男男 葉鍵板最燃男トーナメント!! round2!! 男男
バサッ……
白衣の下の、自らの上着を良祐は脱ぐ。
その黒いセーターで良祐は、少女の顔を拭いてやる。
身体を拭いてやらないのは、“日常”を知る良祐だから。
風呂も、トイレすらもないClassCの過酷な環境。
下手に拭き清めてそれが吐露したら、少女に待つは悲惨の一語。
けれど、せめて顔だけは。
口元にこびりつく血を、顔中に粘つく精液を、自分のセーターで拭いてやる。
どうにもならない激情を懸命に押さえ、その手を震わせながら。
「ぁ……」
彼の口から声が漏れる。
未だ意識は戻っていない。そんな彼女の両腕が、そっと彼の首に巻かれて。
殴られ、汚され、そして拭き清めた。そんな少女の唇が、言葉を紡がんと微かに動き。
声にならない声。意識のない彼女の声。
けれど、彼にははっきりそれが聞こえた。首に回された、暖かい両腕の感触と共に。
「晴香……」
“非日常の日常”たるこの空間では、決して許されないこの言葉。
されど、今だけは誰を憚ろうか。
誰よりも想っているこの妹を、誰よりも自分を想ってくれているこの妹を。
兄と妹として。
そして、巳間良祐と巳間晴香として。
一時だけの抱擁。
無機質で冷たいこの部屋で、二人は互いを確かめ合った。