764 :
オガタリーナ230:
それは、狂おしいほどのプレッシャーとの戦いだった。
たとえトップアイドルと言えど、人としては一人の少女に過ぎないのだ。
そして今、理奈は控え室でたった一人だった。
英二、由綺は仕事が長引き、まだこちらに向かっている
途中であった。
心配そうに連絡してきた由綺に理奈は「大丈夫よ」と笑って
答えたが、今こうして一人になってみると、自分が決して強い
女の子などではないという事、たくさんの人に支えられていると
いうことが肌で感じ取れた。
ぶるっ、と一つ身震いする。
「……ダメよ、こんなんじゃ、兄さんや由綺に笑われちゃう」
そうつぶやいて大きく首を振る。
しかし。
相手の手強さ、相手陣営の勢い、長い芸能生活で
そういったものに対する感が強くなっている理奈に
とって、どんなに強がっても胸の中の不安を覆い隠す
事はできなかった。
「あはは……ダメだな私……弱い女の子で……」
自嘲気味につぶやく理奈の瞳から、一筋の涙が流れる。
その時、控え室の扉がノックされた。