超樋 葉鍵スタッフ最萌トーナメントR-1 専甘 

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233超物語・第3章
「俺達の扱いは不当だと思うんです。こうなったら俺達の手で真の実力を見せてやろうじゃありませんか」
 吉野家を出てからも、竹林は樋上に熱く語っていた。
 特にすることの無い樋上は、竹林の提案に何となく興味を示し、詳しい詳細を問い詰めることにした。
「私が原画を描くとしても、CGを全て一人で仕上げるのは余程の時間が無い限り無理ですが?」
「時間ですか…。それがあまり無いんですよ。実はマスターアップの期日は既に決まっているんです」
「それじゃ、この企画って見切り発車だったんですか?」
「見切り発車というか、単なる思いつきですよ。あまり深く考えないで下さい」
「はぁ…」
「とにかく樋上さんは、立ち絵とイベントCGを描いて下さい。背景やその他のCGは既存の物を使いますので」
「既存の物って著作権とか大丈夫なんですか?」
「その辺は大丈夫です。それよりDNMLのタグを習得しておいて下さい」
「ええっ? DNMLですかっ? あのフリーソフトの?」
「そうです。専用システムを作れるプログラマがいない以上、他に選択肢はありません」
「そうかもしれませんね。ではゲームジャンルとしてはビジュアルノベルなんですね?」
「その通りです。絵とシナリオの相乗効果を最大限に発揮するには最高のジャンルですよ」
「ビジュアルノベルとして完成させるには、あとSEやBGMが必要ですが?」
「音関係も既存の物で何とかします。データ作成とかはウチの曲担当にでもやらせます」
「ゲームの概要については大体理解しました。あとはどうやって発売するのかを教えて下さい」
「ゲーム完成後のことは全て俺に任せて下さい。もちろんそこで発生する責任は全て俺が引き受けますから」
「パッケージやマニュアルのデザインとかいいんですか? まさかCD−Rに焼いてコミケで売るとか」
「いえいえ。ちゃんとした商業ルートで出しますよ。俺に名案があるんです」
 竹林は不敵な笑みを浮かべた。
234超物語・第4章:01/12/05 20:47 ID:zNYU2KBM
──西暦2002年・如月──
「たまには栄養あるもん食べたいな…」
 竹林はパソコンのキーボードを叩きながら独り言を言った。
 マスターアップの期日まで残り一週間足らず。〆切死守のため、自宅に篭っての修羅場が続いていた。
 既にCGとBGMは完成し、シナリオもDNMLタグを使った演出の調整を残すのみとなった。
 CGは樋上の手で正真正銘の純正いたる絵が具現化され、ちゃんと計算されていた。角度とか。
 BGMについては葉の中上を捕まえて、本業の合間にデータを作らせた。
 こんな曲をデータ化させて、一体何に使うんだろう?
 訝しげな表情をしながらも、中上は渋々データを仕上げた。
 残る作業はタグ入力を終了し、全体を通して動作確認を行うこと。
 しかし、残された時間では動作に問題があった場合、修正しきれるか微妙であった。
「そういえば、去年の今頃に誰彼が発売されたんだよなぁ…」
 竹林はふとそんなことを思い出した。人は切羽詰ってくると、どうでもいいことに気を取られる様になる。
「あれも俺なりに頑張ったんだけどなぁ…」
 嫌な過去を思い出して少し鬱になっていると、1通のメールが届いた。それは樋上からだった。
『超先生! 立ち絵の基準にズレが見つかりました! 発売日延ばさんと無理やわ!』
 文面から樋上の精神状態が読み取れたが、延期できないことに変わりは無いため、一言だけ書いて返信した。
『ダメだ』
 このメールを読んだ後、樋上は次のような台詞を連呼しているかもしれないと竹林は想像した。
「もう逃げようかなー。もう逃げようかなー」
 だが例え樋上が逃げ出したとしても、自分だけは逃げ出すまいと心に誓っていた。
 このゲームを世に出せなかったら、もう二度と自分の作品を出せなくなるような予感がしていたからだ。
 竹林は気を取り直して、再び作業を続けることにした。