まだまだぁ! ……ってこれはちょっとヤバイか?(汗)
七瀬支援SSその7(1/2)
「『剣の暴君』(ソードタイラント)!!」
裂帛の気合と共に、激しい衝撃波が走る。
『狂戦士』七瀬留美の持つ、必殺の異能力。
“暴君”の名が示す通り、すべてを破壊しすべてを無に帰すほどの威力で
あった。
だがその猛々しい烈風も、対象となった少女を切り裂くことはできない。
軽く舌打ちをし、手にした剣を構え直す留美。
「『剣聖』と称されるだけのことはあるということか」
必殺の異能力を軽々とかわされたにも関わらず、留美の声音にはどこか嬉々
とした色が混じっていた。
『狂戦士』七瀬留美が『剣聖』と称される少女――川澄舞を尋ねたのは、
正に剣を交わすためであった。
初めて会う『剣聖』はひどく無愛想な少女であり、突然の手合わせの誘い
にも無言のまま応じた。
そしていま、こうして殺し合っている。
「くっ!」
無言のまま切りかかってくる『剣聖』
その太刀筋も尋常ではなかったが、速度が常軌を逸していた。
七瀬支援SSその7(2/2)
「ちょ、ちょっと、何なのよこのスピードはっ!」
思わず叫びながら、それでも何とかかわしきってしまうあたり、『狂戦士』と
恐れられる七瀬留美の実力を物語っている。
だがこのスピードである。このまま受けに回ればいずれ不覚を取りかねない。
『剣聖』の駆る移動のための異能力。
名前はない。
『神歩行』(ブリンクスルー)という名が畏怖と共に異能者たちの間で語ら
れるのは、まだ後のことである。
「冗談じゃ…… ないわよっ!!」
ぎぃぃん!
甲高い音を立てて、留美の持つ刀が今正に振り下ろされんとしていた
『剣聖』の刀と交差する。そのまま後方に弾き飛ばされる『剣聖』。
危なげなく着地するも、その瞳には驚きが見て取れた。
自らの駆る移動用異能力の速度に反応し、あまつさえ剣の一振りだけで
弾き飛ばされたのだ。
剣を構える『剣聖』の雰囲気が、常人には判断できないほど微妙に、変質する。
「やっと本気になったということね」
楽しそうに。本当に楽しそうに、留美は呟く。
そして自らも剣を構え直し、異能力を高めた。
『剣聖』と『狂戦士』
後に剣術における双璧と称されることとなる両者の戦いは。
まだ、始まったばかりだった。