葉鍵板最萌トーナメント2回戦Round85!!

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829MITUKI ◆XqniXHe2
七瀬支援SSその11(1/2)

 しんしん、しんしん、しんしん

 雪が、降り積もっていた。

「ねぇ、浩平」

 浩平の部屋、その窓際で頬杖をついて窓から外を眺めていた七瀬が、振り返る
ことなく声をかける。

「んー? どうした七瀬」

 雑誌を眺めるともなく眺めながら、同じように顔を上げず、浩平。

「もし、もしもよ?」
「あん?」
「もしも、今の私が…… そう、今の私が幻だったらどうする?」
「なんだそりゃ」

 予想外の問いに、留美に顔を向ける浩平。だが留美は相変わらず振り返らない。

「浩平が戻ってきた今この時間に、私はもう居ないのだったら」
「え?」
「今の私がただの幻に過ぎなかったら…… あなたはどうする?」
「お、おい」

 不安になったのか、浩平は留美に物問いた気な視線を送る。
 だが、留美は振り返らない。
830MITUKI ◆XqniXHe2 :02/01/04 07:13 ID:I0Hc2s2r
七瀬支援SSその11(2/2)

 しんしん、しんしん、しんしん

 雪は、尽きることなく降り積もっていた。

「ど、どういうことだよ、それ」
「別に……」

 留美は、相変わらず振り返ることはない。
 その表情はどのような色を映しているのか、浩平には判断がつかなかった。

「別にって…… おい、どうしたんだよ留美」

 浩平が留美の名前を呼ぶ。
 そして……

「冗談、よ」

 振り返り、留美は笑みを浮かべた。
 安堵を押し殺したような表情で、それでもため息を隠せない浩平。

「悪い冗談だ」

「そうね」
「悪い冗談よね、こんなの」

 しんしん、しんしん、しんしん
 降り積もる雪。
 再び窓に向き直った留美の笑みは、まるで雪のように儚いものだった。