260 :
琉一:
『今にして思えば、あれは絶対兄さんの仕業よね』
「聞いてオガタリーナ」
「……なんのマネよ」
妙な調子で話しかけてきたのは、河島はるかさん。
同じ作品のキャラだけど、ゲーム内での面識のない彼女に
そんなフレンドリー(?)な呼びかけをされるいわれはないのだけど。
「あそこにいる人に、そういう風に呼びかけろって言われて」
指さした先に、通路の奥に逃げ込む白髪頭が。
……兄さん、後で覚えてなさい。
「で、なんの用? 私、試合中でちょっと忙しいんだけど。
支援画像用のグラビア撮影がすぐ後にあるのよ」
今頃、冬弥くんやカメラマンさん達は、準備で大わらわのはずだ。
「3回戦進出を祈って激励するために」
あら、わざわざ来てくれるなんて、いいとこあるじゃない。
「送られてきたメッセージを読み上げます」
「あなたがするんじゃないの!?」
彼女はしれっと無視して、取り出したハガキを読み上げる。
「東京都にお住まいの藤井冬弥くん」
「冬弥くんが!?」
「の、友人の河島はるかさんからのメッセージです」
「……結局あなたじゃないの」
「『ん……頑張って』」
「……それだけ?」
「チョコレートのおまけ付き」
どこからともなく彼女は板チョコを取り出し、ハガキと共に私に差し出す。
「……ありがと」
「さらにこのシルクハットから、とげタイツさんやら、なにやらがうじゃうじゃと」
(1/3)
261 :
琉一:02/01/13 18:15 ID:3ovtgtcX
いつの間にか手にしたシルクハットから、ウサギやらネコやら
とげタイツさんやらが、通路にあふれるほど出てくる。
どこに入っていたのよ、こんなにっ!
「ちょっと、ちょっとっ! もういいわよっ!」
「一匹どうぞ」
「いらないわよっ!」
さながら追っかけ軍団のごとく、私にまとわりついてくる生物たち。
「理奈ちゃーん、そろそろスタジオに入って……うわ、なんだこりゃ?」
「あ、冬弥だ」
「はるか、お前の仕業か!? うわ……こら、噛みつくな! トゲでつつくな!」
たちまち冬弥くんに群がる謎の生物たち。
「ごめん、冬弥くん! 後始末お願い!」
とてもかまってはいられなかったので、冬弥くんを人身御供に、スタジオに逃げ込む。
「理奈ちゃん、準備できてるよ。……どうしたの? 息切らして」
「……ちょっと」
なんだか、あまり口にしたくも、思い出したくもない光景だった。
結局あの人、なにしに来たのよ。敵の刺客? 兄さんのいたずら?
……あり得る。
「大丈夫? もう入っても平気かな?」
「ええ、お願い。……大丈夫、勝つわよ!」
そうよ。あんなとぼけた人だって3回戦に進めたんだから。
強敵続きだけど、由綺の分まで勝ってみせる!
あ……冬弥くんの悲鳴が聞こえる。
冬弥くん。あなたの犠牲は無駄にしないからねっ!
「始めるわよっ!」
そして、私を中心にスタジオが動き出した。
(2/3)
メガネ外すのは反則?<<南さん>>にいっぴょー
263 :
琉一:02/01/13 18:16 ID:3ovtgtcX
謎の生物たちをシルクハットに詰め込み終えた俺は、はるかを睨んだ。
「で……なにしに来たんだよ、結局」
「あはは。冬弥、傷だらけ」
「笑い事かっ! 特にあのとげタイツって生物は一体……」
「深く考えない方がいいよ」
「いやぁ、河島くん。青年。お疲れさま」
「ども」
「……英二さん。あなたの差し金ですか?」
「うん。ちょっと理奈も長丁場で疲れていたし、気分転換と気合を入れるのを兼ねてね。
丁度、河島くんが通りがかってくれたんで、これ幸いと」
「……それであんな生物を、持ってきたんですか」
「ん? いや、あれは河島くんの私物だが?」
「え゛……?」
はるかがシルクハットを素早く奪い返し、つい、と目を逸らした。
「はるか……?」
「冬弥、呼んでるよ」
確かにスタジオから俺を呼ぶ声がする。
「いってらっしゃい」
「頑張れよ、青年」
仲良く手を振るはるかと英二さん。……絶対、つるんでる。
「……後でじっくりと聞かせてもらうからな」
だが、結局いつものように煙に巻かれ、シルクハットの謎は永遠に解かれなかった。
(3/3)
264 :
琉一:02/01/13 18:16 ID:3ovtgtcX
はるかが変なことをやっていますが、
元ネタは、リーフファイトTCGの『隠し芸』からです。
とげタイツさんが分からない人は、『お嬢様は魔女』をプレイして下さい。
最初はこんな(↓)描写もあったけど、マニアックなので削除しました。
あう、ハロが出てきて私の気力をマイナス10。
(某スパロボにおいて、『激励』は味方の気力を上げ、『脱力』は敵の気力を下げます。
その際、画面上にハロが出て、ぱくりとユニットをかじる描写がありました)
<<理奈っち>>(個人的呼称)の「あう」という声は、可愛らしくていいのですが。
あ、これで一票です。頑張れオガタリーナ。
萌え支援じゃないけれど、まぁ、こんなのもありかということで。
ついに、本人に『聞いてオガタリーナ』と言ってみたいという
夢を叶えることができました。ありがとう、はるか。
あ、だれかグラビア撮影な理奈っち描いてくれないかな……。
では失礼。