葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 Round52!!
61 :
み:
>55
ふふ、黒子さん、ありがとー。
いちおー、完結させるよー。
そして、俺は再びこの場所に立っていた。
張り出した潅木の枝を払い小径を通り、森をぬけた広場。
「再会するときは学校で」
あゆの言葉がよみがえる。
すべての記憶を取り戻した今、あゆのことを待つには、ここが一番ふさわしい場所に思えた。
楽しいこともいっぱいあった場所。それが、一瞬にして悲しい記憶に変わった場所。
そして・・・あゆの時間が止まった場所・・・。
ここなら、いま一度奇跡が起こるかもしれない。
二度と帰らない楽しい日々の象徴のように、あったはずの木は姿を消し、その残骸のように、おおきな切り株が無残な姿を残していた。
夕焼けに赤く染まる雪の中、俺はその切り株にむかって歩いた。
そして、その上の雪を払いのけ、腰をおろす。
雪に覆われた真っ白な世界の中、そして、いまも降り続く雪の中、たった一人でくるはずのない人を待ちつづける。
風で木々の枝葉のこすれる音しか聞こえない世界。そんな時間の感覚がなくなるような世界でただ、ひたすら待ちつづける。
やがて、雪を茜色に染めていた日が沈み、世界は紫色に、そしてついに闇につつまれる。
そういえば、あいつ、暗いところも苦手だったな。そんなことをふと思う。
そう、いまでもあいつの一挙一動まで、まざまざと思い出すことができる。
あの晩のあゆの肌のぬくもりも、やわらかさも、克明に覚えている。
あいつとの思い出が脳裏にあふれてくる。
それは、失ってはじめてわかる、大切な人と過ごした、かけがえのない時間だった。
あゆは、確かに存在していた。そして、そのなによりの証として、あゆのリュック、コートが俺の手にある。
額がくっつきそうになるくらい、あゆに顔を近づける。
「な、何?」
一言、一言、思いを届けるように。
力の使い方さえ忘れてしまった魔法使いの記憶を取り戻すために。
「奇跡なんて滅多に起こるもんじゃない。それは誰でも知ってる。
だからって、何もしないのか?それで奇跡は起きるのか?
そうじゃないだろ?
お前なら、あゆなら、俺の言いたいことがわかるよな?」
近づいた距離の分だけ顔を赤くしたあゆは、キョトンとしている。
「うぐぅ。よくわからないよ」
「・・・そっか」
やはり、そう何度もは無理なのか。
「でも、応援してくれるみんなもいるし、ボク行くね」
「ああ。行ってこい」
今度こそ、背中を押されたあゆは、トーナメント会場に向かって走り出す。
63 :
み:01/11/30 02:14 ID:HQp+ksGn
やがて、茂った枝の間から天空に月がのぼり、銀色に照らされた雪が幻想的な世界を形作る。この非日常的な光景。
ここなら、どんな奇跡が起きても納得できると思った。
だが、その日、あゆが再び現れることはついになかった。
「・・・指切り、したよな?」
木々の梢の形に切り取られた夜空を見上げながら、つぶやく。
だが、やがて、今日という日も思い出の中に還っていった。
・
・
・
目覚めは白く、まぶしかった。
寒さを感じる前に、早く階下へ降りて、朝食をとらなくては。
そして、廊下へ出ると、ちょうど廊下を歩いてきたあゆとぶつかりそこない、俺は軽いステップで左へよけた。
当然、こちらへ向かってきたあゆは、攻撃目標を失い、閉める暇もなかった、俺の部屋のドアへむなしく激突する。
「うぐぅ、攻撃じゃないよ」
「そうか。それじゃ、待ちぶせか?」
「うぐぅ、そんなことしないもん。ボクはゆういちくんに朝の挨拶をしたかっただけだよ」
世界一土下座が似合う少女<<月宮あゆ>>に一票。
65 :
名無しさんだよもん:01/11/30 02:15 ID:khDUcHuC
「勝ったら、ボクに鯛焼き奢ってね〜」
振り向いて無邪気に手を振る姿に、俺は答えることができなかった。
(アイツ、今日はリュック背負ってなかったよな?)
会場のライトが逆光になってよく見えなかったけど、あれは・・・。
まあいい。
俺だけが知っている。
あれは幻なんかじゃない。お前には翼がある。
何処までも飛んで行け。
たとえ負けてしまっても気にすることは無い。
飛べなくなっても、下には俺がいるさ。
7年前は掴み損なったけれど、二度目はない。
もう落とさない。
俺は、名雪達の待つ観客席に足を向ける。
「だから、心配せずに飛んでこい。あゆ」
長文、スマソ。
67 :
み:01/11/30 02:16 ID:HQp+ksGn
>60,62さん
スマソ
輻輳を検出したので、一時送信を停止します。
まざっちゃって、ごめんなさいね。
68 :
名無しさんだよもん:01/11/30 02:18 ID:6JE7c/w2
投票しないつもりでしたが
>>44氏の絵を見て
<<あゆ>>に一票 上手いなぁ・・
69 :
名無しさんだよもん:01/11/30 02:18 ID:4vRXv5bc
<<あゆちゃん>>に1票って事でひとつ
>み さん
こちらこそ申し訳無いです(汗)。
自分のは終わりましたので、思いっきりどうぞです。
fffff
72 :
54:01/11/30 02:20 ID:sRU685Wt
あ、忘れてた。ケーブルです。
, -――-、――- 、
/ ヽ、
/ , ・ ニ二二二二ニヽ ヽ、
| レ´ ` ヽ
| | // / l | | || | | ヽヽ 、 |
.| | lルT_工|/VW .工_T i | N/
| | | ||´| .jl` | .jl゙|/|/レ' / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | (.| || 。二 , 二。 | | | | < うぐぅ、たいやき・・・
(\| | ,| |ト " ^^^/ ̄ ヽ、| | /) \
(\.| | /| | | `, ┬―| ||/ |/ /) \____
\/,XXヽ lヾ|ΤTT「王王王| .| / /
ヽ L土土土| / /
正直、この泣き顔のAA、かわいくて好きです。
てなわけで、<<あゆ>>に1票いれます。
<<あゆちゃん>>に一票。
「あのさ、千紗ちゃん、さっきから印刷機動かして何やってるの?」
「にゃぁ〜、オタクさん達が集まるこの機会を利用して塚本印刷の宣伝をしてしまうですよ、お兄さん。
これでお客さんが増えてお父さんもお母さんも大喜びですよ、えっへん」
「あのさ千紗ちゃん、オタクがみんな同人誌描いてるとは限らないんだけど・・・」
「にゃ!? そうなんですか? でもこのチラシは無駄にはならないです。ここを見てください」
「えーと<<塚本千紗>>に一票・・・ってこれは」
「これさえあればばっちりです、千紗に大量に票が入って勝てますです」
「あのさ、悪いんだけど多重票はちゃんと対策とられてるよ」
「にゃ?」
「それにこれ・・・くくり方違うから無効票なんだけど」
「にゃ、にゃあ〜」
(オチなし、お目汚し失礼)
<<塚本千紗>>に1票。
あゆも好きなんだけど純粋にキャラ萌えだけで言ったら千紗かなぁ。
正直Fブロックは投票に困る組み合わせばかりだ(;´Д`)
77 :
み:01/11/30 02:24 ID:HQp+ksGn
>70さん
いえいえ、書き込みチェキが甘くてごめんなさいね。
誰かのために最後の願いをとっておいたやさしいあゆ。
今度は自分のために、今一度奇跡をおこしてほしいですね。
というわけで、つづくよー。
「そうか・・・って、あゆ!。どうしてここにいるんだ?」
「一緒に住んでいるんだからあたりまえだよ。」
あたりまえのように言う、あゆ。
「そうか、そうだったな。」
あゆと、一緒に暮らしはじめて、もう一ヶ月になる。
いつものとおりの、朝の風景。だけど、悲しい風景だった。
「そうだ、ゆういちくん。今日はクッキーを焼くんだよ」
「そうか。それじゃ、帰りに商店街で胃薬でも買ってくるか」
「うぐぅ、祐一君、いじわるだよ。」
「そうだったな。真っ黒な碁石を食べたら、胃薬くらいじゃ間に合わないよな」
「秋子さんに教えてもらいながら作るから、大丈夫だよ」
「そっか。やっと人類の食べ物に一歩近づいたな」
「ゆういちくん、もしかして、さっきからすっごくひどいこといってる?」
他愛ないやりとり。だけど、なぜか悲しかった。
悲しいのはなぜだろう。
俺はあゆと、こんな時間を持ちたいと切望していたはずなのに。
その光景は白く霞んで。そしてあゆの声も遠ざかって・・・・。
78 :
名無しさんだよもん:01/11/30 02:25 ID:gmfbKIom
>>66 良いSSだったが「鯛焼き」がいただけなかった…
あゆ的「たいやき」は「たい焼き」だと思われ。
しかし応援SS感謝。
あゆの羽根はリュックではなく天使の羽根
この訴えは(以下略
うぐぅとかうぐぅっとかうぐぅ〜 (映画館にて)
なわけで<<月宮あゆ>>に一票。
80 :
み:01/11/30 02:26 ID:HQp+ksGn
俺は寒さに身震いをした。冷たい雪の感触。
目を開けると、そこは廊下ではなく、雪に包まれた森の中の広場、切り株の上だった。
そして頭がしめつけられるように痛かった。全身を倦怠感と寒気が覆っていた。
「・・・あのまま、眠ってたのか」
つぶやきとともに吐き出した息が、まだ暗い世界を白く染める。
そして、夜の間に降りつづけた雪が、俺のコートの上に積もっていた。その冷たさが分厚いコートを通してさえしみ込んでいる。
もう一度大きく身震いをして、手で両肩と頭に積もった雪を払い落とす。
「・・・この街に引っ越してきたときも、同じような目にあったよな
もっとも、あの時はベンチだったけどな・・・」
ベンチと違い、雪のたっぷりつもった切り株は、座っているだけで水がコートにしみ込んでくる。そして、その冷たさに、ふと気を抜けば、気が遠くなりそうだった。
真上にひらけた空は濃い群青色で、そしてたぶん東の方角の木々の隙間から、まわりよりも明るい紫色の空がわずかにのぞいていた。
やがて、紫から桃色に変わり、木々の間からまぶしい陽光が斜めにさしてきて、雪の上にオレンジ色のしま模様を作り上げていた。
鳥のさえずりが聞こえだし、空はいつのまにか明るい水色にかわっていた。
俺はただ、じっと、一日の始まりを告げるその美しい光景の移り変わりを無感動に見つめ、あゆのことを待ちつづけた。
千紗サイドのマイペースっぷりがなんか千紗っぽくって萌え〜
<<千紗>>に一票。
82 :
みゆう:01/11/30 02:27 ID:HQp+ksGn
そして、時間だけが流れていった。
「・・・俺は、まだこの場所にいるんだな」
いや、もう、動くだけの体力が残っていないのかもしれない。手を動かすのすら、まるで鉛を持ち上げるようだ。
風の音と鳥のさえずり。そして、日差しに溶けた雪が木々の枝から滑り落ちる音。そんな音しか聞こえない世界で、俺は待ちつづけた。
そして、再び太陽が真上に登り、つかの間、この広場を白く染め、傾き、木々の間に隠れていった。
やがて、西の空が茜色に染まり、朱に染まった空に木々のシルエットが黒く浮かびあがるのが山火事のようでもあり、黄金色のようでもあり、刻々とその姿を変えていく。
あゆが一番好きだった夕焼けの光景。
その赤く染まる世界のなか、俺はあゆの姿を見た気がした。
今にして思えば相変わらず頭は重く、意識がもうろうとしているため、幻覚をみたのかもしれない。だけど、俺は確かにあゆの声を聞いた。
「祐一君・・・」
俺はあゆになにか声をかけようとした。だが、その意志とは反して、口がわずかに動いただけだった。
「あぁ・・・」
そして、体中の気力をふりしぼり、鉛のように重い頭をあげると、目の前に俺が会いたくて切望している人、誰よりも深い悲しみを背負った少女の姿があった。
84 :
み:01/11/30 02:29 ID:HQp+ksGn
ぐはー、ハンドルみすった。↑
『やっぱり待ってた人が来てくれることが一番嬉しいよ』
『それだけで、今まで待ってて本当に良かったって思えるもん』
かつて聞いた言葉がよみがえる。
いまなら、その言葉を自分のこととして実感できる。
そして、あゆは、たったひとりで7年間も待っていたんだから・・・・。
「忘れ物を届けにきてくれたんだね。」
「ああ・・・」
「全部思い出してしまったんだね。楽しかったことも、そして、悲しいことも・・・」
「ああ、そうだ、あゆ・・・」
「だったら、わかるよね。
ボクは今日はお別れを言いにきたんだよ」
そこで俺は気力をふりしぼり、立ちあがった。
「あゆ、いかないでくれ。」
そして、ふらふらとあゆのほうへ1歩、2歩踏み出そうとするが、体に力が入らず、倒れそうになる。だが、俺の体が地面にたたきつけられることはなかった。
85 :
すばる:01/11/30 02:29 ID:EefB61QW
<<塚本>>に一票ですの☆
感謝しやがれですの☆
87 :
み:01/11/30 02:30 ID:HQp+ksGn
「まったく、祐一君は、いつも無茶をするんだから・・・。それだけが心配で心残りだよ」
気がついたら、あゆに抱きとめられていた。
あゆは困ったような表情をしていたが、ふと、やさしい表情になって、口を開いた。
「ボクはもういいんだよ。ほんとはもう、食べられないと思ってたたいやきだって、いっぱい食べられたし、祐一君と再会できたし・・・。それに・・・」
すぐ目の前にあるあゆの顔は笑顔だった。
心なしか顔を赤くして、俺の顔をちらっと見てから、言葉を続ける。
「それに・・・思いを遂げることもできたもんね。
だから・・・・だから、ボクは幸せだったよ。
だから、ボクはもういいんだよ。
祐一君、ありがとうね。」
すべてを悟ったような、すべてを受け入れたような穏やかな表情だった。
「あゆ・・・。まったくおまえってやつは・・・。」
まるで自分の声と思えないようなしゃがれた声が喉の奥から絞り出されてくる。
「いつだって自分だけで、話を終わらせようとするんだから。
勝手に話を終わらせるな。少しは俺の気持ちも考えてくれ。」
88 :
名無しさんだよもん:01/11/30 02:30 ID:ZGI509Xj
「み」にお願い。
長文貼りすぎ。できれば他のところに書いて、そこへのリンクって形にしてほしい。
89 :
名無しさんだよもん:01/11/30 02:32 ID:gmfbKIom
>>88 進行中って感じがしてイイと思うんだけど…
90 :
みゆう:01/11/30 02:32 ID:HQp+ksGn
「祐一君の気持ち?」
「ああ、そうだ。あゆはそれでいいかもしれない。
俺は、今でもあゆのことが好きだぞ。
だから、俺はあゆを失いたくないんだ。
俺にはあゆが必要なんだよ。」
俺の体を支えるあゆの腕にこころなしか力がこもった。
「うぐぅ。嬉しいよ。
ボクも祐一くんのこと、好きだよ」
そう言って、寂しそうに微笑む。
「でも、もうだめなんだよ。自分でもわかるよ。もう、時間がないんだよ。
いまになってそんなことを言うなんて、祐一君、いじわるだよ。」
「時間がないって・・・どういうことだ!?」
「もう、会えなくなるって事だよ。もう・・・二度と・・・。」
しばらくの沈黙。俺は、その言葉の意味をかみ締める。やがて、あゆが意を決したように言葉を続ける。
「だから・・・だから、ボクのこと、忘れてください。
ボクなんて・・・最初っから・・・・いなかったんだって。
ボクの・・・最後のお願い・・・・・かなえてくれるよね?」
その、言葉の最後の方は途切れ途切れで、本当に消え入りそうな声で、こうしてあゆの体に頭を預けていなければ聞こえることはなかっただろう。