葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 Round59!!
123 :
名無し忍者:
――岡田支援SS
その時、あたしは意味不明の文字の羅列を目の前に絶望していた。
漢字で構成されたその羅列に、「レ」やら漢数字やらがふってある。
要するに、漢文というヤツだ。
黒板には自習の二文字、本来自習というのはもっと楽しいものであるはず。
なのだけど、いかんせん提出課題と銘打たれてしまってはやらざるを得ない。
周りは黙々と手を動かしている。
少なくともあたしよりはこの文字共を理解しているらしい、羨ましいことだ。
そもそもなんで日本人なのに漢文を学ばないといけないのか、同じ中国語なら
現在まかり通っている言語を学ばせれば良いのに。一体なんの役に立つのやら。
そんなことを言っても仕方が無いので、もう少し建設的に思考を巡らせる。
漢文が解らない、提出課題が終らない、点数が貰えない、補修。
これは避けたい。補修を受けるほど暇人じゃない。
ならば、答えは一つ。
人のを写すのが一番てっとり早い。
124 :
名無し忍者:01/12/05 04:48 ID:bKu12i+U
方向性が決まった以上、具体案を練ることにする。
写す以上は正当でなければいけない、共倒れはゴメンだ。
ならば、一番の候補は保科ということになるのだけど、まぁ、考えるまでも
ないわね。却下。
次は……男子には頼みにくいしなぁ。やっぱり女子から選ぶしかないか。
あ、神岸がいるじゃん。あの子良い子っぽいし、確か成績も悪くなかったはず
よね。よし、神岸に頼もう。
思い立って教室を見渡したものの、あたしの目に入ったのは何やらジェスチャ
ーで何かを伝えようとしている神岸だった。
視線を追うと、その先には佐藤。
しばらく両者を眺めていたのだけど、どうやら交渉は決裂した模様。まぁ、誰
しも考えることみたいね。
やっぱり頼れるのは友達しかないか……と、この友達がどうにも頼れそうに無
い。松本は早々にリタイヤ(睡眠)しているし、元々期待してないけど。それよ
り期待の吉井に至っては集中していてこちらに気付いてくれそうにない。
125 :
名無し忍者:01/12/05 04:49 ID:bKu12i+U
10分程ボケっとしていると、机につっぷす者が増えてきた。
それでも再び教科書とにらめっこするヤツや、諦めて寝るヤツしかいない。
なんで誰も移動して人に訊きにいかないのよ!
この全員が机に向かっているという状況を打破するのは、非常に気不味い。
多分、みんな誰か立ってくれないかと思ってるに違いない。
一人動けば、みんな動きはじめるハズ。
こんなのが解ける方がおかしいのだ、絶対そうに決まってる。多分……
仕方が無いのであたしももう一度プリントに向かう。解るとこくらいは書いて
おくべきだろう。完全放棄は良くない。
前向きだ。偉いなぁ、あたし。
126 :
名無し忍者:01/12/05 04:49 ID:bKu12i+U
正直、ダメだった。
ちっとも解らない。大体、解るところを探そうなんてのが間違っていた。全然
解らないから諦めたんじゃないの。
さてと、やっぱり最初のプランで行くしか無いワケね。
松本は相変わらず爆睡中、ま、良いけど。
吉井は……っと、おっと目が合った。
進行状況は如何なものか? 何、終った!? 見せて頂戴、お願……は?
吉井が眉を八の字にして指差す。
その方向には……
ああ、そうですか。つまり保科との交渉に決裂した藤田に君は助け舟を出した
と、親友のあたしを差し置いてよりによって藤田に。
ふふふ、そんなに慌てて謝らなくても良いのよ、吉井。
済まないという気持ちは確かに伝わったわ、ただ、それで済ますつもりも無い
けど。
平謝りの吉井を尻目に、味方を全て失ったあたしは自力でなんとかするしか無
いことを悟った。教科書見ながらやればなんとかなるでしょ、多分……
127 :
名無し忍者:01/12/05 04:50 ID:bKu12i+U
悪戦苦闘したあげく、なんとかコツは解ってきた。正解の自信は無いけれど。
それでも最初よりは全然マシだ。今はとりあえず解釈らしきものが出来る。
「あー、もー、だりーなぁ」
不意にそんな声が上がった。
「止めだ、止め。俺パース」
そんなに高らかに宣言しなくても良いのに、ワザとらしく声高に言う。
殆どの生徒は黙々と課題を片付けているが、何人かはそれに呼応した。
「こんなのやってられるかよ、俺ももう止めた止めた」
「そういやぁさ……」
不思議な空間が広がった。
ほんの何人かの生徒が騒いでいるだけで、ほとんど生徒が課題に向かっている。
普通なら恐縮して押し黙って課題に向かうだろう。けど、そいつらはそうしなか
った。そう、課題放棄を正当化しようとした。
時計の音がいやに響いた教室が、数人の生徒の雑音で溢れ帰る。
半ばヤケクソ気味につまらない会話を続ける生徒達、あたかも課題に向かうこと
がおかしいかのように他の生徒を煽り始めた。
128 :
名無し忍者:01/12/05 04:50 ID:bKu12i+U
保科が席を立った。
予想はしていたけど、やっぱりその態度には腹が立った。
周りが変わらないなら、自分が変わる。悪いことじゃ無いとは思う。
けど、ここは教室で同じ時間を共有しているのに自分だけ抜け出すのは気に食わ
ない。それが出来ない人間だっているのだ、そんなこと知るかと言われたらそれま
でだけど、正論だけど、それは気に食わない。
「待ちなさいよ」
あたしの前を通り過ぎる保科に一声かける。
保科は足を止めて面倒臭そうに一瞥をくれるだけだったが、あたしにはそれで充
分だった。
腹が立っていたけど、それ以上にむかついたのは、むなしいから騒ぎを続けてい
る連中だ。
勢い良く立ちあがる。
「うっさいのよアンタ達! 騒ぐなら外にいきなさいよ! どれだけ自分達が場違
いか解ってるんでしょ!? はっきり言って迷惑なのよ!」