>>127 初音ちゃんが大きくお茶の染みがついたエプロンを脱ぐと、その下のスカートや上着までひどく濡れていることがわかった。
「こりゃあもう着替えなくちゃ。――ほんと、ごめんね初音ちゃん。俺さっきぼーっとしてたからさ」
「ううん、お兄ちゃんのせいじゃないよ。初音がぼーっとしてたから……」
しゅんとした表情で、初音ちゃんがそう謝った。なんだかてっぺんのクセっ毛までもがうなだれているように見える。
初音ちゃんはものすごく優しくて、なにか失敗があっても誰か人のせいにしたりは絶対にしない。「お兄ちゃん」にならなおさらだ。
だから俺は「お兄ちゃん」として、こんな時は誰よりもこの子に優しくしてあげないといけない、と思う。
「――初音ちゃん」
染みを拭う手を止めて、俺は初音ちゃんの体を後ろから抱きしめた。
「おっ、お兄ちゃん……!」
「そのまんまだと、冷えて風邪ひいちゃうよ? 片づけは俺がしておくから、部屋に戻って着替えておいで」
「で、でも……」
「デモもストもないの。――それとも、俺が着替えさせてあげよっか?」
そう耳元でささやいて、スカートの裾に手をかける。
すると、初音ちゃんの顔はうつむいたままもの凄い早さで紅く染まっていった。
「え、あ、あ……」
「そういやこうして見ると、この濡れ方はなんかおもらししたみたいに見えるなあ。――下着も替えてあげようか、初音ちゃん」
すると、初音ちゃんは――
「………」
真っ赤な顔のまま、こくん、と頷いた。
続こう