七瀬支援SSその11(1/2)
しんしん、しんしん、しんしん
雪が、降り積もっていた。
「ねぇ、浩平」
浩平の部屋、その窓際で頬杖をついて窓から外を眺めていた七瀬が、振り返る
ことなく声をかける。
「んー? どうした七瀬」
雑誌を眺めるともなく眺めながら、同じように顔を上げず、浩平。
「もし、もしもよ?」
「あん?」
「もしも、今の私が…… そう、今の私が幻だったらどうする?」
「なんだそりゃ」
予想外の問いに、留美に顔を向ける浩平。だが留美は相変わらず振り返らない。
「浩平が戻ってきた今この時間に、私はもう居ないのだったら」
「え?」
「今の私がただの幻に過ぎなかったら…… あなたはどうする?」
「お、おい」
不安になったのか、浩平は留美に物問いた気な視線を送る。
だが、留美は振り返らない。
七瀬支援SSその11(2/2)
しんしん、しんしん、しんしん
雪は、尽きることなく降り積もっていた。
「ど、どういうことだよ、それ」
「別に……」
留美は、相変わらず振り返ることはない。
その表情はどのような色を映しているのか、浩平には判断がつかなかった。
「別にって…… おい、どうしたんだよ留美」
浩平が留美の名前を呼ぶ。
そして……
「冗談、よ」
振り返り、留美は笑みを浮かべた。
安堵を押し殺したような表情で、それでもため息を隠せない浩平。
「悪い冗談だ」
「そうね」
「悪い冗談よね、こんなの」
しんしん、しんしん、しんしん
降り積もる雪。
再び窓に向き直った留美の笑みは、まるで雪のように儚いものだった。