葉鍵板最萌トーナメント!!1回戦 round48!!

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303応援エロSSですだよ。
>>261-264の続き)

***

短大を出て、就職をした。
そして、明るく活発で、ころころとよく笑う元気な同僚が、気になった。
新城沙織。同い年の同期。
これは恋だ、ということが、梓にはわかった。
同性の間にだって、そんな想いが産まれることはある。
高校の時、梓はそれを我が身で思い知っていた。

強引に、強引に、自分に迫って来た、高校のあの後輩。
そんな趣味はないから、となかば彼女を遠ざけていた梓の壁を
あの子は何度も何度も無理矢理ぶち破って、……とうとう、想いを遂げてしまった。
自分たちは恋人同士だと、梓の口からはっきり認めさせるほどに。
そんな風に強引に梓の心を奪っておいて、あの子は、あっさり行ってしまった。
もう誰の手も届かないところへ。突然の、交通事故で──。
女の子を愛するように心と身体を変えられてしまった梓を、
ひとりぼっち、この世界に残して。
304応援エロSSですだよ。:01/11/27 08:47 ID:qnc+f7f6

あれほど激しかった悲嘆は歳月によって少しずつ静められた。
(…すべてはもう、たゆたう思い出の中…ってな)
ただ、あれ以来生まれた、自分の中の何か空虚なもの。
それを、ただ在るだけで埋めてくれた新たな存在。
それが新城沙織。
もちろん、彼女は梓の想いなど知りはしない。
仲の良い同期、というだけだろう。
沙織と話したこと、昼休み一緒にはしゃいだこと、
上司への不満で意気投合したこと、
そんな他愛もないことをアパートに帰っては反芻し、
知らず顔をほころばせる自分。
そんな自分が、逝った後輩を裏切っているようで心を重くもした。
だが、梓は死者が思い出で埋めてくれる以上の何かが、欲しかった。
(あの子が、あたしが不幸になるのを喜ぶかな?)
そう思った日、梓は初めて、沙織への気持ちを恋だと自分で認めた。

 ***

「コレ、コレ、この前、観たいって言ってただろ?」
「わー、梓ちゃん、憶えててくれたんだ♪」
沙織のリクエストで紅茶を入れ、ついで沙織が観たがっていた映画のビデオを出し、
もっと長い時間部屋に留めることに成功する。
映画が終わる頃には、もう、ご飯時。

梓が以前から自慢していた料理の腕を見せたいと言い出すと、
佐織の方も喜んでくれた。
どうやら佐織も、少々遅くなっても構わない気分になってきたようだ。
305応援エロSSですだよ。:01/11/27 08:47 ID:qnc+f7f6
気ぃ使う必要なし、と言うのにどうしても、と言って手伝ってくれる佐織。
一緒の作業を、肩を寄せ合いながら隣り合ってするのが、
あらためて、佐織という女の子をとても身近な存在に思わせる。
鼓動が、早くなる。
(ああ……、あたし、恋してるよ……)
胸を熱くしている自分を隣に気取られないようにするのに、梓は苦労した。

夕食は自分が感動するほどの完璧な出来で、
美味しい美味しいを連発して山盛りのおかわりをも平らげてくれた佐織に、
梓は大袈裟にも(生きてて良かった…)とまで思った。
食後に出したアルコールが、自分用にチェーン店で買い置きしていた
安い缶チューハイだったのが失敗のような気もしたが、
ここで気合いの入った高いヤツを出したらかえって変に思われるかも、
と考えて良しとする。

「佐織…」
「なーに? 梓ちゃん」
いつの間にか、梓は佐織の真横に座っている。
佐織はそんなにアルコールに強くないのか、顔を真っ赤にして
気持ち良さそ〜うにくたっと梓の肩へ頭をあずけていた。
「聞いて欲しいんだ、あたしの話。真面目な話」
「うん」
「あたし、高校の時つきあってた人がいたんだ」
「うん」
「女の子」
「うん。…えっ?」

(続く)