彩 「あ……」
和樹「よっ、頑張ってるな」
彩 「………」
和樹「そう言えば彩ちゃん、ここのバイトは長いのか?」
彩 「……一年…くらいです」
和樹「へえ一年か…あ、そうそう。一緒にお昼食いに行かないか?
彩ちゃんは、どんな店がいいと思う?」
彩 「あ……その……わたし……わたしは………
こ…ここ……近所の吉野家が…いいです」
和樹「へえ? めちゃくちゃいっぱいで座れないようだけど」
彩 「ダメです…今なら…150円引き…だから……」
ふ〜ん、そんなもんか…
彩 「吉野家は……垂れ幕のとおり150円引きだから…
普段来てない人も来てます……今日は…親子連れもいて…」
ふ〜ん、さすが画材屋でバイトしてるだけあって、よくお客を観察してるな。
彩 「それと…パパは特盛り頼むって…それでいいと思います……」
それにしても……
彩 「それと、吉野家の良いところですけど…
殺伐としているとことか一般的です……
Uの字テーブルの向かいに座った人と…いつ喧嘩が始まってもおかしくない…
刺すか刺されるか…女性や子供には近寄りがたい…そんな雰囲気がいいです」
こりゃまた、いつもと比べてずいぶんと積極的だな。
和樹「おっ、やっと座れたな。じゃあ注文しよう。俺は大盛りつゆだくにしようかな?」
彩 「それは…得意げに注文する人もいますが…既に流行は過ぎてるんです。
それに…本当につゆだくが食べたいのか……ちょっと疑問です……
だから…本当に注文するのなら…真意を小一時間ほど問いただしたいです」
おいおい、今店の中だろ。
彩 「じゃあ…わたしは…大盛りねぎだくで……」
和樹「ねぎだく? ああ、あのネギが多めのアレね。あれは肉が少な目だからなぁ…」
彩 「それなら…ギョク(玉子)を付けるといいです
玉子は50円と安いですし…吉野家通の中での最新流行です」
だから、俺にそれを食えと?
彩 「あっ、でも…これを頼むと…次から店員さんにマークされる危険も伴います。
いわば諸刃の剣…でも美味しいものを食べるためには…仕方がありませんが…
だから…だからわたし、素人さんには…この牛鮭定食をお薦めしてます」
和樹「…………」
彩 「それと…それと……ほかには……そのっ……あのっ!」
和樹「………………」
彩 「あっ……」
あらら、真っ赤になってうつむいちゃったよ。
もう少し見てたかったんだけど、残念……
彩 「………………」
逝ってしまったか………
……ってお昼は?