「く!団体さんが歩いてやがる!」
フロントガラスを見つめる浩之がいまいましそうにつぶやいた。
「どいてくれぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
窓から身を乗り出して発した彼の怒声は、担架で運ばれる怪我人を含めたその団体さんの耳に届いたらしい。
しかし、それは後ろにいる敵の耳にも届いてしまったらしい。その声に驚いたのか、グリフォンがびくっ、と身を震わせる。
「あうっ!」
その反動で、さらに沙織が引っ張られる。ひときわ激しい苦悶の表情を浮かべた。
「沙織ちゃん!」
沙織のすぐ隣にいるにもかかわらず、祐介は動けずにいる。
電波の射程内ではあるが、今ヘタにグリフォンに干渉しようものなら、グリフォンは倒せても沙織は落とされてしまう。
しかし、引っ張られる沙織を押さえつけても、沙織の痛みが増すだけだ。それはできない。
「っっっっっっ……!……ゆ、祐くん、助けて……」
既に、声にならない声を上げながら、それでも沙織は祐介に助けを求める。
ティリアも、サラもこの状況では魔法を放つに放てないようだ。苦々しい表情を浮かべている。
「スピード落とすか!?」
浩之が声を上げた。
「駄目だ、うかつにスピードを落としたら突っ込まれてやられてしまう。そのまま走ってくれ。」
「ちょ、ちょっと祐介さん……!」
エリアが非難、ととれる口調で言う。
「いいんだ。考えがある。」
言って、祐介はバッグから小ぶりのナイフを取り出した。
「沙織ちゃん、ごめんっ!」
そう叫んで、祐介は沙織の頭にまっすぐナイフを振り下ろす--------!