573 :
琉一:
葵支援SS『カマキリとなって、葵ちゃんを襲え!(1/2)』
「形意拳って、ご存じですか?」
「ああ、知ってるぞ。動物の動きをまねたりする、あれだろ?」
「あ、いえ。それは象形拳です」
「なんだ、てっきり葵ちゃんが、こう構えて、蟷螂拳とかやっているのかと」
俺は両手の指を揃え、くの字に曲げて、威嚇するような構えを取る。
妙にマンガチックな俺の格好に、葵ちゃんは苦笑する。
「この揃えた指先で、葵ちゃんを素早くつついたりするわけだ」
つん、つん、と葵ちゃんの肩やら、防ごうとした腕やらを、軽くつつく。
「きゃっ。やだ、先輩、やめてください」
くすぐったいのか、葵ちゃんは笑いながら、逃げようとする。
「ふふふ、蟷螂拳の恐ろしさを思い知れ。つん、つん」
「あっ、ちょっと先輩……あっ!」
ひょいと軌道を変えて繰り出した指先が、脇腹にヒットする。
ピクン、と震える葵ちゃん。
動きの止まった葵ちゃんに、俺は素早く、攻撃を加える。
つん、つん。
「あっ……やだ…、せんぱ……あんっ!」
ふふふ、今の俺は名も無きカマキリ。獲物は葵ちゃんという名の蝶。