葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 Round62!!

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727かんにゃ
おかあさん・・・・・・
それはみちるにとって、遠くから眺めるだけの存在だった・・・・・。
車に乗って商店街へ買い物に来るあの人を、道端で見つめることしかできなかった。
おかあさん・・・・・・
とっても暖かいことば。でも、それ以上に冷たい悲しさが胸一杯に広がる。
みちるは、あの人のお腹の中から出る前に、あの人の子供じゃなくなっていた。
産声すらあげることなく、おかあさんやおとうさん、
そしてお姉ちゃんに抱きかかえられることもなく。
そう、美凪を「お姉ちゃん」って呼ぶこともできなかった。
そして、お腹の中でしか生きていられなかったみちるは、
みんなを不幸にしただけだった。みちるは何の為に存在したんだろう?
お腹の中にいた頃のほんの僅かな生に何の意味があったんだろう?
みんなを不幸にしただけ。本当にそれだけ・・・・・。
だけど美凪は・・・・そんなみちるの事を大切にしてくれる。
みちるのせいで、みちるが生まれてこなかったせいで、辛い思いをしてきたのに。
ずっと友達でいてくれる・・・・・。
でもね、本当は美凪のこと、「お姉ちゃん」って呼びたかったんだ。
遠くから眺めることしかできないあの人を、「おかあさん」って呼びたかった。
だけど、みちるは悪い子だから・・・・・。みんなを悲しませる悪い子だから・・・・・。
そんなわがまま言っちゃ、駄目だよね。駄目なんだよね・・・・・・。
だから、みちるは美凪の友達として側にいてあげるだけで・・・・、
側にいられるだけで良かったんだ。
728かんにゃ:01/12/10 05:33 ID:ZEJzp8l8
美凪の家にご飯を食べに言った時もそうだった。
みちるは美凪の友達・・・・・。友達の家でご飯を食べさせてもらっただけ。
そう・・・・・みちるの事で、美凪やあの人を悲しませたくなかったから、
悲しい思い出を掘り起こしたくなかったから。
頑張って、友達としての、みちるでいることにしたんだ。

でもね・・・・・・

「そう・・・・みちるっていうの・・・・。とても良いお名前ね」
「え・・・・・」
「あなたみたいな娘が美凪の妹にほしかったわ・・・・・」
「・・・・・・・」
「ねえ・・・・今日、ここにいる間、あなたの事を本当の娘だと思ってもいいかしら?」
「えっ・・・・えと・・・・・・」
「ダメ・・・・・・かしら?」
「んにゅ・・・・・・」
「みちる・・・・・あなたが好きなようにすればいいのよ。ねっ、お母さん」
「う、うん・・・・・・」
「じゃあ、私のこと、おかあさん、って呼んでくれるかしら?」
「え・・・・うん・・・・・・。・・・・・・・・・・・お・・・・かあ・・・さん・・・・・・・・。
・・・・・おかあさん・・・・・」
「ふふ・・・・なあに、みちる」
「えと・・・・・・・にゃはは・・・・・」
「それじゃあ、私は、お姉ちゃん、だね」
「・・・んに・・・・・・お、お姉ちゃん・・・・・・・。にゃは・・・は・・・」
「これで、みちるは私たちの家族よ・・・・・。ねっ、みちる・・・・・」
「・・・・・・・・・・うん」
729かんにゃ:01/12/10 05:34 ID:ZEJzp8l8
涙が止まらなかった。こんな時に泣いちゃあ駄目なのに・・・・。
笑っていなきゃ駄目なのに・・・・。後から後から涙があふれてきた。
そんなみちるを・・・・・二人は暖かくて優しい目で見つめてくれてた。
本当の家族みたいに・・・・・・・・。

あのね・・・・・、みちるはね、ほんの少ししかこの世に生きてなかったけど、
みんなを不幸にしただけかもしれないけど、
それでもね、おかあさんの子供として生を受けて良かったよ。
お姉ちゃんの妹として生を受けて良かったよ。
ものすごく短い一生だったけど、本当に良かったって、思えるから。
みちるは、幸せだったよ・・・・・・。

ありがとう、おかあさん・・・・・。ありがとう、お姉ちゃん・・・・・・。