葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round48!!

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と、ふとぱくぱくと食べ続ける僕に沙織ちゃんが何がいたずらを思いついたかのような笑みを見せた。
何か嫌な予感がする。
「ねえ?祐くん」
「…なに?」
「はい、あ〜んして」
やっぱり…。周囲の目線が痛いからここでは止めて欲しかったのに…
かといってこれを無碍に断るわけにも…
「あ、あ〜ん」
「はいっ」
ぱくっ。
覚悟を決め口を開いて差し出されたスプーンをくわえると、他の客には「はあ…」などと溜め息をつき始める人まで
現れた。
そんなことも露知らず、沙織ちゃんは二口目を僕に食べさせようとしている。
もう、どうにでもなれ…と思いつつ、僕は沙織ちゃんの差し出すあんみつを食べていた。

「おいしかったね、祐くん」
「うん、今日はごちそうさま」
「どういたしまして」
店を出ながらそんな会話を交わす。
まだ6時であるというのに外はだいぶ暗くなり、乾いた風が冬の到来を告げていた。
「ねえ、公園でも散歩しない?いつものところ」
「そうだね、行こっか」
「うん」
こんな日は、散歩もいいかもしれない。そう思い、僕は沙織ちゃんの提案を受け入れていた。
というよりも、まだ一緒にいたかったからなのかもしれないけど。
お互い、初冬の風を体に受けながら10分くらい歩く。
そのとき、なぜか僕らは一言も口にすることはなかった。
普段自分から積極的に話しかけてくる沙織ちゃんが急に黙ってしまったので、僕も喋ることが出来なくなってしまったからだ。