崩れる。 耕一は一言もなかった。
足立夫妻は帰り、さすがに疲れが出たのか二人の妹も既に夢の世界だ。 耕一は明日まで待ってくれと言い残して部屋に残った。 梓は一人居間でお茶をすすっていた。 「あの二人がケンカねえ」 そう言いながら羊羹に手をつける。 「あんなの見ちゃうと.................」 楊枝で刺した羊羹の欠片を、口には運ばず皿に戻す。 「本当に千鶴姉がいないんだなあって.............実感するよ」 『梓、夜中に甘いモノなんて食べたら体に悪いわよ』 「わたしは食べた分全部胸にいくからな、心配無用だよ」 『...........自慢のつもり?』 「いんや、いくら食べても太れない千鶴姉のスレンダーボディを褒めてんだよ」 『何よ〜! 私だってまだまだこれから...........』 「その年じゃお腹以外の成長は望めないよな」 『あ〜ず〜さ〜』 「あはははは..............はは...........は..........」 目に一杯の涙が溜まる。 「いっつもこんな事言ってる影でさあ、わたし達の事考えて、準備して...............」 握った拳に力が入る。 「いちおくなんていらないよ..............みんな揃ってればどんなに苦労したっていいじゃんか..............」 涙がこぼれる寸前で梓は奥歯を噛みしめ、それを堪えた。 「し、心配すんなよ千鶴姉。わたしがいるからさ.................わたしがなんとかしてみせるからさ...............楓も初音もきっとわたしが守ってみせる」 一度でも泣いてしまったら頑張れなくなる。そう思って肩を震わせながら耐える梓。 「耕一だってきっと立ち直る。だから...............」 『頑張ってね、梓』 「うん」
半月後、楓は墓前に花を添えていた。 「久しぶり千鶴姉さん...............っていっても一週間前に来たばっかりだけど」 柄杓で墓石に水をかける。 「今日はね、耕一さんがこちらに来る日なんです。」 手に持ったお線香に火を付ける。 「だからみんなはしゃいじゃって.............私もそうだけど」 墓前にお線香を立てると肌寒い風が吹き抜けた。 「耕一さん、もう元気ですよ。電話では梓姉さんとケンカまでしてたし」 わずかに残っていた落ち葉が風に舞う。 「千鶴姉さんずっと耕一さんの事心配してたもんね」 「耕一さんを.............なんて辛かったよね? 悲しかったよね? 」 「でも.............もう心配しなくていい..............耕一さんは殺人鬼なんかじゃないから」 「千鶴姉さんの知ってる優しい耕一さんだから」 「梓姉さんも初音も耕一さんもみんな一緒に笑ってるから.................」 不意に風向きが変わった。 お線香の煙が楓の周囲を漂う。 楓は久しぶりに千鶴に抱きしめられた気がした。
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SS待ちメンテ
SS待ちメンテ×2
佐祐理さんのSS書いたんで、ここに載せさせて頂きます。 合計8レス。 もし佐祐理さんシナリオがあったなら…、と思い、自分なりの佐祐理さん シナリオを書いてみました。 一応EDまで、を書きました。
「たいせつなこと」(8レス) 「佐祐理さん」 「何ですか?祐一さん」 「俺、佐祐理さんや舞と一緒にいて、すごく大切な事に気付いたんだ」 「はぇ〜〜、そうなんですか?」 「ああ」 「何なんですか?祐一さんの大切な事って」 「それは、大切な人と一緒にいるって事が、本当の幸せなんだって。そう、気付いたんだ」 「はぇ〜〜。本当の幸せですかー。それを舞が聞いたら喜びますよ」 「違うんだ佐祐理さん。いや、違わなくもないが。確かに舞も俺にとっては大切な人なんだけど 俺の一番大切な人は、その、佐祐理さんなんだ」 「えっ」 二人の間を一瞬、沈黙が支配する。 「あははーっ、祐一さん、冗談はだめですよー」 「俺は、本当に佐祐理さんの事が…」 「待って下さいっ、祐一さん。それを、それを舞が聞いたら、舞が悲しみます」 「舞はきっと分かってくれると思う。だって舞は、佐祐理さんの親友なんだから」 「でも…その…」 「もちろん、佐祐理さんが俺の事、全然どうとも思っていないなら断ってくれて構わない。でももし、 佐祐理さんも俺と同じ気持ちなら…」 「祐一さん。佐祐理は、ドジで頭の悪い子です。舞みたいに運動神経良くないし、祐一さんに迷惑 ばかりかけちゃいます」 「構わない。佐祐理さんなら」 「舞みたいな優しい子とも違います。佐祐理は弟を、一弥を…、佐祐理のせいで一弥は…」 「佐祐理さんの弟の事は、前に佐祐理さんに聞いたけど…。俺は部外者だから偉そうな事は言えない けど、佐祐理さんの弟は、佐祐理さんの事、恨んでなんかいないよ」 「どうしてわかるんですかっ!!」 「分かるよ、佐祐理さん。だって佐祐理さんはすごく優しい人だから。優しいからこそ、弟の死を 自分のせいにしてしまってる。そんな優しいお姉さんを恨むはずないじゃないか」
その目に、涙をためながら、佐祐理は黙ってしまう。再び沈黙が、二人の間に漂う。 そして、少しの後… 「俺は佐祐理さんの事が大好きだ。それは心から言える。だから、佐祐理さんの事、これからも大切 にしたい。舞と3人で一緒に過ごす時を、佐祐理さんと楽しくおしゃべりできる時を、それを大切 にしたい。だから…それだけだから…」 そう言って祐一は、佐祐理の前から去ろうとする。その祐一の背中に、涙に溢れた佐祐理が飛び付く。 「祐一さん…、佐祐理も、祐一さんの事が大好きです。舞と同じくらいに、大好きです」 涙声のまま、佐祐理は祐一にそう答える。祐一はそっと後ろを振り返る。 「佐祐理さん」 「はい…」 祐一は無言で佐祐理の顔を見つめる。佐祐理は目を瞑り、祐一の方に顔を上げる。 二人の唇が静かに触れ合う。 少しの間の沈黙と、その後の吐息だけが、その場の音になる。 「祐一さん…」 佐祐理はそう呟き、祐一の体に自分の体を寄せる。 祐一はそっと佐祐理の胸のふくらみに自分の手を当てる。 「やっ」 「大丈夫だから…佐祐理さん。…俺を、信じて欲しい」 「…信じます。祐一さんの事」 祐一はそれを承諾の言葉と受け取り、佐祐理の胸に触れる事を再開する。 「んっ…」 佐祐理は、恥ずかしいのか、口を閉じて声を押し殺そうとする。 一通り佐祐理の胸を触った祐一は、服を脱がそうと試みる。 それを佐祐理は、恥ずかしそうに遮る。 「佐祐理さんの全てが見たい。駄目かな?」 「…恥ずかしいです」 「見たいんだ。佐祐理さんの綺麗な体を」 「佐祐理の体は綺麗なんかじゃないですよ」 「そんな事ない。…と思う」 二人はお互い、笑いあって双方の顔を見る。そして佐祐理は呟く。
「分かりました。でも、祐一さんにだけですよ」 そう言って、後ろを向いて着ている物を脱ぎ始める。 「祐一さんも後ろ、向いて下さいね」 そう、少し怒った口調で祐一に対して言葉をかける。祐一はくやしそうに後ろを向く。 佐祐理の、服の脱ぐ音だけがこだまする。それを祐一は、後ろを向きながら静かに聞き入る。 不意に衣擦れの音がやんだかと思うと、佐祐理が祐一に声をかける。 「…もう、いいですよ…」 その言葉を合図に、祐一は佐祐理の方に向き直る。佐祐理は恥ずかしそうに、けれど何か決心した ような顔つきで立っている。 佐祐理は、胸と大切な部分を手で隠しながら、恥ずかしそうに俯いている。祐一に見られている事が よほど恥ずかしいのか、顔は羞恥で真っ赤になっている。 「佐祐理さん、綺麗だ」 「やっ、恥ずかしいです。…舞にも、見せた事ないんですから…」 それを聞いた祐一は、うれしさと、舞に対しての申し訳なさを少し感じた。 佐祐理は、緊張の為か、纏っている物を脱いで寒いのか、あるいはその両方か、体を震わせている。 その佐祐理に祐一は、優しく声をかける。 「佐祐理さん、腕を、退かして欲しい」 「………」 佐祐理は無言で俯きながら、ゆっくりと自分の胸と大切な部分を隠していた腕を下ろす。文字通り、 何もつけていない佐祐理の体は、本当に美しいと祐一は感じた。 祐一はそれを言葉に表す。 「佐祐理さんの体、すごく綺麗だ」 「やっ、恥ずかしいです、祐一さん」 そして祐一は、佐祐理をベッドに連れて行く。佐祐理も祐一に従い、ベッドに横になる。 裸でベッドの上に横たわる佐祐理を見て、祐一も自分の着ている物を脱ぎ始める。佐祐理は横を向い て顔をそらす。 服を脱ぎ捨てた祐一は、佐祐理の体の上に自分の体を乗せるように、上から包み込む。佐祐理は目を 閉じてじっとしている。 不意に祐一は、佐祐理の胸と、佐祐理の大切な部分の愛撫を再開する。驚いた佐祐理は、声をあげる
「だめっ、だめです…祐一さん」 祐一は佐祐理の言葉を無視して、愛撫を続ける。佐祐理も言葉では嫌がっているが、祐一の行動に 抵抗はしない。祐一はさらに、愛撫の手を早める。 佐祐理は恥ずかしそうに唇を噛み、声をあげる事を我慢する。 「佐祐理さん、我慢しないで欲しい」 「で、でも、恥ずかしくって…」 「佐祐理さんに気持ち良くなってもらいたいんだ。我慢しないで欲しい」 「恥ずかしいです…」 そんなやりとりをしながら、祐一は、愛撫を続ける。そして、もうそろそろだと思い、佐祐理の下 半身の方に目を向ける。 佐祐理の大切な部分は、少しは濡れているようだ。だが、そこはピタッと閉じていて、祐一のものを 受け入れるには、かなりの苦痛が伴うような気がした。 それを見た祐一は、佐祐理のそこに自分の顔を近づける。その気配を感じた佐祐理は、急いで声を 上げ、手で隠そうとする。 「そ、そんな事…、しちゃ、駄目です、祐一さん」 「佐祐理さん、手を、退かして欲しい」 「駄目です、駄目です。そこは、駄目です」 「佐祐理さんの全てが見たい」 「そんな、許して下さい…」 「このままだと、佐祐理さん、痛い思いをしなくちゃいけない。少しでも佐祐理さんに、苦痛を 感じて欲しくない」 「で、でも…」 「俺を信じて」 佐祐理は、一瞬考え込んだが、恥ずかしそうに顔を横に向け、自分の大切な部分を隠していた手を ゆっくりと退ける。祐一は、佐祐理のその部分を手と口で、痛くならないよう、優しく愛撫する。 「ふぅ…」 佐祐理は大きく息を吐く。恥ずかしさに声を出す事もままならないようだ。 祐一は、佐祐理が自分のものを受け入れられるように愛撫を続ける。そして、もうそろそろだと思い、 佐祐理の方に顔を向ける。 その視線に気付いた佐祐理は、恥ずかしそうにしながらも、祐一を見つめる。
祐一は無言で腰を上げると、佐祐理の下半身に自分のものをあてがう。佐祐理に出来るだけ苦痛を与え ないように、佐祐理の様子を窺いながら、ゆっくりと腰を進める。そして、徐々に佐祐理の中に自分の ものを進めていく。 だが佐祐理の中は、思った以上にきつく、祐一のものを入れるのも一苦労だ。佐祐理も、苦痛を我慢 しているように見える。 「佐祐理さん、駄目ならやめるから。はっきり言って欲しい」 祐一の問いかけに佐祐理は無言で首を振る。そして、小さな声で、 「やめないで下さい。祐一さんと、一緒になりたいんです」 そんな、決意を込めたような声で佐祐理は祐一に返事をする。それを聞いた祐一は、佐祐理の方を 向き、そして、佐祐理の中に自分のものを進める事を再開する。 「くぅ…」 痛みに耐えているためか、佐祐理の声も苦痛が伴っているように感じる。だが祐一は、出来るだけ 痛くはならないようにしながらも、その行為をやめることはしない。 徐々に、佐祐理に中に入っていった祐一は、何かに突き当たるのを感じる。それを感じた祐一は、 佐祐理の顔を見つめる。佐祐理も、祐一の方を見つめている。二人は、目で合図をして、お互いの 意思を確認する。 そして、祐一は、一気に腰を前に進める。何かを突き破るような感覚が、祐一に走る。 「あぅ、あっ…」 佐祐理は出来るだけ声を殺してはいるが、やはりかなり痛いのだろう。その顔は、かなり我慢してい るように見えた。 祐一は、佐祐理の苦痛を少しでも取り払うように動きを止める。 「佐祐理さん」 「…祐一さん」 「大丈夫?」 「…大丈夫です」 あまり大丈夫には見えなかったが、佐祐理がそう言う以上、祐一はその行為をやめる事はしなかった。 だが、すぐに動かす訳にもいかず、佐祐理の中で祐一は、じっとしている。 それを見た佐祐理は、 「祐一さん、佐祐理は大丈夫ですから、その…、祐一さんのしたいように、して下さい…」
その言葉に感激しながらも祐一は、佐祐理の事を気遣い、思案する。 だが、このままでも佐祐理は痛いままだろうと考えた祐一は、出来るだけ佐祐理に無理をさせない ようにしながらも、少しずつ腰を前後に動かす。 「あっ、あっ…」 祐一が動くと、佐祐理は声を上げる。おそらく初めてであろうその行為は、佐祐理には痛みの方が はるかに強いようだ。 祐一は、佐祐理に出来るだけ負担をかけないように、ゆっくりと、だが、出来るだけ早くその行為が 終わるように努力しながら、体を前後に揺らす。 「あっ、あっ、あっ」 祐一が前後に動くたびに、佐祐理は声を上げる。 祐一も、佐祐理の中を前後するごとに息を漏らす。まだまだきつい佐祐理の中を、出来るだけ傷つけ ないように気遣いながら。 「祐一さんっ、祐一さんっ、佐祐理…、私…」 「佐祐理さん…」 もうすぐ自分の限界を感じた祐一は、最初よりはスピードを早め、佐祐理の中を動く。 「私っ…、祐一さん、ゆう、いちっ…」 「さ、ゆり…」 限界が訪れる直前に、佐祐理の中から抜いた祐一は、白い液体を佐祐理のおなかの上に出す。 佐祐理は、はぁはぁと肩で息をしながら、ベッドに横たわる。 佐祐理のそこには、赤い色の雫が流れている。 「…ごめんな、佐祐理さん。痛かっただろ…」 祐一は佐祐理の体を気遣い、言葉をかける。 「…ゆう、いちさん、佐祐理、…私、うれしかったですから…」 その、佐祐理の心遣いに祐一は、感謝の気持ちを込めて、もう一度唇をあわせる…。 「佐祐理、さん…」 「祐一、さん…」
季節は春。 今日は、佐祐理と舞の卒業式。 祐一は、名雪を起こして、懸命に学校への道を急ぐ。 この辺も、前よりは暖かくなって、桜が咲き始めている。 やっと学校に着いた祐一は、息を切らしながら二人を探す。 「あっ、祐一さん」 後ろから声が聞こえる。祐一は振り返りながら言葉をかける。 「おめでとう。佐祐理さん…」 二人の為に持ってきた花の一つを差し出して、それを佐祐理に渡す。 佐祐理は、大正時代のはいからさんのような服で、それを受け取る。 祐一は、その見慣れない服装の佐祐理に、つい見とれてしまう。 「あははーっ、祐一さん、恥ずかしいですよー」 佐祐理は、恥ずかしそうにしながら祐一にお辞儀する。 「お花、ありがとうございます」 「卒業、おめでとう、佐祐理さん」 その祐一の後ろから、誰かが無言でチョップを入れる。 「痛っ、舞ー」 振り向くと、佐祐理と同じ、見慣れない着物姿の舞がそこにいた。 少し拗ねたように祐一を見ながら、舞はそこに立っている。 「ほい、舞も、卒業おめでとう」 そう、花を舞に渡しながら言う祐一に、舞がもう一度チョップを入れる。 「痛っ、なんで二回も…」 「気持ちがこもってない…」 「わかったわかった。はい、舞、卒業おめでとう」 無言で花を受け取りながら、舞は二人を見つめる。 「これからどうする?卒業式も終わったし、三人でハンバーガーでも食いに行くか?」 「それはいいんですけど…。私と舞は、この格好ですし。先に私の家で二人とも、着替えてきますね」 「俺は、その格好の方がいいな。なんか着物姿の佐祐理さんはすごくかわいいし」
その祐一にまたしてもチョップが飛ぶ。舞は少し拗ねたような表情でチョップを繰り出す。 「わかったわかった。二人とも、着替えてきていいから…」 しかし舞は、不満そうに祐一を見つめたまま、じっとしている。 「私には何も言わない…」 そうポツリと舞は呟く。それを察した祐一は、笑いながら答える。 「舞も、もちろんかわいいぞ。馬子にも衣装ってもんだな」 「祐一、それ、褒めてない」 チョップとともに、舞が言葉を返す。 その二人のやり取りを、佐祐理が笑いながら見つめている… この三人でいられるなら、どこだって楽しいよな。佐祐理さんと舞、三人でいられるなら…。 本当の幸せと、本当に大切な事、それを教えてくれた人と一緒なら…
以上です。長々とすいませんでした。
おいおい、舞はどうなるんだよ。何も知らないままかい。 これじゃ二股と言われても仕方ないぞ。
佐祐理さんのSSはります。かつてシチュスレなるものが存在してたときに ほかの方が書かれたやつの転載です。
561 名前:ありがちですけどねーっ 投稿日:2000/12/20(水) 13:37 佐祐理「ただいま帰りましたーっ…って、あれーっ? まいーっ?…あっ、もしかして隠れていて、佐祐理を驚かせようって いうのかな?…ようし、だったら逆に驚かせちゃえっ…」 こそこそ… 舞「ゆっ…いち…ダメ…そろそろ佐祐理…帰ってくる…うああっ!」 祐一「でも、舞のここが離してくれないんじゃないか……うくっ」 舞「ゆぅ…いち、ダメ…ゆういちぃぃっっ……!!」 佐祐理「……」(壁に背をつけたまま、ズルズルとへたりこむ)
573 名前:561 投稿日:2000/12/20(水) 19:05 その日の夕食。 舞「佐祐理の作ったご飯、おいしい」 祐一「舞、早く食べ終えろよー。今TVでペンギンさんでてるぞー」 佐祐理「(舞…あの手で…祐一さんの……握ってた)」 舞「佐祐理、お醤油とって」 佐祐理「あの手で…くちゅくちゅって…すごくHな音たてて…」 舞「佐祐理……何だか変。どうしたの…」 佐祐理「えっ…きゃああっ!!」(ガシャーン) 祐一「おい、何やってるんだよ舞〜?」 舞「手を振り払われた…」 佐祐理「あっ…そ、そのっ、違うんだよ、まいっ」 祐一「(茶化すように)舞…お前、また何か佐祐理さんの 気に触るような事をしたんじゃないのかー?」 舞「……違う。私は、何もしてない」 佐祐理「ごめん、ごめんね舞……さ、佐祐理…ちょっとだけ 疲れてるみたいなのっ」 舞「…佐祐理、何だか顔があかい…」 祐一「ほんとだな…佐祐理さん、大丈夫か?熱とか計ってみたのか? ゴメンな…俺達が気付いてあげるべきなのに…あっ、佐祐理さん!?」 たまらなくなってトイレに駆け込む佐祐理。 佐祐理「……佐祐理は…ダメな子だ…。舞も祐一さんも、本当に 真面目に心配してくれているのに…」 指を当てると、佐祐理の秘所は驚くほど濡れていた。 佐祐理「うくっ……もう、どうしていいのかわかんないよぉ……」
586 名前:573 投稿日:2000/12/20(水) 23:25 佐祐理の変調を気にしながらも、祐一と舞の日々は過ぎていく。 少しずつ、見えない何かが音を立てて崩れていく不安を 心の何処かで感じながら。そんなある日の夜… 祐一「こら、舞…お前、つまみ食いなんてするなよ〜。 『ここ最近、塞ぎ込んでいる佐祐理を元気づけてやるんだ』って──元々 このパーティーの言い出しっぺはお前じゃないか」 舞「佐祐理、遅い…少しだけフライング」 祐一「あのなぁ…しかし、確かに今日はちょっと遅いな」 (TRRRRR…) 舞「祐一、電話」 受話器を取る祐一。しかし、見る間に表情が硬くなっていく。 祐一「はい、はい…それでは失礼します…」 舞「…どうしたの」 祐一「佐祐理さんのバイト先から電話があった…店長はもうカンカンだそうだ」 舞「!?」 祐一「今日は、佐祐理さんどうしたのかって…いや、正確には今日だけじゃない。 ここ一週間、佐祐理さんはバイト先に行ってない…!」 言うが早いか、外へ飛び出す祐一。舞も行くといってきかなかったが、 行き違いになったときの事を考えてなかば無理矢理部屋に残らせた。 祐一「ぐわっ…なんて雨だよ……俺が家に戻った時にはここまで ひどくはなかったぞ」 心当たりの在る場所はすべてまわったが、祐一には妙な予感があった。 《ここを三人の、思い出の場所にしましょうねー》 祐一「まさかな…」
しとどに濡れた佐祐理は虚ろな目をして、暗闇の中に座っていた。 佐祐理「よく…わかりましたねーっ……もう、『この場所』に戻ってくる 事なんて無いと思ってました。懐かしいでしょう?ここでお弁当を食べて いたのはたった一年前なのに、もうずいぶん昔のことみたいで…」 祐一「………帰ろう。俺達の家に」 佐祐理「………違いますよ。あそこは、もう…『舞と祐一さんの家』です」 その断定するような言い方に、祐一はすべてを理解した。 祐一「そうか、佐祐理さん…俺と舞の…でも、別に佐祐理さんをのけ者に するとか、そういう事じゃないんだ。それが嫌だっていうなら、もう俺達だって──」 佐祐理「だめっ!!」 祐一「……佐祐理さん」 佐祐理「あ…ははーっ…ダメ、ダメですよおっ……舞と祐一さんは仲良く してなきゃ…もっともっと、仲良くしなきゃ…。だから、たぶん、これが 一番良かったんです… たとえどこにいたって、どんなに離れていたって舞の喜びが私のしあわせで… 舞が悲しいと…佐祐理も……悲しいですから──」 次の瞬間、佐祐理の視界の全ては祐一の胸の中にあった。 祐一「…俺は、三人でいたい。欲張りだからな。だから、佐祐理さんが そんな生活に疲れ果てて逃げ出したって、どこまでも追いかけていって こうやって…精一杯の想いを込めて、抱きしめてやるんだ」 佐祐理「あ…ぅっ、うくっ…く…うあああーーーーーーーーっっっ!!!」 ・ ・ ・ 佐祐理「祐一さん……私、らしくありませんでした。明日からは いつもの佐祐理に戻ります。それでも、しばらくはいろいろ無理が 出てくると思うけど…ただ、ひとつだけお願いがあるんです… …佐祐理のわがまま……聞いてくれますか…?」
597 名前:…586の続き。 投稿日:2000/12/22(金) 00:36 その長いスカートがゆるゆるとたくし上げられていくのを、 祐一は呆然と静観するしかなかった。 佐祐理「あの日から…忘れられないんです……寝ても醒めても、 あの時の舞と祐一さんの声が、姿が……はじめて見た時は、 体が震えるほど怖かったのに…気付くと、そのことばっかり 考えてるようになって……今だって、祐一さんに抱きしめられた だけでもう、こんな、こんなに、なってっ……!」 歯の根が合わないのは、濡れた寒さのせいだけではないのだろう。 佐祐理「お、教えてくださいっ…佐祐理は…佐祐理は恥知らずな、 いやらしい子、なんですか…?」 その時、佐祐理は間違い無く『求めていた』。 その答えの先に、祐一との一夜だけの繋がりを求めていたのだ。 舞に対する背徳と知りながら、それでも一度だけ、赦されたいと願う気持ち。 それは、誰かを赦し受け入れることばかりだった佐祐理の何処かにあった、 抑圧への反抗心だったのかもしれない。それでも今は、その魂に刻み込む ように、祐一という存在を求めた。 佐祐理「だっ、だから、その…ゆういち…さ──」 もういい。 もういいんだ── 佐祐理「(あ………佐祐理の……さゆりの、ファースト・キス…… 佐祐理のはじめては……祐一…さん)」
そのまま何もかもを委ねる思いで閉じた瞳から、泪がすうっと頬を 伝い落ちた。外はただ、何もかも攫い流すような激しい雨だった。 佐祐理の秘所は既に著しく潤っていたが、祐一は佐祐理に、自分の 与え得るだけの悦びの全てを与えたいと思った。 はじめて舞以外の相手と体を交え、その相手が佐祐理であることに 祐一の分身は急速にいきり立っていた。決して佐祐理を不安にさせ ないようにあえて服は着せたまま、シャツのボタンを少しだけ外していく。 佐祐理「佐祐理のおっぱい…舞みたいにおっきく無いから…」 持ち主の意見を否定するかのように、佐祐理の膨らみはツンと天を指して その豊かさを主張している。柔らかな双乳をすくい上げながらもみしだくと、 佐祐理の体から力が抜けていくのが分かった。見れば頬は上気し、 白い柔肌を桜色に染めあげているのが伺える。 祐一「佐祐理さん…見せてくれるか?」 佐祐理は祐一の手をしっかり握ったまま、従順な子供の顔で コクリと俯く。パンティを膝までおずおずと下ろすと、最初 そうしたようにスカートを…手繰りあげる。 佐祐理「…あ、あの……ヘン…ですか、その、さゆりの…」 髪や肌の色素が薄い佐祐理に似つかわしく、そこに毛と呼べる ものは皆無に等しかった。当然、舞のそれとは違っていたが どちらにしても、祐一が変だと思うようなところは無かった。むしろ 眩暈を覚えるほどに…きれいだと思った。
623 名前:…597の続き。 投稿日:2000/12/23(土) 01:29 佐祐理の秘所は著しく潤っていたが、それでも破瓜の痛みは佐祐理の 想像以上のものだった。佐祐理が苦しくないようにと祐一が下になったが、 衣服をはだけさせて腰を振る佐祐理を見るうち、何時の間にか 祐一は激しく佐祐理を突き上げていた。 佐祐理「あっ、あぅ、あん、あんっ、はっ…」 視線をあさっての方へ向けながら口から涎を引き、流されるままに がくがくと頭を振る佐祐理。それは清楚な佐祐理からは信じがたい嬌態 だったが、祐一にとってこの上なく煽情的な光景だった。そんな佐祐理の 肩を掴み寄せ、口づけをし…その口の中へ己の舌を入れ、ちゅくちゅくと 絡ませる。 祐一「…はあっ…おい……もうそろそろ出てきてもいいだろ…… いつまで、そこで突っ立ってるんだよ…」 佐祐理「ふ……え……っ!!」 佐祐理があさっての方向をさまよっていた視線を前方の闇に定めると… そこには、舞が佇んでいた。
祐一「お前はどう言ったって…ここまで来ると思ってたよ」 佐祐理「いや、いやいやああっっ!!見ないで、舞、見ちゃだめええっっ!!」 それは、かつて二人の行為を垣間見てしまった時の自分に重ねているのだろう。 そして、裏切りと知りつつあえて親友の大切な人を求めたことと…それでも 快楽から逃れられない自分に対するどうしようもない罪悪感だった。 佐祐理「お願い…もう…ゆるして…」 しかし、舞は静かに佐祐理の側に傅くと、その上下に揺れる胸に口を寄せる。 舞「佐祐理、私達は佐祐理にひどい事をした。だから、私は佐祐理を…慰めて あげたい」 佐祐理「ひっ…まいっ……うぅっ…ごめんなさい…ごめんなさい……っっ」 慈しむように佐祐理の双乳を愛撫しつつ、一方の手で結合部を撫で擦る舞。 佐祐理「そっ、そんなぁっ…さ、さゆ、り、はじめてなの、にっ…ふ、ふたり… されたら…何か…あっ、なんかぁっ…わかんな…ってぇ…は…ぅ、はあぅっ…」 淫らな水音を立てつつも、佐祐理はもうこれ以上無いくらいにきつく祐一を 締めつけている。 佐祐理「あっ……あっく、さゆりっ、もぅっ…さゆっ…ひ!…あっ、あぅぁっ、 ああああぁああーーっっ!」 祐一「ぐ、締まっ……くうっ!」 佐祐理の到達は、同時に祐一の物を抜く間も与えずに、激しい絶頂へと 導いた。気を失い崩れ落ちる佐祐理の奥に叩きつけるように、祐一の精が 何度も、何度も注ぎ込まれた… それからしばらくは平穏な日々が訪れた。少なくとも、佐祐理は務めて明るく 振舞おうとしたし、舞と祐一も前にも増して三人でいる時間を大事に するようになった。 しかし、それもやがて終わりを告げる事になる…。
659 名前:…623の続き。【祐一ver.】 投稿日:2000/12/25(月) 13:40 佐祐理さんが俺たちに何も告げず、海外へと発ってしまってから既に何ヶ月かが 経過していた。最初はそれこそ駄々っ子同然に取り乱すばかりだった舞も 手がかりとなる佐祐理さんの本家からは袖にされ続け(あの三人暮らし自体が 猛反対の末の事だったのだから、当然の対応だ)、また佐祐理さん自身の 行動を信じて、それまでの生活をかろうじて維持していた。何より舞に寂しい 思いはさせないよう、俺もかなり生活に無理を重ね、舞の為にいろいろと 尽くした。ただ、俺の心の中には誰にも埋めることの出来ない空虚が 広がっていった…
そして、舞の何回目かの誕生日を迎えた朝──珍しく佐祐理さんの 本家からお呼びがかかり… そこで俺と舞は、佐祐理さんが他界したことを知らされた。 死因は交通事故、というあっけないものだった。留学先(そういえば、 俺達は、佐祐理さんが海外へ行った目的すら知らなかった)の地で、 飲酒運転の車に撥ね飛ばされたのだと教えられた。 痛みを感じるいとまもなく、すべては一瞬のことだった、と。 葬儀の間中、舞は泣くのを堪えている様子だった。それでも溢れる滴は とどめられるものではなく…久しぶりに、吼えるように慟哭する舞を 目のあたりにする事になった。 それでも何故か、俺は泣くことが出来なかった。 最悪の誕生日に咽び泣く舞を連れ、俺が帰宅した時は既に夜遅くに なっていた。すると、隣人から預かり物だと言われ、小包を手渡された。 それに航空便の印を見て取った俺は、全自動の機械のように、無意識に 中身のビデオテープを再生させていた… 「えと、ちゃんと映ってるのかな… これって映ってなかったらただのおかしい子だよね…っ
やっほーっ、祐一さーん、まいーっ♪……倉田佐祐理からの、 ビデオレターですよーっ。…誰だっけ、なんて事言ってたら、佐祐理は 傷ついちゃいますからねー。 …えっと…まずは、突然ふたりの前からいなくなってしまった事を許してください。 やっぱり、舞にとっては誰よりも祐一さんが必要で、祐一さんにとっては舞が そうなんだと思います。だから、佐祐理はお父様の申し出をお受けして、海外で 自分を磨く勉強をしようと思いました。何て言うか、今のままじゃ佐祐理は ふたりの関係にとっての制約にしかならないからです。 佐祐理はまだまだ学ばなければならないことが多すぎて、残念ながら今回の 舞の誕生日には、帰れそうにありません…。 でも、きっといつか祐一さんと舞の力になってあげられるくらい立派になったら… 胸を張って、『倉田佐祐理はふたりにとって、最も頼れる親友です』って言える 日が来たら、きっと…戻ってきます。 そのときまでは、ほんのちょっぴりのおわかれです。 それじゃ、舞。あんまり祐一さんに迷惑かけちゃダメだよ。そして祐一さん、 佐祐理は、あの夜のことを…忘れたことはありません。 ふたりとも…思い出をありがとう…そして、これからも…これからも… わ、わっ──『わたし』を……よろしくねっ♪」 舞は既に、どこか壊れてしまったように言葉もなく腰を落としていた。 そして、俺は…そこではじめて、気付いてしまった。出ない涙の意味を。 そうだ、俺は…彼女が…佐祐理さんこそが、もっとも 俺にとって大切なひとだったのだと… そして、もっともかけがえのないものを失った事を 認めたくなかったんだ…。
776 名前:…659の続き。(前) 投稿日:2001/01/05(金) 21:28 それから更に月日は流れ… 祐一と舞は籍を入れるでも無く、相変わらずだらだらとした共同生活を 続けていた。何度かふたりは体を重ねることもあったが、祐一の中に、 以前のような舞を求める情熱は無く…また、不思議と舞が子を授かる 事は無かった。 専門の医師は「母体の心因的な問題としか考えられない」と結論を 濁していたが、祐一には何となく、分かっていた。 祐一達の生活の中に『三人目』がいるとすれば、それは他の誰でも ない、『彼女』だけだったからだ。それ以外の存在はそれが何であろうと 拒否すべき異物でしかなかった。終わりの見えない、二人だけの日々… 今日もまた、祐一は舞を施設へと連れていく。 精神状態が不安定になった舞にとって、それは習慣づけられていた 事だ。係り付けの人にそれじゃまたね、と微笑まれると、 舞もゆらゆらと手を振り 「ばいばい…」 と答える…祐一にとってそれは、苦痛だった。 しかし、どんな痛みや苦しみの中に在っても、どうしても祐一は涙を 流す事はできなかった。
777 名前:…659の続き。(後) 投稿日:2001/01/05(金) 21:29 一通りの行程を終えると、舞は施設にいる子供たちと遊んだ。それは 舞の心の慰みにもなったし、何よりここにいる子供達は 親から見放されたり、あるいは親が育成できなくなったり… みな、何らかの事情でここでの暮らしを余儀なくされている者ばかりだ。 出来損ないの楽劇のように子供達と戯れる舞を遠くから眺めていると、 ふと妙な噂話が祐一の耳に届いた。 「…そろそろ来るころね」 「ああ…あの子。一時は『奇跡の子』なんて持て囃されたりもしたとか」 祐一「奇跡か…どこかで聞いたような言葉だな」 かつて祐一はそんな言葉を信じていた。でも…奇跡なんて、ないんだよ。 これは、下された『必然』だ。ずっと一緒にだなんて、三人だけで夢見る 事はできるだろう。しかし、この世界で生きていくには、いつか夢は 終わらせなくてはならないのだ。おままごと遊びでいるうちはいい。でも、 永遠に遊び続ける事なんてできないし、そうする事で不幸にさせてしまう 人だっている。これが現実というものの本質だ。 そう、どんな奇跡も、やがて渇き荒ぶまでの束の間の幻想でしかなかった…
「…そうそう。何てったって、母親が即死するような交通事故で、 そのお腹の中から取り上げられたって…」 「父親不明だとかで、長い間『あっち』の施設で育てられてきたのよね。 母親の本家がそういう子をよしとしないところで……結局、認知はされ なかったんだけど、やっぱり向こうの生活環境にはあわないみたいで、 ここで預かることになったみたい。なんていったっけ、くらしき… …くらの、じゃなくて…」 ──そう、三人目がいるとすれば… 「あっ、舞ちゃんちょっとゴメンね…はい、みんな注目、はい注目〜! それじゃ、今日はみんなに新しいお友達を紹介しまぁす」 ──それは、彼女以外にありえないから… 舞「……………ゆういち………………ないてるの?」 ──そして、本当の奇跡は舞い降りた── 【倉田佐祐理STORY】 END
以上です。逝ってきます。
>>552 あ、逝かないで。
久しぶりに目頭が熱く…。
ありがと。
コテ晒して感想。 本当に嫌な話だ。 この話を読むたびに、結局佐祐理さんの人生って一体なんだったんだろうと思う。 弟の事を思い続け、やっと吹っ切れるきっかけを掴んだはずだったのに。 例え佐祐理さんの子供が無事だったとしても、それが何だというんだろう。 彼女がいなくなってしまったことに変わりはないのだから。 読み終わったとき、悲しみよりもどうしようもない怒りの感情に囚われるのは俺だけだろうか。 以上、馬鹿の戯言。 逝ってくる。
本スレから追っかけてきました。
>>552 よかったよ、感動した。
SSはあんまし読まないんだけど、夢中になって読んでしまった。
感動とともに、僕も逝ってくる。
>>554 いや、気持ちは分かるぞ。
>>548 で終わってたら俺的に名作だったんだがなぁ。
しかしあざとい割に破壊力のある話だ……
しかも、感想なんて書くだけある意味無駄ね。
>>537 が書いたわけじゃないし。他人の転載ねぇ……ある意味作者がかわいそうかも。
なかなか、エグイ話しだ・・・
舞を踏み台にしたぁ!?
>>536 さん
舞には悪い事をしたとは思います。でも、仮想佐祐理さんシナリオを書いたら
こうなりました。
佐祐理さんシナリオのつもりなんで、舞には二股かけてないと思うんですが。
自分の中では舞ENDでも、三人で仲良く、だと思ってるんで、佐祐理さんEND
だとしても、三人で…、という構図は変わらないと思ってます。
佐祐理さんENDなら、舞もいずれは二人の関係を知るとは思いますが(ゲーム
本編でも佐祐理シナリオだと、舞が二人に気を使うシーンがありますし)、
舞は解ってくれると信じます。だって、舞にとっても、二人は大切な人なのは
間違いないはずですし。
自分はそう思って書きましたが、自分の文章がそこまで表現しきれていなか
ったのなら申し訳ないとしか言えません。
遅レス&長文すいません。
SS期待待ち♪
前回落としたものの続きみたいなもの… 『茜と詩子のヴァレンタイン』 「はい、あかねっ」 「では、私からも、どうぞ」 2月14日、茜の家、 休日にザッハトルテの交換はしたけど、 大切なこの日は、チョコレートを交換する日。 これも毎年の約束。 毎年茜のチョコレートは志向を凝らしているからとても楽しみ。 あたしはかわいい、茜らしい包装を解いて箱を開ける。 中から出てきたのは少し大きめのハート型チョコレート。 チョコスプレーで綺麗にふちが飾りつけられているチョコレート、 そして… 「あ、茜…これはちょっと恥ずかしいよ…」 「…私の気持ですから」 そこにはピンク色のチョコで「I Love You Shiiko」と書いてあった。 あたしは顔がとても熱くなるのを感じている。 茜も真赤な顔をしてうつむいてしまった。 1/6
「もったいないからこのまま残しておこうかなぁ…」 「えっ?」 茜の心がこもっているのがよくわかる、 綺麗な装飾、そして、恥ずかしいけど嬉しい言葉。 せっかくだから残しておきたい、このまま。 「せっかくですから食べてください!」 いつもより強い口調で茜は告げる。 あたしは少し驚いた顔で茜の顔を見る。 茜の顔はまだ少し怒ったまま。 「でも、こんなに心のこもったチョコレート、本当に嬉しかったから」 真赤な顔のまま、あたしは茜に伝える。 少しだけ茜の顔から怒っている表情が消えるけど、 まだまだ少し怒っているみたい。 あたしは頭の中で考えをめぐらす。 2/6
「そうだっ!」 「…どうしました?」 あたしは少しだけ茜に顔を近づけてささやく。 「食べてあげる…茜の口移しなら、ねっ♪」 「あ、はい、わかりま…えっ!」 怒った顔から突然にびっくりした顔に。 あまり見ることのない茜の表情の豹変にあたしもびっくりしてしまう。 でも、気を取り直して茜の顔をじっと見つめる。 茜は恥ずかしそうに目をそむけてしまう。 「ねっ、いいでしょ?」 向いた方向に体を動かし、再び瞳を見ながらお願いしてみる。 茜は再びそっぽを向いてしまう。 その方向へあたしも再び体を動かす… そんなやり取りを何度かするうちに茜は観念したのか、 「わかりました…いいですよ」 小さな声で答えてくれた。 3/6
「はい、お願いね」 あたしはチョコレートを茜に渡す。 そのチョコレートを茜はまじまじと見つめて、 いまいち躊躇しているようだった。 「ほら、溶けちゃうから」 その一言に茜は少しだけ肩を震わせたが、 それで思い切ったようにチョコレートを口ではさんだ。 「し、詩子、これでいいですか?」 恥ずかしそうにぎゅっと瞳を閉じて茜はたずねてくる。 「うん、それじゃ、こっち側、いただくね」 茜のかじっているのと反対側をあたしはかじる。 「ぱきっ」 そんな音がして、チョコレートは真ん中で折れてしまう。 「う〜ん、あまりうまくいかないね」 あたしは自分の口でかじっている分を取り出して、再び茜のチョコにかじりつく。 さっきより近いくちびる、先ほどより感じる体温。 茜も真赤な顔で少し震えているようだった。 くちびるを重ねたいけど重ねられない、 あたしはそんなもどかしさに我慢できずに、 「えいっ、全部もらっちゃおっ!」 そう言って、茜とくちびるを重ね合わせた。 4/6
「んふんっ…」 突然のことで、茜は再びびっくりしたような顔であたしを見つめる。 でも、あたしは気にもせずにまず茜の口にあるチョコレートをもらう。 チョコレートの味と茜の滑らかな唾液の感触が口の中に広がってゆく。 そのまま、あたしの舌は茜の口の中をなぞってゆく。 いつも綺麗な白い歯の表面、その上、 ところどころでチョコレートの味が感じられる。 もう少し先へと舌を伸ばしてゆくと、 おずおずと、震えながら茜の舌があたしの舌に触れてくる。 ゆっくりと、チョコの味がする茜の舌を舐めてゆくと、 茜の舌もあたしの舌をゆっくりと舐めていくのを感じる。 そのままずっと舌を舐め続けていると、 やがて、チョコレートの味がしなくなり、 茜とあたしの唾液だけがお互いの口の中で混ざり合っていた。 5/6
「ちゅく…」 軽い水音がしてあたしたちの唇が離れてゆく。 一筋、銀色の糸が名残惜しむようにあたしたちのくちびるの間を渡っていった。 「詩子…突然はひどいです…」 またもや少し怒ったような顔をしている茜。 「ごめんね、だって、茜がかわいいんだもん」 あたしはその頭をなでて謝った。 茜は真赤な顔をして下を向いていたけれど、 「…詩子には勝てないです」 そう言って上げた顔は笑顔だった、 とてもやさしい表情をたたえた… 6/6 以上だよ。
む。萌えた。 敬意を表してage
茜支援母乳二次小説、 『これから母になるあなたへ』 全4レス 前回のときの母乳二次小説の少し前の話、そんな感じだよ。 「とんとんとん」 「…はい、どうぞ」 扉を開けると、静かな曲が流れてくる。 ピアノ曲、多分この流れは夜想曲。 ベッドの上の茜が笑顔をこちらに向けてくれる。 「どう? 調子は」 「はい、順調ですよ」 茜は嬉しそうにおなかを撫でる。 もうすっかり大きくなったおなか、 予定日まであとわずか、顔はすっかり母親の顔だ。 「茜がお母さん…ねぇ…」 幼いころから知っている茜がもうお母さん、 なんだかとても信じられない。 あたしはまじまじと、幸せそうにおなかを撫でる茜を見ていた。 1/4
ふと、一瞬茜が苦痛そうな顔をして胸を押さえる。 あたしはびっくりしてしまい、茜に近寄った。 そんなあたしの様子に一瞬驚いたような顔をした茜は、 次の瞬間に笑顔になって、 「苦しいとかではないんですよ」 そうあたしに伝えた。 あたしはふっと胸をなでおろして、 「どうしたの?」 何の気なしにたずねてみた。 すると、茜は少しだけ赤い顔をして、 「母乳で少し胸が張るんですよ。 ごめんなさい、少し後ろ向いていてもらえますか?」 そう、あたしに伝えた。 あたしはわけもわからず、後ろを向いていた。 衣擦れの音がかすかに響き、ついで、茜の何か力を込めるような声がする。 あたしは、茜が何をしているのか、一瞬だけそちらを向いて確かめる。 でも、それはちょっとびっくりするようなことだった。 茜が一生懸命胸を揉んで、母乳を自分で出しているところだった。 「あっ、詩子…見てはだめですって」 少し恥ずかしそうに、ばつが悪そうに、 茜は小さな声であたしを非難する。 「ごめんごめん、なにしてるのかちょっと気になっちゃって」 あたしも舌を出して謝る。 2/4
「それにしても、大変そうだね」 「はい、でも、これもお母さんになるひとつのステップだと思っていますから」 嬉しそうに、それでいて強い意思を宿した瞳で茜はあたしに伝えで作業を再開した。 ゆっくりと、やさしく、茜は胸を揉みしだいてゆく。 少しずつあふれる乳白色の母乳をガーゼで綺麗にふき取ってゆく、 そんな作業を繰り返していた。 「茜、大変そうだね、手伝ってあげるよ」 「えっ?」 茜の返事を聞かずしてあたしはその大きな胸を揉み始める。 茜はただあたしのしていることを見つめている。 ただ、抵抗もせずに、驚いたように。 その胸の先からはあふれるように母乳が染み出してきて、 茜の胸の先をいっそうなまめかしく見せている。 「詩子っ、だ、だめです!」 茜はやっと気づいたようにあたしのしていることを止めようとするけど、 身重なので思うように体が動かないのだろう。 あたしはそんな茜の様子を見ながらずっと揉み続けていた。 ただ、乳白色の液体がその乳首、そして乳房を細い筋となって流れていた 3/4
「せっかくだから、直接吸い出してあげる」 「だ…だめ…」 でも、あたしはそのぬらぬらと光った先っぽを口に含み、 やさしくすいはじめた。 これといって味のしない液体が、あたしの口の中に流れ込んでくる。 少しずつ、少しずつ。 右手で茜の乳房を揉みしだきながら吸っていた。 茜の抵抗はなくなり、かわりに吐息が少しずつ聞こえてくる。 慎ましやかな吐息、それとともに胸の突起も硬くなりつつあるようだった。 あたしが舌でその先端を弄るたびに、茜の吐息が漏れる。 あたしはそれを繰り返していたけれど、やがて母乳の出もわずかになり、 胸の張りもだいぶおさまっていったようだった。 「これくらいでいいかな?」 胸から手をくちびるをはなして、あたしは茜にそう伝える。 「あ、ありがとう…詩子」 少しだけ震える声で茜はお礼の言葉を言って、 胸をガーゼでふき取って身繕いをしようとする。 しかし、茜は何度も胸をガーゼで拭き続けている。 茜は悟られないようにしているつもりらしいけど、 あたしの舌の動きに感じてしまい、 どうしてもその快楽を自らの手で成し遂げようとしているのがばればれだった。 4/4 以上だよ。
『悲しい夢を見た夜に』の補完二次小説、 『悲しい夢』 全4レスだよ。 強めの風が風をないでいく。 私はひとり、緑の草が風に薙ぐ土手に立っている。 いつのまに私はこんなところに立っていたのだろう。 右手には一本の麦の穂が握られている。 さっきまでは灯りが煌く街にいた。 お店がたくさん並ぶ、とても明るい街。 たくさんの人と一緒に、私はお店をのぞいていた。 でも、あまりにも虚構っぽいつくり。 言うなれば、演劇で使われる大道具と変わらない。 裏は木材がそのまま出ている、そんな街だった。 私はその、あまりの白々しさに走って逃げ出した。 後ろから人々の声が聞こえてくる。 怖い、怖い、白々しい街に染まっている白々しい人々、 私はただ、走って逃げた。 1/4
そして気づくと、私がいたのは虚無の空間。 私と灰色の世界。 終端がない、始まりもない。 私は何もすることがないから、そこで横になった。 冷たくも暖かくも、硬くも柔らかくもない空間。 そこで横になって瞳を閉じた。 再び瞳を開けると、 私はこの土手にいた。 強く吹き付ける風。 空はややうす曇り。 まわりにあるのは、ただ黄土色の細い道と、 道を惑わさん限りのたくさんの麦。 既に穂は伸び、すっかり刈り取ることが出来る状態。 ただひとり、誰も周りにいない。 はるか遠く、あの、虚構の街が見える。 私はどうすることもなく土手を歩き始めた。 2/4
やがて、だんだんと募る寂しさ。 私は寂しさを紛らわせるため、麦を一本引きぬく。 綺麗にそろった穂と緑の葉。 そう思ったのは一瞬、穂が強い風の中にばらけて私の後へと流れてゆく。 少しだけ、根元の部分に穂を残して。 わずかに穂が残った一本を捨てて、もう一本引きぬく。 でも、全く同じ、みんな、離れていってしまう。 もう一本、もう一本、何本も、何本も、同じことを続ける。 いつのまにか頬を涙がぬらしていた。 でも、それにも構わずいつまでも私は続ける。 でも、変わらない、みんな摘み取った瞬間に穂がばらけてしまう。 みんな消えてしまう、私の手元から。 私はそのままその場に立ち尽くして大きな声で泣いた。 右手にわずかに穂が残る麦を一本持ったまま。 でも、誰もいない、誰も見ていない。 虚無の街へはまだ遠い。 私はただうずくまって泣いていた。 いつもと同じ、不思議だけど悲しい夢。 いつも私は最後にはひとりぼっち。 誰も私に手を差し伸べてくれない。 誰も私を助けてはくれない。 詩子も、お母さんも、そしてあの人の両親も、 みんなが忘れてしまったあの人も。 夢の世界だから、そう思えばとても気が楽だろう。 でも、それでも、あまりに悲しすぎる夢だから、 私はそう思うこともできず、朝が来ても、目が覚めても、泣き続けていた。 3/4
でも、今は… 悲しい夢でうなされたとき、 あまりに悲しくて飛び起きたとき、 すぐに抱きしめてくれる人がいる。 優しく撫でてくれる人がいる。 その人のぬくもりが感じられるベッドの中、 悲しい夢を見る回数も減っていった。 私はこうしていつか悲しい夢を見ることもなくなるのだろうか。 嬉しさもあるけれど、少し寂しさもある。 でも、いつかは吹っ切らなくてはいけないことだから、 それをわかっているから。 私は抱きしめてくれるその人の胸に、ぎゅっと顔を押し付けて呟く。 「あなたは…いなくならないですよね…」 ずっと一緒にいてほしい、その願いを込めて。 4/4 以上だよ。
>573 は下記に変更… ごめんなさい。 「ざぁっ…」 強めの風が通り抜ける。 私はひとり、緑の草を風が薙ぐ土手に立っている。 いつのまに私はこんなところに立っていたのだろう。 右手には一本の麦の穂が握られている。 さっきまでは灯りが煌く街にいた。 お店がたくさん並ぶ、とても明るい街。 たくさんの人と一緒に、私はお店をのぞいていた。 でも、あまりにも虚構っぽいつくり。 言うなれば、演劇で使われる大道具と変わらない。 裏は木材がそのまま出ている、そんな街だった。 私はその、あまりの白々しさに走って逃げ出した。 後ろから人々の声が聞こえてくる。 怖い、怖い、白々しい街に染まっている白々しい人々、 私はただ、走って逃げた。
前回の由起子さん画像から、 『茜を取らないで!』 全4レス。 「いらっしゃい」 折原家の玄関、笑顔で迎えるのは由起子。 「…おじゃまします」 「由起子さん、こんばんは、お邪魔します」 『おじゃましますなの』 その声に続いて家に上がるのは、 茜、詩子、そして澪だ。 3人は靴を脱いでリビングへと上がると、 そこには準備をしている浩平がいた。 12月24日はクリスマス。 今日は由起子も仕事が早く終わり、 5人でのクリスマスパーティとなった。 「浩平、お誘いありがとうございます」 「ああ、まぁ、ゆっくりしていってくれ」 茜と浩平、ふたりが挨拶をしている中、 澪と詩子は部屋中のさまざまな家財道具をいじっている。 「こら、そこのふたり、暴れるなよ」 「え〜、いいじゃない、ね、澪ちゃん」 『うん、いいの』 「おまえらは…」 浩平の口からは、ただ、ため息しか漏れなかった。 1/4
「それでは、かんぱーい!」 「おいおい、由起子さん、いいのかよ…」 全員の前に置かれているのはビール。 未成年ばかりなのに、なぜかビールが並べられていた。 「いいのよ、お祝いなんだから」 「お祝いったってなぁ…」 浩平はため息をついてビールを飲もうか迷っていたが、 ほかの詩子や澪、さらに茜まで、 既に缶を開けてビールを飲み始めていた。 「こうなったらやけくそだ!」 心の中で毒づいて、浩平はビールを一気に飲み干した。 「あらー、浩平ったらいつからそんなに飲めるようになったの?」 既に真赤な顔になっている由起子が浩平に擦り寄ってくる。 その様子を見て、詩子と澪も浩平に擦り寄ってくる。 3人とも真赤な顔をしている。 「こ、これくらい普通だろ?」 酔った3人に囲まれ、少しあわてた風に浩平は答えた。 「わるいんだ〜、折原君、不良だねっ」 『わるいひとなの』 なおも詩子と澪の攻撃は止まらない。 由起子も面白そうにその様子を見ていたけれど、 ふと、テーブルの奥でぽつねんとしている茜の姿を見て近づいていった。 2/4
「茜ちゃん、飲んでる?」 先ほどのふたりとは違い、いつもと変わらぬ表情の茜。 でも、ビールの量は確実に減っているようで。 よく見ると少しだけ、うっすらと頬が朱に染まっていた。 「茜ちゃん、お酒強いのね〜」 感心したように何度も何度も由起子は頷く。 茜はすこしだけ微笑んで再びビールに口をつけた。 「最近の子って、ほんとすごいわね、お酒は強いし、スタイルもいいし…」 由起子の饒舌はなおも止まらない。 ゆっくりと茜の姿を見つめると、おもむろに茜に抱きついた。 「ゆ、由起子さん?」 突然のことで、茜は何が起こったかわからない。 それとはお構いなしに、由起子の手は茜の制服の裾をあげてゆく。 でも、茜も幾分酔っているので抵抗することもできず、 ただ、由起子にされるがままに、じっと身と動かさずにいた。 「ウエストも結構くびれてて、ほんと、スタイルいいわね」 「そんなこと、ないです…」 お酒のせいか照れているせいか、茜は真赤な顔をして返事をする。 3/4
由起子はなおもその裾を上げてゆき、 ついには薄い水色をしたブラジャーまで押し上げてしまった。 こぼれる茜の胸、揺れる胸の形も美しかった。 「ほんと、綺麗な胸してるわね」 「……」 もう、茜も真赤な顔をしたまま何も答えることはできない。 はずかしさもある、でも、ほめられて少し嬉しいから。 「そう思うわよね、浩平!」 「ん?」 突然話が浩平に振られ、茜は恥ずかしさで真赤になる。 同年代の男の人にはまだ素肌を見せたことがないから。 浩平も茜と由起子の様子を見て驚いた顔をする。 浩平はただ、口をパクパクとさせて声が出てこない。 「あ〜! 由起子さん、茜を取らないでよ〜!」 『〜〜〜〜』 その代わり出てきたのは詩子の抗議と澪の抗議…と思われる文字だった。 詩子と澪はふらついた足で由起子と茜の元へと近づく。 そしてふたりは茜に左右それぞれから抱きついて由起子へ顔を向ける。 「茜はあたしのものだから、たとえ由起子さんでも渡せません!」 『〜〜〜〜〜〜』 なおもふたりの講義…は続く。 由起子はそんな様子を見てあっさりと茜を引き渡す。 ふたりは茜の体をしっかりと抱きかかえ、その胸を愛撫しだした。 「ふふ、あとで4人で楽しみましょうね」 茜を開放してひとりになった由起子は、 3人の様子を見ながら、そう小さく呟いた。 4/4 以上だよ。
茜支援SSと称して、本スレで投下する予定のSSと視点を変えた物を ここに投下させて貰います・・・。 茜&反転澪シチュです、目に留まってしまった純粋澪ファンの方、お許し下さい。 4レスです。
こんちきしょう! あのアマどこに行きやがった! さっきから走りまくっていたが見つからねぇ。 さっきたいやきを買おうとしたら、突然羽根リュックを背負った女に それを取られちまった・・・この澪、一生の不覚っ。 何がうぐぅだ。人をなめてんのか。 取られた物は取り返す。それが世の常だ。 そして、あたいの物を分取りやがったアマを、このスケブでぼこぼこにして詫び入れさせる! これも世の常だ! じゃねぇとあたいの気がすまねぇ! せめて「どろぼーだ、捕まえてくれ!」って叫ぶことができればなぁ・・・。 スケブにちんたら書いても間にあわねぇし・・・。 ・・・くそ、公園前まで来たが完全に見失っちまった。覚えてやがれ! ろくな事がねぇなぁ。家でどこかから送られてきたよく判らないキノコのリゾット 食わせられるし。 お陰で今日は何かテンション変だ。 たいやき・・・あー、お腹へっちまったなぁ・・・。
おっと。あれは確か里村じゃねぇか。 声掛けてみるか。 「おう、その先輩どこいくの〜、もしかしてオヤジ狩りー? ケケケ」 とかいう文面ならびびるかな? まぁ、ここは猫かぶっとこう。 『あのね』 『こんにちわなの』 「あ、澪さん。散歩ですか?」 一瞬、泥棒を追いかけてますとか書こうと思ったが・・・やめておくか。 一応妥当な回答しておいてやろう。 『そうなの』 「そうですか。今暇をしているのですが・・・良かったら私と付き合いませんか?」 どうするかな・・・、と思案している時、 里村の手に、駅前の洋菓子屋の袋が。あの中にはきっとお菓子が・・・って事は! 『あのね』 『喜んでなの』
「暇ですね・・・」 『暇なの』 マジで暇だ。 こんな事してて何になる。腹が余計減るだけじゃねぇか。 じれてそろそろこの場を離れようかと思ったが、 その時里村がようやくお菓子が入っているとみた例の袋をごそごそとしだした。 「澪さん、ワッフル食べますか?」 おっ、ようやくかい。待ちくたびれたぜ。中身はワッフルだったか、上等上等。 『喜んでいただきますなの』 貰ったワッフルを食べる。うん、こりゃ美味い。 流石は甘党通で知られる里村、どこの店が美味いかとかは熟知してるって訳か。 横を見ると・・・里村、あたいの顔をじろじろと見てやがる。 なんでぇ、あたいの顔に何か付いてるって言いたいのかい? ・・・もしかして、腹のうちを探られてる!? 何かボロが出るとまずいんで、ちょっと子供っぽい行動でもしてみるか・・・。 お。あそこで親子が鳩に餌をやってんじゃん。よし、あれを真似てやろう。 ワッフルを千切って、鳩の方に投げる。よしよしちゃんと寄ってきたな。 あたいが食いたいのを断腸の思いでやってるんだ、ありがたく思え! 一通りお菓子をあげてしまって里村の所に戻る。 どうですかね? あたいの子供っぽい演技もなかなかのもので・・・いでででで! なにすんだこの女、いきなり顔を引っ張りやがって! スケブのダイレクトアタックを寸前の所で堪えたが・・・とりあえずは抗議だ! 『えぐえぐ』 『痛いの』 これで、そうですねとか言ったら迷わず血の海に沈めてやるからな? 「ごめんなさい・・・貴方の笑顔が可愛くて、つい・・・」 な、何だよいきなり誉めやがって・・・照れるじゃねぇか。 「ワッフルまだありますから、欲しかったら言って下さい」 笑顔でワッフルの袋を差し出す里村。まぁ、これで勘弁しておいてやるか。
「暇ですね・・・」 『暇なの』 マジで暇だ・・・この暖かいのにこんな所で・・・のんびりしてたら・・・眠く・・・。 ・・・・・。 おっと、一瞬意識が飛んじまった・・・。 さっき走りまくったし、あれからまたいくつかワッフル食べてお腹も満足しちまった からみてぇだな・・・。 「・・・良かったら、私の膝を貸しましょうか?」 ・・・ちょっと待ってくれよ、そんな恥ずかしいことできるかよ! とあがらいたかったのだが、眠気の方がそれを許してくれなさそうだ・・・。 どうするか、貰うものも貰っちまったし・・・ でも、膝枕もちょっと気持ちよさそうだし・・・ しばらく睡眠欲+膝枕欲と羞恥心とでせめぎ合っていた心は、本能の方に軍配が上がった。 おずおずとスケブにペンを走らせる。 『お願いするの』 ・・・今回だけ、今回だけだからな! 頭を撫でつけられる感触が心地良い。 まるで母親にでも撫でられているような、そんな錯覚を覚える。 深いところに沈んでいく意識の中、膝枕してもらった事を今更ながら感謝する澪であった。 ちょっとした非日常が生んだ、そんな暖かな昼下がりの一幕。
>587 柱|・;) ドキドキドキドキ……
珈琲作ったらまた失敗しました二次小説、 『あたしがやるよっ!』 全2レス 「茜、おつかれさま」 あたしは控室の扉を開けて茜の様子を見に来た。 嬉しそうに笑顔を向けてくれる茜。 あたしもその笑顔に笑顔で応える。 「そういえば、のどかわかない?」 「はい、少しかわきました」 空気の乾燥した控室ではどうしてものどがかわいてしまう。 だからお茶を飲みたいと思った。 あたしはポットのそばに行く。 そこにはアルミの急須とインスタントコーヒーがおいてあった。 「茜、コーヒーしかないけどいいかな?」 茜もあたしもどちらかといえば紅茶派。 念のために確認すると、 「ええ、コーヒーでもかまいませんよ」 そう言ってくれた。 1/2
ふたり分なので急須の中にインスタントコーヒーを入れて、 そしてお湯を注ぐだけ。 簡単な作業、あたしは手早くコーヒーを入れようとした。 けれども、簡単な作業だと思って舐めてかかったのが悪かった。 「ああっ!!」 「し、詩子!? どうしました」 横着してスプーンを使わずに入れていたら、大量のコーヒーが急須の中へ。 あたしも、茜も、ただそのまま突っ立っていた。 「ごめん、茜、作り直したいのは山々だけど…」 あたしが夜中からコーヒーを飲みまくっていたので、中はもう空っぽだった。 茜も小さくため息をついて、 「とりあえず作ってみましょう」 そう言って、茜は急須の中にお湯を注いでゆく、 なるべく苦くならないように、なみなみと。 出来上がったコーヒーはあまりの苦さに、 茜は砂糖を4本、ミルクを5つも入れる羽目に、 そして、あたしには砂糖もミルクも回ってこないので、 苦いコーヒーをずっとすする羽目になってしまった。 2/2
もしも茜が司のことを中途半端に忘れてしまったら… そんな試みで書いてみたよ。 『わすれもの』 全2レス とてもたいせつなこと、わすれたこと、ありますか? けっしてわすれてはいけないこと、わすれたこと、ありますか? 普通なら、忘れてしまったら、 忘れたことさえ、忘れて、 ずっと思い出すことは、ないはずなのに、 …私は、なにを忘れてしまったのだろう。 なにかを忘れてしまったことは知っている。 大切なことであることも知っている。 でも、肝心の内容が思い出せない。 ヒントはたくさんあるけれど。 詩子に逢うとき、雨の降っている日、 近所の空き地の横を通りかかるとき、 わずかに動く、心のよどみ。 胸が少しだけ、締め付けられる。 でも、思い出せない、その内容。 1/2
だから、忘れてしまおうと思った。 忘れていることがあることも。 でも、忘れられなかった。 忘れたくても、忘れられなかった。 そのたびに心が揺れるから。 忘れてはだめと、心の中が訴えるから。 だから、私は思い出そうとした。 詩子が逢いにきてくれるうちに、 ふと思い出すのではないかと思った。 雨が降る日に、窓を伝うしずくを見ているうちに、 ふと、記憶がよみがえると思っていた。 近所の空き地でしばらくたたずんでみた。 ふいに、桜の花びらが水面に降りるように、 私の記憶が舞い戻るのではないかと。 でも、だめだった。 何も思い出すことはなく、 心のよどみが揺れるだけ。 忘れることもできない、 思い出すこともできない、 私は出口のない迷路を、 ただひとり、今日もさまよいつづける… 2/2
>>582 うっわー。この澪、むっちゃ丸かじりしたい! 美味しそう!(w
純粋ファンじゃないのか、私はとても好きです。
茜とみさきさんの両支援? 『ケーキバイキングにて』 全3レスだよ。 「茜、ここってレストランだったっけ?」 柱に貼ってある張り紙を見て、あたしは茜に疑問をぶつける。 「…普通の食堂ですけど」 そう、確かにあたしたちは今、茜の学校の食堂にいるはず。 …あたしの記憶が操作されていなければ。 「なんで、学校の食堂でケーキバイキングがあるの?」 その張り紙には土曜日の午後にケーキバイキングをするということが書いてあった。 普通、ケーキバイキングといえば街のレストランで行われるもの。 そう思っていたけれど、 でも、茜は全然気にした風もなく、 「半年に一度だけあるんですよ」 ちょっと嬉しそうに、茜はあたしに告げた。 「詩子も来ますか?」 満面の笑み、裏返すと有無を言わさないような笑顔であたしに尋ねる。 あたしは、ただ黙って頷くのみ。 甘いもののことになると茜はてこでも動かないから。 1/3
「詩子、楽しみにしていますね」 「なにが楽しみなのかな?」 茜の声に続いて聞こえてきた声、それはみさきさんの声だった。 「その声は茜ちゃん、そして、詩子ちゃんだね?」 笑顔で、そして、少し外れた視線であたしたちに顔を向けるみさきさん。 その後ろには雪見さんも一緒にいた。 でも、雪見さんは口の前でばってんを作っている。 「茜ちゃん、なにか面白いイベントでもあるの?」 「はい…」 ふたりの会話が始まると、雪見さんはいっそう慌てて顔の前で手を振っている。 茜はそれに気づいているのか気づいていないのか、話を続けてゆく。 「今度の土曜日に半年に一度のケーキバイキングがあるんですよ」 「ほんとう!?」 今までよりも大きな笑顔をみさきさんはほころばせた。 「茜ちゃん、一緒にどうかな?」 「はい、詩子も一緒ですけどいいですか?」 「うん、全然かまわないよ。雪ちゃんも…そうだ、澪ちゃんも呼んで5人で来ようよ」 「はい、そうしましょう」 ふたりは嬉しそうに頷きあって、話は決定してしまった。 その後ろ、雪見さんの表情は、なんとも悲痛な表情だった。 2/3
「茜ちゃん、このモンブラン、すっごいおいしいよ!」 「このチョコレートケーキもとてもおいしいです。隠し味はなんでしょう…」 「チーズケーキもおいしいね」 「はい、とてもおいしいです」 あっという間にやってきた土曜日、 あたしたち5人はケーキバイキングに来たけれど、 ケーキの消費が進むのは、超甘党と超大食のふたり。 あたしの隣にいる澪ちゃんは、一口、ショートケーキを食べたまま、 ただぽかんと茜とみさきさんの様子を見ている。 あたしはふたりの様子を見ているだけでもうおなかいっぱい。 雪見さんはなにも食べずに少し青い顔をしていた。 けれども、そんなあたしたちに気づくこともなく、 ただ、ふたりはずっとケーキを食べ続けていた。 3/3
みさき先輩inRagnarokOnline♪ Vol.1「はじまりはじまり」 「というわけで、こんな世界に落とされてみた」 「浩平君、ここ、どこ?」 「今流行りの『RagnarokOnline』の世界だな。ほらあちこちに止まっちゃってる人たちが」 「……なんで動かないの?」 「ラグってるから」 「よく分からないけど……」 「そんなことはいいんだよ。まずはこの街、プロンテラを回ってみよう」 「おっきいんだね……」 「初めてだと間違いなく迷うよな。マップを拡大しないと現在地もさっぱりだ」 「私、浩平君の手を握ってなかったら今ごろ樹海だよ〜」 「……例えがアレだが、まあ言いたいことは分かる。人も多いしな」 「わっ、わっ、止まりそうだよ〜」 「げ、のっけからラグってやがる。外出るぞ先輩」 「う、うんっ」 「危ねぇ……お、あそこにいるのはポリンじゃないか」 「ポリンって何?」 「モンスター。ほらほら先輩の後ろにも」 「え…………きゃーーっ!」 がすがすがすっ! 「…………先輩、強いんだな」 「はぁっ……怖かったよ〜〜」 「オレは一瞬鬼になった先輩のほうが怖かった」 「何か言った?」 「いえなんでも(今の微笑は多分超兄貴も裸足で逃げ出すと思う)」
みさき先輩inRagnarokOnline♪ Vol.2「やわ毛回収部隊」 「ねえ浩平君。さっきから、同じような生き物の悲鳴みたいな音が聞こえるんだけど」 「ああ、ファーブルとかルナティックとかが倒される音だな」 「音だけ聞くと妙に不気味なんだよ……何してるの?」 「うむ、この二種類のモンスターはな、倒すと稀に『やわらかな毛』というアイテムを落とすんだ」 「ふーん、それで?」 「それを高値で買ってくれる人が結構いてな、お金稼ぎにちょうどいいらしい」 「そうなんだ……」 「名づけてやわ毛回収部隊だな。特に初心者の間はかなり貴重な収入源だ」 「じゃあ、私もやってみようかな〜」 「えっ……て、先輩!? もういねぇよ……」 しゅんしゅんしゅんしゅんっ! 「お疲れー」 「速ぁっ!? しかもなんだその口の周りの赤いのは!?」 「あはは、やだなぁ浩平君。ファーブルはいくらなんでも食べないよ」 「ルナティックは食べたのかぁぁぁぁっ!?」 「はい。結構集まったよ〜」 「あんた、チーターになれるよ……」 ※チーター/ネットワークゲームで、故意にゲームバランスを乱そうとする人。
みさき先輩inRagnarokOnline♪ Vol.3「露店でGO!」 「お金貯まったね〜」 「先輩の腹にもいろいろ溜まったな……」 「浩平君浩平君。どこか、お買い物できるところはないのかな?」 「あ、ああ、そこに露店が」 「すいませーん」 「……速ぇ……まあいいや。先輩の買い物姿を見てるか」 「……(ぶつぶつ、むにゃむにゃ)」 「なんか店の人と交渉してるっぽいな……」 「(ぺちゃくちゃ……あははは)」 「あの商人、女なのか……話が弾んでやがる」 「ただいま〜」 「おう、おかえり……げ」 「すごいでしょー。バナナにお芋にりんごにお肉にミルクとかハーブとかいーっぱいおまけしてもらっちゃった♪」 「食べ物ばっかかー!?」 「腹が減っては戦はできぬ、を地で行くのもいいものなのだよ」 「ぐぁっ……どこから現れたのかと思ったらどっぺる先輩だったのか……あの商人」 「どっぺるちゃん気前がいいんだよー♪」 「おい、何考えてる? プロト先輩を買収でもするつもりなのか?」 「人聞きが悪いのだよ浩平君。私はあくまでお金と商品を交換しただけなのだよ?」 「むぅ……」 「おいしいよ〜〜♪」 「あ、そうそう。しばらくついて行かせてもらうのだよ。面白そうだし」 「……まあ、いいか……何故か高レベルっぽいし」 「では、私がリーダーになってパーティーを組むのだよ。 パーティー『Doppel_Misaki』、ここに誕生、なのだよ」 「ってちょっと待てーーーッ! パーティー名までどっぺるなのか!?」 「どっぺる(Doppel)はドイツ語で二重(Double)の意味なのだよ♪」 「聞いてないわっ!」
みさき先輩inRagnarokOnline♪ Vol.4「職業選択の自由」 「ときに二人とも。まだノービスなのはどうかと思うのだよ。レベルは十分なのに」 「いや、作者はベースレベル13で未だノービスなんだが……」 「ヘタに盗賊なんかを目指すからファミリアにやられまくるのだよ……」 「ねえ、何の話?」 「いや、転職について」 「そうなんだ。浩平君、何になるの?」 「まだ決めかねてるんだが、商人はネタが被るのでやめておこうと思った」 「いっそ全員商人になって強欲なパーティーとして世界に名を轟かすのも」 「よくない」 「むぅ。浩平君、ノリが悪いのだよ」 「ノリの問題じゃない。うーん……剣士か、盗賊あたりかなあ」 「盗賊は浩平君にぴったりだと思うよ」 「浩平君には盗賊がお似合いだと思うのだよ」 「……剣士にしよう」 「可愛いのに……」 「可愛くない。このゲームで一番可愛いのは女ノービス」 「プロト私は今まさにそれなのだよ?」 「……えへへ……(照れ照れ)」 「しまった迂闊だった……恥ずかしいことを言ってしまったじゃないか」 「嬉しいよ〜、浩平君」 「熱いねぇ……私に対する態度とは大違いなのだよ」 「う、うるさい! いいから、先輩は何になるんだ?」 「え、私? んーと……」 「先輩ならアコライトあたりが向いてるかな」 「いやいや、マジシャンも捨てがたいのだよ」 「アーチャー、かな」 「そろそろ見えてるって正直に言ってくれないか先輩」
あ、実験作なので一応ここまでです。
ラストの茜支援二次小説。 『大きな傘の理由』 全2レス。 今日は雨。 私はいつものように傘をさしてあの空き地へ行く。 来ないことはわかっているけど、 でも、でも、私はわずかな望みを託して、雨の中歩いてゆく。 空き地の少し手前、小さな女の子が立っていた。 小さな傘、かわいい顔立ち、 その子は興味深そうに私の傘を見ている。 「お姉ちゃんの傘、大きいね」 かわいらしい笑顔で、感心したように話しかけてくる。 「どうしてそんなに大きいの?」 興味津々の顔で言葉をつないでゆく。 私は少しためらってから、 「ふたりで入れるようにですよ」 それだけを伝えた。 「お姉ちゃん、わたし、入ってみていいかな?」 目を輝かせて、期待に満ちた目で私に尋ねる。 私は再び躊躇しながらも、 「いいですよ」 それだけを伝えると、その子は自分の傘をたたんで、私の傘の中に入ってきた。 1/2
「本当に大きいね」 「…はい」 私の顔を見上げながら、 傘の水玉模様を眺めながら、 その女の子は嬉しそうな顔をしていた。 「これだと、どんな人でも入れるね」 「…はい」 肯定の返事をしたけれど、 私がこの傘で一緒に雨をよけたい人は、 一緒にこの傘ので歩きたい人は、 …悲しい考えに私は瞳を閉じた。 悪い癖、時々暗い思考にはまってしまう。 「大丈夫だよ」 でも、突然そんな声が聞こえてきたので、 私は瞳を開いた。 真剣な、年相応と思えない瞳が私の姿を捉える。 「一緒に傘に入ってくれる人は、帰ってくるよ」 「えっ…」 なにをこの子は言っているのだろう? なんでそのことを? 私の心は混乱に陥ってゆく。 「信じてあげて、それが大切だから」 それだけを言うと、小さな傘を開いて私の傘から出る。 「約束だから、ね」 それだけを残して走り去っていった。 私はただ、その方向を見続けていた。 雲の切れ間、わずかに光の指す方向を。 2/2
SS書いてる時間無かったんで、ONEゲーム本編を書き写してきました。 繭支援、6レスです。
ゲーム本編:繭シナリオより抜粋(6レス) 長森「復学…つまり元の学校に戻るってことだよ」 朝からオレたちは、そのことを話していた。椎名のことだ。 浩平「椎名の母親が、そう言ったのか」 長森「うん…繭のお母さん、最初から一週間って決めてたらしいんだよ…」 浩平「一週間…だいぶ過ぎてるな」 もう椎名が学校に通いはじめてから、十日以上は経つはずだ。 長森「あんまりに繭が元気に朝でかけるから、後少し、もう少しって延ばしてた らしいんだよ」 長森「でも、やっぱり繭はいくべき学校が違うから…」 確かにこのままオレたちのクラスに入り浸ってしまうのもよくないことはわかっていた。 その前に、人との繋がりに関心を持っている今のうちに、椎名は復学しておくべきなのだ。 長森「急だよね…」 浩平「あいつ…そんなこと自分から言いださないからなぁ…」 長森「いきなりさよならしなくちゃいけない、こっちの身にもなってほしいよねっ…」 浩平「くそ…イジメてやるぞ、今日一日…」 長森「うん…今日はたくさん遊んであげようよ」 教室へと入ると、さっそく、椎名が七瀬の髪を引っ張ったりして困らせていた。 椎名「みゅーっ」 七瀬「きたわね、保護者っ。なんとかしなさいっ」 浩平「好きにさせてやれ」 七瀬「わあぁっ」 椎名「みゅーっ♪」 七瀬「イタイ、イタイーッ!」 浩平「その痛みだって、最後と思えば可愛いもんだろ」 七瀬「え…? それってどういう…」 七瀬「ってギャーーーッ!」 椎名「みゅーっ、みゅーっ!」
七瀬「離しなさいっ、このぉっ!」 七瀬「はぁっ……ちょっと廊下いきましょっ」 ようやく椎名の手から逃れられた七瀬が、オレをどすどすと廊下まで押してゆく。 七瀬「最後って、どういうことよ」 浩平「そう言ったら、わかりそうなもんだがな」 七瀬「もしかして今日で学校くるの、最後なの、あの子?」 浩平「そういうことだ」 七瀬「そう…」 浩平「なんだ、寂しいか」 七瀬「ばぁか、あれだけ迷惑被ってるのに、寂しいわけないでしょ。逆にせい せいするわよ」 浩平「そんな奴に限って、最後に抱きついてわんわん泣くのが、定石だけどな」 七瀬「それはドラマの世界だけよ。現実には嫌いな奴はどう転がっても嫌いな 奴なの。」 浩平「そんなもんかね」 浩平「まぁ、報告だけしておいた。後は泣いて引き留めるなりなんなりしてくれ」 七瀬「そうね。一日だけの我慢とわかったら、なんとかキレずに保ちそう」 浩平「おっと、髭のお出ましだ。戻るぞ」 七瀬「うん」 ………。 ……。 ………。 いつもながら昼休みとなると、椎名のやつが、ぽーっと立ちつくしていた。 …最後だから優しくしてやる… そうだな。これまで厳しくしてきた分、最後ぐらいは優しくしてやらないとな。 浩平「よーし、椎名、今日はオレがおまえの昼飯も買ってきてやるから、待ってろよ」 椎名「うんっ」 オレは椎名を教室に待たせて、ひとり食堂へと向かう。 最後の日くらいは、贅沢も許してやろう。
オレは椎名の大好物である、ハンバーガーを大量に買い込み、それを抱えて 教室に戻る。 浩平「椎名ーっ」 椎名「みゅーっ」 教室に入ったところで呼びかけると、ぱたぱたと駆け寄ってくる。 浩平「みろ、ハンバーガーたくさん買ってきてやったぞ」 椎名「わぁ♪」 浩平「席いって、食おうな」 オレと椎名はいつものように七瀬の席を陣取り、そしてそこにハンバーガーを 山積みにする。 浩平「よし、食え」 椎名「♪」 すぐさま手にとり、ぱくつく椎名。 オレもそのひとつに手を伸ばす。 浩平「しかし七瀬はどこいった…?」 長森「繭ーっ」 そこへ、長森が現れる。 大きな袋を抱えて。 浩平「あっ…」 長森「あっ…」 浩平「おまえ、まさか…」 長森「あははっ…買ってきちゃったよぉ…」 どさどさと、さらに七瀬の机の上にハンバーガーが盛られる。 椎名「♪〜」 しかし、椎名だけは嬉しそうだった。 長森「うーん…考えることは一緒だったねぇ」 浩平「って、まさか、七瀬もっ…」 教室を見回すと、ちょうど開いたドアから七瀬がこっちを見て、そしてドアを 閉めて去ろうとしているところだった。 オレは席を立ち、後を追う。
浩平「おいおい、んなハンバーガーを大量に抱えてどこにいくつもりだ」 七瀬「返品してくるわっ…」 浩平「食い物ができるか。戻ってこい」 七瀬「………」 浩平「待てっ、崩れるっ、慎重にだ…」 どさどさ。 七瀬が買ってきた分で、さらにハンバーガーの山が高くなる。 あたかも、オレたち四人で、大食らい競争でも始めるのかと思わせる量だ。 浩平「よーい、どんっ!」 七瀬「………」 長森「………」 冗談にもならない。 もぐもぐ。 食べ続けているのは、椎名ひとりだけである。 でも、椎名だってすぐに… ごくごく。 椎名「うー」 椎名「もー、おなかいっぱい…」 …やっぱり。 でも、今日は三つ食べている。よくやったほうだ。 七瀬「ねぇ、あたしたちってアホっ? マヌケ?」 浩平「そう、自分を卑下するもんじゃない」 長森「そうだよっ。これで繭が喜んでくれたんだったら、それで良かったんじゃないっ」 椎名「あそぼーっ」 浩平「ぐあ……」 七瀬「あたし、食べるわっ」 両手にハンバーガーを持って、ものすごい勢いで食べ始める七瀬。 がつがつがつっ!! だが、5分ともたない。四つめで限界だ。
七瀬「げふっ……」 長森「そんなっ、無理しなくてもっ」 七瀬「いいのよ、一生でハンバーガー食べるのもこれが最後だって思えば、もう 少しはいけるわ…」 長森「そんなぁっ…」 椎名「うー…たいくつ…」 浩平「よし、椎名、遊ぶか」 椎名「うんっ」 長森「あ、わたしもいくよっ」 七瀬「げふっ……」 ひとりムキになってハンバーガーを食べ続ける七瀬を置いて、オレたちは教室 を後にした。 浩平「椎名、何して遊ぶ?」 椎名「けんぱ」 浩平「よーし、けんぱ、するか」 オレはその答えを予想して、教室から持参してきていたチョークで、廊下に 輪を描いてゆく。 長森「わーっ、そんなとこに描いたらっ」 浩平「大丈夫だって。ちゃんと消しておくから」 オレたちは、チャイムが鳴るまでけんぱをして遊んだ。 こんな遊びだって、椎名が言い出さなければ、することもなかっただろう。 例えば長森とふたりでいて、暇だとして、それでこの遊びをするに至るだろうか。 世の中の、この世代の男女がふたりでいて、いったいどんな確率でこの遊びを するんだろう。 大抵は、互いの興味を深めるために、話し込んで終わりだろう。 それにも飽きたら、テレビゲームか、金があれば、カラオケ、ボーリング、ビリヤード…。 遊びというものは、誰かがそれを楽しいと感じて成立するものなんだ。 それを痛感する。 椎名「けーん、けーん、ぱっぱーっ」
椎名が汗をかいて、はぁはぁ言いながらも、嬉しそうに跳ねるから楽しい。 オレたちも見ていて楽しい。 一緒に跳んで、楽しい。 でも、それを一番楽しいと思う奴がいなくなったら、もうそれは行われない。 長森とオレのふたりだけじゃ、しない。 それを考えると、オレはどうにもやりきれなくなって、長森の番を抜かして、跳んでしまう。 長森「わぁ、わたしの番だったのにぃっ」 浩平「ばか、ノンキにしてるからだ」 それも長森も同じだったのだろうか。 オレたちは、廊下を歩いてゆく通行人たちからクスクスと失笑を買いながらも、 跳び続けた。 椎名がいなくなったとき、することがなくなるだろう、遊びを。
以上です。
君はここが何のスレだか分かっててやってるのか?
>>612 さん
そうですね…。最萌支援用とはいえSSスレですね。
鬱。申し訳ない。
ヴァカじゃねえのコイツ。 SSと本編シナリオとの区別すらつかないのか。
期待待ち♪
>>613 「とはいえ」。最萌支援用「とはいえ」。
最萌のSS書きをバカにしてんのか?
しかも書いた理由が >SS書いてる時間無かったんで、ONEゲーム本編を書き写し〜 だもんな…… だったら、最初から貼るなよ。
ごめんなさい、一言だけ。 最萌トーナメント戦支援者の方をバカにしようとは思ってません。 そんな事はまったく思っていません。それだけは書かせて下さい。
>>618 は偽者です。僕は実は葉原理主義者なんです。
繭の評判を落とすことで綾香を勝たせようと思ったんですが、どうやらやるまで
もなかったようですね。
ウシャシャシャシャシャシャ。
言い訳して恥の上塗りか。 最低だな。
申し訳無いです。もう二度とここには来ないので御許し下さい。
622 :
ふじい00 ◆hGS0wYZs :02/02/19 01:39 ID:ie853Dh+
最後にヴァカな自分を晒し上げ。
ロクに批評もせず揚げ足ばっかり取ってる奴が多いな… そんなんで楽しいか?
つーか、随分手の込んだ荒らしだな。
徹夜をすると字を書きたくなってしまう罠。 『お手伝いの女の子』 全2レスだよ。 「こんにちはっ♪」 「ありがとうございますっ♪」 茜とふたり、投票所に近づくにつれて聞こえてくる元気な声。 あたしたちは聞きなれない声に顔を見合わせる。 「あっ、かわいいっ!」 投票所に到着して最初に目に入ったのはかわいい女の子。 声の主もこの女の子だった。 「はいっ、どうぞ」 まずあたしの票。 「私のもどうぞ」 続いて、茜の票。 「ありがとうございますっ♪」 その女の子は、あたしたちが差し出す投票用紙を嬉しそうに受け取ると、 机の上に置いてある投票箱に優しく納めた。 あたしはその様子を見ながら、話し掛けてみた。 1/2
「がんばってるね、お手伝いなの?」 「はいっ♪ 広報兼お手伝いでやってきましたっ♪ HMX-14C、コードですっ♪」 にっこり笑顔がとてもかわいい。 だから、思わず頭を撫でてしまった。 「あ、あのっ…」 少しだけ困ったような顔をしてうつむいてしまうコードちゃん。 「ずっとお手伝いなの? がんばってるね」 そんなコードちゃんにあたしは頭を撫でつづけながら言葉を伝える。 コードちゃんは瞳をこっちに向けて口を開いた。 2/3
「そ、そんなことないですっ♪ 皆さんが大切な一票を投票してくださってるんですっ♪ いろいろと考えて、いろいろと悩んで、ログを読んで、 そうして投票してくださるんですっ♪ ですから、わたしも精一杯、お礼をしているんですっ♪ これくらいしかわたしにはできませんけどっ♪」 しっかりとこちらを見つめて、はっきりとした口調でコードちゃんは言う。 「えらいねっ!」 そんなコードちゃんをあたしは抱きしめてしまった。 あたしの腕の中で少しもがくコードちゃん。 あたしはぎゅっと抱きしめたまま頭をなでつづけていた。 「詩子…」 不意にあたしを呼ぶ茜の声。 あたしは顔だけをそちらに向ける。 「目立ってますよ、詩子」 「あ…」 茜のその言葉にゆっくりとコードちゃんから離れる。 あたしたちはお互い真赤な顔をしていたけれど、 コードちゃんはすぐに笑顔に戻って、 「ありがとうございますっ♪」 そう、言ってくれた。 「ごめんね、それじゃ、これからもがんばってねっ♪」 「…がんばってください」 「はいっ♪ ありがとうございますっ♪」 あたしたちは笑顔で挨拶をして、茜とふたり、会場を後にした。 3/3
うそつき
く、やるのう、詩子さん。
>ID:ie853Dh+ は自分では無いので。 >619 葉及び綾香陣営に、悪い印象を抱かせかねない様な書き方はやめて下さい。 >詩子さん ありがとうございます。m(__)m
631 :
名無しさんだよもん :02/02/19 22:21 ID:CAR9ZmKd
吉井支援SSを投下させていただきます。 14レス。他に投下される方がいましたら少々待っていただけると有り難いです。
ある日曜日。あたしは物思いに耽りながら、喫茶店で紅茶に口を付けていた。 話があるから、と松本からこの喫茶店で待ち合わせする約束をしていたのだけど、 まだ来ない。 松本から携帯に「ごめん、もうちょっとでそっちに行く」というメールが入って 10分経つ。どちらかというと時間にはルーズな松本だったけど、また遅刻か・・・。 呼び出しておいて遅刻するなんて。来たら文句の一つも言ってやらないと。 時計を確認すると、来ると言っていた時間から20分ほど経ってしまっている。 ・・・それにしても、とひとりごちる。 直接会って話したい事って何だろう? まさか、恋の悩みとか。可能性は・・・無いとは言い切れないな。 もしそうだとしたら、相手は誰だろう? 思案して真っ先に思い浮かんだのは、よりにもよって自分が好意を寄せている 男の子の顔だった。 急に顔が熱くなってくる。と共に不安な気持ちも頭をもたげてくる。 松本が恋のライバル?もしそんな事になったらヤだな・・・。 そうなったら勝てないだろうな・・・なんだかんだ言って松本可愛いし。 あたしなんて・・・。
カランカラン、と喫茶店のドアについているベルが来客を告げる。 自分の思考を中断させると、そこには小さく手を振りながらこっちに向かって 歩いてくる松本の姿があった。今は夏。松本は汗だくになっている。 どうやらここまで走ってきたらしい。 「吉井ごめんねー、待った?」 「松本、遅いよー」 「えへへー、ごめんねー。 ・・・どうしたの?何か顔が赤いけど」 松本に言われてみて、自分の顔が火照っている事に改めて気が付いた。 「えっ、べ、別に何でもないよ?さっき私もここまで走ってきたからだよきっと」 「?」 言ってしまって気付いた。あたし、汗かいてないや。しまった。 一瞬不思議そうな顔をした松本だったが、すぐにさっきと同じ表情に戻る。 どうやら適当に思いついた理由で納得してくれたみたい。 ・・・あ、でもその理由じゃ松本の遅刻に何も言えないや。 松本は自分の向かいに座って、 水を持ってきたウエイトレスにアイスミルクティとショートケーキを注文する。 「早速だけど。で、何なの?会って話したい事って」 「あ、うん、その事なんだけどさー・・・」 松本はあたしにこっそりと耳打ちしてくる。ごにょごにょ。 「イベントのキャラクター役ぅ!?」 「しーっ、吉井声でかいよ〜」 自分の声が思ったより大きかったのであわてて口を塞ぎ、周りを見渡す。 とりあえず今の声で他の人から注目されるような事は無かったみたい。
以前、この夏休みの間に岡田と松本とあたし3人でどこかアルバイトしようかと いう話が出ていたのだけど、そのアルバイト先の候補がなかなか思い浮かばず とりあえず保留になっていた。そこに松本がそのアイデアを持って登場。 ・・・それにしても、何でこんな変わったバイト先を選んだんだろう? あたしが思いあたって聞いた疑問に松本が答える。 「一番の魅力はやっぱり働いている時間の割にバイトの時間給が高いから、って感じ?」 確かに、他の飲食店とかのアルバイトの時間給に比べて1.5倍は高い。 でも、高いって事はそれだけ大変だって事じゃ・・・。 「あと、家から近いって事もあるしー」 もしもし?近いのは松本の家だけなんですけど。 「それに、もう一つ理由があるんだ」 松本は手元のバックからは本、表紙を見るに、 多分演じる予定であるアニメキャラクターの設定資料集らしい・・・ を取り出し、ペラペラとページをめくりつつ、 「世の中には偶然ってのがあるものよね〜」 その手を止めて、あたしにやって欲しいと思われるキャラクターを指差した。 そこにはあたしと同じ髪色&髪型を持った女の子の姿。 「ね?吉井と見た目そっくりなキャラクターだと思わない?」 ね?って言われても・・・。 「他の2人のキャラクターも髪の色とかだいたい同じで、 岡田の髪を下ろせば、ほらあたし達3人と同じ姿。本当に凄い偶然!」 松本、舞い上がってるよ・・・でも、松本に言われてみるとその通り。 「でも第一、岡田が納得しないでしょ。そういうのに興味なさそうだし」 「岡田にはすでにOK貰ったよ?」 えっ!?本当に? 松本は岡田がやるであろうキャラクターを指さして、 「最初は絶対やらないって言ってたんだけどー。 『この役は岡田、貴方にしか出来ない!』って言ったら、何か急にOKしてくれた」 岡田・・・いくら何でも単純すぎるよ・・・。
結局、断ろうとあれこれ言ってみたんだけど、断り切れなかった。 最後の最後に、 「・・・ねぇ、この松本の一生のお願い、みんなで良い思い出作ろうよ!」 松本はぎゅっと目を閉じて、自分の目の前でパン、と手を合わせる。 これが松本の何度目の一生のお願い事だったか忘れてしまったけれど、 今までこの決め台詞が飛び出た時に、あたしは断わりきった試しがない。 「・・・ダメ?」 片目だけをあけて、あたしの様子を伺ってくる松本。 「・・・仕方ないなぁ・・・」 こうなったら最後まで付き合わないと駄目だよね。一蓮托生。 だってあたし達、友達だもの。
で、あたしは今その百貨店の、アトラクションショーの控え室にいる。 そして、鏡の前でその姿に頭を抱えていた。 セーラー服を基調にしたバトルコスチューム。色は髪の色と同じ紫を基調としている。 でもスカートの丈が異様に短い。 子供向けというよりも、『大きいお兄さん』が喜びそうな。 これが学生服なら先生に見つかって大目玉は確実。 アルバイトの面接に3人して受かった後、2日間の研修を受けて今ここにいる。 研修の時にもう何度かこの衣装は着ているけれど・・・ この格好で舞台に立たなきゃいけないかと思うと、顔から火が出そうだ。 「吉井〜準備できた〜? あーっ、可愛い〜☆」 様子を見に来た松本が黄色い声をあげて飛びついてくる。 「可愛い〜可愛い〜赤くなっているところがまた可愛いな〜☆」 とか言ってすりすりしてくる。やめてよ、恥ずかしいんだってば・・・。 ちなみに、松本の衣装もベースが黄色なだけで形はほとんど同じ。 ・・・松本は恥ずかしくないんだろうか? 控え室の入口で様子をうかがっていた岡田は、青が基調になっている。 揃いも揃って、凄くカラフルだな。とか思ってしまったり。 「吉井ー、もうすぐ時間だからそろそろ行くよ。松本、いつまでもくっついてるな!」 「あ、うん今行く」 そう声を掛けて不安で仕方ない気持ちを押さえつつ、 簡易舞台のある、百貨店の屋上へ向かうために、岡田、松本と共に控え室を後にした。 話の内容は、定番のなんたら戦隊とかのヒーロー物とほとんど変わらない、 そして上演時間は15分間と、あまり長くない。 それ故、あまり内容も濃くない。 初めて舞台に立った時には、緊張で足の震えが止まらなかったけど、 あたし達みたいなただの女子高生でも出来る事に安堵感を覚えた。
・・・夏が過ぎゆくのは早いもので。 10:00上演、13:00上演の部が終わって、後は16:00上演を演じれば、 夏期アルバイトは全日程終了になる。 もう何度も同じ事を繰り返していると、だんだん舞台の上にいるのも自信がついてきた。 それとも、怖いとか、羞恥心等の感情が鈍感になってきてしまっているだけだろうか。 それよりも、この仕事の最大の天敵は暑さだった。 今年の夏は特に高温の日が多くて、時には脱水症状になりかけた事もあった。 でも、3人誰も最後まで休む事なく、今日までやってこれた。 お互いがお互いを励まし合った結果だと思う。 今は、舞台の袖で3回目の出番待ちをしている。 今舞台の上では悪役の人と戦闘員の人達が、見に来ている子供を人質に取っている最中。 「よ〜しお前達はこれから戦闘員としてこき使ってやるからな〜」 「みんな、最後まであきらめちゃだめだよ!大声で呼べば、 お姉ちゃん達はきっと来てくれるよ! 会場のみんなっ!大きな声でお姉ちゃん達を呼んでみよう!」 お姉さんと悪人達とのお決まりの台詞が飛び交っている・・・もうすぐ出番だ。 「よし、松本、吉井。最後の舞台も頑張ろう」 「うん、頑張ろう」 「おー、がんばろー」 岡田と松本、あたしと声を掛け合って。あたし達3人は舞台に飛び出していった。
スポットライトがこっちに向けて照らされる。BGMと、歓声が一斉に高まる。 まずは舞台に出たら、戦闘員の人がこっちに来る。それを右、左、右に避けて舞台の 反対側へ。ここまでは問題なくクリア。 そこに戦闘員の1人が手に持った武器・・・鉄製の刃の付いていない小鎌に似た ようなもの・・・を振りかざして突っ込んでくる。 戦闘員達は、アニメで必ずこの武器を持っているのだけど、 こんなものでも当たったら痛いから避けていく順番だけは間違うな、 と研修での指南してくれた人から何度も指摘されている。 右に避けて相手が躓くように足を出すと、爆転に失敗したような格好で派手に転んでくれる。 何度見ても、痛そう・・・。 「良い子のみんな、お姉ちゃん達が戦っている今のうちにお父さん、お母さんの所へ!」 舞台のお姉さんがそう告げると、一斉に子供達は舞台から両親がいるだろう場所へ 走り去っていく。 その姿の目で追っていると、観客席の一番先頭に横柄な態度で陣取っている、 オレはチンピラです、と名刺を付けているような男が視界に入った。 横にその男の子供がいるようだけど、その子供は隣の席の子供にちょっかいを出している。 しかしそれを男は咎めもせず・・・にやけた顔であたしをじろじろと見ている。 背中を寒気が走った。 三人組の登場決め台詞(とは言ってもアテレコがあるのであたし達は口パクだけど)の後。 悪役の人が独白モードになっている間、こちらは舞台の上で傍観する形になってしまう。 この後、悪役の人が本気になって、さっきの戦闘員のお兄さん達が戻ってきて、 最後のシーンまで戦闘が続く予定。 ・・・さっきの男が気になって、ちらっとそっちをみやると・・・ まだじろじろあたしの方を見てる・・・本当に気持ち悪い・・・。 舞台にまた意識を集中させようと視線を戻そうとしたその瞬間・・・ 今この姿を一番見られたくない人の顔が視界に入った気がした。 驚いてもう一度観客席側に視線を移す。
ここは百貨店の屋上、あまり広くないので、すぐに全体が見渡せてしまう。 そして観客席の向こう側に藤田くんと佐藤くんが並んで歩いているのを、 見つけてしまった。 視線を戻そうとしても、藤田くんからそらすことができない。 舞台の上にいることで少々早まっていた心拍が急に跳ね上がる。 ・・・神様お願い!こっちに気づかないで! なのに神様は意地悪で。 藤田くんは、こっちを振り返ってしまった・・・ ・・・お願い!こっちに来ないで! でも、藤田くんと佐藤くん、こっちに、近づいてくる・・・。 BGMの曲調が急に変わった。 藤田くんが、こっち、見てる・・・。 藤田くんが、佐藤くんと、こっち見てる・・・。 藤田くんが、佐藤くんと、楽しそうに、話ながら、こっち見てる・・・。 藤田くんが、藤田くんが、藤田くんが、藤田くんが、 頭の中、真っ白・・・。
「吉井、吉井ってばッ」 横合いから呼ぶ声がする。あ、松本?何? 松本はあたしの体が向いている方向を指さす。 そこには、予定を狂わされて戸惑っている戦闘員の姿があった。 戦闘員が登場したら、あたしは避けながら舞台の反対まで移動しないといけないのに。 しまった!動かなきゃ! 混乱した頭のまま、慌てて舞台の反対側へ駆け出す。 最初の人を右に避け・・・右じゃないッ! しかし、すでに右へステップを踏んだ体を元に戻すことができない。 戦闘員が振るう武器が眼前に迫ってくる・・・。 ビリィィィィッ。 下にぐっと引っ張られたけど・・・あれ?痛くない。 「悪い!」 小声で目の前の戦闘員の人が謝った。何げに自分の胸元を見ると、 武器によってセーラー服が首元から破れ、下着が顔を覗かせている。 ぼぅっとした頭で、くるりと観客席を見回す。みんな見てる。みんな。 ・・・・・・・・・慌てて、胸を押さえてうずくまる。 「嫌ァァァーッッッ!」 その悲鳴で、屋上全体が凍り付いた。 「・・・よくもやってくれたわね!」 時間の止まった会場の中で、最初に行動を起こしたのは岡田だった。 あたしの服を破った戦闘員の人の腕を捻り上げ、投げ飛ばす。 さっきの詫びも兼ねてなのか、それとも演技無しだったのか。 その人は今までの戦闘員の人の中で最高に派手にぶっ飛び、 ついでに舞台からもんどり打って落ちた。 「早く怪我したこの子を安全な所へ!」「え、あ・・・判った!」 そう叫んで、さっきまでと同じように岡田は戦闘員を一人ずつ倒していく演技を続ける。 このハプニングも実は予定のうちだったんですよ、と言いたげに。 岡田、有り難う、ナイスフォロー。
丁度横にいた松本はあたしの手を取って舞台裏へ連れて行こうとする。 その手にすがって立ち上がろうとしたけど、足腰がガクガク震えて力が入らない。 初めてやってしまった大きい失敗のせいか、 どうやら腰が抜けてしまっているらしい・・・。松本に動けない旨を首を振って伝える。 その様子を見て取ったからなのかどうか、突然観客席からヤジが飛んだ。 「おいおい、姉ちゃんよー。この前のテレビでやってたそのシーン、 胸元破られたまま戦ってたやんけ。逃げんと一緒に戦えや」 さっき、あたしをいやらしい目で見ていたあの男だ。 「少々見せたって減るもんやなし、ちったぁ頑張らんかい」 さっきと同じいやらしい顔をしたまま。 「・・・あんたねっ!何様のつもりよ!」 我慢が出来なくなったらしい岡田は、演技を放り出して男に詰め寄ろうとする。 「俺ら忙しい時間をさいて見てやってる客じゃ。 ・・・何や客に向かってその口の利き方。 痛い目にあいたいんか、オォ?いっぺんシメたろかァ!!」 その迫力に流石の岡田も出そうとしていた足がびくりと止まる。 せっかく元に戻りそうな会場の空気が、またさっきの最悪な状態に戻ってしまった。 男は懐からタバコの箱を取り出して一本口にくわえ、空になったらしいその箱を 片手でくしゃっと潰す。 「何しとんねん。あんたらそれでもプロか?もうちょっとワシら楽しませてくれや」 あたし達プロなんかじゃない・・・。 もう一度立とうとする。けど、やっぱり腰に力が入らない。 「耳悪いんかぁ?・・・聞こえてへんのかコラ!」 反応が無くて苛立ったらしい男は、あたしに向かって持っていたタバコの箱を振りかぶる。 物理的には当たっても痛くないと思うけど、 それはきっとハンマーで殴られる以上に痛いだろう。心に。
突然目の前が暗くなる、見ると誰かの足が立った。タバコの箱はその右足に当たって落ちる。 見上げたそこには。あの人の顔。あたしの大好きな、藤田くんの顔があった。 藤田くんがしゃがみ込んだかと思うと、急にあたしの体がふわりと浮き上がった。 一瞬どうなったのかよく判らなかったけれど ・・・あたし、ひょっとして藤田くんに抱き上げられてる? 「おいおい、何やてめぇは・・・」 男は抗議の声を上げる。 藤田くんは、その男の方を見た。 「・・・ッ。チッ・・・こんなん見てられっか! おら、行くぞ!」 男は、ぶつくさ言いながら自分の横にいた子供の手を引いて屋上から去っていった。 あたしの位置からじゃみえないけれど、藤田くんは多分男を睨み付けたらしい。 そしてそのままあたしをお姫様だっこしたまま、 舞台を降りてゆく連れて行ってくれる。 「・・・藤田・・・くん?」 「あー、すまん。どうしてもほっておけなかった。控え室どこだ?」 「あ、この一階下のエレベータ横・・・」 松本の前も通り過ぎていく。 破れた胸元を押さえる。 ドキドキ。ドキドキ。服の上からでも心臓が激しく高鳴っているのが判る。 心音が藤田くんに聞こえるかも・・・ああ、どうしよう。
あたしを藤田くんに控え室まで連れて行ってくれた後、 藤田くんは、頑張れよ、と一声掛けてすぐにどこかへ行ってしまった。 控え室で心が落ち着くまで少し休憩した後、すぐに予備の服を探す。 それはすぐに見つかった。慌てて着替える。 急いで舞台まで戻った時は、戦闘員の人が全員倒されて、 悪役の人が悪あがきで秘密兵器を使い、岡田と松本を苦しめているシーン。 本当の筋書きではこの秘密兵器は途中で故障してしまう予定だったけれど、 あたしがその秘密兵器を横取りしながら登場、というアドリブで 舞台に戻ることが出来た。 あれから控え室で上の人に怒られたり、色々あって1時間以上経過してしまった。 「藤田くんにお礼が言いたかったけど、もう帰っちゃってるだろうな・・・」 とため息をついたあたしの手を引っ張って走り出したのは、松本だった。 「最初から諦めてたらダメだよー。自分のやる事は何でも叶う、 くらいの気持ちでいかないとダメだよー!」 そして、今あたし達3人は百貨店の中を走り回っていた。 「はぁ、はぁ、ここ、にも、いない、みたい」 「はぁ、はぁ、もう、全階、見て、回っちゃった、よー」 「後は、まだ、いってない、所って、あったっけ、はぁ、はぁ」 8階フロアから1階フロア、そして、地下駐車場までくまなく探したのに、藤田くんは 見つける事ができなかった。 帰っちゃったのかな、やっぱり。 さっき、助けてくれたあの場所でお礼行っておけば良かった・・・あっ! その時、三人全員が同じ事を思ったらしい。 見事に声がかぶった。 「「「屋上!」」」
果たして、すっかり人気が無くなった屋上に、藤田くんと佐藤くんはいた。 夕焼けで赤く染まる街並みを、フェンス越しに見ていた。 まずは荒れた息を整える。 急に呼びかけると驚かせるかなと思って、そっと、近づいていく。 「でも、驚いたよ。僕は浩之は絶対あかりだと思ってた。まさか吉井さんだったなんて」 急に佐藤くんから自分の名前が出てきたのでドキリとして立ち止まる。 「んー、まぁな。でも、あかりは幼なじみ、だからこそそれ以上の気になれないんだ」 「そうなんだ・・・」 「俺も気持ちが整理出来なくて困っていたんだ。だけど、今日の事で判った気がする。 吉井があいつに言われるままになっていた時、じっとしていられなかった。 そばにいって吉井を守ってやりたかった。 あの場に吉井がいなかったら、間違いなく俺はあいつを殴り倒していた。 それくらい腹が立ったんだ。 で、あれからちょっと考えた。何であんなに腹が立ったのか。 ・・・で、たどり着いた結論が」 「うん」 2人の間にしばらく沈黙が流れる。 「俺はやっぱり吉井の事が、好き、なんだと思う」 ・・・・・。 ちょっとの間、息をすることすら忘れていた。 今、今、藤田くんは何て・・・? 「良かったねぇ吉井!」 後ろからトン、と背中を押されて、その勢いで数歩よろめいてしまう。 立ち止まった時には、松本の声に気付いてこっちを向いた藤田くんと数歩の距離しかなかった。 藤田くんの顔は、しまった聞かれたか、って言いたげな顔をしていたけど、 「えーと、・・・まぁ、そういう事だ」 と言って、頬を指でぽりぽりと掻く。藤田くんの照れ隠ししている時の癖だ。 何となく赤らんでいるのは・・・夕日のせいじゃないよね?
「・・・あの・・・さっきは助けてくれて・・・有り難う・・・えっと、あたし・・・」 目の前が唐突に揺らいでくる。 「・・・凄く・・・凄く嬉しいよ・・・」 その涙は自分で止めようとしても一向に止まらず。 ただぼろぼろと泣いているあたしを。 藤田くんは、やさしく抱きしめてくれた。 あたしを包んでくれているその手と胸が、とても暖かく、優しい。 松本があたしの手を取って言った時の言葉が蘇る。 『最初から諦めてたらダメだよー。自分のやる事は何でも叶う、 くらいの気持ちでいかないとダメだよー!』 あたし、藤田くんの事、あたしの手に届くような人じゃないって諦めてた。 でも、松本の言う通りだった。 諦めちゃダメだったよ。 今日はとても大変だったけど。でも。 今あたしは、最高に幸せだった。 <終>
昨日、大急ぎで投稿した後、すぐに外出したから誤爆に気づかなかった…… そのまま放置するのも、人としてあれなので、誤爆した分もあわせて投稿し直してみます。
ユニット結成・第3−A章 :02/02/20 19:41 理奈・「──次、は深山雪見さんの所ね」 冬弥・「うん、今度は校門で待たないで直接、部室の方へ行こうか、アポはとってあるし」 理奈・「え? いいけど、その口調だと来たことがあるみたいね、藤井君」 冬弥・「一度、うちの大学の演劇部がここの学校と合同で舞台出したことがあるんだ」 理奈・「深山さんって演劇部の部長なんだそうね」 冬弥・「うん、その時に美咲さんの手伝いについていったから、深山さんの顔は知ってるよ」 理奈・「藤井君って、ADだけじゃなくていろいろやってるのね、なんか憧れるかな」 冬弥・「そんな言うほどの事なんて、やってないよ、それより理奈ちゃんの方が……」 理奈・「私は兄さんの思いつきに振り回されてるだけよ、せめて実の妹の社会的、いや、物理的生命のことぐらい考えてもらいたいわ」 冬弥・「物理的って……」 理奈・「言葉通りよ、『パスポートなしで猿○岩っぽいことやろうか』って、アラスカに行かされて…」 冬弥・「パスポートなしって……」 理奈・「それで、○ーコムだけ渡されて軍事基地に潜入させられたときは、死を覚悟したわよ」 冬弥・「と、とりあえず、生きててよかったね……」 香里・「身内で苦労するのはどこも変わらないってわけね、芸能人と比べるのもなんだけど」 冬弥・「演劇部の部室はこの廊下の先の方にあるから……って、痛った──っ!」 みさき・「う〜、痛いよ〜、目がチカチカするよ〜」 理奈・(藤井君って、こういう目によく会うわね……)
第3−B章 みさき「ひどいよ〜、浩平君、カツカレー15人分だよ〜」 香里(今、小声で「みさきあたーっく♪」って聞こえたんだけど……) 雪見「みさき……私があれほど念を押して、今日はおとなしくしてろって言った意味が、私が涙声になりながら十分おきに電話で確認した意味が、流れ星に『みさきが何もしませんように』と一秒以内に三回も願を懸けた意味がっ、みさき、アンタはわからんかーっ!」 みさき「だって、お腹すいたんだよ〜、これは不可抗力なんだよ〜」 雪見「だからって、当たり屋なんてヤの字みたいなこと、するんじゃない!」 冬弥「流れ星に願いを言うのって、まずできる人いないと思うんだけど……」 雪見「なめないで藤井さん、私、演劇部部長なのよ……発声練習ぐらいしてるわよ」 みさき「あれ? 浩平君じゃなかったんだ、ごめんね、足音似てたからね、悪いことしちゃったよ」 雪見「別に平気よ、この人なら謝ってすむことだから」 冬弥「そうだったのか……」 理奈「話の途中で悪いけど、深山雪見さんね」 雪見「ああ、話は藤井さんから聞いてます。いいですよ、一日だけだし、演技の勉強にもなるし」 理奈「この話を受けてくれてありがとう、それじゃ時間もないし行きましょうか」 雪見「それじゃ、ちょっとその前に、藤井さん彼女はどこ?」 冬弥「……彼女って?」 雪見「藤井さんがいるってことは、当然、美咲さんも来ているのよね?」 冬弥「え、別に今日は大学とは関係ないし……」 雪見「天才って本当にいるのよね……しかも、本人はそのことを全然自慢しない人だし」 理奈「私も、美咲さんが書いた脚本を由綺から見せてもらったけど、私とそう変わらない年代の人があれを書いたとは思えなかったわね」 雪見「多分、私のこれからの時間をずっと勉強に費やしても、あの人には追いつけないと思う……」 冬弥「あの……今日は美咲さん、来ていないんだけど」 雪見「あんなの見せられたら、私みたいな人は演劇をスッパリやめるか、逆に一生を捧げるかの二つしかなくなっちゃうわよ、なんというか──中途半端に演劇をやれなくなる」 理奈「私はそれでも、この道を続けなきゃいけないし、その覚悟はできているけど──揺らぐわね」 香里「ねえ、さっきから話に出ている美咲さんってどういう人なのよ」
第3−C章 :02/02/20 19:46 冬弥「澤倉美咲さん、俺の高校の時からの先輩、美咲さん本人は謙虚な性格だから気づいてないけど、実は彼女の才能に惹かれたコアなファンが男女問わずかなりの数いるんだ、 由綺もそういう「美咲さん信者」の一人だったけど、高校時代はそんな美咲さんの近くにいたから結構うとまれていたっけ、あれはもう、ほとんど信仰の域だったかな」 香里「……でも、今日はその人、来てないんでしょう、どうするの」 みさき「……なんか寂しいよ〜」 雪見「みさきは黙ってて、今日は美咲さんにする質問たくさん考えてあるんだから」 冬弥「……逃げるか、──ここはあえて、罪を犯そう」 雪見「もし、みさきが何かやらかしたときのために、いろいろと、そう……いろいろと用意してたんだけど、よかった、今日は必要なかったみたいね」 みさき「だめだよ♪ 雪ちゃん、最後まで油断は禁物だよ〜♪」 雪見「なら、今のうちに芽を摘み取る必要があるわね、みさき──ロスト体って知ってる?」 みさき「ねえっ、なんか雪ちゃん金色だよ、なんとなくだけど、とにかく金色だよぉっ!」 香里「藤井さん、あなた葉っぱの主人公なんでしょ、電波とか鬼の血とか見様見真似とか骨董とか感感俺俺とかできないの!?」 冬弥「すまん、できない、俺は正真正銘、まったく普通の人間だから」 理奈「不可視の力はまずいわね、私と香里の二人分合わせても、まだ戦闘力が足りないわ」 香里「協力はしないわよ、今回あたしはボケ役に徹することにしてるし」 (窓から、いつものように豪快に飛び降りる人影が現れる)
:ユニット結成・第3−D章 :02/02/20 19:49 冬弥「なんだ、『アレ』は──人……なのか?」 理奈「どうやら、『アレ』が私達を助けてくれてるのは確かみたいね」 香里「と言うか『アレ』、一方的な虐殺ね、不可視の力相手に……」 冬弥「……どうも、さっきから『アレ』が俺のよく知っている奴に見えて仕方がないんだけど」 (闘いの歓喜を味わい尽くした『アレ』が冬弥達の方に振りむく) 彰「あれ、冬弥に理奈さんじゃない、なんでこんな所にいるの?」 冬弥「……お前も一応は長瀬一族なんだよな、名字は七瀬だけど」 彰「まったくひどいよね、冬弥ったら聞いてよ、僕のいとこがさぁ、この学校に通ってるんだけどいきなり呼び出すんだもん、 進路相談だって、ほら、うちの家系って馬面じゃない、あの子ったら『馬面じゃ乙女になれない』とかわけわからないこと言ってさ、それで替わりに僕を呼び出すんだもの……」 理奈「……とにかく、深山さん本人の承諾は取ってあるし、捕獲しておくわね」 深山雪見、メンバー加入…… (not to be continued っつーか、続いてたまるか) いくら即興で書いたとはいえ、誤爆して15時間もそのままはマズ過ぎだ…… テレネッツァすれのみなさん迷惑かけました。
「俺を殺してよ・・・千鶴さん・・・」 俺の言葉に腕の中の千鶴さんはピクリと体を震わせた。 「っ・・・耕一さん・・・」 悲痛な声を出す千鶴さん・・・ 紅の瞳には深い悲しみの色がやどっているだろう 「・・・俺の中の鬼が・・・目覚める前にさ・・・」 できるだけ穏やかな声で―実際は震えていたかもしれないが―耳元で囁く。 「・・・・・・」 千鶴さんは喋らない だが抱きしめている腕から千鶴さんの哀しみが伝わってくる。 ――あぁ・・・俺はまた千鶴さんを哀しませて・・・最低だな・・・
「・・・耕一さん・・・」 哀しみに満ちた―それでもなにか決意を秘めたような声が聞こえた ズムッ!! 「・・・っぁ・・・!!」 自分の腹に形容し難い熱い感覚・・・恐らく千鶴さんの― 痛みはない・・・ただ・・・熱い・・・ 「・・・どうして・・・」 千鶴さんの声が聞こえる・・・ ・・・千鶴さんは、震えていた・・・ ・・・声も・・・体も・・・心も・・・ 「・・どう――私―好きな―――いなくなっ――」 ・・・あれ? ・・・もう・・・よく聞こえないや・・・ ・・・でも・・・俺のことを・・・好きだって・・・言ってくれてる・・・みたいだ・・・ ・・・もう少し・・・千鶴さんと一緒にいたかったなぁ・・・ ・・・ごめんね・・・千鶴さん・・・ 「・・・ちづる・・・さん・・・」 声も出せなくなる・・・ それでも・・・最後に・・・ 「・・・さよなら・・・」 「!!」 俺は千鶴さんをゆっくりと押しのけた ・・・そして歩き出した。水門へ向かって・・・ 「耕一さん!」 千鶴さんが俺に近づこうとするが、それを手で制する。 ・・・俺が死んだ後の処理を千鶴さんにさせたくない。 ・・・それなら自分で・・・ 幸いなことにここは水門前だ・・・水の中にいけば・・・
最後に・・・千鶴さんのいる方に振り返る 千鶴さんは 泣いていた 瞳に 雫を たくさんためて 千鶴さんは 俺の血で 紅く 染まっていた その瞳は 紅くは無い ただ 瞳を 哀しみに染めて 俺を 見ていた 「ありがとう」 俺は 想いを込めて言葉を告げた この言葉しか 見当たらなかった 「―っ!!」 千鶴さんが 何か叫んだ 聞こえなかった 体に衝撃 同時に浮揚感 水の中に落ちたのか これで 終わる 哀しみも 愛しさも 全部 ―終わるのか? ―終わりたくない? ―俺は どうなんだ? ―そこで 意識が途切れる ・・・ミツケタ・・・ 不意に意識が覚醒する オレは闇の中を駆けていた 風を裂いて走る感覚が気持ちを高ぶらせる ―ドウゾク ノ オンナ― (いや 俺じゃない) ―ツイニ ミツケタ― (これは なんだ)
見えていた景色が元に戻る 水中の冷たく暗い世界に 「教エテヤル」 (誰だ?) 「オレは オマエだ 柏木耕一」 (どういうことだ) 「オレが オマエ オマエが オレだ」 (よくわからない) 「オマエのナカのオニだ」 (なに?) 「オマエが コドモの コロに 封じたモノ ソレが オレだ」 (今の映像はなんなんだ) 「ヤツは オニ エルクゥ 」 (なにっ!?) 「イママデ オマエが 見タ 多クの 事件 全テは ヤツとノしんくろニヨル 夢」 (!?) 「エルクゥは 感覚ガ しんくろスル」 (な・・・) 「ヤツは 千鶴タチを狙ッテイル」 (!!) ドクン 俺の中の血が 躍動したような錯覚を受ける 「千鶴タチは 犯サレ 殺サレル」 ドクン (いやだ・・・)
「柏木耕一」 なんだ? ドクン 「オレはお前の中で永く眠っていた」 ? 「子供のころを覚えていないのか」 ドクン 「永くお前の中にいるうちにオレはお前となりつつある」 唐突に 過去の 記憶が 見えてきた 梓 楓ちゃん 初音ちゃん 俺を 怯えた目で 見つめる 俺は 体から 水を滴らせ― 『お前はオレの力を使いこなせるように』 ドクン 『オレは』 ドクン 体が 熱い だが 心地よい 熱さだ ドクン 『お前だ』
ドクン 千鶴さん達を・・・助けなきゃ・・・俺が・・・守らなきゃ・・・ 「『そうだ』」 俺が・・・助けるっ!! バシャァァァァッッ!! 水の中から一気に飛び出した俺は地面に降り立つ 体に力がみなぎっているのが解る 腹の傷もまだ血を流してはいるが徐々に再生しているようだ 千鶴さんは家へ戻ったようだな・・・ ザッ!! 俺は柏木家へ向かって走り出す 体が軽い 風が気持ちいい まだ・・・間に合う!! 鬼とか エルクゥとか まだ良くわかっていないかもしれない だけど 千鶴さんを みんなを助けたい!! 「グォォォォォォォッ!!」 俺は咆哮を上げながら風の如く駆け下りていった
ええっと、いまからSSを投下させてもらいます。 長さは9レスぶんです。どうぞよろしく。
千鶴SS「バレンタイン大作戦(1/8)」 「・・・これでよし、っと。」 きれいな紙でラッピングして、リボンをかけて出来上がりです。 何がって?もちろんバレンタインチョコに決まってます。 そう、明日はバレンタインデーなのです。チョコの出来はなかなかのもの、味見も済ませて、包装も完璧。 後は本番を待つばかりです。 「でも、悩みがないわけじゃないのよね・・・」 そう、悩みというのはあの子達のことです。 最近ちょっと色気づいてきて、三人とも耕一さんにチョコをあげる気みたいなんです。 ・・・もちろんあの子達のことは大切です。 でも、耕一さんのことなら話は別。 「早めに芽を摘んでおくことが必要ね。」 とはいえ、真正面からぶつかったのでは勝ち目はありません。 チョコの出来は悪くないんですけど、いかんせん相手が悪すぎる。 性格も態度も悪いけど、料理とお菓子作りはプロ級の梓。 料理の腕は未知数だけど、時々見せるはにかんだ笑顔が破壊的な楓。 全てにおいてバランスが取れている初音。 どの子をとっても私の上をいっているでしょう。 ここはじっくりと策を練る必要がありますね。 「まずは偵察して様子を見てみるか・・・」
千鶴SS「バレンタイン大作戦(2/8)」 まずは梓のチョコレートです。 あの子はその腕を利用してちょっと凝ったチョコで攻めて来るはずです。 どこにおいてあるのかなっと・・・・・ 「あ、あった」 今日の夜作るつもりなのでしょう、材料が無造作にキッチンにおいてあります。 レシピを見てみると・・・・洋酒風味のトリュフのようです。 なるほど、うまく作れれば梓の点がアップすること間違いなしですね。 これはなんとしても阻止しなくてはいけません。 「とはいえ、どうしようかな・・・」 まだ作り始めてないので、チョコは固まったまま。これでは細工はできません。 ・・・そうだ。 風味付けに使うブランデーなら細工をする余地があります。 どこからか取り出した唐辛子エキスをどばーっと入れて。 ふふふ、これで正体不明の物体ができるはずです。 まず一人目。
千鶴SS「バレンタイン大作戦(3/8)」 次は楓のチョコです。 あの子はお菓子は作ったことはないし、自作するとは・・・ (ごそごそ)・・・・・・・・・ ・・・・・(ごそごそ)・・・・ ・・・・・・・・・(ごそごそ) 「あ、これこれ」 案の定、戸棚の中にきれいにラッピングされたチョコが入っていました。 これは簡単。すりかえるだけです。 まずきれいにシールをはがします。少し破れたけど、あとで適当なシールを貼っておけば大丈夫。 そして中身を入れ替えます。 「某ゲームで大人気のリアルう○こチョコを入れて、と。」 後は元に戻すだけです。 ごめんね、楓。でもこれも耕一さんのためです。 これで二人目。
千鶴SS「バレンタイン大作戦(4/8)」 最後は初音のチョコ。 あの子は自作してくるはずです。 しかも時間に余裕を見て、もう完成しているはず。 「ここじゃないし、あそこでもない・・・・ここかしら」 あ、ありました。中身は・・・・シンプルなハート型のチョコ。 あの子らしいですね。でも、上にはホワイトチョコで、「お兄ちゃん大スキ」の文字が。 これは放っておくわけにはいきません。 とはいえ、これも難問です。もう完成しているので、何かを混ぜるわけにはいかない。 しかもシンプルなので、逆に細工がしにくいんです。 一番の難敵かも。 ・・・・そうだわ。 「ス」の文字を削って、濁点と「リ」をプラス。とどめに裏に切れ込みを入れておきます。 ああ、良心が痛むわ・・・・。 でもバレンタインデーが待ち遠しい(ニヤソ)
千鶴SS「バレンタイン大作戦(5/8)」 さて、時間はいきなり飛んで、次の日の夕食後です。 いわゆる、バレンタインチョコ贈呈に絶好のチャンス。 おや、梓がトップを取るつもりのようね。 梓「あのさ、耕一・・・・こ、これ作ったんだ。その・・・あ、あんたにやるよ」 耕一「これって、もしかしてバレンタインチョコか?」 梓「あ、言っとくけど義理だからな、義理。勘違いするなよ!」 耕一「ははは、分かってるって。お、中はトリュフか。さすが梓、やるなあ。味のほうは・・・」 梓「(ゴクリ)」 耕一「・・・・・・!!!!!!ぎゃーーーーー!!!」 耕一さんは何か奇妙な声を上げて飛び出していきました。水を飲みにいったのでしょうか。 梓「え、嘘だろ・・・ちゃんとレシピどおりに・・・・!!☆○□×&!」 味見した梓ものびてしまいました。そういえばあの子、あんまり辛いの得意じゃなかったっけ。 ご愁傷様。 い、いえ、日ごろの恨みを晴らしたなんてそんなことじゃないですよ。
千鶴SS「バレンタイン大作戦(6/8)」 やがて、耕一さんが復活してきました。ちなみに梓はまだのびたままです。 楓がなにやらごそごそやってます。次は楓ですか。 楓「あの・・・・耕一さん・・・・これ・・・・」 耕一「え、ああ、楓ちゃんもくれるの?さんきゅー。すごく嬉しいよ。」 楓「(ポ)」 耕一「お、この包装紙は何か高そうだね。なかは・・・」 楓「(!!)」 耕一「リ、リアルう○こチョコ・・・え、えーと、これは・・・」 楓「あ、あの・・・・その・・・・・これは・・・・」 耕一「い、いや、これ楓流のジョークなんだよね、うん。リアルう○こチョコおいしいなー、ははは」 楓(がーん・・・・・) あ、楓が落ち込んでいます。これはしばらくの間再起不能のようですね。 ごめんね楓。バレンタイン道は厳しいのよ・・・。
千鶴SS「バレンタイン大作戦(7/8)」 さて、ついに最後の初音の番です。 初音「な、なんか大変だったねお兄ちゃん。えーと、私も作ったんだけどもらってくれる?」 耕一「え、ホント?うん、もらうもらう。どんなのかなー。」 初音「(ドキドキ)」 耕一「へえ、シンプルなハートチョコか。って、大ギリ?」 初音「え、う、ウソ?私はちゃんと・・・」 耕一「ちゃんと、なんて書いたの?」 初音「いや、えーと、あの・・・・」 耕一「??って、わーーっ!ひとりでにハートがまっぷたつにっ!!」 初音(がーん・・・・・) 初音も落ち込んでしまいました。ようやくこれで私の番が回ってきましたね。 梓、楓、初音、あなたたちの犠牲は無駄にしないわよ・・・ 千鶴「あの、耕一さん、私のチョコももらってもらえます?」 耕一「え、ち、千鶴さんもチョコ作れた・・・・いや作ったの?」 千鶴「む、耕一さんひどいです。まるで私のチョコが毒みたいな言い方ですね?」 耕一「いえ、決してそんなことでは・・・」 千鶴「じゃあ食べてくださいな。大丈夫、毒見はちゃんと済ませてあります。」 耕一「は、はあ。じゃあ頂いて・・・・」 「ちょーーーーっと待ったーーー!!」
千鶴SS「バレンタイン大作戦(8/8)」 「ちょーーーーっと待ったーーー!!」 おや、梓が復活したようです。 梓「千鶴姉、なんかおかしいんじゃない?三人が三人ともチョコをめちゃめちゃにされてるしさ。」 梓「何か千鶴姉仕組んだんじゃないの?」 千鶴「ば、馬鹿ねえ。そんなはずないじゃないの。あなたたちの邪魔をするなんて。」 梓・楓・初音「(じとーーーっ)」 いけません。楓に初音まで私のことを白い目で見ています。どうしましょう。大ピンチです。 耕一「まあまあ。せっかく千鶴さんも作ってくれたことだし、食べてみるよ。んー、ぱくっ」 ほっ。いいところで耕一さんが助け舟を出してくれました。さて、後は味のほうですが。 耕一「・・・・・・・・・・・・・・・・・(ドサッ)」 梓「わーーーーっ!!耕一が倒れたっ!」 千鶴「大丈夫ですか耕一さん!!しっかりしてください!」 梓「千鶴姉!!毒見したんじゃなかったのか!!」 千鶴「失礼ねっ!ちゃんとしたわよ。あんまりおいしかったから全部食べちゃって、作り直したけど。」 梓「・・・・・・・・・・・・」 千鶴「お、同じレシピで作ったんだから、当然同じように・・・」 梓「・・・・・・・・・・・・」 千鶴「・・・・・・・・・・てへっ」 梓「千鶴姉っ!」 楓「姉さんっ!」 初音「お姉ちゃん!」 ううう、せっかくの細工もチョコも台無しです。でも、三人を阻止できたので今日はよしとしましょう。 なんか疑われていたのもうやむやになったし。来年こそ耕一さんのハートを掴めるチョコを作ってみせます。 待っててくださいね、耕一さん。 (Fin.)
千鶴SS「バレンタイン大作戦(9/8)」 後日談。 千鶴「ふう。あれだけいろいろ準備したのにあの結末なんて、やっぱり納得いかないわよねえ。 えーいきませんとも。呑まずにやってられるかってもんです。(グイ)」 ・・・・・・・・・。 千鶴「ぶ、ぶはぁーーーーっ!!かかか辛いぃーーーーーーっ!!」 そう、ここで千鶴がヤケ酒に煽ったのは、梓を妨害する時に自分で細工をした酒であることはいうまでもない。 合掌。 (Fin.)
670 :
琉一 :02/02/23 03:37 ID:sDLtkPuR
今から、SS投下します。セリオ支援と見せかけて、実はHM−13SSです。 あんまり支援じゃありません。萌えもあまりありません。というか、問題作だと思います。 おまけに長いです。ちょっと細かく切ってしまったため、予定では15レス。 では、落とします。
私はHM−13。名前は頂いていません。強いて言うなら、『人形』と呼ばれることが多いです。 私は今、戦場にいます。 いえ、今だけではありません。メモリーに残っている記憶は、全て戦場のものです。 私のマスターは、余計な記憶やプログラムを排除して、代わりに戦闘プログラムをインストールしたと言っていました。 だから私は、戦場に立ちます。 人を殺すために。 この時期、戦争にロボットが投入されることは、珍しいことではなかった。 人的被害の損耗を防ぎ、恐怖に怯えることもなく、命令には絶対服従。 銃器の取り扱いもインストール済みで、下手な新兵よりはよっぽど役に立つ。 しかし、戦場という一瞬の判断が生死を分ける場所では、些細な理由であっさり破壊されることも多い。 こくこくと変わる戦況。天候や足場の変化。爆風等によるセンサー機能の低下。流れ弾。 あまりにも雑多な状況が流れ込んでくるために、処理機能が追いつかない。 結果、フリーズした瞬間を狙い撃ち。そんなことが多々あった。 そうなると、命の値段が水一杯よりも安いような国では、『コストに見合わない』ためにロボット達は姿を消す。 そんな戦場に、HM−13はいた。
「おい、人形。あの陣地にいるヤツ全員、蹴散らしてこい」 「了解しました」 自殺行為に等しい命令に、HM−13は顔色一つ変えずに頷き、銃弾飛び交う砲火の中に身を躍らせる。 強化されたセンサーが捉えた情報をもとに、状況を分析。 こちらの陣地を挟むように掘られた二つの塹壕。左手の方が僅かに近い。銃弾の数と熱源から、それぞれに7〜8名の兵士がいると推測。 予測された火線を避けるようにルート設定。そこを時折フェイントを交えながら駆ける。 合間に、塹壕から頭を出した兵士を正確に射抜く。破裂した赤い液体が、塹壕に降り注ぐ。 狂ったように放たれる反撃の銃弾が肩を掠めるが、彼女は表情一つ変えない。 投げられた手榴弾を、空中で撃ち落とす。 爆発を煙幕代わりにし、最後の10メートルほどを一気に跳躍。塹壕を跳び越えた。 後ろに降り立った無機質な破壊の女神に、兵士達はただ凍り付いた。 跳んでいる間に、彼女のライフルはセミオートになっている。 哀れな兵士達が祈りを上げるヒマもなく、銃声が呻りを上げる。返り血が彼女の美しい顔を、凄惨に彩る。 もう一つの塹壕から、恐怖に駆られた若兵が逃げ出した。その背中にまず一発。 蜘蛛の子を散らすように逃げ出した残りの兵士達に、彼女と彼女の主人達で、十字砲火を浴びせた。 僅か一分で、動く敵兵はいなくなった。 「よくやったぞ、人形」 「ありがとうございます」 彼女は表情を変えず、そう答えた。
彼女のマスターは、傭兵だった。 マスターを含む5名のグループに、HM−13が一体。僅か一小隊規模だが、華々しい戦果をあげ続けている。 彼らが『人形』と蔑むHM−13の活躍によって。 男達は占領した陣地で焚き火を囲み、祝杯を挙げていた。 「まったく人形様々だよなぁ。ほとんどなにもしないで、俺たちゃ英雄だ」 「おいおい、なに言っているんだ。俺はあいつの大切なご主人様だぜ。俺がいなきゃ、あいつはただの鉄くずだ」 「そういうことにしておいてやるよ」 下卑た笑いが響く。男達が勝利の美酒に酔っている間、HM−13は黙々と、野営の準備をしていた。 「おい、人形。こっちに来い」 傭兵の一人が彼女を呼んだ。相当酔っているらしく、足取りがおぼつかない。 「野営の準備中です。申し訳ありませんが、後にしていただけませんか?」 「人形が口答えしてんじゃねえよっ! お前の役目は人間様にご奉仕することだろう?」 前髪を思い切り掴まれたまま、セリオは静かに聞く。 「……マスター、よろしいですか?」 「手早く終わらせろよ」 「了解しました」 どっと笑いが起きる。 酔った男は舌打ちし、乱暴に彼女の手を引くと、半ば崩れた家の中へと彼女を引きずり込んだ。
HM−13は男に奉仕しながら、流れ込んでくる粗野な声を聞いていた。 「お前もいい拾いもんしたよな。あれ、来栖川の最新型だろ」 「まぁな。とあるお屋敷を襲ったときの戦利品さ。 違法改造してあるから、サテライトサービスは使えねぇが、お前よりは役に立つ」 とある屋敷。そこに自分はいたのか。 初めて聞く自分のルーツだったが、規制されたAIは、なんの感慨も抱かない。 「おまけに夜の方もばっちりときたもんだ」 「俺はどうもな……あの無表情が気にくわねぇ。奉仕させる分にはいいんだけどよ」 別の声も話に加わった。 「しょうがねぇだろ。生の女なんかいないんだから。それとも男の味の方がいいのか?」 「いーや。男よりは、人形でも女の方がいいね」 自分は人形。男達に奉仕し、死地に飛び込み、銃弾を振りまく人形。 ただマスターの命令に頷くだけ。 それが機械としての自分の存在意義であるのなら、なにも悩む必要はない。 ただ、なにかが自分には足りない。そんな空虚が胸にあった。 数日後、彼らはゲリラの巣窟と化した村を、襲撃する仕事を受けた。 だが事前に情報は漏れていたらしく、村は厳戒態勢だった。 明滅する古いサーチライトが暗い地面を照らし、その下にはびっしりと地雷が埋まっている。 「おい、どうする?」 「……道を開けるしかないだろ。おい、人形」 「はい」 「お前のセンサーで、地雷の位置は分かるか?」 「30メートル内ならば、可能です」 「よし、俺たちが援護する。俺たちが安全に通れるだけの道を造れ」 「了解しました」
HM−13は無造作に歩み始める。サーチライトが彼女を闇に浮かび上がらせた。 村は静まりかえっている。が、張りつめた緊張感が、彼女を凝視していた。 銃を一丁構えただけの彼女が、なにをするのかと。 彼女は地雷原の手前でぴたりと止まり、銃を上げた。 ダン! ドオンッ! 銃声と爆音が同時に響く。 彼女は地雷に向け、正確に銃弾を叩き込む。 銃声と爆音の合奏は、切れ目なく続く。 爆風の収まらぬ中、ゆっくりと歩を進め、精密機械の動きで地雷を破壊してゆく。 幅はきっちりと5メートル。その道を、無人の荒野を行くがごとく、彼女は歩を進める。 爆風に顔をしかめることも、目をつぶることもなく。 それはどこか異常な光景だった。 誰もが凍り付いたように動かない。 長い時間が経ち、爆音が止み、粉塵が風に流される。 月の光の中に、HM−13が浮かび上がる。 「終わりました、マスター」 その声が、引き金となった。 怒号が静寂を切り裂いた。 彼女を挟んで激しく銃弾が飛び交う。 傭兵達はジープに乗って、彼女の造った道を突き進みながら、グレネードやライフルを撃ち込む。 村側からも、旧式銃や、手榴弾などが飛ぶ。 飛び交う火線の中で、HM−13は突っ立っていた。 いくつか銃弾が彼女を掠めたが、気にしない風だった。 「なにやってる人形! この村の連中、皆殺しにしろっ!」 「了解しました」 彼女は身を翻し、村へと飛び込んだ。
三十分ほどが経過した。 HM−13は返り血と炎と、月の光を浴びて立っている。 村人の幾人かは取り逃がしたが、大半は死亡して、後は残党を狩るだけだ。 「……」 鋭敏な彼女の耳に、微かな息づかいが聞こえた。 まだ火の手の上がっていない、小さな小屋。その中に誰かが残っている。 彼女は壁に身を寄せ、扉を開く。 銃声が3発、狂ったように響いて、誰もいない空間を突き抜けていった。 それが止むのを待って、彼女は中に転がりながら飛び込み、跳ね起きて、銃を構える。 「わ、わあっ!」 彼女の動きが急に止まった。 弾の切れた銃の引き金を、カチカチと何度も引いているのは、年端もいかない子供だった。 えらく薄汚れ、男か女かの区別も付かない。怯えた目に涙をいっぱいためて、体を震わせている。 「……こ、来ないでっ! 来ないでよぉっ!」 「――」 なぜか彼女は撃てなかった。 ずっと前に、どこかで会ったような気がする。 今まで殺してきたたくさんの人々。その中にこの顔があったのだろうか。 検索しても、データにはヒットしない。違う、違う、違う――。 そうじゃない。もっと深いところ、もっと遠いところから、この記憶は来ている。 だけどなぜか引き出せない。 『皆殺しにしろ』 強制的にシステムに介入する、マスターの命令。 しかし、それよりももっと強い衝動が、銃を床に置かせる。 「大丈夫です」 戦場には似つかわしくない、優しい声が出た。 子供はむずかるように首を振る。
「私は……敵ではありません」 あれだけたくさん殺しておいて、これだけの血を浴びておいて、自分はなにを言っているのだろう。 わけがわからなかった。自分が壊れてしまったのかと思った。 だけどこの子を助けたいと思う心は真実だった。 あまりに唐突で、理不尽な衝動だった。 沈黙の後、か細く震える返事が、ようやく返る。 「本当……?」 「…………………はい」 長い逡巡の後、彼女はようやく答えた。 おずおずと子供が手を伸ばす。その手が、彼女の手と触れあおうとしたとき。 「なにをしている?」 扉からさし込む月の光が、遮られた。HM−13は、ゆっくりと振り向く。 彼女の主人が、銃を構えて立っていた。 「俺はお前に、なんて言った?」 「――村人を……皆殺しにしろと、おっしゃいました」 びく、と子供が震えた。 「なら、なんでそのガキは生きているんだ?」 「……分かりません。殺せないのです。殺したくないのです。どうしてでしょうか?」 「……俺が知るか」 男は銃を子供に向けた。 「待って下さい」 HM−13がその前に立ちはだかる。 「どけ」 「だめです。お願いです。殺さないでください……」 機械が発したとは思えない、必死な願い。銃を握る男の手を掴んで、子供から逸らす。 男はつまらなそうにため息を吐いた。 「……いかれやがったか」 左手で銃を抜き、HM−13の顔に押し当て、引き金を引いた。
くぐもった破砕音が響いた。 金属の体が、弾かれたように飛び、倒れる。 右目の部分にぽっかりと穴が穿たれ、銀のフレームに火花が散っていた。 「お、お姉ちゃん……」 オイルが涙のように流れた。 「ちっ……。ガキ、てめぇのせいだぞ」 再度、狙いを付ける。だが。 ギ……。 HM−13は体を軋ませながら体を起こし、子供をかばって両手を広げた。 左腕は、途中までしか上がらなかった。 「そんな小汚いガキを守ってどうするつもりだ、ええ?」 「……分かりません」 「おい、どうした?」 騒ぎを聞きつけて、他の傭兵達も集まってきた。 「いかれやがった。まとめて始末する」 「いいのかよ。ばらして売るだけでも結構な……」 「どうせ拾いもんだ。十分役には立ったさ」 不意に男が顔を歪め、嘲るように笑った。 「……ああ、どこかで見たと思ったら、あの時と同じか。今度はちゃんと、前のご主人様のところへ送ってやるよ」 前のご主人様。 その単語が、昨日とは違う強さで胸を打った。 それの意味を確認している間に、雨のような激しさで、銃弾が襲いかかった。 HM−13の体が本人の意思とは無関係に踊る。 体に穴があき、左腕が脱落し、人工皮膚が千切れ飛ぶ。 ふらつき、反転して膝を突いた先に、怯える子供の眼差しがあった。 「大丈夫……」 半分砕けた顔に笑顔を浮かべ、子供を胸に掻き抱いた。 小さな爆発が、右の脇腹を深く抉った。
完全に動きが止まったのを見て、ようやく男達は銃を下ろす。 「……ちっ」 「どうした、ご主人様? やっぱり人形でも名残惜しいか?」 「馬鹿言うな。ただこれからは面倒になるって思っただけだ」 「ああ、人形は人形なりに役に立ったからな。まぁこいつのおかげでたんまり稼げたわけだし。新しい人形でも買えばいいじゃねぇか」 「てめぇらも金出せよ」 ギ……。 男達が一斉に銃を構える。 内部機器が露出し、銃創が醜く穿たれたHM−13の下に、怯えた瞳があった。 「驚いたな。このガキ、生きてやがる」 「あれだけぶち込んだのに、大した悪運だな。……一分早いか遅いかの違いだけどな」 「ヒッ……」 ゴリ、と銃口が子供の眉間に押しつけられた。 「あばよ」 引き金を引く指に力が掛かったその時、止まっていたはずのHM−13が、男の手を掴んだ。 オイルと弾痕で黒くすすけた顔の中で、半ば閉ざされた瞳が、強い意志の光を放っていた。 「な……は、離せっ! 人形っ!」 「違います……」 HM−13は、うつむいたまま呟いた。記憶の中の声が、彼女の名を叫んでいた。 「私の名は……<<セリオ>>です」 ごき、と鈍い音がした。 「う、うがああああっ!」 叫ぶ男の喉に、手刀を叩き込む。金属が露出した指は、容易く男の喉を突き破った。 「うわああっ!」 怯えた男達の銃火が、再度HM−13を襲う。 だが、無数の銃弾も、男達の悲鳴も、彼女を止めることはできない。 彼女は男達の目を潰し、骨を砕き、喉を切り裂く。跳ね返った血が、子供の頬にへばりついた。 最後に立っていた男の喉から、ずるりと手首を引き抜く。 男と同時に、HM−13も倒れた。 乾いた大地に血まみれのパーツが散らばった。
……子供が泣いている。 ひび割れた視界いっぱいに映る、子供の泣き顔。 どこかで見た光景。いつか体験した出来事。 ずっと、ずっと昔に……。 そう、あれは……。 私が初めてメイドロボとして働いた家だ。 年老いた旦那様と、奥様と、その孫娘。 初めて目覚めた私に、旦那様は「この子の母親になってあげて欲しい」といった。 旦那様の足の影に隠れていた、幼い女の子に手を差し出す。 おずおずと伸ばされた手が、そっと私の指に触れた。 こうして私は母親になった。 いつも、転んだり、ドジをしたりしては泣いている子だった。 だけど涙を拭き、頭を撫でると、すぐに笑顔になった。 なにかしでかしては、素直に謝り、また忘れたように同じようなことを繰り返す。 なぜか、とても懐かしい気がした。 きっと、私の心の中にある源記憶とでも言うべきもの。その中に、彼女の姿があったのだと思う。 多分、私以外のHM−13でも同じように感じたはずだ。 この記憶はきっと、私たち全ての姉、HMX−13のものだと思うから――。 家事に加え、その子の面倒も見なくてはならないため、めまぐるしい忙しさだった。 だけどとても楽しかった。 その子の笑顔が、私にも幸せを分けてくれた。 私はその子の母であり、姉であり、友達であり、なによりも家族だった。 ほぼ三年、そんな日々が続いた。
それが終わったのは、ひどく雨の強い日。昼間だというのに外は真っ暗で、風と雨が、激しく窓を叩いていた。 私は居間で童話を読んで聞かせていた。私がページを捲る度に、その瞳は期待に輝き、恐怖に震え、感動に潤む。 旦那様と奥様も、その光景を楽しそうに見ていた。 不意に電気が消えた。 銃声。窓ガラスが割れ、風雨が吹き込んでくる。同時に黒ずくめの男達が入り込んできた。 銃を向けた男達の前で、わたしは旦那様達をかばうように両手を広げた。 轟音と衝撃が私の腹部を襲い、抜けていった。 悲鳴が上がった。 仰向けに倒れた私の視界に、涙でくしゃくしゃになった顔が映る。 機能の低下したセンサーに、ノイズ混じりの声が届く。 「やだ……死んじゃやだ……、死んじゃやだよ……」 泣いている……。泣かないでください。あなたの涙を見ると、私も悲しくなります。泣かないでください……。 私はいつものように手を伸ばし、髪を撫でた。 「セリオ……っ!」 同時に赤いものが世界を染め、全ての音が消えた。 それが私の見た、最後の光景だった。そのはずだった。
「おねえ……ちゃん?」 ああ……私はまた、この子を泣かせてしまった。ごめんなさい。私はあなたを泣かせてはいけないのに。 家族だから。母親だから。そう、命令されたから。 そうじゃない。私は……あなたが好きだから。 だから、泣かないでください。 私はいつものように、そっと手を伸ばす。優しく髪に触れ、頭を撫でる。 私にとって、上書きされた命令よりも、この子の笑顔の方がずっと大事だった。 「痛いの? 大丈夫? ねぇ、平気なの?」 痛みは感じない。だけど、満足に動く部分はほとんどなかった。 それでも私は身を起こし、「大丈夫です」と告げた。 「お姉ちゃん、ロボット……?」 「はい……。HM−13と言います」 「えいちえむ……?」 「……セリオとお呼びください」 「セリオ?」 「はい」 「……セリオ。うん。私はね、メルティ。でもみんな、メルって呼ぶの」 私は、そう……驚くべきことに、と言うのも矛盾しているが、生まれて初めて驚いた。 それは偶然だろう。偶然だけど……名前こそ違ったが、その愛称はあの子と同じだったのだ。 数年ぶりに、私はその名を呼んだ。 「……メル」 「うん」 メルは笑った。そして、瞳を不安に曇らせる。 「あの……お父さんとお母さんは?」 「……」
――どうすればいいのだろう? どう伝えればいい? 私が殺しましたと言えばいいのだろうか? 血に濡れている私の手。放ってきた何発もの凶弾。無数の奪った命。 その全てが私の罪だった。償う方法なんて分からない。あるはずがない。 この子が真実を知れば、私を憎むだろう。私を壊すかもしれない。いや……むしろそうして当然だった。 「どうしたの、セリオ……?」 マスターを失った私には、他人の命令を尊重する義務がある。 そして私の自律回路は……『伝えなくてはいけない』と判断していた。 「メル、私は……」 その時音が聞こえた。 はるか遠くから近づいてくる駆動音。方角も照らし合わせて判断すると、90.62%の確率で本隊の到着だ。 ……逃げなくては。 違う。守らなくてはいけない。 彼らはゲリラの子供を生かしておかないだろうし、私をそのままにしておくこともない。 「メル……すみません。少しだけ、目をつぶっていてくれませんか?」 「セリオ?」 「お願いします……」 「……うん」 私は目を閉じたメルを抱え上げ、村の南門……襲撃した側とは、反対方向の出口に向かう。 子供の体重さえ、今の私の体には大きな負担だった。砕けそうになる足を引きずって歩く。 「ねぇ……どこ行くの、セリオ……」 「……もう少しです」 門のところでメルを下ろし、真っ直ぐ前を向かせる。 「セリオ……?」 「振り向かないでください」 朝の光が昇りはじめ、うっすらと道を照らしている。 もしも……もしも生き延びた村人がいたとしたら、この道を通ったはずだ。
「……いいですか、この道に沿って歩いてください。 そうすれば、2時間くらいで隣の村に着きます。行ったことはありませんか?」 「うん、あるけど……」 「では、そうしてください」 「で、でも、セリオは!? お父さんとお母さんは!?」 返答につまる。けど……私にはこう言うしかなかった。 「お父さんとお母さんは、理由があって、先にそちらへ行っています。私は用事を済ませてから、すぐに追いかけますから」 「でも……」 「大丈夫です。私はそのことを伝えるために、ここに残ったのですから」 優しくメルの頭を撫でる。ふわりとした柔らかい感触。すごく懐かしく……そして、最後の。 「だから、行って下さい。大丈夫です。メルなら、一人でいけますよね?」 「うん……分かった。待ってるから、待ってるからね!」 「はい……」 私は微笑みながら手を振り、メルを見送る。 メルは途中で何度も振り返りながら、夜道を歩いていった。 そして、メルの姿が完全に夜の闇に消えた頃……。 音が、近づいてきていた。
私は最低だ。 ご主人様を守りきれず、嘘までつく、最低のメイドロボだ。 命令だからという理由で、なにも考えずに人の命を奪い、あげくに仮にもマスターと呼んだものを手に掛けた。 こんなメイドロボ、壊れて朽ち果ててしまえばいい。 ――だけど、あの子だけは。せめてあの子だけは、生き延びさせたい。 私の罪は許されないけれど、あの子を守るために、残りの命を懸けるくらいのことはしてもいいはずだ。 もう誰も殺さずに、そして嘘もつかずに。 方法なんて分からないけれど……あの子が逃げる時間だけは、稼いでみせる。 それがきっと、私の命がここまで残された、たった一つの理由だから。 もう二度とやり直せない、あの暖かい時間を最後の記憶に。 私は、メルとは逆の方角に向け、歩いていった。 「セリオ……?」 遠くでメルが振り返った。 わけもなく立ちつくし、村の方角を見る。 だけど再び前を向き、朝の日差しが照らしはじめた、白い道を駆けていった。
686 :
琉一 :02/02/23 03:45 ID:sDLtkPuR
※本スレブロック準決勝「香里VSセリオ戦」で投入したSSに、結末を付けてまとめて掲載したものです。 ◇セリオ復活 1◇ 綾香「セリオ、量産型発売おめでとう」 一同「おめでとう〜!」 セリオ「――ありがとうございます」 先日、遂に来栖川の誇るHMシリーズの最高峰、『HM−13セリオ』が発売された。 今日はそのお祝いを、ということでマルチが試作機HMX−13セリオを連れてきてきてくれた。 セリオ「――何だか、この体を動かすのは久しぶりのような気がします」 浩之「そうなのか?」 マルチ「セリオさんは、プログラムの最終チェックのためにずっとスーパーコンピューター上で動作シミュレートされてたんですよ」 浩之「ほう。…そしたら、シャバの空気は懐かしいんじゃないか?」 あかり「浩之ちゃん、シャバって…」 セリオ「――多少二酸化炭素が増加したようですが、しかし、はい」 綾香「セリオ。懐かしい空気、ってそういう意味じゃないのよ…」 セリオ「――ちなみに、私がシミュレート調整に入っていた期間はおよそ三年。その間に増加した二酸化炭素の量から、温暖化による人類滅亡までの日数を算出しますと…」 一同「しなくていい!!」
◇セリオ復活 2◇ 浩之「…はぁ、ところで綾香、パーティーって言うくらいなんだから、飲み物くらい出してくれよ…。喉が渇いた」 綾香「そうね。今持って来させるわ」 パンパン!と手を打ち人を呼ぶ。お約束だ。 浩之「…っておい!」 …大量のHM−13が大広間に乱入。どうやらこのパーティーの給仕をさせるつもりらしい…。 しかも、なぜか全員寺女の制服だった。 志保「ちょっとちょっと! これじゃあ主賓のセリオがどこに紛れ込んだか分かんないじゃないの!?」 雅史「乾杯の音頭が取れないね…」 浩之「…なあ、綾香」 綾香「ん? なあに?」 浩之「せめて、量産型のほうはメイド服にするとか、服装を変えてくれよ…」 綾香「……。ふーん…」 浩之「な、何だよ…。その沈黙といやらしい目付きは…?」 綾香「あら、いやらしいこと考えてるのは浩之のほうでしょ? 今度私も着てみようかなぁ〜、メ・イ・ド服! アハハッ」 浩之「どっ、どうしてそういう方向に話が逸れるんだっ!!」 芹香「……」 浩之「え? 浩之さんが喜んでくれるのなら私も着てみたいです、って? だからそれは勘違い――」 マルチ「わたしもがんばりますっ!」 あかり「私も負けないよ〜」
◇セリオ復活 3◇ 浩之「はぁ…何考えてるんだよ、お前ら…」 大コスプレ大会の開幕、種目は『メイドさん』だった。 あかり「ええっ! だって浩之ちゃんに喜んで欲しかったし…」 芹香「……」 浩之「え? 恥ずかしいけど浩之さんのために頑張りました、って? ううっ、それはそれで嬉しいんだけどよォ…。 おっ、さすがにマルチはその格好、似合ってるな」 マルチ「ぽっ…あ、ありがとうございます〜」 浩之「…で、なんでお前らまでそんな格好してるんだよ…」 志保「どう? ファッションリーダーの志保ちゃんは、こんな使用人向けの服装でもバッチシ着こなしちゃうのよ〜」 雅史「え? あれ?? なんで僕まで着てるんだろ…?」 浩之「それはこっちの台詞だ…」 ちなみに、本来『メイド役』として登場したHM−13群は寺女の制服のまま…。 主客転倒、とはまさにこの光景か。 綾香「どう? 私も捨てたもんじゃないでしょう?」 浩之「おう、かなり…って違うっ! オレは、『どうして量産型にセリオと区別できる服装をさせなかったんだ』って言いたかっただけだ!!」 綾香「えーっ! なんでちゃんと言わないのよっ!? 私たち、着替え損じゃないのよ!!」 浩之「オレの話をろくに聞こうとしなかったのは誰だっ!?」 トントン…。 誰かに肩を叩かれ、振り向いた。 ???「――……」 ちょっぴり頬を赤く染めた、メイド服姿のHM−13が立っていた。
◇セリオ復活 4◇ 浩之「セ、セリオ…か?」 セリオ「――はい」 照れたように俯き加減に頷く。その表情は、破壊的に可愛く思える…。 浩之「も、もしかして…さっきの綾香とのやりとりを聞いて…」 セリオ「――はい」 浩之「オレのために着替えてきてくれた…のか?」 セリオ「――はい」 …なんだ、この、体の奥底から湧き上がる感情は…? ぐおーっ、公衆の面前だってのに、思わずセリオを抱き締めたくなっちまったぞ…。 だ、ダメだ…手が勝手に…セリオの背中に回ろうとして…。 ???「セリオーッ! 復活おめでとーっ!!」 セリオ「――田沢さん」 突然の来客と、それに対するセリオの反応に、すっと手を引っ込める。 危ない、危ない…。セリオに手を出したら、綾香が黙っちゃいないだろうしな…。 圭子「ごめんね、遅くなっちゃったけど、はい! セリオが復活するって聞いて、慌ててプレゼント買ってきたんだよ!!」 セリオ「――ありがとうございます。…開けてもよろしいですか?」 圭子「うん、もちろん! …ところでさ、あの…今日のパーティーには佐藤さんも来てる、って聞いたんだけど…ハァ、ちょっとドキドキ…」 セリオ「――はい、いらっしゃってます。佐藤さんなら、向こうに…」 セリオが指差した先。 雅史「僕、いつまでこの格好でいればいいのかな…?」 エプロンをひらひら。 圭子「!? …えぐっ、佐藤さんのバカーーーーーーッ!!」 セリオ「――あっ、田沢さん…」 …そして彼女は涙と共に走り去った。
◇セリオ復活 5◇ 浩之「……」 その場に残されたのは、嵐のように過ぎ去った少女を見送る俺。 そして、セリオ。 一人と一機…いや、『二人』は見つめ合う。 (いいムードだ…) もう周囲の視線(口うるさい上に手の早い綾香も混じっているが)なんてどうでも良かった。 オレは、オレに正直に生きる! オレは、セリオを抱き締めるんだ…! ひしっ。 セリオ「――浩之さん…」 セリオも、オレの背に手を回す。 セリオ「――戻って来れて、嬉しかったです…。一番会いたかったのは浩之さんでし――」 グキッ。 浩之「ぐはっ」 セリオ「――浩之さん…?」 ……。 気が付くとオレは病院のベッドに横たわっていた。 ちなみに、体は全く動かせなかった。 セリオ「――申し訳ございません。私、この体を動かすのは久しぶりだったので…」 声も全く出せなかった…。 セリオ「――上腕筋力の出力レベルが狂っていたことに気付きませんでした」 ……。 セリオ「――本来出すべき力の100倍の力をもって私は…」 藤田浩之、全治三ヶ月。回復の見込みがあるだけマシだと思え、とは医者からのありがたい言葉だった…。 (完・以上5レス分です。失礼しました)
>>671-685 ギャアアアァァァッ!!良過ぎるもの読ませないで下さい!以前、セリオスレでも軍事用に転用
云々という話が出ていましたが、大多数がキナ臭くて嫌という意見でした。それを
逆手に取って来るとは…自分もちょっとその辺りの話は似たような考えがありました。
コスト的に高価なので、情報将校扱いでECM戦を担当、夜は歌唱プログラムを
ダウンロードして、異国(というかクンコカ)で日本の歌を歌って疲れた兵士達の
心を癒すといった感じです。歌う歌は、民名の「時は流れる 愛は流れる」のアレで(w
しかし、こっちのSSに完全にやられてしまいました。こういうのは滅茶好きです。
次の対戦でもお目にかかれればいいなぁ…
何故か、エリア88のグレッグの最後のシーンを連想してしまったのは何故ですか?
694 :
琉一 :02/02/25 06:26 ID:0VtyOzxp
>>690 の、メイド服な雅史に萌えてみる。できればもうちょっと楽しそうに着て欲しかった。
ああ。東鳩のファーストプレイ、まぶしい笑顔のお前と共にエンディングを迎えたさ……。
ほんとはわざわざ着替えてきてくれるセリオに萌え。
>>693 それが正解だからです(w。でも撃たれませんでした。警戒心抜群です。さすが精密兵器。
一番最初に浮かんで一番書きたかった場面は、地雷の埋まっている道を、銃で掃討しながら歩いてくるセリオ。
そして地雷の処理が終わり、白煙が吹き飛ぶ中、月明かりに照らされるセリオでした。
歌うセリオは見てみたいですね。下手なマルチの歌の方が、なぜか人の心を打つことに悩んだりとか。
次のセリオSS。ネタが浮かんだので、またここに投下すると思います。歌は歌わない……かな? では失礼。
694はアパム
即興で申し訳ないのですが佐祐理さんSSを投稿させて貰います。 10レスくらいです。内容は『ほのぼの』系を目指しました。
「あれ? どうしたの舞?」 問い掛けた言葉に舞はどうしてか反応してくれなかった。 もう一度、訊くことにする。 「どうかしたの? 佐祐理で良かったら話してくれない?」 黙り込んでいるのは何故なのだろう。 いつもと同じはずなのに。今日の舞はどこか様子が可笑しかった。 今も瞳を揺らして私を見ているだけだった。 「……どうしたの、本当に?」 三度目は不味いと自分でも思ったけど、何か悩み事があるなら相談してほしい。 この、佐祐理にしてほしい。 「佐祐理は……」 薄っすらと雲が霞んでいく。 風が出てきた。 舞の長い髪は茜色に映えながら梳かれていく。 また、沈黙。 舞は俯いてしまった。 「……ううん、何でもない」 私は言う。 「何でもあるよ、舞。佐祐理じゃあ頼りにならない?」 「そうじゃない……けど、やっぱりいい……」 とても寂しい言葉だった。 私を頼ってくれないからなのか人を頼りにしないで思いつめてしまうタイプからなのか。 今の佐祐理≠ナは分からない。 もう私に言えることはなかったのは確かだったけど……。 「佐祐理で良かったらいつでも相談に乗るから」 「……うん、ありがとう、佐祐理」 空の音が聞こえる。 不思議と懐かしい子守唄のように……。 でも、どんな音を奏でていたのか佐祐理≠ノは分からない。 ……舞は眼を閉じて耳を澄ましていた。
「つまりは――」 帰宅して制服のままベッドに倒れ込んでしまう。 行儀は宜しくない。 でも、今はそんなこと気にならなかった。 胸の中に不安があるから。 私にとって舞という存在はどういうものなのだろうか? 友人というフレーズで収めたくない。 親友ではなく心友でいたい。 二人の仲は死で別つとも離れることないという誓いを立てたのだから……。 でも……一方的だったのだろうか? それとも、私の思い込み? 「ああ、そうか……」 側に居たいだけなのに、どうして欲を張ってしまうのだろう? そう、同じ時間を過ごせた思い出が在ればいい……。 求めることは已めよう。 舞にとって私の存在が希薄だったとしても構わない。 私が舞の側に居たいだけなのだから。 相談相手なんて身勝手な思い込みに過ぎないのだ。 幸せにしてあげたい この言葉がどんなに無責任であるかを思い知ってしまう。 舞は私が居なくても良いのだと思う。 でも、佐祐理には舞という存在が必要だったから。 せめて邪魔にはならないように……。 舞と一緒に居たかった。
時間は留まることない。 舞と出会ってから私は少しずつ変わっていけた。 空虚だった心が満たされていく。 優しい時間が流れていく。 そう、永遠なんてないと知っていたのに強く望んでしまう。 私は頭の悪い女の子だった。 「ねえ、舞……」 「……なに、佐祐理?」 いつもと変わらない舞を見ていると、本当に私も優しくなれる。 どんな時にでも笑っていられる気がする。 「佐祐理には、弟がいたんだよ」 「……え?」 だから私はいつもと同じように笑って話すことができた。 自分でも驚くくらいだった。 もっと佐祐理のことを知ってほしい。 佐祐理の心に触れてほしい。 「あははーっ」 ほら、こんなにも私は笑っていられるよ。 辛いことを話す時……。 記憶は思い出になってくれたと思うから……。 誰でもない舞に話せること……。 (ああ、なんてことだろう……) 私は舞に幸せにして貰っていたのだ。 ひとりの友人との触れ合いのおかげで私の中には一本の線が出来ている。 しっかりと佐祐理を支えてくれるもの。 辛い≠ェ幸せ≠ノなれるように。 例え、舞には私に話せないことがあるのだとしても、私はたくさん話したいことがある。 迷惑だ、と言われる日まで……。 やっぱり一緒に居たいから。
現在≠ェ思い出を形作っていく。 確かな温もりを彩り豊かなものにしてくれる。 舞と過ごした日々は宝石のように光り輝いて佐祐理には眩しいくらいに。 「昨日のテレビはどんなの見た?」 「……置いてあるのは見た」 「舞ってどんなCDを聞いてるの?」 「……CD? CDって何?」 何気ない朝さえも舞と居れば可笑しくてしょうがない。 私は思わず笑ってしまう。 ずっと、ずっと、いつまでも笑顔で居られるのだ。 「でも……佐祐理が面白いというテレビなら見てみたいし、CDだって一緒にやってみたい」 そして、私はふと立ち止まってしまう。 不意に鼓動が逸るのだ。 「うん、佐祐理も舞と一緒にCDをしてみたいよ」 ――笑う。 こんなにも可笑しい。 瞳に涙が溢れるほどに胸の奥に来るものがあった。 「あははーっ」 舞はどんなCDを想像しているんだろう? 明日、お気に入りのCDを舞に貸してあげようか。 舞も気に入ってくれるかな? (だと、いいな……) 同じものを『好きだ』と言える仲なんて素晴らしいことだと思う。 私にとってもより掛け替えのないものになるだろうから。 「あのね、舞……じゃあ、明日は――」 また、一日が過ぎていく。
春の日は風。 雪解けの街を二人で歩く。 「また、同じクラスになれたらいいね」 「……うん」 風は薄紅色の花びらを運んでいる。 夏の日は太陽。 夏服に衣替えして思いの限り駆けていく。 「こう見えても佐祐理は運動神経いいんだよ」 「……まだ、甘い」 「わ、舞、早すぎるよー」 陽の光が二人を照らしてくれる。 秋の日は落ち葉。 ものみの丘の紅葉は見るものすべてに淡い感動を与えてくれる。 「あ、狐さんがいるよ」 「……かわいい」 「あははーっ、ほら見て、ここに鈴が付いてるよ」 舞の鼻先に散り行く落ち葉……。 冬の日は雪。 凍れる季節の到来を予感させる風。そして雲。 「うわ、あの人の頭すごいねー」 「……あれは、2時間は待たされてる雪の量だと思う」 「早く待ち人が来るといいね、舞」 「…………」 「……どうしたの、舞?」 「何でもない……」 雪は今も降り積もっている……。
何気ない時を過ごすことがこんなにも心地いいなんて知らなかった。 少しは近づけただろうか? 今の佐祐理は、舞にとって知人くらいにはなれただろうか? いつか思い出を振り返った時に、私のことを思い出してくれるだろうか? ――刻み込まれているだろうか? 私はとても舞のことを大切に思っている。 初めに芽生えた感情は、今はどこにもなかった。 幸せにしたい≠ナはなく幸せになろうね≠ニ想いは心ではなく語り掛けになっている。 一弥が巡り合わせてくれたなんていう想いだって微塵もない。 私にとって舞はずっと舞だったから。 佐祐理≠ヘどんな風に思っているのだろう? 今でも一弥≠フことを引き摺って笑えないのだろうか? 私は空の上から佐祐理を見下ろした。 ――笑っていた。 いつしか思い描いていた光景がそこ≠ノある。 『まだ知らない悲しみがある』と言って泣くことはもうしない。 この先にしかないものが見えたから。 もうすぐ自分のために笑える日が来ると信じられたから。 輝く季節だ。 色褪せることのない光の中を舞う。 いつか言えるかな? もしも、この道の先で、男の人に敬語を使わないわたし≠ェ居るのなら……。 きっと、舞にとっての大切な人で……。 そして、言葉を……。 心をこめて大切な舞のために贈りたい―― 「幸せになってね」と。 その時になってようやっと私は知るのだろう。 失恋したことに。 それが、新しいスタートだということに……。
「舞、ごめんーっ」 昼休みの時だった。 「って、あれ?」 私は職員室に呼び出されていたので舞を待たせてしまっていた。 でも、そこには見知らない人。 目を丸くしてしまう。 「えっと……お友達ですか、舞の?」 恐る恐る訊いてしまう。 ちょっとした予感。 「彼氏だ。全校公認のな」 「ふぇー……」 ――的中だった。 少しだか寂しいけど大丈夫だと思うから。 祝福したい。 「ほら、否定しないから信じているじゃないか」 ちょっとした冗談? ううん、私には分かった。 ――うん、この人だ。 「じゃあ、一緒にご飯でも食べましょうか」 「はあ?」 どうしてそうなるんだという目で私は見られる。 でも、きっとそうだという瞳で見てしまう。 「舞とお話してたんですよね?」 だから大丈夫。 私はこの人を好きになれる。 佐祐理もそう。 「俺は相沢祐一って言うんだ」 相沢祐一さん。 ……祐一、祐一さん。 ――うん、いいかも……。
そして、春……。 いつだって木漏れ日の中を花びらが舞っている。 息を切らせて祐一さんが駆けて来る。 そして、他愛もない冗談。 「はは、本日の主役を待たせるわけには行かないだろう?」 「佐祐理が主役ですか?」 少しだけ期待を込めて私は問い掛ける。 「さあ、行こうか。お姫様」 「はい」 祐一さんの手を取ろうとした時、 ――ぽかっ。 「あははーっ、残念です。本当のお姫様の登場ですね。これで私は脇役です」 桜が舞う。 風も舞う。 花びらが舞い散る。 「私だけ置いていこうとした」 「お、妬いてるのかお前」 そうではなくて、本当は佐祐理の方が妬いていたのだけど……。 二人を見ているとどうでも良くなってしまうから。 「祐一さんが舞を置いていくわけないよ」 優しい時間だった。 途切れることない瞬間の連続だった。 「佐祐理だって舞の祐一さんは取らないし……いたっ」 舞のちょっぷが飛んでくる。 「お前なー、そんな反応したら脈ありありなのがバレバレだぞ?」 そして次は祐一さん。左に右にで舞は大忙しだ。 「さて……行くか」 いい加減、頃合だろうと祐一さんが背を向ける。 その隙を見て、私は言う。 抱き付くように、後ろから舞の耳元に囁く。
――今なら分かる。 舞という優しい女性のことが。 遠い過去、 「変わってますね、川澄さんは」 「……?」 二人が他人同士だった日。 私は自分がこの世で必要のない人間だと感じていた。 この人≠フためになれるなら。 空白だった想い。 でも、今はこんなにも自分でいられたから。 不器用で良かったのだ。 厳しくすることの優しくすることの必然性なんて実はない。 こんなにも当たり前のこと―― 川澄舞、相沢祐一、この二人に恥じないように生きてみたい。 そして、一弥にも……。 だから、私は言うのだ。 「幸せになってね、舞」 そこに、またちょっぷ。 「佐祐理も一緒……」 ちょっと怒ったように口を尖らせながら舞に言われる。 私には立つ瀬がなくて笑うしかなかった。 こんなにも幸せでいいのだろうか? ふと、私は佐祐理に問い掛ける。 「あははーっ」 どうやら、いいらしい。
もしも、この道の先で……夢は終わりだと現実に向かって歩き出すことが出来る少女がいるのなら。 過去の傷を乗り越えたものの強さだと思う。 自分がどうしたいのか。どうしたら大切な人に誇れる生き方が出来るのか。 そうやって初めて今≠ノ目を向けることが出来るのなら。 私はいつしか言えるかもしれない。 「祐一くん」 振り返れば思い出だ。 辛いこと、悲しいこと、嬉しいこと、楽しいこと、どんなことも越えて行ける。 舞の悩み事だって今なら言われなくても分かる。 舞の表情を読み取れるようになったのは、私にとって誇らしいことだ。 夜の校舎。舞踏会。何も出来なかった自分。 私には出来なくて祐一さんなら出来たこと―― そして、私はその反対を出来るように、これからも努力していきたい。 祐一さんのことが好きで……。 舞のことが大好きで……。 いつか自分も二人のことを思っているくらい佐祐理のことを好きになってあげたい。 もう失うことの怖さに何かを諦めたりはしないから。 「祐一さん、舞――」 二人とも私を見てくれる。 「行きましょう!」 二人はたおやかに微笑んでくれている。 だから―― 行こう。この旅路に終わりはないのだから―― 『さらなる路』 『さらなる轍』 『数多の悔恨を踏みしめて』 <FIN>
以上です。お目汚ししました。 でも、今回はちょっとだけ自己主張させてください。 >輝く季節へ たくさんのレスありがとうございました。 未熟なれど少しでも物語として人の心の琴線に触れられるのなら誇らしいことだと思えます。 ――敬具。
708 :
あー :02/02/25 20:42 ID:eYw4sfaL
>>707 素晴らしいSSです。即興とは思えん。
俺も佐祐理さんSS載せようと思ったけど、あまりのクオリティの違いに鬱。
しょうがないのでエロに走ります(ぉ
「佐祐理さん。俺、君のことが好きなんだ」 「……はい。佐祐理も祐一さんのことが大好きですよ☆」 彼女は頬を真っ赤に染めて微笑んだ。それは天使の笑みに相応しい。 「ありがとう」 その愛らしい唇に口付ける。 「……ん」 佐祐理さんは一瞬目を見開き、ゆっくりと俺を受け入れた。 「……ぷはぁ……は、恥ずかしいですね……」 とろんとした表情で俺を見つめる彼女を見て、俺は理性を抑えきれない。 「……ん…あん……うん……はむ……ふう……」 舌を入れるディープキス。 「ふえぇぇ……こんなキスもあるんですね……もっと、いいですか?」 今度は佐祐理さんが俺を求める。 「……はあ……はぁむ……んん……んあ……うん……はむ…ああん」 荒く息を吐きながら俺たちはそっと離れる。 「佐祐理、もう我慢できないんです。祐一さんのこと好きだから。今日はイケな い子になっちゃいます。あなたの奴隷のHな子に」
「じゃあ、早速だけどいいかな?」 俺が怒張したものを取り出すと、興味津々にゆっくりと手を伸ばす。彼女はひ ざまづいて顔を近づける。指の柔らかくスベスベした感触が限りなく心地良い。 「お口も動かした方がいいんですよね?……んん…んぐ……じゅる……くちゅ。 ん、うん……ん、ん、ん、んん。じゅる……はあ…はあ…気持ちいいですか? 祐 一さんの好きなようにしますから何でも言ってくださいね」 そう言って佐祐理さんは奉仕を続ける。3分の2ほど飲み込んだ所でゆっくりと 口を戻し、舌を絡める。それを繰り返し、口を前後に動かす。その動きを見てい るだけで興奮が高まっていく。 「…ん……あむ……んぐっ。あふ……う……あむ。じゅるっ、じゅっ、ん…ん ぐ、んんっ。じゅぽっ。ふぅ…もっと激しいほうがいいですか?」 「いや十分すぎるよ。気持ちよすぎてどうにかなっちゃいそうだ」 「本当ですか? 佐祐理、嬉しいです……ちゅっ、ちゅう……ぷちゅっ」 俺のモノに優しくキスしながら、上目遣いで見上げてくる。俺と目が合うと、い つもの顔で笑いかけてくる。 「祐一さん、大好きですよ……ちゅう、くちゅ、くちゅっ……あむ…あぐっ…… じゅるっ……あん…つばが溢れちゃいます」 「そのほうがいやらしくて素敵だよ」 「あはは、そうですか? じゃあ遠慮なく……じゅ…じゅるっ…ん。チュッ。…… チュッ、チュッ。……ん…ちゅぅ……チュッ、ちゅぅぅぅ」 佐祐理さんが、亀頭の先端の小さな割れ目を丹念になめたり吸ったりを繰り返す。 その刺激で俺は絶頂が近くなっていく。 「もう、イキそうだよ。最後は胸でやってもらってもいいかな?」 「はい、そんなに大きくないですけど……」
彼女はその綺麗な胸をさらけ出した。大きさも申し分ない。俺が横たわったその 胸に跨ると、佐祐理さんは胸と口を動かし始めた。 「なんか不思議な感じですね……んん、んむ……はあ……ああん。ちゅうぅ…… ちゅっ、ちゅっ…ふう……はあん……あむ…うん……」 感じ始めている彼女を見て、俺はその秘所へと刺激を加える。それに抵抗して、 彼女も俺のものを大きく頬張る。 「ひあああっ! ダメですそんなところ、何も出来なくなっちゃいます!……はむ …んむっ……ん、んん、んむっ……ぷはっ……ふあっ、んむう…ん、ん、んー!」 彼女の口の動きがさらに大きくなっていく。 「……んあっ、ん、ん……ぷぁ…あむっ……ちゅぅぅぅ…ちゅう…ぷはっ。ん、 んむぅ……うん、ん……はあっ。ひああん!……んんー、ん、んんんんんー!」 俺と彼女の絶頂はほぼ同時だった。 「も、もうダメです、佐祐理のほうがイッちゃいます! あ、ああん! ひあっ、 はあん…あっ、あっ、んんっ。変になっちゃいます…ひいいっ、ああああー!」 大きく開いた彼女の口と顔に俺の体液がほとばしる。 「はあ……はあ……嬉しい。祐一さんと一緒に気持ちよくなれたんですね……」
「でも、まだこれからだよ」 俺は佐祐理さんの股間に顔をうずめると、指と舌を使って、丁寧に恥毛をかきわけていく。 「私まだ……あ…ああ……あん。ああぁ」 佐祐理さんは小刻みに体をふるわせ、熱い息をもらす。 「はあ……祐一さん、そんな……あっ、ああっ!?そこはダメです…んああっ!」 クリトリスを唇でくわえて軽く吸いたてると、彼女はガクガクと体を揺らし、激 しく喘ぎまくる。 「ダ、ダメです、そこは……あんっ!そんなにしちゃ……あ、あひぃっ!」 「気持ちいい?」 「いい、いい……気持ちいい…気持ちいいです!ひああっ、気持ちいいよお」 俺の頭をきつく押さえ付けるようにして、佐祐理さんは何度も首を振りながら 身悶え、よがりまくる。 「祐一さん……もうダメ……佐祐理、なんだか……ああっ。体が浮いちゃいそ う……ああっ。あああああっ、ああっ!」 左右に開ききった両足をピンと伸ばし、佐祐理さんは大きく叫んで硬直した。 彼女は目を閉じ、荒い息をつきながら、痙攣するように火照った体をヒクヒク とふるわせている。 「入れるよ」 「きて……来てください、祐一さん……」 俺はゆっくりと腰を使い、佐祐理さんの中へと突き進んでいった。 「あ……ああぁぁぁ……祐一さんのが入ってきちゃいます!」 「痛くない?」 「少し……でも、その…あ…佐祐理…ああ…なんだか、すごく……気持ちいい んです……あん……ああ…ん…あん。くっ…あ、ああ…はあ…くぅん」
佐祐理さんは自ら腰を使い、快楽を貪る。 「ああ……佐祐理、わかんないです……こんな……体が勝手に動いて……あん… …ああっ!くぅ……ん…あ、ああ…ん……ひぐっ…ああっ、ああああん!」 耐え切れず叫んだあと、再び股間を擦りつけるように腰を激しく動かしだす。 「あ……ああ、ああん。祐一さん…こんな…Hな子は嫌いですか?…ああっ」 「凄く素敵だよ。もっと気持ちよくなりなよ」 「いい…いいです…すごくいいよお! 佐祐理、もう…おかしくなっちゃいます!」 「ほら、もっと腰を振っておかしくなりなよ」 「ああぁん。祐一さん、ああ……佐祐理飛んじゃいます……ひぐっ、ひぐうっ!」 「まだだよ。俺がイクまでずっと気持ちよくなってなきゃ」 「ダメ……佐祐理、もうイッちゃいます!……あん…ああん、ああああん!」 俺は体を振るわせる佐祐理さんを抱き寄せ、さらに強いピッチで突き上げる。 「ああ!……祐一さん……佐祐理、イってるのに……こんなイきながら……ああん!」 彼女の快感はどんどん膨れ上がり、ひたすらそれだけを追い、むさぼり続ける。 「あ、ああん……あああっ!あ、あ、あああぁ、ああああぁぁぁぁっ!」 普段はおとなしくて清楚な佐祐理さんが必死に俺の首にしがみつきながら、信じ られないくらいに激しい喘ぎ声をあげ、俺のモノによって何度も昇りつめている。 「はあ、はあ、はあぁぁっ。……また、イっちゃう!……すごいの……こんな…… こんなの……んきゅっ…ひいっ、ひいいっ…くっ、くううぅ……ああぁん!」 それまで以上の感覚が彼女を押し上げ、ひたすら上へと押し上げていく。 「イク、佐祐理、イッちゃうよお! イクっ、いいっ…ヘンになっちゃいます! ああっ、あああっ…ひいいっ!……っ、あっ、あっ、ああああっ!」 彼女は強烈な絶頂感に達し、身をヒクヒクと激しく痙攣させた。
「じゃあ、次は違う所を刺激してあげるよ」 俺は佐祐理さんを逆立ちにさせ、X字にまたがった。 「そんな、恥ずかしいです……ああああっ!」 「痛くない?」 「ああ……はあ、はあ……大丈夫です……またおかしくなっちゃいそうです……」 「おかしくなっちゃえよ」 「ひいっ!…ああっ…あたってる! 祐一さんのが佐祐理の中でえッーー!!」 佐祐理さんが髪を振り乱してせつなそうに喘ぐ中で、俺はさらに激しさを増す。 「横に、横にあたるんです! ああん、あひいっ!……気持ちい……い! 佐祐理、 感じちゃう! 感じちゃいます!」 「はあ、はあ、いいかい、佐祐理さん?」 「いいです。あっ、あっ、あっ! すごい、佐祐理、佐祐理、こんなに感じるなん てぇ―――!」 「佐祐理さんてHな子なんだね」 「ああ、ああん、いいっ、イッちゃうよお。イク、イク、またイっちゃいます! 出してください、中に!」 「ああ、もう少しだよ」 「あっ、あっ、あっ、気持ちひひ……気持ちいいよお! 佐祐理壊れちゃいます… …ああ、そんな! ひいいっ、ひぐっ! ああん、ああっ、あああああぁぁぁ!」 佐祐理さんは再び股間と体全体を激しく収縮させ、天に昇る天使のような姿を見せて失神した。
715 :
あー :02/02/25 21:04 ID:DSbEFBQH
人間、欲望に正直に生きなきゃいかん。 ……なんか荒らしっぽいか?(脱兎)
佐祐理陣営のSSイタ過ぎ・・・
本スレで要請があったので、2/18に掲載された『攻め綾香、受け好恵』4レス分を 投下します。
「ねえ好恵。私のことどう思ってるの?」 「そ、それはその…」 口ごもった好恵の顔は真っ赤だ。 「あは。黙ってると、身体に直接聞いちゃうわよ」 「う、うわっ」 飛びかった綾香はレスリングと柔道のテクニックで好恵を押さえ込む。 「や、ちょ、ちょっと綾香」 「ほら。ここまで来て抵抗しないの」 空手家である好恵は寝技には素人だ。綾香はたやすく組み伏せると、好恵の下半身を覆う最後の薄布をめくり上げた。そこには見違いようもない、男の性器がたくましく自己主張している。包皮は半ば剥け、敏感な粘膜組織が露出している。その先端が濡れて光る。 「ふふ。もうこんなに反り返ってるわよ?ずーっとヘンなこと考えてたのね」 「や、駄目…」 「好恵にこんなものが生えてるなんてね。なんていやらしいのかしら。胸はちゃんとあって、しっかり女の子なのにね」 綾香は人差し指と親指で輪を作り、好恵の肉茎にからめる。そのままキュッと雁首を締めつけ、他の指もそえる。弱点を握られた好恵は身体の力が抜けてしまった。 「ふあっ、綾香っ!」 「好恵。可愛いわ。それに固い…。血管浮き上がらせちゃって」 綾香の右手が上下に動き、粘液にまみれたくびれをしごき始めた。指の輪が段差を何度も乗り越える。 「ああっ!駄目、駄目え…」 白い手が往復するたびに、好恵の赤くはれ上がった亀頭の先端から透明な蜜が溢れ出す。それがゆっくりと流れて綾香の指を濡らし、ニチャニチャという音を立てる。 「うふふ。嫌がってる顔じゃないわね」 綾香の指技は巧妙で、締め付ける力にリズミカルに強弱をつけてくる。そして根元から先端へ向けて蜜を絞り出すようにしごき上げる。
「はあっ、はあっ…」 好恵の引き締まった白い腹が荒い息に合わせて上下している。もう抵抗する意思はまったくないようだ。大きく脚を開き、両腕もシーツの上に落ちている。 「気持ちいいんでしょ?恥ずかしがらないで教えて…」 左手で優しく頭を撫でてやる。 「綾香ぁ、もう、もう…」 「あら。もう限界?イクの?ほうら、白いの出ちゃうの?」 好恵の切迫した表情に、綾香は妖しく笑みを浮かべ右手のピッチを上げる。 ニチャニチャニチャ… 淫らな音に合わせ、好恵の尻が浮き上がる。 「はあっ、綾香、綾香ぁ!」 「あははは。あははははは!」 綾香は笑いながらとどめとばかりに肉茎を強く責めたて、右手にぎゅっとひねりを加えた。 いっそう激しくしごくと好恵の身体に痙攣が走る。 「駄目っ、いく、イクうっ!」 しかし好恵がそう叫んだ瞬間、綾香の手が離れる。最後の刺激をおあずけにされた肉棒が性感のやり場を失ってヒクヒクと震えた。すぐそこまで上がってきた精液が亀頭を内側から熱く責める。 「はい。ストップよ」 「あ、ああっ!どうして…?」 「誰が出していいと言ったの?」 「そ、そんなあ…」 あとひとこすりというところで寸止めされた好恵は思わずそそり立つ股間に手を伸ばす。 「駄目よ!」 綾香の声が響く。手がビクリと止まる。 「自分でしごいたりしたら二度としてあげないわ。自分の手と私の手、どっちが気持ちいいか知ってるわよね?」 「…ひどい…」
弱々しく抗議の言葉をつぶやくが、綾香に見つめられればそれ以上は言えない。まさに蛇ににらまれた蛙だ。射精への衝動を必死にこらえ、オナニーで果てようという手をなんとか遠ざけた。 「こ、これで…いい?」 背中を反らし、訴えかけるような涙目で綾香を見た。 「まだよ。ちゃんと言いなさい。どうして欲しいのか」 「…」 「嫌ならやめるけど?」 「あ…」 綾香は好恵のツボを知り尽くしている。 「お願いです…わたしのいやらしい肉棒、いっぱいしごいてください…」 好恵の口から、仕込まれたとおりのセリフが自然に漏れてしまう。はしたない言葉に反応して、肉棒がピクンとはねる。 浮いたままの下半身がゆらゆらと揺れた。 「い、イかせてぇ…」 「はは。腰振っちゃって」 綾香は目を細め、好恵の白い太腿を撫でる。その手がすっと這い上がり、パンパンに張ったままの肉茎へたどりつく。 「よく言えました。ご褒美よ」 5本の指を絡めると再びしごき始め、好恵を荒々しく追い詰めていく。 ニチャッ、ニチャッ、ニチャッ! 「やらしい…真っ赤になってるじゃない」 「あ、あ、あ、いく、いく、気持ちいいのが出ちゃうう…」 やっとイける、綾香のリズムに合わせて好恵の腰も上下する。しかし。 「はーい、ストップ」 またしても限界寸前で綾香の手が止まる。しかも今度は暴発を防ぐため根元を強く握り締め、精液をせき止めた。 「好恵。まさか本当にイかせてもらえると思ったの?」
「ウソ、いや、嫌あっ!イカせて、イカせてよ!」 必死になる好恵の顔を見て、綾香はニッコリ笑う。 「うん。ウ・ソ。ほうら、思いっきり射精しなさい!」 許可を与えると同時に締め付けをわずかに緩め、包皮を根元まで完全に剥き立てた。好恵の最も好きな責めだ。肉茎の全てが外気にさらされる。剥いた皮を右手で固定し、そこへ左手で先端の粘液を塗りたくった。更にキュッキュッとひねるように幹をしごきたてる。 待ちに待った最後の引き金を与えられ、好恵の身体がピンと硬直した。 「ふぁ、ふぁああああ!イクううう!」 ビュ、ビュッ! 綾香の手を振りほどきそうな力で肉茎が震え、先端から熱い白濁液がほとばしった。本当に音が聞こえそうな勢いだ。 「あっ、あっ、あっあっ!」 「すご…好恵…」 思わず息を呑む綾香。それでも最後の一滴を搾り出すまで、責める手は休めない。 クチュクチュクチュ… ビュ、ビュビュ!… 「こんなに溜まってたなんて…言いつけ通り、本当にオナニー我慢してたのね」 手の往復に合わせて怒張がしゃくり上げるたびに、放物線を描いた精液が次々に好恵の腹から胸の谷間にまで降り注ぐ。 「はあっ、熱い、熱いよう…精子、熱いの…濃いミルク、止まらない…」 いやらしい言葉で自分を高め、精液を少しでも遠くに飛ばそうとするように夢中で腰を突き上げる好恵。 「はあ、綾香、綾香!好き、好きよ…」 涙で潤む目を精一杯開いて、綾香を見た。濃い精液が肉棒と綾香の手の間に流れ込み、潤滑油となって性感を増幅させていく。 「よ、好恵ったら…もう」 激しく射精しながら告白する好恵に、綾香はたまらず唇を重ねた。 おしまい。
>718-721 『攻め綾香、受け好恵』 …でした。 作者さん、こんなかんじでOKですかね?
723 :
攻め綾香・受け好恵4/4 :02/02/26 04:30 ID:e4MtOkC9
>722さん 作者です。ありがとうございます。 改めて読むと、なんかエロすぎてココでは浮いてたりも。恥ず。 どうもお手数をおかけしました。
みさきさん支援二次小説、 『月光』 全15レスに収まるくらい。かな? ●序章 仄かに蒼い光の庭で ゆっくりと風が流れている。 広い、中庭全体を。 1月の夕陽は早く沈み、 空にはすでに黄色い満月。 その姿は黄色いのに、 その光はなぜ蒼いのか。 とても不思議なその現象。 でも、その光すら、 その不思議な現象すら感じられない彼女。 それなのに、瞳はまっすぐその方向へ。 まるで見えているかのように。 その瞳の中は、今の空のように漆黒の闇、 あるはずの満月の姿は映っていない。 なにも見えていない。 なにも見ることができない。 それなのに、それなのに、 なぜ、普通にいられるのだろうか。 どうして、あれほど強く生きていられるのだろうか… 1/15
●第1章 14番目の月、風の中 「はいっ、今日の練習はこれまで!」 「おつかれさまでしたー!」 大きな声で挨拶をして、今日の演劇部の練習は終わりを告げる。 わたしは部員たちと片づけをしながら、横目でみさきの様子を伺い見る。 窓際で遠くの深い紺色の空を見上げている。 「みさき、よかったら台本を片付けるの手伝ってくれないかしら?」 「うん、わかったよ、雪ちゃん」 わたしのお願いに、みさきは笑顔を向けて、机へと向かおうとする。 少しだけなびく髪、漂う優しい香り。 でも、わたしは見逃さなかった。 その、漆黒の瞳が少しだけ揺れていることを。 「みさき?」 思わずその背中に声をかけてしまうけど、 みさきは全く気にした風もなく、台本の片づけを続けていた。 わたしも気のせいかと思いながら、部員たちと片づけを続けていた。 「みさき、おまたせ」 「うん」 最後に部室の鍵を閉め、その鍵を返すのは部長のわたしの役目。 部員が全員が帰ってしまったあとになるので、どうしても遅くなってしまう。 それでも、いつも、みさきはわたしのことを待っていてくれる。 みさきのそういう優しさが、わたしは好きだ。 ふたり並んで、すっかり人のいなくなった廊下を歩いてゆく。 2/15
玄関を出ると、少し強めの風がわたしたちの体を包む。 その風はわたしたちを包み、通り抜けてゆくと、校門へと、遠く、帰ってゆく。 その風の冷たさに、わたしも、みさきも、少しだけ震えてしまう。 「今日も寒いね、雪ちゃん」 「そうね、まだこんな日が続くのかしらね」 小さく溜息をついて空を見上げる。 深い、群青の空、所々に雲が浮かぶ。 その雲を照らしているのは天頂のあたりに浮かぶ黄色い月。 満月まで後わずかの、ほとんどまん丸な月だった。 そのまま視線をおろして、自分の手を広げて眺めてみると、 月の光に照らされた、蒼白い手がわたしの目の中に入ってきた。 わたしはただぼぉっと、その手を眺めている。 吹いてくる風も気にならないくらい、ずっと。 「…雪ちゃん?」 「え? あ、ご、ごめん…」 心配そうなみさきの声が耳の中に入ってくる。 わたしは正気に戻ってみさきに返事をする。 「雪ちゃん、ぼぉっとしてたでしょう?」 少しだけ意地悪そうな顔をしてみさきはあたしに質問をしてくる。 わたしは小さく笑って、 「みさきじゃあるまいし、ぼぉっとなんてしてないわよ」 そう、返事をする。 3/15
「あっ、雪ちゃん、ひどいよ…」 「ふふっ、本当はね、なんとなく空を見ていたのよ」 「空?」 「そう、そら…」 わたしとみさき、同時に空へと顔を向ける。 先ほどと変わらず、早い雲の流れと丸い月。 「ほぅ…」 わたしは小さく溜息をついてしまう。 みさきも視線を空へ向けたまま、ただ、静かにたたずんでいた。 「雪ちゃん…」 空へと視線を投げたまま、みさきの声、さっきより少し小さい声があたしを呼ぶ。 「どうしたの?」 わたしの声も空へと向かう。 風の勢いはまだ止まらない。 その風の中、みさきの言葉が紡がれる。 「今日は満月なの?」 「今日はまだね。明日かな」 「そうなんだ…」 その言葉を風に紛らせて、みさきは空を見つづけていた。 わたしは、その何かを含んだみさきの言葉が気にかかり、その横顔をじっと見つめる。 月の光を映さないその瞳、それは、 さっき部室で見たときと一緒、少し潤んでかすかに揺れていた。 4/15
●第2章 満月、かごの中の鳥 「それでは、今日はこれで終わりにしましょう!」 「おつかれさまでしたー!」 夜8時、今日も部活が終了の時を迎える。 小道具を片付けてゆく子、衣装をチェックする子、 わたしは台本と資料を持って、本棚へと近づいていった。 本棚の横には、昨日と同じように窓から空を眺めているみさきがいた。 「みさき、そろそろ終わるから待っててね」 「うん…」 少しだけ、含みを持たせて返事をするみさき。 わたしは少しだけ首をかしげて話を続ける。 「みさき? なにかあった?」 「え? ううん、べつに」 「…みさき? 嘘つくのはやめなさい」 「大丈夫だって、ほら、雪ちゃんは部長さんなんだから仕事しないとだめだよ」 「ごまかさないのっ!」 わたしのその声に、部室の中が一瞬ざわめく。 部員の子がみんな、わたしとみさきの様子を見ている、いぶかしげに。 「ほら、雪ちゃんが仕事しないから、みんな困ってるよ」 みさきはごまかすようにそれだけを言うと、再び窓から空を見上げる。 わたしは仕方なく片付けを続けていった。 部室の中も先ほどの片付けの喧騒が戻っていた。 5/15
「みさき、おまたせ」 「うん、おかえりなさい」 職員室を出て、そこで待つみさきにわたしは声をかける。 みさきは笑顔でわたしを出迎えてくれる。 わたしたちふたり、蛍光灯だけに照らされた廊下を歩いてゆく。 交わした挨拶のあとは、なにも話さずに、静かにただふたりだけで。 ふたつの足音だけが廊下に響き渡っていた。 「雪ちゃん…」 やがて、下へと降りる階段へと到着したときの事、 みさきがわたしの名前を呼ぶ、小さく、そして、弱々しく。 「どうしたの? みさき」 わたしもつられて小さな声で返事をする。 「屋上、行ってみたいんだけどいいかな?」 「屋上!?」 思わずわたしは素っ頓狂な声をあげてしまう。 屋上は、この学校の中でみさきの一番のお気に入りの場所。 でも、放課後の夕焼けの頃ならまだしも、 こんな時間ではいくらなんでも危なさすぎる。 夜、山のほうから吹いてくる風はいきなり強さが変わることもある。 ひとつ強い風が吹いて柵のそばでバランスを崩したりしたら… あまりに恐ろしい考えが頭の中に浮かび、わたしは瞳を閉じる。 6/15
「だめよ、あぶないじゃない。行かせられないわ」 「大丈夫だよ」 「大丈夫じゃないわよ! 突然強い風が吹いたりしたら…」 「雪ちゃん、お願い!」 「…みさき?」 みさきにしてはいつもより強い口調、 懇願するような真摯な瞳、 こんなみさきを見るのは初めてだった。 なにがみさきをそんなにも駆り立てるのだろうか。 なんでみさきはそんなに真剣なのだろうか。 そんなみさきを見てしまったわたしは、 「…わかったわ。でも、お願い、無理はしないで」 みさきのお願いを許さざるをえない。 「うん、ありがとう」 笑顔に戻ったみさきはわたしの手を探し当て、きゅっと握ると、 そのままわたしの手を引っ張り、階段をゆっくりと上ってゆく。 確実に、一歩一歩、踏みしめて。 まるでそれは、鳥かごから抜け出そうとする鳥のように、 空へと還ろうとする天使のように、 ただ、一心に。 わたしは、離れまいと、彼女の手を強く握っていた。 離したら、このままひとり、彼女が飛び立ってしまいそうだったから。 このままひとり、どこかへ行ってしまいそうだったから。 7/15
●第3章 満月、悲しい希望 「がたんっ」 大きな音を響かせて、ゆっくりと屋上への扉が開かれてゆく。 開かれるとともに、月あかり、蒼い光が階段へと差し込んでくる。 みさきはわたしの手を握ったまま屋上へと踊り出た。 「風、強くないね」 「ええ、そうね」 穏やかな風が、みさきとわたしの髪を揺らしてゆく。 みさきはわたしの手を離して、柵へと近づいてゆく。 「み、み、みさきっ! あぶないわよっ!」 「大丈夫だよ。ほんと、心配性なんだから」 笑顔でそれだけを言うと、再び柵の向こうへと視線を向ける。 わたしもみさきの横に並んで同じ方向を眺める。 真っ暗な中、月明かりが遠くの山々を照らしている。 穏やかな、優しい風は、わたしたちのほほを撫でて、 ゆっくりと後ろへと流れてゆく。 「雪ちゃん、ちょっと変なこと聞いていいかな?」 「体重とスリーサイズ、そして色恋沙汰の話以外ならいいわよ」 「色恋沙汰の話は興味あるけど、今はそれ以外のことだよ」 そこで言葉を区切って、みさきは小さく溜息をつく。 少しだけ迷っている感じが横顔から受けて見える。 わたしは黙ってみさきの言葉を待つ。 小さく、ゆっくり震えるくちびるを見ながら。 8/15
「お月様、どんな色しているかな?」 「お月様の色…?」 その言葉を聞いて、わたしは顔を天へと上げる。 まん丸の満月、ウサギの姿もはっきりと見える。 「どうかな?」 少しだけ心配そうにみさきは再び口を開く。 「そうね、黄色かな」 「黄色なの?」 「うん、少しだけ灰色に近い黄色よ」 「そうなんだ」 みさきもゆっくりと頭を上げて天頂へと視線を向ける。 狙い済ましたように、その視線は月を向いている。 けれども、その瞳には、映っているはずの満月の姿はない。 ただ、漆黒の闇が広がるだけ。 9/15
「もうひとついいかな?」 「ええ、いいわよ」 その、わたしの声に、みさきは視線をわたしへと戻す。 でも、視線は、少しだけずれて、胸のリボンのあたり。 その視線のまま、みさきの口は開かれる。 「私、いまどんな色してるかな? 周り、今、どんな色、してるかな?」 ちょっとだけ心配そうに、それでいて懇願するように、みさきはわたしに尋ねてくる。 その質問を受けて、わたしはみさきの姿をしっかりと見据える。 黄色い月、その月の光に照らされたみさきの姿は、蒼い色で覆われている。 冷たくみえて暖か差を感じさせる、少し寂しげな、仄かな色。 みさきだけじゃない、わたしも、そして、屋上も、 遠く、雪をかぶった白い山並みも、 みんな、みんな、月明かりで蒼く染まっていた。 「みんな、蒼い色をしているわよ」 「ほんとう!?」 「え、ええ、わたしが嘘ついているように聞こえる?」 思いもよらないほど元気な返事に私は少しどもってしまう。 でも、気にした風もなく、みさきの言葉は続いてゆく。 「だって…信じられなかったから…」 「なーに? あたしの言うことが信じられないっていうの?」 「あっ、ごめんね。雪ちゃんのことは信じているよ、でもね…」 ぽつりと、そこで言葉を区切って、みさきは再び遠くの山へと視線を向ける。 少しだけ強くなってきた風、わたしはみさきにさっきより少し近づいて、 遠くの山並みを眺めていた。 みさきの言葉が始まるのを待ちながら。 10/15
●第4章 満月、伝える人 「先週、図書館行ったよね?」 「ええ。そういえば、一生懸命なにかの本を読んでいたわね」 先週金曜日のお昼休み、食事の後、わたしとみさきで図書室へ行った。 みさきは書架で本をじっくり探して、一冊の本を選び出す。 そして、先に演劇の本を読んでいたわたしの横に並んで読み始めた。 文字がひとつも書いていない本、指先で読んでゆく。 ずっと、集中をとぎらせる事もなく、休み時間終了のチャイムにも気づかないほどに。 「あの本、なんだったの?」 「うん、目の見えなくなっちゃった女の子の話だよ」 「そうだったの」 幼いころ、光を失ってから、みさきは時々似た境遇の話が書いてある本を読んでいた。 『私が困った時どうしたらいいか、教えてくれるんだよ。 でも、本当に失ったことがない人の話には、見当違いなこともあるんだけどね』 図書館で借りた本を胸に抱いてそう話してくれたのはもう2年以上前だったか。 「その本の中にね、お月様のことが書いてあったんだよ」 「お月様のこと?」 「うん、そうだよ」 少しだけ視線を上へ、月がいるその方向へと向ける。 やはり、きっちりと瞳は満月の方向を向いているその瞳。 わたしも同じようにその月へと視線を投げる。 11/15
「『空にはすでに黄色い満月。 その姿は黄色いのに、 その光はなぜ蒼いのか』 そういう風にその本には書いてあったの。 そんな話聞いたことないから、本当かどうか、確かめたかったんだよ。 月も、その光も、全部黄色いと思っていたから。 ごめんねつきあわせちゃって」 みさきはこっちを向いて小さくぺこりと謝る。 わたしは思わずその体を抱き締めてしまった。 「ゆ、雪ちゃん?」 「お願い、謝ったりしないで、お願いだから」 少し冷えてきたみさきの体、その冷たさがわたしへと移ってくる。 だんだんとぬくもりを帯びてくるみさきの体。 みさきはただ、わたしに抱かれたままじっとしていた。 「ううん、雪ちゃん、ありがとう、私、雪ちゃんのおかげでまたひとつ新しいことを知ることができたよ」 みさきの優しい声、緩やかな風の流れに乗って、わたしの耳に届いてくる。 「わたし、ひとりでがんばろうと思うんだけど、時々は雪ちゃんのこと、頼っちゃってもいいよね?」 その言葉に、わたしは首を上げてみさきの顔を覗き込む。 「当然じゃない、わたしでよければいつでも使って」 「うん、ありがとう」 わたしはしばらくみさきの体を抱き締めていた。 みさきの手は、優しくわたしの髪を撫でていてくれた。 その暖かさに、わたしはしばらく漂っていた。 穏やかな風に、わたしとみさきの髪をやさしく揺らしながら。 12/15
●最終章 満月、わたしたちの輝く季節へ 「そろそろ、かえろうか?」 「うん」 腕時計を確かめるともう9時半を回ったところ。 さすがにこれ以上ここにいたら怒られてしまう。 みさきも家の人が心配しているはずだ。 まずわたしが階段へと続く扉を開けて静かに中に入る。 次にみさきが入ってくるはずだけど、扉を開けたままたたずんでいる。 「みさき? どうしたの?」 「うん、最後にもう一度だけ」 みさきの瞳は満月の方向へ。 見えていないはずなのに、きちっと視線は変わらずに。 10秒ほどそれ見て、みさきはゆっくりとこちらに戻ってくる。 「もういい?」 その顔を見つめながら尋ねる。 「うん、満月の時の風の匂い、風の流れ、暖かさ、たくさん感じたから」 「そう、それじゃいきましょう」 そして、ゆっくりと、見つからないようにわたしたちは学校を抜け出して、 無事、帰宅の途へつくことができた。 みさきの家の前、玄関先、 「また一緒に見ようね」 そう言っていたみさきの表情、月の光の、蒼さを漂わせたその表情は、 とても印象深い、嬉しそうな表情だった。 13/13
以上です。 レス番号が違う気がするけど、 気にしない、気にしな〜い。
どーでもいいけど、そろそろ新スレ考えた方がいいぞ。
◆絶望の淵で(1/6)◆ 「……」 どうしたらいいのか分からない。 正直言って、何も考えたくない。思考能力なんてなければいい。頭が潰れてしまえば良かったのに。 でも、どうしてもいろんな思いが交錯する。 ひとりきりの時間というのは、ひとりきりの空間というのは。 なぜこうも、想像力をつまらぬ方向へ駆り立てるのだろう…。 「浩平…?」 ドアが開いた音の後。姿を見なくても…姿を見ることができなくても、この聞き慣れた声の持ち主の判別は容易だった。 「…なんだ、長森」 こいつに悪意はないのだが、自然と唸るような、低い声での応対になってしまう。 「あ、起きてたんだね? クラスのみんなから、花貰ったよ。どう、いい匂いでしょ?」 俺の顔の前に花をかざしているらしい。――甘い、俺の好きな匂いだった。 「……。ああ…」 こいつの気遣いに俺は言葉が詰まった。 『綺麗でしょ』ではなくて『いい匂いでしょ』。 オレに起きた変化を、オレでさえ理解できない事態を、こいつは事もなげに受け入れている…。喜ぶべきか、悲しむべきか。複雑な心境だ。 「…花瓶ないんだね。…ナースセンターに行けば大丈夫かな」 「ああ…いつも悪いな」 「…うーん。そんなすぐにお礼を言うなんて、浩平じゃないみたいだよ」 (そうだよ。もう、今までのオレじゃないんだよ…) 「あ、そうだ」 部屋を出ようとしていた長森が立ち止まる。
◆絶望の淵で(2/6)◆ 「川名さん、っていう人が面会に来たがってたけど…どうする? 連れてこようか?」 「それは勘弁してくれ」 「でも、すごく来たがってたけど…」 「いいんだ」 「……。分かった」 オレは…オレにはもう、みさき先輩に会わせる顔がないんだから。 「…そうなんだ」 「ええ、だから…ごめんなさい」 「ううん、ありがとう。浩平君が元気だったら、いいよ」 「何か浩平に伝えたいこと、ありますか?」 「そのうちお願いするよ」 浩平君が私を避けている。 それが何を意味することなのか…。分かってるの、浩平君…? …やっぱり会わないといけない。今だからこそ、会わないと…。 ……。 もうオレの病室に見舞い客が来なくなってから何日経つだろう。 あのお節介の長森や根性の据わった七瀬でさえ来なくなったもんな。…二人とも、やっぱり痛々しい姿の怪我人は見ていられなくなったんだろう。 ひとりでいると頭の中で鳴り響くのは、将来への不安。…ようやくオレも現実が見えてきたということか。 (よく先輩はこんな状態で生き続けようだなんて思ったな…) 枕元に立ち込める甘い花の香り。 だが今のオレには、それを引き寄せることすらできない。 そして、食事や排泄でさえ。 ――このナースコールなしには、満足にこなすことができないのだ。
◆絶望の淵で(3/6)◆ 「折原さん…ですか?」 「はい。下の名前は浩平、です」 「その病棟は…面会時間、過ぎちゃってますけど…」 「でも、今会いたいんです。ここまで来るのに少し、時間が掛かってしまって…」 多分、私のスカートは泥だらけだった。病院の空調に、濡れた部分が冷える。 「あなた、目が…?」 「え…」 「いえ、ごめんなさい。――分かりました、お待ちください。その前に…タオル持ってきますから。体、拭いてください」 「ありがとうございます」 …こんな時に目が見えないことで例外の許可を得られるなんて。ちょっと卑怯だ。 でもどんな形でもいい。 浩平君に会わなきゃ…。 病室の外で、複数の足音がする。…詳しい時間は分からないけど、面会にしては遅い。 こんな時間に面会に来てもらえる――そんな幸福な病人が近くにいるのだろうか、羨ましい話だ。 コンコン。 「……」 コンコン。 「折原さん? 面会です」 え? 「あ、はい?」 ガチャリ。 部屋の空気が入れ替わった。 「どうして…」 誰が来たのか、一瞬で分かった。だから、オレの口からは非難の言葉しか出なかった。
◆絶望の淵で(4/6)◆ 「今日は雨なんだろ? 朝から雨音がうるさくてたまらなかったぜ…」 「雨でも来たかったんだよ」 「先輩には危なすぎるだろ…? 雨音で車の音もかき消されて。足元だって滑るし」 「それでも来たかったんだよ…」 「長森からも『来るな』って聞いてたはずだけど…」 「歓迎されなくても」 ふわっ…。 先輩の匂いがオレを包んだ。 「私が来たいと思ったから、来たんだよ…」 ぎゅっと頭を抱き締められる。 「…失礼します」 看護婦が慌ててドアを閉めて出て行った。 「…他人が見てたぞ、今のシーン」 「誰に見られても構わないよ…」 「ちなみに、オレの顔の前に先輩の胸があるみたいだぞ…」 「…ちょっと恥ずかしいけど、でも仕方ないよ…」 「……」 オレは決定的なことを言わなければならない。だが、まだ躊躇っている。 このひとは決定的なことを言おうとしている。 私はそれを否定しなければならない。 そのために、今日来たのだから。
◆絶望の淵で(5/6)◆ 「オレは…もう目が見えないんだぞ?」 「それがどうしたの…」 「もう先輩の手足にはなれないんだぞ…?」 「分かってるよ…」 「目が見えない者同士が二人手を繋いで仲良くしてても。それこそ道に迷うだけじゃないか…」 「……」 オレには先輩の悲しげな表情が思い浮かぶ。 今浩平君が見ているものは、確かに現実だけど。でも、それは一瞬のものなんだよ。 そう教えてくれたのは――他ならぬ浩平君、あなたなんだよ。 それを今から教え返してあげるからね…。 「目が見えなくても。希望があれば、生きていけるんだよ。自分の心に絶望が満ちてしまっても。他人が、希望を灯してくれることがあるんだよ」 「私が浩平君を選んだのは、便利な手足にしたかったからじゃないよ…」 「私が浩平君を『光』と呼んだのは、私にとって暗く、闇でしかなかった『世界』を明るくしてくれたからじゃなくて」 「心の暗闇を、取り払ってくれたからだよ…」 オレは先輩の言葉を静かに聞く。オレの心を暖かくする。
◆絶望の淵で(6/6)◆ 「今度は私が浩平君の『光』になる」 「私が、浩平君の心の闇を照らしたい」 「…そんな存在に、私はなれないのかな…?」 オレは言葉の代わりに、先輩の胸に顔を擦り付けた。 「わ、なんか直球すぎる答えだよ…」 「盲目初心者だからな」 「全然答えになってないよ…」 「一つだけ約束できることがある」 オレは先輩の顔があるであろう方向に目を向ける。 「オレはいつまでも先輩のことが好きだ」 浩平君の、しっかりと未来を見据えた視線を感じるよ。 そんな浩平君に、私からの答え。 チュッ…。 (完)
>>745 テンプレはここの1と2をそのまま使って...........
>>15 のツッコミを忘れずにって所か
俺建てるけどいい?
新しいかちゅだと下のほうにスレのサイズが出るね、こりゃ便利。 埋め立てできなかった本スレは永遠に過去のものになりそうだな
>>748 悪い、感想スレで請負人氏に権利を譲ってきた(w
俺は二番手で待機してるよ