Girl Meets Girl…女の子カップルスレ2
【あたしだけのみゅー】(1)
(繭×七瀬/百合/ギャグ/ほのぼの/ちょっとだけえっち?)
「あーもー、いい加減にしてよねっ!」
「みゅー…」
ついに怒鳴られた繭は不承不承七瀬のおさげから手を離した。しかし、その目が次第に潤んでいく…。
「こ、こら、泣くなーっ!」
わたわたと手を振って慌てる七瀬。
「…わかった、私も乙女だっ! 好きなだけ触りなさいっ!」
腹を決めたのか、あぐらを組んでどっかと座り込むと、ぐっと腕を組んで言い放つ。その瞬間ぱっと笑顔に戻った繭に少しは不信感を持ってはどうか。
「いやあ、惚れそうだぜ。お前、『漢』だな…」
からかうような声でそんなことを言い放つ浩平。
「そこ! ちゃちゃ入れるなっ!」
きっ! とそちらを振り返った七瀬は、きょとんと瞬きした。
「どしたの?」
【あたしだけのみゅー】(2)
「うごーっ…うごーっ…!」
弁慶の泣き所を押さえてのたうちまわる浩平は、涙に霞んだ目で犯人を探した。ひきつった笑顔を浮かべて硬直している瑞佳の視線の先に立っているのは…繭。
七瀬を独り占めするかのようにそっと後ろから抱きしめて、にこにこと無邪気な笑顔を浮かべている。どうやら、一切容赦のない一撃を浩平に食らわせたのは彼女らしい。しっかり七瀬の死角から。
「お…お…おい、繭…?」
怒りと戸惑いに顔を引きつらせ、震える指で繭を示そうとすると、彼女は突然、脅えた表情を浮かべて後ずさった。
「? よくわからないけど怖がってるじゃないの! なんでこの子を睨み付けるのよ!」
繭を庇うようにして浩平を睨み付ける七瀬。ぎゅっと抱きしめられた腕の中で、ほとんど昇天寸前の至福の微笑みを浮かべる繭。むろん、七瀬の死角に入ったことはまたもや計算済みである。
「いや…だって…」
唖然として弱々しい声で抗議をしようとした浩平は、こちらを振り返った繭の凄絶な笑顔に、「ひっ!」と掠れた声を上げて硬直した。
【あたしだけのみゅー】(3)
にこにこにこ。
『みゅーをいじめていいのはあたしだけだよ?』
にこにこにこ。
『武士の情けはかけてあげたけど、次は「急所」だよ?』
にこにこにこ…。
「…なんでもないです」
無言の圧力に圧倒され、小さな声でそう答えて白旗のようにひらひらと手を振る浩平…。
「なんなのよ…ねえ?」
振り返った瞬間、泣きそうな顔を浮かべて七瀬にしがみつく繭。
「ほらほら、怖がらなくていーんだってば」
優しく語りかけている間はよかったが、
「あいつも本当は悪い奴じゃないよ?」
浩平を弁護するような台詞を言ったとたん、浩平を見つめる繭の目に静かに嫉妬の炎が燃え上がり始める…。
「いや! 俺、悪い奴だから! それでいいからっ!」
うわずった声を上げる浩平。必至の形相でこくこくと頷く瑞佳。七瀬は、ただ、呆れた顔をして首を傾げた。
【あたしだけのみゅー】(4)
「ほんとに…好きなだけ触っていいの?」
おずおずと尋ねる繭。
「なに、今更遠慮してるのよー。その代わり、五分だけだよ?」
苦笑して頷く七瀬。
(しょうがないわね〜。本当、この子って年に比べて子供っぽいんだから…)
さわさわ…おずおずとお下げを触り始める繭。
七瀬は、その二人の姿を、やけに心配そうに見つめている浩平と瑞佳に気づいて微かに首を傾げた。しかも、なんだかいつもよりかなり距離をおいてのようである。
「…?」
次に、なんだか、妙な違和感を覚えた七瀬はまたもや首を傾げた。いつもの甘えてくいっと引っ張るような感じと微妙に違う。なんだか、優しく慈しむような…。
(あ…この子もちょっと大人になったのかな? いや、ほんとのとこ、引っ張られると痛いんだよねー。)
そう思いついて、ほっと、胸をなで下ろす。
しかし、次の瞬間、背筋をぞくりと寒気が走った。ぎょっとして振り返る。
(い、い、い、今この子、私の髪の毛にキスしてなかった?)
「どうしたの? ねえ、じっとしててよー」
そこに見えたのは子供っぽく唇を尖らせた繭の不満そうな顔。
「あ、ごめん、ごめん」
(気のせい気のせい…。)
だが、そう言い聞かせながら顔を戻した七瀬の後ろでは、うっとりした表情の繭が再びその髪の毛に口付けていた。