315 :
琉一:
悪初音&あゆ支援SS『今日もたい焼きはまったりうまい』
「おら、おらぁ!」
今日も今日とて、悪初音は傍若無人。
そんな彼女に、どかんと思いっきりぶつかったりしたら、ただで済むはずがない。
が、どかんと、
「うぐぅ〜〜っ!」
ぶつかってしまうどじっこはいた。
「てめぇ、なにしやがる!」
悪初音にぶつかってきたのは、羽根のついたリュックを背負った変な少女。
手には袋一杯のたい焼きを抱えている。
「うぐぅ〜〜、どいてって言ったのにぃ」
「言ってねーぞ」
「うぐぅ、ごめんなさい」
「ああ? 人にぶつかっといて、そんなもんで済むと思っているのか?
なんだかうまそうなもん、持ってんじゃねぇか、一つよこせや」
「うぐぅ……これはボクの大好きなたい焼きだけど、一つあげるね」
しばし二人は、たい焼きを頬張る。
「なかなかいけるじゃねぇか」
「でしょ? この屋台のたい焼きは、ボクのお薦めなんだよ」
その時背後から聞こえてくる、「待てー」という声。
「はっ! 追っ手が来た!」
「追っ手ぇ? お前、一体なにやらかしたんだ?」
「ちょっとお金が足りなかったから、明日払うつもりで黙って持って来ちゃったんだよ」
「そりゃあ、万引きじゃねぇか」
「借りただけだよ。でもおじさんは、許してくれないんだ……」
「ふふん。なかなか見所があるじゃねぇか。よし、あたしに任せな」
「助けてくれるの?」
「おう。いいか、お前は全力で、捕まらないように逃げろ。
一時間したら、ここの公園に来な。で、そのたい焼き屋台はどこだ?」
316 :
琉一:02/01/18 06:17 ID:AFCMlsHi
「これこれここなんだよ」
「よし。おい、親父! たい焼き食い逃げ犯は、ここにいるぞ!」
「うぐうっ! 裏切られたっ!」
「おうっ、待ちやがれ! 嬢ちゃん、ありがとよっ!」
「なぁに、いいって事よ」
悪初音は唇についたアンコを、ぺろりと舌で拭った。
一時間後。
「うぐぅ……なんとか逃げ切れたよ……」
「おう、遅かったじゃねぇか」
「ああっ! ひどいよ、裏切るなんて! どうして……そ、それはっ!」
なんと悪初音は、件のたい焼き屋台を引いていた。
「へへっ、これさえあれば、いつでもたい焼き食い放題だぜ」
「うぐぅっ♪ ホントだね! これでもう、黙ってたい焼きをもらわずにすむよっ!」
「追いかけられる心配もないな!」
「じゃあさっそく作って食べようっ!」
「おうっ!」
「却下(一秒)」
いつの間にか現れた、水瀬秋子さんが、神速の却下術を見せる。
その後ろには、柏木千鶴さんと耕一も並んでいた。
「初音……、今ならいたずらですむから、返しに行きましょう」
「そうだぞ、いくらなんでも、屋台を取られたら、おじさんが困るだろ」
「なにいっ! あたしは、このうぐぅが困らないようにと……」
「ていっ!」
千鶴さんの当て身が、見事に悪初音に決まった。
「さ、返しに行きましょう。あゆちゃん」
「うぐぅ……ごめんなさい」
こうしてたい焼き強奪事件は、未然に(?)防がれた。
だが、この世に悪初音のいる限り、些細な事件のネタに困ることはない。
頑張れ悪初音。および、たい焼き屋の親父。