>>83の少し前の出来事
年の瀬も押し迫る12月9日。
ついに、この日がきた。
『葉鍵板最萌トーナメント』
由綺さんは、一回戦で三本の指に入るほどの接戦の末、
『東鳩』の姫川琴音さんに僅かの差で負けてしまった。
でも私は知っている、戦いの舞台から降りる時の彼女の素顔を。
愛する人の胸の中に還っていった由綺さんは、嬉しそうだった。
それは争いを好まない彼女らしい幕引きだったと思う。
…もし、藤井さんを賭けての戦いなら、由綺さんはどうしただろうか。
ふと、そんな不謹慎なことを考えてしまう。
そんな私の相手は『痕』の柏木千鶴さん。
冷静に判断して、私に勝てる可能性はほとんどないと言っていいだろう。
…なぜ私は、こんな勝ち目の薄い戦いをしなければならないのだろう。
…なぜ私は、こんな非効率的な試合に出場しなければならないのだろう。