SS統合スレ♯8

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185空 (9/20)
暗いへやだった
とびらからさしこむ光が、かすかにへやを照らしていた
まん中にベッドがあった
そこにあなたはいた

白いぬのをかぶせられて

誰かがぬのをとってくれた
わらっていた
たぶん、そうおもった
うでに抱いた名雪があなたをつかみたそうに手をのばしていた

でも、あなたはその手をとってくれない

あっけなかった
けむりとともに空にきえていった
たくさんの人がいた
あなたが愛されていることがわかった

でも、あなたは私のそばにいてくれない

たくさんの人がきてくれた
たのしかった
そのうち、ひとりひとりと帰っていき
ここには

私と名雪だけがのこされた
186空 (10/20):02/01/17 21:04 ID:eNBAs9Tn
一生懸命、そうじをした
一生懸命、すいじをした
一生懸命、せんたくをした
一生懸命、名雪のめんどうをみた

いつでも、あなたが帰ってきてもいいように

チャイムが鳴るのがたのしみだった
きっとあなたが帰ってきたんだと
いそいでげんかんのとびらを開ける
でも

あなたは、いつもそこにいなかった

まどの外をながめていた
とてもきれいな空だった
もっとちかくでみたいとおもった
名雪をつれてそとにでた

この子を残してはかわいそうだから

かぜがふいていた
とてもたかいところだった
あぁ、ここなら空がちかくにみえる
でも

もっとちかくでみたい
187空 (11/20):02/01/17 21:06 ID:eNBAs9Tn
いっぽづつ、すすんでいく

……マ

空にちかづいていく

……マ

さくがあった

……マ

なんでこんなものがあるんだろう

……マ

空はこんなにちかいのに
188空 (12/20):02/01/17 21:07 ID:eNBAs9Tn
のりこえる

……マ

その先にみちはなかった

……マ

空はつづいていた

……マ

もっと空にちかづきたいんだ

……マ

だから、このあしをひとつ先にだせば……

「ママァ〜!」

鳥が羽ばたく音がした
遥か下に車のクラクションの音がした
歩道の闊歩する人々の足音さえも聞こえるようだった
何ヶ月も止めていた時間が動き始めた瞬間だった
189空 (13/20):02/01/17 21:07 ID:eNBAs9Tn
「ママッ」

腕に重みを感じる
とくん、とくん、と生きる鼓動を感じる
あたたかな体温を感じる
ちいさな口から吐き出す息を感じる

「な……ゆ……き……」

その子の名を呼ぶ

「な……ゆき……」

もう一度

「なゆき……」

もう一度

「名雪……」

もう一度

「……名雪っ!名雪、名雪、名雪……名雪」

何度も

その名前を自分の中で確かめるように何度も言い続けた
190空 (14/20):02/01/17 21:08 ID:eNBAs9Tn
「……ママァ」

名雪が腕の中でぐずっていた

「……いちごぉ」

「えっ……」

ん、イチゴか?よし、了承だ!

「そうか……」

第一、俺がお前たちの約束を破ったってことないだろ?

「そうよね……」

あなたは私達の約束を破るような人ではなかった
でも、もうあなたはいない
このままだと、あなたは名雪との約束を破ってしまう
だから

「えぇ、イチゴね……」

私が守ってあげないと