そのまま、私と由綺はもつれ合って床に倒れ込んだ。
周りには私たちが脱ぎ散らかした服が、蛍光灯の下で妙に生々しく光っている。
二人とも、床の冷たさなんて気にも留めなかった。
小鳥についばまれるような愛撫を受けて、全身の性感がうずいていた。
「ほら、理奈ちゃんのここ…舌ですくってもすくっても…どんどん溢れてくる」
これだけの淫蕩を尽くしながら、由綺は無邪気そのものだ。
私の羞恥を一方的に引き出しておいて、自分は聖女みたいに微笑んでいる。
頭がじんとしびれている――もう、何も考えたくない。
お互いの身体に唾液と粘液を丹念にまぶしながら、私たちは昇りつめていった。
快楽を貪欲に引き延ばしながら、お互いの身体から悦楽を引き出してゆく。
「ああ、由…綺ぃ……」
「あ…くっ…、理奈ちゃん…理奈ちゃん…」
由綺のなかに埋めこんだ指が、食いちぎられそうなほどきつく締め付けられた。
二度、三度…。それに合わせて、由綺の身体が何度も揺れる。
そして、ひときわ大きなしびれが、脊髄をせり上がるように押し寄せてきた。
視界が漂白されるほどの快美感に呑み込まれて、私の意識はあっけなく弾け飛んでいた。
――体中がだるい。さっきの名残が、身体の奥で熾火のようにくすぶっている。
すぐ隣から、まるで何もなかったかのような安らかな寝息が聞こえた。
「由綺……」
この娘が目を醒ましたら、言ってやりたいことと訊きたいことが山ほどある。
けだるい身体を起こして、肩を揺すってやろうと由綺に手を伸ばす。
――そして、もう少しだけこのままでいることにした。
あの秒針がもう一回りする間だけ、由綺の寝顔を見ていよう。
なぜだかそう思った。
私は寝た子の顔に唇を近づけて…。
少し考えてから、額にそっと口づけた。
<FIN 8/8>
<いろいろ台無しなプロローグ>
「お、青年。ちょうど良いところにきた。由綺ちゃん見なかったか?」
「え? 英二さんのとこでレッスンじゃなかったんですか?」
「いや、俺の知り合いが送ってきた薬をさ。由綺ちゃん間違えて飲んじゃったみたいなんだよね」
「英二さん…頼みますよ。危険なクスリじゃないんでしょうね?」
「依存性、中毒性はまったくない…はずだ。この瓶に入ってたんだが」
「RR配合粉末セイカクハンテンタケ…ですか」
「抑圧されてる感情が多少表に出てくる程度だよ。普通ならな」
「RRって何の略なんでしょう」
「なんだっけ。リアル…なんとかだったかな。それより由綺ちゃんの方が心配じゃないか?」
「それはそうですけど。なんで英二さんがそんな妙なモノ持ってるんですか?」
「芸術家はクスリに頼るもんだっていう俗説があるじゃない。
俺はそういうの感心しないんだけど、外国の知り合いが気を利かせたつもりらしくってさ」
「じゃあ、早く探しましょうよ。由綺に何かあったら大変だし…」
<いろいろ台無しなエピローグ>
由綺「ごめんね冬弥君、そういうことだから」
どういうことかサッパリ解らないが、由綺は理奈ちゃんの腕にしがみついていた。
理奈「私、由綺が好きなの」
理奈「私、由綺と寝たの──」
冬弥「なんですと…!?」
由綺「私、まだ冬弥君のこと“も”好きだから…」
由綺「冬弥君に片思いされてたあの頃に戻っただけ…」
冬弥「そ、そんな…」
理奈「初めて、この娘以外何もいらないって思えたの…」
由綺「私、強引に、乱暴に、我が侭に、理奈ちゃんを好きになるよ……」
英二「どうやら遅かったようだな。青年」
冬弥「どうすればいいんだ!!」
しょうもない上にオチてないけど終わりw