梓「千鶴姉の試合だけど、今度の相手はちょっとやばそうだよ」
耕一「強いのか?」
梓「なんでも、超人パワーが物凄い忍者とか装甲師団を連れてるらしいんだ」
耕一「は…? 何言ってんだ?」
梓「あたしだって意味わかんないんだけどさ…」
初音「え! お姉ちゃん、『殿中でござる』って切られちゃうの?」
梓「なんて言うか…。初音、それは忍者じゃないよ」
楓「……ロケット砲程度なら、姉さんには通用しないと思う」
耕一「なんか物騒だけど、別に喧嘩するわけじゃないからなあ」
梓「違う! すごく萌えさせる忍者なんだってば!」
梓、楓、初音、耕一。四人が額を突き合わせて、作戦を練っていた。
千鶴にとって大切なものが、ここにはみんな揃っている。
可愛い妹達と、それを支えてくれる信頼できる男性…。
お互いのことが何よりも大切な…、言ってみれば家族だった。
千鶴(あの子達があんなに一生懸命なんだから、私もがんばらなきゃね)
穏やかな気分で、千鶴は試合の開始時間を待っていた。
“大切な家族”から聞こえてきた、ある一言が耳に入るまでは…。
『だいたい相手は現役じょしこーせーだよ? 千鶴姉の勝算と言っても…』
千鶴「……それは、どういう意味かしら?」
初音「お、お姉ちゃん。聞こえてたの?」
耕一「いやいやいやいや、特に深い意味なんかないよな。そうだよな? 梓」
梓「そ、そうだよ。別に」
聞いているのかいないのか。千鶴は端正な面差しを傾けてにっこりと笑った。
千鶴「平気ですよ、耕一さん。“絶対に”勝ちますから」
――会場に立った柏木家の長女は、家族の励ましによって闘志に満ちていたという。
<柏木千鶴 入場!>