「おーい北川〜、こっちだ〜」
「香里〜、こっちだよ〜」
ふたりの親友が俺たちを呼んでいる。
とある秋の日。学校の授業も午前の分が終わって、俺たちは中庭に来ていた。
俺たちというのは、まずこの俺、北川潤。それと同じクラスの親友である美坂香里、相沢祐一と水瀬名雪。
この「美坂チーム」とクラスメートから呼ばれる4人組のうち、後者のふたりは校内でも知らぬ者はいない
ほど名の知れたカップルでもある。ある意味羨ましいと思う。俺も美坂とそんなふうになれれば……。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
なんて考えて彼女を横目でうかがっていると、美坂が俺に声をかけてきたのでとりあえずごまかす。
考えを見透かされているようでちょっと驚いた。
「じゃあみんな揃ったところで、食事にするか」
相沢がそう言うと、全員が芝生に腰を下ろし、食べる準備を始める。
俺と美坂はパンを買ってきた。が、相沢と水瀬は弁当を持参していたので、先に場所を取っておいて
もらったのだ。
「相沢、今日は水瀬の手作り弁当か?」
「違うよ〜。今朝は寝坊しちゃって」
「これは秋子さんが作ってくれたんだよ」
「ふーん……」
「名雪のお母さんは料理が上手だものね」
美坂の言っていることは本当だろう。ちょっと見るだけでも確かに美味しそうに見える。
「うまそうじゃないか。少しもらうぞ」
相沢の弁当箱からサンドイッチを一切れ摘み上げ、そのまま口に放り込む。
「あっ!? 北川、お前っ!」
相沢が何かを言うがもう後の祭だった。俺はサンドイッチをほおば……?
……??……………!!!!!
「がはっ、ごほっ! げほげほっ!」
「うわっ! 汚ねえっ!」
「きゃっ! ちょっと? 北川君っ!?」
「わっ、北川君が壊れちゃったよ〜」
美坂から飲み物をもらって、俺はどうにか一息つくことができた。
「あっ、これお母さんのジャムだよ〜」
「げっ、マジか……」
「名雪、あのジャムってまだあったの……?」
「うん。たまに出されるんだけど、そういうときは逃げちゃうんだよ」
相沢たちがなにか話し合っているが、内容がよく理解できない。ジャムって何だ……?
「災難だったわね、北川君」
「美坂、どういうことなんだ?」
その後、美坂や相沢、水瀬に詳しく説明してもらった。どうやら、俺が相沢からもらった(とは言えないか)
サンドイッチに挟まれていた物体は相当危険なものだったらしい。まぁそれは俺の舌がすでに確認済み
だが……。
それにしても、俺はなんて物を食べてしまったんだろう……うぅ、気分が悪い……。
やがてチャイムが鳴り、昼休みが終わって午後の授業が始まった。でも俺は授業に集中できず、
さっき食べた水瀬のお母さんのジャム、あの何とも言えない味が口の中を支配し続けていた……。
「北川君、北川君!」
あたし――美坂香里は、机に突っ伏したまま眠っている北川君を起こしている。
ホームルームが終わってずいぶん経っている。あたしは所用でしばらく教室を離れていて、戻ってきたら
北川君だけがいた。
「もう……北川君ったら」
学校が終わったら妹の栞と買い物に行く約束をしていたけど、なんとなく北川君を放っては置けない気が
したので何度も彼の名を呼んだ。
それでも北川君はなかなか起きてくれない。名雪じゃないんだから……。あたしは半ば諦めながら
彼の寝顔を観察する。
「……」
ふーん、寝顔は結構可愛いのね。いつもはちょっと格好いいって感じなのに……。
「な、なに考えてるのあたしってば」
少しだけドキリとなって、続いて赤面する。そう、あたしにとって彼は気になる存在なの。いつからこういう
想いを抱くようになったのかしら……。
「北川君、もう放課後よ。そろそろ起きたら?」
「ん、うう〜ん……。あれ、美坂?」
恥ずかしさを隠すように北川君を揺すって呼びかけると、彼はようやく起きてくれた。
「あれ、じゃないわよ。もう誰もいないわよ」
「えっ?」
北川君は周りを見渡す。でも教室にはあたし以外は誰もいない。
「本当だな……どうしたんだろう?」
「どうしたんだろうって……寝てただけでしょ」
あたしはため息をつきながら呆れて言う。
「いや、そうじゃなくて、どうして今まで寝てたってことだ。最初は気分が悪かっただけなんだけど……
その後はよく覚えてないや」
「そう言えばあまり顔色がよくないわね。いつからおかしいの?」
原因はあのジャムかしら? あたしも1度だけ食べたことがあるけど……あれは人が食べるものじゃない
ことは確かね。名雪のお母さんには悪いけど。
「えーと……相沢の弁当を横取りしてからかな? 気持ち悪くなったり頭がボーっとしたりしてたが……」
やっぱり……。
「そんなにおかしいようだったら保健室に行く? 付き添いぐらいしてあげるわよ」
「いや、今は何ともないから……あれ? 俺は……みっ、美坂っ!」
「えっ? ちょっとっ、北川君っ!? きゃあっ!」
何か言いかけた北川君が急に立ち上がってあたしの名前を叫ぶと、あたしは彼の机の上に押し倒された。
美坂に起こされた俺は、なぜか彼女を押し倒していた。
おい、俺は一体なんでこんなことを?
「北川君、なにするの……んんっ!」
俺は美坂にキスをしていた。俺の意思じゃない。体が勝手に動いている。
「ううっ、んむっ! んんーっ!」
美坂が苦しそうに息を漏らすが、俺はそれを無視して彼女の頭を抱き寄せながら唇を押しつけ続けた。
「ぷはあっ! けほっ、けほけほっ……」
必死に抵抗していた美坂が俺の束縛を解いてせきこむが、自分でも訳のわからない暴挙はそれだけに
とどまらなかった。むせる美坂の制服を掴み、胸元を引きちぎるようにはだけさせる。
「きゃあっ! いっ、嫌ああっ!」
制服のボタンを素早く取ると、純白のブラジャーが俺の目に飛び込んできた。俺の股間が無意識に堅く
隆起しようとしている。
「やっ! 北川君やめてっ!」
ち、違う! これは俺じゃない! 俺が美坂にこんなひどいことをするもんか!
美坂の悲痛な叫びを聞いて俺はそう怒鳴りたかったが、その代わりに出たのはさらにひどい一言だった。
「そう簡単にやめられるかよ……」
「……!」
美坂が恐怖の視線で俺を見る。嫌だよ、俺をこんな目で見ないでくれ……。俺の本心はそう叫ぶ。
しかし、その思いは俺の表面には表れなかった。美坂の白いブラジャーを取り払うと胸があらわになる。
お椀をひっくり返したような形、その先端にある桃色の乳首……。
俺は、綺麗だと素直に思ってしまった。
「いい胸してるじゃないか」
「やあっ、嫌よっ!」
当然のことながら美坂が抵抗する。俺の胸を両手で叩くが、俺はズボンのベルトを素早く外すとそれで
美坂の両腕を縛り付け、机の脚に拘束してしまった。
「やああっ……やめてよ、お願いだから……」
しかし俺、いや俺の中にいる狂暴な何かはその抗議を無視して、腕を束縛されて抵抗できなくなった
美坂の胸を鷲掴みにした。
「あっ! い、痛いっ!」
愛撫――と言うには程遠いだろう。美坂の形のいい、美しいバストをまるで握り潰さんとするような俺の
手の動きに、美坂が苦痛の悲鳴を上げる。
美坂の胸――80センチ以上は確実にあるそれは、柔らかいのに弾力があり、俺の指を吸い付けると
同時に押し返してきた。
「触り心地がいいな、美坂の胸は」
「……」
美坂はじっと目を閉じ、無言で屈辱に耐えている。
だが俺が美坂の乳首を指で摘むと、彼女は無言でいられなくなった。
「ひゃあああんっ!」
痛がっているような悲鳴だが、その中に苦痛以外の何かが含まれているような気がする……。
いや、そんなことを考えている場合じゃない! どうにかしてこの行為を止めなければ!
でも、それは全くどうしようもなかった。俺は美坂をいたぶり続けた。
「あうっ……くぅん……」
ど、どうして? こんなにひどいことされてるのに感じてるの?
頭がなんだかボーッとして、あたしは自分自身がよくわからなくなっていた。
「次はこっちだ……」
「そ、そこはっ……!」
北川君の指がショーツの脇からあたしのあそこに侵入し、裂け目をなぞるとて精神は一瞬だけ覚醒した。
「あうっ!」
彼の指先が、あたしのもっとも敏感な部分――クリトリスに触れる。あたしは悲鳴とも喘ぎ声ともつかない
嬌声を発し、再び頭の中が真っ白になるような感覚に戻ってしまった。
「あっ! はううっ!」
「可愛いな……もっと鳴いてくれ……」
「ひゃふっ! そ、そこは触らないで……はひいいっ!」
もうどうにもならない……駄目……気持ち、いいっ……!
「感じてるところで、肝心な部分を見せてもらうよ、美坂」
「そ、それだけは……」
あたしのショーツが北川君の強引な手によって無理矢理に脱がされる。
さっきから熱く濡れていたあたしのその部分は外気に触れて、冷たいような感覚が走った。
「さて、どうなってるのかな?」
まだ誰にも見られたことのないあたしのあそこが、北川君に見られてる……。は、恥ずかしいっ……!
「結構ヘアは薄いんだな」
「み、見ないで……お願い……」
「ふーん……でも濡れてるぞ。見られて感じてるとか?」
「うっ、嘘よっ!」
「じゃあこれは何かな?」
「……!」
北川君があたしの愛液でまみれた手をあたしの目の前にさらすと何も言えなくなってしまう。それは
自分でも自覚していていたから。羞恥と屈辱に唇を噛み締めるしかできなかった。
「これだけ濡れてりゃ、そろそろいいかな……」
あたしの両脚を強引にこじ開けて、その間に体を割り込ませる北川君。あそこに何か、固いものが
触れる感触。
嫌っ! こんな形でバージンを失うなんて、いくら北川君でもレイプされるなんて、絶対に嫌よっ!
そう心の中で叫んで、身体を動かして抵抗しようとしたとき、手の拘束が不意に外れた。
その直後、あたしは自由を取り戻した右手で北川君の頬をおもいっきり張った。乾いた音があたしたち
以外誰もいない教室に響いた……。
美坂に頬を引っ叩かれて正気――いや、心だけは抵抗を続けていたから、体の自由を取り戻した。
涙目になった美坂が、胸元を隠しスカートを抑えながら俺をじっと睨んでいた。
「み、美坂……俺は……」
下半身をさらけ出したままの俺はその場にへたり込んだ。さっきまでは大きく屹立して、美坂を犯そうと
していた俺の男性器も同じようにへたっていた。
「俺は……ごめん」
「どうして……」
うつむいて詫びる俺の耳に、怒りに満ちたような美坂の声が響く。
「謝るくらいならどうしてこんなことするのよっ!?」
美坂の罵声が俺の耳と心にグサグサと突き刺さる。
「わからない……」
「なんですって……?」
「わからないんだ! 心の中ではやめろやめろと叫んでいるのに、体が勝手に動いたんだ!」
俺は叫んでいた。言い訳するつもりじゃないが、真実を打ち明けなければならないと思い、俺は必死に
訴えるしかなかった。
「全然止まらなかった。美坂が抵抗しても、泣き叫んでも、俺の手は俺の意志とは全く逆の行動を
とったんだ! なんでだよ……どうしてだよ……」
「北川君……?」
「それでも、俺は美坂に興奮していたよ。こんなこといけないんだとか考えても、目すら閉じることが
できなかった。どうしちまったんだよ、俺は……」
信じられないような話だった。単なるでまかせじゃないかしらとも思った。でもあたしは北川君を信じるわ。
だって、彼の足元には涙の雫が落ち続けていたから。彼は泣いていたから。
でも、じゃあ何で北川君は? いつもはこんなことをするような人じゃないのに?
「ホントに……どうしちゃったのよ?」
あたしは胸元を隠しながらもう一度聞いてみた。北川君は正気に戻ってくれたので、もう襲われる
心配はないと思う。
「とにかくどうかしてたんだ。午後の授業のころから自分が自分じゃないような気がして、それでその後は、
自分が抑えられなくなって……。なに言ってるんだろうな、俺は……」
午後……今日の午後……秋子さんのジャムを食べたときからじゃないの!?
あたしが前にあれを食べたときは……こんなことにはならなかった。まぁ、確かに味はアレだったけど。
今度秋子さんにあのジャムについて小1時間ほど問い詰めたいわね。あたしにはそのくらいする権利は
あると思う。
「こんなことじゃ済まないけど、本当に悪かった……俺、どうすれば……」
北川君はうつむいたまま涙声であたしに謝っていた。もしもこの原因が秋子さんのジャムだとすれば、
彼も被害者になるのかもしれない。
変よね。さっきまであたしをレイプしようとしていた相手を、今度はかわいそうに思うなんて……。
でもそう思うのはそれが北川君だから……。あたしが好きな人だから……。
それにあたしの身体は……熱いままだった。
あたしは前から北川君と結ばれることを望んでいた。そうなることを勝手に想像して、ひとりで自慰に
ふけったことも2度や3度じゃない。あ、でも想像の中の北川君は優しかったけれど。
「北川君……あたしのこと、どう思ってる?」
「は?」
北川君が素っ頓狂な声で聞き返すけど、あたしはかまわず続ける。
「あたし、名雪がうやらましかった」
「それは……どういうことだ?」
「あの娘はずっと前から相沢君のことを想ってて、その想いをかなえて……今はどうなってるかは
わかるわよね」
相沢君が来る前から名雪はよく相沢君のことを話してくれた。嬉しそうに話すので、その様子から
名雪はその幼なじみのいとこが好きなんだとわかった。
相沢君がこっちに引っ越して来ることを話すときの名雪は、本当に嬉しそうだった……。そして今は
幸せそうで、見てるだけでもこっちまで幸せになれるんじゃないかと思うくらい。
もっともそう思えるのは、あたしの妹――栞が助からないはずの病気を克服して今は元気に
過ごしているからという理由もあるけれど。
「ああ……」
「だからあたしも、名雪のようにはっきりと自分の想いを表現したかった。好きな人に素直に甘えたいし、
頼ってもらいたい……」
「……」
「あたしは……あたしは、北川君のことが好きよ」
勇気を振り絞って告白する。
「み、美坂……」
「北川君は、あなたはどうなの?」
「お、俺も……美坂のことが好きだ。初めて逢ったときから、ずっと……」
本当なの? あ、あたし……っ!
「ありがとう、北川君……じゃあ、続き……していいわよ」
「で、でも……」
「お願い、あたしもう我慢できない!」
そう、あたしの我慢は限界だった。北川君と両想いだったということがわかったから。北川君にだったら、
自分自身をあげても後悔しないと思う。
「でもさっきみたいなのは嫌よ。優しくして……」
「わかった。優しくするから」
「ええ。来て……」
「はっ、入ってくるっ……」
俺の肉棒の先端部分が、俺の机の上に座った美坂の濡れた割れ目に埋没すると、彼女は小さな悲鳴を
上げた。
腰をさらに突き出す。竿の部分もクチュッ、という音と共に美坂に収まって亀頭が見えなくなるが、
少し奥に進んだ所で抵抗にあう。
「いっ、痛っ……!」
「だ、大丈夫か?」
「平気よ、続けて……」
その言葉に美坂の真剣な想いを感じたので、俺は頷いて彼女に痛みを与える覚悟を決め、そして
一気に貫いた。何かを破るような感覚があり、俺のペニス全体が美坂の狭くて温かい膣に包まれた。
「あああああっ! あ……入った……の?」
「ああ。全部入ったぞ」
「嬉しい……」
そう言った美坂は瞳から涙を流しながらも微笑んでいた。その表情を見た俺は欲望を刺激される同時に、
美坂のその部分の締めつけに全身がぶるっと震えた。はっきり言ってメチャクチャ気持ちがいい。
俺はもっと美坂が欲しくなった。美坂でもっと感じたくなった。
「なぁ、動いていいか?」
「ええ。でもゆっくり……ね」
美坂の答えを確認して俺が腰を引き始めると、美坂の膣に収まっていた俺の肉棒に、愛液に混じって
紅い液体――美坂の処女血が付着していた。
俺……とうとう美坂の処女を奪っちまったんだなぁ……。夢みたいに嬉しいけど、まさかこんなことに
なるなんて……なんか複雑だ。
「くうっ、んんんっ……」
「い、痛いのか?」
ゆっくりと前後運動をしていると美坂が苦しげにうめいたので、俺は思わず腰の動きを止める。
もうこれ以上美坂の嫌がるようなことはしたくないと素直に思った。
でも、美坂は健気に答えた。
「大丈夫だから……続けて。好きなようにして」
「でも、それじゃ美坂が……」
「いいのよ。北川君が気持ちよくなってくれれば、あたしも気持ちよくなれるから……」
「美坂……」
俺は腰を小刻みにちいさく律動させる。美坂に負担を与えたくなかったから。
それでも美坂の膣は俺をキュッ、キュッと締めつけ、刺激を与えてくれる。その度に脳が痺れるような
大きな快感にとらわれる。
凄ぇ……これが美坂との……何度も想像し、ついでに夢にまで見た美坂とのセックスなんだ……。
「ふうっ……あっ、あっ、あっ……」
そうしているうちに美坂の声から苦しげな部分が消え、徐々に色っぽいものになっていった。
「あっ、あっ……もっ、もっと強く動いて……」
「大丈夫か?」
「ええ。あたしも……少し気持ちよくなってきたから……」
その一言で俺の理性は半ば吹っ飛んだ。ペニスを美坂から抜ける寸前まで引き出し、そして
思いっきり挿し込む。
「はあ……んんっ! ふっ、深い……っ!」
俺は美坂を激しく突き始めた……。
「あっ! あふっ! あんっ! はああんっ!」
北川君があたしの膣を往復すると、その度ににあたしは声を上げてしまう。もう痛みなんてどこかに
飛んで行ってしまった。
「すげー気持ちいいよ、美坂の中……」
北川君があたしで感じてくれてる……。それにあたしも身体の奥から何かが込み上げてきた。
ときどきひとりで……北川君を想って自分自身を慰めるときよりもずっと強い何かが。
「あっ、あたしっ、おかしくなっちゃいそうっ!」
ジュプッ、ジュプッとあたしと北川君が交わるいやらしい音が響く。それに北川君の息づかいと
あたしの喘ぎ声が混じってあたしの欲望をよりいっそう高めた。北川君をもっと求めたくて、あたしは
はしたないお願いを口にする。
「あっ、あっ、ああんっ! も、もっと……奥までっ……!」
「こうかっ!?」
北川君の先端があたしの子宮の先にぶつかる。その瞬間、あたしはものすごい快感に打ち震えた。
「はうっ! あ、あたし……初めてなのにこんな……!」
「美坂って、えっちな女の娘だったんだなぁ」
急に意地悪なことを言われた。あたしは感じながらもはっとなって抗議していた。
「いっ、嫌あっ! 恥ずかしいこと言わないでえっ!」
「だってさ、こんなに悶えちゃって……。俺だってこんなことするの初めてなんだぜ」
「そっ、それはっ、北川君としてるからよっ! だからこんなに感じちゃってるのよっ!」
あたしは自分自身が何を言っているのか、理解するのが難しいほど快感に包まれていた。もう自分を
抑えきれなかった。
「くっ、美坂……香里っ! 香里っ!」
あっ……、あたしのことを初めて名前で呼んでくれた……。
「はああっ……! 潤っ! 潤っ!」
あたしも北川君のことを名前で呼び返す。潤……大好きっ!
「はあっ、あっ! ああっ、んっ……いいっ! 気持ちいいっ!」
「香里、俺……もう……」
「いいわっ、このまま中に出してっ!」
潤の限界を訴える苦しげな声に対して、あたしは思わず叫んでいた。彼の全てを受け留めたかったから。
「え、いいのかっ?」
きょ、今日は危険日だったかしら? ああんっ! もうどうなってもかまわないっ!
「お願い、欲しいの。潤をもっと感じたいからっ……中にちょうだいっ!」
「ううっ……香里っ! 出すぞっ! 香里の中に出すぞっ!」
「あっ! あたしもっ、イクっ! イッちゃうううんっ!」
あたしの中に、彼の精液が注ぎ込まれた瞬間、あたしも達してしまった。
膣に潤の生命の素がたくさん流れてきて、子宮を何度も叩く。嬉しい……。
「はあっ、はあっ、はぁ……」
「ああ……潤のが、あたしの中で出てるわ……」
あたしがうっとりとして呟くと、潤がキスをしてくれた。
「ん……」
「ふぅん……」
積極的に舌を絡め合う。とても心地いい、潤……。
長い長い口付けが終わると、潤はあたしの膣から熱い塊を引きぬいた。
そのとき、ゴポッという音を立てて潤の精液があたしから溢れ出した。
「あっ……溢れ……ちゃった……」
「……」
勿体無さそうに言ったあたしを、潤は無言のまま優しく抱き包んでくれた……。
俺が美坂を汚した証拠を教室から消して、校舎の外へ出たときには日はすっかり暮れていた。
黄昏の光すら消えかかろうとしている中を、俺と美坂は何も話さず黙って歩いている。
さっきまで俺は信じられないことを美坂にしていた。それが俺を無口にさせていたし、美坂もおそらく
同じなんだろう。
気まずい雰囲気のまま歩を進めると、やがてとある十字路へさしかかった。俺の家は右に、
美坂の家は左にしばらく行けばそれぞれ辿りつける。
しかし、俺は道路に立ったまま動けなかった。美坂に何と声をかけようか――どうやって謝ろうかと
考えていたが、言葉が全然思いつかない。
「北川君……潤……?」
じっと立ち尽くしていると、美坂が俺を呼んだ。最初は名字で、次は名前の方だった。
恐る恐る彼女の方を見ると、俺をじっと見つめていた。俺にはその視線がとても痛い。
俺は、好きなのに、大切にしたいと思っていたのに全く逆のことをしてしまった女性――美坂香里のことを
直視できない。俺は、俺は……っ!
「あのさ……今日は本当にごめんっ!」
それだけ言って、俺は駆け出す。もうこれ以上は耐えられなかった。美坂にした仕打ちの罪悪感に。
「また明日ね……」
背後で美坂が俺にそう呼びかけた気がしたのは、おそらく俺の願望による幻聴だろうな……ははは……。
明日からどの面下げて逢えってんだ、畜生……。
あたしが北川君……潤と結ばれてから1日経った。今日もいい天気で、学校へ行く足取りも……
あまり軽いとは言えないわね。
なぜなら、歩くとまだあそこが少し痛かったから。でもそんなことで学校を休むわけにもいかないし、
そしたら潤にも逢えなくなってしまう。
彼、昨日別れるときなんだか誤解していたみたいだし。誤解を解いてあげなきゃ。
「あたしは気にしてないわ」って。
秋の涼しい風をを受け、紅葉を眺めながらしばらく歩いていると、よく見慣れた人影があたしの視界に
入った。昨日あたしを抱いてくれた、あたしのことを好きだと言ってくれた……あたしの好きな人。
「あら、おはよう」
いつもと同じ風を装って挨拶をしてみた。
「お、おはよう。美坂……」
潤は少し引きつったような顔をしながらも挨拶を返してくれた。あたしのことは“美坂”と昨日以前に
戻ってる。
……やっぱり昨日のことを気にしてるのかしら? それは……最初は強引だったし、あたしも
思い出したら恥ずかしいけど……。
「あら? 昨日みたいに名前で呼んでくれないの?」
「は?」
潤は狐につままれたような声を出す。
「薄情ね。昨日はあたしのことを“香里”って呼んでくれたのに」
「え? いいのか?」
「だって、あたしたちは昨日……恋人同士になったんだから、そんなの当然でしょ?」
「で、でも俺、美坂にひどいこと」
「あたしはあなたに好きって言ったはずよ。そしてあなたも」
あたしは彼と正面から向き合っている。顔が少し火照っているのが自覚できた。
「ほら、やり直しよ。おはよう。潤」
「あ、ああ……。おはよう。か、香里」
もうあたしには、そう言ってくれた彼に甘えることにもう何のためらいもなかった。
あたしは潤の腕を掴んで、自分の腕を絡めた。そしてできる限りの笑顔を愛する人に向けて言った。
「あたしの純潔を奪ったんだから、そのツケは高いわよっ、潤♪」
完
後日談その1
あたしは今、名雪の家にいる。あの日、潤を暴走させたオレンジ色のジャム、その正体を聞き出すために。
「秋子さん、あのジャムは一体なんなんですか?」
あたしは詰問口調で聞いた。
「それは話せません。企業秘密です」
秋子さんは柔らかい笑顔のままきっぱりと答えた。でも引き下がる訳にはいかなかった。
「お願いします、教えてください」
「あらあら、そうですか……。じゃあここだけの話ですよ」
秋子さんはあたしに向き直って、いつもの微笑みを浮かべたまま言った。
「あれは、自分の心にちょっとだけ正直になれるんです」
あ、あれでちょっとだけ!? あたしはレイプされかかったのに……。え、ということは……潤は
あたしをレイプする願望でも持っていたの?
「効果には個人差があるみたいなので、ちょっとかどうかは人によりますけどね」
あ、そ、そうなんだ……。じゃあ潤には効き過ぎたのかしら。
「でも、作ってよかったわ」
秋子さんがこれまでよりも優しい笑みをあたしに向けて言った。
「香里さん。今のあなたがそれで幸せになれたみたいですから」
……! ど、どうしてそれを知ってるの? でも……あのきっかけなかったら、あたしと潤は今の関係には
なっていなかったかも……。
それに、秋子さんの言うとおりだった。親友の相沢君と名雪がいる。妹の栞も、そして恋人の潤が
いてくれる。あたしはとても幸せ……。
だからあたしは、はっきりと言った。
「は……はいっ!」
後日談その2
3学期が始まって間もない1月のある日の放課後、俺は香里に呼ばれて庭へ来ていた。
この季節以外は結構人がいるこの場所も、今はさすがに俺たち以外誰もいない。この冬のさなかに
こんな寒い場所に好きこのんでいる奴などいないだろう。
「香里。で、話ってなんだ?」
ようやく彼女のことを“香里”と名前で呼ぶのにも慣れてきたな……。でも、俺が香里と今の関係を
続けて行くんだったら当然そうならなければならないだろうとも思う。
もっともそう思える時点で、俺はムチャクチャ幸せ者なんだと自覚している。
そんなことを考えながら用件を聞くと、香里はゆっくりと話し出す。
「潤……あたし、できちゃったみたいって言ったら、どうする?」
へ……? 今、なんて言った?
「あのー、なにができたって?」
「バカ……決まってるじゃないの。赤ちゃんよ」
「……なにいいいいいっっっ!?」
ま、まさか……。いや、あ、あり得る……。
3ヶ月ぐらい前……そう、俺が香里と初めて結ばれた(と言うより、襲ったと表現した方が正しいか)とき、
俺は香里の中におもいっきりぶちまけてしまっていた。
彼女がそうしろと言ったのだが……どう考えても非があるのは俺の方だよなぁ……。
どうにかそこまで考えを発展させると、俺の決心は即座に固まった。
「香里」
俺は両腕で香里の肩を掴み、じっと彼女の顔を見つめて言った。こんなに真剣になったのは
俺の人生で初めてかもしれない。
「責任は取る。悪いようには絶対にしない」
固い決意だった。進学を諦めて就職してでも彼女を幸せにしなければならない。
「潤……」
香里は顔を赤らめていた。照れているのか? と思ったら急に顔を上げて、俺を見て言った。
「ありがとう……でも『みたいって言ったら』だから、ねっ♪」
香里は悪戯っぽくウインクして笑った。屈託のない笑みだった。だが俺は思わず叫んでいた。
「だ、騙したのか!?」
「違うわよ。たんなる冗談よ」
「おいおい……」
肩を落として呆れたように呟く俺。そして苦笑を浮かべる。今の決心は一体なんなんだよ……。
俺って彼女の尻に敷かれるタイプなのか?
「でも、そう言ってくれるんだったらちょっと惜しかったかしら?」
「は?」
「ふふっ、ありがとう。大好きよ、潤」
雪に彩られた庭。そこには、俺の大好きな香里の笑顔が輝いていた……。