葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round48!!

このエントリーをはてなブックマークに追加
茶色に染まった芝生。
殆どが木から落ちてしまった銀杏の葉。
さびしそうに光っている街灯。
そんな風景を見つめていたら、沙織ちゃんがふと口を開いた。
「今日は…ごめんね」
「えっ?…ってあの遅れたってこと?」
「そうじゃなくって…
 今日は、祐くんを無理に連れ回しちゃってごめんって」
「そんなことないよ。あのあんみつ、おいしかったし」
「でも…あのお店って女の子ばっかりでしょう?祐くんには居心地が悪かったんじゃないかなあって。
 私、なんとなく分かっちゃったんだ。なんだか祐くんはここにいるのが辛いんだなあ…っていうのが」
「………」
何も言えなかった。
沙織ちゃんを傷つけたくなくて隠そうとしていたのに、こんなにあっさりとばれてるとはショックだった。
辛かった。自分は何をしているのだろう、と。
「でもね」
沙織ちゃんが再び口を開いた。
「それなのに、祐くんは文句一つ言わずに私についてきてくれた。すごくうれしかったよ。
 こんなに優しい人を見つけられて良かったなあ、って神様にいくら感謝しても足りないくらい」
「………え」
「だからね、今日は本当に…」
「ありがとう」
その台詞が終わるのと同時だった。僕が何も言えないうちに、沙織ちゃんと僕は唇を交わしていた。
「………」
「びっくりした?」
「………うん、すごく」
放心状態でそう答える僕に、沙織ちゃんは言葉を続ける。
「今日のはね、ちょっとした乙女のいたずら」
「いたずら?」
「そ。ちょっと周りの人に見せ付けてみたくなって。
 でも…なんだか祐くんを試すみたいな感じになっちゃって…だから本当にごめんなさい」
「…でもさ、沙織ちゃんはこれで僕のことを認めてくれたんでしょ?」
「結果的には、そうなっちゃったけどね」
くすっ、と沙織ちゃんは笑う。
「じゃあ…いいんじゃないかな」
今度は僕の方から抱きしめ、長く、そして優しいキスを交わした。

「それじゃあ、今日は私もう帰らなきゃならないから。ごめんね」
「いいよ、気にしなくて」
「うん、それじゃあね」
家に向かって走っていく沙織ちゃんを見えなくなるまで見送り、そして木枯らしの吹く夜空を眺めた。
今日は一段と寒い。冷え込みも激しくなってきたようだ。
「冬…か」
沙織ちゃんへのクリスマスプレゼントはなんにしよう、などと考えつつ僕も家路につくことにした。
風は冷たいが、僕の唇に残った温もりはずっと消えないような…そんな感覚とともに。