「みんなでスキーに行くって?」
「うん。もちろん祐一君もだよ」
「でも、オレは高所恐怖症だからな・・・」
「なんにでも挑戦する事が大切なんだよ」
「そりゃそうだけど・・・」
過去の記憶を取り戻したオレは、昔ほど高い場所が
苦手ではなくなっていた。結局あゆや名雪に押しきられる形で
雪山に行く事になった。あゆもオレもスキーは初めてだったが
うかない顔の俺とは対照的に、あゆは楽しそうだった。
「だいぶボーゲンも板についてきたみたいだな」
「じゃ、あのゴンドラで、山の中腹までいってみようよ」
「・・・まあ、中腹までなら」
「吹雪で外、見えないね」
それどころじゃないオレはずっと目をつぶっていた。
「それにしても随分長い時間乗ってるな・・・」
「あ、着いたみたいだよ」
「・・・って、ここは山頂じゃないか!」
「あれ、乗るゴンドラ間違えちゃったみたい・・・」
「冗談じゃない、オレは帰るぞ」
だが、俺を安息に地まで運んでくれるはずの
希望の箱舟(←大袈裟)は全く動く様子がなかった。
「吹雪が強くて運行停止だって・・・」
「休憩できそうな場所もないし・・・。仕方ない、一番近い
レストハウスまで行くしかないな。あゆ、先導してくれ」
「うん、わかったよ祐一君」
「いったいどこまで行くんだ?」
「・・・」
「まさか迷ったんじゃないよな?」
「・・・うぐぅ、大丈夫だよ〜」
それから小一時間ほど下ったが、建物どころか人っ子一人見当たらなかった。
オレたちは疲れ果て、遂に座り込んで動けなくなった。
「ごめんね、祐一君の役に立てなくて・・・」
「あきらめるな、あゆ。あともうちょっとだぞ」
「ボク、なんだか眠くなってきちゃったよ・・・」
「あら、祐一さん、こんなところで何してるんですか?」
「秋子さん・・・それにみんなも」
「二人ともいないから、探しに来たんだよ〜」
「よかった・・・遭難するかと思った」
「何言ってるのよ相沢君。こんな麓近くで遭難するわけないでしょ」
「・・・へ?」
吹雪は既に止みかけ、木々の向こう側ではロッジの明かりが増えはじめていた。
「あははー、お二人ともスミに置けないですねー」
「・・・不潔」
「妙な事言わないでくれ佐佑理さん・・・誤解だよ。舞〜」