368 :
琉一:
あゆあゆ……? 支援SS『消えない時間』
ボクはいつも、あの子が来るのを、ずっと待っていた。
雪の降り積もった林を駆け、時折滑って転んでは、笑い合った。
一つのたい焼きをはんぶんこして、お互い、おいしさに目を細めた。
時々ケンカをして、すぐ謝って、仲直りして、握手した。
でも、僕の手はもうあの子の手を握れない。
冷たいね。暗いね。一人で寂しいね。
どこにいるの? どこなら会えるの? どこに行けばいいの?
白く黒く、閉ざされた世界で、ボクはずっと、あの子を探して彷徨っていた。
もういないよ。もう会えないよ。もうどこにも行けないんだよ。
何度もボクの心を閉ざそうとする、冷たい声。
崩れそうになる。倒れたい。休みたい。楽になりたい。
でも、その度に、ボクの心にあの子の顔が浮かぶんだ。
『明日、また会おうね』
あの子はいつも、そう言って手を振って、帰ってゆく。それがすごく嬉しかった。
明日になればまた会える。そう思うことで、ボクは寂しくなんかならなかった。
明日になれば……。
そう思い続けて、ボクはどれくらい、この時間を彷徨い続けてきたんだろう。
はっきりと覚えていたはずのあの子の顔も、ぼんやりと霞んでいる。
それがひどく悲しくて、涙が出て、そのせいでますます視界は霞む。
だけど……それでもボクは走り出す。
きっとあの子に会える。絶対に会える。
信じられなきゃ、本当にボクは、あの子に会えなくなる。
いろんなものが心の中からなくなっているのに、その思いだけは、不思議と消えなかった。
369 :
琉一:02/01/18 08:06 ID:AFCMlsHi
そして……走って、走り続けて、ボクは、不思議なトンネルを抜けた。
いつの間にかボクは商店街にいた。
手の中には暖かい感触があった。
後ろから怒鳴られ、なぜか危険を感じて逃げた。
危険なのに、恐いのに、ボクはわくわくしていた。
予感があった。それがなにを意味しているのか、ボクには分からなくなっていたけど。
人をよけながら走り続けて、そして、ボクは見つけた。
誰を? なにを? いろんな疑問符が僕の中で渦巻く。
だけどボクは、ただ胸の内から湧き上がる思いに身を任せて、その人にぶつかった。
「うわっ! なんだよいったい……」
ボクは、見つけたんだ。
その瞬間、ボクの心は真っ白になった。