あゆ支援SS 「迷子」(1/3)
「うぐぅ……遅いよ、祐一君……」
せっかくのデートに遅れてくるなんて……うぐぅ……雨も降ってるんだからはやく
きてよ〜。
「グスッ、うっ、うわあああーーん」
あれ?どうしたんだろう?むこうで女の子が泣いてる……
「おかあさん、おかあさーん!!」
おかあさん……なんだかその言葉を聞くとぎゅっと締め付けられる……周りの人は
見ないふりしてるけど……ほっとけないよ!!
「ねえ……どうしたの?」
「うっうっ……」
なんだか、泣いている姿が昔のボクにだぶって……ボクも悲しくなっちゃったよ。
「おかあさんがいないの……」
「えっ……」
この子もボクと同じなんだろうか……でも、それはボクの勘違いだった。
「いっしょにおかいものにきたのに……」
「うぐぅ……そうなんだ……安心したよ……ねえ、ボクと一緒にお母さん探さない?」
「……いいの……?おにいちゃん?」
うぐぅ〜!!ボクお兄ちゃんじゃないもん……これでも女の子だもん……
「うぐぅ……うん、いいよ。それとボクっていってるけれど、女の子だよ、ボク」
「あ……ごめんなさい……」
うぐぅ……そんなに男の子に見えるのかな……凄い悲しいよ……それからボク達は
その女の子が行ったお店や、商店街の周りを一緒に歩って探したりした……
『迷子』(2/3)
「う……みつからないよぅ……おかあさん……どこ……」
それからしばらくまたあるいて……それでも見つからなくて……
「ううっ……もう会えなかったりして……」
そんなことは無いよ、絶対に。
「ううん、そんな事無いよっ!!だって、一生懸命探せば必ず探し物は見つかるんだから!」
ボクはそれを誰よりも良く知っている、諦めさえしなければ必ず……
「あ、そういえば名前聞いてなかったね?なんていうの?」
「あ……わたしは……」
「はぁ、はぁ……良かった……探したわよ」
「あ、お母さん!!えーん……さびしかったよぅ……」
「もう、どっかいっちゃだめよ……本当心配したんだから……あ、どうもありがとうございま
した……この子と一緒に羽つきかばんの女の子が私を探してるって警察で聞いて……本当に
ありがとうございました……」
う、うぐぅ……照れるよ……でも、ボクってそんなに目立つのかなぁ……
「ほら、あゆ、お礼言いなさい」
え?
「うん、お姉ちゃん、ありがとう!!」
「あ、う、うん……良かったね……」
ボクと同じ名前なんて……ただの偶然……でも……
「あ、あのっ、もうその子……あゆちゃんの側からいなくなったりしないで下さいね!!
きっと……きっといなくなったら凄く悲しむと思いますから……」
涙が出そうなのをぐっとこらえて……急にこんな事をいうなんて変な子だと思っただろうか…
でも……
「……ごめんなさいね、心配をかけさせてしまって……約束するわ……この子の側を離れない
って、この子が1人で道を進めるようになるまでは……」
ボクの態度を見て、何か思ってくれたらしい……ボクって嫌な子だ……
『迷子』(3/3)
手を振って去っていく女の子と頭を下げるお母さん……ボクはそれをただうらやましそうに
眺めるだけしか出来なかった……っていきなりほっぺにあったかい物が……
「うぐぅ!」
「よ、お手柄だったな、あゆ」
たいやきをボクのほっぺにあてた祐一君がいた。
「ゆ……ゆういちくん!!うぐぅ……おそいよぉっ!!」
「悪かった……でも……偉かったな……」
「う、うぐ……うぐぅ!!」
ボクは持ってた傘を投げ出して祐一君に飛びついた。そして……いつの間にか雨が雪に
変わってる事に気づいて……今年最初の雪の中で……ボクはずっと祐一君に抱きついていた……
あゆ支援SS 「迷子」 完