162 :
琉一:
『悪初音支援SS:途中で変わるシリーズ』
その日はみんな出かけていて、家には俺と(悪)初音ちゃんだけが残っていた。
「おう、耕一!」
「は、はいっ!」
初音ちゃんの呼び出しに、慌てて俺は駆けつける。
いつしか柏木家のヒエラルキーは、(悪)初音ちゃんが頂点に立っていた。
「なんだい、初音ちゃん?」
「風呂入るぜ、背中流しな」
「いいっ!?」
たちまち俺の脳裏に、妄想の嵐が駆けめぐる。
風呂? 背中? い、いや……それは確かに魅力的この上ない提案だが、
いいのか? 初音ちゃんの人格が乗っ取られている内に、そんな素晴らし……
いや、不謹慎なことをっ!
たしかにまぁ、見た目は小学生で通じる場合もあるかもしれない。
だけど仮にも高校生……胸とかいろんなところも女の子らしく成長とか……。
いかん、いかんっ! なにを考えているんだ柏木耕一っ!
お前はかわいいいとこを相手に、一体なにをするつもりだっ!
「ぐずぐずしてねぇで、さっさとこねぇかっ!」
「はいっ!」
思わず直立不動で敬礼してしまう。
振り向いた初音ちゃんの顔は、微かに赤らんでいた。
「いいか、あたしが呼んだら入ってくるんだぞ」
さすがの(悪)初音ちゃんも、着替えのシーンを見られるのは恥ずかしいらしい。
ドアの向こうから、微かに衣擦れの音がする。
自然と、初音ちゃんが生まれたままの姿になっていく光景が頭に浮かび……。
間もなくその裸身が拝めるのかと思うと……
俺は理性が鬼化するのを、抑えるのが精一杯だった。
163 :
琉一:02/01/18 03:07 ID:udFXcx++
「耕一、いいぞ!」
くぐもった声が、ついに俺を呼んだ。
俺は恐る恐るドアを開けて、脱衣所に入り込む。
ガラス戸の向こうに、初音ちゃんが座り込んでいる。
あの触覚をぴんと立てたシルエットを、見まごうはずがない。
だが、ぼやけていても、綺麗な肌色の背中は、恐ろしく魅力的だった。
いやいや、ここで理性がくじけるようじゃ、生で見たときにどうする!
俺は深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着けた。
さて。背中を流せ……って言っていたから、多分、脱がなくてもいいんだろう。
それに万一、誰かに一緒に入っているところを見られたら、言い訳しようがないもんな。 とりあえず、靴下だけ脱いでおくか……。
と、靴下を脱衣籠に入れようとした瞬間、目に飛び込んでくる初音ちゃんの下着。
微かに皺の生じた、ライムグリーンのブラとショーツ。
そろいのソックスまでも、かなりのエロスを持って、俺の理性破壊マシーンと化す。
手に取るのを必死に自制し、俺は引き剥がすようにして、目を逸らした。
靴下はてきとーにほっぽっといた。
ふぅ……危なかった。
いや、本番はこれからなんだが。大丈夫か、俺?
164 :
琉一:02/01/18 03:07 ID:udFXcx++
「失礼しまーす……」
「……あぁ」
ちょこんと座り込んだ初音ちゃんは、緊張して、固くなっているようだった。
両手でタオルを抱え込んで、胸の辺りを隠してはいるけど、
微かにのぞくふくらみや、背中の丸みだけで、十分すぎる破壊力があった。
ぽいと乱暴に、もう一枚のタオルと石鹸を投げ渡してくる。
「変なとこ触るんじゃねーぞ……」
そりゃないっすよ旦那。と言いたいが、言うわけにはいかない。
「うん……分かってる」
タオルの上で石鹸を泡立てる僅かな間、初音ちゃんの息が微かに乱れていることに
気づいた俺は、もう「どうすればいいんだ」と亡き親父にすがりたい気分だった。
「それじゃ……背中、流すよ」
「……おぅ」
小さく丸まった背中。日焼けの後一つない、白く、滑らかな肌。
なだらかな曲線を描く肩。髪の毛の隙間から覗くうなじは、微かに紅潮している。
細い腰の下には、可愛らしいお尻がちょん……っと、これ以上は、見てはいけない!
俺は無心に、作業として、初音ちゃんの背中を流すことを決意した。
そっとタオルを背に当てる。
「んっ……」
ぴくり、と初音ちゃんが体を縮込めた。
タオル越しにも柔らかい感触は伝わってくる。
布地が滑るたびに、初音ちゃんの体は小さな反応をする。
白い裸身が、白い泡によって飾られ、濡れ光り、何とも蠱惑的に輝く。
合間に混じる初音ちゃんの熱い吐息が、耳からも俺の理性を打ち崩そうとする。
165 :
琉一:02/01/18 03:08 ID:udFXcx++
ま、まずい。これは……いろんな意味で、非常にまずい。
だが、手は止まらない。
背中を隅々まで流し、肩の稜線を拭っても、まだ洗えるところがあるんじゃないかと、
俺の欲望が停止信号を打ち消してゆく。
脇……そう、脇も背中から繋がっているし、背中の一部だよな。
そんなことを言っていたら、全身くまなく洗えてしまうのだが、
今の俺はそんなことに気づかない。いや、気づかないふりをしている。
そして、初音ちゃんも止めようとはしないことが、拍車をかけていた。
俺の手が肩胛骨を滑り降りて、脇に触れる。
「ひゃあっ!」
初音ちゃんの体が大きく跳ねた。
「わぁっ! ご、ごめん! ごめんなさい! 調子に乗りすぎましたっ!」
「え……?」
初音ちゃんが、恐る恐る振り向く。
なぜだろう。その困惑の大きく浮かんだ、無垢な瞳は。
てっきり「図に乗るな、おらぁ!」と言われることぐらい、覚悟していたのに。
いや……もっとまずい状況なんじゃないかと、俺は心の奥で悟っていた。
166 :
琉一:02/01/18 03:08 ID:udFXcx++
「え、なんで……耕一お兄ちゃん……? え? それに、どうして、
私、裸で、お風呂に……?」
状況が飲み込めないらしく、うわごとのように繰り返す初音ちゃん。
あの……もしかしなくても、ごく普通の初音ちゃんでしょうか?
返ってきた返事は、
「きゃああああっ!」
と言う悲鳴だった。
ついで駆け込んでくる足音は、死刑執行人のものだ。
どうして皆さん、タイミング良く帰ってきているのでしょうか?
「初音っ!?」
「耕一、あんた……」
「……」
ああ、みんなの戸惑う視線が、みるみる怒りと軽蔑に変わってゆく。
「いや、その……これには色々とわけが……」
なんて弁解は、もちろんなんの効果もなかった。
俺は庭の大きな木にぐるぐる巻にされて吊されながら、
そう……これはいつものバッドエンドさ。
もう一回やり直せば、ハッピーエンドルートへの選択肢が……。
という妄想に浸り、現実逃避していた。